説明

いね籾殻灰を付着させた三次元構造体およびその製造方法。

【課題】
本発明の課題は、特に脱臭、消臭、空気浄化等の機能材を大量に担持させることができるフィルター材として好適に用いることができ、圧力損失が少なくて、処理能力に優れ、柔軟性のある三次元構造体を提供することにある。
【解決手段】
本発明は、連続孔を有する三次元立体構造の編物の構成繊維表面に、いね籾殻灰を付着させ、該いね籾殻灰の細孔内に、機能材を大量に固定化することにより、従来にない処理能力があり、柔軟性に富んだフィルターが得られることを見出し、本発明に至ったものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元流路を有する三次元構造体のフィルターに関するもので、いね籾殻灰を三次元立体構造の編物の構成繊維表面に付着させ、特に脱臭、消臭、空気浄化等の機能材を大量に担持させることができるフィルター材として好適に用いられ、圧力損失が少なくて、効率よく各種性能を発揮することのできる三次元構造体に関する技術である。
【背景技術】
【0002】
従来からフィルター材として好適に用いられる構造体として、ハニカム構造のフィルターや、不織布のようにランダム方向に繊維を絡ませた構造のフィルターが多く使用されている。いずれも、連続多孔性の構造となっており、気体等との接触面積が大きく、有効なフィルター材といえる。
【0003】
しかしながら、ハニカム構造のフィルターでは、気体等の流れが、貫通孔の軸線方向に沿った一方向のみになることから、孔の中心付近においては流速が速く、孔の側壁近傍では流速が遅くなり、気体等とフィルター材に担持された各種機能材との接触にムラが発生し、接触効率の低下は避けられないという課題があった。
【0004】
また、不織布の場合には、フィルター材に担持された各種機能材との反応時間を長くしようとすると厚いフィルター形態となり、圧力損失が大きくなってしまうという課題があった。
【0005】
上記の方法に代わる方法として、出願人は特許文献1において、三次元立体構造の編物にセラミックスを付着せしめた構造体を焼成し、三次元立体構造の編物の有機成分を除去したセラミックス三次元立体構造体を提案している。この方法では、三次元立体構造内を通過する流体に乱流が発生しやすく、セラミックスと流体との接触効率に優れ、圧力損失の少ないフィルター材とすることができる。しかしながら、該セラミックス三次元立体構造体は、フィルター材として優れた構造ではあるが脆いことから、使用中に砕けたり搬送中に割れたりして、強度や柔軟性のあるものが望まれていた。また、セラミックスの表面に機能材を大量に担持させることができないことから、流路を長い構造としなければ、十分な効果を得ることはできなかった。
【0006】
【特許文献1】特開2000−154070
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、特に脱臭、消臭、空気浄化等の機能材を大量に担持させることができるフィルター材として好適に用いることができ、圧力損失が少なくて、処理能力に優れ、柔軟性に富んだ三次元構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、連続孔を有する三次元立体構造の編物の構成繊維表面に、いね籾殻灰を付着させ、該いね籾殻灰の細孔内に、機能材を大量に固定化することにより、従来にない処理能力のあるフィルターが得られることを見出し、本発明に至ったものである。上記課題を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0009】
[1]連続孔を有する三次元立体構造の編物の構成繊維表面に、いね籾殻灰を付着させたことを特徴とする三次元構造体。
【0010】
[2]前記三次元立体構造の編物が、所定間隔を隔てて配置された上下2層の開口部を複数有する編地組織間に、連結糸が掛けわたすようにして編み付けられたものからなる前項1に記載の三次元構造体。
【0011】
[3]前記連続孔を有する三次元立体構造の編物の構成繊維表面に付着したいね籾殻灰に触媒、吸着剤等の機能材料が担持されてなる前項1または2に記載の三次元構造体。
【0012】
[4]連続孔を有する三次元立体構造の編物をバインダー樹脂溶液に浸漬した後、いね籾殻灰を付着させ乾燥することを特徴とする三次元構造体の製造方法。
【0013】
[5]連続孔を有する三次元立体構造の編物をバインダー樹脂溶液に浸漬した後、触媒、吸着剤等の機能材料を担持したいね籾殻灰を付着させ乾燥することを特徴とする三次元構造体の製造方法。
【0014】
[6]前記三次元立体構造の編物が、所定間隔を隔てて配置された上下2層の開口部を複数有する編地組織間に、連結糸が掛けわたすようにして編み付けられたものからなる前項4または5に記載の三次元構造体の製造方法。
【0015】
[7]前記連結糸の少なくとも一部に100〜2000デシテックスのモノフィラメント糸を用いる前項6に記載の三次元構造体の製造方法。
【0016】
[8]前記連結糸として、スパン糸及びマルチフィラメント糸からなる群より選ばれる1種または2種の糸と、100〜2000デシテックスのモノフィラメント糸との組み合わせ糸を用いる前項7に記載の三次元構造体の製造方法。
【0017】
[9]前記上下2層の編地組織を構成する糸の少なくとも一部に、スパン糸及びマルチフィラメント糸からなる群より選ばれる1種または2種の糸を用いる前項7または8に記載の三次元構造体の製造方法
【発明の効果】
【0018】
[1]の発明によれば、連続孔を有する三次元立体構造の編物であるので、編物の開口部の大きさや、三次元立体構造の密度等を厳密に制御することができ、様々の立体形状の三次元構造体にすることがでる。さらに、該三次元構造体は、三次元流路が形成されるから、乱流が発生し流体との接触効率に優れたものとなる。また、該編物の構成繊維表面に、いね籾殻灰を付着させている三次元構造体であるので、いね籾殻灰の連続細孔の中に触媒、吸着剤等の機能材料を大量に担持する事が可能で、柔軟性に富んだ三次元構造体にすることがでる。また、機能材料として光触媒を担持した場合には、光を三次元立体構造の編物内深くにまで照射することができるので、光触媒活性の効果を発揮することができる。該編物の構成繊維表面にいね籾殻灰を付着させているので、光触媒と繊維やバインダー樹脂が直接接触することがないことから、繊維やバインダー樹脂表面が光触媒によって破壊されることを避けることができる。
【0019】
[2]の発明によれば、前記三次元立体構造の編物が、所定間隔を隔てて配置された上下2層の開口部を複数有する編地組織間に、連結糸が掛けわたすようにして編み付けられたものからなるので、上下2層の開口部を複数有する編地組織の間隔が正確に保たれ流路の確保がなされた三次元構造体とすることができる。
【0020】
[3]の発明によれば、前記連続孔を有する三次元立体構造の編物の構成繊維表面に付着したいね籾殻灰に触媒、吸着剤等の機能材料が大量に担持されるので、機能材料と流体との接触が効率的になされ、処理能力の大きな三次元構造体とすることができる。
【0021】
[4]の発明によれば、連続孔を有する三次元立体構造の編物をバインダー樹脂溶液に浸漬した後、いね籾殻灰を付着させ乾燥することによって、いね籾殻灰の表面をバインダー樹脂が覆うことなく、三次元立体構造の編物の繊維表面に付着させることができる三次元構造体の製造方法とすることができる。
【0022】
[5]の発明によれば、連続孔を有する三次元立体構造の編物をバインダー樹脂溶液に浸漬した後、触媒、吸着剤等の機能材料を担持したいね籾殻灰を付着させ乾燥することによって、触媒、吸着剤等の機能材料の表面をバインダー樹脂が覆うことなく、三次元立体構造の編物の繊維表面に付着させることができる三次元構造体の製造方法とすることができる。
【0023】
[6]の発明によれば、前記三次元立体構造の編物が、所定間隔を隔てて配置された上下2層の開口部を複数有する編地組織間に、連結糸が掛けわたすようにして編み付けられたものからなるので、上下2層の開口部を複数有する編地組織の間隔が正確に保たれ流路の確保がなされた三次元構造体の製造方法とすることができる。
【0024】
[7]の発明によれば、前記連結糸の少なくとも一部に100〜2000デシテックスのモノフィラメント糸を用いるので、上下2層の編地組織の間隔が正確に保たれ、力学的強度を十分に確保することができ、例えば円筒状のように変形加工するときに好適な三次元構造体の製造方法とすることができる。
【0025】
[8]の発明によれば、前記連結糸として、スパン糸及びマルチフィラメント糸からなる群より選ばれる1種または2種の糸と、100〜2000デシテックスのモノフィラメント糸との組み合わせ糸を用いるので、連結糸へのバインダー樹脂溶液の付着性が一段と向上し、触媒、吸着剤等の機能材料を安定した担持量とすることができる三次元構造体の製造方法とすることができる。
【0026】
[9]の発明によれば、前記上下2層の編地組織を構成する糸の少なくとも一部に、スパン糸及びマルチフィラメント糸からなる群より選ばれる1種または2種の糸を用いるので、編地組織へのバインダー樹脂溶液の付着性を一段と向上することができ、触媒、吸着剤等の機能材料を安定した担持量とすることができる三次元構造体の製造方法とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明は、図1に示すような連続孔を有する三次元立体構造の編物の構成繊維表面に、担持体としていね籾殻灰を付着させ、該いね籾殻灰の細孔内に、機能材を大量に担持することにより、従来にない処理能力があり、柔軟性に富んだフィルターを得るものである。
【0028】
精米脱穀等によって得られるいね籾殻は、農業廃棄物として毎年大量に排出されその一部は燃料として用いられてはいるものの、その殆どが有効利用されることなく、そのまま廃棄するか、或いは、焼却して体積を減容していね籾殻灰として廃棄しているのが実態である。本発明者らは、いね籾殻灰の殆どがケイ酸(SiO)で占められ、その表面は微細貫通孔で構成されていることに着目し、該微細貫通孔に、触媒、吸着剤等の機能材料を大量に担持することにより、従来にない処理能力が得られるものではないかと考えた。
【0029】
いね籾殻灰は、精米脱穀等によって得られるいね籾殻を燃焼して得られる灰であれば、どのようなものでも用いることができる。一般に燃焼温度が低いと灰の色は黒く、燃焼温度が500℃程度では灰は非昌性シリカで、燃焼温度が1000℃程度では結晶化が進み白色を呈するようになる。このようにいね籾殻灰の色調や結晶の種類は、燃焼の際の雰囲気や、燃焼温度、燃焼時間によって異なるが、これらのいずれのものも本発明は使用することができる。
【0030】
いね籾殻灰の粒径は0.5〜50μmがよい。0.5μmを下回る粒径では、触媒、吸着剤等の機能材料を大量にいね籾殻灰に担持することができないので好ましくない。50μmを上回る粒径では繊維表面から脱落しやすくなることから好ましくない。さらに好ましい粒径は、1〜10μmがよい。
【0031】
前記三次元立体構造の編物は、所定間隔を隔てて配置された上下2層の開口部を複数有する編地組織間に、連結糸が掛けわたすようにして編み付けられたものからなるのが好ましい。このような編物は、例えばダブルラッセル編機等によって製作できることから、厳密に構造制御され柔軟性のある三次元立体構造を得ることができる。
【0032】
例えば、図1で示すような構造を有する編物は、所定間隔を隔てて配置された開口部を複数有する上層体2と下層体3の間に、多数の連結糸4が配置されてその両端をそれぞれ上層体2、下層体3に接合されてなるものである。上層体2は多数の開口部2aを有し、かつ下層体3も多数の開口部3aを有するもので、これらが連結糸4間の多数の空隙部と連通状態となっていることによって、三次元構造体1全体として連続孔を有するものとなされているものである。すなわち、全体として三次元流路が形成されているものである。
【0033】
更に、編地組織の組織形態としては、複数の開口部を有する編地であれば特に限定されるものではなく、例えば亀甲編地、マーキゼット編地、メッシュ編地等が挙げられる。本実施形態においては亀甲編地形態が採用されている。
【0034】
前記上層の編地組織と下層の編地組織とで組織形態や開口部の大きさ等を同一としても良いが、流体との接触効率を一層向上させる観点から、上層の組織と下層の組織とで組織形態、開口部の大きさのうち、少なくともいずれか一方を異なるものとするのが望ましい。このような構成とすれば、得られる三次元構造体の内部において一段と乱流が発生しやすくなり、ひいては三次元構造体の連続孔を通過する流体との接触効率を一段と向上させることができるからである。
【0035】
一方、連結糸の上下組織間における配置形態としては、特に限定されるものではなく、例えば連結糸の配置間隔は適宜に設定してやれば良い。また、連結糸は、編物の断面視において、上下2層の編地組織に対して垂直方向に掛けわたす態様で配置されていても良いし、あるいは斜交配置、たすき掛け状配置、ジグザグ状配置、菱形形状配置、ハニカム状配置等いずれであっても良い。もちろん、これらを任意に組み合わせた配置構成であっても良い。また、連結糸の配列を、部分的に歯抜け状に欠落させたような構成とすることもできる。
【0036】
編地組織及び連結糸を構成する素材としては、特に限定されるものではなく、例えばポリエステル、ポリアミド、ポリアクリロニトリル等の合成繊維や、再生繊維、あるいはウール、絹などの天然繊維等が挙げられる。上記素材のいずれかを単独で用いても良いし、これらのいくつかを併用して用いても良いが、連結糸の少なくとも一部に100〜2000デシテックスのモノフィラメント糸を用いるのが好ましい。100〜2000デシテックスのモノフィラメント糸を用いることにより、上下2層の編地組織の間隔が正確に保たれ、力学的強度を十分に確保することができる。100デシテックスを下回るモノフィラメント糸では、力学的強度を十分に確保することができず、2000デシテックスを超える太さのモノフィラメント糸では編むことができない。好ましくは200〜800デシテックスのモノフィラメント糸を用いるのが好ましい。
【0037】
しかしながら、このモノフィラメント糸の表面は平滑であることから、前記三次元立体構造の編物をバインダー樹脂溶液に浸漬したときに、バインダー樹脂の付着強度が弱い場合があり、バインダー樹脂の付着強度を補うために、連結糸としては、スパン糸及びマルチフィラメント糸からなる群より選ばれる1種または2種の糸と、100〜2000デシテックスのモノフィラメント糸との組み合わせ糸を用いるか、あるいは、スパン糸及びマルチフィラメント糸からなる群より選ばれる1種または2種の糸と、100〜2000デシテックスのモノフィラメント糸とを組み合わせ糸形態とせずにそれぞれ別個に連結糸の構成糸として用いるのが好ましい。前者の組み合わせ糸の形態としては、特に限定されないが、撚糸、引き揃え糸、ラップヤーンが好適に用いられ、これらの中でも個々の構成糸の繊度が20デシテックス以下である撚糸、引き揃え糸、ラップヤーンがより一層好適である。また、後者の具体例としては、例えば併用する糸(スパン糸及び/又はマルチフィラメント糸)とモノフィラメント糸とを任意の間隔を開けて配置する構成等が挙げられる。上記前者、後者いずれの場合においても、モノフィラメント糸によって上下2層間の力学的強度を維持できると共に、スパン糸及び/又はマルチフィラメント糸の毛細管現象等によって連結糸へのバインダー樹脂溶液の付着性を一段と向上させることができる。
【0038】
また、上記三次元立体構造の編物をバインダー樹脂溶液に浸漬する場合、一般に製編した編物は表面に油分等が残存している場合が多く、このままの状態で浸漬処理を行うとバインダー樹脂の付着を十分になし得ないことがあるため、浸漬処理前に脱脂液に浸漬することにより油分等を除去しておくのが望ましい。このような脱脂液としては、油分等を溶解等して除去し得るものであれば特に限定されず、例えばケイ酸塩類、炭酸塩類、金属イオン封鎖剤(例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA)など)を主成分とする無燐型中温用アルカリ脱脂剤等が挙げられる。
【0039】
次に、連続孔を有する三次元立体構造の編物をバインダー樹脂溶液に浸漬した後、いね籾殻灰を付着させ乾燥する。いね籾殻灰を三次元立体構造の編物に付着するには、いね籾殻灰バス中にバインダー樹脂溶液の付いた三次元立体構造の編物を入れ、上下左右に動かしながらいね籾殻灰を付着させ乾燥すれば、三次元立体構造の編物の構成繊維表面に、いね籾殻灰を付着させることができる。
【0040】
さらに、触媒や吸着剤等機能材の水溶液に浸漬し、乾燥すれば、いね籾殻灰の連続細孔内に大量に機能材が担持され、優れた機能性を発揮する担持体を製造することができる。また、予め、いね籾殻灰の連続細孔内に触媒や吸着剤等の機能材を担持させておき、バインダー樹脂溶液の付いた三次元立体構造の編物に付着させ乾燥すれば、同様な優れた機能性を発揮する担持体を製造することができる。
【0041】
前記触媒としては、特に限定されないが、アルミナ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄等の金属酸化物や、フタロシアニン等を挙げられるが、特にこれら例示の化合物に限定されるものではない。
【0042】
前記吸着剤としては、特に限定されないが活性炭、多孔質シリカ、ゼオライトの多孔質無機物質や、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン等のポリアミン化合物や、アジピン酸ヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカンニ酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド等のヒドラジン誘導体等をあげることができる。
【0043】
次ぎに実施例によって、本発明の消臭フィルターを具体的に説明する。なお実施例、比較例における消臭試験は以下のように行った。
【0044】
50cm角のアクリルボックスの中央に、円筒形のフィルターケースにファンと円筒フィルターとをセットし、次の各種ガスの消臭試験をおこなった。各種ガスの消臭試験方法を次に示し、評価結果を表1に示す。
【0045】
(アンモニア消臭性能)
50cm角のアクリルボックス内において濃度が200ppmとなるようにアンモニアガスを注入し、30分経過後にアンモニアガスの残存濃度を測定し、この測定値よりアンモニアガスを除去した総量を算出し、これよりアンモニアガスの除去率(%)を算出した。
【0046】
(硫化水素消臭性能)
アンモニアガスに代えて硫化水素ガスを注入し、濃度が20ppmとなるように注入した以外は、上記アンモニア消臭性能測定と同様にして硫化水素の除去率(%)を算出した。
【0047】
(アセトアルデヒド消臭性能)
アンモニアガスに代えてアセトアルデヒドガスを注入し、濃度が80ppmとなるように注入し、4時間経過後にホルムアルデヒドガスの残存濃度を測定した以外は、上記アンモニア消臭性能測定と同様にしてアセトアルデヒドガスの除去率(%)を算出した。
【0048】
そして、除去率が95%以上であるものを「◎」、除去率が80%以上95%未満であるものを「○」、除去率が70%以上80%未満であるものを「△」、除去率が70%未満であるものを「×」と評価し表1のような結果を得た。
【実施例】
【0049】
<実施例1>
ダブルラッセル編機(9ゲージ/インチ)を用い、連結糸として、600デシテックスのポリエステルモノフィラメント糸と1300デシテックス96フィラメントのポリエステルフィラメント糸との撚加工糸を用い、編地組織の構成糸として1300デシテックス96フィラメントのポリエステルフィラメント糸の撚加工糸を用いて、図1に示すような構成の連続孔を有する三次元立体構造の編織物(厚さ12mm)を編成した。この編物の上下2層の編地組織は、共に亀甲編地組織とした。次に該編地から40cm×15cmの大きさに編地を裁断して試料とした。次にこの試料を5%アクリル樹脂エマルジョン溶液に浸漬し、続いていね籾殻灰(平均粒径10μm)のバス中にいれ、十分いね籾殻灰を付着させた後、オーブンで乾燥(130℃、10分間)固着した後、アジピン酸ヒドラジド300mgとジエチレントリアミン300mgを水300ccに添加して十分攪拌溶解させた溶液に浸漬し、再び乾燥して消臭フィルターを得ることができた。いね籾殻灰の試料への担持量は3gで、前記アジピン酸ヒドラジドとジエチレントリアミンの担持量は0.5gであった。次に、図2に示すようにこの試料を円筒状フィルターケースに入るように渦巻き状にまるめて円筒状フィルターとした。該円筒状フィルターの消臭試験結果を表1に記載する。
【0050】
<実施例2>
実施例1において、アジピン酸ヒドラジド300mgとジエチレントリアミン300mgを水300ccに添加し、十分攪拌して溶解させた後で、いね籾殻灰(平均粒径10μm)を10g入れ、十分含浸させてから乾燥して、いね籾殻灰の連続細孔内にアジピン酸ヒドラジドとジエチレントリアミンを6重量%担持させたいね籾殻灰を用意した後、連続孔を有する三次元立体構造の編物を5%アクリル樹脂エマルジョン溶液に浸漬し、直ぐに前記いね籾殻灰のバス中にいれ、十分にいね籾殻灰が付着したのを確認して、オーブンで乾燥(130℃、10分間)してフィルターとした以外は実施例1と同様にして行なった。いね籾殻灰の三次元立体構造の編物への担持量は9gで、アジピン酸ヒドラジドとジエチレントリアミンの三次元立体構造の編物への担持量は0.5gであった。
【0051】
<実施例3>
実施例1において、連続孔を有する三次元立体構造の編物試料にいね籾殻灰を付着させた後、再度5%アクリル樹脂エマルジョン溶液に浸漬し、椰子殻活性炭のバス中にいれ、十分椰子殻活性炭を付着させた後、オーブンで乾燥(130℃、10分間)し、椰子殻活性炭を0.5g付着させた以外は実施例1と同様にして行なった。
【0052】
<実施例4>
実施例3において、椰子殻活性炭にかえて、酸化チタン(触媒)としてフィルターを作成し、50cm角のアクリルボックス内で1mWの紫外線照射するようにセットした以外は、実施例3と同様にして行なった。酸化チタン(触媒)の担持量は0.5gであった。
【0053】
<実施例5>
実施例3において、椰子殻活性炭にかえて、椰子殻活性炭と酸化チタン(触媒)が等量混合したバス中にいれ、フィルターを作成した以外は、実施例3と同様にして行なった。椰子殻活性炭の担持量は0.25gで酸化チタン(触媒)の担持量は0.25gであった。
【0054】
<実施例6>
実施例1において、連結糸として、600デシテックスのポリエステルモノフィラメント糸と1300デシテックス96フィラメントのポリエステルフィラメント糸との撚加工糸にかえて、600デシテックスのポリエステルモノフィラメント糸だけにした以外は、実施例1と同様にして行なった。いね籾殻灰の三次元立体構造の編物試料への担持量は2gで、前記アジピン酸ヒドラジドとジエチレントリアミンの三次元立体構造の編物への担持量は0.3gであった。
【0055】
<参考例1>
実施例2において、連続孔を有する三次元立体構造の編物にかえて、パルプ製のハニカムフィルターにし(厚さ12mm)、アジピン酸ヒドラジドとジエチレントリアミンを6重量%担持させたいね籾殻灰を前記ハニカムフィルターに担持させ、円筒形のフィルターケースに実施例2とほぼ同じ体積の前記ハニカムフィルターを収納した以外は、実施例2と同様にして行なった。いね籾殻灰のハニカムフィルターへの担持量は6gで、前記アジピン酸ヒドラジドとジエチレントリアミンのハニカムフィルターへの担持量は10gで、消臭性能は十分であったが、折り曲げることができないのでフィルターケースに合わせて切断しなければならなかった。
【0056】
<比較例1>
実施例1において、連続孔を有する三次元立体構造の編物を5%アクリル樹脂エマルジョン溶液に浸漬した後、直ぐにアジピン酸ヒドラジドとジエチレントリアミンの粉体を直接担持させた以外は、実施例1と同様にして行なった。アジピン酸ヒドラジドとジエチレントリアミンの試料への担持量は、10gであった。
【0057】
<比較例2>
実施例1において、連続孔を有する三次元立体構造の編物試料を5%アクリル樹脂エマルジョン溶液に浸漬した後、直ぐに酸化チタン(触媒)の粉体を直接担持させ、50cm角のアクリルボックス内で1mWの紫外線照射するようにセットした以外は、実施例1と同様にして行なった。酸化チタン(触媒)の試料への担持量は、12gであった。
【0058】
【表1】

【0059】
表1からわかるように、本発明の実施例1〜6については、空気の流通性もよく、短時間で各種悪臭ガスを消臭することが出来、満足のいくものであったが、いね籾殻灰を付着させない比較例1、2では、消臭性能は満足できるものではかった。また、比較例2では、酸化チタンの光触媒活性によってアクリル樹脂が脆化し、酸化チタンの脱落がみられた。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の技術は、連続孔を有する三次元立体構造の編物の三次元流路といね籾殻灰の連続微細孔を利用して、各種ガスの浄化を行う技術で、大量の機能材を担持できることから浄化能力に優れたものとなり、フィルターケースの形に合わせて切断したり曲げたりできることから、室内空間に限らず、自動車や鉄道等の車内や、湿気の多い冷蔵庫等の様々な形態のフィルターとして広く使われる。また、連続孔を有する三次元立体構造の編物は、その組織の内部にまで光が通ることから、光触媒等の担持体としても利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】連続孔を有する三次元立体構造の編物を示す要部斜視図である。
【図2】渦巻き状にまるめた円筒状フィルター
【符号の説明】
【0062】
1 連続孔を有する三次元立体構造の編物
2 上層体
2a 上層体開口部
3 下層体
3a 下層体開口部
4 連結糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続孔を有する三次元立体構造の編物の構成繊維表面に、いね籾殻灰を付着させたことを特徴とする三次元構造体。
【請求項2】
前記三次元立体構造の編物が、所定間隔を隔てて配置された上下2層の開口部を複数有する編地組織間に、連結糸が掛けわたすようにして編み付けられたものからなる請求項1に記載の三次元構造体。
【請求項3】
前記連続孔を有する三次元立体構造の編物の構成繊維表面に付着したいね籾殻灰に触媒、吸着剤等の機能材料が担持されてなる請求項1又は2に記載の三次元構造体。
【請求項4】
連続孔を有する三次元立体構造の編物をバインダー樹脂溶液に浸漬した後、いね籾殻灰を付着させ乾燥することを特徴とする三次元構造体の製造方法。
【請求項5】
連続孔を有する三次元立体構造の編物をバインダー樹脂溶液に浸漬した後、触媒、吸着剤等の機能材料を担持したいね籾殻灰を付着させ乾燥することを特徴とする三次元構造体の製造方法。
【請求項6】
前記三次元立体構造の編物が、所定間隔を隔てて配置された上下2層の開口部を複数有する編地組織間に、連結糸が掛けわたすようにして編み付けられたものからなる請求項4または5に記載の三次元構造体の製造方法。
【請求項7】
前記連結糸の少なくとも一部に100〜2000デシテックスのモノフィラメント糸を用いる請求項6に記載の三次元構造体の製造方法。
【請求項8】
前記連結糸として、スパン糸及びマルチフィラメント糸からなる群より選ばれる1種または2種の糸と、100〜2000デシテックスのモノフィラメント糸との組み合わせ糸を用いる請求項7に記載の三次元構造体の製造方法。
【請求項9】
前記上下2層の編地組織を構成する糸の少なくとも一部に、スパン糸及びマルチフィラメント糸からなる群より選ばれる1種または2種の糸を用いる請求項7または8に記載の三次元構造体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−208475(P2008−208475A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−44338(P2007−44338)
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【出願人】(390014487)住江織物株式会社 (294)
【Fターム(参考)】