説明

おからペプチド、アミノ酸含有澱粉とその製造方法。

【課題】大豆のおから又は脱脂大豆を原料として、嗜好を優先させた食味を有し、更に消化吸収の良いペプチド、アミノ酸を含有した澱粉を得ることを課題とする。
【解決手段】大豆のおから又は、脱脂大豆と澱粉を混合させた。水懸濁液を発酵させ、タンパク質をペプチド、及び、アミノ酸に変換し、共存させた澱粉糖鎖にペプチド及びアミノ酸を取り込ませて、澱粉ごとペプチド、及びアミノ酸を回収し、精製を行い、消化吸収の良い食品を得るためのおからペプチド、アミノ酸含有澱粉を生産できる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明が属する技術分野]
本発明は、大豆タンパク質を酵素分解して得た、大豆ペプチド及び大豆アミノ酸を澱粉のアミロース、アミロペクチンの澱粉糖鎖に取り込ませる操作を酵母及び酸素の相互作用により、発酵懸濁液で行わせることを特徴とし、更に、発酵終了後の含有澱粉を多くの水で晒し洗らいを行い、水の飽和性(水蒸気圧)及び空洞現象による媒質を変化させることにより発酵期間中に懸濁液に増殖し、大豆タンパク質をペプチド及びアミノ酸に酵素分解することに貢献し、その役割を果たし終わった酵母及び酵母の発育に伴う、生理作用による老廃物を含有澱粉から分離し官能的に好ましい状態に精製を行い、多くの食品産業分野で大豆ペプチド、アミノ酸含有澱粉を原料として消化吸収の良い機能的な食品を生産することができる、おからペプチド、アミノ酸含有澱粉とその製造方法に関する。
【0002】
おから又は、大豆粕に澱粉を混合させた水懸濁液を作成し、この懸濁液で発酵性微生物(酵母)を発育させ、温度35℃〜40℃に調整し、pH4.0〜pH5.0の範囲に調整を行い、酵母の発育を促し、おからに含有されるタンパク質を酸素分解し、大豆ペプチド及び大豆アミノ酸に変換し、共存させた澱粉のアミロース、アミロペクチンの糖粉糖鎖に取り込ませる操作を酵母及び酸素の相互作用による発酵現象により行い、大豆ペプチド、アミノ酸含有澱粉とする。
【0003】
発酵終了後の含有澱粉を10℃周辺に冷却し酵母を胞子形成させると共に酵素を劣化させて含有澱粉を安定さす。
【0004】
安定させた含有澱粉固形部換算で10重量部の薄い水懸濁液を作成し、この懸濁液に空洞現象(キャビテーション)を発生させ、水懸濁液の媒質に物理化学的な変化をもたらせ、大豆タンパク質を大豆ペプチド、アミノ酸に変換することに貢献し、その役割を果たし終わった酵母及び酵母の発育に伴う、生理作用による老廃物を含有澱粉から分離し、苦味や渋味又は酸敗的な発酵臭のない、無臭で官能的に好まし状態に精製を行う。
[産業上の利用分野]
【0005】
1年間に70万t排出される(農林水産省)と言われている、大豆のおから及び澱粉を原料とすることにより、嗜好を優先させた食味の良いペプチド、アミノ酸含有食品を原料コストを低限して生産できる。
【0006】
[従来の技術及び、発明が解決しようとする課題]
大豆は栄養成分の豊富さから、多くの食品の生産に利用され人々の健康に貢献している。
【0007】
しかしながら、豆腐の生産に伴い、副産される大豆おから。このおからは、1年間に約70万tが排出されると言われている。この大豆おからについては、長年にわたり多くの研究者により、その合理的な利用方法が検討されてきたが、より良い方法が得られないまま現在に至っている。その結果、おからの多くが利用されずに廃棄処分を余儀なくされているのが現状である。本方法では、おからに残留するタンパク質を合理的に利用し食品原料とすることが課題である。
【0008】
又、全粒大豆を原料とした、大豆油の生産に伴い副産される大豆粕(脱脂大豆)、この大豆粕も古くは肥料や飼料などに多く利用され、食品原料としての利用は少量であったが、最近タンパク質やペプチド、アミノ酸などに変換され、保健食品や健康食品などの分野で利用され貢献している。
しかしながら、大豆ペプチドには、苦味や渋味又は酸敗臭を低限し、官能的に好ましいように改善することを課題とする。
【0009】
(発明が課題を解決する手段)
本発明者は、アミノ酸結合体であるペプチドが単体のアミノ酸よりも消化吸収性に優れている知見を得て、1年間に70万tも排出されるおから。このおからに残留する大豆タンパク質を大豆ペプチド及び大豆アミノ酸に酵素分解する研究を行う中でおからの懸濁液に微生物を発育させ、タンパク質をペプチド、アミノ酸に変換したとしても、このペプチドを懸濁液からどのようにして回収するかの問題に直面した。
【0010】
尚、鋭意研究を重ねた結果、おからに澱粉を混合した水懸濁液を作成し、この懸濁液に発酵性微生物(酵母)を発育させ、その発酵現象により、おからに残留する大豆タンパク質を酵素分解して大豆ペプチド、アミノ酸に変換し共存させた澱粉の糖鎖にペプチド、アミノ酸を取り込ませて澱粉ごとペプチド、アミノ酸を回収する方法を綴だすことに成功した。
【0011】
澱粉は水に不溶であり、沈殿性も良く、pHにも安定であり、多くの水を加えて発酵終了後のペプチド、アミノ酸含有澱粉を晒し洗うことができ発酵期間中に生じた多くの老廃物を澱粉から分離精製することができ、ペプチドが有する苦味や渋味又は酸敗的な発酵臭を澱粉から分離し官能的に好ましい状態に戻すことができる。
【0012】
前記水で晒し洗う操作を行う中で、懸濁液に増殖し、大豆タンパク質をペプチド、アミノ酸に変換することに貢献し、その役割りを果たし終わった発酵菌(酵母)を水懸濁液に空洞現象(キャビテーション)を発生させ、その水懸濁液の媒質に物理化学的な変化を与えて、前記利用済み酵母を澱粉から分離することができより食味の良いペプチド、アミノ酸含有澱粉とすることができる。
【0013】
空洞現象(キャビテーション)
超音波により発生する空洞現象を始め、高速で回転するスクリューなどにより生じる空洞現象又はウオタージェット噴射などによる空洞現象が細菌やウイルスを死滅させることが古くから知られている。本方法でもこの空洞化現象を利用して利用済み発酵菌をペプチド、アミノ酸含有澱粉が分離し、発酵微生物が食品に与える影響を大幅に低限することができる。
【0014】
本方法に於ける、発酵現象が澱粉に与える影響に付いては、おからに混合した澱粉も懸濁液中で酵素の影響を受ける結果と成るが、これらは、澱粉の基質に対し酵素が複合体を形成しアミロース糖鎖を短鎖に消化切りする程度であり、澱粉の物性を大きく変化させるものではない。澱粉は発酵により、アミロース糖鎖が短鎖に消化切りされ、α1−6結合のアミロペクチンと良く似た特性に改善され、水分90%の周辺にある加熱食品の咀嚼性を良好にする効果がある。
【0015】
又、澱粉は、発酵現象に伴う。有害作用に対しても十分対応することができる。
タンパク質をペプチド、及び、アミノ酸に酵素分解するには、多くの発酵微生物が必要であり、この微生物の生理作用による阻害物質(老廃物)を、水の飽和性(水蒸気圧)により、晒し洗うことが出来る。この多くの水で晒し洗いを行うことにより、苦味や渋味又は、酸敗発酵臭を発酵澱粉から分離することができ発酵現象による有害作用を低限することができる。
【0016】
ペプチド、アミノ酸は電解質であり、イオンに解離し溶媒される性質を持っているが、本方法の晒し洗いに於いては、ペプチド、アミノ酸は安定している。これは水のイオン活量が非常に希薄であり、澱粉糖鎖に取り込ませた、多くのペプチド、アミノ酸を電解して澱粉から溶出できるものではない。ペプチド、アミノ酸を安定させたまま阻害物質を分離して精製を行うことができ、発酵現象前の官能的に好ましい状態に戻すことが出来る。
【0017】
又、酵母は比較的に酸性(pH5.0)の領域で良く発育することが知られている。本方法で利用する自然酵母は、栄養素が豊富であればpH3.5〜pH4.5の周辺んでも温度30℃〜40℃で良く発育できる。
これらのことから、食中毒などの原因と成る有害菌を発育させることなく、安全な状態で発酵現象を完了させることができる。これは、わが国で古くから生産されている味噌や醤油のもろみ発酵に有害菌が発育しないことと同様である。
【0018】
有害菌を発育させずに発酵現象が得られることから、廃棄処分を余儀なくされる、おからを利用することができる。
【0019】
本発明を実施例により説明する。なを本発明は、この実施例により限定されるものではない。
【0020】
実施例
請求項(4)に記載した、地上系澱粉群の中から、粳米澱粉、餅米澱粉、小麦澱粉、トウモロコシ澱粉、ジャガイモ澱粉、の5種を選び、それぞれの澱粉と大豆おから固形部換算でおから50:澱粉50の比率で、混合し、水分約55%に調整を行い、酵母を添加して澱粉水懸濁液を作成し、クエン酸を添加してpH5.0に調整し温度37℃に設定して発酵現象を得た。発酵を60日間継続し酵母及び酵素の発酵相互作用により、大豆タンパク質をペプチド、及び、アミノ酸に変換し、懸濁液に共存させた各種澱粉の糖鎖にペプチド、及びアミノ酸を取り込ませてた、後に懸濁液の温度を10℃に冷却し発酵現象を制止させた。
【0021】
制止後、30日間放置して酵母を胞子形成させ酵素も劣化させ発酵懸濁液を安定させた。
【0022】
安定させた含有澱粉10重量%の薄い水懸濁液を新たに作成し、この懸濁液に空洞現象(キャビテーション)を発生させ、ペプチド、アミノ酸含有澱粉の媒質に物理学化的な変化を与えて大豆タンパク質をペプチド及びアミノ酸に変換することに貢献しその役割を果たし終わった、利用済み酵母を含有澱粉から分離した。
【0023】
前記、空洞現象は澱粉水懸濁液を1合の水送ポンプで送り、3台のポンプにより、くみ上げを行い送る能力とくみ上げ能力との違いにより、水懸濁液が不足する、この不足により、ポンプスクリュー面に空気が取り込まれて、激しく混合する際にキャビテーションが発生し、スクリュー面を通過する澱粉水懸濁液の媒質に物理化学的な変化を与えることが出来、発酵菌を澱粉から分離することができる。
【0024】
その後、懸濁液を篩いに掛け大豆の皮滓を分離した後に懸濁液を静止させ澱粉を沈殿させ、土部水を排水し、新らたに水を加えて懸濁液とする、この操作を繰り返し行い発酵期間中に生じた酵母の発育に伴う老廃物(阻害物質)を水の飽和性(水蒸気圧)によりペプチド、アミノ酸含有澱粉から分離精製を行い、苦味、渋味、発酵臭のない官能的に好ましい状態とすることができると共に嗜好と機能性を合わせもつ食品原料をコストを低限して生産できる。
【0025】
完成した、おからペプチド、アミノ酸含有澱粉を使用して水分量の多い食品を試作した。本澱粉固形換算で8重量%、寒天粉0.04重量%の水懸濁液を作成し、乾熱により沸騰加熱を行い、ゼリー状のペプチド、アミノ酸食品を試作した。食味は非常に良いものであった。ペプチド豆腐又はペプチド葛かき、ペプチドゼリーなどの水分量が90%周辺にある多水分食品も生産できる
【0026】
又乾熱が熱乾焼食品、クッキー、ビスケット、せんべい、ケーキ、パンなどに合理的に利用できる。
【0027】
以上発明を説明したように、大豆おから又は大豆粕(脱脂大豆)を原料とし、各種の澱粉を使用して、大豆ペプチド及びアミノ酸を含有した澱粉を得ることができ、製果や製パン、製麺、冷凍食品、保健補助食品又は健康食品などの幅広い分野で原料コストを低限して嗜好を優先させた機能性のある食品を生産することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質を酸素分解して得たペプチド、及び、アミノ酸を、アミロース、アミロペクチンの澱粉糖鎖に取り込ませて、澱粉ごとペプチド、及び、アミノ酸を発酵懸濁液から回収することを特徴とした、おからペプチド、アミノ酸含有澱粉とその製造方法
【請求項2】
大豆のおから、又は、大豆粕(脱脂大豆)又は、前記両者の混合物に澱粉を混合した。水懸濁液を作成し、この懸濁液に発酵微生物(酵母など)を発育させ、その発酵現象により水懸濁液に存在するタンパク質を酵素分解してペプチド及びアミノ酸に変換し、共存させた澱粉のアミロース、アミロペクチンの澱粉糖鎖にペプチド、及び、アミノ酸を取り込ませて発酵を終了させ、その後、回収した含有澱粉を精製し、食品原料とすることを特徴とする。おからペプチド、アミノ酸含有澱粉と、その製造方法。
【請求項3】
発酵終了後の含有澱粉に多くの水を加えて晒し洗らいを行うと共に晒し水懸濁液に空洞現象(キャビテーション)を発成させ、水懸濁液の媒質に物理化学的な変化を与え、利用済み発酵菌(酵母)及び、阻害物質(老廃物)を含有澱粉から分離精製を行うことを特徴とする請求項(1)又は(2)記載のおからペプチド、アミノ酸含有澱粉とその製造方法。
【請求項4】
タンパク質含有物質、及び、澱粉が米、小麦、トウモロコシ、ジャガイモ、サツマイモ、などの地上系穀物群及び地上系澱粉群の中から選ばれた少なくとも1種以上のものである請求項(1)又は(2)記載のおからペプチド、アミノ酸含有澱粉とその製造方法。

【公開番号】特開2006−141380(P2006−141380A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−365021(P2004−365021)
【出願日】平成16年11月19日(2004.11.19)
【出願人】(597128325)
【Fターム(参考)】