説明

かしめ性、犠牲陽極特性、及び、鋳造性に優れたコネクター用アルミニウム・ダイカスト合金、及び、該合金よりなるコネクターブロックの製造方法

【課題】 かしめ性、犠牲陽性特性及び鋳造性に優れたコネクター用アルミニウム・ダイカスト合金と、該合金よりなるコネクターブロックの製造方法を提供する。
【解決手段】 Zn:2〜10%、Si:2〜7%を必須とし、Fe:0.5〜1.5%及びMn:0.1〜1.5%の一種又は二種、及び、残部Al及び不可避不純物からなるコネクター用アルミニウム・ダイカスト合金をダイカスト加工し、次いで、熱処理してZnを拡散させ、その後、配管をかしめ固定してコネクターブロックを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、かしめ性、犠牲陽極特性及び鋳造性に優れたコネクター用アルミニウム・ダイカスト合金、及び、該合金よりなるコネクターと該コネクターを配管にかしめ固定してなる配管ジョイントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のAl合金配管部材継手、即ち、コネクターに要求される特性の一つとして、相手部材をかしめるためのかしめ性、即ち、延性を必要とする特性がある。また、相手部材を腐食させてはならないので、犠牲陽極特性が必要となる。したがって、犠性陽極の観点からAl合金にZnを含有させることにより、腐食電位を卑とする合金が用いられるようになっている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の熱交換器においては、フィン材として、Mn0.05〜2.5%、Si0.1〜1.5%、Fe0.2〜1.5%、Zr0.05〜0.25%、Zn6〜15%を含有し、残部Alと不可避不純物からなるアルミニウム合金が用いられ、ろう材として、Si3〜15%、Zn6〜15%を含有し、残部Alと不可避不純物からなる合金が用いられている。
【0004】
上記フィン材成分の合金は、通常用いられるAlダイカスト合金、例えば、ADC12合金(Al−10.8Si−2.5Cu)に較べ、Si含有量が少なく、凝固開始温度が高いので、溶解時に溶湯保持温度を高くしなければならない。さらに、上記フィン材成分の合金では、鋳造性が悪いという問題がある。
【0005】
そして、上記ろう材成分の合金では、鋳造した際に焼き付くとか、Siが高い範囲で伸びが低下するために、継手として用いた場合、かしめると割れるという問題がある。
【0006】
また、特許文献2には、Al−2〜7%Zn系を基本とし、好ましくは、0.03〜0.15%のTi、Sn、Inのいずれか一種又は二種以上を含むアルミ系合金材料をダイカスト鋳造し、鋳造後、熱処理した、犠牲陽極性に優れたアルミダイカスト製配管用継手が開示されている。
【0007】
上記アルミ系合金材料には、Siを含まず、凝固開始温度が高いので、溶解時に溶湯保持温度を高くしなければならないという問題がある。また、上記材料は、溶湯の流動性、及び、鋳造性が悪く、これらの点を改善することが望まれている。
【0008】
Alダイカスト鋳造用合金としては、鋳造性の観点より、一般に、Al−Si系合金、又は、Al−Si−Cu系合金が用いられる。ADC1(Al−12Si)、ADC10(Al−8.5Si−3Cu)、ADC12(Al−10.8Si−2.5Cu)合金が、代表的な合金である。
【0009】
しかし、これらの合金をコネクター材として用いた場合には、鋳造性は良いが、犠性陽極特性、及び/又は、かしめ性の点で使用できないという問題がある。
【0010】
特許文献3には、Si:7〜11重量%、Fe:0.3〜1.0重量%、Mn:0.2〜0.8重量%、Sr:0.01〜0.1重量%を含み、Mn/Feの重量比が0.5〜1.0の範囲にある亜共晶Al−Siダイカスト合金が開示され、また、特許文献4には、Cu:1.5〜4.0質量%、Si:7.5〜12.0質量%を含み、鋳造直後のα相の格子定数が4.0485〜4.050ÅのAl−Si−Cu系合金が開示されているが、いずれの合金も、鋳造性は良いが、犠性陽極特性、及び/又は、かしめ性の点で充分ではない。
【0011】
したがって、配管部材継手用ダイカスト合金として、鋳造性が良く、かつ、犠牲陽極特性とかしめ性に優れたAl−Si系合金が求められている。
【0012】
【特許文献1】特開平10−81930号公報
【特許文献2】特開平8−90210号公報
【特許文献3】特開平9−272940号公報
【特許文献4】特開2004−256880号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
配管部材継手用ダイカスト合金として、次の特性が求められる。
【0014】
(a)相手材を腐食させない。即ち、犠牲陽極特性を有する。
【0015】
(b)配管部材として、かしめ時に割れない。即ち、延性に優れている。伸び値として10%以上、望ましくは12%以上を必要とする。
【0016】
(c)鋳造性が良好である。即ち、合金の凝固開始ができるだけ低く、流動性が良い。 そして、コネクターの製造方法としては、かしめるための適切な形状を備え、犠牲陽極特性を付与するための配管ジョイントを製造する適切な工程が求められる。
【0017】
本発明は、これらの要求を解決する、かしめ性、犠牲陽極特性、及び、鋳造性に優れたコネクター用アルミニウム・ダイカスト合金、及び、前記合金よりなるコネクターの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記目的を達成するため、本発明のコネクター用Alダイカスト合金は、下記(1)〜(3)の合金組成からなる。なお、以下、%は質量%を意味する。
【0019】
(1)Zn:2〜10%、Si:2〜7%、Fe:0.5〜1.5%、及び、残部Al及び不可避不純物。
【0020】
(2)Zn:2〜10%、Si:2〜7%、Mn:0.1〜1.5%、及び、残部Al及び不可避不純物。
【0021】
(3)Zn:2〜10%、Si:2〜7%、Fe:0.5〜1.5%、Mn:0.1〜1.5%、及び、残部Al及び不可避不純物。
【0022】
本発明においては、アルミニウム・ダイカスト合金にZnを2〜10%添加し、電位を、通常のAl合金に比べ卑にしている。本発明において、2〜7%のSiは、凝固開始温度を下げ、割れ、内部欠陥、流動性等の鋳造性を改善する。
【0023】
また、本発明において、0.5〜1.5%のFeは、耐焼き付き性を改善し、0.1〜1.5%のMnは、耐焼き付き性と延性を改善し、MnとFeが共存すると、Al−Fe−Mn板状化合物を形成し、Al−Fe針状化合物の延性への悪影響を緩和する。
【0024】
本発明は、上記含有量の元素が奏する作用効果が相乗して得られる、かしめ性、犠牲陽極特性、及び、鋳造性に優れたコネクター用アルミニウム・ダイカスト合金である。
【0025】
なお、各成分元素の含有量の限定理由については後述する。
【0026】
前記目的を達成するため、本発明のコネクターブロックの製造方法は、下記(4-1)〜(4-2)の工程からなる。
【0027】
(4-1)前記(1)、(2)、又は、(3)の合金成分で、コネクターブロックをダイカスト加工する。
【0028】
(4-2)次いで、熱処理してZnを拡散させる。
【0029】
(4-3)その後、コネクターブロックに配管をかしめ固定する。
【0030】
前記(1)、(2)、又は、(3)の合金は、かしめ性に優れているので、コネクターブロックに配管を、かしめ固定することができる。
【0031】
本発明のかしめ固定においては、
(5)前記コネクターブロックから突出した部位を変形させて、前記配管を前記コネクターブロック上に締め付けてもよく、また、
(6)前記コネクターブロックから突出した腕で、前記配管を抱え込んで固定してもよい。
【0032】
配管を抱き込む腕を用いると、配管を、より確実にかしめ固定できるので好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
まず、本発明のコネクター用アルミニウム・ダイカスト合金(本発明合金)において、各成分元素を所要の含有量範囲に限定する技術的理由について説明する。
【0034】
本発明合金においては、前述したように、アルミニウム・ダイカスト合金にZnを2〜10%添加し、通常のAl合金に比べ、電位を卑にしている。図1(「アルミニウム技術便覧」カロス出版より引用)に、電極電位に及ぼすZnの効果を示す。Zn2%添加(図1では、wt%で表示)までは、腐食電位が、添加量とともに直線的に卑となっていく。
【0035】
したがって、犠牲陽極能を最大限に得るためには、Znが2%以上必要である。一方、Znを10%以上添加しても、犠牲陽極能に変化はなく、経済的なメリットはない。
【0036】
Siは、凝固開始温度を下げ、割れ、内部欠陥、流動性等の鋳造性を改善する。Siが2%未満では、これらの改善効果が少ない。一方、Siが7%超では、伸びが低くなり、配管継手として、かしめた時に割れる恐れがある。
【0037】
図2(「軽合金鋳物ダイカスト生産技術」財団法人素形材センターより引用)に、Al−Si合金の状態図と鋳造性の関係を示す。また、図3に、Al−4.7%Zn−x%Si−0.8%Fe−0.8%Mn系合金の7〜10mm厚薄肉試験片とJIS舟形試験片を用い、Si量(x%)を変えて調査したSi量と機械的性質(引張強さ、耐力、伸び)との関係を示す。
【0038】
さらに、図5に、Al−6.3%Si−4.7%Zn−0.8%Fe−x%Mn系合金(F材)の上記薄肉試験片及びJIS舟形試験片を用い、Mn量(x%)を変え、ミクロ組織サイズと機械的性質(引張強さ、耐力、伸び)との関係を調査した結果を示す。
【0039】
図3から、Si量が増すと、伸びが低下することが解る。また、図5から、小型ダイカスト製品を想定した3〜6mm肉厚材のミクロ組織サイズでは、6.3%SiのF材で、伸び11〜12%以上を確保できること、即ち、伸び10%以上を確保するためには、Siを7%以下にすればよいことが解る。したがって、Si量を2〜7%に管理する必要がある。
【0040】
Feは、耐焼き付き性を改善する元素である。Feが0.5%未満では、耐焼き付き性の改善効果が認められない。一方、1.5%を超えるFeは延性を害し、かしめた時に割れが起きる恐れがあり、かしめ材として適切でない。
【0041】
Mnは、耐焼き付き性を改善し、また、延性を改善する元素である。MnとFeが共存すると、Feとの化合物を形成し、Al−Feの針状化合物がAl−Fe−Mnの板状化合物へと変わり、Al−Feの針状化合物の延性への悪影響を緩和する。
【0042】
Mnが0.1%未満では、その添加効果が少なく、一方、Mn1.5%超では、Mn化合物の晶出が多くなり、延性へ悪影響を及ぼし、かしめた時に割れが発生し、使用に耐えない。図4に、Mn量の強度、伸びへの影響を示し、図5に、ミクロ組織サイズにてまとめ直したものを示す。
【0043】
なお、図4に示す結果は、Al−6.3%Si−4.7%Zn−0.8%−x%Mn系合金(F材)の試験片を、450℃×30分熱処理して得たものである。
【0044】
ダイカスト材に近い細かい組織の3〜6mmの素材肉厚のT.P.(テストピース)では、かしめ材として最も望ましい伸び値12%を得るには、Mn量を0.1〜0.7%に管理する必要がある。
【0045】
なお、本発明合金は、不可避不純物、さらに、本発明の目的を阻害しない含有量範囲で、他の不純物を含有することが許容されるものである。例えば、Cu、Mg、Ni、Sn、In、Cr、Ti、Zr、V、B、Pb等の合金元素を、本発明の目的を阻害しない含有量範囲で含有するものは、本発明合金の範囲に含まれることは言うまでもない。
【0046】
次に、本発明のコネクターブロックの製造方法(本発明製造方法)について説明する。
【0047】
まず、本発明合金で、コネクターブロックをダイカスト加工する。次いで、熱処理を施して、Znを拡散させる。
【0048】
本発明製造方法においては、コネクターブロックを均質化処理(熱処理)して、配管とかしめ、配管ジョイントとして用いる。本発明製造方法において均質化処理を行うのは、次の理由からである。
【0049】
アルミニウム・ダイカスト合金は、鋳造時に、凝固進行によるミクロ偏析が生じる。犠牲陽極特性に効果をもたらすZnについてみると、粒内の凝固初期部においてはZn濃度が平均濃度より低く、凝固終了部の粒界部においてはZn濃度が高くなる。したがって、Zn濃度が2%の合金では、凝固開始部におけるZn濃度が2%より低くなり、十分な犠牲陽極効果を発揮することができない。
【0050】
このような場合には、アルミニウム・ダイカスト合金を、鋳造後、高温に所要時間保持して、Znを均質化する必要がある。
【0051】
均質化処理は、高温程、処理時間が短くてすむが、アルミニウム・ダイカスト合金鋳物の場合、フクレ等の問題が生じてくる。500℃で30分以上の処理では、フクレの発生頻度が高くなり、製品として使用できない場合が生じる。一方、300℃以下では処理時間が5時間以上となり、実用的でない。
【0052】
したがって、均質化処理の条件は、400〜500℃で2〜30分間、又は、300〜400℃で0.3〜5時間が好ましい。
【0053】
Znを4%以上含有する本発明合金の場合、上記均質化処理(熱処理)を施さなくても、Znの最低濃度2%を確保できるので、均質化処理を省略することも可能であるが、均質化処理により、本発明合金の伸びを改善し、かしめ材としての特性を更に高めることができるので、本発明製造方法においても熱処理を施すことが望ましい。
【0054】
ここで、図6に、Al−6.3%Si−4.7%Zn−0.8%−0.5%Mn系合金(F材)の試験片を450℃で加熱した時の、加熱時間と強度、伸びとの関係を示す。図から、ダイカスト材と同じ冷却速度で冷却した3〜6mmの素材肉厚のT.P.(テストピース)では、450℃×30分の加熱で、良好な伸びを得ていることが解る。
【0055】
自動車用配管部材をコネクターでかしめ固定する際、コネクターが配管を固定するための爪、又は、配管を抱き込む腕を持っていると、より確実に強固にかしめることができるので好ましい。
【0056】
図7に、本発明合金製コネクターの一態様を示す。そして、図8に、上記コネクターを配管部材に固定した一製品の態様を示し、図9に、図8に示す製品の断面を示す。
【0057】
コネクターブロック10は、板状の基部11を有する。基部11には、固定手段としてのボルトを受け入れる貫通孔12が形成されている。また、基部11には、配管20を受け入れる受入部としての貫通孔13が形成されている。そして、貫通孔13から、その径方向に向けて、基部11上に沿って、配管20が敷設される溝部14が形成されている。
【0058】
溝部14に隣接して、基部11から突出した部位としての腕部15a、15bが形成されている。この形態では、溝部14の両側に、それぞれ、腕部15a、15bが設けられている。コネクターブロック10は、ダイカスト加工され、該加工の後、熱処理される。この熱処理は、Znを拡散させることをひとつの目的として実施される。
【0059】
上記熱処理の後、コネクターブロック10に配管をかしめ固定する。かしめ工程では、コネクターブロック10に配管20を装着した後、腕部15a、15bを、両側から塑性変形させ、配管20を溝部14内に保持固定する。この形態では、配管20を抱え込むように、腕15a、15bを変形させる。
【0060】
これらの腕部15a、15bは、爪部と呼ぶ形態で設けることもできる。基部11から突出する部位を爪状に形成した場合には、当該爪状部位を塑性変形させることによって、配管20の一部、例えば、フランジ部を摘んだり、又は、配管20を収容する溝部14の開口幅を狭めたりすることで、配管20をコネクターブロック10上に固定することが可能である。
【0061】
図示の形態では、配管10は、直管部21、曲げ部22、及び、端部23を有する。端部23は、コネクターブロック10の貫通孔13に貫通して配置され、当該端部23を座屈させるようにして変形させることで、コネクターブロック10に係止されている。端部23には、溝が形成され、シール部材としてのOリング24が装着されている。
【0062】
この形態では、配管20の端部23が貫通孔13内に保持され、さらに、基部11に沿って延びる直管部21が、腕部15a、15bによって、溝部14内に保持される。この結果、コネクターブロック10と配管20とを、強固に連結することができる。
【0063】
犠牲陽極特性に優れた本発明合金は、鋳造性に優れているので、かしめ用の爪又は腕を備える部材(コネクターブロック)を容易にダイカストすることができ、さらに、本発明合金製部材は、かしめ性に優れているので、配管部材により、確実に強固に、かしめ固定することができるものである。
【実施例】
【0064】
以下、本発明の実施の形態を表1に基づいて説明する。なお、表1に示す条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
【0065】
(実施例)
表1に示す合金組成の合金を溶製し、ダイカスト鋳造機にてコネクターに鋳込んだ。コネクターには、かしめを行い易いように腕を設けた。さらに、一部のコネクターについては、表1に示す熱処理条件で熱処理(均質化処理)を施し、配管にかしめて、配管ジョイントを作製した。
【0066】
上記コネクター試料において、E.P.M.A.分析で調べたZnの均質化程度(Zn濃度)、及び、かしめ性、フクレ、及び、鋳造性について評価した評価結果を、表1に併せて示す。
【0067】
【表1】

【0068】
Znは、図1に示すように、腐食電位を卑とし犠牲陽極効果を与える。十分な犠牲陽極効果を得るためには、Zn濃度の最小値が、少なくとも2%以上を満足することが必要である。
【0069】
Zn量が、4%又は5%であると、熱処理(均質化処理)をしなくても、Zn濃度の最小値(ミクロ偏析を考慮)が、2%以上を満足する。一方、Zn量が3%であると、鋳造時のミクロ偏析のために、Znの最小濃度は1.6%となる。
【0070】
それ故、高温(好ましくは、300℃以上)で加熱して、Zn濃度を均質化することが望ましい。450℃×30分、又は、350℃×3時間の熱処理の結果、Zn濃度の最低値が、2.5〜2.6%に上がっている。
【0071】
Siの添加により、鋳造性は改善されるが、伸びは低下する。Si量が0%では、鋳造性の点で量産が難しいが、Siの3%添加で、この問題はほぼ解消される。一方、Si量が、8%、11%になると、鋳造性は非常によくなるが、伸びが低下し、かしめた時に割れが発生し易くなる。
【0072】
Feは、耐焼き付き性を改善するために積極的に添加するが、Fe量が2%と多い場合には、割れが発生する。Mnは、Al−Fe針状化合物の生成を抑え、板状のAl−Fe−Mnの生成を促がすことで、延性への悪影響を少なくする。また、Mn量が2%に達すると、延性が低下し、かしめた時に割れが発生し易くなる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明合金製の継手部材は、犠牲陽極特性に優れ、かしめた時に割れることなく、相手配管をかしめ固定することができるので、例えば、自動車のAl合金配管の継手部材として有用なものである。したがって、本発明は、自動車産業をはじめとする工業分野において利用価値の高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】電極電位に及ぼすZnの効果を示す図である。
【図2】Al−Si合金の状態図と鋳造性の関係を示す図である。
【図3】Si量と機械的性質の関係を示す図である。
【図4】Mn量と強度、伸びの関係を示す図である。
【図5】ミクロ組織サイズと機械的性質(強度、伸び)との関係を示す図である。
【図6】加熱時間と強度、伸びの関係を示す図である。
【図7】腕を持つコネクターの一態様を示す図である。
【図8】腕を持つコネクターを配管部材に固定した一製品の態様を示す図である。
【図9】図8の製品の断面を示す図である。
【符号の説明】
【0075】
10 コネクターブロック
11 基部
12、13 貫通孔
14 溝部
15a、15b 腕部
20 配管
21 直管部
22 曲げ部
23 端部
24 Oリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で、Zn:2〜10%、Si:2〜7%、Fe:0.5〜1.5%、及び、残部Al及び不可避不純物からなることを特徴とする、かしめ性、犠牲陽極特性、及び、鋳造性に優れたコネクター用アルミニウム・ダイカスト合金。
【請求項2】
質量%で、Zn:2〜10%、Si:2〜7%、Mn:0.1〜1.5%、及び、残部Al及び不可避不純物からなることを特徴とする、かしめ性、犠牲陽極特性、及び、鋳造性に優れたコネクター用アルミニウム・ダイカスト合金。
【請求項3】
質量%で、Zn:2〜10%、Si:2〜7%、Fe:0.5〜1.5%、Mn:0.1〜1.5%、及び、残部Al及び不可避不純物からなることを特徴とする、かしめ性、犠牲陽極特性、及び、鋳造性に優れたコネクター用アルミニウム・ダイカスト合金。
【請求項4】
請求項1、2、又は、3に記載の合金成分で、コネクターブロック(10)をダイカスト加工し、次いで、熱処理してZnを拡散させ、その後、前記コネクターブロック(10)に配管(20)をかしめ固定することを特徴とするコネクターブロックの製造方法。
【請求項5】
前記かしめ固定を、前記コネクターブロック(10)から突出した部位を変形させて、前記配管(20)を前記コネクターブロック(10)上に締め付けて行うことを特徴とする請求項4に記載のコネクターブロックの製造方法。
【請求項6】
前記かしめ固定を、コネクターブロック(10)から突出した腕を変形させて、前記配管(20)を抱え込んで行うことを特徴とする請求項4に記載のコネクターブロックの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−92113(P2007−92113A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−282323(P2005−282323)
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(398048501)寿金属工業株式会社 (6)