がん腫の遺伝子診断のための細胞回収及び単離方法並びにキット
【課題】収集対象物質に特異的に結合する物質を用いて当該対象物質との結合体を形成させてこれを回収し、その後、結合体から収集対象物質の解離を行う方法において、結合体における強固な結合を効率よく解離する方法を提供することである。
【解決手段】物質の収集方法であって、第1の支持体の表面に第1の物質が固定された第1の担体と、収集対象物質である第2の物質とを結合させて結合体を生成する第1のステップと、前記第1の支持体に基づいて前記結合体を収集する第2のステップと、前記第1のステップより後に、前記第1の物質と特異的に結合する領域を少なくとも一部に含むプローブを表面に保持する第2の担体を供給し、前記第1の担体と第2の担体の複合体を形成させ、前記結合体を前記第1の担体と前記第2の物質とに解離させる第3のステップと、前記複合体を除去し、前記第2の物質を得る第4のステップを有する前記方法、ならびに該方法を実施するためのキット。
【解決手段】物質の収集方法であって、第1の支持体の表面に第1の物質が固定された第1の担体と、収集対象物質である第2の物質とを結合させて結合体を生成する第1のステップと、前記第1の支持体に基づいて前記結合体を収集する第2のステップと、前記第1のステップより後に、前記第1の物質と特異的に結合する領域を少なくとも一部に含むプローブを表面に保持する第2の担体を供給し、前記第1の担体と第2の担体の複合体を形成させ、前記結合体を前記第1の担体と前記第2の物質とに解離させる第3のステップと、前記複合体を除去し、前記第2の物質を得る第4のステップを有する前記方法、ならびに該方法を実施するためのキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目的物質を収集するための方法及びキット、より具体的には、がん腫の遺伝子診断の前処理に適用可能な、細胞を回収・単離するための方法及びキットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、遺伝子診断分野、特にがんの確定診断のための遺伝子診断分野において、夾雑物を多く含む被検試料や細胞集団(例えば血液、尿、便)から特定の細胞を回収する方法に注目が集まっている。
【0003】
がんによる死亡率は、日本では1981年以来首位となっており、2004年には総死亡数の31.1%であった。上皮細胞の悪性腫瘍であるがん腫は、がんの大半を占め胃、肺、大腸、肝臓、乳房など多くの組織で生じる。その中でも大腸がんの患者数は、近年急激に増加し、今後もさらに増加していくことが予想される。一方、大腸がんは他のがんとは異なり、早期発見であれば手術により完治することが知られている。
【0004】
大腸がんの早期発見のために様々な検査法が考案されてきた。現在、大腸がん検診の代表的な方法に便潜血法と内視鏡検査がある。一般向けスクリーニングとして便潜血法が行われ、陽性であった場合確定診断のために内視鏡検査が行われる。便潜血法では、糞便に含まれるヘモグロビンの存在を調べることで、腸内の出血の有無を確認し、間接的に大腸がんの発生の予測を行うが、この検査方法は、偽陽性のみならず偽陰性を多く含んでいる。内視鏡検査は、大腸の中を直接内視鏡で調べるため、大腸がんの発生に対して高い感度と特異性を有する。しかし、侵襲性が高く出血や穿孔の恐れがあること、検査に苦痛を伴う場合があることから無症状の一般人に対する大腸がん検査には向いていない。
【0005】
そこで上記の課題を解決するために、近年、一般向け大腸がんスクリーニング法として糞便からがん細胞を回収し、その細胞からDNAを抽出し遺伝子検査を行う方法に注目が集まっている。特開2005-46062(以下第1の従来例)では、糞便からの細胞回収方法として、「上皮系細胞及び/又は上皮系癌細胞の表面抗原に対する抗体が固定化」された「固体担体」を用いて、糞便から「上皮系細胞及び/又は上皮系癌細胞」の回収が試みられている。
【0006】
抗体結合ビーズで回収された細胞を、細胞回収後に、抗体結合ビーズと細胞に解離させる方法として、特表平9-508534では、「不均質な細胞懸濁物から抗体を介したビーズまたは他の固体支持体への結合によりポジティブに選択された細胞を放出するための、非酵素的な方法」が提供されている(以下第2の従来例)。これによると、「標的細胞上に存在する表面抗原に結合する抗体」により、標的細胞を細胞懸濁液から分離する工程の後、「前記抗体と結合して細胞表面抗原から抗体を放出しうるペプチド」、即ち前記抗体のエピトープ配列を含むペプチドを添加することで、回収後の細胞から抗体を解離している。この第2の従来例では、がん患者由来の骨髄または血液の懸濁物内から、CD34陽性幹細胞を選択的に回収し、回収した「CD34陽性細胞組成物は、患者の免疫系再構成のために使用」する旨の記載がある。
【0007】
上記第1の従来例には以下の問題が考えられる。回収後の細胞には、「上皮系細胞及び/又は上皮系癌細胞の表面抗原に対する抗体」、即ち抗EpCAM抗体(クローン名:BerEP4)が、結合したままである。EpCAM分子は、細胞の接着やシグナル伝達に関与する細胞表面抗原であり、この抗体が細胞表面上に結合したままだと、生細胞の割合が減少することが知られている(図5)。少量の試料から、細胞を回収し、その細胞から遺伝子診断に用いる核酸を効率よく回収するためには、回収後の細胞の活性は維持されているのが望ましい。しかし、第1の従来例では抗体が細胞表面に残存しているので、生細胞の割合が減少し、核酸が分解されるため、核酸抽出の収量が低下し、PCRのテンプレートとして利用可能な核酸を十分量確保するのが困難となり、高精度な遺伝子検査が行えないという問題がある。
【0008】
上記第2の従来例では、抗体結合磁気ビーズで細胞を回収した後、前記抗体のエピトープ配列を含むペプチドを添加することで、抗体結合磁気ビーズと細胞の解離を行っているが、この技術を第1の従来例と組み合わせて、がん腫の遺伝子診断に適用しようとした場合、次のような問題があげられる。第2の従来例では、CD34陽性細胞の回収例のみを示しており、その他の抗原に対する効果は不明である。例えば第1の従来例で示したEpCAM抗原に対する抗体を用いてがん細胞を回収し、その抗体のエピトープ配列を含むペプチドを添加して抗体結合磁気ビーズと細胞の解離を行う場合、購入可能な抗EpCAM抗体の中でエピトープ配列が開示されている抗体が存在しないので、添加すべきペプチドが不明であり、そのままでは適用できない。また、EpCAM抗原はがん化に伴い発現量が増加することが知られているが、高発現している抗原を細胞回収のターゲットにした場合、その抗原と磁気ビーズ表面上に存在する抗体の相互作用は高頻度に存在すると考えられるので、それらの相互作用がペプチドの添加によって全て解消されないと、抗体と細胞は解離できない。
【0009】
【特許文献1】特開2005-46062
【特許文献2】特表平9-508534
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、収集対象物質に結合する物質を用いて当該対象物質との結合体を形成させてこれを回収し、その後、結合体から収集対象物質の解離を行う方法において、結合体における強固な結合を効率よく解離する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、結合体から収集対象物質の解離を行う工程において、収集対象物質に結合する物質と特異的に結合する領域を少なくとも一部に含むプローブを表面に保持する担体を用いることにより、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)物質の収集方法であって、
第1の支持体の表面に第1の物質が固定された第1の担体と、収集対象物質である第2の物質とを結合させて結合体を生成する第1のステップと、
前記第1の支持体に基づいて前記結合体を収集する第2のステップと、
前記第1のステップより後に、前記第1の物質と特異的に結合する領域を少なくとも一部に含むプローブを表面に保持する第2の担体を供給し、前記第1の担体と第2の担体の複合体を形成させ、前記結合体から前記第2の物質を解離させる第3のステップと
前記複合体を除去し、前記第2の物質を得る第4のステップ
を有する前記方法。
(2)前記第1の物質が抗体であることを特徴とする(1)に記載の収集方法。
(3)前記第2の物質は前記抗体が認識する抗原を含む収集対象物質であることを特徴とする請求項(2)に記載の収集方法。
(4)前記第2の物質が細胞であることを特徴とする(3)に記載の収集方法。
(5)前記プローブが前記抗体と特異的に結合する領域を少なくとも一部に含むペプチドであることを特徴とする(2)に記載の収集方法。
(6)前記ペプチドが配列番号1のアミノ酸配列を含むことを特徴とする(5)に記載の収集方法。
(7)物質を収集するためのキットであって、
収集対象物質に特異的に結合する第1の物質と、
前記第1の物質を表面に固定する第1の支持体と、
前記第1の物質と特異的に結合する領域を少なくとも一部に含むペプチドと、
前記ペプチドを表面に保持する第2の支持体
を有する前記キット。
(8)前記第1の物質が抗体であることを特徴とする(7)に記載のキット。
(9)前記第2の支持体がビーズであることを特徴とする(7)に記載のキット。
(10)前記ペプチドが前記抗体のエピトープ配列を含むことを特徴とする(8)に記載のキット。
(11)前記抗体が抗EpCAM抗体であり、前記ペプチドが前記抗EpCAM抗体のエピトープ配列を含むことを特徴とする(10)に記載のキット。
(12)前記エピトープ配列が配列番号1のアミノ酸配列であることを特徴とする(11)に記載のキット。
(13)前記収集対象物質が細胞であることを特徴とする(7)に記載のキット。
(14)前記細胞がヒト上皮細胞であることを特徴とする(13)に記載のキット。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、収集対象物質に特異的に結合する物質を用いて当該対象物質との結合体を形成させてこれを回収し、その後、結合体から収集対象物質の解離を行う方法において、結合体における強固な結合を効率よく解離させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の構成要素について図1〜3を用いて説明する。
図1は本発明が処理対象とする第2の物質1、つまり収集対象物質である。収集対象物質としては、例えば、細胞、抗体、抗原、蛋白質、ペプチド、糖、核酸(DNAおよびRNAを含む)などの生体分子があげられる。本発明においては、好ましくは細胞を収集対象物質、すなわち標的とする。細胞としては、哺乳動物(例えば、ヒト、モルモット、ラット、マウス、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ウシ、サルなど)のあらゆる細胞(例えば、脾細胞、神経細胞、グリア細胞、膵臓β細胞、骨髄細胞、メサンギウム細胞、ランゲルハンス細胞、表皮細胞、上皮細胞、内皮細胞、繊維芽細胞、繊維細胞、筋細胞、脂肪細胞、免疫細胞(例、マクロファージ、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、肥満細胞、好中球、好塩基球、好酸球、単球)、巨核球、滑膜細胞、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、乳腺細胞、肝細胞もしくは間質細胞、またはこれら細胞の前駆細胞など)や血球系の細胞(例、白血球、赤血球)があげられる。本発明は、がん細胞の収集において有利であり、例えば、上記細胞のがん細胞、ならびに脳、胃、膵臓、腎臓、肝臓、骨髄、副腎、皮膚、筋肉、肺、消化管(例、大腸、小腸)、前立腺、精巣、卵巣などの組織におけるがんに由来するがん細胞の収集に好適である。これら組織由来の細胞を、一度培養することによって得られる細胞集団でもよい。より具体的には、細胞表面にEpCAM分子を発現している細胞、例えば、HT29細胞があげられる。EpCAM分子のアミノ酸配列は公知であり、公開されたデータベース(GenBank)において、NP_002345(配列番号2)として登録されている。
【0015】
図2に、本発明の構成要素である第1の担体4を示す。第1の担体4は、第1の物質2と第1の支持体3とから構成される。第1の物質は、収集対象物質である第2の物質と特異的に結合する物質であれば特に制限されず、当業者であれば適宜選択できる。第2の物質としては、例えば、抗体、抗原、エピトープ、細胞、蛋白質、ペプチド、糖、核酸(DNAおよびRNAを含む)などの生体分子があげられる。本発明においては、好ましくは第1の物質として抗体を用いる。収集対象物質として細胞を標的とする場合は、標的細胞の表面に発現する抗原と特異的に結合する抗体を第1の物質として用いることが好ましい。がん細胞を標的とする場合は、がん細胞の表面に特異的に発現する抗原と結合する抗体を第1の物質として用いることが好ましい。細胞表面にEpCAM分子を発現している細胞を収集対象とする場合は、ハイブリドーマhrk29が産生するモノクローナル抗体hrk29を用いることが好ましい。ハイブリドーマhrk29 (Hybridoma hrk29)は、受託番号FERM P-21604として、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に寄託されている。
【0016】
第1の支持体3としては、第1の物質2を固定できるものであれば特に制限されないが、例えば、樹脂、ガラス素材、鉄、酸化鉄等を使用できる。これらはいかなる形状でもよく、材質の種類やその後の工程等によって適宜選択可能である。例えば、板状、ビーズ状、薄膜状、糸状、コイル状等があげられる。鉄または酸化鉄を素材としたビーズであれば、磁気分離が可能となり、その後の回収工程を簡便に実施できる。第1の支持体3のサイズは、いかなるサイズでもよく、形状と同様に材質の種類やその後の工程等によって決定される。例えば、磁気ビーズであれば、1.0〜4.5μm程度であれば、その後の磁気分離の操作に適する。
【0017】
第1の物質2を第1の支持体3に結合する方法としては、抗体を第1の支持体3に結合する場合、例えば、二次抗体法を用いることができる。その他の結合法も採用可能である。例えば、第1の支持体3に直接結合する方法としては、第1の支持体3を臭化シアン処理等によって活性化し、そこにアミノ基またはヒドロキシル基を有する第1の物質2(例えば、抗体)を結合することで行う。間接的に結合する方法として、例えばプロテインA、プロテインG等が表面に付加された第1の支持体3を用いて、これらを介して第1の物質2(例えば、抗体)を結合する方法も使用できる。ストレプトアビジンが表面に付加された第1の支持体3を用いることにより、第1の物質2をビオチン化しておくことで、同様に間接的に結合する方法も採用可能である。
【0018】
第1の担体の作製において使用される第1の支持体3の量は、1〜6×106個の範囲が好適である。第1の物質2として抗体を用いる場合、抗体の量は0.03〜0.8μgの範囲で使用可能だが、0.3μg以上が望ましい。一定量の第1の支持体3をPBS等の緩衝液で一度、または複数回洗浄した後、一定量のPBS等で懸濁し、抗体を添加する。抗体と磁気ビーズの反応時間は、30分〜1時間程度が望ましい。一定時間反応した後、再びPBS等の緩衝液で一度、または複数回洗浄することで、第1の支持体3に抗体が固定化された第1の担体4を得ることができる。
【0019】
図3は、第2の担体7の模式図である。第2の担体7は、第1の物質と特異的に結合する領域を少なくとも一部に含むプローブ5と、第2の支持体6とから構成される。
【0020】
第2の支持体6としては、プローブ5を固定できるものであれば特に制限されないが、例えば、樹脂、ガラス素材、鉄、酸化鉄等を使用できる。これらはいかなる形状でもよく、材質の種類やその後の工程等によって適宜選択可能である。例えば、板状、ビーズ状、薄膜状、糸状、コイル状等があげられる。鉄または酸化鉄を素材としたビーズであれば、磁気分離が可能となり、その後の回収工程を簡便に実施できる。第2の支持体6のサイズは、いかなるサイズでもよく、形状と同様に材質の種類やその後の工程等によって決定される。例えば、磁気ビーズであれば、好ましくは1.0〜4.5μm程度、より好ましくは1.0μm程度である。
【0021】
第1の物質として抗体を用いる場合、該抗体が認識するエピトープ配列を含むペプチドをプローブ5として用いることが好ましい。抗体として、ハイブリドーマhrk29が産生するモノクローナル抗体hrk29を用いる場合、好ましくはエピトープ配列として配列番号1のアミノ酸配列(ICSKLA)を含むペプチドを用いる。配列番号1のアミノ酸配列は、EpCAM分子のアミノ酸配列(配列番号2)の58〜63番目のアミノ酸に相当する。ペプチドの残基数は特に制限されないが、好ましくは11残基以上15残基以下である。より好ましくは配列番号2のアミノ酸配列の部分配列であって、配列番号2の58〜63番目のアミノ酸を含む連続した11〜15残基の配列からなるペプチドをプローブ5として用いる。
【0022】
ペプチドとしては、化学的に合成したペプチドも、遺伝子工学的に作製したペプチドも使用可能である。N末端またはC末端のどちらかにビオチン標識を有していれば、その後の第2の支持体6への結合が簡便となる。ペプチドの第2の支持体6への結合方法として、例えば、ストレプトアビジンが表面に付加された第2の支持体6では、ペプチドをビオチン化しておくことで、間接的に結合することが可能である。使用するペプチドの量は40〜400pmolの範囲が好適である。一定量の第2の支持体6をPBS等の緩衝液で一度、または複数回洗浄した後、一定量のPBS等で懸濁し、ペプチドを添加する。ペプチドと第2の支持体6の反応時間は、30分〜1時間程度が望ましい。一定時間反応させた後、再びPBS等の緩衝液で一度、または複数回洗浄することで、第2の担体7を得ることができる。
【0023】
本発明の方法の概略について図4を用いて説明する。図4は本発明の方法における操作を示すフロー図である。まず、本発明の構成要素について図4を用いて説明する。結合体8は、第2の物質1(例えば、標的細胞)と第1の担体4が結合したものであり、磁石9は磁気分離のために用いられる。精製結合体10は不純物を除いた後に得られる結合体8であり、複合体11は第1の担体4と第2の担体7が複合したものである。
【0024】
本発明の方法は、ステップ1、ステップ2、ステップ3、ステップ4の4個のステップを含む。ステップ1は結合体形成のステップであり、具体的には、第2の物質1(例えば、標的細胞)と、第1の担体4とを混合し、結合体8を形成するステップである。ステップ2は結合体収集のステップであり、具体的には結合体8を、磁石9を用いて磁気分離を行い、結合体8以外の不純物を除去し、精製結合体10を得るステップである。ステップ3は複合体形成と結合体解離のステップであり、具体的には精製結合体10と、第2の担体7とを混合し、複合体11を形成させることにより、精製結合体10から収集対象物質である第2の物質1(例えば、標的細胞)を解離するステップである。ステップ4は複合体除去のステップであり、具体的には複合体11を磁気分離により除去して、第2の物質1(例えば、標的細胞)を回収するステップである。
【0025】
第2の物質1として細胞を収集対象とし、第1の物質2として抗体を用い、プローブ5として抗体が認識するエピトープ配列を含むペプチドを用いる場合の実施形態について、以下に説明する。
【0026】
ステップ1において使用する細胞数は特に限定されないが、1×104〜1×106個の範囲で好適に使用可能である。ステップ1の標的細胞1と第1の担体4の反応時間は特に限定されないが、30分〜1時間程度が望ましい。ステップ2として標的細胞1と接触させた第1の担体4を、磁石9を用いて回収し、PBS等の細胞に悪影響を与えない緩衝液を用いて、一回または複数回洗浄する。その後、ステップ3として第2の担体7を加え、一定時間撹拌することで、標的細胞1から第1の担体4を解離する。特に反応時間は制限されないが、30分〜1時間程度が望ましい。第1の担体4と、第2の担体7の割合は、特に限定されないが、第1の支持体3の表面に存在する抗体2のモル数以上のペプチド5を添加できる量の第2の担体7が添加されることが望ましい。第1の担体4と標的細胞1を解離後に、ステップ4として磁石9を用いて、複合体11を除去することで、第1の担体4から解離した標的細胞1を得ることが可能となる。
【0027】
なお、本発明の主たる観点は、夾雑物を多く含む試料中から、収集対象物質1を回収し、回収後の収集対象物質1から回収に用いた第1の担体4を解離することにあるためその後の操作については詳述しないが、例えば従来例1に記載の方法を適用することにより、核酸抽出、PCR、遺伝子変異解析などを経て、がんの遺伝子診断が実施可能である。
【0028】
本発明により、細胞表面に高発現する抗原を細胞回収のターゲットとした場合に、抗体と細胞の間の強固な結合を効率よく解離することができる。本発明では、第1の従来例と相違し、細胞回収および単離後において、細胞表面に抗体が存在しないため、細胞活性を維持することが可能となる。また、第2の従来例と異なり、エピトープ配列を含むペプチドを表面に保持する担体を用いることにより、細胞から抗体を効率的に解離することが可能となる。これらにより、活性の高い細胞を高純度に回収することが可能となり、また回収細胞から十分量、かつ高品質な核酸を抽出することができ、がん腫を対象とした遺伝子検査において、高い精度を提供することが可能となる。
【0029】
また、新たに開発した、エピトープ配列を明らかにした抗体を利用することにより、前記抗体のエピトープ配列を含むペプチドを用いて、抗EpCAM抗体を抗原であるEpCAM分子から解離することが可能になる。さらに、該エピトープ配列を含むペプチドを表面に保持する担体を用いることにより、EpCAMを高発現する上皮細胞から抗体やそれと結合した磁気ビーズを効率的に解離することが可能になる。
【実施例】
【0030】
以下に、本発明の具体的な実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
抗体2の作製
ハイブリドーマの作製は常法に従って行った。遺伝子組み換えによって作製したEpCAM分子をアジュバンド(TiterMax)と混合後、フットパッド法によりBalb/Cマウスに免疫した。免疫を3回繰り返した後、リンパ節を取り出し、リンパ球とミエローマ細胞(P3U1)を融合させ、ハイブリドーマを作製した。ハイブリドーマのスクリーニングは、HT29細胞表面への結合量を指標に行った。1×106個のHT29細胞に対し100μLのハイブリドーマ培養上清を添加し、4 ℃、30分間静置した。PBSで洗浄後、ヤギ由来の抗マウスIg抗体-PE標識を2 μg添加し再び4 ℃、30分間静置した。再びPBSで洗浄後、500 μLのPBSで懸濁し、フローサイトメーターを用いて蛍光強度の測定を行った。スクリーニングで陽性を示したハイブリドーマは限界希釈法によりクローニングを2回行った。クローニング後、再びフローサイトメーターでスクリーニングを行い、陽性のクローンを選抜した。このようにして得られたハイブリドーマ並びにそれが産生する抗体のクローン名をhrk29とした。ハイブリドーマhrk29 (Hybridoma hrk29)は、受託番号FERM P-21604として、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に寄託されている。モノクローナル抗体hrk29のイムノグロブリンのサブクラスを知るため、Mouse Monoclonal Antibody Isotyping Test Kit (Serotec社)を使用しサブクラスを決定した。その結果、モノクローナル抗体hrk29のアイソタイプはIgG1と判明した。
【0031】
抗体2のエピトープ配列決定
モノクローナル抗体hrk29の認識するエピトープ配列を解析するために、断片化したEpCAM分子(EpCAMのアミノ酸残基24〜62、63〜139、24〜139/EC1、EC2、EC3、図6)を大腸菌で発現させ、モノクローナル抗体hrk29が認識するドメインをウェスタンブロットにより検討した。図9に示すようにEC1(分子量およそ35kDa)とEC3(同43kDa)に対し反応性が認められた。即ち、この抗体は、EpCAMの24〜62番のアミノ酸を含む領域を認識することが確認された。
【0032】
EC1のアミノ酸配列に従い、図10、11に示すペプチド(ペプチドA〜E;それぞれ配列番号3〜7)を合成しELISA法によりモノクローナル抗体hrk29が認識するエピトープ配列をICSKLA(配列番号1)と決定した(図12)。
【0033】
第1の担体4の作製
第1の担体4を以下に示すように作製した。第1の支持体3として、Dynabeads(登録商標)M-450 Sheep anti-mouse IgG、抗体2として前記で作製した抗EpCAM抗体:hrk29を用いた。第1の支持体3を一度PBSで洗浄した後、100μLのPBSで懸濁し、1×106個の第1の支持体3に対して0.03μgの抗体2を添加して室温で30分間撹拌した。その後PBSを用いて2回洗浄を行った後、PBS100μLで懸濁し、第1の担体4を得た。
【0034】
第2の担体7の作製
ペプチド5を表面に有する第2の担体7の作製法を以下に示す。第2の支持体6としてDynabeads(登録商標)MyOne Streptavidin T1を、ペプチド5として本実施例で作製した抗体2(hrk29)が認識するエピトープ配列ICSKLAを含むビオチン化ペプチド(アミノ酸配列ICSKLAANKMKAE;配列番号8)を用いた。第2の支持体6を一度PBSで洗浄した後、100μLのPBSで懸濁し、7×108個のビーズに対して400pmolのペプチド5を添加して室温で30分間撹拌し、エピトープ配列を含むペプチド5を表面に保持する第2の担体7を得た。
【0035】
細胞回収及び解離
抗EpCAM抗体を表面に結合させた磁気ビーズによる細胞回収及び解離方法を以下に示す。標的細胞1であるHT29細胞1×106個を500μLのPBSに分散した。ステップ1としてこの出発材料に第1の担体4を添加し、室温で30分撹拌した。ステップ2として、磁気分離後、0.5% BSA、2mM EDTAを含むPBSで二回洗浄後、精製複合体10を得た。ステップ3として第2の担体7を添加し、室温で30分撹拌した。その後、ステップ4として磁気分離を行い、標的細胞1を回収するとともに、複合体11並びに未反応の精製結合体10を除去した。回収した標的細胞1の数と、精製結合体10に含まれる標的細胞1の数から、抗体2から解離した標的細胞1の割合を算出した。
【0036】
〔実施例2〕
実施例1と同様の方法であるが、第2の担体7に使用する第2の支持体6として、Qdot(登録商標)565ITKTM Streptavidin Conjugateを使用した。
【0037】
実施例1と実施例2の結果を、図13を用いて説明する。図13は、解離した標的細胞1の割合、つまり細胞解離率を示すグラフである。なお、第2の従来例を変形した方法、即ちステップ3において、第2の担体7ではなくペプチド5のみを添加した結果も比較検討した。第2の担体7を使用した結果、第2の従来例の変形例、即ちペプチド5のみを添加する方法と比べて、解離した標的細胞1の割合が増加し、本発明の有効性が示された。つまり、ペプチドのみを添加する方法と異なり、第2の担体7を添加することにより、標的細胞1と抗体2の解離をより効率的に行うことができ、活性の高い細胞を高純度に回収することが可能となった。これにより、回収した細胞から十分量、かつ高品質な核酸を抽出することが可能となり、がん腫を対象とした遺伝子検査において、高い精度を提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の構成要素のうち第2の物質(標的細胞)1を示す図である。
【図2】本発明の構成要素のうち第1の担体4を示す図である。
【図3】本発明の構成要素のうち第2の担体7を示す図である。
【図4】本発明の方法の一実施形態を示す模式図である。
【図5】抗体が生細胞率に及ぼす影響を示すグラフである。
【図6】モノクローナル抗体hrk29の抗原のドメインを決定するために作製したEC1、EC2、EC3を示す模式図である。
【図7】EC1、EC2、EC3の発現のために使用したベクターを示す図である。
【図8】図7のベクターによって発現した組換えタンパク質を示す模式図である。
【図9】モノクローナルhrk29が認識する抗原のドメインを示す図である。
【図10】エピトープ配列を決定するために使用したペプチドを示す図である。
【図11】実施例で使用したペプチドA〜Eの配列を示す図である。
【図12】モノクローナル抗体hrk29と、ペプチドA〜Eの反応性を示す図である。
【図13】従来の実施例の変形例と、本発明の方法を用いた場合の細胞解離率を比較した図である。
【符号の説明】
【0039】
1…第2の物質(標的細胞)
2…第1の物質(抗体)
3…第1の支持体
4…第1の担体
5…プローブ(ペプチド)
6…第2の支持体
7…第2の担体
8…結合体
9…磁石
10…精製結合体
11…複合体
12…グルタチオンS-トランスフェラーゼ
13…6×Hisタグ
14…EC1〜3
【技術分野】
【0001】
本発明は、目的物質を収集するための方法及びキット、より具体的には、がん腫の遺伝子診断の前処理に適用可能な、細胞を回収・単離するための方法及びキットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、遺伝子診断分野、特にがんの確定診断のための遺伝子診断分野において、夾雑物を多く含む被検試料や細胞集団(例えば血液、尿、便)から特定の細胞を回収する方法に注目が集まっている。
【0003】
がんによる死亡率は、日本では1981年以来首位となっており、2004年には総死亡数の31.1%であった。上皮細胞の悪性腫瘍であるがん腫は、がんの大半を占め胃、肺、大腸、肝臓、乳房など多くの組織で生じる。その中でも大腸がんの患者数は、近年急激に増加し、今後もさらに増加していくことが予想される。一方、大腸がんは他のがんとは異なり、早期発見であれば手術により完治することが知られている。
【0004】
大腸がんの早期発見のために様々な検査法が考案されてきた。現在、大腸がん検診の代表的な方法に便潜血法と内視鏡検査がある。一般向けスクリーニングとして便潜血法が行われ、陽性であった場合確定診断のために内視鏡検査が行われる。便潜血法では、糞便に含まれるヘモグロビンの存在を調べることで、腸内の出血の有無を確認し、間接的に大腸がんの発生の予測を行うが、この検査方法は、偽陽性のみならず偽陰性を多く含んでいる。内視鏡検査は、大腸の中を直接内視鏡で調べるため、大腸がんの発生に対して高い感度と特異性を有する。しかし、侵襲性が高く出血や穿孔の恐れがあること、検査に苦痛を伴う場合があることから無症状の一般人に対する大腸がん検査には向いていない。
【0005】
そこで上記の課題を解決するために、近年、一般向け大腸がんスクリーニング法として糞便からがん細胞を回収し、その細胞からDNAを抽出し遺伝子検査を行う方法に注目が集まっている。特開2005-46062(以下第1の従来例)では、糞便からの細胞回収方法として、「上皮系細胞及び/又は上皮系癌細胞の表面抗原に対する抗体が固定化」された「固体担体」を用いて、糞便から「上皮系細胞及び/又は上皮系癌細胞」の回収が試みられている。
【0006】
抗体結合ビーズで回収された細胞を、細胞回収後に、抗体結合ビーズと細胞に解離させる方法として、特表平9-508534では、「不均質な細胞懸濁物から抗体を介したビーズまたは他の固体支持体への結合によりポジティブに選択された細胞を放出するための、非酵素的な方法」が提供されている(以下第2の従来例)。これによると、「標的細胞上に存在する表面抗原に結合する抗体」により、標的細胞を細胞懸濁液から分離する工程の後、「前記抗体と結合して細胞表面抗原から抗体を放出しうるペプチド」、即ち前記抗体のエピトープ配列を含むペプチドを添加することで、回収後の細胞から抗体を解離している。この第2の従来例では、がん患者由来の骨髄または血液の懸濁物内から、CD34陽性幹細胞を選択的に回収し、回収した「CD34陽性細胞組成物は、患者の免疫系再構成のために使用」する旨の記載がある。
【0007】
上記第1の従来例には以下の問題が考えられる。回収後の細胞には、「上皮系細胞及び/又は上皮系癌細胞の表面抗原に対する抗体」、即ち抗EpCAM抗体(クローン名:BerEP4)が、結合したままである。EpCAM分子は、細胞の接着やシグナル伝達に関与する細胞表面抗原であり、この抗体が細胞表面上に結合したままだと、生細胞の割合が減少することが知られている(図5)。少量の試料から、細胞を回収し、その細胞から遺伝子診断に用いる核酸を効率よく回収するためには、回収後の細胞の活性は維持されているのが望ましい。しかし、第1の従来例では抗体が細胞表面に残存しているので、生細胞の割合が減少し、核酸が分解されるため、核酸抽出の収量が低下し、PCRのテンプレートとして利用可能な核酸を十分量確保するのが困難となり、高精度な遺伝子検査が行えないという問題がある。
【0008】
上記第2の従来例では、抗体結合磁気ビーズで細胞を回収した後、前記抗体のエピトープ配列を含むペプチドを添加することで、抗体結合磁気ビーズと細胞の解離を行っているが、この技術を第1の従来例と組み合わせて、がん腫の遺伝子診断に適用しようとした場合、次のような問題があげられる。第2の従来例では、CD34陽性細胞の回収例のみを示しており、その他の抗原に対する効果は不明である。例えば第1の従来例で示したEpCAM抗原に対する抗体を用いてがん細胞を回収し、その抗体のエピトープ配列を含むペプチドを添加して抗体結合磁気ビーズと細胞の解離を行う場合、購入可能な抗EpCAM抗体の中でエピトープ配列が開示されている抗体が存在しないので、添加すべきペプチドが不明であり、そのままでは適用できない。また、EpCAM抗原はがん化に伴い発現量が増加することが知られているが、高発現している抗原を細胞回収のターゲットにした場合、その抗原と磁気ビーズ表面上に存在する抗体の相互作用は高頻度に存在すると考えられるので、それらの相互作用がペプチドの添加によって全て解消されないと、抗体と細胞は解離できない。
【0009】
【特許文献1】特開2005-46062
【特許文献2】特表平9-508534
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、収集対象物質に結合する物質を用いて当該対象物質との結合体を形成させてこれを回収し、その後、結合体から収集対象物質の解離を行う方法において、結合体における強固な結合を効率よく解離する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、結合体から収集対象物質の解離を行う工程において、収集対象物質に結合する物質と特異的に結合する領域を少なくとも一部に含むプローブを表面に保持する担体を用いることにより、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)物質の収集方法であって、
第1の支持体の表面に第1の物質が固定された第1の担体と、収集対象物質である第2の物質とを結合させて結合体を生成する第1のステップと、
前記第1の支持体に基づいて前記結合体を収集する第2のステップと、
前記第1のステップより後に、前記第1の物質と特異的に結合する領域を少なくとも一部に含むプローブを表面に保持する第2の担体を供給し、前記第1の担体と第2の担体の複合体を形成させ、前記結合体から前記第2の物質を解離させる第3のステップと
前記複合体を除去し、前記第2の物質を得る第4のステップ
を有する前記方法。
(2)前記第1の物質が抗体であることを特徴とする(1)に記載の収集方法。
(3)前記第2の物質は前記抗体が認識する抗原を含む収集対象物質であることを特徴とする請求項(2)に記載の収集方法。
(4)前記第2の物質が細胞であることを特徴とする(3)に記載の収集方法。
(5)前記プローブが前記抗体と特異的に結合する領域を少なくとも一部に含むペプチドであることを特徴とする(2)に記載の収集方法。
(6)前記ペプチドが配列番号1のアミノ酸配列を含むことを特徴とする(5)に記載の収集方法。
(7)物質を収集するためのキットであって、
収集対象物質に特異的に結合する第1の物質と、
前記第1の物質を表面に固定する第1の支持体と、
前記第1の物質と特異的に結合する領域を少なくとも一部に含むペプチドと、
前記ペプチドを表面に保持する第2の支持体
を有する前記キット。
(8)前記第1の物質が抗体であることを特徴とする(7)に記載のキット。
(9)前記第2の支持体がビーズであることを特徴とする(7)に記載のキット。
(10)前記ペプチドが前記抗体のエピトープ配列を含むことを特徴とする(8)に記載のキット。
(11)前記抗体が抗EpCAM抗体であり、前記ペプチドが前記抗EpCAM抗体のエピトープ配列を含むことを特徴とする(10)に記載のキット。
(12)前記エピトープ配列が配列番号1のアミノ酸配列であることを特徴とする(11)に記載のキット。
(13)前記収集対象物質が細胞であることを特徴とする(7)に記載のキット。
(14)前記細胞がヒト上皮細胞であることを特徴とする(13)に記載のキット。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、収集対象物質に特異的に結合する物質を用いて当該対象物質との結合体を形成させてこれを回収し、その後、結合体から収集対象物質の解離を行う方法において、結合体における強固な結合を効率よく解離させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の構成要素について図1〜3を用いて説明する。
図1は本発明が処理対象とする第2の物質1、つまり収集対象物質である。収集対象物質としては、例えば、細胞、抗体、抗原、蛋白質、ペプチド、糖、核酸(DNAおよびRNAを含む)などの生体分子があげられる。本発明においては、好ましくは細胞を収集対象物質、すなわち標的とする。細胞としては、哺乳動物(例えば、ヒト、モルモット、ラット、マウス、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ウシ、サルなど)のあらゆる細胞(例えば、脾細胞、神経細胞、グリア細胞、膵臓β細胞、骨髄細胞、メサンギウム細胞、ランゲルハンス細胞、表皮細胞、上皮細胞、内皮細胞、繊維芽細胞、繊維細胞、筋細胞、脂肪細胞、免疫細胞(例、マクロファージ、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、肥満細胞、好中球、好塩基球、好酸球、単球)、巨核球、滑膜細胞、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、乳腺細胞、肝細胞もしくは間質細胞、またはこれら細胞の前駆細胞など)や血球系の細胞(例、白血球、赤血球)があげられる。本発明は、がん細胞の収集において有利であり、例えば、上記細胞のがん細胞、ならびに脳、胃、膵臓、腎臓、肝臓、骨髄、副腎、皮膚、筋肉、肺、消化管(例、大腸、小腸)、前立腺、精巣、卵巣などの組織におけるがんに由来するがん細胞の収集に好適である。これら組織由来の細胞を、一度培養することによって得られる細胞集団でもよい。より具体的には、細胞表面にEpCAM分子を発現している細胞、例えば、HT29細胞があげられる。EpCAM分子のアミノ酸配列は公知であり、公開されたデータベース(GenBank)において、NP_002345(配列番号2)として登録されている。
【0015】
図2に、本発明の構成要素である第1の担体4を示す。第1の担体4は、第1の物質2と第1の支持体3とから構成される。第1の物質は、収集対象物質である第2の物質と特異的に結合する物質であれば特に制限されず、当業者であれば適宜選択できる。第2の物質としては、例えば、抗体、抗原、エピトープ、細胞、蛋白質、ペプチド、糖、核酸(DNAおよびRNAを含む)などの生体分子があげられる。本発明においては、好ましくは第1の物質として抗体を用いる。収集対象物質として細胞を標的とする場合は、標的細胞の表面に発現する抗原と特異的に結合する抗体を第1の物質として用いることが好ましい。がん細胞を標的とする場合は、がん細胞の表面に特異的に発現する抗原と結合する抗体を第1の物質として用いることが好ましい。細胞表面にEpCAM分子を発現している細胞を収集対象とする場合は、ハイブリドーマhrk29が産生するモノクローナル抗体hrk29を用いることが好ましい。ハイブリドーマhrk29 (Hybridoma hrk29)は、受託番号FERM P-21604として、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に寄託されている。
【0016】
第1の支持体3としては、第1の物質2を固定できるものであれば特に制限されないが、例えば、樹脂、ガラス素材、鉄、酸化鉄等を使用できる。これらはいかなる形状でもよく、材質の種類やその後の工程等によって適宜選択可能である。例えば、板状、ビーズ状、薄膜状、糸状、コイル状等があげられる。鉄または酸化鉄を素材としたビーズであれば、磁気分離が可能となり、その後の回収工程を簡便に実施できる。第1の支持体3のサイズは、いかなるサイズでもよく、形状と同様に材質の種類やその後の工程等によって決定される。例えば、磁気ビーズであれば、1.0〜4.5μm程度であれば、その後の磁気分離の操作に適する。
【0017】
第1の物質2を第1の支持体3に結合する方法としては、抗体を第1の支持体3に結合する場合、例えば、二次抗体法を用いることができる。その他の結合法も採用可能である。例えば、第1の支持体3に直接結合する方法としては、第1の支持体3を臭化シアン処理等によって活性化し、そこにアミノ基またはヒドロキシル基を有する第1の物質2(例えば、抗体)を結合することで行う。間接的に結合する方法として、例えばプロテインA、プロテインG等が表面に付加された第1の支持体3を用いて、これらを介して第1の物質2(例えば、抗体)を結合する方法も使用できる。ストレプトアビジンが表面に付加された第1の支持体3を用いることにより、第1の物質2をビオチン化しておくことで、同様に間接的に結合する方法も採用可能である。
【0018】
第1の担体の作製において使用される第1の支持体3の量は、1〜6×106個の範囲が好適である。第1の物質2として抗体を用いる場合、抗体の量は0.03〜0.8μgの範囲で使用可能だが、0.3μg以上が望ましい。一定量の第1の支持体3をPBS等の緩衝液で一度、または複数回洗浄した後、一定量のPBS等で懸濁し、抗体を添加する。抗体と磁気ビーズの反応時間は、30分〜1時間程度が望ましい。一定時間反応した後、再びPBS等の緩衝液で一度、または複数回洗浄することで、第1の支持体3に抗体が固定化された第1の担体4を得ることができる。
【0019】
図3は、第2の担体7の模式図である。第2の担体7は、第1の物質と特異的に結合する領域を少なくとも一部に含むプローブ5と、第2の支持体6とから構成される。
【0020】
第2の支持体6としては、プローブ5を固定できるものであれば特に制限されないが、例えば、樹脂、ガラス素材、鉄、酸化鉄等を使用できる。これらはいかなる形状でもよく、材質の種類やその後の工程等によって適宜選択可能である。例えば、板状、ビーズ状、薄膜状、糸状、コイル状等があげられる。鉄または酸化鉄を素材としたビーズであれば、磁気分離が可能となり、その後の回収工程を簡便に実施できる。第2の支持体6のサイズは、いかなるサイズでもよく、形状と同様に材質の種類やその後の工程等によって決定される。例えば、磁気ビーズであれば、好ましくは1.0〜4.5μm程度、より好ましくは1.0μm程度である。
【0021】
第1の物質として抗体を用いる場合、該抗体が認識するエピトープ配列を含むペプチドをプローブ5として用いることが好ましい。抗体として、ハイブリドーマhrk29が産生するモノクローナル抗体hrk29を用いる場合、好ましくはエピトープ配列として配列番号1のアミノ酸配列(ICSKLA)を含むペプチドを用いる。配列番号1のアミノ酸配列は、EpCAM分子のアミノ酸配列(配列番号2)の58〜63番目のアミノ酸に相当する。ペプチドの残基数は特に制限されないが、好ましくは11残基以上15残基以下である。より好ましくは配列番号2のアミノ酸配列の部分配列であって、配列番号2の58〜63番目のアミノ酸を含む連続した11〜15残基の配列からなるペプチドをプローブ5として用いる。
【0022】
ペプチドとしては、化学的に合成したペプチドも、遺伝子工学的に作製したペプチドも使用可能である。N末端またはC末端のどちらかにビオチン標識を有していれば、その後の第2の支持体6への結合が簡便となる。ペプチドの第2の支持体6への結合方法として、例えば、ストレプトアビジンが表面に付加された第2の支持体6では、ペプチドをビオチン化しておくことで、間接的に結合することが可能である。使用するペプチドの量は40〜400pmolの範囲が好適である。一定量の第2の支持体6をPBS等の緩衝液で一度、または複数回洗浄した後、一定量のPBS等で懸濁し、ペプチドを添加する。ペプチドと第2の支持体6の反応時間は、30分〜1時間程度が望ましい。一定時間反応させた後、再びPBS等の緩衝液で一度、または複数回洗浄することで、第2の担体7を得ることができる。
【0023】
本発明の方法の概略について図4を用いて説明する。図4は本発明の方法における操作を示すフロー図である。まず、本発明の構成要素について図4を用いて説明する。結合体8は、第2の物質1(例えば、標的細胞)と第1の担体4が結合したものであり、磁石9は磁気分離のために用いられる。精製結合体10は不純物を除いた後に得られる結合体8であり、複合体11は第1の担体4と第2の担体7が複合したものである。
【0024】
本発明の方法は、ステップ1、ステップ2、ステップ3、ステップ4の4個のステップを含む。ステップ1は結合体形成のステップであり、具体的には、第2の物質1(例えば、標的細胞)と、第1の担体4とを混合し、結合体8を形成するステップである。ステップ2は結合体収集のステップであり、具体的には結合体8を、磁石9を用いて磁気分離を行い、結合体8以外の不純物を除去し、精製結合体10を得るステップである。ステップ3は複合体形成と結合体解離のステップであり、具体的には精製結合体10と、第2の担体7とを混合し、複合体11を形成させることにより、精製結合体10から収集対象物質である第2の物質1(例えば、標的細胞)を解離するステップである。ステップ4は複合体除去のステップであり、具体的には複合体11を磁気分離により除去して、第2の物質1(例えば、標的細胞)を回収するステップである。
【0025】
第2の物質1として細胞を収集対象とし、第1の物質2として抗体を用い、プローブ5として抗体が認識するエピトープ配列を含むペプチドを用いる場合の実施形態について、以下に説明する。
【0026】
ステップ1において使用する細胞数は特に限定されないが、1×104〜1×106個の範囲で好適に使用可能である。ステップ1の標的細胞1と第1の担体4の反応時間は特に限定されないが、30分〜1時間程度が望ましい。ステップ2として標的細胞1と接触させた第1の担体4を、磁石9を用いて回収し、PBS等の細胞に悪影響を与えない緩衝液を用いて、一回または複数回洗浄する。その後、ステップ3として第2の担体7を加え、一定時間撹拌することで、標的細胞1から第1の担体4を解離する。特に反応時間は制限されないが、30分〜1時間程度が望ましい。第1の担体4と、第2の担体7の割合は、特に限定されないが、第1の支持体3の表面に存在する抗体2のモル数以上のペプチド5を添加できる量の第2の担体7が添加されることが望ましい。第1の担体4と標的細胞1を解離後に、ステップ4として磁石9を用いて、複合体11を除去することで、第1の担体4から解離した標的細胞1を得ることが可能となる。
【0027】
なお、本発明の主たる観点は、夾雑物を多く含む試料中から、収集対象物質1を回収し、回収後の収集対象物質1から回収に用いた第1の担体4を解離することにあるためその後の操作については詳述しないが、例えば従来例1に記載の方法を適用することにより、核酸抽出、PCR、遺伝子変異解析などを経て、がんの遺伝子診断が実施可能である。
【0028】
本発明により、細胞表面に高発現する抗原を細胞回収のターゲットとした場合に、抗体と細胞の間の強固な結合を効率よく解離することができる。本発明では、第1の従来例と相違し、細胞回収および単離後において、細胞表面に抗体が存在しないため、細胞活性を維持することが可能となる。また、第2の従来例と異なり、エピトープ配列を含むペプチドを表面に保持する担体を用いることにより、細胞から抗体を効率的に解離することが可能となる。これらにより、活性の高い細胞を高純度に回収することが可能となり、また回収細胞から十分量、かつ高品質な核酸を抽出することができ、がん腫を対象とした遺伝子検査において、高い精度を提供することが可能となる。
【0029】
また、新たに開発した、エピトープ配列を明らかにした抗体を利用することにより、前記抗体のエピトープ配列を含むペプチドを用いて、抗EpCAM抗体を抗原であるEpCAM分子から解離することが可能になる。さらに、該エピトープ配列を含むペプチドを表面に保持する担体を用いることにより、EpCAMを高発現する上皮細胞から抗体やそれと結合した磁気ビーズを効率的に解離することが可能になる。
【実施例】
【0030】
以下に、本発明の具体的な実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
抗体2の作製
ハイブリドーマの作製は常法に従って行った。遺伝子組み換えによって作製したEpCAM分子をアジュバンド(TiterMax)と混合後、フットパッド法によりBalb/Cマウスに免疫した。免疫を3回繰り返した後、リンパ節を取り出し、リンパ球とミエローマ細胞(P3U1)を融合させ、ハイブリドーマを作製した。ハイブリドーマのスクリーニングは、HT29細胞表面への結合量を指標に行った。1×106個のHT29細胞に対し100μLのハイブリドーマ培養上清を添加し、4 ℃、30分間静置した。PBSで洗浄後、ヤギ由来の抗マウスIg抗体-PE標識を2 μg添加し再び4 ℃、30分間静置した。再びPBSで洗浄後、500 μLのPBSで懸濁し、フローサイトメーターを用いて蛍光強度の測定を行った。スクリーニングで陽性を示したハイブリドーマは限界希釈法によりクローニングを2回行った。クローニング後、再びフローサイトメーターでスクリーニングを行い、陽性のクローンを選抜した。このようにして得られたハイブリドーマ並びにそれが産生する抗体のクローン名をhrk29とした。ハイブリドーマhrk29 (Hybridoma hrk29)は、受託番号FERM P-21604として、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に寄託されている。モノクローナル抗体hrk29のイムノグロブリンのサブクラスを知るため、Mouse Monoclonal Antibody Isotyping Test Kit (Serotec社)を使用しサブクラスを決定した。その結果、モノクローナル抗体hrk29のアイソタイプはIgG1と判明した。
【0031】
抗体2のエピトープ配列決定
モノクローナル抗体hrk29の認識するエピトープ配列を解析するために、断片化したEpCAM分子(EpCAMのアミノ酸残基24〜62、63〜139、24〜139/EC1、EC2、EC3、図6)を大腸菌で発現させ、モノクローナル抗体hrk29が認識するドメインをウェスタンブロットにより検討した。図9に示すようにEC1(分子量およそ35kDa)とEC3(同43kDa)に対し反応性が認められた。即ち、この抗体は、EpCAMの24〜62番のアミノ酸を含む領域を認識することが確認された。
【0032】
EC1のアミノ酸配列に従い、図10、11に示すペプチド(ペプチドA〜E;それぞれ配列番号3〜7)を合成しELISA法によりモノクローナル抗体hrk29が認識するエピトープ配列をICSKLA(配列番号1)と決定した(図12)。
【0033】
第1の担体4の作製
第1の担体4を以下に示すように作製した。第1の支持体3として、Dynabeads(登録商標)M-450 Sheep anti-mouse IgG、抗体2として前記で作製した抗EpCAM抗体:hrk29を用いた。第1の支持体3を一度PBSで洗浄した後、100μLのPBSで懸濁し、1×106個の第1の支持体3に対して0.03μgの抗体2を添加して室温で30分間撹拌した。その後PBSを用いて2回洗浄を行った後、PBS100μLで懸濁し、第1の担体4を得た。
【0034】
第2の担体7の作製
ペプチド5を表面に有する第2の担体7の作製法を以下に示す。第2の支持体6としてDynabeads(登録商標)MyOne Streptavidin T1を、ペプチド5として本実施例で作製した抗体2(hrk29)が認識するエピトープ配列ICSKLAを含むビオチン化ペプチド(アミノ酸配列ICSKLAANKMKAE;配列番号8)を用いた。第2の支持体6を一度PBSで洗浄した後、100μLのPBSで懸濁し、7×108個のビーズに対して400pmolのペプチド5を添加して室温で30分間撹拌し、エピトープ配列を含むペプチド5を表面に保持する第2の担体7を得た。
【0035】
細胞回収及び解離
抗EpCAM抗体を表面に結合させた磁気ビーズによる細胞回収及び解離方法を以下に示す。標的細胞1であるHT29細胞1×106個を500μLのPBSに分散した。ステップ1としてこの出発材料に第1の担体4を添加し、室温で30分撹拌した。ステップ2として、磁気分離後、0.5% BSA、2mM EDTAを含むPBSで二回洗浄後、精製複合体10を得た。ステップ3として第2の担体7を添加し、室温で30分撹拌した。その後、ステップ4として磁気分離を行い、標的細胞1を回収するとともに、複合体11並びに未反応の精製結合体10を除去した。回収した標的細胞1の数と、精製結合体10に含まれる標的細胞1の数から、抗体2から解離した標的細胞1の割合を算出した。
【0036】
〔実施例2〕
実施例1と同様の方法であるが、第2の担体7に使用する第2の支持体6として、Qdot(登録商標)565ITKTM Streptavidin Conjugateを使用した。
【0037】
実施例1と実施例2の結果を、図13を用いて説明する。図13は、解離した標的細胞1の割合、つまり細胞解離率を示すグラフである。なお、第2の従来例を変形した方法、即ちステップ3において、第2の担体7ではなくペプチド5のみを添加した結果も比較検討した。第2の担体7を使用した結果、第2の従来例の変形例、即ちペプチド5のみを添加する方法と比べて、解離した標的細胞1の割合が増加し、本発明の有効性が示された。つまり、ペプチドのみを添加する方法と異なり、第2の担体7を添加することにより、標的細胞1と抗体2の解離をより効率的に行うことができ、活性の高い細胞を高純度に回収することが可能となった。これにより、回収した細胞から十分量、かつ高品質な核酸を抽出することが可能となり、がん腫を対象とした遺伝子検査において、高い精度を提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の構成要素のうち第2の物質(標的細胞)1を示す図である。
【図2】本発明の構成要素のうち第1の担体4を示す図である。
【図3】本発明の構成要素のうち第2の担体7を示す図である。
【図4】本発明の方法の一実施形態を示す模式図である。
【図5】抗体が生細胞率に及ぼす影響を示すグラフである。
【図6】モノクローナル抗体hrk29の抗原のドメインを決定するために作製したEC1、EC2、EC3を示す模式図である。
【図7】EC1、EC2、EC3の発現のために使用したベクターを示す図である。
【図8】図7のベクターによって発現した組換えタンパク質を示す模式図である。
【図9】モノクローナルhrk29が認識する抗原のドメインを示す図である。
【図10】エピトープ配列を決定するために使用したペプチドを示す図である。
【図11】実施例で使用したペプチドA〜Eの配列を示す図である。
【図12】モノクローナル抗体hrk29と、ペプチドA〜Eの反応性を示す図である。
【図13】従来の実施例の変形例と、本発明の方法を用いた場合の細胞解離率を比較した図である。
【符号の説明】
【0039】
1…第2の物質(標的細胞)
2…第1の物質(抗体)
3…第1の支持体
4…第1の担体
5…プローブ(ペプチド)
6…第2の支持体
7…第2の担体
8…結合体
9…磁石
10…精製結合体
11…複合体
12…グルタチオンS-トランスフェラーゼ
13…6×Hisタグ
14…EC1〜3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物質の収集方法であって、
第1の支持体の表面に第1の物質が固定された第1の担体と、収集対象物質である第2の物質とを結合させて結合体を生成する第1のステップと、
前記第1の支持体に基づいて前記結合体を収集する第2のステップと、
前記第1のステップより後に、前記第1の物質と特異的に結合する領域を少なくとも一部に含むプローブを表面に保持する第2の担体を供給し、前記第1の担体と第2の担体の複合体を形成させ、前記結合体から前記第2の物質を解離させる第3のステップと
前記複合体を除去し、前記第2の物質を得る第4のステップ
を有する前記方法。
【請求項2】
前記第1の物質が抗体であることを特徴とする請求項1に記載の収集方法。
【請求項3】
前記第2の物質は前記抗体が認識する抗原を含む収集対象物質であることを特徴とする請求項2に記載の収集方法。
【請求項4】
前記第2の物質が細胞であることを特徴とする請求項3に記載の収集方法。
【請求項5】
前記プローブが前記抗体と特異的に結合する領域を少なくとも一部に含むペプチドであることを特徴とする請求項2に記載の収集方法。
【請求項6】
前記ペプチドが配列番号1のアミノ酸配列を含むことを特徴とする請求項5に記載の収集方法。
【請求項7】
物質を収集するためのキットであって、
収集対象物質に特異的に結合する第1の物質と、
前記第1の物質を表面に固定する第1の支持体と、
前記第1の物質と特異的に結合する領域を少なくとも一部に含むペプチドと、
前記ペプチドを表面に保持する第2の支持体
を有する前記キット。
【請求項8】
前記第1の物質が抗体であることを特徴とする請求項7に記載のキット。
【請求項9】
前記第2の支持体がビーズであることを特徴とする請求項7に記載のキット。
【請求項10】
前記ペプチドが前記抗体のエピトープ配列を含むことを特徴とする請求項8に記載のキット。
【請求項11】
前記抗体が抗EpCAM抗体であり、前記ペプチドが前記抗EpCAM抗体のエピトープ配列を含むことを特徴とする請求項10に記載のキット。
【請求項12】
前記エピトープ配列が配列番号1のアミノ酸配列であることを特徴とする請求項11に記載のキット。
【請求項13】
前記収集対象物質が細胞であることを特徴とする請求項7に記載のキット。
【請求項14】
前記細胞がヒト上皮細胞であることを特徴とする請求項13に記載のキット。
【請求項1】
物質の収集方法であって、
第1の支持体の表面に第1の物質が固定された第1の担体と、収集対象物質である第2の物質とを結合させて結合体を生成する第1のステップと、
前記第1の支持体に基づいて前記結合体を収集する第2のステップと、
前記第1のステップより後に、前記第1の物質と特異的に結合する領域を少なくとも一部に含むプローブを表面に保持する第2の担体を供給し、前記第1の担体と第2の担体の複合体を形成させ、前記結合体から前記第2の物質を解離させる第3のステップと
前記複合体を除去し、前記第2の物質を得る第4のステップ
を有する前記方法。
【請求項2】
前記第1の物質が抗体であることを特徴とする請求項1に記載の収集方法。
【請求項3】
前記第2の物質は前記抗体が認識する抗原を含む収集対象物質であることを特徴とする請求項2に記載の収集方法。
【請求項4】
前記第2の物質が細胞であることを特徴とする請求項3に記載の収集方法。
【請求項5】
前記プローブが前記抗体と特異的に結合する領域を少なくとも一部に含むペプチドであることを特徴とする請求項2に記載の収集方法。
【請求項6】
前記ペプチドが配列番号1のアミノ酸配列を含むことを特徴とする請求項5に記載の収集方法。
【請求項7】
物質を収集するためのキットであって、
収集対象物質に特異的に結合する第1の物質と、
前記第1の物質を表面に固定する第1の支持体と、
前記第1の物質と特異的に結合する領域を少なくとも一部に含むペプチドと、
前記ペプチドを表面に保持する第2の支持体
を有する前記キット。
【請求項8】
前記第1の物質が抗体であることを特徴とする請求項7に記載のキット。
【請求項9】
前記第2の支持体がビーズであることを特徴とする請求項7に記載のキット。
【請求項10】
前記ペプチドが前記抗体のエピトープ配列を含むことを特徴とする請求項8に記載のキット。
【請求項11】
前記抗体が抗EpCAM抗体であり、前記ペプチドが前記抗EpCAM抗体のエピトープ配列を含むことを特徴とする請求項10に記載のキット。
【請求項12】
前記エピトープ配列が配列番号1のアミノ酸配列であることを特徴とする請求項11に記載のキット。
【請求項13】
前記収集対象物質が細胞であることを特徴とする請求項7に記載のキット。
【請求項14】
前記細胞がヒト上皮細胞であることを特徴とする請求項13に記載のキット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−45996(P2010−45996A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−211934(P2008−211934)
【出願日】平成20年8月20日(2008.8.20)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月20日(2008.8.20)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]