説明

きんつば

【課題】良好な食感を有するシュガーレスのきんつばを提供する。
【解決手段】小豆1a、1a…を寒天液1bで固めたあん1と、あん1の表面に付ける皮2とからなり、小豆1a、1a…は、還元麦芽糖、還元でんぷん糖化物を含有するシロップを含浸させ、寒天液1bは、シロップに寒天を加えて煮詰め、皮2の生地は、小麦粉と還元麦芽糖ともち粉とで作る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、和菓子の一種として知られるきんつばに関し、特に、糖アルコールを除く糖類(単糖類及び二糖類)を実質的に含まない、いわゆるシュガーレスのきんつばに関する。
【背景技術】
【0002】
きんつばは、あん(餡)を小麦粉生地で薄く包み、油を引いた平鍋で各面を焦げ目が付かない程度に焼いた和菓子である(非特許文献1、2)。
【0003】
あんは、たとえば大量の砂糖を加えて甘く味付けした小豆あんであり、砂糖を加えた寒天液を使用して固める。一方、生地は、小麦粉に砂糖を加え、水で溶いて作られ、焼くことによりあんの表面を包む皮となっている。
【非特許文献1】五十嵐脩他編、丸善食品総合辞典、丸善(平成10年3月25日)、307ページ
【非特許文献2】小林彰夫他編、菓子の事典、朝倉書店(2000年5月20日)、230〜231ページ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる従来技術によるときは、あんと、あんの表面の皮とは、いずれも多くの砂糖を含むから、糖尿病や肥満症などを引き起こすことがあるとの風説があり、消費量の伸びが十分でないという問題があった。また、大量の砂糖は、表面に析出したり、あんを軟らかくし過ぎたりして食感を害することもある。
【0005】
そこで、この発明の目的は、かかる従来技術の問題に鑑み、適切な比率の還元麦芽糖と還元でんぷん糖化物とを使用することによって、砂糖を全く使用することなく、極めて良好な食感を有するシュガーレスのきんつばを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するためのこの発明の構成は、小豆を寒天液で固めたあんと、あんの表面に生地を付着させて焼いた皮とからなり、小豆は、炊き上げた後、還元麦芽糖と還元でんぷん糖化物とを含有して砂糖を含まないシロップを含浸させ、寒天液は、シロップに寒天を加えて煮詰め、生地は、小麦粉と還元麦芽糖ともち粉とを含み、砂糖を含まないことをその要旨とする。
【0007】
なお、小豆を寒天液に混ぜて食塩を加えることができる。
【発明の効果】
【0008】
かかる発明の構成によるときは、あん、皮は、いずれも砂糖を全く含まないから、糖アルコールを除く単糖類、二糖類を実質的に含まないシュガーレスの製品を作ることができる。なお、還元麦芽糖は、岡山市所在の(株)林原商事から市販されている粉末状の商品名「粉末マビット」が好適であり、還元でんぷん糖化物は、同社から市販されている商品名「HS−40」が好適である。
【0009】
あんは、小豆(大納言が好ましい)4.5kgに対し、還元麦芽糖4〜6.5kg、還元でんぷん糖化物3〜1kgを水3.5kgに投入して重量比4:3〜6.5:1に含有するシロップを作り、炊き上げた小豆にシロップを含浸させ、小豆を取り出したシロップにさらに寒天70〜80gを加えて寒天液を作り、シロップを含浸させた小豆を混ぜ、冷却して固めることによって作る。ただし、還元麦芽糖、還元でんぷん糖化物の使用量は、季節や好みなどにより、それぞれ1〜2割の範囲で可変調節することができる。また、寒天液に小豆を混ぜるとき、最終段階において食塩70gを加えて味を調整する。皮用の生地は、同量の小豆に対し、小麦粉1kg、還元麦芽糖600g、もち粉100gを水1kgに溶いて作る。なお、もち粉は、白玉粉としてもよい。以上の材料を使用して1個当り50gの製品250個を作ることができる。
【0010】
還元麦芽糖と還元でんぷん糖化物との比率は、製品の品質や食感に大きく影響する。還元麦芽糖が多過ぎると、小豆のツヤがなくなり、あんが全体としてぱさ付き気味になる一方、還元でんぷん糖化物が多過ぎると、あんの水分が多くなって軟らかくなり過ぎる傾向がある。なお、ここでいうあんは、小豆の外形をなるべく崩さず、原形のままの小豆が寒天液で固められている形態を実現するものとする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を以って発明の実施の形態を説明する。
【0012】
きんつばは、あん1と、あん1の表面の皮2とからなる(図1)。
【0013】
あん1は、小豆1a、1a…を寒天液1bで固め、たとえば所定サイズの直方体に切り揃えて形成されている。小豆1a、1a…は、その原形を保っている。また、皮2は、あん1の各面に生地を付着させて焼き、これを各面ごとに繰り返すことにより、あん1の全表面を包むようにして付けられている。あん1は、砂糖を使用することなく、重量比4:3の還元麦芽糖と還元でんぷん糖化物により味付けされており、小麦粉を主体とする皮2は、砂糖を使用することなく、還元麦芽糖により味付けされている。
【0014】
きんつばの製造工程の一例を図2、図3に示す。
【0015】
小豆(大納言)を水洗いして水に一晩浸漬する(図2のステップ(1)、以下、単に(1)のように記す)。その後、水を替えて「あく」を取りながら、半日程度かけて形を崩さないように軟らかく炊く(2)。炊き上がった小豆は、ざるに上げておく。
【0016】
一方、粉末状の還元麦芽糖、還元でんぷん糖化物を水に投入して沸騰させ(3)、シロップを作る。温かいシロップに、炊き上がった小豆をざるのまま浸漬し、一晩放置して小豆にシロップを含浸させる(4)。
【0017】
小豆をシロップから上げてざる上げし(5)、シロップに寒天を加えて煮詰め(6)、寒天液を作る。つづいて、寒天液に小豆を入れて軽く混ぜ(7)、小豆に寒天液をまぶすとともに、最後に食塩を投入して味を整える。次に、全体を羊羹(ようかん)舟に流し入れ、冷却して固化させた上(8)、羊羹舟から出し、包丁で所定のサイズに切断して(9)、直方体のあん1を作る。
【0018】
皮2用の生地は、所定量の小麦粉、粉末状の還元麦芽糖、もち粉を混合して水に溶いて作る(図3のステップ(1)、以下、単に(1)のように記す)。この生地をあん1の表面の1面に刷毛塗りして付着させ(2)、油を引いた平鍋で焼き(3)、あん1の1面に皮2を付ける。あん1の各面ごとに生地の付着、焼きを繰り返し((4)、(2)〜(4))、あん1の6面に皮2を付けて(4)、製品とする。ただし、刷毛塗りの際には、刷毛に水を含ませるなどの方法により生地の水分を適宜調節してもよい。
【0019】
完成した製品は、たとえばアルミニウム箔ラミネート紙と、ヒートシール可能なレーヨン紙(和菓子包装紙)を使用して二重に個装して商品とする。なお、内側のアルミニウム箔ラミネート紙の内部には、必要に応じて乾燥剤を同封してもよい。
【0020】
このようにして製造した製品の分析試験結果((財)日本食品分析センター)の一例を図4に示す。これによれば、果糖、ブドウ糖、ショ糖、麦芽糖、乳糖の糖類は、検出されなかったことがわかる。また、塩味が効いた程よい甘味があり、食感も極めて良好であった。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】全体構成縦断面図
【図2】製造工程図(1)
【図3】製造工程図(2)
【図4】分析試験結果図表
【符号の説明】
【0022】
1…あん
1a…小豆
1b…寒天液
2…皮

特許出願人 株式会社 末広堂
代理人 弁理士 松 田 忠 秋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小豆を寒天液で固めたあんと、該あんの表面に生地を付着させて焼いた皮とからなり、前記小豆は、炊き上げた後、還元麦芽糖と還元でんぷん糖化物とを含有して砂糖を含まないシロップを含浸させ、前記寒天液は、前記シロップに寒天を加えて煮詰め、前記生地は、小麦粉と還元麦芽糖ともち粉とを含み、砂糖を含まないことを特徴とするきんつば。
【請求項2】
前記小豆を前記寒天液に混ぜて食塩を加えることを特徴とする請求項1記載のきんつば。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−110931(P2007−110931A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−303822(P2005−303822)
【出願日】平成17年10月19日(2005.10.19)
【出願人】(501122676)株式会社 末広堂 (1)
【Fターム(参考)】