説明

けい酸加里肥料及びその製造方法

【課題】 配合設計が容易であり、所定の粒度分布、強度が得られると共に、加里成分の含有量を少なくしても、く溶性加里(C−KO)、可溶性けい酸(S−SiO)等の生成量を容易にコントロールすることができるけい酸加里肥料、及び製造効率が良好となるけい酸加里肥料の製造方法を提供する。
【解決手段】 少なくとも、微粉炭燃焼灰と、カルシウム含有物と、カリウム含有物と、マグネシウム含有物と、全量中3〜10重量%となる水酸化ナトリウムとを混合して造粒、乾燥し焼成処理することにより得られるけい酸加里肥料からなることを特徴とするけい酸加里肥料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火力発電所等で回収される微粉炭燃焼灰(フライアッシュ)を主原料としたけい酸加里肥料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、けい酸加里肥料は、火力発電所等で回収される微粉炭燃焼灰を主原料として、苛性カリ、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム等の所要量を混合して造粒し、焼成後冷却して製造されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
得られるけい酸加里肥料は、水には殆ど溶けないが、「く溶性」を有するので作物の根から出る薄い酸には溶け、徐々に作物に吸収される、いわゆる緩効性加里及びシリカ成分を増加させることができる優れた肥効を有する肥料であり、その成分については、肥料取締法において「く溶性加里」(C−KO)は20.0重量%以上、「可溶性けい酸」(S−SiO)25.0重量%以上、「く溶性苦土」3.0重量%以上、と夫々規定され、未反応の加里(水溶性加里)は3.0重量%以下と規定されている。
なお、前記「く溶性」とは、2%クエン酸溶液に溶ける成分であり、また、前記「可溶性」とは、0.5モル塩酸溶液に溶ける成分をいう。
【0004】
このけい酸加里肥料は、緩効性のカルシウム、マグネシウム、マンガン、鉄などを含むため、加里、けい酸の肥効に加え、これらの成分が不足する農地での効果が期待でき、水稲を始め、果菜類、根菜・いも類、葉茎菜類、果樹、茶樹、花卉などに使用されている。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1を含む従来のけい酸加里肥料の製造において、シリカ成分を多くし、加里成分の含有量を少なくして、く溶性加里、可溶性けい酸の生成量を多くしたり、他の肥料有効成分を多く含有せしめる配合組成となるけい酸加里肥料を製造しようとすると、以下の課題が生じている。
すなわち、シリカ成分を多くし、加里成分の含有量を少なくして、く溶性加里、可溶性けい酸の生成量を多くしたけい酸加里肥料を製造する場合において、水酸化カリウム等のカリウム含有物の添加量を低減させた場合、製造に当たって混合機内の混練は十分であったが、バインダー効果としての固体粒子間の接着力が弱くなって造粒強度が不足となり、所定の粒度分布が得られず、中間体造粒物(リサイクル品)の粉体が占める率が高くなり、更には発塵するなどの課題が生じたり、不溶性の固定カリ(KO)及びけい酸(SiO)が生成したりし、上記加里成分の含有量が低いけい酸加里肥料の製造が困難となる課題を生じている。
【0006】
一方、肥料資材の粉末100重量部に、バインダー成分としてフミン酸やニトロフミン酸等の腐植酸1〜15重量部と、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ物質0.1〜15重量部を配合し、水を10〜30重量部添加して混練し、造粒することからなる肥料資材の造粒方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
この造粒方法は、バインダー成分としての腐植酸は造粒効果が得られるが強度が低くて実用に耐えない課題をアルカリ物質との併用により造粒効果と強度を増強するものであり、また、腐植酸はpHが高くなるとコロイド状物質を生成し粘度を増すなどの課題があり、本願発明のけい酸加里肥料の製造等とは、その課題、技術思想が異なるものである。
【特許文献1】特開平5−301790号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献2】特開平11−278972号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術の課題等に鑑み、これを解消しようとするものであり、配合設計が容易であり、所定の粒度分布、強度が得られると共に、加里成分の含有量を少なくしても、く溶性加里、可溶性けい酸等の生成量を容易にコントロールすることができるけい酸加里肥料、及び製造効率が良好となるけい酸加里肥料の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記従来の課題等を解決するために、鋭意検討した結果、微粉炭燃焼灰と、特定の原材料等とを混合して焼成することなどにより、上記目的のけい酸加里肥料及びその製造方法が得られることを見い出し、本発明を完成するに至ったのである。
すなわち、本発明は、次の(1)〜(6)に存する。
(1) 少なくとも、微粉炭燃焼灰と、カルシウム含有物と、カリウム含有物と、マグネシウム含有物と、全量中3〜10重量%となる水酸化ナトリウムとを混合して造粒、乾燥し焼成処理することにより得られるけい酸加里肥料からなることを特徴とするけい酸加里肥料。
(2) く溶性加里(C−KO)成分の含有量が10重量%以上35重量%未満、かつ、可溶性シリカ成分(S−SiO)の成分の含有量が25重量%以上45重量%未満となる上記(1)記載のけい酸加里肥料。
(3) カリウム含有物が水酸化カリウムである上記(1)又は(2)に記載のけい酸加里肥料。
(4) 少なくとも、微粉炭燃焼灰と、カルシウム含有物と、カリウム含有物と、マグネシウム含有物とを原料としたけい酸加里肥料の製造方法であって、原料のスラリー液に、3〜10重量%となる水酸化ナトリウムを添加混合し、造粒工程、乾燥工程、焼成工程を経てけい酸加里肥料を製造することを特徴とするけい酸加里肥料の製造方法。
(5) 焼成工程前に、造粒の核として造粒乾燥後の中間体造粒物(リサイクル品)を混合工程に戻す工程を含む上記(4)記載のけい酸加里肥料の製造方法。
(6) 造粒乾燥後の中間体造粒物(リサイクル品)の混合割合が、混合物全量に対して、30〜70重量%である上記(5)記載のけい酸加里肥料の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、配合設計が容易であり、所定の粒度分布、強度が得られると共に、加里成分の含有量を少なくしても、く溶性加里、可溶性けい酸等の生成量を容易にコントロールすることができる、けい酸加里肥料、及び作業効率が良好となるけい酸加里肥料の製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明の実施形態を詳しく説明する。
本発明のけい酸加里肥料は、少なくとも、微粉炭燃焼灰と、カルシウム含有物と、カリウム含有物と、マグネシウム含有物と、全量中3〜10重量%となる水酸化ナトリウムとを混合して造粒、乾燥し焼成処理することにより得られるけい酸加里肥料からなることを特徴とするものであり、また、本発明のけい酸加里肥料の製造方法は、少なくとも、微粉炭燃焼灰と、カルシウム含有物と、カリウム含有物と、マグネシウム含有物とを原料としたけい酸加里肥料の製造方法であって、原料のスラリー液に、3〜10重量%となる水酸化ナトリウムを添加混合し、造粒工程、乾燥工程、焼成工程を経てけい酸加里肥料を製造することを特徴とするものである。
以下において、本発明というときは、上記「けい酸加里肥料」及び「けい酸加里肥料の製造方法」の両方を含むものである。
【0011】
本発明に用いる微粉炭燃焼灰としては、例えば、火力発電所等で発生する微粉炭燃焼灰(石炭灰)、例えば、ブレアゾール灰、エンシャム灰、大同灰、ツグヌイ灰、ボンタン灰などが利用できる。
主原料となる微粉炭燃焼灰の化学組成は、石炭の産地(オーストラリア炭、太平洋炭)等により異なるが、けい酸加里肥料の原料とするには、好ましくは、灰中のけい酸(SiO)が50重量%以上含有することが望ましい。なお、微粉炭燃焼灰は、異なった種類のものを所定量混合して使用することにより、成分の調整を行ったものを使用してもよい。
下記に、石炭の燃焼例及びその石炭燃焼灰から肥料化への反応例を示す。
石炭燃焼例;カオリナイト〔3(Al・2SiO・2HO)→ムライト〔3Al・2SiO〕+4SiO+6H
3Al・2SiO+2KOH→KO・Al・2SiO2+HO、
3Al・2SiO+2NaOH→NaO・Al・2SiO+H
なお、本発明に用いる微粉炭燃焼灰の灰中のけい酸(SiO)が50重量%未満であると、得られる肥料の可溶性けい酸の含有量が少なくなり、好ましくない。
【0012】
本発明に用いるカルシウム含有物としては、例えば、炭酸カルシウム(炭酸石灰)、水酸化カルシウム、ドロマイトなどが挙げられ、また、用いるカリウム含有物としては、例えば、炭酸カリウム、水酸化カリウムなどが挙げられ、更に、マグネシウム含有物としては、水酸化マグネシウム、ドロマイトなどが挙げられる。好ましい、カリウム含有物としては、粉化・発塵防止のためのバインダー効果アップの点から、それ自身原料との反応性を持ちバインダー効果の高い水酸化カリウムが望ましい。
本発明のけい酸加里肥料の製造には、マグネシウム含有物も使用するため、カルシウムとマグネシウムの両化合物を含有するドロマイトを少なくともカルシウム含有物及びマグネシウム含有物の一部として使用することは問題ない。
【0013】
本発明に用いる水酸化ナトリウムは、水酸化カリウム等のカリウム含有物の添加量を低減させて加里成分の含有量をコントロールしたけい酸加里肥料を製造する場合の課題、すなわち、造粒強度の不足、所定の粒度分布が得られないこと、中間体造粒物(リサイクル品)の粉体化による発塵などの課題が生じたり、不溶性の固定カリ(KO)及びけい酸(SiO)が生成したりする課題を解消するために、バインダー効果、粒度分布向上効果及び成分有効化効果を発揮せしめる必須成分として配合するものである。
【0014】
これらの微粉炭燃焼灰、カルシウム含有物、カリウム含有物、マグネシウム含有物の使用量は、焼成反応により植物に吸収される成分に変化した量が目標成分を確保できる配合設計となるものであり、有効成分化率を考慮して設定される。
本発明において、微粉炭燃焼灰、カルシウム含有物、カリウム含有物、マグネシウム含有物の使用量は、本発明で得られるけい酸加里肥料の配合組成が、く溶性加里(C−KO)10.0重量%以上〜35重量%未満、可溶性けい酸(S−SiO)25重量%以上〜45重量%未満、く溶性苦土(MgO)4.0重量%以上、可溶性石灰(CaO)適当量となるように、上記微粉炭燃焼灰、カルシウム含有物、カリウム含有物、マグネシウム含有物の各原材料の使用量が決定される。
【0015】
また、水酸化ナトリウムの使用量は、全量中3〜10重量%(原料のスラリー液に、3〜10重量%、全量100重量%)となる水酸化ナトリウムを添加混合することが必要であり、造粒強度の増強、所定の粒度分布(粒径1〜4mmパス程度)の維持乃至向上、造粒・乾燥工程での粉化及び発塵防止、並びに、焼成製品化可能な乾燥造粒品の製造が可能となり、しかも、く溶性加里(C−KO)、可溶性けい酸(S−SiO)の生成が容易となるので、配合設計及び製造効率が良好となる。
この水酸化ナトリウムの添加量が3重量%未満であると、目的のく溶性加里、可溶性けい酸の生成が不十分で、乾燥品粒度分布が良好とならず、一方、10重量%を越えると、焼成工程での熔融が起こり易く、焼成キルン内での熔融塊発生による詰まり、耐火レンガの損傷その他トラブルの原因となり、好ましくない。
【0016】
本発明では、上記微粉炭燃焼灰、カルシウム含有物、カリウム含有物、マグネシウム含有物、所定範囲量の水酸化ナトリウムとを混合し、造粒、乾燥し焼成処理することより目的のけい酸加里肥料を製造することができることとなる。
図1又は図2は、本発明のけい酸加里肥料の各製造方法のフロー図である。
図1は、本発明のけい酸加里肥料の製造方法の一例を示す実施形態である。本実施形態は、図1のフロー図に示すように、微粉炭燃焼灰、カルシウム含有物、カリウム含有物、マグネシウム含有物、水酸化ナトリウム、更に必要に応じて、コレマナイトなどの添加成分を計量後、スラリー撹拌槽に供給して〔必要なら水を適当量添加して〕混合機で混練した後、造粒機、乾燥機(造粒乾燥機)に供給して造粒後、乾燥し、次いで、所定温度・時間等で焼成炉で焼成処理した後、篩分し、焼成製品(けい酸加里肥料)を製造することができる。
【0017】
図2は、本発明のけい酸加里肥料の製造方法の他例を示す実施形態である。本実施形態は、焼成処理まで、図1に示す製造方法と同様に行うものであるが、その後、図2のフロー図に示すように、焼成処理後、粉砕(粉砕後、必要に応じて、更にリグニンなどのバインダー成分の添加)、再造粒、乾燥を経ることによりけい酸加里肥料を製造することができる。
【0018】
本発明では、上述の如く、混合後、造粒工程、乾燥工程、焼成工程、また、必要に応じて、更に、粉砕、再造粒、乾燥工程を経てけい酸加里肥料を製造するものであるが、混合、造粒、乾燥工程の安定操業、及び焼成製品化可能な乾燥造粒品確保の点から、焼成工程前に、造粒の核(粒径1.0mmパス程度)として造粒乾燥後の中間体造粒物(リサイクル品)を混合工程に戻す工程を含むものである。
【0019】
また、本発明において、造粒乾燥後の中間体造粒物(リサイクル品)の混合割合は、好ましくは、混合物全量に対して、30〜70重量%、更に好ましくは、33〜66重量%とすることがことができるものである。
これは、水酸化ナトリウムによる造粒効果が相乗効果として発揮できるため、従来において、スラリー:リサイクル品=1:2であったのに対して、本発明では、上述の混合範囲にすることができ、中間体造粒物(リサイクル品)の混合割合を少ない比率(例えば、スラリー:リサイクル品=1:1)にすることができると共に、製造効率が向上し、しかも、目的の特性を有するけい酸加里肥料が得られるものとなる。
【0020】
本発明方法において、焼成温度、焼成時間は、微粉炭燃焼灰の結晶性鉱物、即ち、石英、ムライト、及び固溶体等の組成とその内容バランスにより、Na,K,CaとSiOの焼成反応に掛かる温度により相違する。例えば、輸入石炭灰の場合、石炭中のカオリン族粘度鉱物〔AlSiO(OH)〕が焼成中に焼成されることにより生成される鉱物内容により左右されるが、900〜1300℃、好ましくは、950〜1300℃で、焼成時間30分以上、好ましくは、30分〜120分間で焼成したものを篩い分けし、冷却することにより目的のけい酸加里肥料を製造することができることとなる。
【0021】
このように構成される本発明では、微粉炭燃焼灰と、カルシウム含有物と、カリウム含有物と、マグネシウム含有物と、所定量の水酸化ナトリウム含有物とを計量して所定量の水とリサイクル品と混合することにより、配合設計が容易であり、く溶性加里、可溶性けい酸等の生成量が多く、製造効率が良好となる加里成分の含有量を低くしたけい酸加里肥料及びその製造方法が得られることとなる。
なお、本発明の効果を損なわない範囲で、上記微粉炭燃焼灰、カルシウム含有物等の原料と共に、ホウ素質肥料等となるホウ素含有物などの原料を混合し焼成処理等して、けい酸加里肥料を製造してもよいものである。
【実施例】
【0022】
次に、実施例及び比較例となる試験例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、下記試験例に限定されるものではない。
【0023】
(試験例1)
図1の製造工程フロー図に準拠して下記配合組成となる使用原料、擬似リサイクル灰を用いて下記方法により、けい酸加里肥料を製造した。
(使用原料の配合組成)
微粉炭燃焼灰1:BA灰*1 650kg
微粉炭燃焼灰2:FBC灰*2 200kg
カリウム含有物:48.5%水酸化カリウム 410kg
マグネシウム含有物:水酸化マグネシウム 90kg
カルシウム含有物:炭酸カルシウム 340kg
水酸化ナトリウム:48%水酸化ナトリウム 変 動*3
添加成分:コレマナイト 4kg
添加水: 363kg
合 計 2477kg
*1:オーストラリアのブレアゾール炭を輸入後、石炭火力発電所にて燃焼して排出さ
れた石炭灰
*2:流動層石炭燃焼器から排出された灰
*3:全量(スラリー液)中に、水酸化ナトリウムが0%、3%、5.5%、8%、
10%、12%となるように調整した。
【0024】
(擬似リサイクル灰の配合組成)
微粉炭燃焼灰1:BA灰 650kg
微粉炭燃焼灰2:FBC灰 200kg
カリウム含有物:炭酸カリウム 250.9kg
マグネシウム含有物:水酸化マグネシウム 90kg
カルシウム含有物:炭酸カルシウム 360kg
添加成分:コレマナイト 4kg
合 計 1544.9kg
なお、擬似リサイクル灰のカリ源として、苛性カリウム(KOH)の代わりに炭酸カリウムを使用し、その炭酸カリウム量は、混合するスラリー配合の原単位ベースで、KOHと同モルのカリ量となるように決定した。擬似リサイクル灰は、コンクリートミキサーで混練して擬似リサイクル製品(粒径1.0mmパス程度)とした。
【0025】
(製造方法)
上記各使用原料の所定量を水、KOH,NaOH、その他の順で、スラリー撹拌槽に供給して30分以上撹拌した。撹拌混合したスラリー液は、予め擬似リサイクル製品140kgが入れられた混合機(2軸パドルミキサー)に供給して混練した後、造粒乾燥機に供給して、450〜600℃の熱風下(排ガス出口温度180〜220℃)で乾燥した後、1mm、2mm,4mmの3種類の篩いを使い分けて4mm以下となるように篩い分けした。
次いで、得られた造粒乾燥品を燃焼炉に50kg/Hで供給して温度1200〜1300℃で滞留時間2時間以上を確保し、10分〜15分毎に焼成品を排出(製造)した。
ここで、水酸化ナトリウム添加量は、上記配合組成の添加量(変動量)とし、かつ、スラリー/リサイクル品の比率を下記表1に示す1:2〜0.7:1の各種比率のものを製造した。得られた焼成品の水酸化ナトリウム各添加量における乾燥品粒度分布、硬度の結果を下記表1に示す。
また、得られた水酸化ナトリウム各添加量におけるけい酸加里肥料のく溶性加里(C−KO)成分分析値、可溶性シリカ成分(S−SiO)の成分分析値を下記表2に示す。なお、これらの分析は、肥料取締法に基づく肥料分析法(農林水産省農業環境技術研究所)に準拠して行ったものである。
【0026】
【表1】

【0027】
【表2】

【0028】
上記表1及び表2の結果から明らかなように、水酸化ナトリウムが0%(なし)の場合は、1mm未満の粒度分布が60%以上となり、また、可溶性シリカ成分(S−SiO)26重量%程度であり、目的の特性を有するけい酸加里肥料が得られないことが判った。
これに対して、水酸化ナトリウムが3%〜10%の場合は、粒度分布が1mm未満の粒度分布が50%未満となり、また、く溶性加里(C−KO)が10%以上、可溶性シリカ成分(S−SiO)が30%以上となり、目的の特性を有するけい酸加里肥料が得られることが判った。
また、この水酸化ナトリウムが3〜10%の場合に、造粒乾燥後の中間体造粒物(リサイクル品)を混合工程に上記表1に示す各混合比とした場合にも、適正な粒度分布、すなわち、1mm以上の顆粒状造粒品の割合が50%以上となり、製品収率が向上できることが判った。
更に、この範囲の水酸化ナトリウムの配合により、肥料成分中のく溶性加里(C−KO)が2%クエン酸に溶け出す量と、可溶性シリカ成分(S−SiO)が0.5モル塩酸に溶け出す量の向上及びpH4.5の2%クエン酸アンモニウム溶液に溶け出す量〔く溶性加里(CA−KO)と、可溶性シリカ成分(SA−SiO)〕も向上できることが判った。
【0029】
以上のことから、水酸化ナトリウムの使用量が全量中3〜10重量%(原料のスラリー液に、3〜10重量%、全量100重量%)となる水酸化ナトリウムを添加混合することにより、所定の粒度分布の維持乃至向上を達成できると共に、造粒・乾燥工程での粉化及び発塵防止でき、更に、焼成製品化可能な乾燥造粒品の製造が可能となり、しかも、く溶性加里(C−KO)、可溶性けい酸(S−SiO)の生成が容易となるので、配合設計及び製造効率が良好となることが判った。
これは、水酸化ナトリウムによる造粒効果が相乗効果として発揮できるため、従来において、スラリー:リサイクル品=1:2であったのに対して、本発明では、混合割合を1:1等の範囲としても目的の特性を有するものが製造することができるので、中間体造粒物(リサイクル品)の混合割合を今までにない少ない比率(例えば、スラリー:リサイクル品=1:1)にすることができると共に、製造効率も向上し、目的の特性を有するけい酸加里肥料が得られることが判った。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明のけい酸加里肥料の製造方法の一例を示すフロー図である。
【図2】本発明のけい酸加里肥料の製造方法の他例を示すフロー図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、微粉炭燃焼灰と、カルシウム含有物と、カリウム含有物と、マグネシウム含有物と、全量中3〜10重量%となる水酸化ナトリウムとを混合して造粒、乾燥し焼成処理することにより得られるけい酸加里肥料からなることを特徴とするけい酸加里肥料。
【請求項2】
く溶性加里(C−KO)成分の含有量が10重量%以上35重量%未満、かつ、可溶性シリカ成分(S−SiO)の成分の含有量が25重量%以上45重量%未満となる請求項1記載のけい酸加里肥料。
【請求項3】
カリウム含有物が水酸化カリウムである請求項1又は2に記載のけい酸加里肥料。
【請求項4】
少なくとも、微粉炭燃焼灰と、カルシウム含有物と、カリウム含有物と、マグネシウム含有物とを原料としたけい酸加里肥料の製造方法であって、原料のスラリー液に、3〜10重量%となる水酸化ナトリウムを添加混合し、造粒工程、乾燥工程、焼成工程を経てけい酸加里肥料を製造することを特徴とするけい酸加里肥料の製造方法。
【請求項5】
焼成工程前に、造粒の核として造粒乾燥後の中間体造粒物(リサイクル品)を混合工程に戻す工程を含む請求項4記載のけい酸加里肥料の製造方法。
【請求項6】
造粒乾燥後の中間体造粒物(リサイクル品)の混合割合が、混合物全量に対して、30〜70重量%である請求項5記載のけい酸加里肥料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−111486(P2006−111486A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−300333(P2004−300333)
【出願日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(591195031)株式会社ジェイペック (8)
【Fターム(参考)】