説明

ごまペースト含有調味料の製造方法

【課題】 挽き立てのごまの香りを有し、乳化型にかぎらず分散型やノンオイル型等の広範囲の調味料にも適用することができる、ごまペースト含有調味料の製造方法を提供。
【解決手段】 全粒ごまとガム類との混合液状物(好ましくはガム液を添加混合した液に全粒ごまを添加混合して得た混合液状物)を磨砕処理(連続式粉砕機で磨砕処理)して挽き立てのごまの香りを有するごまペーストを得た後、他の原料と共に撹拌混合することによって、挽き立てのごまの香りを有するごまペースト含有調味料を製造する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、挽きたてのごまの香りを有するごまペーストを含有する調味料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ごま含有調味料は種々開発されている。たとえば、ごま粒子が良好に分散した乳化型液状調味料の効率的な製造方法として、調味液と液体油脂を混合し、次いで乳化した後、予め水性液体中に浸漬したごま粒子を添加して混合することを含むごま粒子含有乳化型液状調味料の製造方法がある(特許文献1参照)。
【0003】
また、酸味成分を含有する原材料を含有する調味液体にゴマが含有されたゴマ含有液状調味料を製造するにあたり、先ず酸味成分を有する原材料にゴマを浸漬してゴマの浸漬物を得、次いで該浸漬物全体を調味液体に加えることを特徴とするゴマ含有液状調味料の製造方法がある(特許文献2参照)。
【0004】
また、野菜や肉等に振りかけたときに、さっぱりとした新鮮な風味で食することができ、しかも食酢及び/又は柑橘類の果汁による酸味を程よく押さえた、胡麻特有の風味と香りを十分に有する液状調味料に関し、少なくとも食酢及び/又は柑橘類の果汁を含む水性原料と食用油脂とを含有する液状調味料であって、液状調味料全体に対して胡麻油を2〜15重量%及び胡麻ペーストを0.3〜3重量%の割合で含有する胡麻含有液状調味料がある(特許文献3参照)。
【0005】
また、極めて優れたごま風味を有し、また乳化安定性に優れたごま含有乳化型調味料に関し、油脂、ごま粉砕物、卵黄を含む水中油滴型に乳化された調味料であって、上記ごま粉砕物において目開き1000μmパス〜200μmオンの大きさのごま粉砕物を80重量%以上の割合で含み、当該調味料の粘度が20000〜100000mPa・sに調整されていることを特徴とするれたごま含有乳化型調味料がある(特許文献4参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平8−317773号公報
【特許文献2】特開2000−217539号公報
【特許文献3】特開平9−197号公報
【特許文献4】特開2003−304828号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記技術では、挽き立てのごまの香りという点では充分ではなく、また、上記技術の中には、調味料が乳化型に限定されるものもある。
本発明者等はこうした点に着目して研究を行った結果、全粒ごまをガム液に混合した後、磨砕処理することによって、意外にも得られたごまペーストが挽き立てのごまの香りに優れているという知見を得た。こうした知見を基に完成した本発明は、挽き立てのごまの香りを有し、乳化型にかぎらず分散型やノンオイル型にも適用することができる、ごまペースト含有調味料の製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の発明は、全粒ごまとガム類との混合液状物を磨砕処理してごまペーストとした後、他の原料と共に撹拌混合することを特徴とするごまペースト含有調味料の製造方法である。
本発明の第2の発明は、ガム類を添加混合した液に全粒ごまを添加混合して混合液状物とすることを特徴とする上記第1の発明記載のごまペースト含有調味料の製造方法である。
本発明の第3の発明は、全粒ごまとガム類との混合液状物を連続式粉砕機で磨砕処理してごまペーストとすることを特徴とする上記第1の発明又は第2の発明記載のごまペースト含有調味料の製造方法である。
本発明の第4の発明は、磨砕処理されたごまの含有量が最終製品に対して0.5〜5質量%であることを特徴とする上記第1の発明から第3の発明のいずれかに記載のごまペースト含有調味料の製造方法である。
本発明の第5の発明は、磨砕処理されたごまが10〜700μmの粒度であることを特徴とする上記第1の発明から第4の発明のいずれかに記載のごまペースト含有調味料の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の方法によって得られるごまペースト含有調味料は、挽きたてのごまの香りを有しており、風味的に好ましいものである。また、ごまペースト含有調味料は、最終形態として乳化型あるいは分離型であってもよく、さらには、ノンオイル型でもよく、その他広範囲のドレッシング等の調味料に適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明では、まず全粒ごまとガム類との混合液状物を準備する。ここに全粒ごまとは、適宜方法によって所望の香りに煎り処理されたもので、必ずしも全部が全粒ということではなく、一部が砕けた物や粗砕された物が混合されていてもよく、全粒のごまが主体であればよい。一部が砕けた物や粗砕された物が多くなったり、粉砕物が多くなってくると、後述するごまペーストの風味が、本発明が目的とする挽き立てのごまの香りの弱いものになってしまう。また、ごまの種類としては、特に限定されるものではなく、黒ごま、白ごま、金ごま等があり、これらを1種又は2種以上を混合して使用してもよい。
【0011】
次に、上記ガム類としては、キサンタンガム、グアガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、アラビヤガム等を例示することができ、これらを1種または2種以上を併用して用いることができるが、耐酸性、耐熱性の面からキサンタンガムやグアガムを使用する方が望ましい。これらガム類の中には、簡単に水に溶解し得ないものもあるため、全粒ごまとの混合に当たっては、予めガム類を水に溶解してガム液とし、これに全粒ごまを添加混合する方が好ましい。なお、上記ガム液は、使用するガム類の種類によって、それに適した方法で作ることになる。
【0012】
ガム液の粘度は、全粒ごまが均一分散し得る程度の粘性を混合液状物に付与することが好ましく、例えば、1,000〜10,000mPa・sの粘度、更には3,000〜7,000mPa・sの粘度であることが上記目的の面から好ましい。混合液状物の粘性が低くなりすぎると全粒ごまを混合液状物中で均一分散させることが難しくなってきて、撹拌しながら磨砕処理する等の工夫が必要になってくる。反対に、混合液状物の粘性が高くなりすぎると全粒ごまを混合液状物中で均一分散させることが難しくなってくるとともに、混合液状物の磨砕処理が難しくなってくる。また、装置への負荷も大きくなり、安全性の面からも好ましくない。
【0013】
ガム類の添加量は、上記ガム液の粘度を決定するものであり、ガム液の粘度を例えば、1,000〜10,000mPa・sにするために必要なガム類の添加量としては、キサンタンガムの場合は0.4〜4質量%、グアガムの場合は0.2〜2質量%等を例示することができる。また、このガム類は、最終製品である調味料に適度の粘性を付与するという機能も併せ持っている。
【0014】
上記混合液状物における全粒ごまの添加量は特に限定されるものではなく、実施者において適宜決定すればよいが、挽きたてのごまの香りを効果的に出させるという点から、混合液状物に対して10〜20質量%という条件を提示することができる。
【0015】
上記方法によって得られた混合液状物は、次に磨砕処理する。これによってごまの挽きたての好ましい香りを有するごまペーストを得る。この点が本発明の特徴のひとつである。磨砕処理方法は特に限定されないが、短時間で処理することができる、また、バッチ式による粉砕では、ごまに多く含まれている油脂によって粉砕時に装置に付着し、粉砕機に負荷がかかり過ぎたり、ロスの発生が多くなるという問題が防止できる等の点から連続式粉砕機、さらには連続式乳化機によって磨砕処理することが好ましい。磨砕処理の条件としては、磨砕処理したごまが10〜700μmの範囲の粒度になるような条件であることが好ましく、当業者において使用する機械に応じて適宜、決定すればよい。なお、上記粒度は、島津製作所製レーザー粒度分布計SALD2000Jで測定した値であり、以下も同様である。
【0016】
このようにして得られたごまペーストは、その後、最終製品であるごまペースト含有調味料の他の原料と適宜混合する。この場合、磨砕処理されたごまの含有量が最終製品に対して0.5〜5質量%になるように、ごまペーストを添加する。他の原料としては、最終製品の種類や形態によって異なってくるが、味噌、醤油、酢、糖類、香辛料、旨味調味料、各種エキス類、酸味料、乳化剤等を例示することができる。ごまペーストを上記各種素材と適宜混合した後、保存性を考慮して加熱殺菌し、必要に応じて適宜容器に充填して最終製品であるごまペースト含有調味料を得る。得られたごまペースト含有調味料は、前述のごとく、ごまペースト中のガム類によって粘性が付与されるが、粘度をより高くしたい場合には、適宜増粘剤を添加することによって、粘度調整してもよい。
【実施例1】
【0017】
増粘多糖類(キサンタンガム、グアガム)0.2質量部を水13質量部に添加して溶解させた後、全粒ごま2.5質量部を添加混合して混合液状物を得る。次に、混合液状物をマイルダー(太平洋機工製)を用いて粉砕処理してごまペーストを得る。粉砕条件は、セネレーターの組み合わせを標準の(G1+M+F)とし、回転数は10,000rpmとした。よって得られたごまペースト中のごま粒子の粒度は50μm〜700μmで、平均粒度は108μmあった。
【0018】
つぎに、上記ごまペースト15.7質量部と、味噌14質量部、醤油12、酢9.7質量部、糖類24質量部、旨み配合1.5質量部、植物油10質量部、香辛料1質量部、全粒ごま4.7質量部、水7.4質量部を混合して分離型のごまペースト含有調味料100質量部を得た。得られたごまペースト含有調味料は、挽き立てのごまの香りを有した好ましいものであった。
【実施例2】
【0019】
増粘多糖類(キサンタンガム0.05質量部、グアガム0.05質量部)0.1質量部を水8.5質量部に添加して溶解させた後、全粒ごま5質量部を添加混合して混合液状物を得る。次に、混合液状物をマイルダー(太平洋機工製)を用いて粉砕処理してごまペーストを得る。粉砕条件は、セネレーターの組み合わせを標準の(G1+M+F)とし、回転数は10,000rpmとした。よって得られたごまペースト中のごま粒子の粒度は10〜700μmで、平均粒度は176μmであった。
【0020】
つぎに、上記ごまペースト13.6質量部と、醤油5質量部、酢15質量部、糖類18質量部、旨み配合4.5質量部、植物油30質量部、グリセリン脂肪酸エステル0.4質量部、香辛料0.5質量部、全粒ごま6.5質量部、水6.5質量部を混合して乳化型のごまペースト含有調味料100質量部を得た。得られたごまペースト含有調味料は、挽き立てのごまの香りを有した好ましいものであった。
【実施例3】
【0021】
キサンタンガム0.1質量部を水21部に添加して溶解させた後、全粒ごま4質量部を添加混合して混合液状物を得る。次に、混合液状物をマイルダー(太平洋機工製)を用いて粉砕処理してごまペーストを得る。粉砕条件は、セネレーターの組み合わせを標準の(G1+M+F)とし、回転数は10,000rpmとした。よって得られたごまペースト中のごま粒子の粒度は100〜700μmで、平均粒度は122μmであった。
【0022】
つぎに、上記ごまペースト25.1質量部と、食塩6質量部、酢10質量部、糖類34質量部、旨み配合3.4質量部、香辛料0.5質量部、水21質量部を混合してノンオイル型のごまペースト含有調味料100質量部を得た。得られたごまペースト含有調味料は、挽き立てのごまの香りを有した好ましいものであった。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明の方法は、挽き立てのごまの香りを有し、乳化型にかぎらず分散型やノンオイル型にも適用することができ、広くごま風味の調味料に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全粒ごまとガム類との混合液状物を磨砕処理してごまペーストとした後、他の原料と共に撹拌混合することを特徴とするごまペースト含有調味料の製造方法。
【請求項2】
ガム類を添加混合した液に全粒ごまを添加混合して混合液状物とすることを特徴とする請求項1記載のごまペースト含有調味料の製造方法。
【請求項3】
全粒ごまとガム類との混合液状物を連続式粉砕機で磨砕処理してごまペーストとすることを特徴とする請求項1又は2記載のごまペースト含有調味料の製造方法。
【請求項4】
磨砕処理されたごまの含有量が最終製品に対して0.5〜5.0質量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のごまペースト含有調味料の製造方法。
【請求項5】
磨砕処理されたごまが10〜700μmの粒度であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のごまペースト含有調味料の製造方法。

【公開番号】特開2007−28994(P2007−28994A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−217041(P2005−217041)
【出願日】平成17年7月27日(2005.7.27)
【出願人】(000111487)ハウス食品株式会社 (262)
【Fターム(参考)】