説明

さく孔機用ガイドシェル

【課題】ライナがビーム材から脱落したりずれ動いたりすることを抑制可能なガイドシェルを提供する。
【解決手段】可動部材(例えばキャリッジ)を案内する案内部(例えばキャリッジ案内部31)が長手方向に沿って形成されたビーム材30を備える。案内部31に沿って取り付けられて該案内部31を被覆し、可動部材を摺動させるライナ40を備える。可動部材の移動を妨げない配置でビーム材30に取り付けられて、ライナ40の一部分をビーム材30に対し押し付けることにより、ビーム材30からのライナ40の浮き上がりを規制する押付部材50を備える。鋼製ライナ40、その上下両端縁の係止部41、42のばね作用によって案内部に取り付けられ、クランプ50は、そのばね作用によって、係止部42をビーム材30に対し押し付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ライナを有するさく孔機用ガイドシェルに関する。
【背景技術】
【0002】
ドリルジャンボやクローラドリル等のさく孔機は、さく岩機を搭載するガイドシェルを備えている。ガイドシェルはさく孔機の走行台車に起伏旋回および水平旋回可能に設けられたブーム先端にガイドスライドを介して前後移動可能に支持されており、ガイドシェルの先端は切羽の任意のさく孔位置に位置決めできる。ガイドシェル上にはさく孔機を固定したキャリッジが前後移動可能に搭載されている。
【0003】
ガイドシェルを構成するビーム材は、例えば、キャリッジを案内するキャリッジ案内部と、ガイドスライドにより案内されるガイドスライド案内部(相対的にガイドスライドを案内することになる)と、を有する。
【0004】
さく孔精度と作業性を向上させるために、ガイドシェルはできるだけ軽量であることが望ましい。このため、ガイドシェルのビーム材は、例えばアルミニウム合金により形成される。ただし、粉塵、泥水、落石等の悪環境下でさく孔位置により上、横、下等種々の向きで使用されても、変形したり、キャリッジ案内部及びガイドスライド案内部が磨耗したりすることを抑制できるよう、ガイドシェルには強度および耐久性も求められる。
【0005】
そこで、従来、ガイドシェルのキャリッジ案内部及びガイドスライド案内部を鋼製ライナで被覆し、各案内部に生じる磨耗を抑制している(例えば、特許文献1を参照)。
【0006】
図3は、ビーム材101のキャリッジ案内部102を鋼製ライナ103により被覆する構成のガイドシェル100を示す図である。図3(a)はキャリッジ案内部102を鋼製ライナ103により被覆した状態を、図3(b)はキャリッジ案内部102を鋼製ライナ103により被覆する前の状態における分解図を、それぞれ示す。
【0007】
ビーム材101は、例えば、上向きに開口した断面コ字形状に形成され、その左右の側壁部の上縁沿いに、それぞれキャリッジ案内部102を有している。なお、図3には、ビーム材101の右側上部のみを示している。
【0008】
このキャリッジ案内部102は、ビーム材101の長手方向に連続的に形成された、断面が山形の突起である。
【0009】
キャリッジ案内部102は鋼製ライナ103により被覆され、鋼製ライナ103の表面(キャリッジ案内部102とは反対側を向き外面に露出する面)でキャリッジ(図示略)を摺動案内(摺動させて案内)するようになっている。
【0010】
鋼製ライナ103は、ばね鋼の平らなシートを断面山形に折り曲げて形成されており、この山形の内周面は、キャリッジ案内部102に沿う形状とされている。鋼製ライナ103の上下両側の縁は内側に湾曲して係止部104、105を構成している。
【0011】
鋼製ライナ103は、ばね鋼の弾性力により、一方の係止部105が係止溝に係止され、他方の係止部104がキャリッジ案内部102の上端に係止されることにより、ビーム材101に取り付けられている。
【0012】
キャリッジは、キャリッジ案内部102の長手方向に案内されるよう、鋼製ライナ103を介してキャリッジ案内部102を抱えるように保持している。これにより、キャリッジは、鋼製ライナ103の表面に沿って摺動案内されるようになり、キャリッジ案内部102に沿って削岩機とともに移動可能となっている。
【特許文献1】特開昭60―233290号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、さく孔現場では、さく孔機が隣接する他の装置類と接触したりすることがある。このような接触等により、ガイドシェル100に直接或いは間接に様々な外力が作用して、鋼製ライナ103が変形することがある。
【0014】
鋼製ライナ103は、ばね鋼の弾性力のみを利用してガイドシェル100に取り付けられているので、ガイドシェル100に働く外力でビーム材101から脱落したりずれ動いたりすることがある。
【0015】
また、鋼製ライナ103は長尺の薄板部材であり、その全長に亘って係止部104,105を精度良く折り曲げ加工するのは容易ではない。このため、鋼製ライナ103の寸法精度によっては、該鋼製ライナ103をビーム材101に取り付けることが非常に困難であったり、或いは係止が不十分で該鋼製ライナ103がビーム材101から脱落しやすかったりする場合がある。
【0016】
本発明は、上記した従来の技術の問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、鋼製ライナなどのライナがビーム材から脱落することを抑制可能なさく孔機用ガイドシェルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するため、本発明のさく孔機用ガイドシェルは、可動部材を案内する案内部が長手方向に沿って形成されたビーム材と、前記案内部に沿って取り付けられて該案内部を被覆し、前記可動部材を摺動させるライナと、前記可動部材の移動を妨げない配置で前記ビーム材に取り付けられて、前記ライナの一部分を前記ビーム材に対し押し付ける押付部材と、を備え、前記ライナにおいて前記ビーム材の前記長手方向に直交する方向の両端縁には、内側に向けて湾曲し、前記ビーム材に係止される係止部がそれぞれ形成され、前記ライナは、前記係止部のばね作用によって前記案内部に取り付けられ、前記押付部材は、該押付部材のばね作用によって、前記ライナの一部分を前記ビーム材に対し押し付けることを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、ライナは、その両端縁に形成された係止部のばね作用によってビーム材の案内部に沿って取り付けられる。さらに、押付部材がライナの一部分をビーム材に対しばね作用によって押し付けることにより、ビーム材からのライナの浮き上がりを規制することができるので、ライナに外力が作用した場合に該ライナがビーム材から脱落したりずれ動いたりすることを好適に抑制できる。
【0019】
本発明のさく孔機用ガイドウェルにおいては、前記押付部材は、前記ライナの一方の係止部を前記ビーム材に対し押し付ける構成とすることができる。この場合、押付部材がライナの一方の係止部をビーム材に対し押し付けて、ビーム材からのライナの浮き上がりを規制することができる。このように、押付部材が係止部の機能を補助するので、ライナの寸法精度が悪く、該ライナが多少大きい寸法に形成されたり、或いは逆に多少小さい寸法に形成されたりした場合であっても、ライナをビーム材に取り付けることが可能となる。
【0020】
また、ビーム材には、案内部が少なくとも2つ形成され、各案内部にライナが取り付けられている場合に、一の押付部材により2つのライナの双方の前記一方の係止部をビーム材に対し押し付けるようにしても良い。これにより、ガイドシェルが2つ以上の可動部材を案内する場合において、一の押付部材を2つのライナの浮き上がり規制に兼用できるため、押付部材の部品点数を低減することが可能となる。
【0021】
また、押付部材は、例えば、弾性体からなるものとして構成することができる。これにより、押付部材はばね作用を好適に発揮することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ライナがガイドシェルのビーム材から脱落したりずれ動いたりすることを好適に抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜に説明を省略する。
【0024】
図1は本実施形態に係るさく孔機用ガイドシェル20を備えるさく孔機の側面図、図2は図1のA−A線に沿った矢視断面図である。
【0025】
なお、本実施形態では前後左右上下の方向を規定した説明を行う。しかし、これは本発明の構成要素の相対位置関係の一例を簡単に説明するために便宜的に規定するものであり、本発明を実施する場合の製造時や使用時の方向を限定するものではない。具体的には、前方は図1における左方、後方は図1における右方であるものとする。また、上方は図1および図2の上方、下方は図1および図2の下方であるものとする。また、左方は図1では奥かつ図2では右方であるものとし、右方は図1では手前かつ図2では左方であるものとする。
【0026】
本実施形態に係るさく孔機用ガイドシェル20は、可動部材(例えば、キャリッジ11、サブセントラライザ17、ガイドマウンチング12)を案内する案内部(例えば、キャリッジ案内部31、ガイドスライド案内部32)が長手方向に沿って形成されたビーム材30と、案内部に沿って取り付けられて該案内部を被覆し、可動部材を摺動させるライナ(例えば、鋼製ライナ40)と、可動部材の移動を妨げない配置でビーム材30に取り付けられて、ライナの一部分をビーム材に対し押し付ける押付部材(例えば、クランプ50)とを備える。そして、ライナにおいてビーム材30の長手方向に直交する方向の両端縁には、内側に向けて湾曲し、ビーム材30に係止される係止部41、42がそれぞれ形成され、ライナは、係止部41、42のばね作用によって案内部に取り付けられ、押付部材は、該押付部材のばね作用によって、ライナの一部分をビーム材30に対し押し付ける。以下、詳細に説明する。
【0027】
本実施形態に係るさく孔機用ガイドシェル20(以下、単にガイドシェル20)は、例えば、図示しない公知のさく孔機(例えばドリルジャンボ)に搭載され、岩盤にさく孔作業を行うための装置である。すなわち、ガイドシェル20は、例えば、さく孔機の走行台車(図示略)に起伏旋回および水平旋回可能に設けられたブーム10の先端にガイドマウンチング12を介して設けられ、図示しない送り機構により、さく岩機13が搭載されたキャリッジ11を前進および後退可能に案内および支持するものである。
【0028】
さく岩機13には公知の打撃機構と回転機構が備えられており、これらの機構で発生させた打撃と回転をロッド14を介してビット15に伝えて岩盤等にさく孔する。
【0029】
ガイドシェル20の先端にはセントラライザ16が設けられ、該セントラライザ16はロッド14の先端部を保持している。セントラライザ16とキャリッジ11との中間にはサブセントラライザ17が、キャリッジ11と同様に前進および後退可能に設けられ、ロッド14の中間部を保持している。
【0030】
また、ガイドシェル20は、ガイドマウンチング12とガイドシェル20の先端を連結するガイドスライドシリンダ12aの伸縮動作に伴い、ガイドマウンチング12に対して前進および後退する。
【0031】
ガイドシェル20の先端にはフートパッド18が設けられている。このフートパッド18をガイドスライドシリンダ12aの動作に伴わせて岩盤へと押付けることにより、岩盤の安定を図ることができる。
【0032】
ガイドシェル20の本体は、例えば、アルミニウム合金を押出成形することにより構成されたビーム材30である。
【0033】
図2に示すように、ビーム材30は、例えば、上向きに開口した断面コ字形状に形成されている。
【0034】
ビーム材30は、左右の側壁部の上縁に形成されたキャリッジ案内部(案内部)31と、左右の側壁部の下縁に形成されたガイドスライド案内部(案内部)32と、左右の側壁部においてキャリッジ案内部31とガイドスライド案内部32との中間部分である中間部33と、左右の側壁部を相互に連結する連結部34と、により構成されている。
【0035】
なお、ビーム材30は、図2に示すように、その横断面視において左右対称である。
【0036】
キャリッジ案内部31は、ビーム材30の側壁部の上縁に、該ビーム材30の長手方向に沿って連続的に形成された、断面が山形の突起である。
【0037】
より詳細には、キャリッジ案内部31は、例えば、頂点がビーム材30の側方を向く頂部31a、この頂部31aを境界とする一対の斜面31b、ビーム材30の側壁部における縁に位置する稜端部31c、および、中間部33との境界に隣接する位置に、内側に窪んで形成された窪部31dからなる。なお、例えば、稜端部31cの方が窪部31dよりも寸法が大きく設定されている。
【0038】
ガイドスライド案内部32は、ビーム材30の側壁部の下縁に、該ビーム材30の長手方向に沿って連続的に形成された、断面が山形の突起である。
【0039】
このガイドスライド案内部32とキャリッジ案内部31とは、ほぼ上下対称型をなしている。すなわち、ガイドスライド案内部32は、キャリッジ案内部31と同様に、頂部32a、一対の斜面32b、稜端部32c、および窪部32dからなる。
【0040】
これらキャリッジ案内部31およびガイドスライド案内部32には、詳細を後述する鋼製ライナ40がそれぞれ取り付けられている。
【0041】
キャリッジ案内部31は、鋼製ライナ40を介して、キャリッジ11およびサブセントラライザ17を、それぞれビーム材30の長手方向に沿って摺動させて案内する。同様に、ガイドスライド案内部32は、鋼製ライナ40を介して、ガイドマウンチング12をビーム材30の長手方向に沿って摺動させて案内する。
【0042】
ビーム材30の中間部33は、キャリッジ案内部31の窪部31dとガイドスライド案内部32の窪部32dとを直線的に相互に連結するような、平板な壁状部である。この中間部33には、後述するクランプ50を該中間部33に対して固定するためのボルト穴(雌ネジ)33aが形成されている。
【0043】
なお、連結部34は、ビーム材30の左右に形成された中間部33、キャリッジ案内部31およびガイドスライド案内部32からなるユニットを相互に連結するものであり、中間部33と同様に、平板に形成されている。
【0044】
鋼製ライナ40は、図3に示した鋼製ライナ103と同様である。すなわち、鋼製ライナ40は、ばね鋼の平らな長尺シートを断面山形に折り曲げて形成されており、この山形形状の内周面は、キャリッジ案内部31並びにガイドスライド案内部32の山形形状に沿うような形状とされている。
【0045】
鋼製ライナ40の両縁部のうち、一方は稜端部31c並びに稜端部32cに沿うように内側に湾曲されて係止部(大)41を構成し、他方は窪部31d並びに窪部32dに沿うように内側に湾曲されて係止部(小)42を構成している。
【0046】
鋼製ライナ40は、キャリッジ案内部31およびガイドスライド案内部32にそれぞれ取り付けられている。
【0047】
すなわち、キャリッジ案内部31に対しては、図2に示すように、鋼製ライナ40の係止部41を稜端部31cに、係止部42を窪部31dに、それぞれ係止させることにより、これら係止部41、42の係止作用によって、該キャリッジ案内部31に沿って鋼製ライナ40が取り付けられている。
【0048】
また、ガイドスライド案内部32に対しては、図2に示すように、鋼製ライナ40の係止部41を稜端部32cに、係止部42を窪部32dに、それぞれ係止させることにより、該ガイドスライド案内部32に沿って鋼製ライナ40が取り付けられている。
【0049】
なお、鋼製ライナ40は弾性体であるため、係止部41,42は、それらのばね作用によって稜端部31cおよび窪部31d、並びに、稜端部32cおよび窪部32dに、それぞれ係止されている。
【0050】
鋼製ライナ40は、例えば、ビーム材30の全長に亘る長尺部材であり、1つの鋼製ライナ40が、1つのキャリッジ案内部31、または1つのガイドスライド案内部32を全域に亘って覆っている。
【0051】
次に、クランプ50は、例えば、ばね鋼の平らなシートからなる。すなわち、クランプ50は、例えば、板状部材であるとともに、弾性体からなる。
【0052】
このクランプ50には、例えば、該クランプ50をビーム材30に対して固定するためのボルト挿通孔51が、その中央部に形成されている。
【0053】
更に、クランプ50は、例えば、ばね鋼の平らなシートの両端を曲げることにより形成された一対の押付部52を有している。この押付部52は、例えば、クランプ50をビーム材30の中間部33に取り付けた際に、中間部33から斜めに起立し、鋼製ライナ40の係止部42に沿って配置されるように反り返っている。なお、クランプ50は弾性体からなるため、ばね作用を有している。
【0054】
このようなクランプ50は、止着部材としてのボルト60をボルト挿通孔51を介してボルト穴33aに螺入することにより、ビーム材30の中間部33に対して固定されている。この固定の際、ボルト60の締付により、クランプ50の一対の押付部52のうちの一方は、キャリッジ案内部31に取り付けられた鋼製ライナ40の係止部(小)42をキャリッジ案内部31の窪部31d側へとばね作用を伴って押し付け、他方は、ガイドスライド案内部32に取り付けられた鋼製ライナ40の係止部(小)42をガイドスライド案内部32の窪部32d側へとばね作用を伴って押し付ける。すなわち、クランプ50は鋼製ライナ40の一部分をビーム材30に対しばね作用によって押し付ける。
【0055】
なお、クランプ50は、鋼製ライナ40のような長尺部材ではなく、例えば、ビーム材30の長手方向における複数箇所に、それぞれ取り付けられている。図1の例では、例えば、ビーム材30の片側につき、4箇所(左右両側では、例えば8箇所)にクランプ50を取り付けている。
【0056】
クランプ50は、例えば、図1に示すように、矩形状に形成することができるが、その他の形状であっても良い。ただし、クランプ50は、ビーム材30に取り付けられた状態において、可動部材としてのキャリッジ11、サブセントラライザ17およびガイドマウンチング12の移動を妨げないような形状および寸法に設定されている。すなわち、クランプ50は、可動部材の移動を妨げない配置(可動部材と干渉しない配置)でビーム材30に取り付けられる。
【0057】
以上により、鋼製ライナ40は、自身の弾性力(ばね作用)とクランプ50の押し付け力および弾性力(ばね作用)によりビーム材30に対して強固に取り付けられる。
【0058】
なお、キャリッジ11は、左右一対のキャリッジ案内部31を、それぞれに設けられた鋼製ライナ40を介して抱えるように保持している。これにより、キャリッジ案内部31に取り付けられた鋼製ライナ40の表面は、キャリッジ案内部31の長手方向に沿って、キャリッジ11を該表面に対し摺動させて案内するようになっている。
【0059】
同様に、サブセントラライザ17も、左右一対のキャリッジ案内部31を、それぞれに設けられた鋼製ライナ40を介して抱えるように保持している。これにより、キャリッジ案内部31に取り付けられた鋼製ライナ40の表面は、キャリッジ案内部31の長手方向に沿って、サブセントラライザ17を、該表面に対し摺動させて案内するようになっている。
【0060】
同様に、ガイドマウンチング12は、左右一対のガイドスライド案内部32を、それぞれに設けられた鋼製ライナ40を介して抱えるように保持している。これにより、ガイドスライド案内部32に取り付けられた鋼製ライナ40の表面は、ガイドスライド案内部32の長手方向に沿って、ガイドマウンチング12を該表面に対し摺動させて案内するようになっている。
【0061】
ただし、キャリッジ11、サブセントラライザ17及びガイドマウンチング12は、それぞれ、少なくとも係止部42を避けた部分を保持している。これにより、係止部42を押し付けるクランプ50が、これらキャリッジ11、サブセントラライザ17及びガイドマウンチング12の移動を妨げないようになっている。
【0062】
以上のような実施形態によれば、ガイドシェル20は、キャリッジ11及びサブセントラライザ17を案内するキャリッジ案内部31と、ガイドマウンチング12を案内するガイドスライド案内部32と、が長手方向に沿って形成されたビーム材30と、キャリッジ案内部31及びガイドスライド案内部32に沿って取り付けられてこれらキャリッジ案内部31及びガイドスライド案内部32を被覆し、キャリッジ11、サブセントラライザ17、ガイドマウンチング12を摺動させる鋼製ライナ40と、キャリッジ11、サブセントラライザ17、ガイドマウンチング12の移動を妨げない配置でビーム材30に取り付けられて、鋼製ライナ40の一部分(例えば、係止部42)をビーム材30に対し押し付けるクランプ50と、を備え、鋼製ライナ40においてビーム材30の長手方向に直交する方向の両端縁には、内側に向けて湾曲し、ビーム材30に係止される係止部41、42がそれぞれ形成され、鋼製ライナ40は、係止部41、42のばね作用によってキャリッジ案内部31及びガイドスライド案内部32に沿って取り付けられ、クランプ50は、該クランプ50のばね作用によって、鋼製ライナ40の一部分をビーム材30に対し押し付けるので、鋼製ライナ40は、係止部41、42のばね作用によってビーム材30のキャリッジ案内部31及びガイドスライド案内部32に沿って取り付けられる。さらに、クランプ50が鋼製ライナ40の一部分をビーム材30に対しばね作用によって押し付けることにより、ビーム材30からの鋼製ライナ40の浮き上がりを規制することができるので、鋼製ライナ40に外力が作用した場合に該鋼製ライナ40がビーム材30から脱落したりずれ動いたりすることを好適に抑制できる。
【0063】
また、クランプ50は、鋼製ライナ40の一方の係止部42をビーム材30に対し押し付けるので、ビーム材30からの鋼製ライナ40の浮き上がりを規制することができる。つまり、クランプ50が係止部42の機能を補助するようにできる。よって、鋼製ライナ40の寸法精度が悪く、該鋼製ライナ40が多少大きい寸法に形成されたり、或いは逆に多少小さい寸法に形成されたりした場合であっても、鋼製ライナ40をビーム材30に取り付けることが可能となる。
【0064】
また、ビーム材30には、左右一対のキャリッジ案内部31と、左右一対のガイドスライド案内部32と、が形成され、各案内部31、32に鋼製ライナ40が取り付けられ、ビーム材30の両側においてそれぞれ一のクランプ50により2つの鋼製ライナ40の双方の一方の係止部42をビーム材30に対し押し付けるので、一のクランプ50を2つの鋼製ライナ40の浮き上がり規制に兼用できる。よって、クランプ50の部品点数を低減することが可能となる。
【0065】
また、クランプ50は、弾性体からなるので、クランプ50はばね作用を好適に発揮することができる。
【0066】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明がこれに限定されるわけではなく、発明の本質が逸脱しない範囲で適宜に構成を変更することを妨げない。
【0067】
例えば、鋼製ライナ40に代えて、他の金属製のライナ、或いはその他の材質のライナを用いても良い。また、押付部材(クランプ50)は、ライナの係止部をビーム材30に対して押し付けることが可能であれば、板状でなくても良い。
【0068】
また、ボルト60を完全に取り外さなくても、鋼製ライナ40をビーム材30から取り外せるように、クランプ50の形状を変更しても良い。すなわち、例えば、ボルト60を緩めてクランプ50をビーム材30から浮かせ該クランプ50をボルト60の軸周りに回転(例えば90度回転)させた状態では、クランプ50が鋼製ライナ40(の係止部42)に被さらないように、クランプ50の図2の上下方向における寸法よりも、図2の手前から奥に向かう方向における寸法を小さく設定する。これにより、ボルト60を完全に取り外さなくても、鋼製ライナ40をビーム材30から取り外すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】実施形態に係るさく孔機用ガイドシェルを備えるさく孔機の側面図である。
【図2】図1のA−A線に沿った矢視断面図である。
【図3】従来のさく孔機用ガイドシェルを示す図である。
【符号の説明】
【0070】
11 キャリッジ(可動部材)
12 ガイドマウンチング(可動部材)
17 サブセントラライザ(可動部材)
20 ガイドシェル(さく孔機用ガイドシェル)
30 ビーム材
31 キャリッジ案内部(案内部)
32 ガイドスライド案内部(案内部)
40 鋼製ライナ(ライナ)
41 係止部
42 係止部(一方の係止部)
50 クランプ(押付部材)
60 ボルト(止着部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動部材を案内する案内部が長手方向に沿って形成されたビーム材と、
前記案内部に沿って取り付けられて該案内部を被覆し、前記可動部材を摺動させるライナと、
前記可動部材の移動を妨げない配置で前記ビーム材に取り付けられて、前記ライナの一部分を前記ビーム材に対し押し付ける押付部材と、
を備え、
前記ライナにおいて前記ビーム材の前記長手方向に直交する方向の両端縁には、内側に向けて湾曲し、前記ビーム材に係止される係止部がそれぞれ形成され、
前記ライナは、前記係止部のばね作用によって前記案内部に取り付けられ、
前記押付部材は、該押付部材のばね作用によって、前記ライナの一部分を前記ビーム材に対し押し付けることを特徴とするさく孔機用ガイドシェル。
【請求項2】
前記押付部材は、前記ライナの一方の係止部を前記ビーム材に対し押し付けることを特徴とする請求項1に記載のさく孔機用ガイドシェル。
【請求項3】
前記ビーム材には、前記案内部が少なくとも2つ形成され、各案内部に前記ライナが取り付けられ、
一の前記押付部材により2つのライナの双方の前記一方の係止部を前記ビーム材に対し押し付けることを特徴とする請求項2に記載のさく孔機用ガイドシェル。
【請求項4】
前記押付部材は、弾性体からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のさく孔機用ガイドシェル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate