説明

しみ取り液

【課題】衣類や寝具等の繊維材に付着したしみの除去に用いるしみ取り液として、特に口紅やファンデーション等の化粧料のしみに対する除去効果に優れ、汚れが付着したその場でのしみ抜きに非常に有効なものを提供する。
【解決手段】水中に、0.1〜20重量%の界面活性剤と、0.1〜20重量%の対油脂溶剤と、0.05〜1重量%の水溶性ポリマーからなる増粘剤と、0.01〜0.5重量%の焼成カルシウムとが添加混合されてなるしみ取り液とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣服等に付着したしみ、特に口紅やファンデーション等の化粧料のしみを除去するのに好適なしみ取り液に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、衣類や寝具等の繊維材に付着した種々のしみは、付着後の時間が経過するほど繊維中に染みついて除去困難になるが、汚れが付着したその場では応急処置として水を含ませた布で拭うか水を着けて揉む程度であり、それによって汚れが薄まることはあっても除去できず、却ってしみつきの領域を拡げてしまったり、浸透による広範囲な水濡れで継続しての着用・使用が困難になることが往々にしてある。とりわけ、口紅やファンデーション等の化粧料のしみは、水による応急処置では殆ど取れず、のちのクリーニングにおいても特殊な除去処理が必要になる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上述の情況に鑑み、衣類や寝具等の繊維材に付着したしみの除去に用いるしみ取り液として、特に口紅やファンデーション等の化粧料のしみに対する除去効果に優れ、汚れが付着したその場でのしみ抜きに非常に有効なものを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係るしみ取り液は、水中に、0.1〜20重量%の界面活性剤と、0.1〜20重量%の対油脂溶剤と、0.05〜1重量%の水溶性ポリマーからなる増粘剤と、0.01〜0.5重量%の焼成カルシウムとが添加混合されてなるものとしている。
【0005】
また、請求項2の発明は、上記請求項1のしみ取り液における界面活性剤がポリオキシアルキレンアルキルエーテルである構成としている。
【0006】
請求項3の発明は、上記請求項1又は2のしみ取り液における対油脂溶剤がセロソルブである構成としている。
【0007】
請求項4の発明は、上記請求項1〜3の何れかのしみ取り液における増粘剤が天然高分子多糖類からなるものとしている。
【0008】
請求項5の発明は、上記請求項1〜4の何れかのしみ取り液における焼成カルシウムが生体殻の焼成物であるものとしている
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明に係るしみ取り液は、口紅やファンデーション等の化粧料のしみが付着した繊維材に含浸させることにより、セロソルブ成分が一般的に該化粧料のベースになっている油脂を溶解すると共に、焼成カルシウムに由来するカルシウム成分が界面活性剤の作用を高めて衣類等の繊維から遊離するから、その液を布や脱脂綿等で吸い取るか少量の水で濯ぐことで効率よくしみを除去できる。また、このしみ取り液では、汚れが付着したその場でしみつき部分に滴下含浸させても、含有する増粘剤の作用で繊維材上における浸透が抑えられるから、しみつきの領域が拡がるのを防止できる上、含有する有効成分が逸散せずに効率よく作用し、それだけ汚れの遊離除去の効果が大きくなると共に、水濡れを少なくできるので衣服等の継続着用が可能になる。
【0010】
請求項2の発明によれば、しみ取り液が特定の界面活性剤を含有することから、しみ取り効果が向上する。
【0011】
請求項3の発明によれば、しみ取り液が特定の対油脂溶剤を含有することから、特に口紅やファンデーションのしみに対する優れた除去効果が得られる。
【0012】
請求項4の発明によれば、しみ取り液の増粘剤が天然高分子多糖類からなるため、皮膚を刺激したり繊維材の生地を傷めたりする懸念がない。
【0013】
請求項5の発明によれば、焼成カルシウムが生体殻の焼成物であることから、より優れたしみ取り効果が得られると共に、該焼成カルシウム成分を大量に食消費されるホタテ貝殻等を原料として安価に入手できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のしみ取り液は、既述のように、水中に、界面活性剤、増粘剤、対油脂溶剤及び焼成カルシウムを特定割合で添加混合したものであり、衣服や寝具等の繊維材に付着したしみ、特に口紅やファンデーション等の化粧料のしみに対する優れた除去効果を発揮する。
【0015】
このしみ取り液に用いる対油脂溶剤は、これを含むしみ取り液を衣服や寝具等に付着した口紅やファンデーション等の化粧料によるしみ部分に含浸させた際に、これら化粧料のベースになっている油脂成分を溶解させる機能を果たす。その添加量は、しみ取り液全量の0.1〜20重量%となる範囲であり、0.1重量%未満では充分な添加効果が得られず、逆に20重量%を越えては対象物を着色している染料が抜ける懸念がある。なお、対油脂溶剤の最も好適な配合量は、しみ取り液全量の5〜20重量%の範囲である。
【0016】
しかして、対油脂溶剤としては、特に制約はないが、水溶性で且つ油脂に対する高い溶解力を持つ溶剤であるセロソルブ(別称エチレングリコールモノエーテル)が好適である。また、このセロソルブとしては、特に制約はないが、2−n−ブトキシエタノール(別称エチレングリコールモノブチルエーテル=EGMB)は、水溶性で油脂溶解力が高いことに加え、構造上から繊維及び染色に対する安全性が高い点から推奨される。
【0017】
また、しみ取り液に用いる焼成カルシウムは、界面活性剤の作用を著しく高める機能を発揮することが判明している。その添加量は、しみ取り液全量の0.01〜0.5重量%となる範囲であり、0.01重量%未満では充分な添加効果が得られず、逆に0.5重量%を越えては不溶分を生じ易い。
【0018】
上記の焼成カルシウムは、しみ取り液の調製に際してその微粉末を水中に添加するが、化学品としての酸化カルシウム粉末つまり石灰石の熱分解で得られる所謂生石灰よりも、生体殻つまり貝類等の生体に付随する炭酸カルシウム系の殻を焼成した焼成カルシウムが好適である。この生体殻の焼成カルシウムは、生石灰とは性質が異なり、水と激しく反応して発熱するようなことがない。その理由については明確ではないが、例えば、ホタテ貝殻から得られる焼成カルシウムでは、水中に添加した際、生石灰の水和時に発生するような反応熱も観測されないため、急速な水酸化カルシウムの生成はなく、また液のpHの上昇も少ないことから、水中であまりイオン化せずにコロイド粒子として存在するものと推測される。
【0019】
このような焼成カルシウム粉末の原料となる生体殻としては、例えばホタテ貝、牡蠣、サザエ、ホッキ貝、ハマグリ、アサリ、シジミ等の貝殻の他、ウニの殻、鶏卵の殻、珊瑚等も挙げられる。しかして、貝殻、とりわけ大量に食消費されるホタテ貝の殻は、安価に入手できると共に、廃物の有効利用として省資源及び環境保全にも貢献できる上、焼成・粉砕品が均質で性能的にも優れるから、特に好適なものとして推奨される。
【0020】
上記貝殻の如き生体殻の焼成は、少量ではオートクレーブや電気炉等を用い、多量ではロータリーキルンや大型燃焼炉等を用いて行うが、好適には不活性ガス雰囲気として、温度700〜1100℃程度で数分〜数時間程度加熱すればよい。また、粉砕は焼成前後のいずれでもよいし、粗粉砕して焼成後に更に粉砕してもよい。焼成カルシウムの粒度しては、平均粒子径で2〜100μmの範囲がよく、大き過ぎてはしみ取り液を含浸させた繊維材に付着残留してざらついたりする懸念がある。
【0021】
また、しみ取り液に用いる前記の界面活性剤は、化粧料のしみ取りにおいて、前記のようにセロソルブによって溶解した油脂成分を繊維材から遊離させ、濯ぎ等で除去し易くするものである。しかして、このような界面活性剤としては、一般的な洗剤に配合されているものをいずれも使用できるが、洗浄力の点からノニオン系界面活性剤が好適であり、特にポリオキシエチレンラウリルエーテルやポリオキシエチレンポリオキシポリプロピレンラウリルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテルが最適である。と他の含有成分のセロソルブ(エチレングリコールモノエーテル)とが化学構造的に近似して良好な相溶性を示すため、液剤としての安定性と
【0022】
このような界面活性剤の添加量は、しみ取り液を化粧料のしみ取りに用いる上で、しみ取り液全量の0.1重量%以上とする必要があり、少な過ぎては充分な添加効果が得られない。一方、この添加量を20重量%より多くしてもしみ取り効果は上がらず、それだけ界面活性剤が無駄になる上に濯ぎ落しの手間が増えることになる。従って、該添加量は0.1〜20重量%の範囲であるが,特に5〜20重量%の範囲が好適である。
【0023】
前記の水溶性ポリマーからなる増粘剤は、その添加によってしみ取り液の粘度を上げるものである。すなわち、この増粘剤を含むしみ取り液では、しみが付着した衣類や寝具等に含浸させた際、繊維材に対する液の浸透が抑えられるから、しみつきの領域が拡がるのを防止できると共に、有効成分のカルシウム成分と界面活性剤が逸散せずに効率よく作用し、それだけ汚れの遊離除去の効果が大きくなる。また、汚れが付着したその場で衣服等に滴下含浸させても水濡れを少なくできるので、しみ取り後の衣服等を継続して着用する必要がある場合に好都合である。
【0024】
このような増粘剤の水溶性ポリマーとしては、特に制約されないが、皮膚を刺激したり繊維材の生地を傷めたりする懸念がない点から、キサンタンガム等の天然高分子多糖類が好適である。また、増粘剤の添加量は、しみ取り液全量の0.05〜1重量%となる範囲であり、0.05重量%未満では充分な増粘作用が得られず、逆に1重量%を越えるとしみ取り液が繊維へ浸透しにくくなると共にしみ取り効果も低下する。
【0025】
本発明のしみ取り液は、特に口紅やファンデーション等の化粧料のしみに対する除去効果に優れるものであるが、食物や飲料等の付着による一般的なしみに対しても有効である。しかして、このようなしみ取り液は、携帯して汚れが付着したその場で衣服等に付与し易いように、キャップ付きの一端側突出部に小径の注出孔を有する可撓性のプラスチック容器に収容することが推奨される。なお、化粧料のしみに対しては、そのしみ部分に含浸させ、しみ部分を軽く揉んで化粧料の塊をなくしてから、水で濯いで洗い流すことになるが、それでも残っている場合には同じ操作を反復すればよい。
【実施例】
【0026】
水中に界面活性剤及び増粘剤と焼成カルシウムを添加混合し、下記組成のしみ取り液を調製し、その10mlをポリエチレン製の注出容器に収容した。なお、使用した焼成カルシウムは、乾燥したホタテ貝殻を粗粉砕し、この粉砕物を電気炉内に装填して内部を窒素ガスで置換し、約1000℃にて30分間の焼成を行い、焼成物を室温まで放冷させて再粉砕し、この粉砕物を篩にかけて粒度1〜20μmの分を採取したものである。
【0027】
〔しみ取り液組成〕
ポリオキシエチレン・ポリオキシポリプロピレンラウリルエーテル
(三洋化成社製エマルミンFL−100) ・・・・10.00重量%
2−n−ブトキシエタノール ・・・・10.00重量%
キサンタンガム(三晶社製ケルザンAR) ・・・・・0.20重量%
焼成カルシウム微粉末 ・・・・・0.05重量%
精製水 ・・・・79.75重量%
【0028】
〔しみ取り試験1〕
綿の布地表面に、口紅(資生堂社製エリクシールフィックスオンリップ、ローズ色)を直径約10mmの円形に塗り付け、この塗り付け部分に上記実施例のしみ取り液の数滴(約1ml)をしみ部分に含浸させ、この含浸部分を軽く指で揉んだのちに水道水で濯いだところ、口紅のしみが跡形なく消失していた。
【0029】
〔しみ取り試験2〕
綿の布地表面に、リキッドファンデーション(花王ソフィーナ社製ファインフットファンデーションUV ミルキッド115、オークル色)を直径約10mmの円形に塗り付け、この塗り付け部分に上記実施例のしみ取り液の数滴(約1ml)をしみ部分に含浸させ、この含浸部分を軽く指で揉んだのちに水道水で濯いだところ、乳液のしみが跡形なく消失していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中に、0.1〜20重量%の界面活性剤と、0.1〜20重量%の対油脂溶剤と、0.05〜1重量%の水溶性ポリマーからなる増粘剤と、0.01〜0.5重量%の焼成カルシウムとが添加混合されてなるしみ取り液。
【請求項2】
界面活性剤がポリオキシアルキレンアルキルエーテルである請求項1記載のしみ取り液。
【請求項3】
対油脂溶剤がセロソルブである請求項1記載のしみ取り液。
【請求項4】
増粘剤が天然高分子多糖類からなる請求項1〜3の何れかに記載のしみ取り液。
【請求項5】
焼成カルシウムが生体殻の焼成物である請求項1〜4の何れかに記載のしみ取り液。

【公開番号】特開2008−196075(P2008−196075A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−32173(P2007−32173)
【出願日】平成19年2月13日(2007.2.13)
【出願人】(502439164)株式会社テイクネット (8)
【Fターム(参考)】