説明

しゅんせつ治具及びしゅんせつ方法

【課題】本発明は、少量水により大型の清掃車両が搬入できないような、狭隘な場所の管渠や横断水路の清掃・しゅんせつを行うことができるしゅんせつ治具及びしゅんせつ方法を提供する。
【解決手段】頭綱22は事前にガイドロープ等で土管Tへ貫通しておき、前記頭綱22を引き、基板1、傘形ヘッド2及び高圧噴射ノズル3を土管T内へ挿入し、次に前記頭綱22を緩め、前記中綱23を引戻して前記傘形ヘッド2を直立させた状態で、柔管25から送水管26を介して高圧水を高圧噴射ノズル3へ供給し、噴水口17から高圧噴射水を後方へ噴射させ、尾綱24を引戻して前記基板1、前記傘形ヘッド2及び前記高圧噴射ノズル3を後退させて土砂Dを掻き出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大型の清掃車両が搬入できないような、狭隘な場所の雨水及び生活排水、周辺地域の下水道・農業用水路・雨水排水路のための管渠や横断水路、例えば鉄道建設時に主に農業用水を流すために敷設された伏び、を清掃・しゅんせつするためのしゅんせつ治具及びしゅんせつ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、管渠やマンホール等の管路施設の清掃は、高圧洗浄車清掃(管径200〜800mm未満の管渠)、バケットマシーン清掃(管径200〜2,000mm以下の管渠)、汚泥吸引車清掃(管径800mm以上の管渠)、人力清掃などの清掃方法が知られている。
前記高圧洗浄車清掃は、清掃する区間の下流マンホールから上流に向かって高圧ホースを挿入し、高圧洗浄車より加圧された洗浄水を高圧ホース先端に取り付けたノズルから噴射させ、推進及び引戻しを反復して、土砂等の堆積物を下流マンホールに集め、汚泥吸引車の吸引ホースで吸い上げる。
前記バケットマシーン清掃は、マンホール間にワイヤーを通し、そのワイヤーに開閉するバケットを取り付け、バケットマシーン(ウインチ)で地上まで牽引し、バケット内に集められた土砂等をダンプトラックに積み込む。
前記汚泥吸引車清掃は、清掃する区間の上流マンホールから下流に向かって汚泥吸引車の吸引ホースを挿入し、作業員が管渠内で吸引ホースの先端を操作し、堆積物を直接吸い上げる。
【0003】
ここで、下水管などの管渠内を清掃するために使用される管内清掃装置としての公知技術(特許文献1を参照)がある。
この公知技術は、埋設された管渠と、該管渠と地上とを連通するマンホール等の竪管とを備えた設備の前記管渠内に堆積するあるいは付着するものを掬い込み前記管渠内を清掃するための管内清掃装置であって、可撓管でその少なくとも一端開口が掬い込み口とされるとともに可撓管内空間が保留空間とされ、竪管上端開口から管渠内に導かれた後、前記管渠内で移動可能とされ移動により保留空間内に前記堆積物を保留したまま竪管内を通じて地上に戻され得るようになっているスクレーパ本体と、該スクレーパ本体を移動させる手段と、を備えている管内清掃装置である。
【0004】
また、線路陥没対策として、現在重点的に調査している伏びについて、道路や進入路から高圧洗浄車及びカメラ車を使用して「しゅんせつ・カメラ調査」を行う通常の箇所から遠くて道路に近接しておらず、調査箇所までの設備搬入が困難な箇所が残って来ている。
しかし、しゅんせつをせずに調査をした場合には、土砂堆積の状態により伏びの全容が分からず、調査精度に劣る面が課題であった。
また、しゅんせつを併行して行うための軌陸車を利用した固定式高圧洗浄は、洗浄水を多く使用するため、堆積土砂が多い場合に水不足の課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−338964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、少量水により大型の清掃車両が搬入できないような、狭隘な場所の管渠や横断水路の清掃・しゅんせつを行うことができるしゅんせつ治具及びしゅんせつ方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のしゅんせつ治具は、舟形の基板と、該基板の先端に揺動自在に設けた傘形ヘッドと、前記基板の中央に配置した高圧噴射ノズルとから構成されるものである。
本発明のしゅんせつ方法は、傘形ヘッドの上方の前後部には第1フック及び第2フックをそれぞれ設け、前記第1フック及び第2フックには頭綱及び中綱を締結し、前記基板の後端側基板の後端に円孔を設け、該円孔に尾綱を締結したしゅんせつ治具において、前記頭綱は事前にガイドロープ等で土管へ貫通しておき、前記頭綱を引き、前記基板、前記傘形ヘッド及び前記高圧噴射ノズルを土管内へ挿入し、次に前記頭綱を緩め、前記中綱を引戻して前記傘形ヘッドを直立させた状態で、柔管から送水管を介して高圧水を高圧噴射ノズルへ供給し、噴水口から高圧噴射水を後方へ噴射させ、尾綱を引戻して前記基板、前記傘形ヘッド及び前記高圧噴射ノズルを後退させて土砂を掻き出すものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のしゅんせつ治具及びしゅんせつ方法は、舟形の基板と、該基板の先端に揺動自在に設けた傘形ヘッドと、前記基板の中央に配置した高圧噴射ノズルとから構成されるため、少量水で土砂の掻き出しを行うことができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明のしゅんせつ治具の平面図である。
【図2】本発明のしゅんせつ治具の側断面図である。
【図3】本発明のしゅんせつ治具の傘形ヘッドが傾斜した状態の側断面図である。
【図4】鉄道敷地の断面図である。
【図5】本発明のしゅんせつ治具の始動時の断面図である。
【図6】本発明のしゅんせつ治具のしゅんせつ時の断面図である。
【図7】本発明のしゅんせつ治具の段差をかわす時の断面図である。
【図8】本発明のしゅんせつ治具の他の実施例1の側断面図である。
【図9】本発明のしゅんせつ治具の他の実施例2の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のしゅんせつ治具の一実施例を添付図面に基づいて、以下に説明する。
図1の平面図に示すように、本発明のしゅんせつ治具は、舟形の基板1と、該基板1の先端に揺動自在に設けた傘形ヘッド2と、前記基板1の中央に配置した高圧噴射ノズル3とから構成される。
なお、前記傘形ヘッド2の一部は断面図である。
【0011】
図2の側断面図に示すように、前記基板1は、先端側基板4を平坦で高く、段差部5を設けて後端側基板6を平坦で低くし、前記先端側基板4の中央部には後述する揺腕19が挿入される長孔7が設けられ、前記先端側基板4の後部には前記高圧噴射ノズル3の噴射水が噴射する円孔8を設ける。
前記段差部5は少なくとも前記高圧噴射ノズル5の直径以上の高さを有し、前記段差部5の中央部分には前記高圧噴射ノズル3を挿入できる丸孔9を形成している。
前記後端側基板6には後端部に円孔10を設け、該円孔10には基板1を引戻すための尾綱24(図5に示す)が締結される。
【0012】
前記傘形ヘッド2は、先端側に頂部を備えた円錐形とし、前記基板1の先端の前後に並列に設けた主軸11及び副軸12に前記傘形ヘッド2の主軸受13及び副軸受14を接続して上下揺動自在に形成される。
前記傘形ヘッド2の上方の前後部には、図2に示す第1フック15及び第2フック16をそれぞれ設け、図3の側断面図に示すように、前記傘形ヘッド2を前方へ傾斜させてしゅんせつ治具を前進させる頭綱22(図5に示す)が前記第1フック15に締結され、前記第2フック16には前記傘形ヘッド2を後方へ引き戻して傘形ヘッド2を直立させる中綱23(図5に示す)が締結される。
前記傘形ヘッド2の下方の後部には、図2に示す副軸受17を形成して副軸18を設け、該副軸18に揺腕19を枢着し、該揺腕19は前記先端側基板4に形成した長孔7に挿通され、前記中綱23(図6に示す)を後方に引き戻した時に図3から図2のように前記傘形ヘッド2が直立状となるように止棒20が先端に設けられている。
【0013】
前記高圧噴射ノズル3は、前記段差部5の丸孔9に後方から前方へ挿通し、先端を前記先端側基板4の円孔8の中心に位置させ、後端を前記後端側基板6に載置させて管留具21で前記後端側基板6に固定させる。
【0014】
次に、本発明のしゅんせつ治具の操作動作を添付図面に基づいて、以下に説明する。
図4の断面図に示す鉄道敷地内において、線路Rの盛土Mを横断する土管T内に溜まった土砂Dをしゅんせつする場合について説明する。
【0015】
図5の断面図に示すように、最初に頭綱22は事前にガイドロープ等で土管Dへ貫通しておき、前記頭綱22を引き、基板1、傘形ヘッド2及び高圧噴射ノズル3を土管D内へ挿入する。その際には、前記頭綱22が締結されている第1フック15により前記傘形ヘッド2は傾斜状態で前方へ引き出され、一方揺腕19は先端側基板4の長孔7から突き出される。
【0016】
土砂Dをしゅんせつする場合には、図6の断面図に示すように、前記頭綱22を緩め、中綱23を引戻して前記傘形ヘッド2を直立させる。その場合には、前記中綱23が締結されている第2フック16により前記傘形ヘッド2は後方へ引戻されて直立し、同時に前記揺腕19は前方へ引かれて先端側基板4の長孔7に止棒20が引っ掛かって停止される。
こうして前記傘ヘッド2が直立した状態で、柔管25から送水管26を介して高圧水を高圧噴射ノズル3へ供給し、噴水口27から高圧噴射水を後方へ噴射させる。なお、この実施例の場合は後方へ高圧噴射水を噴射させたが、土砂Dを軟化又は剥離させることができるのであれば必ずしも噴射方向には限定されない。
そして、前記傘ヘッド2が直立した状態を保ったままで、尾綱24を引戻して基板1、傘形ヘッド2及び高圧噴射ノズル3を後退させる。
このように、前記傘形ヘッド2を傾斜状態で前進及び前記傘形ヘッド2を直立状態で後退を繰り返して、前記高圧噴射ノズル3で土砂Dを軟化又は剥離させつつ、傘形ヘッド2で土砂Dを掻き出す。
【0017】
図7の断面図に示すように、変形した土管T’により段差Sが形成されている場合には、前記傘形ヘッド2が引戻し途中で前記段差Sに引っ掛かり動かなくなるが、その場合には、3本の綱、すなわち頭綱22、中綱23、尾綱24のバランスをとり、交互に牽引し、前記傘ヘッド2の傾斜角度を変更しつつ前記段差Sをかわして土砂Dを掻き出す。
【0018】
更に、本発明のしゅんせつ治具の他の実施例を添付図面に基づいて、以下に説明する。
図8の側断面図に示すように、揺腕19と止棒20に換えてロープ28を設け、傘形ヘッド2の下部に取付部材29を固定し、該取付部材29と先端側基板4の長孔7及び円孔8を利用して前記ロープ28を締結する。
図9の側断面図に示すように、揺腕19と止棒20に換えて先端側基板4の先端側に突き当り棒30を設け、傘形ヘッド2が直立したときのストッパーとして作用させる。
【符号の説明】
【0019】
1 基板
2 傘形ヘッド
3 高圧噴射ノズル
4 先端側基板
5 段差部
6 後端側基板
7 長孔
8 円孔
9 丸孔
10 円孔
11 主軸
12 副軸
13 主軸受
14 副軸受
15 第1フック
16 第2フック
17 副軸受
18 副軸
19 揺腕
20 止棒
21 管留具
22 頭綱
23 中綱
24 尾綱
25 柔管
26 送水管
27 噴水口
28 ロープ
29 取付部材
30 突き当り棒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
舟形の基板と、該基板の先端に揺動自在に設けた傘形ヘッドと、前記基板の中央に配置した高圧噴射ノズルとから構成されるとすることを特徴とするしゅんせつ治具。
【請求項2】
前記基板は、先端側基板を平坦で高く、段差部を設けて後端側基板を平坦で低くし、前記先端側基板の中央部には揺腕が挿入される長孔が設けられ、前記先端側基板の後部には前記高圧噴射ノズルの噴射水が噴射する円孔を設け、前記傘形ヘッドは、先端側に頂部を備えた円錐形とし、前記基板の先端の前後に並列に設けた主軸及び副軸に前記傘形ヘッドの主軸受及び副軸受を接続して上下揺動自在に形成され、前記高圧噴射ノズルは、前記段差部の丸孔に後方から前方へ挿通し、先端を前記先端側基板の円孔の中心に位置させ、後端を前記後端側基板に載置させて管留具で前記後端側基板に固定させることを特徴とする請求項1記載のしゅんせつ治具。
【請求項3】
傘形ヘッドの上方の前後部には第1フック及び第2フックをそれぞれ設け、前記第1フック及び第2フックには頭綱及び中綱を締結し、前記基板の後端側基板の後端に円孔を設け、該円孔に尾綱を締結した前記請求項1に記載のしゅんせつ治具において、前記頭綱は事前にガイドロープ等で土管へ貫通しておき、前記頭綱を引き、前記基板、前記傘形ヘッド及び前記高圧噴射ノズルを土管内へ挿入し、次に前記頭綱を緩め、前記中綱を引戻して前記傘形ヘッドを直立させた状態で、柔管から送水管を介して高圧水を高圧噴射ノズルへ供給し、噴水口から高圧噴射水を後方へ噴射させ、尾綱を引戻して前記基板、前記傘形ヘッド及び前記高圧噴射ノズルを後退させて土砂を掻き出すことを特徴とするしゅんせつ方法。
【請求項4】
変形した土管により段差が形成されている場合には、前記頭綱、前記中綱、前記尾綱のバランスをとり、交互に牽引し、前記傘ヘッドの傾斜角度を変更しつつ前記段差をかわして土砂を掻き出すことを特徴とする請求項3記載のしゅんせつ方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−77549(P2012−77549A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−225233(P2010−225233)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【出願人】(501220983)大森建設株式会社 (4)
【出願人】(510264682)株式会社 羽州建設 (1)
【Fターム(参考)】