説明

しわ取り消臭剤組成物

【課題】汗臭及びアルデヒド類等に由来する複合臭の低減効果に優れ、繊維製品の風合いを損なうことなくしわを除去することができるしわ取り消臭剤組成物、及びしわ取り消臭方法を提供する。
【解決手段】(1)特定のポリヒドロキシアミン化合物及び/又はその塩(a)、ポリエーテル変性シリコーン化合物(b)、及びシリカ微粒子(c)を含有するしわ取り消臭剤組成物、及び(2)そのしわ取り消臭剤組成物を、固体表面を有する対象物に付着させ、対象物の臭い及びしわを低減させるしわ取り消臭方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、しわ取り消臭剤組成物に関し、詳しくは、複合臭の低減効果に優れ、かつ繊維製品の風合いを損なうことなくしわを除去することができるしわ取り消臭剤組成物、及びしわ取り消臭方法に関する。
【背景技術】
【0002】
洗濯習慣の変化により、肌に直接触れない衣類は着てもすぐに洗わない習慣が増えているが、その一方で洗わない衣類のしわや匂いを気にしており、衣類のしわ除去性能や様々な匂い(複合臭)に対する消臭性能が求められている。これまでに、特定の悪臭成分に対して効果的な消臭剤は知られているが、複合臭に対して効果的なものは少ない。
また、スーツ等のドライクリーニング衣類は家庭での水洗いが困難であり、それらのしわ取り方法については、一般にアイロンがけやスチームプレス等の熱処理を行う方法があるが、手間がかかる作業である上、風合いを損ねる場合がある。これまでに、熱処理を行わずに衣類のしわを伸ばす技術が開示されているが、しわ除去効果は不十分である。
【0003】
例えば、特許文献1には、陽イオン性又は両性界面活性剤とキレート剤を併用することにより、汗臭やタバコ臭を消臭する液体消臭剤が開示され、特許文献2には、香料等の消臭基剤と陽イオン界面活性剤と特定の溶剤を併用することにより、汗臭を消臭する液体消臭剤が開示されている。また、特許文献3には、有機二塩基酸又はその塩を含む消臭剤が、低級脂肪酸類やアミン類等の消臭に有効であることが開示されている。しかしながら、これらの液体消臭剤は、アルデヒド類等に対する消臭性能が充分ではない。
特許文献4には、植物からの抽出物を主成分とする消臭基材、香料、エタノール及び界面活性剤を併用することにより、腐敗臭を抑制する消臭剤組成物が開示され、特許文献5には、ベタイン型両性、非イオン性、陰イオン性界面活性剤からなる処理剤で処理することにより、アンモニア臭等を消臭しうる消臭性繊維が開示されている。しかしながら、これらも汗臭やアルデヒド類に対する消臭性能は充分ではない。
【0004】
特許文献6には、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン等を塩として含む陰イオン界面活性剤により、低級脂肪酸、アミン類が共存する複合臭を抑制できる組成物が開示されている。しかしながら、このアミン塩はアルデヒド類に対する効果が充分でなく、水に対する溶解性が悪いものもあるため利用範囲が限られる。
特許文献7には、中高年以降に認められる加齢臭の原因物質の一つとされるノネナール等の不飽和アルデヒドの消臭について、エタノールアミンを含む消臭剤が有効であることが開示されている。しかしながら、汗臭等に対する効果が不明であり、またエタノールアミンは刺激性があり、人体に触れる可能性のある形態での使用には適さない。
特許文献8には、シクロデキストリンを含む消臭剤組成物が開示され、特許文献9及び10には、シクロデキストリンを含むしわ減少(抑制)組成物が開示されている。これらの文献には、アミン化合物を緩衝剤とし、一般的なシリコーン化合物を用いることが開示されているが、特定のアミン化合物とポリエーテル変性シリコーン及びシリカ微粒子を併用することについての開示はない。
【0005】
また、特許文献11には、アルコール、グリセリン、非イオン性界面活性剤と水からなる布帛のしわ取り組成物が開示されているが、この組成物では自然乾燥だけで十分にしわを除去することができない。
特許文献12には、ヘキシレングリコールやイソプレングリコール等の水溶性溶剤と水を組み合わせたしわ取り用組成物が開示されているが、この組成物では衣類についた軽いしわは取り除けるが、深いしわを完全に除去するのは困難である。
特許文献13には、ポリエーテル変性シリコーン、4級アンモニウム型抗菌剤及び植物から抽出した消臭基剤を併用した、たばこ臭等の消臭抗菌しわ除去剤組成物が開示されているが、複合臭に対する消臭性能は十分ではない。
特許文献14には、ポリエーテル変性シリコーンとシリカ微粒子を含有するしわ減少剤組成物が開示されているが、ポリヒドロキシアミン化合物との併用については何ら記載されていない。
かかる状況から、汗臭及びアルデヒド類等に由来する複合臭を低減させることができ、かつアイロンがけ等の熱処理を行わなくても、風合いを損なうことなく繊維製品のしわを除去することができるしわ取り消臭剤組成物の開発が望まれていた。
【0006】
【特許文献1】特開2001−40581号公報
【特許文献2】特開2001−70423号公報
【特許文献3】特開2001−95907号公報
【特許文献4】特開2001−178806号公報
【特許文献5】特開2004−176225号公報
【特許文献6】特開2004−49889号公報
【特許文献7】特開2001−97838号公報
【特許文献8】特表2003−533588号公報
【特許文献9】特表2003−533598号公報
【特許文献10】特表2004−500493号公報
【特許文献11】特開昭64−6174号公報
【特許文献12】特開平10−25660号公報
【特許文献13】特開2003−96667号公報
【特許文献14】特開2005−163206号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、汗臭及びアルデヒド類等に由来する複合臭の低減効果に優れ、繊維製品の風合いを損なうことなくしわを除去することができるしわ取り消臭剤組成物、及びしわ取り消臭方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、特定のポリヒドロキシアミン類が汗臭やアルデヒド類等に由来する複合臭の消臭に有効であり、人体に対する刺激が少なく、また、ポリエーテル変性シリコーン化合物及びシリカ微粒子と併用することによりアイロンがけ等の熱処理を行わなくても、しわ取りができることを見出した。
すなわち、本発明は、
(1)下記一般式(1)で表されるポリヒドロキシアミン化合物及び/又はその塩(a)、ポリエーテル変性シリコーン化合物(b)、及びシリカ微粒子(c)を含有するしわ取り消臭剤組成物、及び
(2)前記(1)のしわ取り消臭剤組成物を、固体表面を有する対象物に付着させ、対象物の臭い及びしわを低減させるしわ取り消臭方法、を提供する。
【0009】
【化1】

(式中、R1は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基を示し、R2は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基を示し、R3及びR4は、炭素数1〜5のアルカンジイル基を示す。R3及びR4は、同一でも異なっていてもよい。)
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、汗臭及びアルデヒド類等に由来する複合臭の低減効果に優れ、水系組成物の調製も容易であり、人体に触れても安全なしわ取り消臭剤組成物を提供できる。また、本発明方法によれば、アイロンがけやスチームプレス等の熱処理を行わなくても、布地、衣類等の繊維製品の風合いを損なうことなくしわを除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のしわ取り消臭剤組成物は、下記一般式(1)で表されるポリヒドロキシアミン化合物及び/又はその塩(a)(以下、単に「ポリヒドロキシアミン化合物類(a)」又は「(a)成分」ということがある)、ポリエーテル変性シリコーン化合物(b)(以下、「(b)成分」ということがある)、及びシリカ微粒子(c)(以下、「(c)成分」ということがある)を含有することを特徴とする。
【0012】
ポリヒドロキシアミン化合物類(a)
本発明で用いられるポリヒドロキシアミン化合物及び/又はその塩(a)は、下記一般式(1)で表される。
【0013】
【化2】

【0014】
一般式(1)において、R1は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基を示す。
炭素数1〜5のアルキル基は、直鎖又は分岐鎖のいずれであってもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基が挙げられる。また、炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、4−ヒドロキシブチル基等が挙げられる。
1は、消臭性能及び入手性の観点から、上記の中では水素原子、メチル基、エチル基、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基が好ましく、特に水素原子、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基が好ましい。
【0015】
2は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基を示す。
炭素数1〜6のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基としては、上記のものが挙げられる。
2は、消臭性能及び入手性の観点から、上記の中では水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、ヒドロキシエチル基が好ましく、特に水素原子が好ましい。
3及びR4は、炭素数1〜5のアルカンジイル基を示す。R3及びR4は、同一でも異なっていてもよい。炭素数1〜5のアルカンジイル基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロパン−1,2−ジイル基、テトラメチレン基等が好ましく、特にメチレン基が好ましい。
【0016】
ポリヒドロキシアミン化合物類(a)の具体例としては、例えば、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、2−アミノ−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−ヒドロキシエチル−1,3−プロパンジオール、4−アミノ−4−ヒドロキシプロピル−1,7−ヘプタンジオール、2−(N−エチル)アミノ−1,3−プロパンジオール、2−(N−エチル)アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2−(N−デシル)アミノ−1,3−プロパンジオール、2−(N−デシル)アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール等、及びそれらと無機酸又は有機酸で中和した酸塩が挙げられる。酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、炭酸、炭素数1〜12の脂肪酸、炭素数1〜3のアルキル硫酸から選ばれる1種以上が好ましい。
これらの中では、消臭性能等の観点から、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、2−アミノ−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−ヒドロキシエチル−1,3−プロパンジオール、及びそれらと塩酸等の無機酸との塩から選ばれる1種以上が特に好ましい。
【0017】
一般式(1)で表されるポリヒドロキシアミン化合物を塩酸等の塩として用いる場合は、塩基を添加することによりpHを調整することができる。用いることができる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の他、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン等が挙げられる。これらの中では、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。
上記のポリヒドロキシアミン化合物類(a)は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。なお、ポリヒドロキシアミン化合物類(a)は、常法により製造することができる。
【0018】
ポリヒドロキシアミン化合物類(a)は、単独でも混合物でも、汗臭及びアルデヒド類等に由来する複合臭に対して消臭性能を発揮するが、ポリエーテル変性シリコーン化合物(b)及びシリカ微粒子(c)を併用することにより、消臭性能を更に高め、同時に繊維製品のしわを低減することができる。
すなわち、通常、臭気成分は、布地、衣類、カーテン、カーペット、ソファー等の繊維製品等の固体表面に付着するが、ポリエーテル変性シリコーン化合物(b)及びシリカ微粒子(c)は、固体表面に付着した臭気成分の揮発を抑制するばかりでなく、消臭成分であるポリヒドロキシアミン化合物類(a)を安定に分散させ、繊維製品等に対する接触性を向上させて、消臭性能を更に高めることができる。
また、ポリエーテル変性シリコーン化合物(b)は、水及び界面活性剤と特定比率で配合することにより水和ゲルを形成する特徴があり、この水和ゲルが湿潤時の繊維潤滑性を向上させるため、乾燥過程において、布地、衣類等の繊維製品のしわを低減することができる。
【0019】
ポリエーテル変性シリコーン化合物(b)
本発明に用いられるポリエーテル変性シリコーン化合物(b)としては、1%水溶液の曇り点が80℃以下、好ましくは70℃以下の化合物が好適である。曇り点が前記範囲にあれば、水溶性が比較的低いために、ポリヒドロキシアミン化合物類(a)の消臭性能を更に高めることができると考えられる。
また、ポリエーテル変性シリコーン化合物(b)の25℃における粘度は、100〜10000mm2/sが好ましく、200〜8000mm2/sが更に好ましく、500〜6000mm2/sが特に好ましい。なお、曇り点はJIS K2269に準拠し、25℃での動粘度はウベローデ型粘度計で求めることができる。
【0020】
ポリエーテル変性シリコーン化合物(b)のポリエーテル基としては、ポリエチレンオキシ基、ポリプロピレンオキシ基、エチレンオキシ基(EO)とプロピレンオキシ基(トリメチレンオキシ基、プロパン−1,2−ジイルオキシ基;PO)がブロック状又はランダムに付加したポリアルキレンオキシ基が好適であり、シリコーン主鎖にポリエーテル基がグラフトした化合物、シリコーンとポリエーテル基がブロック状に結合した化合物等を用いることができる。
ポリエーテル変性シリコーン化合物(b)の好適例としては、下記一般式(2)及び/又は(3)で表される化合物が挙げられる。
【0021】
【化3】

【0022】
(式中、R5は炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシ基を示し、R6は炭素数2〜5のアルカンジイル基を示し、R7は水素原子、炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシ基を示し、EOはエチレンオキシ基、POはプロピレンオキシ基(トリメチレンオキシ基又はプロパン−1,2−ジイルオキシ基)を示す。a、b、c、及びdは、各ユニットの平均付加モル数を示し、aは1〜50、bは0〜10、cは1〜500、及びdは1〜50である。各R5は同一でも異なっていてもよい。)
【0023】
一般式(2)において、aは、好ましくは1〜30、更に好ましくは1〜20であり、bは、好ましくは0〜5、更に好ましくは0〜3であり、cは、好ましくは3〜400、更に好ましくは5〜300であり、dは好ましくは1〜40、更に好ましくは1〜30である。a個、b個、c個又はd個の各ユニットは同じでも異なっていてもよい。
平均付加モル数a〜dは、一般式(2)で表される化合物の1%水溶液の曇り点が80℃以下になるように、及び/又は一般式(2)で表される化合物の25℃における粘度が100〜10000mm2/sの範囲になるように選択されることが好ましい。
【0024】
【化4】

【0025】
(式中、R5、R6、R7、EO、PO、a、b及びcは前記と同じである。eは、各ユニットの平均付加モル数を示し、1〜50である。各R5、R6及びR7は同一でも異なっていてもよい。)
【0026】
一般式(3)において、aは、好ましくは1〜30、更に好ましくは1〜20であり、bは、好ましくは0〜5、更に好ましくは0〜3であり、cは、好ましくは1〜400、更に好ましくは1〜300であり、eは好ましくは1〜40、更に好ましくは1〜30である。a個、b個、c個又はe個の各ユニットは同じでも異なっていてもよい。
平均付加モル数a、b、c及びeは、一般式(3)で表される化合物の1%水溶液の曇り点が80℃以下、及び/又は一般式(3)で表される化合物の25℃における粘度が100〜10000mm2/sの範囲になるように選択されることが好ましい。
【0027】
ポリエーテル変性シリコーン(b)の具体例としては、信越化学工業株式会社製の商品名:KF−351、KF−352、KF−353、KF−615、KF−945、KF−6008、KF−6011、KF−6012、KF−6013、KF−6015、KF−6016、KF−6017、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製の商品名:SH−3771、SH−3772、SH−3773、SH−3775、SH−3748、SH−3749、旧日本ユニカー株式会社製の商品名:FZ−2101、FZ−2164、FZ−2123、L−7002、L−720、L−7001、Y−7006、FZ−2222、FZ−2130、FZ−2120、FZ−2154、FZ−2166、FZ−2191、FZ−5609、FZ−2207、FZ−2203、FZ−2109、FZ−2122、FZ−2110、FZ−2206、GE東芝シリコーン株式会社製の商品名:TSF−4441、TSF−4445、TSF−4446、TSF−4452、TSF−4460等が挙げられる。
消臭性及びしわ取り性向上の観点から、ポリエーテル変性シリコーン(b)は、上記の中から選ばれる1種又は2種以上を組み合わせて用いることが好ましい。
【0028】
シリカ微粒子(c)
本発明に用いられるシリカ微粒子(c)は、本発明のしわ取り消臭剤組成物で繊維製品を処理した際、繊維製品が湿潤後乾燥していく過程において摩擦性が増大させる特徴があり、適度なハリ性により繊維及び糸の収縮差によるヨレを防止し、仕上がり性を向上させる効果を付与する。
シリカ微粒子(c)は、SiO2を主骨格とする水不溶性の微粒子であり、アモルファスシリカ、結晶性シリカ及びアモルファスシリカを水中に分散させた形態のコロイダルシリカ等が挙げられる。これらの中でも、微粒子の分散安定性の点から、コロイダルシリカが好ましい。コロイダルシリカの市販品としては、日産化学工業株式会社製「スノーテックス」、日本化学工業株式会社製「シリカドール」等が挙げられる。
【0029】
通常、コロイダルシリカの表面はシラノール基によりアニオン性を帯びており、分散媒である水が凍結すると凝集し、良好な分散安定性を維持できない傾向にある。一方、例えば、アニオン性のコロイダルシリカ表面にアルミナをコーティングしてカチオン性を帯びさせたものは、分散媒である水が凍結しても凝集しにくく、低温安定性に優れることから好ましい。このアルミナコーティングしたコロイダルシリカは特に限定されず、塩基性塩化アルミニウムで処理する等の公知の方法により調製することができる。このようなカチオン変性したコロイダルシリカの市販品としては、日産化学工業株式会社製「スノーテックスAK」、日本化学工業株式会社製「シリカドール20P」、Clariant社製「Klebosol30CAL25」等が挙げられる。
【0030】
本発明におけるシリカ微粒子(c)の粒径は、しわ取り性及び仕上がり性の観点から、好ましくは1nm以上であり、その上限は好ましくは1μm以下、より好ましくは100nm以下、更に好ましくは30nm以下である。このシリカ微粒子(c)の粒径は、BET法による比表面積から換算されるものである。
シリカ微粒子(c)は、単独で使用してもよく、また、アニオン性又はカチオン性の電荷が同じであれば2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0031】
本発明のしわ取り消臭剤組成物中のポリヒドロキシアミン化合物類(a)、ポリエーテル変性シリコーン化合物(b)及びシリカ微粒子(c)の含有量は、消臭する悪臭の濃度、使用形態、繊維製品の種類、しわの程度、仕上がり性等を考慮し、適宜調整することができる。
(a)成分は、通常0.01質量%以上、好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.01〜8質量%、更に好ましくは0.01〜5質量%、更に好ましくは0.01〜3質量%、更に好ましくは0.01〜2質量%、特に好ましくは0.01〜1質量%である。
(b)成分は、通常0.01質量%以上、好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.01〜8質量%、更に好ましくは0.01〜5質量%、更に好ましくは0.01〜3質量%、特に好ましくは0.01〜2質量%である。
(c)成分は、通常0.01質量%以上、好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.01〜8質量%、更に好ましくは0.01〜5質量%、更に好ましくは0.01〜3質量%、特に好ましくは0.01〜2質量%である。
【0032】
(a)成分の消臭効果を更に高める観点から、(a)成分、(b)成分及び(c)成分の配合比率は、以下のとおりである。
〔(a)/(b)〕の質量比は、好ましくは10/1〜1/10、より好ましくは8/1〜1/8、更に好ましくは5/1〜1/5、更に好ましくは3/1〜1/5、特に好ましくは1/1〜1/5である。
〔(a)/(c)〕の質量比は、好ましくは10/1〜1/10、より好ましくは8/1〜1/8、更に好ましくは5/1〜1/5、更に好ましくは4/1〜1/4、特に好ましくは3/1〜1/3である。
〔(b)/(c)〕の質量比は、好ましくは10/1〜1/10、より好ましくは8/1〜1/8、更に好ましくは5/1〜1/5、更に好ましくは4/1〜1/4、特に好ましくは3/1〜1/3である。
また、〔(a)/[(b)+(c)]〕の質量比は、好ましくは10/1〜1/10、より好ましくは8/1〜1/8、更に好ましくは5/1〜1/5、更に好ましくは3/1〜1/5、特に好ましくは1/1〜1/5である。
【0033】
本発明のしわ取り消臭剤組成物において、(a)成分、(b)成分、(c)成分以外の残部は水とすることができる。使用する水は、蒸留水やイオン交換水等からイオン成分を除去したものが好ましい。また必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、更に、界面活性剤、及び一般に添加される各種の他の消臭剤、溶剤、油剤、ゲル化剤、硫酸ナトリウムやN,N,N−トリメチルグリシン等の塩、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤、殺菌・抗菌剤、香料、色素、紫外線吸収剤等の他の成分を添加することができる。
【0034】
界面活性剤としては、特に制限はなく、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤の中から選ばれる1種以上が挙げられる。これらの中では、非イオン性界面活性剤が好ましく、下記一般式(4)で表される化合物が、消臭性能及びしわ除去性能の観点から、特に好ましい。
8−A−(BO)t−R9 (4)
式(4)中、R8は、炭素数10〜22の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示し、R9は、水素原子、又は炭素数1〜3のアルキル基を示す。Aは、−O−基又は−COO−基を示し、Bは、エチレン基、トリメチレン基、プロパン−1,2−ジイル基から選ばれる1種以上の基を示し、tは平均付加モル数を示し、5〜15の数である。t個の(BO)は同じでも異なっていてもよい。
【0035】
消臭性能向上の観点から、一般式(4)で表される化合物のR8は、好ましくは炭素数10〜18、より好ましくは炭素数10〜16、更に好ましくは炭素数10〜14のアルキル基又はアルケニル基であり、R9は、好ましくは水素原子、又は炭素数1〜2のアルキル基、より好ましくは水素原子又はメチル基、更に好ましくは水素原子である。
tは、好ましくは5〜14の数、より好ましくは5〜13、更に好ましくは5〜12であり、ポリオキシエチレン(オキシエチレン基の平均付加モル数n=6〜12。以下のかっこ内の数字も同じである。)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(n=5〜12)モノアルキル(炭素数12〜14の2級の炭化水素基)エーテル、ラウリン酸ポリオキシチレン(n=6〜13)メチルエーテルから選ばれる1種以上が特に好ましい。
【0036】
溶剤としては、水、エタノール、イソプロパノール等の炭素数3〜4の低級アルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール等の多価アルコール類(炭素数2〜12)、エチレングリコールやプロピレングリコールのモノエチル又はモノブチルエーテル、ジエチレングリコールやジプロピレングリコールのモノエチル又はモノブチルエーテル、ベンジルアルコール、ベンジルオキシエタノール、フェノール性化合物のエチレンオキシド又はプロピレンオキシド付加物等が挙げられる。
【0037】
本発明のしわ取り消臭剤組成物のpHは6〜9.5に調整することが好ましい。pH6以上で汗臭やアルデヒド類に対する効果が優れ、またpH9.5以下でアミン類等に対する効果が優れる。
汗臭及びアルデヒド類等に由来する複合臭の全てに対する効果、及び皮膚刺激低減の観点から、pHは6.5〜9.5が好ましく、6.8〜9が更に好ましい。
本発明のしわ取り消臭剤組成物のpHは、塩酸等の酸、又は水酸化ナトリウム等のアルカリを添加することにより調整することができる。
【0038】
本発明のしわ取り消臭組成物は、特に水系組成物としてミストタイプのスプレー容器に充填し、一回の噴霧量を0.1〜1mlに調整したものが好ましい。使用するスプレー容器としては、トリガースプレー容器(直圧あるいは蓄圧型)やディスペンサータイプのポンプスプレー容器等の公知のスプレー容器を用いることができる。
本発明の消臭剤組成物を用いる消臭方法の対象物は、固体表面を有するものであれば特に制限はないが、衣類等の繊維製品のような消臭対象の表面積が広い対象物において効果的である。
【実施例】
【0039】
実施例1〜3及び比較例1〜2
<しわ取り消臭剤組成物の調製>
表1に示す配合処方のしわ取り消臭剤組成物を調製した。なお、非イオン性界面活性剤としては、炭素数12の直鎖第1級アルコールにエチレンオキサイドを平均8モル付加させたものを使用し、抗菌剤としてはプロキセルBDN(アビシア株式会社製、10%水溶液)を使用し、得られた組成物は、1mol/Lの塩酸又は1/10mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液でpH8.0に調整した。
表1中の記号の成分は下記のとおりである。
(a)成分
(a)−1:トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン
(a)−2:2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール
(a)−3:2−アミノ−1,3−プロパンジオール
(b)成分
(b)−1:ポリエーテル変性シリコーン、信越化学工業株式会社製の商品名「KF−6012」(前記一般式(2)の化合物。1%水溶液の曇点:35℃、25℃における粘度:1600mm2/s)
(b)−2:ポリエーテル変性シリコーン、旧日本ユニカー株式会社製の商品名「FZ−2154」(前記一般式(3)の化合物。1%水溶液の曇点:52℃、25℃における粘度:110mm2/s)
(c)成分
(c)−1:カチオン性コロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製「スノーテックスAK」、粒径:10〜20nm)
(c)−2:カチオン性コロイダルシリカ(日本化学工業株式会社製「シリカドール20P」粒径:10〜20nm)
【0040】
実施例4
実施例1で得られたしわ取り消臭剤組成物に香料0.01%を配合し、しわ取り消臭剤組成物を調製した。なお、香料としては、ケイ皮酸エチル5部、酢酸リナリル10部、リラール部15部、ヘキシルシンナミックアルデヒド10部、パーライド10部、フェニルエチルアルデヒド20部、セダーアルコール10部、及びリモネン20部からなる調合香料を使用した。
【0041】
<消臭対象物の調製>
木綿メリアス布(10cm×10cm)に、臭気成分として、イソ吉草酸の10ppmエタノール溶液、又はノナナールの1%エタノール溶液をスプレーバイアル(株式会社マルエム、No.6)を用いて1回スプレーし、30分間乾燥させた後、試験片とした。
<消臭方法>
上記方法にて得た試験片に、表1に示す配合処方のしわ取り消臭剤組成物をスプレーバイアル(株式会社マルエム、No.6)を用いて6回スプレーし、1時間乾燥させた。
<消臭性能評価>
30歳代の男性5人及び女性5人の計10人のパネラーに、試験片の臭いを嗅いでもらい、下記の6段階の臭気強度表示法で評価し、その平均値を求めた。
0:無臭
1:何の臭いか分からないが、ややかすかに何かを感じる強さ(検知閾値のレベル)
2:何の臭いか分かる、容易に感じる弱い臭い(認知閾値のレベル)
3:明らかに感じる臭い
4:強い臭い
5:耐えられないほど強い臭い
平均値0以上1未満を◎、平均値1以上2未満を○、平均値2以上3未満を△、平均値3以上5以下を×として評価した。評価は◎又は○が好ましい。結果を表1に示す。
【0042】
<しわつけ方法>
ウール生地(ウールサージ、株式会社谷頭商店)からなる試験布20×10cmにイオン交換水をスプレー噴霧して湿潤させた後、試験布を2つ折りにして、40℃に設定した恒温室内で折り目部分に2kgの重りをのせ、24時間放置することによってしわを付け、これをしわ取り評価のモデルじわとした。
<しわ取り方法>
上記方法にて作成したモデルじわのついた試験布に対し、表1に示すしわ取り消臭剤組成物を、スプレー容器(キャニオン株式会社製、T−7500)を用いて、試験布乾燥時重量に対して50重量%噴霧した後、25℃/50%RHの恒温室に12時間放置し、自然乾燥させた。乾燥終了後、試験布のしわの取れ具合を下記の方法により評価した。
<しわ除去性能評価>
熟練した5人のパネラーに、しわ取り消臭剤組成物をスプレー処理した布と、処理前の布(対照)とを下記の基準で評価してもらい、その平均点を求めた。
1:全くしわがない
2:ほとんどしわがない
3:僅かにしわが残っている
4:相当しわが残っている
5:著しくしわが残っている
平均点1以上2未満を◎、2以上3未満を○、3以上4未満を△、4以上5以下を×とした。実用上、◎又は○が好ましい。
【0043】
【表1】

【0044】
表1から、比較例1〜3の組成物は、汗臭及びアルデヒド臭に対しての消臭性能又はしわ除去性能のいずれかが不十分であるのに対し、実施例1〜3のしわ取り消臭剤組成物は、汗臭及びアルデヒド臭のいずれに対しても消臭性能が高く、かつしわ除去性能も高いことが分かる。
また、実施例4のしわ取り消臭剤組成物は、汗臭及びアルデヒド臭のいずれに対しても消臭性能が高く、かつ配合した香料の香調は維持されていた。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明のしわ取り消臭剤組成物によれば、汗臭及びアルデヒド類等に由来する複合臭の低減効果に優れ、水系組成物の調製も容易であり、人体に触れても安全であり、アイロンがけやスチームプレス等の熱処理を行わなくても、繊維製品の風合いを損なうことなくしわを除去することができる。このため、ハンカチ等の布地、スーツ、セーター等の衣類、カーテン、ソファー等の繊維製品等の対象物に付着した複合臭の消臭及びしわ取りのためのしわ取り消臭剤組成物として、好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるポリヒドロキシアミン化合物及び/又はその塩(a)、ポリエーテル変性シリコーン化合物(b)、及びシリカ微粒子(c)を含有するしわ取り消臭剤組成物。
【化1】

(式中、R1は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基を示し、R2は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基を示し、R3及びR4は、炭素数1〜5のアルカンジイル基を示す。R3及びR4は、同一でも異なっていてもよい。)
【請求項2】
一般式(1)で表されるポリヒドロキシアミン化合物が、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、2−アミノ−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、及び2−アミノ−2−ヒドロキシエチル−1,3−プロパンジオールから選ばれる1種以上である、請求項1に記載のしわ取り消臭剤組成物。
【請求項3】
ポリエーテル変性シリコーン化合物(b)が、下記一般式(2)及び/又は(3)で表される化合物である、請求項1又は2に記載のしわ取り消臭剤組成物。
【化2】

(式中、R5は炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシ基を示し、R6は炭素数2〜5のアルカンジイル基を示し、R7は水素原子、炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシ基を示し、EOはエチレンオキシ基、POはプロピレンオキシ基を示す。a、b、c、及びdは、各ユニットの平均付加モル数を示し、aは1〜50、bは0〜10、cは1〜500、及びdは1〜50である。各R5は同一でも異なっていてもよい。)
【化3】

(式中、R5、R6、R7、EO、PO、a、b及びcは前記と同じである。eは、各ユニットの平均付加モル数を示し、1〜50である。各R5、R6及びR7は同一でも異なっていてもよい。)
【請求項4】
一般式(1)で表されるポリヒドロキシアミン化合物及び/又はその塩(a)の含有量が0.01〜10質量%であり、ポリエーテル変性シリコーン化合物(b)の含有量が0.01〜10質量%であり、シリカ微粒子(c)の含有量が0.01〜10重量%である、請求項1〜3のいずれかに記載のしわ取り消臭剤組成物。
【請求項5】
消臭剤組成物が水系組成物である、請求項1〜4のいずれかに記載のしわ取り消臭剤組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のしわ取り消臭剤組成物を、固体表面を有する対象物に付着させ、対象物の臭い及びしわを低減させるしわ取り消臭方法。

【公開番号】特開2007−239128(P2007−239128A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−61208(P2006−61208)
【出願日】平成18年3月7日(2006.3.7)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】