説明

しわ除去消臭剤組成物

【課題】熱処理を行わなくても、簡便に繊維製品のしわを除去することができ、且つ消臭効果を持続できるしわ除去消臭剤組成物の提供。
【解決手段】(a)一般式(1)で表される化合物及び(b)一般式(2)で表される化合物を含有するしわ除去消臭剤組成物、並びに該しわ除去消臭剤組成物をスプレー容器に充填してなるスプレー式しわ除去消臭剤。


〔式中、Xは−OH、−R1(R1は総炭素数1〜22の脂肪族炭化水素基等)又は−OR2(R2は炭素数6〜22の炭化水素基)、YはX又は−OSi(X)3、nは0〜15の数であり、一分子中に−OR2を少なくとも1つ有する。〕R3−W−[(PO)a/(EO)b]−H(2)〔式中、R3は炭素数10〜22の炭化水素基、POはC36O、EOはC24Oaは3〜100、bは1〜10、Wは、−O−、−COO−、−CONH−又は−NHCO−である。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、しわ除去消臭剤組成物、及びスプレー式しわ除去消臭剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、洗濯による型崩れや色あせを懸念して、一回着用しただけでは洗濯しない衣類が増加している。その反面、このような衣類におけるシワやニオイが気になっているという現状があり、簡単にしわが取れ、且つ消臭効果を持続できる剤が求められていた。
【0003】
しわを除去する技術に関して、特許文献1には、特定のアルキレンオキサイド付加物を含有するしわ除去組成物が開示されている。しかしながら、かかるしわ除去組成物に消臭効果は望めない。香料を配合して消臭効果を付与することも可能であるが、一般的な香料では消臭効果の持続性が不十分である。
【0004】
持続性香料に関する技術として、特許文献2及び特許文献3には、持続性香料を含む柔軟剤組成物が、特許文献4には、高持続性フレグランス供給系に関する技術がそれぞれ開示されているが、いずれにおいても消臭効果の持続性は十分ではなかった。特許文献5及び特許文献6には、ケイ酸エステルの加水分解物を香料成分として用い、繊維製品に付着したケイ酸エステルを徐々に加水分解することで香りの持続性を向上させる技術が開示されているが、かかる技術単独ではなお消臭効果の持続性は十分ではなかった。
【特許文献1】特開2006−104648号公報
【特許文献2】特表平10−507793号公報
【特許文献3】特表平11−508942号公報
【特許文献4】特表2003−534449号公報
【特許文献5】特表2003−526644号公報
【特許文献6】特表2007−502918号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、アイロンがけやスチームプレス等の熱処理を行わなくても、簡便に繊維製品のしわを除去することができ、且つ消臭効果を持続できるしわ除去消臭剤組成物及びスプレー式しわ除去消臭剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記(a)成分及び(b)成分を含有するしわ除去消臭剤組成物、並びに該しわ除去消臭剤組成物をスプレー容器に充填してなるスプレー式しわ除去消臭剤を提供する。
(a):一般式(1)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種
【0007】
【化2】

【0008】
〔式中、Xは−OH、−R1(R1は置換基としてフェニル基、水酸基又はアルコキシ基を有していてもよい総炭素数1〜22の脂肪族炭化水素基)又は−OR2(R2は炭素数6〜22の炭化水素基)であり、YはX又は−OSi(X)3、nは平均値を示す0〜15の数である。複数個のX及びYはそれぞれ同一でも異なっていてもよいが、一分子中に−OR2を少なくとも1つ有する。〕
(b):一般式(2)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種
3−W−[(PO)a/(EO)b]−H (2)
〔式中、R3は炭素数10〜22の炭化水素基であり、POはC36Oを示し、EOはC24Oを示し、a及びbはそれぞれ平均付加モル数を示し、aは3〜100、bは1〜10の数であり、(PO)と(EO)はランダム付加でもブロック付加でもいずれでもよく、(PO)と(EO)の付加順序は問わない。Wは、−O−、−COO−、−CONH−又は−NHCO−のいずれかである。〕
【発明の効果】
【0009】
本発明のしわ除去消臭剤組成物及びスプレー式しわ除去消臭剤によると、アイロンがけやスチームプレス等の熱処理を行わなくても、簡便に繊維製品のしわを除去することができ、且つ消臭効果を持続させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
[(a)成分]
本発明の(a)成分は、上記一般式(1)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種である。一般式(1)において、nは平均値を示す0〜15の数であり、0〜10の数が好ましく、0〜8の数がより好ましい。
【0011】
一般式(1)において、Xは−OH、−R1又は−OR2を示すが、R1は、置換基としてフェニル基、水酸基又はアルコキシ基を有していてもよい総炭素数1〜22の脂肪族炭化水素基であり、置換基としてフェニル基、水酸基又はアルコキシ基を有していてもよい総炭素数1〜22、好ましくは総炭素数1〜20、より好ましくは総炭素数1〜18の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基が好適である。nが0の場合には、炭素数6〜18の直鎖又は分岐鎖のアルキル基がより好ましく、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−ヘキサデシル基、n−オクタデシル基等の炭素数6〜18の直鎖アルキル基が更に好ましく、炭素数10〜18の直鎖アルキル基が更により好ましい。
【0012】
2は、炭素数6〜22、好ましくは6〜15、より好ましくは8〜15の炭化水素基を示す。炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基又はアルキルアリール基が好ましく、特に分岐構造を有するアルキル基及びアルケニル基から選ばれる基が好適である。
【0013】
本発明における消臭とは、感覚的消臭のことを意味し、消臭成分としては、一般式(1)の化合物の−OR2を構成するアルコール(R2OH)などが挙げられる。また、これらの消臭成分は、細菌やカビなどの増殖を抑制する効果もあるので、繊維製品における細菌やカビなどの増殖に際し産生する化合物に由来のニオイを防止することもできる。本発明において、−OR2は、炭素数6〜22の炭化水素基を有するアルコール残基であり、消臭性能の観点から、−OR2を構成するアルコール(R2OH)は、炭素数6〜11の直鎖又は分岐鎖の脂肪族アルコール、テルペン系アルコール、セスキテルペン系アルコール、炭素数7〜15の脂環式アルコール、炭素数7〜15のアリールアルキルアルコール又はアルキルアリールアルコールから選ばれるアルコールが好ましい。
【0014】
炭素数6〜11の直鎖又は分岐鎖の脂肪族アルコールの具体例としては、ヘキサノール、イソヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、ヘプタノール、イソヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、4−ヘプタノール、オクタノール、イソオクタノール、2−オクタノール、3−オクタノール、ノナノール、イソノナノール、2−ノナノール、3−ノナノール、デカノール、イソデカノール、2−デカノール、3−デカノール、ウンデカノール、イソウンデカノール、2−ウンデカノール、3−ウンデカノール、2−メチルペンタノール、2−メチルヘキサノール、2−メチルヘプタノール、2−メチルオクタノール、2−メチルノナノール、2−メチルデカノール、2−エチルブタノール、2−エチルペンタノール、2−エチルヘキサノール、2−エチルヘプタノール、2−エチルオクタノール、2−エチルノナノール、ジメチルヘプタノール、ジメチルオクタノール、cis−3−ヘキセノール、1−オクテン−3−オール、トランス−2−オクテノール、6−ノネン−1−オール、トランス−2−ノネン−1−オール、ジメトール、9−デセノール、2,6−ジメチル−2−ヘプタノール、10−ウンデセノール、6,8−ジメチル−2−ノナノール、トランス−2−シス−6−ノナジエノール等が挙げられる。
【0015】
テルペン系アルコール及びセスキテルペン系アルコールの具体例としては、リナロール、ゲラニオール、ネロール、シトロネロール、ミルセノール、ラバンジュロール、テトラヒドロゲラニオール、テトラヒドロリナロール、ヒドロキシシトロネロール、ジヒドロミルセノール、アオロシメノール、α−ターピネオール、β−ターピネオール、ターピネン−4−オール、l−メントール、イソプレゴール、ファルネソール、ネロリドール等が挙げられる。
【0016】
炭素数7〜15の脂環式アルコールの具体例としては、2,4−ジメチル−3−シクロヘキセン−1−メタノール、4−イソプロピルシクロヘキサノール、3,5,5−トリメチルシクロヘキサノール、4−イソプロピルシクロヘキサンメタノール、1−(4−イソプロピルシクロヘキシル)−エタノール、2,2−ジメチル−3−(3−メチルフェニル)−プロパノール、2−t−ブチルシクロヘキサノール、4−t−ブチルシクロヘキサノール、アンブリノール等が挙げられる。
【0017】
炭素数7〜15のアリールアルキルアルコール又はアルキルアリールアルコールの具体例としては、ベンジルアルコール、1−フェニルエチルアルコール、2−フェニルエチルアルコール、2−フェノキシエチルアルコール、4−メトキシベンジルアルコール、シンナミックアルコール、3−フェニルプロピルアルコール、1−フェニル−2−メチル−2−プロパノール、4−フェニル−2−メチル−2−ブタノール、1−フェニル−3−メチル−3−ペンタノール、3−メチル−5−フェニルペンタノール、チモール、カルバクロール、オイゲノール、イソオイゲノール等が挙げられる。
【0018】
一般式(1)において、nが0の場合には、4個のXのうち2〜4個、好ましくは3又は4個が−OR2であり、残りが−R1である化合物が好適である。
【0019】
n=0の場合の好ましい化合物としては、下記式(1−1)又は(1−2)で表される化合物が挙げられる。
【0020】
【化3】

【0021】
〔式中、R1及びR2は前記と同じ意味を示す。〕
一般式(1)において、nが1〜15の場合には、nは平均値を示し、全てのX及びYに対して、1/10以上、好ましくは1/8以上が−OR2であり、残りが−R1である化合物が好適であり、全てのX及びYが−OR2である化合物が特に好ましい。nとしては、1〜10が好ましく、1〜5がより好ましい。
【0022】
nが1〜15の場合の好ましい化合物としては、下記式(1−3)又は(1−4)で表される化合物が挙げられる。
【0023】
【化4】

【0024】
〔式中、R1及びR2は前記と同じ意味を示す。mは1〜15の数を示し、Tは、−OR2又は−R1を示す。〕
一般式(1)で表される化合物は、特許文献5などに記載されている方法で入手することができる。
【0025】
[(b)成分]
本発明の(b)成分は、上記一般式(2)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種である。一般式(2)において、R3は炭素数10〜22の炭化水素基であり、好ましくは炭素数12〜20、より好ましくは12〜18のアルキル基又はアルケニル基、更に好ましくは炭素数16〜18のアルキル基である。
【0026】
オキシプロピレン基(C36O基、以下、POと表記する場合もある)の平均付加モル数を示すaは、3〜100、好ましくは3〜60、より好ましくは10〜60の数である。また、オキシエチレン基(C24O基、以下、EOと表記する場合もある)の平均付加モル数を示すbは、1〜10、好ましくは1〜9、より好ましくは1〜8の数である。POとEOのモル比a/bは、好ましくは3〜12、より好ましくは4〜10である。
【0027】
Wは、−O−、−COO−、−CONH−又は−NHCO−のいずれかであり、より好ましくは−O−又は−COO−であり、更に好ましくは−O−である。
【0028】
(PO)と(EO)は、ランダム付加でもブロック付加でもよく、(PO)と(EO)の付加順序は問わないが、好ましくはブロック付加であり、中でも下記一般式(3)で表される化合物がより好ましい。なお、PO、EOの平均付加モル数はNMRにより求めることができる。
【0029】
3−O−(PO)a−(EO)b−H (3)
[しわ除去消臭剤組成物及びスプレー式しわ除去消臭剤]
本発明のしわ除去消臭剤組成物中の(a)成分、(b)成分の含有量は、使用形態、繊維製品の種類、しわ及び消臭する悪臭の程度によって適宜調整することができる。
【0030】
(a)成分の組成物中の含有量は、0.001〜1質量%が好ましく、0.001〜0.8質量%がより好ましく、0.001〜0.5質量%が更に好ましく、0.001〜0.3質量%が更により好ましく、0.001〜0.1質量%が特に好ましい。
【0031】
(b)成分の組成物中の含有量は、0.001〜1質量%が好ましく、0.002〜1質量%がより好ましく、0.005〜1質量%が更に好ましく、0.005〜0.5質量%が更により好ましく、0.005〜0.3質量%が特に好ましい。
【0032】
本発明のしわ除去消臭剤組成物において、(b)成分は、しわ除去性能を発現するだけでなく、(a)成分の消臭効果の持続性を向上させることができる。消臭効果の持続性の観点から、(a)成分及び(b)成分の配合比率は、(a)/(b)の質量比で、好ましくは100/1〜1/100、より好ましくは50/1〜1/100、更に好ましくは30/1〜1/100、更により好ましくは10/1〜1/100、特に好ましくは10/1〜1/50である。
【0033】
本発明のしわ除去消臭剤組成物において、(a)成分及び(b)成分以外の残部は水(以下(c1)成分という)とすることができ、しわ除去消臭剤組成物は液状とすることができる。使用する水は、蒸留水やイオン交換水等からイオン成分を除去したものが好ましい。(c1)成分の組成物中の含有量は、しわ除去性能及び消臭性能の観点から、70質量%以上が好ましく、70〜99.9質量%がより好ましく、80〜99.9質量%が更に好ましい。
【0034】
また必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、更に、界面活性剤、及び一般に添加される各種の溶剤、硫酸ナトリウムやN,N,N−トリメチルグリシン等の塩、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤、香料、染料、顔料、紫外線吸収剤等の他の成分を添加することができる。
【0035】
溶剤(以下(c2)成分という)としては、エタノール、イソプロパノール等の低級(炭素数2〜4)アルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール等の多価アルコール類(炭素数2〜12)、エチレングリコールやプロピレングリコールのモノエチル又はモノブチルエーテル、ジエチレングリコールやジプロピレングリコールのモノエチル又はモノブチルエーテル、ベンジルアルコール、ベンジルオキシエタノール、フェノール性化合物のエチレンオキシド又はプロピレンオキシド付加物等が挙げられる。これらの中では、しわ除去性能の点から、エタノール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールが好ましい。
【0036】
(c2)成分の組成物中の含有量は、通常0.001質量%以上であり、好ましくは0.005〜30質量%、更に好ましくは0.01〜10質量%である。
組成物中の(c1)成分と(c2)成分の割合は、しわ除去性能の点から、の観点から、(c1)/(c2)=1000/1〜3/1(重量比)が好ましく、500/1〜5/1がより好ましく、200/1〜5/1が更に好ましい。
【0037】
界面活性剤(以下(d)成分という)としては、特に制限はなく、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤の中から選ばれる1種以上が挙げられる。これらの中では、非イオン性界面活性剤が好ましく、下記一般式(4)で表される化合物が、しわ除去性能及び消臭性能の点から、特に好ましい。
【0038】
4−Z−[(EO)s/(PO)t]−R5 (4)
〔式(4)中、R4は、炭素数10〜22のアルキル基又はアルケニル基であり、R5は、水素原子、又は炭素数1〜3のアルキル基であり、Zは−O−又は−COO−のいずれかであり、EOは、オキシエチレン基であり、POはオキシプロピレン基であり、(EO)と(PO)はランダム付加でもブロック付加でもいずれでもよく、(EO)と(PO)の付加順序は問わない。s及びtは平均付加モル数であり、s+tの合計は5〜15の数であり、tは2以下の数である。〕
しわ除去性能及び消臭性能の観点から、一般式(4)で表される化合物のR4は、好ましくは炭素数10〜18、より好ましくは炭素数10〜16、更に好ましくは炭素数10〜14のアルキル基又はアルケニル基であり、R5は、好ましくは水素原子、又は炭素数1〜2のアルキル基、より好ましくは水素原子又はメチル基、更に好ましくは水素原子である。
【0039】
また、一般式(4)のsは、好ましくは5〜14の数、より好ましくは5〜13、更に好ましくは5〜12であり、tは好ましくは0である。一般式(4)で表される化合物としては、ポリオキシエチレン(s=6〜12)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(s=5〜12)モノアルキル(炭素数12〜14の2級の炭化水素基)エーテル、ラウリン酸ポリオキシチレン(s=6〜13)メチルエーテルから選ばれる1種以上が好ましく、ポリオキシエチレン(s=6〜12)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(s=5〜12)モノアルキル(炭素数12〜14の2級の炭化水素基)エーテルから選ばれる1種以上が更に好ましい。ここで、sはオキシエチレン基の平均付加モル数である。
【0040】
(d)成分の組成物中の含有量は、好ましくは0.001〜10質量%、より好ましくは0.01〜5質量%、更に好ましくは0.01〜3質量%、更により好ましくは0.01〜2質量%、特に好ましくは0.01〜1質量%である。
【0041】
本発明のしわ除去消臭剤組成物において、消臭性能の観点から、(a)成分及び(d)成分の配合比率は、(a)/(d)の質量比で、好ましくは100/1〜1/100、より好ましくは50/1〜1/100、更に好ましくは50/1〜1/50、特に好ましくは10/1〜1/50である。
【0042】
また、本発明のしわ除去消臭剤組成物において、しわ除去性能の観点から、(b)成分及び(d)成分の配合比率は、(b)/(d)の質量比で、好ましくは100/1〜1/100、より好ましくは50/1〜1/50、更に好ましくは30/1〜1/30、特に好ましくは10/1〜1/10である。
【0043】
本発明のしわ除去消臭剤組成物の25℃におけるpHは、消臭性能の観点から、5〜9に調整することが好ましく、6〜9がより好ましく、6.5〜8.5が更に好ましい。本発明のしわ除去消臭剤組成物のpHは、塩酸等の酸、又は水酸化ナトリウム等のアルカリを添加することにより調整することができる。
【0044】
本発明のしわ除去消臭剤組成物の25℃における粘度は、スプレー容器での噴霧適性の観点から、15mPa・s以下であり、好ましくは1〜10mPa・s、より好ましくは1〜5mPa・sである。本発明のしわ除去消臭剤組成物において、25℃における粘度が15mPa・s以下であると噴霧パターンが適正となる。粘度は、東京計器株式会社製、B型粘度計(モデル形式BM)に、ローター番号No.1のローターを備え付けたものを準備し、試料をトールビーカーに充填し、25℃の恒温槽内にて25℃に調製し、恒温に調製された試料を粘度計にセットし、ローターの回転数を60r/minに設定し、回転を始めてから60秒後に測定した粘度である。
【0045】
本発明のしわ除去消臭剤組成物をスプレー容器に充填してスプレー式しわ除去消臭剤を得ることができる。本発明のしわ除去消臭剤組成物は水を含有するミストタイプであり、これをスプレー容器に充填し、一回の噴霧量を0.1〜1mlに調整したものが好ましい。使用するスプレー容器としては、トリガースプレー容器(直圧あるいは蓄圧型)やディスペンサータイプのポンプスプレー容器、耐圧容器を具備したエアゾールスプレー容器等の公知のスプレー容器を用いることができる。性能を効果的に発現するために、トリガー式スプレーヤーあるいはエアゾールスプレーヤーを具備するスプレー容器が好ましく、特に、本発明においては、耐久性や布付着性の点から、トリガー式スプレーヤーを具備するスプレー容器が好ましい。
【0046】
スプレー容器としては、噴射口から噴射方向に10cm離れた地点における噴霧液滴の平均粒径が10〜200μmとなり、噴射口から噴射方向に15cm離れた地点における粒径200μmを超える液滴の数が噴霧液滴の総数の1%以下となり、噴射口から噴射方向に10cm離れた地点における粒径10μm未満の液滴の数が噴霧液滴の総数の1%以下となる噴霧手段を備えたものが好ましい。噴霧液滴の粒子径分布は、例えば、レーザー回折式粒度分布計(日本電子株式会社製)により測定することができる。
【0047】
本発明のしわ除去消臭剤組成物及びスプレー式しわ除去消臭剤は、繊維製品用として好適であり、かかるしわ除去消臭剤組成物は、噴霧により繊維製品に付着させて、対象物のしわを低減させ、且つ対象物の悪臭を消臭することが好ましく、前記スプレー式しわ除去消臭剤はこの方法に好適に用いられる。繊維製品としては、スーツ、セーター等の衣類、カーテン、ソファー等が挙げられる。
【実施例】
【0048】
実施例及び比較例で用いた各配合成分をまとめて以下に示す。
【0049】
(a)成分
・a−1:下記合成例1で得られたポリ(ゲラニルオキシ)シロキサン
・a−2:下記合成例2で得られたポリ(ネリルオキシ)シロキサン
・a−3:下記合成例3で得られたポリ(フェニルエチルオキシ)シロキサン
・a−4:下記合成例4で得られたテトラキス(ゲラニルオキシ)シラン
・a−5:下記合成例5で得られたテトラキス(シトロネルオキシ)シラン
・a−6:下記合成例6で得られたテトラキス(フェニルエチルオキシ)シラン
・a−7:下記合成例7で得られたテトラキス(cis−3−ヘキセニルオキシ)シラン
(a’)成分
・a’−1:ゲラニオール
・a’−2:ネロール
・a’−3:シトロネロール
・a’−4:フェニルエチルアルコール
・a’−5:cis−3−ヘキセノール
(b)成分
・b−1:一般式(3)中のR3が炭素数18の直鎖アルキル基、aが35、bが5の数である化合物
・b−2:一般式(3)中のR3が炭素数16の直鎖アルキル基、aが20、bが5の数である化合物
・b−3:一般式(2)中のR3が炭素数18の直鎖アルキル基、Wが−O−、aが30、bが5の数であり、(PO)と(EO)がランダム付加である化合物
・b−4:一般式(2)中のR3が炭素数18の直鎖アルキル基、Wが−O−、aが35、bが5の数であり、R3−W−に(EO)と(PO)がこの順でブロック付加した化合物〔R3−W−(EO)b−(PO)a−Hの化合物〕
その他成分
・c2−1:エタノール
・d−1:ポリオキシエチレン(平均付加モル数=8)ラウリルエーテル
抗菌剤:プロキセルBDN(アビシア株式会社製、10%水溶液)
合成例1
200mLの四つ口フラスコにテトラエトキシシラン145.92gと水酸化カリウム0.48g、イオン交換水0.8mLを入れ、窒素気流下120〜125℃、33kPa〜101kPa(常圧)で約37時間反応を行った。この間イオン交換水を0.8mL追加した。反応後、33kPaで更に2時間反応させた後、冷却、濾過を行い、134.58gのエトキシシランの縮合物を淡黄色液体として得た。
【0050】
続いて、100mLの四つ口フラスコに先のテトラエトキシシラン縮合物25.00gとゲラニオール(沸点230℃、logP値2.77)62.93g(0.41mol)、4.8%水酸化ナトリウム水溶液0.17gを入れ、エタノールを留出させながら95〜119℃でさらに2時間攪拌した。2時間後、槽内の圧力を徐々に8kPaまで下げ、エタノールを留出させながら116〜119℃でさらに3時間攪拌した。3時間後、冷却、減圧を解除した後、濾過を行い、ポリ(ゲラニルオキシ)シロキサン(式(1)において、X=Y=−OR2で、R2がゲラニオールから水酸基を除いた残基、nが平均4の化合物である)を含む65.39gの淡黄色油状物を得た。
【0051】
合成例2
ゲラニオールの代わりにネロール(沸点227℃、logP値2.77)を62.93g(0.41mol)用いる以外は合成例1と同様にして、ポリ(ネリルオキシ)シロキサン(式(1)において、X=Y=−OR2で、R2がネロールから水酸基を除いた残基、nが平均4の化合物である)を含む淡黄色油状物を得た。
【0052】
合成例3
ゲラニオールの代わりにフェニルエチルアルコール(沸点220℃、logP値1.18)を49.85g(0.41mol)用いる以外は合成例1と同様にして、ポリ(フェニルエチルオキシ)シロキサン(式(1)において、X=Y=−OR2で、R2がフェニルエチルアルコールから水酸基を除いた残基、nが平均4の化合物である)を含む52.30gの淡黄色油状物を得た。
【0053】
合成例4
200mLの四つ口フラスコにテトラエトキシシラン35.45g(0.17mol)、ゲラニオール100.26g(0.65mol)、2.8%ナトリウムメトキシドメタノール溶液1.34mLを入れ、窒素気流下エタノールを留出させながら118〜120℃で約2時間攪拌した。2時間後、槽内の圧力を徐々に8kPaまで下げ、エタノールを留出させながら112〜119℃でさらに3時間攪拌した。3時間後、冷却、減圧を解除した後、濾過を行い、テトラキス(ゲラニルオキシ)シラン(式(1)において、X=−OR2で、R2がゲラニオールから水酸基を除いた残基、nが0の化合物である)を含む薄茶色油状物を得た。
【0054】
合成例5
ゲラニオールの代わりにシトロネロール(沸点225℃、logP値3.26)を101.57g(0.65mol)用いる以外は合成例4と同様にして、テトラキス(シトロネルオキシ)シラン(式(1)において、X=−OR2で、R2がシトロネロールから水酸基を除いた残基、nが0の化合物である)を含む薄茶色油状物を得た。
【0055】
合成例6
ゲラニオールの代わりにフェニルエチルアルコールを79.41g(0.65mol)用いる以外は合成例4と同様にして、テトラキス(フェニルエチルオキシ)シラン(式(1)において、X=−OR2で、R2がフェニルエチルアルコールから水酸基を除いた残基、nが0の化合物である)を含む薄茶色油状物を得た。
【0056】
合成例7
ゲラニオールの代わりにcis−3−ヘキセノール(沸点156℃、logP値1.40)を64.74g(0.65mol)用いる以外は合成例4と同様にして、テトラキス(cis−3−ヘキセニルオキシ)シラン(式(1)において、X=−OR2で、R2がフェニルエチルアルコールから水酸基を除いた残基、nが0の化合物である)を含む薄茶色油状物を得た。
【0057】
実施例1〜6及び比較例1〜3
表1に示す配合成分を用い、表1に示す組成のしわ除去消臭剤組成物を調製した。得られた組成物は、1規定の塩酸又は1/10規定の水酸化ナトリウム水溶液でpH8(25℃)に調整した。得られた組成物について、下記方法でしわ除去性能及び消臭効果の持続性を評価した。
【0058】
<しわ除去性能の評価>
(1)しわつけ方法
ウール生地(ウールサージ、(株)谷頭商店)からなる試験布20cm×10cmにイオン交換水をスプレー噴霧して湿潤させた後、試験布を2つ折りにして、40℃に設定した恒温室内で折り目部分に2kgの重りをのせ、24時間放置することによって、これをしわ除去評価のモデルじわとした。
【0059】
(2)しわ除去方法
上記方法にて作成したモデルじわのついた試験布に対し、表1に示すしわ除去消臭剤組成物をスプレー容器(キャニオン製、T−7500)を用いて試験布乾燥時質量に対して50質量%噴霧した後、25℃/50%RHの恒温室に12時間放置し、自然乾燥させた。乾燥終了後、試験布のしわの取れ具合を判定した。
【0060】
(3)しわ除去性能評価
判定は、しわ除去消臭剤組成物をスプレー処理した布と、処理前の布(対照)とを、熟練した5人のパネラーに下記の基準で採点してもらい、平均点を求め、表1に示した。しわ除去性能としては、平均点3未満が好ましい。
1:全くしわがない
2:ほとんどしわがない
3:僅かにしわが残っている
4:相当しわが残っている
5:著しくしわが残っている
<消臭効果の持続性の評価1>
(1)試験布
木綿ツイル布((株)谷頭商店)1.8kgを市販の弱アルカリ性洗剤(花王(株)アタック)を用いて二槽式洗濯機(東芝銀河VH−360S1)で5回繰り返し洗濯した(洗剤濃度0.0667質量%、水道水(20℃)36L使用、洗濯10分−脱水3分−すすぎ8分(流水すすぎ、水量15L/min.))。洗濯した木綿ツイル布を乾燥し、10×10cmに裁断した後、臭気成分として、カプロン酸の50ppmエタノール溶液をスプレーバイアル(株式会社マルエム、No.6)を用いて1回スプレーし、30分間乾燥させた後、試験布とした。
【0061】
(2)消臭効果の持続性の評価
上記方法にて作成した試験布に対し、表1に示すしわ除去消臭剤組成物をスプレー容器(キャニオン製、T−7500)を用いて2回スプレーした後、25℃/50%RHの恒温室に3日間放置し、自然乾燥させた。30歳代の男性5人及び女性5人の計10人のパネラーに、自然乾燥した試験片の臭いを嗅いでもらい、下記の6段階の臭気強度表示法で評価し、その平均値を求め、表1に示した。消臭効果の持続性としては、平均点3未満が好ましい。
0:不快なニオイを全く感じない
1:不快なニオイをわずかに感じる強さ
2:不快なニオイを容易に感じる強さ
3:不快なニオイを明らかに感じる強さ
4:強いニオイ
5:耐えられないほど強いニオイ
<消臭効果の持続性の評価2>
(1)消臭対象物の調製
30歳代の男性3人に、市販綿100%長ズボンを2枚ずつ渡し、1日おきに着用してもらった。それぞれの衣料について、1日着用した後に、2枚のうち1枚には実施例5の組成物をスプレーし、もう1枚には比較例1の組成物をスプレーすることを各5日ずつ、計10日間繰り返したものを回収した。スプレー容器は、キャニオン製T−7500を用い、スプレー量は、実施例5と比較例1が同一回数になるように調整してもらった。回収した衣類の太もも接触部位(前面)から、左3枚、右3枚ずつ切断(10cm×10cm)し、試験片とした。なお、同一被験者から得た試験片は、切断部位(左右、上下)による付着臭気や汚れの違いはないことを確認した。
【0062】
(2)消臭効果の持続性の評価
同一被験者から得た試験片について、30歳代の男性5人及び女性5人の計10人のパネラーが、実施例5の組成物を処理した試験片と、比較例1の組成物を処理した試験片の臭いを比較した。
【0063】
(3)評価結果
実施例5の組成物は、実衣料においても比較例1の組成物に比べ、消臭効果の持続性が優れていた。
【0064】
【表1】

【0065】
表1から、比較例1〜3のしわ除去消臭剤組成物は、しわ除去性能又は消臭効果の持続性が乏しいのに対し、実施例1〜6のしわ除去消臭剤組成物は、しわ除去性能及び消臭効果の持続性(評価1)の両方に優れていた。また、消臭効果の持続性の評価2においても、実施例5のしわ除去消臭剤組成物は、比較例1のしわ除去消臭剤組成物に比べて消臭効果の持続性が優れていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)成分及び(b)成分を含有するしわ除去消臭剤組成物。
(a):一般式(1)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種
【化1】

〔式中、Xは−OH、−R1(R1は置換基としてフェニル基、水酸基又はアルコキシ基を有していてもよい総炭素数1〜22の脂肪族炭化水素基)又は−OR2(R2は炭素数6〜22の炭化水素基)であり、YはX又は−OSi(X)3、nは平均値を示す0〜15の数である。複数個のX及びYはそれぞれ同一でも異なっていてもよいが、一分子中に−OR2を少なくとも1つ有する。〕
(b):一般式(2)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種
3−W−[(PO)a/(EO)b]−H (2)
〔式中、R3は炭素数10〜22の炭化水素基であり、POはC36Oを示し、EOはC24Oを示し、a及びbはそれぞれ平均付加モル数を示し、aは3〜100、bは1〜10の数であり、(PO)と(EO)はランダム付加でもブロック付加でもいずれでもよく、(PO)と(EO)の付加順序は問わない。Wは、−O−、−COO−、−CONH−又は−NHCO−のいずれかである。〕
【請求項2】
液状である、請求項1記載のしわ除去消臭剤組成物。
【請求項3】
請求項1又は2記載のしわ除去消臭剤組成物を、スプレー容器に充填してなる、スプレー式しわ除去消臭剤。
【請求項4】
スプレー容器がトリガー式スプレーヤーを具備する、請求項3記載のスプレー式しわ除去消臭剤。

【公開番号】特開2010−138498(P2010−138498A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−312952(P2008−312952)
【出願日】平成20年12月9日(2008.12.9)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】