説明

つり上げ装置に掛かる負荷の変化を決定する方法及び復元する方法

【課題】吊り下げ装置に掛かる負荷の変化を決定する方法で、信頼できる負荷変化の復元が可能になり、これらに基づく計算が最適化され得る方法を提供する。
【解決手段】負荷経過データの中の負荷の変化は、負荷曲線の勾配の転位点での負荷曲線のデータの範囲内で決定される。また、負荷曲線は、転位点での離散的な時間観測間隔に分解される。更に、つり上げ装置の負荷の状態を復元する方法に関し、負荷の変化を決定する方法が用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、つり上げ装置の負荷の変化を決定し、復元する方法に関する。特に、クレーン(特に、クレーン車)に使用される、つり上げ装置の分野に関し、又、負荷の変化に直接的に又は間接的に影響を受けるコンポーネントだけでなく、クレーン全体(すなわち、クレーン/クレーン車)にも関する。
【背景技術】
【0002】
負荷の変化を決定及び復元する方法は、一般に、つり上げ装置の操作を記録する手段として使用される。それらは、事故を再現するために、又は、荷重に基づいて料金を計算するために、使用される。この情報は、構造ひずみを計算するための基礎としても使用される。
【0003】
従来知られているように、そのような負荷の変化は、荷物を持ち上げ、荷物を降ろすことを検知することによって、決定される。これらの負荷の変化は、例えばそのような作動関数のような追加的な情報を用いて検知され、それによって、荷物の上昇又は降下を予想することが可能になる。プロットされた負荷曲線が評価目的で分析される場合に、この分析は、そのような追加的な情報(動作情報)に基づいて、又は、例えば安全装置のつなぎ止め(bridging)のような外的な事象に基づいてなされる。この点、特に、荷物を持ち上げる動作の後に、荷物を降ろす動作が必ず続き、又その逆もあると想定される。この方法で生成されたデータセットは、通常、引き続いて起きる負荷の状態を検出し、必要に応じてそれらを復元するという観点から、データロガーに格納される。これらの従来の方法によると、システムに与えられた閾値の範囲での離散時間(すなわち、荷物の持ち上げ、荷物の設定、荷物の持ち上げ等)に基づいて、評価間隔を考えることができる(図2は、この方法で分析した負荷曲線を示す。)。しかしながら、負荷変化の事象に関する単純な過程に基づく場合、それらは、相対的に現実に則しておらず、そのため、耐用年数の計算が不正確になる。従来技術によって知られた、これらの方法は、負荷が静的でなく、持ち上げ動作の過程で負荷が変化する状況において、それらの限界に達する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、従来技術の課題を少なくとも一部は解決する、つり上げ装置の負荷の変化を決定することに関する方法を提案することを目的とする。特に、その目的によると、信頼できる負荷変化の復元が可能になり、その結果、それらに基づく計算が最適化され得る。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本目的は、請求項1に定義されるように、つり上げ装置に掛かる負荷の変化を決定することに関する方法に基づく発明によって、実現される。従属する請求項は、本発明の最善の実施の形態を規定する。
【0006】
本発明によって提案される方法の目的のために、負荷経過データの中の負荷の変化は、負荷曲線の勾配に関する転位点で決定される。更に、負荷曲線は、転位点で離散的な時間測定間隔に分解される。言い換えると、本発明は、負荷曲線を分析する方法を開示する。本方法によって生成される観測間隔によると、データ低減(data-reduced)情報を生成することができる。それらは、荷物の積み降ろしの動作を検知することに基づくため、それによって、負荷曲線がその後に、連続時間に基づいて復元される。
【0007】
特に、負荷曲線の勾配を用いると、最適な分析を得ることができ、従って、評価は、負荷曲線に本質的な情報の1つを使用するのであって、言い換えると、別個に決定されるべきではない。
【0008】
本発明によって提案される方法に基づく決定プロセスは、格納された負荷曲線データを用いて適用されるが、リアルタイム負荷曲線データを使用してもよい。特に、負荷曲線がプロットされ、すなわち格納され、そして、メモリ・インパルスが、負荷変化の指標又は負荷変化の事象として、転位点で生成され、又は挿入される。
【0009】
本発明の一実施の形態において、ごく僅かである観測間隔、及び、明らかにごく僅かである又は除外基準に照らしてごく僅かである観測間隔は、考慮されず、又は抑制される。この場合、除外基準は、具体的には時間(例えば短い時間間隔)に基づく基準であるか、又は、負荷曲線の外部からの影響(例えば外部事象、制御データ)を考慮する基準である。
【0010】
転位点は、負荷曲線の勾配が符号を変える又はゼロに変わる場合、負荷曲線の変位として負荷曲線において決定されてもよく、挿入されてもよい。更に、勾配変化が同符号で繰り返し連続的に変化する場合、言い換えると、負荷曲線が上昇又は降下を続け、同時に険しさを変化させる場合、転位点が、決定され又は挿入されてもよい。
【0011】
広い形態によると、つり上げ装置の負荷の状態を復元する方法にも関し、負荷の変化を決定するために使用される方法は、上述とは異なる実施の形態に基づく。特に、つり上げ装置の操作データに由来するか、又は、特定の操作状況の間に決定されるか、いずれかの負荷の状態を復元する場合、負荷の他の変化について考慮される。
【0012】
本発明は、実施の形態を参照し、また添付の図を参照しながら以下で、より詳細に説明されるであろう。全ての説明された特徴は、別個に使用されてもよく、また任意の実際的な組合せで使用されてもよい。添付図は、以下を示す。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明によって提案された方法のためのシステムの概要を示す図である。
【図2a】従来技術に基づく事象の分析をプロットした負荷曲線を示す。
【図2b】本発明に基づく分析とともに、負荷曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
一実施の形態によると、本発明は、負荷の状態を評価して復元するという観点から、つり上げる装置の負荷の変化を解析する方法の開示としても説明される。これは、主に又はもっぱら、持ち上げの開始及び持ち上げの終了を検知することに基づくものではない。評価ユニットは、負荷をプロットした曲線を時間的に離散した観測間隔へ分解し、各負荷変化は、評価間隔を分析する手段として適用できる。分析(負荷変化事象)は、負荷曲線の勾配変化に基づいて実行され、特に、互いに時間的にオフセットしているが、同じ勾配符号を有する負荷変化が、評価間隔を分析する手段として本目的に使用され得る。図2bは、関連性のある勾配変化が考慮された負荷曲線の(図2aと比較して)より顕著な分析を示す。負荷に関連する情報から勾配が形成され、メモリ・インパルスが、負荷勾配の変位、すなわちそれぞれの事象(変位)に基づいて生成される。この目的のために使用されるデータは、格納されたデータであってもよく、又は、つり上げ装置の現在の負荷に関する直接又は間接の情報を含むリアルタイムで記録されたデータであってもよい。
【0015】
従って、本発明が提案する方法によると、負荷変化を連続的に時間とともに復元することができ、基本的に負荷の積み上げ又は積み降ろしを検知する必要がなく、その結果、持ち上げ動作中に変化する負荷を復元することも可能になる。
【0016】
当然、しかしながら、可能な限り最適な結果を得るために、本発明の提案によって取得される情報に加えて、システムが既知の他の情報を処理することも可能である。例えば、今後、分離して考慮されることを意図した事象(例えば、安全装置の操作)は、追加的なメモリ・インパルスを生成し、又は他のものを削除してもよい。図1において、負荷の勾配検知及び連続する上述の事象が、上方に示されており、そして、操作中に生じる事象だけでなく、負荷の勾配に関する情報が、評価され、次に、データ記憶にメモリ・インパルスとして格納される。この点に関し、生データ又は処理されたデータを格納することができ、それらの正当範囲は、前回のメモリ・インパルスと新しいメモリ・インパルスとの間になる。
【0017】
しかしながら、図1は、つり上げ装置の操作によって生じるデータが、如何に処理されて、データ記憶のための入力データセットとして利用されるかを示す。本発明の提案によって取得されるデータ(評価された勾配の検知)とともに、本システムによると、より大量のデータが格納されなければならないが、格納されたデータに基づいて、あらゆる負荷曲線のより詳細な復元が可能になる。さらに、生成された観測間隔の統計的な評価は、復元の評価中に、つり上げ装置の構造歪みを計算するために使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷の変化が、負荷曲線データの中の負荷曲線勾配の転位点で決定され、
負荷曲線が、転位点で、離散的な観測間隔の時間に分解される
ことを特徴とする、つり上げ装置に掛かる負荷の変化を決定する方法。
【請求項2】
決定処理は、格納された負荷曲線データを使用して、行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
決定処理は、リアルタイムの負荷曲線データを使用して、行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
負荷曲線が、入力すなわち格納され、
メモリ・インパルスが、負荷曲線における負荷変化の指標又は負荷変化の事象となる転位点で生成されることを特徴とする請求項1から3までの1つに記載の方法。
【請求項5】
明らかに又は除外基準に基づいてごく僅かな観測間隔は、考慮されず又は削除され、
上記除外基準は、時間ベースの基準、又は特に負荷曲線への外的影響を可能にする基準である
ことを特徴とする請求項1から4までの1つに記載の方法。
【請求項6】
転位点は、負荷曲線勾配が符号を変えるか又はゼロになる場合に、決定されることを特徴とする請求項1から5までの1つに記載の方法。
【請求項7】
転位点は、勾配が変化するが同じ符号のままであり、特に、同じ符号で1度より多く連続して変化する場合に、決定されることを特徴とする請求項1から5までの1つに記載の方法。
【請求項8】
請求項1から7までの1つに記載の方法が、負荷の変化を決定するために使用されることを特徴とする、つり上げ装置の負荷の状態を復元する方法。
【請求項9】
許容量は、つり上げ装置の操作データに由来する負荷の他の変化に適合し、又は特別な操作の状況に関して決定されることを特徴とする請求項8に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2a】
image rotate

【図2b】
image rotate


【公開番号】特開2010−6607(P2010−6607A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−120627(P2009−120627)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【出願人】(507186322)マニトワック・クレーン・グループ・フランス・ソシエテ・パール・アクシオン・サンプリフィエ (12)
【氏名又は名称原語表記】Manitowoc Crane Group France SAS