説明

つる検査装置、つる配向装置、つる付き容器用取り扱いシステム、及びつる付き容器用取り扱い方法

【課題】つる付きの容器に対して、従来の煩雑な作業を無くし、コスト及び作業効率の向上、さらには品質管理向上を図ることができる、つる検査装置、つる配向装置、及び、つる付き容器用取り扱いシステムを提供する。
【解決手段】容器に設けた2つのイヤー12間につる11が架け渡されたつる付き容器10におけるつるを取り扱うシステムであって、つる検査装置100と、つる仕分け装置200とを備え、つる検査装置は、つるを立てた状態に支持するつる支持部材110と、容器を搬送する搬送装置120と、つるを撓ませてイヤーへのつるの取り付け良否を診断する診断装置130とを有し、つる仕分け装置は、カメラ350で認識した溶接線に対して指定側へつるを配向する仕分け装置200を有することを特徴とする取り扱いシステムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に取り付けられた取っ手である「つる」の容器からの脱落の可能性を検査する、つる検査装置、容器に取り付けられたつるの配向を行う、つる配向装置、つる検査装置及びつる配向装置を備えたつる付き容器用取り扱いシステム、並びに、つる付き容器用取り扱い方法に関する。
【背景技術】
【0002】
JIS Z 1620には、図12に示すような、いわゆるペール缶と呼ばれる容器が規定されている。このペール缶の一種類として、取っ手である「つる」を缶に架け渡した、つる付きのものがある。このつる付きペール缶10では、缶の外側面の対向する2箇所に「イヤー」12と呼ばれる取付耳が設けられ、このそれぞれのイヤー12に、つる11の各端が揺動可能に係合され、2つのイヤー12間に、つる11が架け渡されている。このような、つる付きペール缶10は、つる11を持つことで容易に持ち運びが可能である。
【0003】
つる付きのペール缶10は、概略を次に示す工程に従い製造される。即ち、板材がロールされ胴溶接されて胴体部が作製され、この胴体部に地板が巻き締められる。さらに、胴体部の外側壁の2箇所に、イヤー12が溶接される。このようなイヤー付きの缶に対して、図13に概略構成を示すベイリングマシン(つる付け機)20によって、つる11がイヤー12間に架け渡される。このような各工程は、流れ作業によってほぼ自動的に行われ、例えば約40缶/分の速度で、つる付きペール缶10が製造される。
【0004】
上述のベイリングマシン20について詳しく説明する。ベイリングマシン20は、線材供給機構21と、金型の上型22及び下型23とを備える。線材供給機構21は、例えば溶融亜鉛メッキ鉄線で線径約4mmの線材11aに樹脂製のグリップ11bを挿通し、この線材11aを上型22と下型23との間に供給しながら規定の長さに切断する。上型22及び下型23は、供給された線材11aをプレス成形する。また、下型23は、イヤー付き缶10aの各イヤー12に対向して、図13に示すようなダイ24を有する。ダイ24は、線材11aが挿通可能なほぼJ字形に成形された溝24aを有し、線材11aのプレス動作に伴い、線材11aを溝24aに沿って案内することで、線材11aの端をU字型に成形する。ダイ24の線材出口24bは、イヤー12の開口12aに対向して配置されている。
【0005】
よって、ベイリングマシン20が動作することで、線材11aの両端は、プレス成形と同時にU字型に成形され、図14に示すように、イヤー12の開口12aを通りイヤー12内へ進入する。このようにして、ベイリングマシン20は、イヤー付き缶10aの2つのイヤー12間に、つる11を取り付け、架け渡す。尚、イヤー12間に架け渡されたつる11は、イヤー12の開口12aを中心として回動つまり揺動自在である。
【0006】
一方、図13において、イヤー付き缶10aは、流れ作業において紙面を貫通する搬送方向26に沿って搬送される。ベイリングマシン20は、搬送方向26に沿った流れ作業の中で線材11aの成形及びイヤー12への取り付け作業を行う必要性から、線材供給機構21、並びに上型22及び下型23は、イヤー付き缶10aの搬送に邪魔にならないように、図13に示すように、搬送方向26に対して直角な直交方向27に沿って配置されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】JIS Z 1620 1995年度版
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した工程を経て製造されたつる付きペール缶10に対して、従来、以下のような作業が人手によって行われている。
即ち、上述のように自動運転されているベイリングマシン20において、例えば、線材11aが規定長よりも僅かに短く切断されたような場合には、図15に示すように、イヤー12内に挿入されるつる11の端部の長さが規定よりも短くなってしまう。一方、ペール缶10は、ユーザでは、つる11を持って持ち運ばれる場合もあり、缶内に例えば液体等を充填したときには、相当な容器重量になる。よって、上述のように、つる11の端部がイヤー12内へ規定よりも短い場合には、つる11がイヤー12から外れる危険性が生じる。
【0009】
このような危険性を回避するため、ペール缶製造工程では、イヤー付き缶10aへのつる11の取り付け工程後、つる11がイヤー12から外れる可能性の有無を検査している。上述のように取り付けられたつる11は、イヤー12に対して自由に回動することから、この検査方法では、従来、一人の作業者がつる11を持ち上げた状態で、他の作業者が、図16に矢印で示すように、つる11の円弧部分を手でたたいたり、押したりする方法が採られている。
【0010】
このように、つるの検査には、ペール缶の生産速度に対応するために最低二人の作業者を要し、かつ検査に適した打撃場所及び打撃力が存在することから、検査作業には経験を要する。さらに、上述のように約40缶/分の速度でペール缶10が製造されてくることから、その全数を検査するには最低二人の作業員が必要であり、実際にはベイリングマシン20の動作不調時に、より慎重に検査を行う状況である。
【0011】
また、納品後のユーザにおける作業工程との関係等により、ペール缶10の胴体に缶中心軸方向へ延在する溶接線13(図16)に対して、つる11の配置方向、つまりつる11を溶接線13の右側又は左側のどちらに位置させるかを、ユーザから指定される場合がある。尚、ペール缶10の周方向において、溶接線13に近接した位置に、2つのイヤー12の内の一つが取り付けられている。上述のように、つる11は、イヤー12に対して自由に回動し、従来、つる取付工程から搬出されるペール缶10では、溶接線13に対するつる11の配置方向は、バラバラである。したがって、つる11の配置方向指定がある場合には、溶接線13を確認し、さらに溶接線13に対して指定された方向につる11を配向するという作業が必要となり、一人の作業者でこの作業を行う必要があった。この作業者は、本来、製品の外観検査等を行う者であるが、つる11の配向作業に専従となってしまうことから、さらに別の作業者を配置する必要も発生する。
【0012】
このように、従来の容器製造現場では、つる付きの容器について、つる11が備わるが故に発生する煩雑な作業が存在し、コスト及び作業効率の低下を招くという問題があった。また、煩雑作業に翻弄され不完全な検査を招来し製品の品質管理が甘くなってしまうという懸念もあった。
【0013】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、つる付きの容器に対して、従来の煩雑な作業を無くし、コスト及び作業効率の向上、さらには品質管理向上を図ることができる、つる検査装置、つる配向装置、及び、つる付き容器用取り扱いシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明は以下のように構成する。
即ち、本発明の第1態様におけるつる検査装置は、容器外面の対向位置に設けた2つのイヤー間に揺動可能に架け渡されたつるの、イヤーへの取り付けの良否を診断する、つる検査装置であって、
容器の中心軸方向に沿って容器胴体の上方へ上記つるが立った状態につるを支持する、つる支持部材と、
つる支持部材にてつるが立った状態で支持されながら上記容器を搬送方向に搬送するとともに、上記中心軸の軸周り方向へ上記容器を回転させて、搬送方向につるを配向する搬送装置と、
上記つる支持部材にてつるが立った状態で支持されながら上記搬送装置にて搬送方向に搬送中である上記配向されたつるを、上記中心軸方向に沿って容器胴体側へ押圧してつるの取り付け良否を診断する良否診断装置と、を備えたことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の第2態様におけるつる配向装置は、容器外面の対向位置に設けた2つのイヤー間に揺動可能に架け渡されたつるの配向を行う、つる配向装置であって、
容器の中心軸方向に沿って容器胴体の上方へ上記つるが立った状態につるを支持する、つる支持部材と、
つる付き容器の胴体における上記中心軸方向に延在する溶接線を認識するカメラと、
つる付き容器を搬送方向に搬送する搬送装置と、
つる付き容器のつるが、上記搬送装置による搬送にて上記つる支持部材による支持から外れた直後において、上記カメラにより認識された溶接線に対して指定側へつるを配向するつる仕分け装置と、を備えたことを特徴とする。
【0016】
また、本発明の第3態様におけるつる付き容器用取り扱いシステムは、容器外面の対向位置に設けた2つのイヤー間につるが架け渡されたつる付き容器における上記つるを取り扱うシステムであって、
容器の胴体における中心軸方向に延在する溶接線を認識するカメラと、
上記イヤーが設けられた容器に対して、上記つるをイヤー間に架け渡すベイリング装置と、
上記ベイリング装置の次段に設置される、請求項1から4のいずれかに記載のつる検査装置と、
上記つる検査装置の次段に設置され、つる付き容器のつるが搬送装置による搬送にてつる支持部材による支持から外れた直後において、上記カメラにより認識された溶接線に対して指定側へつるを配向するつる仕分け装置と、を備えたことを特徴とする。
【0017】
また、本発明の第4態様におけるつる付き容器用取り扱い方法は、容器外面の対向位置に設けた2つのイヤー間に、ベイリング装置によって、つるを架け渡し、
上記ベイリング装置から搬出されるつる付き容器のつるを、つる付き容器の中心軸方向に沿って容器胴体の上方へ立てた状態に支持しながら搬送方向へ配向し、
配向後、つるが立った状態を維持し、かつ、つる付き容器を搬送しながら、つるを容器胴体側へ回転ローラーで押圧して、上記イヤーへのつるの取り付けの良否を診断し、
つるの取り付けが良のときには、つる付き容器の胴体における溶接線に対して指定の配向方向へ、つる仕分け装置によって、つるの配向を行う、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の第1態様におけるつる検査装置によれば、つる支持部材、搬送装置、及び良否診断装置を備えたことから、立った状態で搬送されるつるを、良否診断装置により容器胴体側へ押圧するだけで、つるがイヤーから外れる可能性の有無を、流れ作業の中で自動的に検査することができる。よって、つる付きの容器に対して、従来、作業者が行っていた煩雑な作業を無くすことができ、コスト及び作業効率の向上、さらには品質管理の向上を図ることができる。
【0019】
また、本発明の第2態様におけるつる配向装置によれば、つる支持部材、溶接線認識用カメラ、搬送装置、及びつる仕分け装置を備えたことから、カメラにて認識された容器胴体の溶接線に対して、つる仕分け装置により、流れ作業の中で自動的につるを指定側へ配向させることができる。よって、つる付きの容器に対して、従来、作業者が行っていた煩雑な作業を無くすことができ、コスト及び作業効率の向上、さらには品質管理の向上を図ることができる。
【0020】
また、本発明の第3態様におけるつる付き容器用取り扱いシステム、及び第4態様におけるつる付き容器用取り扱い方法によれば、ベイリング装置にて製造されたつる付き容器のつるに対して、流れ作業の中で自動的に、つるがイヤーから外れる可能性の有無をつる検査装置により検査でき、かつ、つる仕分け装置によってつるを指定側へ配向させることができる。よって、つる付きの容器に対して、従来、作業者が行っていた煩雑な作業を無くすことができ、コスト及び作業効率の向上、さらには品質管理の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態におけるつる付き容器用取り扱いシステムの概略構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示すつる付き容器用取り扱いシステムの構成を示す正面図である。
【図3】図1及び図2に示すつる検査装置の構成を示す正面図である。
【図4】図3に示すつる検査装置における回転ローラー部分の概略の拡大図である。
【図5】図3に示すつる検査装置における回転ローラーの左側面図である。
【図6】図1に示すつる付き容器用取り扱いシステムの構成を示すブロック図である。
【図7】図1に示すつる付き容器用取り扱いシステムにおける動作を説明するためのフローチャートである。
【図8】本発明の一実施形態におけるつる検査装置であって、システムに含まれずに単独で設置する場合の構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の一実施形態におけるつる配向装置であって、つる仕分け装置をシステムに含めずに単独で設置する場合の構成を示すブロック図である。
【図10】図1から図9に示す装置において処理対象となるつる付きペール缶の正面図であり、つるの高さを説明するための図である。
【図11】つる端部形状の他の例を示す図である。
【図12】図1から図9に示す装置において処理対象となるつる付きペール缶の正面図である。
【図13】ベイリング装置の概略構成を示す図である。
【図14】イヤーへのつる端部の取り付け状態を示す図であり、取り付けが正常な場合を示す図である。
【図15】イヤーへのつる端部の取り付け状態を示す図であり、取り付けが不良な場合を示す図である。
【図16】イヤーへのつるの取り付けの良否を検査する従来の方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態であるつる検査装置、つる仕分け装置、つる付き容器用取り扱いシステム、及びつる付き容器用取り扱い方法について、図を参照しながら以下に説明する。尚、各図において、同一又は同様の構成部分については同じ符号を付している。
【0023】
以下の説明では、上述したJIS Z 1620に規定され、図12に示すような、つる付きの鋼製ペール缶10を例に採るが、本発明の各実施形態における対象容器は、これに限定されるものではなく、例えば、いわゆるミニペール缶、及びプラスチックペール缶と呼ばれ、鋼製のつるを設けた容器等も含まれる。即ち、本発明は、容器の外壁面の2箇所に設けた取付耳間に取っ手(つる)が架け渡された容器に適用することができ、その容器形状も円筒状に限定されるものではない。
【0024】
また、以下の説明では、容器が、ベイリング装置、つる検査装置、つる仕分け装置の順に自動的に搬送され、各装置にて容器に対して自動的にそれぞれの処理が行われる場合を例に採るが、後述するように、つる検査装置、及びつる仕分け装置は、システムに含まれずにそれぞれ単独で設置され処理を行う構成を採ってもよい。尚、つる仕分け装置を単独で設置する場合には、後述のように、つる配向装置として構成される。
【0025】
図1には、ベイリング装置20、つる検査装置100、つる仕分け装置200を備えた、つる付き容器取り扱いシステム400が斜視図にて示され、図2では正面図にて示している。いずれの図においても各装置は、概略構成を図示する。また、図6では、つる付き容器取り扱いシステム400の全体構成をブロック図にて示している。図6に示すように、つる付き容器取り扱いシステム400は、ベイリング装置20と、つる検査装置100と、つる仕分け装置200と、制御装置300と、カメラ350とを備える。
【0026】
既に説明したように、ベイリング装置20は、線材11aを成形してつる11とするとともに、イヤー付き缶10aの2つのイヤー12間に、つる11を取り付け、架け渡す装置である。図1に示すように、ベイリング装置20から搬出されたつる付きペール缶10は、搬送方向26に沿って、つる検査装置100、つる仕分け装置200の順に搬送され、つる検査装置100では、つる11がイヤー12から外れる可能性の有無が検査され、つる仕分け装置200では、つる付きペール缶10の胴体溶接線13(図16)に対して指定側へつる11の配向が行われる。ここで、上記カメラ350は、胴体溶接線13の認識を行い、制御装置300は、つる検査装置100及びつる仕分け装置200の動作制御を行う。
以下に、つる検査装置100、つる仕分け装置200について詳しく説明する。
【0027】
まず、つる検査装置100について説明を行う。
つる検査装置100は、基本的構成部分として、つる支持部材110、搬送装置120、良否診断装置130を備え、良否診断装置130にて、つる11がイヤー12から外れる可能性の有無が検査される。また、良否診断装置130は、詳細後述する、入力部(押圧力設定装置)310及び跳ね上がり防止機構135を有することができる。尚、当該つる付き容器取り扱いシステム400では、入力部310は、制御装置300に設けられる構成を採っている。
【0028】
つる支持部材110は、つる付きペール缶10の中心軸15(図12)方向に沿って容器胴体の上方へつる11を立てた状態に支持する部材であり、つる付き容器取り扱いシステム400では、第1支持部材111及び第2支持部材112から構成される。
また、第1支持部材111に対応して、搬送装置120を構成する第1搬送装置121が設置され、第2支持部材112に対応して、第2搬送装置122が設置されている。搬送方向26において、第1支持部材111及び第1搬送装置121がベイリング装置20の直後に設置され、その直後に第2支持部材112及び第2搬送装置122が設置される。
【0029】
既に説明したように、ベイリング装置20からの容器搬出時には、ペール缶胴体に対してつる11は、上述の立った状態にあるが、つる11は、イヤー12に揺動自在に係合しているため、つる11を支持しなければ図12に示すようにペール缶胴体側へ落ちてしまう。一方、後述するが、つる検査装置100は、つる11を立てた状態でつる11の検査を行う。そこで、第1支持部材111は、ベイリング装置20から搬出される、つる付きペール缶10のつる11を立った状態に支持する部材であり、本実施形態では鋼製の棒材からなる。このような第1支持部材111は、本実施形態では、その一端がベイリング装置20の下型23に固定され、搬出されるつる付きペール缶10のほぼ中心軸15の上方で、立った状態のつる11の円弧内側の高さ位置にて、搬送方向26に沿って延在する。また、その他端は、支持されず片持ち形態であり、第2支持部材112の一端に、わずかな隙間をあけて隣接する。上述したように、ベイリング装置20では、つる11は、搬送方向26に直角な直交方向27に沿って延在する。よって、ベイリング装置20から搬出されると同時に、つる11は、第1支持部材111に引っかかり係合して、第1支持部材111により立った状態に支持される。
【0030】
第1搬送装置121は、第1支持部材111に対応してその下方に配置され、ベイリング装置20から搬出直後のつる付きペール缶10の搬送動作と回転動作とを行う装置である。即ち、第1搬送装置121は、図1及び図2に示すように、つる付きペール缶10の直径よりも幾分狭い間隔にて平行に搬送方向26に延在する2本のチェーン1211,1212を備える。各チェーン1211,1212は、互いに異なる搬送速度で駆動され、いわゆる差速チェーンの形態を採る。よって、第1搬送装置121は、ベイリング装置20から搬出されたつる付きペール缶10を、搬送方向26へ搬送しながら、つる付きペール缶10の中心軸15を中心にその軸周り方向に、例えば反時計回り方向につる付きペール缶10を回転させる。したがって、ベイリング装置20からの搬出直後に第1支持部材111に引っかかり係合され略直交方向27に延在するつる11は、搬送方向26への移動に伴い、略搬送方向26に延在するようにその向きが変化していく。
【0031】
本実施形態では、このようにつる付きペール缶10の搬送と回転とを同時に行い、つる11の向きを変更していくことから、つる11が係合している第1支持部材111として
は、上述のように棒材が適している。しかしながら、第1搬送装置121は、上述の差速チェーン方式に限定されず、搬送のみ、及び回転のみを独立して行う各装置の組み合わせにより構成してもよい。よって、このような構成に対応して、第1支持部材111も、当業者が想到する範囲で、適宜、その形態を変更することができる。
【0032】
第2支持部材112は、所定の寸法にてなる隙間112aをあけて平行に対向して搬送方向26に沿って延在する2つの短冊状の板材にて形成される。よって、隙間112aは、搬送方向26に沿って延在する。上述のように、搬送方向26又は略搬送方向26に配向されたつる11は、第1支持部材111から第2支持部材112の隙間112a内に進入し、例えば図5に示すように、隙間112a内でつる11が緩く挟まれながら、第2搬送装置122によって搬送方向26に移動される。また、つる11には、把持部分として樹脂製のグリップ11bが頂上部に設けられており、第2支持部材112は、図3に示すように、グリップ11bよりも幾分、容器胴体側の高さ位置にて搬送方向26に延在する。
【0033】
第2搬送装置122は、つる付きペール缶10の直径よりも幾分狭い間隔をあけて平行に搬送方向26に延在する2本のチェーン1221を備え、各チェーン1221は、同速度で駆動されている。よって、第2搬送装置122は、つる付きペール缶10を、単に搬送方向26に搬送する。このような第2搬送装置122は、図2に示すように、つる検査装置100では、第1搬送装置121の次段として、及び、つる仕分け装置200にまでわたって設置される。尚、第2搬送装置122の構成は、本実施形態のような2本のチェーン方式に限定されず、既知の搬送方式を採ることができる。
【0034】
次に、良否診断装置130について説明する。
良否診断装置130は、イヤー12へのつる11の取り付けの良否を、つる付きペール缶10つまりつる11を停止させることなく搬送させたままで、診断する装置である。即ち、上述のように、搬送方向26に平行又はほぼ平行に配向されたつる11(グリップ11bを含む)は、第2支持部材112にて立った状態で支持されながら、第2搬送装置122にて、搬送方向26に搬送され、このような搬送中のつる11詳しくはグリップ11bを、良否診断装置130は、上記中心軸15方向へ強制的に撓ませることで、イヤー12へのつる11の取り付けの良否を診断する。この撓ませ動作は、イヤー12に係合している、UあるいはJ字形に成形されたつる端部に対して、イヤー12から外れやすい状態を意図的に形成する。このとき、図15を参照し説明した、J字形のように、つる端部の形状が不完全である、つる付きペール缶10に対しては、つる11をイヤー12から脱落させることができる。良否診断装置130は、このようにして、イヤー12へのつる11の取り付けの良否を診断する装置である。
尚、つる検査装置100、特に良否診断装置130に関する以下の説明において、つる11を押圧あるいは押下する旨は、グリップ11bを含めたつる11の押圧あるいは押下を意味する。但し、グリップ11bを装着しない形態にあっては、つる11そのものの押圧あるいは押下を意味する。
【0035】
具体的構成として、良否診断装置130は、回転ローラー131と、押圧機構132とを有する。回転ローラー131は、例えば図3から図5に示すように、搬送方向26に搬送中のつる付きペール缶10の中心軸15上に設置され、搬送中のつる11詳しくはグリップ11b上を転がる円形外周面1311を有する円板状の部材である。このような回転ローラー131は、つる検査装置100を構成する枠材150に、回転可能に支持されている。尚、回転ローラー131は、搬送方向26には移動しない。即ち、回転ローラー131は、定位置に設置され、搬送方向26へ移動している、つる11詳しくはグリップ11bに円形外周面1311が接触して回転する。このとき、以下に詳細説明するように、円形外周面1311は、つる11詳しくはグリップ11bの高さよりも低く設置されていることから、つる11は、回転ローラー131を通過するときに押し下げられ、撓まされる。
【0036】
円形外周面1311は、図5に示すように、U字形に凹んだ溝にて形成されている。この溝形状は、上記グリップ11bに対応しており、以下に説明する押圧動作の際に、回転ローラー131からつる11が外れるのを防止し、効果的な押圧が可能なように作用する。また、このような押圧動作に関係して、回転ローラー131は、少なくとも円形外周面1311がゴム材のような弾性材料で形成されるのか好ましい。
【0037】
また、回転ローラー131は、枠材150に取り付けられた駆動源、本実施形態ではモータ133によって、つる11の搬送速度に同期して、矢印1312方向に回転駆動される。このように回転駆動されることで、回転ローラー131では、つる11と回転ローラー131との間に、滑りや不要な摩擦が発生することはない。よって、搬送中のつる付きペール缶10が例えば転倒してしまう等の搬送障害の発生を防止することができる。
【0038】
押圧機構132は、搬送中のつる11に対して、回転ローラー131を、つる検査に適した規定の高さ位置に設定する機構である。本実施形態では図2に示すように、枠材150に接続した昇降用シリンダ1322、及び昇降用部材1323等から構成される。該構成により、回転ローラー131は、枠材150を介して、昇降用シリンダ1322によって矢印1321方向へ降下される。
【0039】
上記規定の高さ位置とは、上述のように立った状態で搬送中のつる11のグリップ11bの高さ位置に対して、回転ローラー131の円形外周面1311が幾分、ペール缶10の胴体側へ下がった位置である。このように回転ローラー131の円形外周面1311がグリップ11bよりも低い位置に配置されることで、グリップ11bが回転ローラー131を通過するとき、つる11は、回転ローラー131によって中心軸15方向で容器胴体側へ強制的に押し下げられ、撓まされることになる。
【0040】
このように押圧機構132は、換言すると、回転ローラー131を、中心軸15方向に沿って容器胴体側、つまり矢印1321方向へ降下させて、回転ローラー131によるつる11の押下動作、つまり押圧動作を行う機構である。また、回転ローラー131による、つる11への押圧力は、押圧機構132により設定される回転ローラー131の高さ位置によることから、押圧機構132にて制御されることになる。
【0041】
以下に説明するように、つる検査に適正な押圧力は150±15Nである。よって、上述した、押圧機構132が設定する、つる検査に適した規定の高さ位置とは、つる11に対して上記150±15Nの押圧力を生じさせる高さ位置と言うこともできる。
【0042】
また、本実施形態では、押圧機構132は、矢印1321方向とは反対方向、つまり、中心軸15方向に沿って反容器胴体側の方向(矢印1324の方向)へ、枠材150を介して、回転ローラー131を上昇移動させることもできる。即ち、押圧機構132は、回転ローラー131を、矢印1321、1324の方向へ昇降させることができる。よって、押圧機構132は、昇降機構と呼ぶこともできる。
【0043】
上述したように、当該つる検査装置100では、検査に適した規定の押圧力が存在する。即ち、当然ながら、過剰な力でつる11を押圧した場合には、つる11が塑性変形してしまう。一方、押圧力が過小では、本来のつる検査の目的を達成することができない。よって、本出願人は、実験を繰り返し、つる検査に最適な押圧力として、150±15Nを見出した。つまり、165Nを超える押圧力をつる11に印加した場合、正常なつる11では、イヤー12からのつる11の脱落は生じず、むしろ、つる11を塑性変形させてしまい不適である。一方、135N未満の押圧力では、本来、取り付け不良と診断されねばならない製品を、取り付け良と誤って診断してしまい、検査目的を達しない。
【0044】
また、つる付きペール缶10には、異なる容量の複数種類が存在する。よって、つる付きペール缶10の種類に応じて、図10に示す、つる高さHは変化する。このような各種のつる付きペール缶10に対して、つる検査装置100にてつる検査が可能なように、押圧機構132は、回転ローラー131を、矢印1321、1324の方向へ昇降させる。一方、上述の最適検査押圧力は、缶種類に依存せずに同一でよいことが、出願人によって確認されている。
【0045】
即ち、本実施形態のつる検査装置100では、上述の150±15Nの最適検査押圧力を達成するために、缶種によるつる高さHに対応して、押圧機構132により回転ローラー131の昇降量を制御している。該制御は、当該つる付き容器取り扱いシステム400では、図6に示す制御装置300にて行う。具体的に説明すると、制御装置300は、入力部310を有する。入力部310には、操作者によって、つる付きペール缶10の缶種類が入力される。制御装置300は、予め、缶種と回転ローラー131の昇降量との関係情報を記憶しており、この関係情報に従い、押圧機構132の動作制御を行い、上述の150±15Nの最適検査押圧力を達成可能な高さ位置に回転ローラー131を位置決めする。
【0046】
尚、本実施形態のつる検査装置100では、複数種類のつる付きペール缶10に対して検査可能なことを前提として上述のような構成を有するが、検査対象のつる付きペール缶10が一種類のみである場合には、押圧機構132の設置を省略した構成を採ることもできる。この場合、回転ローラー131は、所定の高さ位置にて枠材150に固定される。
【0047】
さらにまた、良否診断装置130は、容器の跳ね上がりを防止する補助ローラー1351を有する跳ね上がり防止機構135を備える。補助ローラー1351は、搬送方向26において回転ローラー131の直後に設置されるローラーであり、図3から図5に示すように、回転ローラー131の回転中心軸と同心上に配置した支持軸を中心に回動可能なレバー1352の一端に回転可能に取り付けられている。レバー1352は、補助ローラー1351がつる11側へ回動してつる11のグリップ11bを押圧するように、他端側に設けたバネ1353(図4)により付勢されている。よって、搬送中のつる11のグリップ11bが補助ローラー1351に接触したとき、補助ローラー1351は押し上げられ、グリップ11bが補助ローラー1351から外れたとき、補助ローラー1351は缶胴体側へ下がる。このように、グリップ11bの搬送に伴い、レバー1352は、上記支持軸を中心に揺動する。
【0048】
このような補助ローラー1351は、次のように作用する。即ち、搬送方向26へつる11が移動するに伴い、つる11が回転ローラー131から外れる直前では、つる11の頂上部に挿入されているグリップ11bの搬送方向後端部のみに回転ローラー131による押圧力が作用する。よってこのような状態になったとき、グリップ11bの搬送方向前端側、つまり搬送中のつる付きペール缶10の前側が持ち上げられ、缶の搬送に支障が生じる可能性がある。そこで、補助ローラー1351によって、グリップ11bの前端側を容器胴体側に押圧して、つる付きペール缶10の跳ね上がりを防止する。
【0049】
さらにまた、跳ね上がり防止機構135は、イヤー12へのつる11の取り付け良否を自動的に検出する役目も果たす。即ち、図4に示すように、レバー1352の他端側に対応して、例えば近接センサ等のセンサ1355が設置されている。このセンサ1355は、制御装置300に電気的に接続されている。上述のように、イヤー12へのつる11の取り付けが良好な場合には、つる11のグリップ11bが補助ローラー1351に接触しながら搬送されることから、レバー1352は、上記支持軸を中心に回動する。よって、センサ1355は、例えば、オン−オフの信号を制御装置300に送出する。一方、イヤー12へのつる11の取り付けが不良であり、回転ローラー131による押圧によって、つる11がイヤー12から外れた場合には、グリップ11bと補助ローラー1351との接触は発生しない。よって、レバー1352の揺動は発生せず、センサ1355は、一様な信号しか制御装置300へ出力しない。このように、制御装置300は、つる付きペール缶10の搬送動作と連携して、センサ1355の出力信号に従い、回転ローラー131の押圧動作により、つる11がイヤー12から外れたか否かを判断することができる。
【0050】
補助ローラー1351を通過したつる付きペール缶10は、つる仕分け装置200へ搬送される。
【0051】
つる仕分け装置200は、搬送方向26において、つる検査装置100の次段に設置される装置であり、つる11が搬送装置122による搬送にて第2支持部材112による支持から外れた直後において、カメラ350により認識された、つる付きペール缶10の胴体溶接線13(図16)に対して指定側へつる11を配向する装置である。
【0052】
このような、つる仕分け装置200は、仕分け部材201と駆動部202とを備える。仕分け部材201は、第2支持部材112によるつる11の支持が終了する直前に、立った状態のつる11に接触する部材である。このような仕分け部材201は、搬送中のつる付きペール缶10の中心軸15の上方で、図2及び図3に示すように、第2支持部材112とほぼ同じ高さ位置に配置される。
【0053】
駆動部202は、搬送方向26に対してほぼ左右方向に相当する、矢印203a,203b(図1)方向へ仕分け部材201を移動させる装置であり、つる検査装置100を構成する枠材150に取り付けられている。よって、つる付きペール缶10の缶種類に応じて行われる、押圧機構132による枠材150の昇降に伴い、つる仕分け装置200も昇降する。
【0054】
本実施形態のつる付き容器取り扱いシステム400では、カメラ350は、つる検査装置100の搬入箇所に設置され、つる検査装置100に進入する、つる付きペール缶10の胴体を撮像する。その撮像画像は、制御装置300へ供給される。しかしながら、カメラ350の設置位置は、これに限定されず、最低限、つる仕分け装置200につる付きペール缶10が進入する直前までに溶接線13を認識可能とする位置であればよい。例えば、ベイリング装置20への搬入箇所に設置されてもよい。
【0055】
制御装置300の入力部310には、予め操作者によって、溶接線13に対してつる11を配向させる指定方向が指定あるいは入力される。つる付きペール缶10が仕分け装置200の直前に搬送されてきたことを、例えば近接センサが検知する。このセンサからの信号により、制御装置300は、指定方向へつる11が倒れるように駆動部202の動作制御を行い、仕分け部材201を揺動させる。尚、第2搬送装置122による搬送によって、仕分け部材201が動作するときには、つる11は、第2支持部材112による支持から外れており、つる11は揺動自在である。また、つる仕分け装置200は、搬送中のつる付きペール缶10の上方に設置されているが、上述のように、つる仕分け装置200によって、つる11は倒されることから、搬送中につる付きペール缶10とつる仕分け装置200とが干渉することはない。つる11が指定側に配向された、つる付きペール缶10は、第2搬送装置122にて、さらに後工程側へ搬出されていく。
【0056】
以上説明したように構成された、本実施形態のつる付き容器取り扱いシステム400における動作、つまりつる付き容器取り扱い方法について、図7を参照して説明する。尚、動作制御は、制御装置300にて実行される。
【0057】
制御装置300は、実際にはコンピュータを用いて実現され、以下に説明するようなつる検査方法及びつる仕分け方法を実行するプログラム(ソフトウェア)と、これを実行するためのCPU(中央演算処理装置)やメモリ等のハードウェアを備えている。尚、プログラムは、コンピュータによって直接実行可能なものだけでなく、例えば通信線を介して読み込まれハードディスク等にインストールすることによって実行可能となるものも含む。
【0058】
ステップS11では、まず、操作者によって、つる11の診断用及び配向用の情報が制御装置300の入力部310を介して設定あるいは入力される。つる11の診断用の情報としては、検査対象となる容器の種類あるいはつる高さHの値が相当する。制御装置300の表示部320に予め表示された容器種類を選択したり、つる高さHの値を直接入力したりすることで情報の入力を行う。つる11の配向用の情報としては、溶接線13に対する「右」あるいは「左」が相当する。制御装置300の表示部320に表示された配向方向を選択したり、あるいはスイッチで選択したりすることで情報の入力を行う。また、つる11の仕分け動作は、上述したようにカメラ350を利用して自動的に仕分けを実行する態様と、一缶ずつ操作者が溶接線13を確認して仕分けを行う態様とを選択することも可能である。
【0059】
ステップS11の作業後、自動運転する場合には、操作者は制御装置300のスタートボタンを押下する。これにより、以下のステップS12からステップS15が順次自動的に実行される。
【0060】
ステップS12では、イヤー12を装着したイヤー付き缶10aがベイリング装置20に搬入され、ベイリング装置20にて、上述したように、つる11の作製、及びつる11のイヤー12への取り付けが行われる。
【0061】
ステップS13では、ベイリング装置20からつる付きペール缶10が搬出され、つる検査装置100に備わる第1搬送装置121にて搬送方向26に搬送されながら、つる11が上記直交方向27から搬送方向26又はほぼ搬送方向26に配向される。配向後、つる付きペール缶10は、第1搬送装置121から第2搬送装置122へ移り、搬送方向26へさらに搬送される。また、このとき、カメラ350により、つる付きペール缶10の胴体が撮像される。撮像画像は、制御装置300へ供給され、制御装置300は、画像処理を経て、溶接線13の位置を確認する。
【0062】
ステップS14では、第2搬送装置122によって搬送中のつる11が回転ローラー131の真下に搬入され、搬送されながら、回転ローラー131によって規定量にて押下される。つまりつる11は、回転ローラー131により、上述の150±15Nの力で押圧される。この押圧動作により、イヤー12へのつる11の取り付けの良否が自動的に判断される。即ち、取り付けが正常である場合には、つる11はイヤー12から外れず、回転ローラー131を通過するとともに、跳ね上がり防止機構135の補助ローラー1351を押し上げ、補助ローラー1351を取り付けたレバー1352を回動させる。このレバー1352の回動をセンサが検知し、この検知信号が制御装置300に供給される。よって、制御装置300は、イヤー12へのつる11の取り付けが良好と判断する。一方、取り付け不良の場合には、回転ローラー131の押し下げにより、つる11はイヤー12から外れてしまう。つる11がイヤー12から外れることで、上述したレバー1352の回動動作が無くなる。よって、制御装置300は、つる11の取り付けが不良と判断し、警報を発する。警報発生により、例えばつる付きペール缶10の搬送動作の停止、警報ランプ点灯等の処理が採られ、操作者に異常発生が通知される。
【0063】
イヤー12へのつる11の取り付けが良好と判断された場合には、次のステップS15において、制御装置300は、カメラ350から得た溶接線13の位置情報と、つる11の指定された配向方向とに基づいて、仕分け装置200の駆動部202の動作を制御して仕分け部材201を指定方向に移動させ、つる11を指定側へ倒す。
【0064】
以上のようにして、つる付き容器取り扱い方法が実行される。このように、本実施形態のつる付き容器取り扱いシステム400によれば、ベイリング装置20にて製造されたつる付き容器10のつる11に対して、従来、人手により行っていた、つる11の取り付け良否判断作業、及びつる11の指定側への配向作業を、流れ作業の中で人手を介さず自動的に実行することが可能となる。したがって、上述のように、つるの取り扱いに関して従来、最低3人の作業員を要したが、一人でよく、従来に比べて作業人員を削減でき、生産コストの削減を図ることができ、かつ生産効率を従来に比べて格段に向上させることができる。また、配置される作業員においても、従来の煩雑な作業から解放されることから、例えば製品の外観検査等に専念することができ、かつ、製品の全数検査が可能となることから、従来に比べて製品の品質管理の向上を図ることもできる。したがって、高品質のつる付き容器を、より低価格で提供することが可能となり、例えば外国生産等の単なる廉価製品とは一線を画することも可能となる。
【0065】
以上、つる付き容器取り扱いシステム400におけるつる検査装置100及びつる仕分け装置200について説明を行ったが、上述したように、つる検査装置100及びつる仕分け装置200は、システムに含まれず、それぞれ単独で用いることもできる。以下では、図8及び図9を参照して、つる検査装置100、及びつる仕分け装置200を含むつる配向装置500を、それぞれ単独で用いる場合の構成について簡単に説明する。
【0066】
図8に示すつる検査装置180は、ほぼ上述したつる検査装置100と同様の構成を有する。制御装置300に設けた入力部310に相当する押圧力設定装置181を設ける点で相違する。押圧力設定装置181には、操作者によって、上述のステップS11にて行った、つる11の診断用の情報が入力される。
【0067】
このように構成されるつる検査装置180は、つる付きペール缶10に対して、上述のつる検査装置100と同様に動作し、同様の効果を得ることができる。
【0068】
図9に示すつる配向装置500は、上述した、つる仕分け装置200、つる支持部材110における第2支持部材112、第2搬送装置122、及びカメラ350を備え、制御装置300に代えて、仕分け制御装置501及び入力装置502を有する構成である。仕分け制御装置501は、上述の制御装置300に相当し、入力装置502は、上述の入力部310に相当する。
【0069】
このように構成されるつる配向装置500は、つる付きペール缶10に対して、上述のつる仕分け装置200と同様に動作し、同様の効果を得ることができる。
【0070】
尚、以上の説明では、ベイリング装置20にてつる11の両端部は、U字形あるいはJ字形に成形される旨を記したが、これらに限定されず、図11に示すようなコ字形の鍵形状に成形された端部であってもよい。このような鍵形状の端部を有するつる11に対しても、本発明は、適用可能である。また、イヤー12についても、その外形形状は、円形型や小判型があるが、いずれの形状であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、容器に取り付けられた取っ手である「つる」の容器からの脱落の可能性を検査するつる検査装置、容器に取り付けられたつるの配向を行うつる配向装置に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0072】
10…つる付きペール缶、11…つる、12…イヤー、13…溶接線、
20…ベイリング装置、26…搬送方向、
100…つる検査装置、110…つる支持部材、111…第1支持部材、
112…第2支持部材、120…搬送装置、121…第1搬送装置、
122…第2搬送装置、130…良否診断装置、131…回転ローラー、
1311…円形外周面、132…押圧機構、135…跳ね上がり防止機構、
1351…補助ローラー、181…押圧力設定装置、
200…つる仕分け装置、201…仕分け部材、202…駆動部、
300…制御装置、310…入力部、350…カメラ、
400…つる付き容器用取り扱いシステム、
500…つる配向装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器外面の対向位置に設けた2つのイヤー(12)間に揺動可能に架け渡されたつる(11)の、イヤーへの取り付けの良否を診断する、つる検査装置であって、
容器(10)の中心軸方向に沿って容器胴体の上方へ上記つるが立った状態につるを支持する、つる支持部材(110)と、
つる支持部材にてつるが立った状態で支持されながら上記容器を搬送方向(26)に搬送するとともに、上記中心軸の軸周り方向へ上記容器を回転させて、搬送方向につるを配向する搬送装置(120)と、
上記つる支持部材にてつるが立った状態で支持されながら上記搬送装置にて搬送方向に搬送中である上記配向されたつるを、上記中心軸方向に沿って容器胴体側へ押圧してつるの取り付け良否を診断する良否診断装置(130)と、
を備えたことを特徴とする、つる検査装置。
【請求項2】
上記良否診断装置は、つるへの押圧力を設定する押圧力設定装置(310,181)を有する、請求項1記載のつる検査装置。
【請求項3】
上記良否診断装置は、回転ローラー(131)と、押圧機構(132)とを有し、回転ローラーは、搬送方向に搬送中のつる上を転がる円形外周面(1311)を有する円板形状で、つるの搬送速度に同期して回転駆動される部材であり、押圧機構は、上記回転ローラーを上記中心軸方向における規定位置に配置し回転ローラーにつるを押圧させる機構である、請求項1又は2記載のつる検査装置。
【請求項4】
上記良否診断装置は、さらに、容器の跳ね上がりを防止する補助ローラー(1351)を有する跳ね上がり防止機構(135)を備え、上記補助ローラーは、搬送方向において上記回転ローラーの直後に設置され、搬送方向へのつるの移動に伴いつるが上記回転ローラーから外れた直後につるを容器胴体側に押圧して容器の跳ね上がりを防止するローラーである、請求項3記載のつる検査装置。
【請求項5】
容器外面の対向位置に設けた2つのイヤー(12)間に揺動可能に架け渡されたつる(11)の配向を行う、つる配向装置であって、
容器(10)の中心軸方向に沿って容器胴体の上方へ上記つるが立った状態につるを支持する、つる支持部材(112)と、
つる付き容器の胴体における上記中心軸方向に延在する溶接線(13)を認識するカメラ(350)と、
つる付き容器を搬送方向(26)に搬送する搬送装置(122)と、
つる付き容器のつるが、上記搬送装置による搬送にて上記つる支持部材による支持から外れた直後において、上記カメラにより認識された溶接線に対して指定側へつるを配向するつる仕分け装置(200)と、
を備えたことを特徴とする、つる配向装置。
【請求項6】
上記つる仕分け装置に接続され、溶接線に対するつるの配向方向を設定する入力装置(310,502)をさらに備え、つる仕分け装置は、上記カメラにより認識された溶接線に対して上記入力装置により設定された配向方向へつるを配向する、請求項5記載のつる配向装置。
【請求項7】
容器外面の対向位置に設けた2つのイヤー(12)間につる(11)が架け渡されたつる付き容器(10)における上記つるを取り扱うシステムであって、
容器の胴体における中心軸方向に延在する溶接線(13)を認識するカメラ(350)と、
上記イヤーが設けられた容器に対して、上記つるをイヤー間に架け渡すベイリング装置(20)と、
上記ベイリング装置の次段に設置される、請求項1から4のいずれかに記載のつる検査装置(100)と、
上記つる検査装置の次段に設置され、つる付き容器のつるが搬送装置による搬送にてつる支持部材による支持から外れた直後において、上記カメラにより認識された溶接線に対して指定側へつるを配向するつる仕分け装置(200)と、
を備えたことを特徴とする、つる付き容器用取り扱いシステム。
【請求項8】
容器外面の対向位置に設けた2つのイヤー(12)間に、ベイリング装置(20)によって、つる(11)を架け渡し、
上記ベイリング装置から搬出されるつる付き容器(10)のつるを、つる付き容器の中心軸方向に沿って容器胴体の上方へ立てた状態に支持しながら搬送方向(26)へ配向し、
配向後、つるが立った状態を維持し、かつ、つる付き容器を搬送しながら、つるを容器胴体側へ回転ローラー(131)で押圧して、上記イヤーへのつるの取り付けの良否を診断し、
つるの取り付けが良のときには、つる付き容器の胴体における溶接線(13)に対して指定の配向方向へ、つる仕分け装置(200)によって、つるの配向を行う、
ことを特徴とする、つる付き容器用つる取り扱い方法。
【請求項9】
少なくとも上記つる仕分け装置によるつる配向動作前までに、カメラ(350)により上記溶接線の認識を行う、請求項8記載のつる付き容器用つる取り扱い方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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