説明

なぞり書き用表示体及びそれを用いたなぞり書きセット

【課題】文字や図形等を理解している就学児童が使用できることはもちろん、就学前の幼児が像や文字を真似てなぞり書きを行う場合であっても下絵部分の変化により興味を持ってなぞり書きができる、興趣に富んだなぞり書き用表示体とそれを用いたなぞり書きセットを提供する。
【解決手段】被筆記体6を表示部5上に載置して表示される像をなぞり書きするなぞり書き用表示体1であって、表示部5と、制御部と、操作部3とを有し、表示部5には上方から視認可能な複数の発光素子51がマトリクス状に配置されており、前記制御部により発光素子51が所望の順序で点灯するように制御されており、操作部3の操作により制御される発光素子51が点灯することで所望の像を形成するなぞり書き用表示体1。なぞり書き用表示体1と、表示体上面に載置した際に発光素子51の点灯状態が視認可能な被筆記体6とからなるなぞり書きセット7。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、なぞり書き用表示体とそれを用いたなぞり書きセットに関する。更には、複数の発光素子が点灯することで像を形成するなぞり書き用表示体及びそれを用いたなぞり書きセットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、写し絵やなぞり書きを行う場合、目的の像や文字が描かれた下絵シートに半透明の紙や布帛を重ねて、透視される像や文字をなぞることで行われている(例えば、特許文献1、2参照)。
前記手段を用いたなぞり書きは、下絵シートに予め目的の像が描かれているため、就学児童が文字を練習する際には有用であるものの、下絵シートに描かれる像に変化がないため興趣性を備えておらず、就学前の幼児が像や文字を真似てなぞり書きを行う場合には興味を惹くことができず不向きなものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭62−185098号公報
【特許文献2】特開2008−173844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、文字や図形等を理解している就学児童が使用できることはもちろん、就学前の幼児が像や文字を真似てなぞり書きを行う場合であっても下絵部分の変化により興味を持ってなぞり書きができる、興趣に富んだなぞり書き用表示体を提供するものである。
また、前記表示体とともに、筆跡形成時に周囲を汚すことなく容易に筆跡を消去して使用前の状態に戻すことが可能である、学習性及び再使用性が高く、幼児の使用に適した筆記シートを用いた利便性の高いなぞり書きセットを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、被筆記体を表示部上に載置して表示される像をなぞり書きするなぞり書き用表示体であって、表示部と、制御部と、操作部とを有し、前記表示部には上方から視認可能な複数の発光素子がマトリクス状に配置されており、前記制御部により発光素子が所望の順序で点灯するように制御されており、前記操作部の操作により制御される発光素子が点灯することで所望の像を形成するなぞり書き用表示体を要件とする。
更に、音声発生手段を備え、発光素子の点灯、点滅、消灯とともに音声を発生すること、前記発光素子が二色以上の色に発光すること、前記表示部に表示される像が一筆書き順に発光素子を点灯することで形成されること、前記表示部に表示される像が文字であり、書き順に従って発光素子を点灯することで文字が形成されること、前記表示部に対して垂直方向に延設される円形支持部を有すること、前記円形支持部に制御部と操作部が設けられることを要件とする。
更に、前記いずれかに記載のなぞり書き用表示体と、表示体上面に載置した際に発光素子の点灯状態が視認可能な被筆記体とからなるなぞり書きセットを要件とし、前記被筆記体が光透過性を有する布帛または樹脂シートの表面に、低屈折率顔料をバインダー樹脂に分散状態に固着させた、非吸液状態で不透明であり吸液状態で透明化する多孔質層を形成してなる水変色性筆記シートであること、前記被筆記体が表示体の軸心方向に回転可能に表示体と接続されていること、前記被筆記体が円形孔部を有するとともに、表示体が表示部に対して垂直方向に延設される円形支持部を有し、前記円形支持部を円形孔部内に嵌入することで軸心方向に回転可能に接続されることを要件とする。
更には、水付着具とからなることを要件とし、前記水付着具が、連続気孔を有するプラスチック多孔体又は繊維加工体をペン先部材として適用した筆記具又は塗布具形態であることを要件とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、就学児童の使用はもちろん、就学前の幼児が像や文字を真似てなぞり書きを行う場合であっても、下絵部分が順に現れてなぞる箇所が視覚的に追加されていくことから、下絵部分の変化により興味を持ってなぞり書きができる、興趣に富んだなぞり書き用表示体を提供できる。
また、前記表示体とともに用いる被筆記体を、吸液状態で透明化する多孔質層を備えた水変色性筆記シートとすることで、筆記時に周囲を汚すことがなく、容易に筆跡を消去して使用前の状態に戻すことが可能となるため、利便性及び再使用性が高く、幼児の使用に適したなぞり書きセットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明のなぞり書き用表示体の外観図である。
【図2】図1の使用状態の外観図である。
【図3】本発明に適用される水変色性筆記シートの縦断面図である。
【図4】なぞり書き用表示体セットの他の例の外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のなぞり書き用表示体は、光透過性を有する被筆記体を表示部上に載置し、該表示部に順に表示される像にあわせてなぞり書きをするための装置であり、表示部と、制御部と、操作部とを有する。
前記表示部は上面に被筆記体を載置できる大きさを有しており、上方から視認可能な位置に複数の発光素子がマトリクス状に配置されている。尚、前記載置面は、被筆記体載置時の像視認性が高く、筆記時の書き易さを有することから平面状とすることが好ましい。また、載置部には傾斜を設けて筆記面に角度を設けたり、載置位置を高くすることもできる。
前記発光素子は、プログラムに応じて所望の文字や像を表示部でドット表示するために規則的なマトリクス状に配置されており、LEDやLCD等の汎用の発光体が用いられる。尚、前記発光素子は、単一の色や複数の色で構成できる他、二色以上の色に発光するものであってもよい。
【0009】
前記制御部は、発光素子の点滅をプログラム制御するものであり、予め入力されたプログラムによって所望の順序で点灯、消灯、点滅するように制御される。尚、なぞり書き用表示体に音声発生手段を設けて音声機能を付加する場合には、前記発光素子とともに制御部で音声を制御することが好ましく、発光素子の点灯、点滅、消灯に応じて所望の音(音楽、音声、効果音等)を連動させて発生することが可能となる。
また、制御部では発光素子の点灯順を制御しており、特に幼児用として、表示部に表示される像が一筆書き順に点灯するように制御することが好ましい。これによりなぞり書き筆記時にペン先を被筆記体に接触させたまま連続して筆記することができるため、低年齢の幼児であっても光を追いかけて筆記すれば容易に像を描くことができる。
また、表示部に表示される像が文字である場合には、表示される文字の書き順に従って発光素子が点灯するように制御することができる。
更に、筆記を始める箇所を示すために、開始箇所となる発光素子を点滅させてユーザーに知らせることができる。これにより筆記開始箇所(文字等の像に応じてペン先を被筆記面に再度接触させる位置)を何度も変える複雑な像であっても迷うことなく筆記できたり、文字においては書き始めが容易に分かり、正しい書き順を覚え易くなる。
【0010】
前記操作部は、制御部を操作する箇所であり、前記操作部により入力された情報が制御部に伝達され、選択的に表示部の発光素子や音声発生手段に出力される。前記操作部としては電源スイッチや選択スイッチ、切換レバー(ボタン)等の形態で設けられ、これらを操作することで制御部を介して発光素子が点灯し所望の像が形成される。
【0011】
前記なぞり書き用表示体には、孔部を有する被筆記体を軸心方向に回転できるように係止する円形支持部を設けることができる。前記円形支持部は、表示部に対して垂直方向に延設される横断面形状が略円形のものであり、円柱や半球、先端部分を半球状とする円柱等の凸部として形成される。前記円形支持部を設けることで、取り付けた被筆記体を回して非筆記箇所を容易に表示部上に載置できるため、繰り返しのなぞり書きを容易に行うことが可能となる。特に、踏みつけた場合であっても安全性が高いことから角部を有さない形状が好適であり、特に半球状が好ましい。
尚、前記円形支持部には、制御部や操作部、更にはバッテリーやスピーカー等を設けることができる。これにより表示部と円形支持部から構成されるシンプルな構造となるため、デザイン性に優れた外観を低コストで構成することが可能となる。
【0012】
前記なぞり書き用表示体は、表示体上面に載置した際に発光素子の点灯状態が視認可能な被筆記体とともに適用することでなるなぞり書きセットを構成する。
前記被筆記体は、筆跡が形成可能であり、透明、半透明、着色透明等の下面が視認できるものであれば可撓性(軟質)を有するものや硬質のもの等いずれも適用でき、材質としては、紙、布帛、樹脂シートを直接又は積層体や表面処理体として用いることができる。
特に、前記被筆記体としては、光透過性を有する布帛または樹脂シート(合成紙を含む)の表面に、低屈折率顔料をバインダー樹脂に分散状態に固着させた、非吸液状態で不透明であり吸液状態で透明化する多孔質層を形成することで得られる水変色性筆記シートが好適である。
【0013】
前記水変色性筆記シートとしては、本出願人が提案する低屈折率顔料をバインダー樹脂に分散状態に固着させた多孔質層を布帛等の支持体表面に設けたものが例示でき、例えば、特開平11−192800号公報、特開平11−198271号公報、特開平11−198272号公報、特開2000−72977号公報、特開2001−104661号公報、特開2002−59500号公報、特開2002−67200号公報、特開2003−33985号公報、特開2004−175101号公報、特開2004−202789号公報等に開示される水変色性シートから適宜選択して適用できる。
尚、前記多孔質層は、ベタ印刷状に形成したものが好ましいが、文字、記号、英数字、図柄等の像形態で形成したものを用いることもできる。
【0014】
前記多孔質層を用いた水変色性筆記シートは、多孔質層に液体が付着することにより付着部が透明化し、非付着部とのコントラストによって筆跡が形成される他、多孔質層の下層に非変色インキによる着色層が設けられている場合には、隠蔽されていた下層の色調が視認されてカラフルな筆跡が形成できるものである。また、液体が乾燥すると元の状態(非筆記状態の多孔質面)に復元するため、繰り返しのなぞり書きを容易に行うことができる。尚、前記液体として水を用いることができるため、筆記時に周囲を汚したり、使用者自身に着色剤が付着することがないので、幼児の使用には極めて適したものである。更に、前記筆記シートでは、なぞり書き以外にも筆記や捺印、スプレー塗布等の像形成を容易に行うことができる。その際、ステンシル等の型を併用することもできる。
【0015】
前記水変色性筆記シートの多孔質面に液体を付着させる方法としては、手や指を水で濡らして多孔質層に接触させる方法、先端部に筆穂や繊維ペン体等を有する筆記又は塗布具やスポンジに水を含浸させて多孔質層に接触させる方法、水を収容した容器を多孔質層に近接又は接触させて容器内から水を導出して付着させる方法、印面に連続気泡又は独立気泡を有する発泡体を固着したスタンプ具(ローラー式を含む)に水を含浸させて多孔質層に付着させる方法、プラスチックやゴムの印面を粗面に形成したスタンプ具に水を付着させて多孔質層に接触させる方法等が挙げられる。
尚、水を収容した容器を多孔質層に近接又は接触させて容器内から水を導出して付着させる方法としては、容器内に水を収容し、且つ、容器内の水を導出する繊維体や刷毛を設けて水を塗布する方法、容器内に水を収容し、且つ、噴霧装置を設けて、水をスプレーする方法、注射器のように容器内の水を押圧して水を噴出させる方法等が挙げられる。
前記水を付着させる手段として用いられる水付着具は、筆記又は塗布具、スタンプ具、スプレー具を例示でき、なぞり書き用表示体と水変色性筆記シートと組み合わせてなぞり書きセットとすることができる。特に、なぞり書きに適した水付着具としては、特定の線幅で連続筆記できることから、連続気孔を有するプラスチック多孔体又は繊維加工体をペン先部材として適用した筆記具や塗布具形態が好適である。
【実施例】
【0016】
以下図面に従って実施例を示すが、本発明は実施例に限定されるものではない。尚、実施例中の部は重量部を示す。
【0017】
実施例1(図1乃至3参照)
なぞり書き用表示体1
図1に示すなぞり書き用表示体1は、制御部及びバッテリーを内蔵すると共に、外面に複数の操作部3を備えた樹脂成形物からなる略半球状本体2と、該本体2から延設される平板状樹脂成形物である載置部4とから構成され、該載置部4の表面には、複数のLED51を規則的なマトリクス状に配置する表示部5を有している。
【0018】
前記載置部4は上面に被筆記体6を載置して筆記が出来る大きさを有しており、上方(表面側)から視認可能な位置に、発光素子として用いられるLED51が複数個配置されている。具体的には、載置部4となる樹脂板間に複数の赤色LEDが10個×10個の等間隔にマトリクス状に配列されている。尚、前記載置部4は、被筆記体6載置時における像(点灯部52)の視認性が高く、筆記時の書き易さを有することから平面状となっている。
前記発光素子は、プログラムに応じて所望の文字や像を表示部5にドット表示するために規則的なマトリクス状に配置されているが、これに限られるものでなく、表示される像に応じて適宜配列を構成することができる。また、前記発光素子は、単一の色や大きさに限らず、複数色での構成や、大小様々な大きさで構成することもできる。これにより装飾性の向上や像の複雑化を図ることもできる。
【0019】
前記載置部4が延設される略半球状の本体2は、表示部5や音声を制御する機能とともに、外側形状を円形にすることで、被筆記体6を回転可能に支持する機能を備えている。尚、本体2外面には、載置する被筆記体6の回転移動を補助するための補助具を別体で設けることもできる。
前記本体2の内部には、バッテリーやスピーカー(発音部21)とともに、表示部5のLED点滅や発音部21から流れる音楽(音声)をプログラム制御する制御部が内蔵される。
また、本体2の外面には、前記制御部に繋がる操作部3が、複数のボタン形態で形成される。具体的には、表示体1の通電状態を操作する電源部31、表示部5に表示される点灯像の種類を選択する11個の選択ボタン32、一筆書き形態と書き順形態の切り替え、同一選択ボタン32での文字と像(ヨット等の形象物)の切り替え、点灯、点滅時に流れる音楽や説明等の切り替え等を行うための切替部33、ボリューム調整部等が設けられている。
更に、前記各操作部3の外周(本体2表面)やボタン表面には、表示部5に現れる図柄(イラスト)や文字、説明文等が表示されている。
【0020】
前記なぞり書き用表示体1は、本体2外面の操作部3により稼動され、使用時には、電源部31をONにした後、切替部33を所望の機能に選択し、その後に描きたい像を選択ボタン32で選ぶことで、表示部5になぞり書き用の指示像が点灯形成され始める。その際、ペン先を置く位置(筆記線の書き始め)のLED51が点滅してスタート位置を案内し、その後に他のLED51が順に点灯していくため、点灯する光を辿って筆記していくことで所望の像を完成することができる。尚、LED51の点灯に合わせて発音部21から音楽が流れるため、玩具的要素の高い興趣に富んだものとなる。
【0021】
また、前記なぞり書き用表示体1は、載置部4に紙等の被筆記体6を重ねて、該被筆記体6に筆記具で像を形成するものであるが、書き順を覚える場合等には、被筆記体6を用いずにLED51が点灯する順番に従って指等でなぞることでも使用できる。
【0022】
筆記用シート
前記なぞり書き用表示体1の載置部4(表示部上面)には、LED光の光透過性を有する被筆記体6が載置されなぞり書きセット7が形成される(図2参照)。
本実施例において用いられる被筆記体6は、図2に示すような円形(中心部に本体2を装入可能な孔部63が形成されるドーナツ形)のシートであり、筆記面に多孔質層61を備え、該多孔質層61への液体塗布によって筆跡が形成される水変色性筆記シートである。
【0023】
前記水変色性筆記シート6は、背面に厚さ3μmのウレタンエラストマーシートが貼着されてなる白色の綿サテン生地を支持体64として、微粉末蛍光ピンク色顔料〔日本触媒(株)製〕5部、アクリル酸エステルエマルジョン〔ヘキスト合成(株)製、固形分48%〕50部、水性インキ増粘剤3部、レベリング剤0.5部、消泡剤0.3部、エポキシ系架橋剤5部を均一に混合攪拌してなる蛍光ピンク色インキを用いて、180メッシュのスクリーン版にて支持体64上にベタ印刷し、100℃で3分間乾燥硬化させて着色層65を形成した。その後、前記着色層65上に、湿式法微粉末シリカ〔日本シリカ工業(株)製〕15部、ウレタンエマルジョン〔大日本インキ化学工業(株)製、固形分50%〕30部、水50部、消泡剤0.5部、水系インキ用増粘剤3部、架橋剤3部を均一に混合攪拌してなる白色スクリーン印刷用インキを80メッシュのスクリーン版を用いて、支持体64の全面にベタ印刷し、130℃で5分間乾燥固化させることで白色の多孔質層61を形成した(図3参照)。更に、支持体64の外周部分を補強する着色布帛からなる枠部62を縫製することで水変色性筆記シート6を得た。
尚、前記水変色性筆記シート6の多孔質層61は乾燥状態で白色であり、水を付着させるとその部分の多孔質層61が透明化してピンク色の着色層65が視覚される。尚、前記視覚部分は水が未乾燥の状態では保持されており、水が乾燥すると不可視状態となり、元の白色の様相を呈する。
尚、前記多孔質層の上面、下面、外周近傍には、一般印刷インキによる文字や図柄等の装飾部を配設し、商品性、意匠性を向上することもできる。
【0024】
なぞり書きセット
前記水変色性筆記シート6を、なぞり書き用表示体1の載置部4上に筆記面(多孔質層)61が位置するように、本体2に孔部63を装入して取り付けることで、図2のようななぞり書きセット7となる。前記なぞり書きセット7は、使用時、なぞり書き用表示体1の本体2に形成される電源部31をONにした後、切替部33を所望の機能に選択し、その後に描きたい像を選択ボタン32で選ぶことで、表示部5になぞり書き用の指示像が形成され始める。その際、点灯するLED51の光が、筆記シート6表面になぞり書き用の点灯部52として視認できる。
前記LED51による点灯部52は、まずペン先を置く位置(筆記線の書き始め)が点滅してスタート位置を案内し、その後、像を形成するように他のLED51が順に点灯していき、像が完成すると点灯したすべての点灯部52が点滅して完成したことを知らせる。そのため、点灯する光を辿って筆記していくことで、先に選択した所望の像を簡単に描くことができる。また、前記筆記面61は、なぞり書き以外の筆記にも適用でき、所望の筆跡9が形成できる。尚、LED51の点灯、点滅に応じてスタート音、メロディ、ゴール音等の音楽が発音部21から流れるため、聴覚でも点灯状態が確認できる玩具的要素の高いものとなる。
【0025】
前記なぞり書き等の筆記には、なぞり書きセット7に組み合わされるペン形態の塗布具8が用いられる。
前記塗布具8は、本実施形態で水付着手段として適用されるものであり、筆記先端部に砲弾型の繊維ペン体(ナイロン樹脂製、直径7mm)を有し、軸筒内に水を収容可能に構成したマーキングペン形態の塗布具8である。この他に、スタンプやローラー形態の塗布具を用いることもできる。
前記塗布具8によって水が筆記面に付着されることで、多孔質層61が吸液による透明化を生じて下層の着色層65が視認可能となり、ピンク色の筆跡(筆記像)9が形成される。前記筆跡9は水が未乾燥の状態では保持されており、水が乾燥すると元の白色の様相を呈して不可視状態となる。
【0026】
前記筆記像9が描かれた筆記面61は、略半球状の本体2が回転支持体となり、筆記シート6を本体2を回転軸として容易に回転することができるため、筆記シート6の筆記されていない箇所(筆記面)を回転移動させて載置部4上に位置させることが可能である。従って次のなぞり書きを行うことが容易にできる。これは筆記後に筆記シート6を回転移動することで繰り返し行うことができる。
また、なぞり書き用表示体1と水変色性筆記シート6を容易に分離できるため、非使用時には、筆記シート6を折り畳むことが可能であり、収納性に優れたものとなる。
【0027】
実施例2(図4参照)
図4に示すなぞり書きセット7は、なぞり書き用表示体1が本体2とは別体で略星型状の支持部10を備えるものである。
なぞり書き用表示体1は、制御部及びバッテリーを内蔵し、外面に複数の操作部3を備えた樹脂成形物からなる略楕円箱状本体2と、該本体2から延設される平板状樹脂成形物である載置部4と、該載置部4から延設される回転可能な星型柱状の支持部10で構成される。尚、前記載置部4の表面には、複数個のLEDが規則的なマトリクス状に配置された平板状の表示部5が形成されており、制御部によって実施例1と同様の内容で制御されている。
【0028】
また、被筆記体となる水変色性筆記シート6は、中心部に支持部10が装入可能な星形の孔部63が形成された円形のシートであり、筆記面に多孔質層61を備え、該多孔質層61への液体塗布によって筆跡が形成される筆記シートである。
具体的には、多孔質層61下層の着色層65をピンク色と青色の2色で並設した以外は実施例1と同様に構成されており、多孔質層61と枠部62の間に一般印刷インキによる図柄や文字からなるカラフルな装飾部66が形成され、商品性、意匠性を付与している。尚、前記装飾部66には、選択ボタン32に表示されるなぞり書きが可能な像のイラストが形成されている。
前記筆記シート6の多孔質層61は乾燥状態で白色であり、水を付着するとその部分の多孔質層61が透明化してピンク色または青色の着色層65が視覚される。尚、前記視覚部分は水が未乾燥状態では保持されており、水が乾燥すると不可視状態となり、元の白色の様相を呈する。
【0029】
前記なぞり書きセット7は、本体2に形成される各種操作部3の操作によって稼働される。具体的には、電源部をONにした後、切替部を所望の機能に選択し、その後に描きたい像を選択ボタン32で選ぶことで、表示部になぞり書き用の指示像が形成され始める。その際、点灯するLEDが筆記シート6表面からなぞり書き用の点灯部52として視認できる。
前記点灯部52は、まずペン先を置く位置(筆記線の書き始め)が点滅してスタート位置を案内し、その後、像を形成するように他のLEDが順に点灯していき、像が完成すると点灯したすべての点灯部52が点滅して完成したことを知らせる。この時、LEDの点灯、点滅に応じてスタート音、メロディ、ゴール音等の音楽が流れるため、聴覚でも点灯状態が確認できる。そのため、塗布具等の水付着手段を用いて点灯する光を辿って筆記していくことにより、選択した所望の像を簡単に描くことができる。
【0030】
また、筆記像が描かれた筆記面61は、支持部10が回転支持体となり該支持部10を中心に筆記シート6を回転することができるため、筆記シート6の筆記されていない箇所を載置部上に回転移動させて再びなぞり書きを行うことが容易且つ即座にできる。
また、なぞり書き用表示体(支持部10)と水変色性筆記シート6は容易に分離できるため、非使用時には、筆記シート6を折り畳むことが可能であり、収納性に優れたものとなる。
【符号の説明】
【0031】
1 なぞり書き用表示体
2 本体
21 発音部
3 操作部
31 電源部
32 選択ボタン
33 切替部
4 載置部
5 表示部
51 LED
52 点灯部
6 被筆記体(水変色性筆記シート)
61 多孔質層(筆記面)
62 枠部
63 孔部
64 支持体
65 着色層
66 装飾部
7 なぞり書きセット
8 塗布具
9 筆跡(筆記像)
10 支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被筆記体を表示部上に載置して表示される像をなぞり書きするなぞり書き用表示体であって、
表示部と、制御部と、操作部とを有し、
前記表示部には上方から視認可能な複数の発光素子がマトリクス状に配置されており、
前記制御部により発光素子が所望の順序で点灯するように制御されており、
前記操作部の操作により制御される発光素子が点灯することで所望の像を形成するなぞり書き用表示体。
【請求項2】
音声発生手段を備え、発光素子の点灯、点滅、消灯とともに音声を発生する請求項1に記載のなぞり書き用表示体。
【請求項3】
前記発光素子が二色以上の色に発光する請求項1又は2に記載のなぞり書き用表示体。
【請求項4】
前記表示部に表示される像が、一筆書き順に発光素子を点灯することで形成される請求項1乃至3のいずれかに記載のなぞり書き用表示体。
【請求項5】
前記表示部に表示される像が文字であり、書き順に従って発光素子を点灯することで文字が形成される請求項1乃至3のいずれかに記載のなぞり書き用表示体。
【請求項6】
前記表示部に対して垂直方向に延設される円形支持部を有する請求項1乃至5のいずれかに記載のなぞり書き用表示体。
【請求項7】
前記円形支持部に制御部と操作部が設けられる請求項6記載のなぞり書き用表示体。
【請求項8】
前記請求項1乃至7のいずれかに記載のなぞり書き用表示体と、表示体上面に載置した際に発光素子の点灯状態が視認可能な被筆記体とからなるなぞり書きセット。
【請求項9】
前記被筆記体が光透過性を有する布帛または樹脂シートの表面に、低屈折率顔料をバインダー樹脂に分散状態に固着させた、非吸液状態で不透明であり吸液状態で透明化する多孔質層を形成してなる水変色性筆記シートである請求項8記載のなぞり書きセット。
【請求項10】
前記被筆記体が表示体の軸心方向に回転可能に表示体と接続されている請求項8又は9に記載のなぞり書きセット。
【請求項11】
前記被筆記体が円形孔部を有するとともに、表示体が表示部に対して垂直方向に延設される円形支持部を有し、前記円形支持部を円形孔部内に嵌入することで軸心方向に回転可能に接続される請求項10記載のなぞり書きセット。
【請求項12】
水付着具とからなる請求項9乃至11のいずれかに記載のなぞり書きセット。
【請求項13】
前記水付着具が、連続気孔を有するプラスチック多孔体又は繊維加工体をペン先部材として適用した筆記具又は塗布具形態である請求項12記載のなぞり書きセット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−159587(P2012−159587A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17859(P2011−17859)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000111890)パイロットインキ株式会社 (832)