説明

ねじおよびドライバビット

【課題】ねじの駆動穴とドライバビットの先端部を係合させる際に、それらの軸心に多少のずれがあったとしても、ねじの軸倒れが発生することなく、円滑なねじ締め動作を可能にする。
【解決手段】ドライバビットの駆動突起部が係合する駆動穴4が頭部2に形成されたねじ1であって、当該駆動穴4は、頭部2を平面視したときに、3本の係合溝41が、ねじの中心軸C1から放射状であって、かつ、円周方向に120°の角度をなして形成されると共に、前記各係合溝41の底面411が平坦面であって、それらの平坦面が前記中心軸C1に直交する同一の平面内にある。また、駆動穴4の中心には、中心軸C1と同軸上に円筒状のセンタ穴42が穿設される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭部に駆動穴を有するねじと、当該駆動穴に係合する駆動突起部を有するドライバビットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、工業用のねじとして、頭部に十字型形状の溝が形成されたねじ(以下、「十字溝型ねじ」という。)が多く用いられている。
図14(a)は、従来の十字溝ねじ101の頭部の平面図であり、同図(b)は、その頭部の一部切り欠き断面図である。
同図(a)に示すように、ねじ101の頭部102の駆動穴110は、4本の係合溝111が、中心から放射線状に90度の角をなして形成されてなり、各係合溝111の底面112は、同図(b)に示すように傾斜しており、駆動穴110は、深くなるほど細くなっている。
【0003】
作業者が、この駆動穴110に、当該駆動穴110とほぼ相似形状のドライバビット120(図15(a)(b)参照)の先端穂先部121を挿入して押しつけることにより、当該先端穂先部121の係合羽根122が係合溝111の底面112の傾斜面にガイドされて、ドライバビット120とねじ101が同軸上になり、円滑なねじ締め動作を実行できるようになっている。
【特許文献1】特開2006−90456号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような十字溝ねじ101の駆動穴110とドライバビット120の駆動穂先部121の形状によれば、特に、自動ねじ締め機を用いてねじ締め動作を実行する場合に次のような問題が生じる。
すなわち、自動ねじ締め機では、ねじ頭部の駆動穴をドライバビット120の先端穂先部121に係合させて保持させるため吸着方式といわれるものがよく用いられている。
【0005】
この吸着方式は、スリーブ状のビットガイド内にドライバビットを同軸上に挿通し、当該ビットガイド内を後方(先端部と反対方向)に排気することにより、大気圧との差圧でビット先端にねじの頭部を吸着保持させるように構成されているものである(例えば、特開平8−19970号公報参照)。
上記吸着方式によれば、自動ねじ締め機にねじを供給する装置(パーツフィーダ)のねじ供給位置とドライバビットの位置に少しでも誤差が生じると、ねじとドライバビットの中心軸がずれた状態で、ねじがドライバビット先端に吸着されることになる。
【0006】
この状態でねじを吸着すると、上記従来の十字溝ねじの駆動穴の場合では、ねじの中心軸がドライバビットの中心軸に対して傾いた状態で保持され(以下では、この状態を「軸倒れ」という。)、ねじ締め動作が的確に行えないおそれがある。
図15(a)(b)は、この軸倒れの現象を説明するための図である。なお、両図においては、ねじ101の駆動穴110とドライバビット120の先端穂先部121との係合関係が分かりやすいように、ねじ101は、図14(b)と同じ位置の断面で示しており、ドライバビット120については、手前側の係合羽根122のみを断面で示している。
【0007】
ねじ101の駆動穴110と、ドライバビット120の先端穂先部121が同軸上に嵌合する場合には、図15(a)に示すように係合溝111と係合羽根122は、同一の中心軸に対して左右対称な位置P1、P2で係合するが、両者の中心軸が少しずれると同図(b)に示すように、まずドライバビット120は、係合溝111の中心軸からずれた片方の底面112の傾斜部に最初に接触し(図では点P3)、摩擦により、ねじは当該接触点P3を支点としてクリアランスのある方向に角δだけ傾いて点P4で接触し、そのままの状態でねじ101が、ドライバビット120先端に吸着保持される。
【0008】
手動でねじ締めする場合には、押しつけ力やドライバビットの向きを適当に調整してねじとドライバビットの中心軸を合わせることが比較的容易であるが、自動ねじ締め機のように一律の吸引力でねじを吸着保持する構成では、上記軸倒れが是正されにくい。
そうすると、ねじ101がドライバビット120の中心軸に対して傾いた状態のまま回転駆動されて、そのねじの脚部の先端の位置が定まらず、ねじ締め動作に支障をきたし、場合によってはねじ止めの対象となっているワークを傷付けるおそれすらある。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、ねじの駆動穴とドライバビットの先端部を係合させる際に、それらの軸心に多少のずれがあったとしても、ねじの軸倒れが発生することなく、円滑なねじ締め動作を実行することができるねじ及びドライバビットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係るねじは、ドライバビットの駆動突起部が係合する駆動穴が形成された頭部と、前記頭部と一体に形成され、その周面にねじ山が形成された脚部を有するねじであって、前記駆動穴は、前記頭部を平面視したときに、少なくとも3本の係合溝が、ねじの中心軸から放射状であって、かつ、円周方向にほぼ等間隔に形成されてなると共に、前記各係合溝の底面の少なくとも一部に平坦面が形成され、かつ、それらの平坦面が前記中心軸に直交する同一の平面内にあることを特徴とする。
【0011】
ここで、前記各係合溝の底面には、前記平坦面より突出する部分が存在しないことが望ましい。
また、ここで、前記各係合溝の、円周方向において対向する一対の内壁面は、前記平坦面を含む同一の平面に対してほぼ垂直となるように形成されていることが望ましい。
さらに、前記各係合溝の、外周側に位置する内壁面は、前記平坦面を含む同一の平面に対してほぼ垂直となるように形成されることが望ましい。
【0012】
また、さらに、前記駆動穴の、前記各係合溝の合流する部位の底面には、円筒状の凹部が前記中心軸と同軸上に穿設されるようにしてもよい。
また、本発明に係るドライバビットは、軸部とその先端に形成された駆動突起部とからなり、上記ねじの頭部に形成された駆動穴に前記駆動突起部を係合させて作用するドライバビットであって、前記駆動突起部は、平面視において前記軸部の中心軸から放射状であって、かつ、円周方向にほぼ等間隔に形成される少なくとも3本の係合羽根を備え、各係合羽根は、その先端端面の、前記ねじの駆動穴の係合溝部底面の平坦面にほぼ対応する位置に平坦部を有し、当該平坦部の前記平坦面に対向する部分の面が、前記軸部の中心軸に直交する同一の平面内にあることを特徴としている。
【0013】
ここで、前記係合羽根の少なくとも前記駆動穴に挿入される部分の幅方向における側面が、軸部の中心軸に直交する平面に対し垂直に形成されてなることが望ましい。
また、前記ねじの駆動穴における各係合溝の合流する部位の底面には、円筒状の凹部が当該ねじの中心軸と同軸上に穿設されている場合に、前記駆動突起部は、その係合羽根の合流する基部において、前記軸部の中心軸と同軸上に形成され、前記円筒状の凹部に挿入される円柱状の突起を備えることが望ましい。
【0014】
ここで、前記円柱状の突起の前記中心軸方向の突出量は、前記ねじの円柱状の凹部の深さよりも小さいことが望ましい。
また、ここで、前記円柱状の突起の外径は、前記ねじの各係合溝の幅よりも大きいことが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
上記のように、駆動穴の各係合溝の底面に平坦面を有し、それらがねじの中心軸に直交する同一平面上にあるので、ドライバビットの係合羽根の先端面の当該ねじの係合溝底面の平坦面と対応する部分に平坦部を設け、その平坦部の面を当該ドライバビットの中心軸に直交する同一平面上にあるように形成しておけば、駆動穴と駆動突起部の係合時に両者の中心軸に直交する平坦面同士が接触して、ねじがドライバビットの中心軸に対して傾くことがなくなる。これにより良好なねじ締め動作が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
(1)ねじの形状
図1は、本発明の実施の形態に係るねじ1の斜視図である。
同図に示すように、ねじ1は、上面に三叉形状の駆動穴4が形成された頭部2と、この頭部2と一体に形成され、その周面にねじ山5が形成された脚部3とからなる。
【0017】
図2(a)は、上記ねじ1の頭部2の平面図である。
この図に示すように、駆動穴4は、ねじ1の中心軸C1から放射状に伸び、かつ、円周方向に等間隔に120°の角をなして形成された3本の係合溝41と中心軸C1に同軸上に形成された円筒状のセンタ穴(凹部)42とから構成されている。
各係合溝41は、平坦な底面411と、円周方向に対向して配置される一対の係合内壁412と、外周側に位置する外周側内壁413からなる。
【0018】
各係合溝41の深さは、同一であってその平坦な底面411は、中心軸C1に直交する同一の平面上にあるように形成されている。この底面411が、後述するドライバビット6の先端の平坦部と当接することにより、ドライバビットとねじ1の中心軸が平行になって軸倒れを防止することができるようになっている。
各一対の係合内壁412は、ドライバビット6の先端の係合羽根に係合して駆動力を受ける部分であり、本実施の形態では、上記底面411を含む平面に対して垂直となるように形成されている(以下、内壁もしくは側面が、特定の平面に対して垂直に形成されている状態を、単に「直立している」という場合もある。)。これにより、ドライバビット6で係合溝41に回転トルクを加える際に、ドライバビット6を押し返す分力が生じて、ドライバビット6の先端が、ねじ1の駆動穴4から滑り出す現象(カムアウト)を防止することが可能になる。
【0019】
また、外周側内壁413も、底面411を含む平面に対して直立している。
ねじ山5のピッチ、高さなどは、そのねじの呼び径の大きさや用途により、例えば、ねじに関するJIS(日本工業規格)に基づき決定される。
(2)ドライバビットの先端形状
上記ねじ1のねじ締めに供されるドライバビット6の先端部(以下、「係合先端部」という。)は、上記駆動穴4の形状に合わせた形状となっている。
【0020】
図3は、本実施の形態に係るドライバビット6の軸部7の先端に形成された駆動突起部8をその先端側から見たときの斜視図を示す。
同図に示すように駆動突起部8は、3枚の係合羽根81が、ドライバビット6の中心軸C2から放射状に、かつ、円周方向に等間隔に120°の角をなして形成されており、また、各係合羽根81の合流する基部83には、円柱状のセンタ突起82が、ドライバビット6の中心軸C2と同軸上に突設されてなる。
【0021】
各係合羽根81は、その軸部7の伸びる方向における端面811と、円周方向における一対の係合側面812と、外周側の側面(以下、「外周側側面」という。)813とを備える。
各係合羽根81の端面811は、平坦であって、中心軸C2と直交する同一の平面上にある。また、一対の係合側面812および外周側側面813は、上記端面811を含む同一平面に対して直立するように形成される。
【0022】
また、センタ突起82の先端部の端面822の縁部分が面取りされてテーパ部821が形成されている。
(3)駆動穴4と駆動突起部8の各部の形状及び寸法の関係
図4(a)(b)は、それぞれドライバビット6の駆動突起部8のみの平面図、および当該駆動突起部8の係合羽根81の中心線における縦断面図を示す。
【0023】
当該図4(a)に示すように、各係合羽根81の隣接する係合側面812の横断面の輪郭は、それらの漸近線812aが相互に110°の角をなす双曲線85を描くように形成される。
各双曲線85の内接円がセンタ突起82の輪郭となるように、センタ突起82の外径d(図4(b)参照)が決定される。
【0024】
ここで、mは、駆動突起部8の外接円の直径、Waは、係合羽根81の外周側(もっとも幅が狭い箇所)における幅の寸法を意味する(それぞれ単位は[mm]。以下、寸法を示す符号の単位は全て[mm]とする)。
また、図4(b)に示すように、係合羽根81の端面811の断面の輪郭は、中心軸C2に直交している。図4(b)では、一つの係合羽根81しか開示されていないが、3つの係合羽根81が全て同形状であり、各係合羽根81における端面811は、中心軸C2に直交する同一の平面上にあるように形成される。
【0025】
ここで、tは、円柱状のセンタ突起82の、係合羽根81の端面811からの突出量、t’は、テーパ部821の中心軸C2方向の幅、dは、センタ突起82の外径、d’は、テーパ部821の先端側の最細部の外径を示す。
一方、図4(c)(d)は、それぞれ、ねじ1の駆動穴4のみの平面図、および一の係合溝41の中心線における縦断面図を示す。
【0026】
図4(c)に示すように、隣接する係合溝41の2つの係合内壁412の断面輪郭は、それらの漸近線412aが相互に106°の角をなす双曲線45を描くように連続して形成される。また、各双曲線45の内接円がセンタ穴42の輪郭となるように、センタ穴42の径D(図4(d)参照)が決定される。
ここで、Mは、駆動穴4の外接円の半径、Wbは、係合溝41の外周側(もっとも幅が狭い箇所)における幅の寸法を意味する。
【0027】
また、図4(d)に示すように、係合溝41の底面411の断面の輪郭は、中心軸C1に直交している。図4(d)では、一つの係合溝41しか開示されていないが、3つの係合溝41が全て同形状であり、各係合溝41における底面411は、中心軸C1に直交する同一の平面上にあるように形成される。
ここで、Hは、係合溝41の深さ、Tは、円筒状のセンタ穴42の係合溝41の底面411からの深さをそれぞれ示す。
【0028】
上記駆動穴4と駆動突起部8の各寸法間には次のような関係が成り立つ。
d’<Wb<d<D ・・・条件(1)
Wa<Wb ・・・条件(2)
m<M ・・・条件(3)
t’<t≦T ・・・条件(4)
(4)双曲線45、85の形状について
本実施の形態では、駆動突起部8における隣接する2つの係合羽根81の係合側壁812の描く双曲線85の2つの漸近線812aのなす角度をθa、駆動穴4における隣接する係合溝41の係合内壁412が描く双曲線45の漸近線のなす角度をθbとすると、θa>θb(条件(5))が成立するようにしている(本実施の形態では、θa=110°、θb=106°)。
【0029】
図5(a)、(b)は、それぞれ上記双曲線85、45の形状をxy座標系における方程式で示すための図である。
一般に、x軸上に焦点を有し、正のx切片がa(>0)、x>0の領域における2本の漸近線同士のなす角をθとする双曲線の方程式は、次式で示される。
/a−y/(a・tan(θ/2))=1 (式1)
また、各漸近線の式は、y=±x・tan(θ/2)となる。
【0030】
図4(a)に示すように、ドライバビット6の係合羽根81の場合、式1におけるθ=θa=110°であり、また、x切片aは、その内接円(センタ突起82の外径)の半径d/2に等しいため、隣接する2つの係合羽根81の伸びる方向の中線をx軸、これに直交する方向をy軸、中心軸C2を原点とした場合に、双曲線85は、次式で示される
/(d/2)−y/((d/2)・tan55°)=1 (式2)
同様に、駆動穴4の係合溝41の場合、式1において、θ=θb=106°であり、x切片aは、その内接円(センタ穴42の内径)の半径D/2に等しいため、隣接する係合溝41の伸びる方向の中線をx軸、これに直交する方向をy軸、中心軸C1を原点とした場合に、双曲線45は、次式で示される。
【0031】
/(D/2)−y/((D/2)・tan53°)=1 (式3)
なお、本実施の形態では、呼び径1[mm]のねじについて、d/2=0.18[mm]、D/2=0.2[mm]に設定している。
外接円に近付くほど双曲線85、45はそれぞれの漸近線に近付くが、上記のようにx切片aの値を係合羽根81の方が係合溝41の場合よりも小さくし、かつ、漸近線のx軸となす角度θ/2の値を、係合羽根81の方が係合溝41の場合よりも大きくすることにより、上記条件(1)におけるd<Dの関係や条件(2)(Wa<Wb)も満足される。
【0032】
なお、上記式3は、双曲線45の中心位置をねじ1の中心軸C1に一致させた式であるが、当該双曲線45の中心位置をねじの中心軸C1から所定量だけオフセット(そのままの状態で中心をずらすこと)させるようにしてもよい。このようにすれば、双曲線45の形状は同じままで、センタ穴42の内径Dを増大することもでき、設計の自由度が増す。このことは、他方の係合羽根81側の双曲線85についても同様である。
【0033】
さらには、双曲線85、45の形状を同じにして(すなわち、図4(a)(c)におけるθa=θbとして)、一方の中心位置をずらすようにしてもよい。
例えば、係合羽根81側の双曲線85を示す式2において、α(>0)だけ、中心軸からx方向に移動させた双曲線の式は、
(x−α)/(d/2)−y/((d/2)・tan55°)=1
(式4)
と示すことができ、この式4を係合溝41側の双曲線45の式として適用してもよい。
【0034】
この場合でも上記d<DおよびWa<Wbの関係を満たすことができる。
(5)作用効果
本実施の形態によれば、次のような作用効果が得られる。
(5−1)軸倒れ防止
図6(a)は、ねじ1の駆動穴4にドライバビット6の駆動突起部8を同軸状に挿入した状態を、平面視において示す図である。なお、同図では、駆動突起部8については、その中心軸C2方向の係合羽根81の部位における横断面で示しており、本来斜線を付すべきであるが、本図は係合溝41と係合羽根81の形状の関係を示すことに主眼があり、破線や引出し線などがわかりにくくなるので、便宜上斜線の図示を省略している(以下の、図7(a)、図8、図9(a)(b)、図10、図11(a)、図12(a)、図13(a)などにおいて同じ。)。
【0035】
同図6(a)に示すように、駆動突起部8の係合羽根81の各側面が、係合溝41の各内壁412、413に対して一定以上の隙間(クリアランス)を有している。そのため、吸引保持時において、ねじ1とドライバビット6の中心軸C1,C2に多少のずれがあっても、上記クリアランスの範囲内であれば、ドライバビット6の駆動突起部8が、ねじ1の駆動穴4内にスムーズに挿入される。
【0036】
これにより、従来の十字溝ねじにおいて、ドライバビットの係合羽根の先端がねじの係合溝の傾斜底面に当接して軸の傾きが生じやすいという問題を回避することができる。
これは、主に上記条件(2)(3)を満たすことによって得られる効果である。
一方、図6(b)は、図6(a)におけるB―B矢視断面図における要部を示す。なお、本図においては、駆動突起部8と駆動穴4の係合関係が理解しやすいように駆動穴4はその断面の輪郭線のみで示しており、頭部2の輪郭線や断面であることを示す斜線は、図示を省略している(以下の、図7(b)、図10(b)、図11(a)、図12(b)、図13(b)などにおいて同じ。)。
【0037】
同図(b)に示すように、係合羽根81の先端の平坦面811が、係合溝41の平坦な底面411に当接し、これらの当接関係が、全ての係合羽根81と係合溝41間で生じるので、これによりねじ1とドライバビット6の中心軸C1、C2が平行に維持され、軸倒れを効果的に防止することができる。
さらに、センタ突起82がセンタ穴42に挿入されることにより(条件(1)におけるd<D)、センタ突起82とセンタ穴42のクリアランスの範囲内で両中心軸C1、C2がほぼ一致して同軸上に係合し、センタリングがなされる。
【0038】
特に、本実施の形態においては、上記係合溝41と係合羽根81の係合が、中心軸周りに等間隔に存する3箇所で行われるため、がたつきが生じにくく、安定してねじ1をドライバビット6に吸着保持できるという利点がある。
この際、上記条件(4)が満たされているので、センタ突起82の先端がセンタ穴42の底に干渉することなく、各係合溝41の底面411と係合羽根81の端面811を確実に当接させることができる。
【0039】
また、仮に、ねじ1をドライバビット6に吸着保持したときに、係合溝41と係合羽根81の回転方向の位置が、図7(a)に示すように一致していなくても、すぐに図6(a)(b)に示すような係合状態に移行することができる。
すなわち、通常、自動ねじ締め機における、ねじ1のドライバビット6への吸着は、ドライバビット6を回転させた状態でなされるので、図7(a)の状態でねじ1の頭部2の上面がドライバビット6の先端に当接しても、図7(b)の断面に示すようにも、各係合羽根81の端面811が、頭部2の上面に当接し、この状態で中心軸C1、C2がほぼ平行な状態を保ちつつ、ドライバビット6が回転することになる。
【0040】
この際、頭部2と係合羽根81の接触面での摩擦力により、ねじ1もドライバビット6の回転に連れて回転するが、両者が接触した瞬間には、ねじ1の慣性力によりその回転速度は、ドライバビット6の回転速度よりも遅いため、両者の回転角度が異なり、各係合羽根81と係合溝41の位置が重なったときに、上述した差圧による吸引力により、図7(b)の2点鎖線に示すように、ドライバビット6の各係合羽根81およびセンタ突起82が、それぞれ、ねじ1の係合溝41、センタ穴42に入り込んで円滑に係合がなされる。
【0041】
(5−2)耐久性の向上
図8は、ドライバビット6を回転させてねじ1を締め付けるときに、係合羽根81が係合溝41の係合内壁412に駆動トルクを付与する様子を示す平面図である。
同図に示すようにドライバビット6の係合羽根81を、中心軸C2を中心にして右方向に回転させると(本実施の形態における設計では、係合羽根81と係合溝41の中心線が一致した状態から約3°回転)、その係合側面812の先端付近が、駆動穴4の係合溝41の係合内壁412の当接位置S1〜S3において当接する。
【0042】
各係合内壁412、係合側面812は共に直立し、かつ、同一方向にやや湾曲しており、また、ねじ1の材料(金属)の弾力性も手伝って、係合側面812と係合内壁412は比較的広い面積で面接触することができ、両者間にフレッティング摩耗が生じにくい。そのため、駆動穴4の潰れが生じにくいと共に、自動ねじ締め機におけるドライバビット6の摩耗も少なく、それほど高価な材料を用いなくても長期間使用することができ、コスト面でのメリットが大きい。
【0043】
また、係合内壁412に加えられる駆動トルクは、例えば、係合位置S1においては、係合側面812との接触面の法線方向に加わる力F1と、それに直交する中心軸からの腕の長さL1の積で求まるところ、係合内壁412と係合側面812の双方が上述のように平面視で双曲線状に変化し、しかも、係合内壁412の方が、漸近線のなす角度が小さいため(条件(5)参照)、中心軸近くの曲率半径は、係合内壁412の方が係合側面812より小さくなり、図8に示すように係合溝41の根元に係合羽根81との隙間Gが生じ、係合溝41と係合羽根81が中心軸近くで当接することなく、中心軸から離れたS1で当接可能となっている。
【0044】
これにより上記腕の長さL1を長くとることができ、大きな駆動トルクを伝えることが可能となる(他のS2、S3の箇所においても同様)。
しかも、その外周付近のS1〜S3で当接することにより、当該当接位置における回転方向に隣接する係合溝41との距離も大きくなるので、その分だけ係合内壁412の、いわば肉厚が大きくなり、より強い回転トルクにも耐えられるという利点がある。
【0045】
さらに、係合溝の数が偶数、特に従来のように係合溝が4本の十字溝ねじの場合には、中心軸がずれると180°反転した2つの係合溝のみで係合羽根に係合して他の係合溝は、駆動力伝達に寄与しないような場合も生じるが、本実施の形態のように三叉形状の場合には、各係合箇所において面接触することに加えて、3箇所S1〜S3で必ず係合してほぼ均等に駆動トルクを伝達することができるので、カムアウトが発生しにくく、これによる係合溝41の潰れも生じにくい。
【0046】
(5−3)センタリング機能の向上
また、上記センタ穴42とセンタ突起82の作用とは別に、係合溝41の数が3本であり、かつ、条件(5)を満足することにより、センタリングがより容易になるという効果も得ることができる。
すなわち、ねじ吸着時において、図9(a)の示すようにセンタ穴42とセンタ突起82のクリアランスの範囲内で、ねじ1がドライバビット6に対し右左方向に若干ずれている場合を考えると、条件(5)により中心軸近くの曲率半径は、係合内壁412の方が係合側面812より小さくなるため、まず係合溝41と係合羽根81の根元付近S4で当接し、係合羽根81の矢印方向への回動により、位置S4で係合羽根81から係合内壁412に加わる力の反作用T0により、ねじ1が相対的に右方向に移動し、これに連れて、他の係合羽根81と係合溝41とが当接して、各当接位置S1〜S3で反作用T1〜T3を受け、その中で力の弱い方向に中心軸C2を相対的に移動させようとする。このような調整機能が作用することにより3箇所の係合溝41と係合羽根81との当接位置S1〜S3が移動し、それらの位置における係合内壁412からの反作用T1〜T3がほぼ等しくなる位置、すなわち、図9(b)に示すように中心軸C1とC2がほぼ一致する位置に収束する。これにより、センタリングを確実に行うことができる。
【0047】
なお、このようなセンタリング機能は、三叉形状の駆動穴であれば、一応得られるものであるが、本実施の形態のように条件(5)を満たし、かつ、係合内壁412と係合側面812の平面視における形状が共に曲線であることにより、係合内壁412と係合側面812の当接位置が滑らかに移動し、より一層円滑にセンタリングが行えるものである。
また、本実施の形態では、ねじ1の吸着保持の際における、軸ずれが自動ねじ締め機とパーツフィーダの位置決め誤差の範囲内であり、それほど大きくない場合を想定して説明したが、万一、軸ずれの量がそれ以上となる場合があっても、それがねじ1の駆動穴4の外接円の半径より小さい場合であれば、センタリングが可能である。
【0048】
図10(a)(b)は、この場合のセンタリング動作を示すものである。
すなわち、ねじ吸着時の軸ずれにより、図10(a)に示すように、ドライバビット6の中心軸C2が、ねじ1の駆動穴4の係合溝41の途中に位置した場合を考えると、先の条件(1)におけるd’<Wb<d<Dの関係から、センタ突起82の円柱部分の外径dは、係合溝41の幅Wbよりも大きいので、当該溝内に入り込まないが、テーパ部821の先端部の径d’が係合溝41の幅より小さいので、その先端側の一部が、係合溝41に入り込む(図10(b)参照)、係合溝41の縁は、上述のように双曲線状であって中心軸に近づくほど係合溝41の溝幅が広くなっているので)、吸引によりねじ1をドライバビット6側に付勢しつつ、ドライバビット6が回転されると、徐々にねじ1がドライバビット6の中心軸C2方向に相対的に移動して、センタリングが行われ、ついにはドライバビット6のセンタ突起82がねじ1の駆動穴4のセンタ穴42に入り込む。
【0049】
ここで、図4(c)に示すように、駆動穴4の平面視において、係合溝41の一対の係合内壁412と内接円(すなわちセンタ穴42の内側面)との接点をE1、E2、両接点の距離をWrとし、さらに中心軸C1とE1を結ぶ線分とx軸のなす角をθrとすると、隣接する係合溝41同士のなす角は120°であるので、角θrは、その半角の60°となる。
【0050】
したがって、距離Wrをセンタ穴42の径Dで表すと、
Wr=2・(D/2)sin60°
既述のように本実施の形態では、呼び径が1[mm]であって、D=0.4[mm]としているので、sin60°=1.73/2として計算すると、Wr=0.346[mm]となる。
【0051】
一方、センタ突起82の外径dは、0.36[mm]としているので、d>Wrとなり、この部分では、センタ突起82はまだ、係合溝41内に落ち込まず、さらに中心軸C2が、中心軸C1と近接したときに、センタ突起82が、センタ穴42に入り込んで円滑なセンタリングが可能となる。
したがって、この内接円と交わる(接する)部分から先端部の外接円までの範囲を一の係合溝と定義すると、各係合溝41の幅が、センタ突起82の外径dよりも小さいこと、より望ましくは、係合溝41の幅が、外接円側(幅Wb)から中心軸C1に移動するに連れて徐々に大きくなり、その根元部分の幅Wrも上記センタ突起82の外径dより小さくなるような形状にすることにより、センタリング機能を十分に発揮することができるものである。
【0052】
なお、図10(a)(b)では、説明の便宜上ドライバビット6の方が移動するように示しているが、実際には、ドライバビット6の中心軸C2を中心にねじ1の中心軸C1がその周りを回転しつつ、ねじ1の方が移動して徐々に中心軸C1とC2の距離が縮まり上記センタリングがなされる。
上記趣旨から、センタ突起82のテーパ部821の代わりに、適当な曲率半径のR部を形成しても同様な効果が得られる。
【0053】
従来の十字溝のねじでは、ドライバビットの先端が鋭く尖っており、また、ねじ吸着時に係合羽根がねじの駆動溝に直接係合するので、係合溝にドライバビットの先端が入り込んだ位置での嵌合が生じやすく、上記のような円滑なセンタリングの実現は難しかった。
しかし、本実施の形態に係るねじ1およびドライバビット6の構成によれば、ねじ1を自動ねじ締め機のドライバビット6に吸着保持させるときに、たとえ、両者の中心軸が若干ずれていたしても、軸倒れを効果的に防止すると共に、効率的にセンタリングが行え、さらには、必要な締め付けトルクを確保しながら、ねじ1およびドライバビット6の耐久性を向上できるという優れた作用効果を得ることができるものである。
【0054】
<変形例>
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明の内容が、上記実施の形態に限定されないことは勿論であり、例えば、以下のような変形例を考えることができる。
(1)上記実施の形態では、各係合溝41の底面411は、センタ穴42の穿設されている部分を除き、ほぼ全面を平坦面で形成したが、軸倒れを防止できる程度で平面が形成されていればよいので、必ずしも当該底面411の全面を平面に形成する必要はない。
【0055】
図11(a)(b)は、このような変形例に係るねじ1とドライバビット6の係合時の平面図およびその要部の縦断面図をそれぞれ示すものである。
両図に示すように、係合溝41の底面411には、その部位よりも若干突出した位置に平坦部411aが設けられており、各係合溝41の平坦部411aの上面(係合羽根81との当接面)が、ねじ1の中心軸C1に直交する同一平面内に来るように形成されている。
【0056】
これに当接するドライバビット6の係合羽根81の端面811は、ドライバビット6の中心軸C2に直交する同一平面内にあるので、本変形例によっても、有効にねじ1の軸倒れを防止することができる。
また、図12(a)(b)に示すように、ドライバビット6の係合羽根81の端面811の一部に平坦部811aを設けるようにしてもよい。
【0057】
両図に示すように、各係合羽根81の平坦部811aの下面(係合溝41の底面411との当接面)が、ドライバビット6の中心軸C2に直交する同一平面内になるように形成することにより、本変形例でも、ねじ1の軸倒れを防止することができる。
さらに、係合溝41の底面411と、係合羽根81の端面811の双方ともその一部分の対応する位置に上記の平坦部411a、811aを設けるようにしても構わない。この場合に、センタ穴42とセンタ突起82のクリアランスの範囲内で中心軸C1とC2がずれた場合でも、いずれの係合溝41内においても上記平坦部411a、811aが当接するような範囲に設定することが望ましいのはいうまでもない。
【0058】
上記図11、図12の変形例の場合、当該平坦部411a、811aより突出する部分があってはならない。もし、あれば、相互に同一平面内の平坦面で当接することができなくなるので、軸倒れ防止ができなくなるからである。
もっとも、ねじ1の係合溝41、ドライバビット6の係合羽根81における部分的な平坦部411a、811aをそれぞれ底面411、端面811から突出させるのではなく、一方を後退(凹部)させて、他方の平坦部がその凹部内に入って相互の平坦面同士の当接を確保できるように凸形状にすれば、上記と同様な軸倒れ防止の効果は得られる。
【0059】
(2)上記実施の形態によれば、センタ突起82がセンタ穴42に挿入されることにより、ねじ1とドライバビット6のセンタリングがより容易なように構成したが、自動ねじ締め機とパーツフィーダの位置決め精度がよく、両者の軸ずれ量が、係合溝41と係合羽根81の間の最小クリアランスの範囲内に収まるのであれば、上記係合溝41のセンタ穴42及び、係合羽根81のセンタ突起82は、図13(a)(b)に示すように、特に必要ではない。
【0060】
この場合には、図13(b)の縦断面図に示すように、ねじ1の係合溝41の底面411とドライバビット6の係合羽根81の端面811の双方の平坦面の接触面積が大きくなり、軸倒れ防止がより確実となると共に、駆動穴4、駆動突起部8の加工が容易となり生産性が向上する。
また、ねじ1についてみれば、センタ穴42がなくなることにより、ねじの強度が向上し、ドライバビット6についてみれば、一番摩耗する部分であるセンタ突起82をなくすことができるので、耐久性が増し、メンテナンスコストをより低減化できる。
【0061】
このような構成は、比較的呼び径が小さく、かつ、頭部2の中心軸C1方向の厚みが小さいねじ(薄頭ねじ)において特に有効である。
なお、本変形例の場合でも、係合溝41、係合羽根81が3本であるため、センタ穴42がなくても、図9で説明した原理に基づきセンタリングが達成されるので支障はない。
(3)上記実施の形態では、ねじ1における駆動穴4の係合溝41の断面形状や、ドライバビット6および駆動突起部8の係合羽根81の断面形状は、それぞれ双曲線45、85を描くように形成したが(図4(a)、(c)参照)、必ずしも双曲線である必要はなく、双方もしくは一方が、中心軸に向けて湾曲する曲線であって、中心軸に近付くほど曲率半径が小さくなるような曲線を描くようにしても構わない。また、当該曲線に近似する複数の直線からなるようにしても構わない。
【0062】
もっとも、複数の直線により近似して形成する場合には、角部が発生し、その部分に応力が集中するので、耐久性を増すという観点からは、断面形状が連続した曲線となるように係合溝41、係合羽根81を形成する方がより望ましいといえる。
(4)上記実施の形態では、ねじ1の駆動穴4におけるセンタ穴42は、その各係合溝41の平面視における形状を規定する3つの双曲線45の内接円となるようにその内径Dを決定し、一方のドライバビット6の駆動突起部8におけるセンタ突起82の外径は、上記Dより小さく、また、各係合羽根81の端面の平面視における形状を規定する3本の双曲線85の内接円となるように決定した。
【0063】
しかし、最終的に、ドライバビット6の係合羽根81がねじ1の係合溝41に回転トルクを伝達する位置は、係合羽根81と係合溝41の先端部近くで行われるので(図8におけるS1〜S3参照)、センタ穴42の内径を上記内接円の径よりも若干大きくしても締め付け動作に支障はなく、それに応じてドライバビット6のセンタ突起82の外径dを大きくしても構わない。センタ突起82が太くなる分、ドライバビット6の耐久性が増すからである。
【0064】
他方、センタ穴42の内径を大きくすればする程、ねじ1の強度が低下し、いわゆる、「首飛び」が発生するおそれがあるので、当該センタ穴42の内径を大きくする場合には、ねじ1の呼び径や使用する材料の強度、当該対象ワークの締め付けに必要なトルクなどを勘案し、必要な締め付けトルクを加えても、ねじ1が破損しないような安全な値が実験や計算などにより求められる。
【0065】
(5)上記実施の形態では、ねじ1の駆動穴4の係合内壁412、外周側内壁413および、ドライバビット6の駆動突起部8の係合羽根81の係合側面812、外周側側面813を全て直立形状とし、傾斜面がないように構成した。
これにより、ねじ吸着時に、軸ずれが生じても、駆動突起部8の先端が当接する傾斜面がなくなり、軸倒れが生じにくいという効果を得ることができる。
【0066】
ただし、上記実施の形態では、係合時における駆動穴4と駆動突起部8のクリアランスを比較的大きく取っているため、自動ねじ締め機およびパーツフィーダの位置決め精度の範囲内で、上記係合内壁412、外周側内壁413および係合側面812、外周側側面813のいずれかに若干の傾斜を設けても、ねじ吸着時に、当該一方の傾斜面が他方の一部と最初に当接させないようにすることが可能であるので、軸倒れのおそれが生じない。この意味においては、上記係合溝41の内壁、係合羽根81の側面を全て直立形状とする必要はない。
【0067】
もっとも、締め付け時に駆動突起部8が駆動穴4から滑り上がって抜け出すというカムアウト現象の防止という観点からは、係合内壁412と係合側面812双方の、とりわけ、締め付け時に接触する領域については、傾斜させずに直立形状とするのが望ましい。
上述したように従来の十字溝ねじは、その係合溝底面を傾斜させて、駆動穴を先細り形状にすることにより、ドライバビット先端と駆動穴を嵌合させてセンタリングを実現しようとする構成なので、本発明の実施の形態のように係合時にクリアランスを十分設けることができず、そのためねじの吸着保持の際、両者の中心軸に少しでもずれがあると、必ず駆動穴の傾斜面がドライバビットの駆動穂先部と係合せざるを得ず、軸倒れが生じていたのである。
【0068】
しかし、本発明では、従来の十字溝ねじと全く異なる技術思想により、軸倒れとセンタリングを実現しているため、ねじ1の駆動穴4とドライバビット6の駆動突起部8間に十分なクリアランスを確保して、ねじ1の吸着保持の際における両者の係合をより容易に行うことができ、特に小径のねじのねじ締め自動化に大いに資するものである。
<その他>
(1)上述のねじ1の駆動穴4の形状は、特に、サイズの小さなねじ(呼び径が、2.0mm以下)において効果を発揮するが、サイズの大きなねじであってももちろん適用可能である。
【0069】
(2)また、上述のねじ1の駆動穴4およびドライバビット6の駆動突起部8の形状は、自動ねじ締め機専用でなくても、手動操作用に供せられるものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、ドライバビットの先端にねじの駆動穴を係合させる際におけるねじの軸倒れを防止して円滑にねじ締め動作を行うことができるねじおよびドライバビットの構成として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の実施の形態に係るねじ1の外観斜視図である。
【図2】(a)(b)はそれぞれ上記ねじ1の平面図、一部切り欠き断面図を示す。
【図3】本発明の実施の形態に係るドライバビット6の先端部の外観斜視図である。
【図4】(a)(b)は、それぞれ、ドライバビット6の駆動突起部8の形状を示す平面図と断面図、(c)(d)は、それぞれ、ねじ1の駆動穴4の形状を示す平面図と断面図である。
【図5】(a)(b)はそれぞれ、駆動突起部8の係合羽根81の輪郭形状を示す双曲線85、駆動穴4の係合溝41の輪郭形状を示す双曲線45を示す図である。
【図6】(a)(b)はそれぞれ、ドライバビット6の駆動突起部8をねじ1の駆動穴4に係合させたときの平面図、断面図を示す図である。
【図7】(a)(b)は、ドライバビット6の係合羽根81と駆動穴4の係合溝41の回転位置が異なって吸着されたときにおける係合動作を説明するための平面図および断面図である。
【図8】係合羽根81により係合溝41に回転トルクが付与される様子を説明するための図である。
【図9】(a)(b)は、ねじ1のドライバビット6への吸着保持の際に、両者に軸ずれがあっても是正される様子を説明するための図である。
【図10】(a)(b)は、ねじ1のドライバビット6への吸着保持の際に、両者に軸ずれが図9の場合よりもさらに大きい場合であっても、両者の係合動作が円滑に行われることを説明するための図である。
【図11】(a)(b)は、本発明の変形例に係るねじ1とドライバビット6の構成を説明するための平面図および断面図である。
【図12】(a)(b)は、本発明の別の変形例に係るねじ1とドライバビット6の構成を説明するための平面図および断面図である。
【図13】(a)(b)は、本発明のさらに別の変形例に係るねじ1とドライバビット6の構成を説明するための平面図および断面図である。
【図14】(a)(b)は、従来の十字溝ねじの形状を示すための平面図および一部切り欠き断面図である。
【図15】(a)(b)は、上記従来の十字溝ねじにおける軸倒れの現象を説明するための図である。
【符号の説明】
【0072】
1 ねじ
2 頭部
3 脚部
4 駆動穴
5 ねじ山
6 ドライバビット
7 軸部
8 駆動突起部
41 係合溝
42 センタ穴
45、85 双曲線
411 底面
411a 平坦部
412 係合内壁
413 外周側内壁
412a 漸近線
81 係合羽根
82 センタ突起
811 端面
811a 平坦部
812 係合側面
813 外周側側面
812a 漸近線
821 テーパ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライバビットの駆動突起部が係合する駆動穴が形成された頭部と、前記頭部と一体に形成され、その周面にねじ山が形成された脚部を有するねじであって、
前記駆動穴は、前記頭部を平面視したときに、少なくとも3本の係合溝が、ねじの中心軸から放射状であって、かつ、円周方向にほぼ等間隔に形成されてなると共に、
前記各係合溝の底面の少なくとも一部に平坦面が形成され、かつ、それらの平坦面が前記中心軸に直交する同一の平面内にあることを特徴とするねじ。
【請求項2】
前記各係合溝の底面には、前記平坦面より突出する部分が存在しないことを特徴とする請求項1に記載のねじ。
【請求項3】
前記各係合溝の、円周方向において対向する一対の内壁面は、前記平坦面を含む同一の平面に対してほぼ垂直となるように形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のねじ。
【請求項4】
前記各係合溝の、外周側に位置する内壁面は、前記平坦面を含む同一の平面に対してほぼ垂直となるように形成されてなることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のねじ。
【請求項5】
前記駆動穴の、前記各係合溝の合流する部位の底面には、円筒状の凹部が前記中心軸と同軸上に穿設されてなることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のねじ。
【請求項6】
軸部とその先端に形成された駆動突起部とからなり、請求項1に記載のねじの頭部に形成された駆動穴に前記駆動突起部を係合させて作用するドライバビットであって、
前記駆動突起部は、平面視において前記軸部の中心軸から放射状であって、かつ、円周方向にほぼ等間隔に形成される少なくとも3本の係合羽根を備え、
各係合羽根は、その先端端面の、前記ねじの駆動穴の係合溝部底面の平坦面にほぼ対応する位置に平坦部を有し、
当該平坦部の前記平坦面に対向する部分の面が、前記軸部の中心軸に直交する同一の平面内にあることを特徴とするドライバビット。
【請求項7】
前記係合羽根の少なくとも前記駆動穴に挿入される部分の幅方向における側面が、軸部の中心軸に直交する平面に対し垂直に形成されてなることを特徴とする請求項6に記載のドライバビット。
【請求項8】
前記ねじの駆動穴における各係合溝の合流する部位の底面には、円筒状の凹部が当該ねじの中心軸と同軸上に穿設されてなり、
前記駆動突起部は、その係合羽根の合流する基部において、前記軸部の中心軸と同軸上に形成され、前記円筒状の凹部に挿入される円柱状の突起を備える
ことを特徴とする請求項6または7に記載のドライバビット。
【請求項9】
前記円柱状の突起の前記中心軸方向の突出量は、前記ねじの円柱状の凹部の深さよりも小さいことを特徴とする請求項8に記載のドライバビット。
【請求項10】
前記円柱状の突起の外径は、前記ねじの各係合溝の幅よりも大きいことを特徴とする請求項8または9に記載のドライバビット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−139011(P2010−139011A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−317072(P2008−317072)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(000227467)日東精工株式会社 (263)