説明

ねじ転造装置および転造方法

【課題】 ロールダイスのねじ転造加工物への負荷変動に対するロールダイスの回転数の変化に適正に対応でき、またねじ転造加工物への偏荷重で金型が傾くのを解消して、ねじ転造の成形品の精度を高め、品質を向上するにある。
【解決手段】 一対のロールダイス7、8を回転駆動するダイス回転駆動軸5、6に所定の回転速度で回転駆動制御自在にサーボモータ14を接続し、平行なロールダイス押込装置17、18に同調制御の位置検出器25、26を配設してロールダイス7、8を高精度に速度制御、圧力制御のいずれか、またはこれらを組み合わせて多段階での同調制御を行って被加工物を転造するようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじ転造装置および転造方法に関し、特に太径の転造ねじの加工生産性の向上、精度の向上、金型寿命等の向上がはかれるねじ転造装置および転造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ねじの強度や生産性を高めるのに転造加工が利用され、左右一対のロールダイス面に棒状の被加工物の被加工面を挟着して、ロールダイスを所定の圧力で押込んでねじを転造することが行われている。
【0003】
しかし、ロールダイスの回転駆動軸にAC誘導電動機を接続しているため、ねじ転動加工時の負荷変動に対するロールダイスの回転駆動軸の回転数の変化に適正に対応できなかった。そのため、被加工物の押込み加工時にロールダイスの回転数の減速、増速が繰り返され、ねじ転造の塑性加工量に変化が生じて真円度が狂いやすいものであった。
【0004】
また、ロールダイス押込装置も一対の2本の油圧シリンダーを平行に配設して平行状に押込むように駆動しているが、ねじ転造加工物への偏荷重が生じて金型が傾くものであり、また油圧シリンダーの平行制御の精度もよくないものであった。
【0005】
そこで、先行特許調査した結果、特開平9−117825号公報、特開平11−267786号公報などが検索された。
上記特開平9−117825号公報は、歯車の転造装置のもので、ロールダイスに回転伝達する等速ジョイントの回転周期の向上に限界があり、トルクセンサーを設けてトルク検出をして周期性を高めて転造精度を向上することを提案している。
【0006】
また、特開平11−267786号公報は、転造ねじ成形装置のものであるが、素材の硬度、転造下径寸法等により前進位置が変化し、径寸法にバラツキが生じて精密なねじの転造加工ができなく、そのため可変式ストッパーを設けて主軸台への当接検知手段を備えて押圧手段の前進端位置を一定し、精度よく生産することを提案している。
【特許文献1】特開平9−117825号公報
【特許文献2】特開平11−267786号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、これらによっても、ロールダイスのねじ転造加工物への負荷変動に対するロールダイスの回転数の変化に適正に対応できなく、またねじ転造加工物への偏荷重で金型が傾くのを解消できるものでない。
また、小径ねじのみ転造可能な加工硬化能の高いニッケル基耐熱超合金等の太径ねじについて、加工生産性や精度の向上等をはかることが課題であった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記のような点に鑑みたもので、上記の課題を解決するために、棒状の被加工物を挟着してねじを転造する一対のロールダイスを回転駆動自在に配設するとともに、そのロールダイスを相対的に進退可能にロールダイス押込装置を平行状に配設してねじを転造するねじ転造装置であって、上記ロールダイスを回転駆動するダイス回転駆動軸に所定の回転速度で回転駆動制御自在にサーボモータを接続し、平行なロールダイス押込装置に同調制御の位置検出器を配設してロールダイスを高精度に速度制御、圧力制御のいずれか、またはこれらを組み合わせて多段階での同調制御を行って被加工物を転造するように形成したことを特徴とするねじ転造装置を提供するにある。
【0009】
また、ロールダイスを回転駆動するサーボモータの回転数を一定に制御するようにし、ロールダイス押込装置を多段階にわたって速度制御または/および圧力制御を行うように形成したことを特徴とするねじ転造装置を提供するにある。
【0010】
さらに、ロールダイス押込装置のロールダイスへの押込み側の押込力が所定値に達すると、その押込力を保持するようにダイス回転駆動軸の回転数を所定値に低下して転造するようにしたことを特徴とするねじ転造装置を提供するにある。
【0011】
さらにまた、一対のロールダイスを装着する左右の主軸台の前後間に平行なロールダイス押込装置の同調制御用の位置検出器をそれぞれ配設し、上記ロールダイス押込装置を一対の平行な油圧シリンダーとしてこの平行な油圧シリンダーにサーボポンプをそれぞれ接続し、上記前後の位置検出器を介して一対の平行な油圧シリンダーのロールダイス押込装置を同調制御するように形成したことを特徴とするねじ転造装置を提供するにある。
【0012】
棒状の被加工物を挟着してねじを転造する一対のロールダイスを回転駆動自在に配設するとともに、そのロールダイスを相対的に進退可能にロールダイス押込装置を平行状に配設してねじを転造するねじ転造方法であって、上記ロールダイスを回転駆動するダイス回転駆動軸にサーボモータを接続して所定の回転速度で回転駆動制御するとともに、平行なロールダイス押込装置に同調制御の位置検出器を配設してロールダイスを高精度に速度制御、圧力制御のいずれか、またはこれらを組み合わせて多段階での同調制御をし、被加工物の加工部に潤滑油を供給して被加工物とロールダイスの摩耗係数を0.09〜0.12の接触状態としてねじを転造することを特徴とするねじ転造方法を提供するにある。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、棒状の被加工物を挟着してねじを転造する一対のロールダイスを回転駆動自在に配設するとともに、そのロールダイスを相対的に進退可能にロールダイス押込装置を平行状に配設してねじを転造するねじ転造装置であって、上記ロールダイスを回転駆動するダイス回転駆動軸に所定の回転速度で回転駆動制御自在にサーボモータを接続したことによって、ロールダイスの回転数をその駆動軸をサーボモータで一定の回転数となるように駆動制御できて、被加工物の真円度のバラツキを改善できて、精度の向上をはかることができる。
【0014】
また、平行なロールダイス押込装置に同調制御の位置検出器を配設してロールダイスを高精度に速度制御、圧力制御のいずれか、またはこれらを組み合わせて多段階での同調制御を行って被加工物を転造するように形成したことによって、ロールダイスの金型の偏荷重による傾きを低減でき、ロールダイス押込装置を高精度に速度制御、圧力制御のいずれか、またはこれらを組み合わせて容易に制御できて、成形品を精度よく転造でき、品質を均一状にできる。
【0015】
また、ロールダイスを回転駆動するサーボモータの回転数を一定に制御するようにし、ロールダイス押込装置を多段階にわたって速度制御または/および圧力制御を行うように形成したことによって、転造加工の設定を容易に行え、適正なときに適正な速度、圧力制御が行えて、上記のように成形品の精度を向上できる。
【0016】
さらに、ロールダイス押込装置のロールダイスへの押込み側の押込力が所定値に達すると、その押込力を保持するようにダイス回転駆動軸の回転数を所定値に低下して転造するようにしたことによって、ロールダイスの圧力曲線にそって精度を向上するように制御できて、成形品の精度を向上できる。
【0017】
さらにまた、一対のロールダイスを装着する左右の主軸台の前後間に平行なロールダイス押込装置の同調制御用の位置検出器をそれぞれ配設し、上記ロールダイス押込装置を一対の平行な油圧シリンダーとしてこの平行な油圧シリンダーにサーボポンプをそれぞれ接続し、上記前後の位置検出器を介して一対の平行な油圧シリンダーのロールダイス押込装置を同調制御するように形成したことによって、一対のロールダイスを装着する左右の主軸台の偏荷重による傾きを低減でき、ロールダイス押込装置の平行な油圧シリンダーをサーボポンプを介して精度よく平行同調駆動制御できて、成形品の精度を向上でき、さらに油圧油の発熱を回避できて環境に優しく対応できる。
【0018】
またさらに、棒状の被加工物を挟着してねじを転造する一対のロールダイスを回転駆動自在に配設するとともに、そのロールダイスを相対的に進退可能にロールダイス押込装置を平行状に配設してねじを転造するねじ転造方法であって、上記ロールダイスを回転駆動するダイス回転駆動軸にサーボモータを接続して所定の回転速度で回転駆動制御するとともに、平行なロールダイス押込装置に同調制御の位置検出器を配設してロールダイスを高精度に速度制御、圧力制御のいずれか、またはこれらを組み合わせて多段階での同調制御を行うようにし、被加工物の加工部に潤滑油を供給して被加工物とロールダイスの摩耗係数を0.09〜0.12の接触状態としてねじを転造することによって、転造加工時にロールダイスにすべりが生じないようにして適切に転造でき、上記したように被加工物の真円度のバラツキを改善できて、精度の向上をはかれ、成形品の精度を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明のねじ転造装置および転造方法は、棒状の被加工物を挟着してねじを転造する一対のロールダイスを回転駆動自在に配設するとともに、そのロールダイスを相対的に進退可能にロールダイス押込装置を平行状に配設してねじを転造するねじ転造装置であって、上記ロールダイスを回転駆動するダイス回転駆動軸に所定の回転速度で回転駆動制御自在にサーボモータを接続し、平行なロールダイス押込装置に同調制御の位置検出器を配設してロールダイスを高精度に速度制御、圧力制御のいずれか、またはこれらを組み合わせて多段階での同調制御を行って被加工物を転造することを特徴としている。
【0020】
ねじ転造装置1は、図1〜図3のように固定台2に左右の主軸台3、4を対向して装着していて、一方の図上左側の主軸台3を固定式とし、他方の図上右側の主軸台4を左側の主軸台3に進退可能に配設している。左右の主軸台3、4は、相対的に進退して転造できればよく、必要により両方とも進退可能に配設することもできる。
【0021】
上記主軸台3、4には、図1〜図3のように対向部をコ字に形成して左右のダイス回転軸5、6の先端部を水平に両持状態に貫通して軸支し、その両持部間に所定のロールダイス7、8を対向して左右のダイス回転軸5、6に一体的に嵌装している。
【0022】
また、上記ダイス回転軸5、6は、等速のユニバーサルジョイントの回転伝導軸9、10、減速歯車装置11、12、Vベルト等の回転伝達手段13を介して所定容量のACサーボモータ14に接続し、加工硬化能の高いニッケル基耐熱超合金等の太径ねじに対しても、ACサーボモータ14をエンコーダ15を介して図4のようにモータ回転数をフィードバックしてロールダイス7、8を所定の一定の回転数で回転駆動できるようにしている。
【0023】
また、上記した可動側の主軸台4は、図1〜図3のように主軸台4に直角に対向して水平ガイド16を水平に配設し、その前後の両側部に対称状に所要の押圧力の油圧シリンダーのロールダイス押込装置17、18を一対として配設し、この油圧シリンダーのロールダイス押込装置17、18に油圧配管19、20を配管接続してサーボポンプ21、22を接続している。23、24は、それらの0.1kNの検出精度の歪ゲージやロードセル等を利用した圧力センサーである。上記のようにサーボポンプ19、20を介して油圧制御すると、油圧油の発熱を回避でき、環境に優しく対応できて好ましい。
【0024】
そして、上記した固定側、可動側の主軸台3、4のロールダイス支持部の前後間であるロールダイス5、6の左右の両側間に図1〜図3のようにリニアインダクトシン等の1/1000mm検出精度の位置検出器25、26をそれぞれ水平状に配設し、可動側の主軸台4の進退の位置(特にロールダイス支持部の位置)をそれぞれ高精度で検出するようにし、図5のように操作制御盤27に転造ストローク間での前進速度を0.1〜7.0mm/秒等の5〜10段階の多段階での速度制御を、また図6のように押込み荷重を0〜1000kN等の5〜10段階の多段階での圧力制御をその転造ストローク間をインクリメンタルなディジタル状に、またはアナログ状の円滑な曲線状として設定するようにして、速度または圧力のいずれか、またはこれらを組み合わせて5〜10段階の多段階の制御を容易にできて、油圧シリンダーのロールダイス押込装置17、18を高精度に同調駆動制御し、加工硬化能の高いニッケル基耐熱超合金等の太径ねじに対してねじ転造加工ができるようにしている。必要により、位置検出器25、26としてワイヤレスの超音波センサー等とすることもできる。
【0025】
たとえば、上記した操作制御盤27の押込み速度制御として、図5のように転造ストロークの押込み開始位置から順次に0.5mm間隔等で可動側のロールダイス8の前進速度を0.6〜7.0mm/sec等の所要速度で入力設定すると、図7のように前後の位置検出器25、26からの現在位置の速度データをフィードバックし、それぞれの入力位置での速度データと比較して一方をマスタ軸とし、他方をスレーブ軸として追従するようにして、左右の油圧シリンダーのロールダイス押込装置17、18のサーボポンプ21、22を所定の回転速度に加減速して速度制御して高精度に同調駆動するものである。
【0026】
また、押込み荷重の圧力制御についても、図6のように転造ストロークの押込み開始位置から順次に0.5〜1.0mm間隔等で可動側のロールダイス8の押込み荷重を0〜1000kN等の所要荷重で入力設定すると、図8のように左右の油圧シリンダーのロールダイス押込装置17、18の圧力センサー23、24からの現在圧力データをフィードバックし、それぞれの入力位置の圧力データと比較して、上記と同様に一方をマスタ軸とし他方をスレーブ軸として追従するようにして、左右の油圧シリンダーのロールダイス押込装置17、18のサーボポンプ21、22を所定の回転速度に加減速して圧力制御して高精度に同調駆動するものである。
【0027】
このように固定側、可動側の主軸台3、4の前後間にリニアインダクトシン等の位置検出器22、26を配設して油圧シリンダーのロールダイス押込装置17、18を同調制御するので、油圧シリンダーのロールダイス押込装置17、18の位置、速度、圧力の同調制御をはかれ、ロールダイス7、8間に所要の太径の被加工物28を両端支持等で軸支して、転造時にロールダイス7、8の加工による主軸台3、4の前後方向のロールダイス7、8の支持部の左右での偏荷重を低減できるとともに、必要により修正して防止できる。
【0028】
また、被加工物28の材料やロールダイス7、8の加工精度にもバラツキがあることから、ロールダイス7、8が被加工物28に当接する原点位置を0mmとして手動操作して設定したり、自動操作として当接する位置を圧力センサー23、24で急激に圧力が上昇するのを自動的に検出してその位置を原点位置として上記したようにしてねじ転造を生産性を向上することもでき、成形品の寸法のバラツキをなくし、品質の向上をはかるようにすることができる。
【0029】
被加工物28としては、風力発電用や船用、原子力発電用のタービン軸やリーマボルト等の40〜300mmの太径のS45C、SCM435や、上記した従来できなかった40〜80mm径以上の太径のニッケル基耐熱超合金のインコネル600、718等の難加工物の軸材に適用できる。
【0030】
上記ねじ転造の基本的制御としては、図9(a)のように押込み速度一定として圧力を徐々に上昇したり、図9(b)のように押込み荷重一定として速度を徐々に速くしたり、図9(c)の実線や点線のようにこれらを組み合わせて行えるものであり、さらにロールダイス7、8の軸断面の転造面積や転造するねじ部の周縁、すなわちロールダイスの転造面積や転造周縁を投影面積に比例した荷重で順次転造できる。また、ねじ山の先端部相当の転造時にはソフトに当接して滑らかに高速度で、側面部相当の転造時には漸次高荷重に負荷し、谷底部相当の転造時には荷重を一定にキープして負荷するなど、被加工物28に対応して適正に対処することができる。その際、被加工物28への接触時にソフトに押込むようにするのが好ましく、またできるだけ高速で押込んで転造、できれば4〜5回転以内、より好ましくは2〜3回転以内で転造するのが品質をよくできて好ましい。さらに、図9(c)の点線のように転造の終期では押込み圧力を下げ、それに対応してロールダイス8の回転速度をやや低下して十分なトルクで回転することが好ましい。
【0031】
上記では、ダイス回転軸5、6を1台のACサーボモータ14で回転駆動するものを示したが、別々にサーボモータを接続してダイス回転軸5、6の回転角制御を行ったりして等速の同期回転駆動制御もでき、またロールダイス押込装置17、18としてボールねじ、角ねじによる回転軸サーボ駆動制御としたり、油圧弁による油圧制御とするなど、本発明の趣旨にもとづいて適宜に採択することが可能である。
【実施例】
【0032】
図1以下は、本発明の一実施例を示すものである。ねじ転造装置1は、1000kN用のもので、図1〜図3のように固定台2に左右の主軸台3、4を対向して装着し、一方の左側の主軸台3を固定し、他方の右側の主軸台4を左側の主軸台3に進退可能に配設し、主軸台3、4にはロールダイス支持部をコ字状に形成して左右のダイス回転軸5、6の先端部を水平に両持状態に貫通して軸支してロールダイス7、8を一体的に嵌装して配設している。また、ダイス回転軸5、6は、等速のユニバーサルジョイントの回転伝導軸9、10、減速歯車装置11、12、Vベルト等の回転伝達手段13を介してACサーボモータ14に接続し、エンコーダ15を介してフィードバック制御してロールダイス7、8を18r.p.mの一定の回転数で回転駆動するようにしている。
【0033】
また、図1〜図3のように主軸台4に直角に対向した水平ガイド16の前後の両側部に対称状に500kNの押圧力の油圧シリンダーのロールダイス押込装置17、18を平行に配設して圧力センサー23、24で0.1kNの圧力精度で検出し、この油圧シリンダーのロールダイス押込装置17、18をサーボポンプ21、22で主軸台3、4の前後間に水平状に配設した1/1000mm検出精度のリニアインダクトシンの位置検出器25、26を介して転造ストローク間を図5のように操作制御盤27で前進速度を0.6〜7.0mm/秒の10段階にわたる速度制御を、また図6のように押込み荷重を0〜1000kNの5段階での圧力制御を設定して、速度または/および圧力の多段階の制御で油圧シリンダーのロールダイス押込装置17、18をサーボ制御で高精度に同調駆動制御して転造加工ができるようにしている。
【0034】
ダイス回転用のサーボモータ14としてはトルク50Nm、1800r.p.m、減速比率1/100、油圧シリンダー17、18の各押圧力500kN、前進ストローク20mmとしている。
【0035】
数十条としたロールダイス5、6をSKD11やSPM23とし、転造ねじ材の被加工物28をSCM435やインコネル718とし、M56、ねじ長さ100mm、ピッチ5.5として、潤滑油を硫黄系の金属加工油(出光SRH80−33)を使用し、被加工物28を固定側のロールダイス5に接触するようにしてロールダイス5、6間に軸支して、転造ストロークの押込み開始の原点位置を手動で設定してから順次に0.5mm間隔で可動側のロールダイス8の前進速度を1.0mm/secと4.0mm/secの速度の入力設定として、図9(a)のような曲線で押込み荷重を各100〜500kN毎の5段階の圧力制御としてそれぞれ試作した。
【0036】
その結果、ロールダイス5、6の主軸台3、4の傾き量は、1/100mm以内に抑えられて、所要の品質のよい形状のねじが転造でき、またこれらの表面粗度Raは2〜3.2μm以下で、従来製品よりも良好で、繰り返し耐久試験も良好であった。
【0037】
ねじ転造の入力設定としては、上記したように5〜6段階位が入力の手間も少なくして好ましいが、10段階位に設定すると精密な転造曲線となってより好ましく、このように多段階で設定すると操作も容易で、かつ多品種少量生産にも対応しやすい。
【0038】
また、生産性を高めるために送り速度をできるだけ速くすることが好ましいが、余り速くするとスリップが生じる。そのため、摩擦係数が0.07〜0.15位の範囲、好ましくは0.09〜0.12位になるようにして転造するのが、品質も安定して好ましい。
【0039】
このようにSCM45やインコネル718といった転造加工が難しかった被加工物を多段階の速度、圧力(荷重)の容易な入力設定でねじ転造ができ、特に送り速度が1mm/sec以下なら十分に、送り速度が4mm/secでも円滑にねじ転造ができたものである。
【0040】
また、以上の結果からSCM45やインコネル718といった転造加工が難しかった被加工物のねじ転造に対して装置の能力・容量を大きくすると可能であるが、コストアップになるものである。そのため、本件のようにロールダイス回転軸をサーボモータで、ロールダイス押込容量もサーボポンプで可変に駆動制御するようにして、ロールダイスの回転を一定に保持しながらロールダイスの押込み速度、押込み負荷をできるだけ速く、大きくして生産性を高められるとともに、負荷が過大となると押込み速度を適正速度に低下したり、押込み負荷を適正負荷に低下したり、さらに必要によりロールダイスの回転数を低下したりして、装置の能力・容量を補填して実用化をはかっていくことができる。
【0041】
なお、以上では、ねじの転造について説明したが、歯車の転造についても転用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施例の概要説明用図、
【図2】本発明の一部省略した平面図、
【図3】同上の一部省略した正面図、
【図4】同上のロールダイス回転制御用ブロック図、
【図5】同上のロールダイス押込用の速度設定用の説明図、
【図6】同上のロールダイス押込用の圧力設定用の説明図、
【図7】同上のロールダイス押込装置の速度制御用ブロック図、
【図8】同上のロールダイス押込装置の荷重制御用ブロック図、
【図9】同上の転造用のそれぞれ圧力・速度制御線図(a)、(b)、(c)。
【符号の説明】
【0043】
1…ねじ転造装置 2…固定台 3、4…主軸台 5、6…ダイス回転軸 7、8…ロールダイス 14…サーボモータ 17、18…ロールダイス押込装置21、22…サーボポンプ 23、24…圧力センサー 25、26…位置検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状の被加工物を挟着してねじを転造する一対のロールダイスを回転駆動自在に配設するとともに、そのロールダイスを相対的に進退可能にロールダイス押込装置を平行状に配設してねじを転造するねじ転造装置であって、
上記ロールダイスを回転駆動するダイス回転駆動軸に所定の回転速度で回転駆動制御自在にサーボモータを接続し、
平行なロールダイス押込装置に同調制御の位置検出器を配設してロールダイスを高精度に速度制御、圧力制御のいずれか、またはこれらを組み合わせて多段階での同調制御を行って被加工物を転造するように形成したことを特徴とするねじ転造装置。
【請求項2】
ロールダイスを回転駆動するサーボモータの回転数を一定に制御するようにし、ロールダイス押込装置を多段階にわたって速度制御または/および圧力制御を行うように形成した請求項1に記載のねじ転造装置。
【請求項3】
ロールダイス押込装置のロールダイスへの押込み側の押込力が所定値に達すると、その押込力を保持するようにダイス回転駆動軸の回転数を所定値に低下して転造するようにした請求項1または2に記載のねじ転造装置。
【請求項4】
一対のロールダイスを装着する左右の主軸台の前後間に平行なロールダイス押込装置の同調制御用の位置検出器をそれぞれ配設し、上記ロールダイス押込装置を一対の平行な油圧シリンダーとしてこの平行な油圧シリンダーにサーボポンプをそれぞれ接続し、上記前後の位置検出器を介して一対の平行な油圧シリンダーのロールダイス押込装置を同調制御するように形成した請求項1ないし3のいずれかに記載のねじ転造装置。
【請求項5】
棒状の被加工物を挟着してねじを転造する一対のロールダイスを回転駆動自在に配設するとともに、そのロールダイスを相対的に進退可能にロールダイス押込装置を平行状に配設してねじを転造するねじ転造方法であって、
上記ロールダイスを回転駆動するダイス回転駆動軸にサーボモータを接続して所定の回転速度で回転駆動制御するとともに、
平行なロールダイス押込装置に同調制御の位置検出器を配設してロールダイスを高精度に速度制御、圧力制御のいずれか、またはこれらを組み合わせて多段階での同調制御をし、
被加工物の加工部に潤滑油を供給して被加工物とロールダイスの摩耗係数を0.09〜0.12の接触状態としてねじを転造することを特徴とするねじ転造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−214153(P2009−214153A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−62047(P2008−62047)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(508075694)ハマックス株式会社 (2)
【出願人】(597167748)財団法人新産業創造研究機構 (20)