説明

はんだボール及びその製造方法並びに接続構造

【目的】 隣設する接続端子が短絡することなく対向する接続端子間を確実に接続することができ、しかも対向する接続端子間の隙間を確実に確保することができるはんだボールを、簡単な構造によって提供すること。
【構成】 プリント配線板40等の接続端子41の表面に形成されたはんだボール100であって、前記接続端子41に一部が溶着されたはんだ核10の表面に該はんだ核10よりも溶融温度の低いはんだ層20を被覆した。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本各発明は、はんだボール及びその製造方法並びに接続構造に関し、詳しくは、プリント配線板や電子部品等の接続端子間を電気的に接続するはんだボール、及びその製造方法、並びに接続端子間をはんだボールによって電気的に接続する接続構造に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば複数のプリント配線板を積層する際に各プリント配線板の接続端子を電気的に接続したり、プリント配線板に電子部品を実装する際にプリント配線板の接続端子と電子部品の接続端子とを電気的に接続する手段として、はんだボールによるものがある。ここで、従来のはんだボールは、例えば、組成がSn/Pb=6/4の所謂6/4はんだ、組成がSn/Pb=9/1の所謂9/1はんだ、組成がSn/Pb=1/9の所謂1/9はんだ等の単一組成のはんだによって形成されたものであった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来のはんだボールにあっては、接続端子間を接続するはんだボールが単一組成のはんだにより形成されているため、はんだボール全体が溶融して潰れる場合があり、隣設する接続端子において潰れたはんだボールが互いに接触して短絡してしまうという問題があった。特に、複数の接続端子が細密に形成されている場合には、はんだボールの潰れによる短絡が生じ易かった。
【0004】また、複数のプリント配線板を積層した際やプリント配線板に電子部品を実装した際には、積層した各プリント配線板の間に隙間を設けたり、プリント配線板と電子部品との間に隙間を設けて、電子部品から発生する熱を効率よく放出させたり、プリント配線板の表面の塵等を排除し易くする場合がある。しかしながら、従来のはんだボールにあっては、はんだボール全体が溶融によって潰れて前述した隙間を形成することができない場合があった。
【0005】本各発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、まず、請求項1の発明においては、隣設する接続端子が短絡することなく対向する接続端子間を確実に接続することができ、しかも対向する接続端子間の隙間を確実に確保することができるはんだボールを、簡単な構造によって提供することである。
【0006】次に、請求項2の発明においては、前述した請求項1の発明に係る高品質なはんだボールを容易に且つ確実に製造することができるはんだボールの製造方法を、簡単な方法によって提供することである。
【0007】最後に、請求項3の発明においては、隣設する接続端子に短絡が生じることなく、対向する接続端子間に隙間を確実に確保することができる接続構造を、簡単な構造によって提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】以上の課題を解決するために本各発明の採った手段を、図面に使用する符号を付して説明すると、まず、請求項1の発明は、「プリント配線板40等の接続端子41の表面に形成されたはんだボール100であって、前記接続端子41に一部が溶着されたはんだ核10の表面に該はんだ核10よりも溶融温度の低いはんだ層20を被覆してなることを特徴とするはんだボール100」である。
【0009】次に、請求項2の発明は、「請求項1記載のはんだボール100の製造方法であって、以下の各工程を含むことを特徴とするはんだボール100の製造方法、(1)前記接続端子41を露呈するようにプリント配線板40等に載置された容器30に前記はんだ核10となる第一のはんだボール10aを入れる工程;
(2)前記第一のはんだボール10aを溶融してその一部を接続端子41に溶着する工程;
(3)前記容器30に第一のはんだボール10aよりも溶融温度が低いはんだから形成された前記はんだ層20となる第二のはんだボール20aを入れる工程;
(4)第一のはんだボール10aの溶融温度よりも低い温度で前記第二のはんだボール20aを溶融して第一のはんだボール10aの表面にはんだを溶着し、はんだ核10の表面にはんだ層20が被覆されたはんだボール100を形成する工程」である。
【0010】最後に、請求項3の発明は、「対向する接続端子41間をはんだボール100によって電気的に接続する接続構造であって、各接続端子41間に介在されると共にその一部が一方の接続端子41に溶着されたはんだ核10と、このはんだ核10よりも溶融温度が低く該はんだ核10の表面に被覆されると共に前記各接続端子41に溶着されたはんだ層20とを備えたことを特徴とする接続構造」である。
【0011】
【発明の作用】このように構成された本各発明に係るはんだボール100及びその製造方法並びに接続構造は、次のように作用する。
【0012】まず、請求項1の発明に係るはんだボール100は、プリント配線板40等の接続端子41に溶着されたはんだ核10の表面にはんだ層20を被覆したものであり、このはんだ層20をはんだ核10よりも溶融温度の低いものとしたものである。このため、はんだボール100を溶融して接続端子41間を接続する際に、はんだ核10の溶融温度よりも低い温度ではんだ層20を溶融し、この溶融したはんだ層20により接続端子41間を接続すれば、接続端子41間にははんだ核10が確実に介在されることになる。これ故、対向する接続端子41間には、はんだ核10によって隙間が確実に確保されることになる。また、接続端子41間に介在されたはんだ核10によってはんだボール100全体の潰れが防止されるため、潰れたはんだボール100によって隣設する接続端子41が短絡することはなくなる。
【0013】次に、請求項2の発明に係るはんだボール100の製造方法は、まず、容器30にはんだ核10となる第一のはんだボール10aを入れてこの第一のはんだボール10aをプリント配線板40等の接続端子41に溶着し、次いで、容器30に第一のはんだボール10aよりも溶融温度の低い第二のはんだボール20aを入れ、第一のはんだボール10aの溶融温度よりも低い温度にて第二のはんだボール20aを溶融して第一のはんだボール10aの表面にはんだを溶着することにより、前述した請求項1の発明に係るはんだボール100を形成するようにしたものである。このような方法によれば、はんだ核10は確実に残存し、このはんだ核10の表面にははんだ層20が確実に被覆されることになり、プリント配線板40等の接続端子41の表面に高品質なはんだボール100を容易に且つ確実に製造し得ることになる。
【0014】最後に、請求項3の発明に係る接続構造は、前述した請求項1の発明に係るはんだボール100によって対向する接続端子41間を電気的に接続したものであり、対向する接続端子41間にはんだ核10が介在され、各接続端子41にはんだ層20が溶着されたものである。このため、対向する接続端子41間には、はんだ核10によって形成された隙間が確実に確保されることになる。また、はんだ核10によってはんだボール100全体の潰れが防止されることになるため、はんだボール100全体の潰れによって隣設する接続端子41が短絡することはなくなる。さらに、各接続端子41には、はんだ層20が溶着されているため、電気的に確実に接続されることになり、接続端子41間の接続信頼性が低下することはない。
【0015】
【実施例】次に、本各発明のはんだボール100及びその製造方法及び接続構造の実施例を、図面に従って詳細に説明する。
【0016】図1には、請求項1の発明に係るはんだボール100の一実施例を示してある。このはんだボール100は、溶融温度が約215℃の9/1はんだにより形成されプリント配線板40の接続端子に一部が溶着されたはんだボールをはんだ核10とし、このはんだ核10の表面に、溶融温度が約185℃の6/4はんだにより形成されたはんだ層20を被覆したものである。なお、本実施例においては、プリント配線板40の接続端子41に形成されたはんだボール100の例を示したが、これに限らず、例えば電子部品等の接続端子41に形成されたものであってもよい。
【0017】このようなはんだボール100を製造する際には、まず、プリント配線板40等の接続端子41にはんだ核10を溶着し、電解めっきや無電解めっきによりはんだ核10の表面にはんだ層20を被覆してもよいが、電解めっきや無電解めっきのようなめっきによりはんだ層20を形成すると、十分な厚さのはんだ層20を得るために長時間のめっき加工を必要とするばかりか、はんだ層20にバラツキが生じ高品質なはんだボール100を形成するのが困難である。また、めっきの前処理工程等の煩雑な工程も必要とする。このため、請求項2の発明に係るはんだボール100の製造方法により製造するとよい。
【0018】次に、請求項2の発明に係るはんだボール100の製造方法に実施例を、図2に示す工程図に基づいて説明する。
【0019】まず、プリント配線板40等に、その接続端子41が露呈するようにして直径0.9mm深さ1.5mmの穴を有する容器30を載置し、この容器30に、9/1はんだにより形成された直径0.6mmの第一のはんだボール10aを入れる(a)。なお、容器30の内面には、テフロン加工やクロムめっき加工等が施されいる。このため、容器30の内面は、はんだ濡れ性が悪く、はんだボール100が溶着し難いものとなっている。
【0020】次に、容器30の表面温度が225℃となるように加熱して第一のはんだボール10aを溶融し、第一のはんだボール10aの一部を接続端子41に溶着する(b)。
【0021】次に、容器30に、6/4はんだにより形成された直径0.7mmの第二のはんだボール20aを入れ(c)、容器30の表面温度が200℃となるように加熱して第二のはんだボール20aを溶融する(d)。すると、第一のはんだボール10aの表面に第二のはんだボール20aのはんだが溶着され、はんだ核10の表面にはんだ層20が被覆されたはんだボール100が形成される(e)。
【0022】なお、第二のはんだボール20aを溶融する際に、容器30の表面温度を195℃以下にすると、第二のはんだボール20aが完全に溶融されず、210℃以上にすると、第一のはんだボール10aも溶融されて混ざり合ってしまうため、容器30の表面温度が195〜210℃となるように加熱するのが好ましい。また、容器30の表面温度が200℃で第二のはんだボール20aが完全に溶融され、205℃で第一のはんだボール10aの表面が溶融し始めるため、容器30の表面温度が200〜205℃となるように加熱するのが特に好ましい。
【0023】次に、図4には、請求項3の発明に係る接続構造の一実施例を示してある。この接続構造は、複数のプリント配線板40を積層する際に、各プリント配線板40の対向する接続端子41をはんだボール100によって接続したものである。この接続構造においては、対向する接続端子41間に、下側の接続端子41に一部が溶着されたはんだ核10が介在されており、このはんだ核10の表面に被覆されたはんだ層20が、各々上側の接続端子41と下側の接続端子41とに溶着されている。そして、はんだ核10によって接続端子41間の隙間が確実に確保されており、はんだ層20によって接続端子41間が電気的に確実に接続されている。なお、本実施例の如く複数のプリント配線板40を積層する際に限らず、例えばプリント配線板40に電子部品を実装する際に、プリント配線板40の接続端子41と電子部品の接続端子41とを接続したものであってもよい。
【0024】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、まず、請求項1の発明に係るはんだボールは、はんだ核の表面にこのはんだ核よりも溶融温度の低いはんだ層を被覆したものであり、接続端子間を接続する際に、溶融によるはんだボール全体の潰れを防止できるようにしたものである。
【0025】次に、請求項2の発明は、まず、第一のはんだボールを容器に入れてプリント配線板等の接続端子に第一のはんだボールを溶着し、次いで、第一のはんだボールよりも溶融温度の低い第二のはんだボールを容器に入れて第一のはんだボールの溶融温度よりも低い温度で第二のはんだボールを溶融して、はんだ核の表面にはんだ層を被覆した請求項1の発明に係るはんだボールを製造する方法であり、簡単な方法によって、はんだ核を確実に残存させ、このはんだ核の表面にはんだ層を確実に被覆できるようにしたものである。
【0026】最後に、請求項3の発明に係る接続構造は、対向する接続端子間に介在されると共にその一部が一方の接続端子に溶着されたはんだ核と、このはんだ核の表面に被覆されると共に各接続端子に溶着されたはんだ層とを備えたものであり、はんだ核によって接続端子間の隙間が確実に確保され、はんだ層によって接続端子間が電気的に確実に接続されたものである。
【0027】従って、まず、請求項1の発明によれば、隣設する接続端子が短絡することなく対向する接続端子間を確実に接続することができ、しかも対向する接続端子間の隙間を確実に確保することができるはんだボールを、簡単な構造によって提供することができる。
【0028】次に、請求項2の発明によれば、前述した請求項1の発明に係る高品質なはんだボールを容易に且つ確実に製造することができるはんだボールの製造方法を、簡単な方法によって提供することができる。
【0029】最後に、請求項3の発明によれば、隣設する接続端子に短絡が生じることなく、対向する接続端子間に隙間を確実に確保することができる接続構造を、簡単な構造によって提供することができる。
【0030】
【図面の簡単な説明】
【図1】請求項1の発明に係るはんだボールの一実施例を示す断面正面図である。
【図2】請求項2の発明に係るはんだボールの製造方法の一実施例を示す工程図である。
【図3】請求項3の発明に係る接続構造の一実施例を示す断面正面図である。
【符号の説明】
10 はんだ核
10a 第一のはんだボール
20 はんだ層
20a 第二のはんだボール
30 容器
40 プリント配線板
41 接続端子
100 はんだボール

【特許請求の範囲】
【請求項1】プリント配線板等の接続端子の表面に形成されたはんだボールであって、前記接続端子に一部が溶着されたはんだ核の表面に該はんだ核よりも溶融温度の低いはんだ層を被覆してなることを特徴とするはんだボール。
【請求項2】請求項1記載のはんだボールの製造方法であって、以下の各工程を含むことを特徴とするはんだボールの製造方法、(1)前記接続端子を露呈するようにプリント配線板等に載置された容器に前記はんだ核となる第一のはんだボールを入れる工程;
(2)前記第一のはんだボールを溶融してその一部を接続端子に溶着する工程;
(3)前記容器に第一のはんだボールよりも溶融温度が低いはんだから形成された前記はんだ層となる第二のはんだボールを入れる工程;
(4)第一のはんだボールの溶融温度よりも低い温度で前記第二のはんだボールを溶融して第一のはんだボールの表面にはんだを溶着し、はんだ核の表面にはんだ層が被覆されたはんだボールを形成する工程。
【請求項3】対向する接続端子間をはんだボールによって電気的に接続する接続構造であって、各接続端子間に介在されると共にその一部が一方の接続端子に溶着されたはんだ核と、このはんだ核よりも溶融温度が低く該はんだ核の表面に被覆されると共に前記各接続端子に溶着されたはんだ層とを備えたことを特徴とする接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開平7−106750
【公開日】平成7年(1995)4月21日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−244161
【出願日】平成5年(1993)9月30日
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)