説明

はんだ付け用フラックスおよびソルダペーストとヤニ入りはんだ

【課題】ソルダペーストでは保存中にフラックス中の活性剤と合金が反応してペーストの性状が変化する。性状が変化したソルダペーストは印刷するなどの使用に適さなくなる。また、合金が溶融後抜け切れなかった活性剤がガス化してボイドになったり、残渣中に活性剤が残ることで電気的な信頼性が低下するという課題があった。
【解決手段】ソルダペーストに用いるフラックスにハイドロタルサイトを含有させる。ハイドロタルサイトは、層状の主骨格の間に陰イオンである活性剤をインターカレートすることができ、活性剤はソルダペーストの保存中に合金と反応することがない。そのため、保存性、印刷安定性に優れている。また、加熱することで主骨格から脱離し、活性剤としての機能を発揮する。さらに合金が固まる際には再度取込まれるため、ボイドの低減が可能となり、残渣中に活性剤があっても電気的信頼性を損なうことがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はんだ合金ソルダペースト用フラックス、およびこのフラックスを用いたソルダペーストに関する。特に低鉛または無鉛のソルダペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント配線板に電子部品を接合するために使用されているソルダペーストは、はんだ合金として錫−鉛系合金を使用するものであったが、環境問題から鉛を含まないはんだ合金が求められ、錫−銀系、錫−銅系、錫−銀−銅系、錫−ビスマス系、錫−アンチモン系、錫−インジウム系、錫−亜鉛系などの無鉛はんだが使われている。
【0003】
従来の錫−鉛系はんだは、錫、鉛の電位が非常に近いため安定であるが、鉛フリーはんだは、錫と銀、銅、亜鉛に電位差が生じるため、はんだ金属が酸素と接すると卑な金属が酸化する。はんだ接合のためにはこの酸化膜を除去する必要があり、そのためにはフラックスとして強い活性剤を使用する必要がある。
【0004】
しかしながら、錫や亜鉛は反応性が高いため、貯蔵中、もしくは、はんだ実装前にフラックス中に含まれる活性剤と反応する。そのため、ソルダペーストの貯蔵、印刷の安定性が低下してしまう。ここで、印刷安定性の低下とはペーストがマスク上で往復運動を行うスキージによってローリングされ経時変化してしまうことをいう。
【0005】
また、従来の錫−鉛系と比較して、溶融温度が高温となるため、溶融中にフラックスから発生した泡が抜けきれずにこれがボイドとなって、特にファインピッチでは接合強度を低下させてしまう。
【0006】
また、錫−鉛系と比較し、フラックス中の活性剤の量が多くなるため、実装後の電気的信頼性が低下してしまう。
【0007】
このような問題を解決するために、従来はフラックス中に添加物を混入させ安定性を向上させようというアプローチと、はんだ合金の表面に保護層を生成し、フラックスとはんだ合金の反応を抑制するアプローチがあった。
【0008】
例えば前者のアプローチでは、カルボン酸基を有し軟化点が100度以下の樹脂成分を1〜50質量%、酸解離定数(pKa)が10.0〜11.5の範囲内で沸点が50度から200度の範囲内である有機アミンおよび非イオン性有機ハロゲン化合物を含有し、全体としてpHが4から9の範囲であるフラックスがある(特許文献1参照)。その他、オキセタン化合物を添加したり(特許文献2参照)、また分解して酸を発生する有機酸エステルの少なくとも1種とエステル分解触媒を配合したもの(特許文献3参照)などがある。
【0009】
また、後者のアプローチとしては、亜鉛を含む合金粉末の表面を防錆剤又は他の金属でコーティングする(特許文献4参照)、錫と亜鉛の合金の表面にマグネシウム酸化物の保護膜を生成する(特許文献5参照)、はんだ合金粉末の表面に難溶性の金属塩を生成する(特許文献6参照)などが提案されている。
【0010】
【特許文献1】特開2003−001487号公報
【特許文献2】特開2004−202518号公報
【特許文献3】特開平11−197879号公報
【特許文献4】特開平09−001382号公報
【特許文献5】特開2004−082134号公報
【特許文献6】特開2003−126991号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
フラックス中に添加剤を加えることによってペーストの安定性を図ろうとするアプローチは、元来反応しようとする合金とフラックス中の活性剤との反応をある程度抑制しようとするものであるから、用いる活性剤の効果自体を低下させることにつながる。また、これらの添加物はフラックス残渣として接合後も残るため電気的および機械的信頼性低下の原因ともなりかねない。
【0012】
また、合金の表面に保護層を設けたり、改質したりするのは、合金毎に処理方法が異なったり、保護層とフラックスとの相性を確認しなければならないという課題があった。また、この方法では、活性剤から発生する泡が原因となるボイドについては、ほとんど効果がない。
【0013】
さらに、これらの方法を講じても、反応性の強い活性剤を用いるとペーストは不安定となり、保存性が悪くなる。そのため、保管時には冷却が必要になったり、基板に印刷する際は少量ずつ印刷装置に供給しなければならないといった取り扱い上の手間が必要であった。
【0014】
本発明は、このようなソルダペーストとして課題となる保存安定性、印刷安定性、熱だれ安定性、ボイド発生の低下、フラックス残渣による実装後の電気的信頼性の低下という課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明はフラックス中に活性剤とハイドロタルサイトを含有させる。ハイドロタルサイトは、式1で表される化合物である。
[M2+3+(OH)2m+2n]Xn/zz−・bHO (1)
2+は、Mg、Ca、Sr、Cu、Ba、Zn、Cd、Pb、Ni、Zr、Co、Fe、MnおよびSnから選択される少なくとも1つの2価の金属イオンであり、
3+はAl、Fe、Cr、Ga、Ni、Co、Mn、V、Ti、Inから選択される少なくとも1つの3価の金属イオンであり、
m、nは実数であり、
n/zz−はz価アニオンであり、
bは実数である。
また、このようなフラックスを含むソルダペーストであり、やに入りはんだである。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、ソルダペースト中のフラックスに活性剤の保持剤となるハイドロタルサイトを含有させた。そのため有機酸やハロゲン系化合物(以後「ハロゲン化物」ともいう)といった活性剤が、ハイドロタルサイト中にインターカレート(挿入)されるので、ソルダペースト中の合金と活性剤が保存時や印刷時に反応することがないので、ソルダペーストを安定に保存、印刷することができる。また、保存、印刷時に活性剤が消耗されないため、活性剤による酸化膜除去及びはんだのぬれ性向上の作用がより効果的に発揮される。
【0017】
また、はんだ付けを行った際に、合金から抜けきれずに残った活性剤が、ガス化する前にハイドロタルサイト中に取り込まれるためボイドが少なくなる。
【0018】
また、残渣としてフラックス中に残ったイオンを取り込むため、接合後の電気的信頼性も高くなるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
ハイドロタルサイトは、その構造が一般式[M2+3+(OH)2m+2n]Xn/zz−・bHOで表される化合物である。ハイドロタルサイトは、天然にも産出されるものであるが、簡単に合成もできる。ここでは、天然に産出されるハイドロタルサイトを天然ハイドロタルサイトと呼び、合成されたハイドロタルサイトはハイドロタルサイト様化合物と呼ぶ。両者をまとめてハイドロタルサイトと呼ぶ。ハイドロタルサイト様化合物は、基本的に水酸化物であるので、2価と3価の金属塩水溶液と、アルカリ性溶液を混合することにより沈殿物として生成できる。これは共沈法と呼ばれている。
【0020】
ハイドロタルサイトの構造の主骨格は[M2+3+(OH)2m+2n]であり、シート状の金属水酸化物である。この主骨格の部分をホストと呼ぶ。シート状のホストの間の層間には陰イオンと水分子が入る。これがXn/zz−・bHOの部分であり、ゲストと呼ばれる。このようにハイドロタルサイト様化合物は、主骨格が複水酸化物の層状であることから、層状複水酸化物(Layered Double Hydroxide:LDH)とも呼ばれる。Xn/zz−は、アニオンであり、少なくとも一塩基酸、二塩基酸、ハロゲン系化合物のいずれかから発生されたものである。もちろん、複数種類からのアニオンが含まれていてもよい。また、アニオンに塩素イオン、硫酸イオン、硝酸イオンが含まれていてもよい。
【0021】
主骨格を構成する水酸化物の層は、2価の金属イオンの一部が3価の金属イオンに置き換えられている構造をしているため、全体としては正の電荷を帯びている。そのため、3価の金属イオンが多く置換されている程主骨格の層の電荷密度は大きくなり、電気的なバランスは陰イオンゲストによって保たれている。つまり、ハイドロタルサイトは、電気的に負となる物質を容易にゲストとして層間に取り込むという性質を有する。
【0022】
言い換えると、ハイドロタルサイトの様な層状化合物は陰イオン交換性を有しており、様々な分子やイオンを層間にインターカレートする。そして、電荷密度の高いイオンほどインターカレートされ易い傾向にある。
【0023】
なお、上記の説明のようにハイドロタルサイトはホスト中の電荷バランスが正に傾いているために、陰イオンを容易に取り込む。従って、主骨格中のM2+及びM3+は、必ずしも2価と3価である必要はない。実際、ハイドロタルサイト様化合物には、1価と3価、2価と4価の組み合わせによるものも合成されているという報告がある。本発明はこれらのハイドロタルサイト様化合物を除外するものではない。例えば1価と3価の正イオンの組み合わせとしては、Li(1価)とAl(3価)を使った例がある。
【0024】
従って、本発明で用いることのできるハイドロタルサイト様化合物は、価数の異なる金属イオンが含まれる層状の水酸化物である。より詳しくは層状複水酸化物である。価数の異なる金属イオンは3つ以上であってもよく、例えば、1価、2価、3価や、2価、3価、4価といった組み合わせでも可能である。例えば金属イオンが2つの場合を、一般式で表現すると式2のようになる。
[Mα+β+(OH)2m+2n]Xn/zz−・bHO (2)
ここで、αとβは整数であって、同じ値ではなく、
α+は、少なくとも1種類のα価の金属イオンであり、
β+は、少なくとも1種類のβ価の金属イオンであり、
m、nは実数であり、
n/zz−はz価アニオンであり、
bは実数である。
【0025】
もちろんMα+とMβ+は、αが2としてMg2+とCa2+、βが3としてAl3+とFe3+のように1つの価数の金属イオンは、複数種類の金属イオンから構成されていてもよい。また金属イオンが3種類の場合は、Mα+β+γ+のように価数のことなる金属イオンの数が増える。なお、本明細書で金属とは、H(水素)、B(ホウ素)、C(炭素)、N(窒素)、O(酸素)、F(フッ素)、S(イオウ)、Cl(塩素)、Br(臭素)と不活性ガスを除く元素をいう。
【0026】
また、フラックス中においてゲストとして取り込まれた陰イオンは、加熱されることで脱離される。そして、冷却されるとまた主骨格の層間に取り込まれる。ハイドロタルサイト様化合物は、陰イオンゲストに対して、独特の熱分解挙動を有する。
【0027】
本発明は、このような特性を有するハイドロタルサイトをソルダペーストのフラックスに用いることで上記課題を解決しようとするものである。
【0028】
すなわち、活性剤として使われる有機酸やハロゲン化物は、その骨格中に極性部を持っているため、陰イオンゲストとして容易に主骨格の層間にインターカレートさせることができる。このように取り込まれた活性剤は、ソルダペースト中の合金とは反応を起こさない。従って、ソルダペーストが、粘度の上昇やチキソトロピーの上昇といった変化を起こすことなく、経時的に安定している。
【0029】
一方、加熱されペースト中の合金が溶融すると活性剤が層間から脱離し、合金の酸化膜を除去し、はんだ付け時に本来の役割を発揮できる。しかも、合金が固まる際には、また陰イオンとして主骨格の間に取り込むため、ボイドの発生を防ぎ、残渣として残っても電気的信頼性を低下させる原因にもならない。
【0030】
ソルダペーストは、はんだ合金粉末とフラックスからなり、フラックスは一般には樹脂および溶剤、を必須成分として含み、更に要求特性において活性剤、チキソ剤、酸化防止剤、界面活性剤、消泡剤、腐食防止剤などを含んでいる。なお、やに入りはんだのフラックスの場合は、溶剤を含まない場合もある。
【0031】
本発明のフラックスは、少なくともベース樹脂と活性剤と価数の異なる金属イオンとヒドロキシ基からなり層構造を有する水酸化物、より詳しくは層状複水酸化物を有するものであり、その他溶媒や添加物を含んでいてもよい。金属イオンの価数は、例えば2価と3価の組み合わせが多いが、他の組み合わせであってもよい。なお、上記水酸化物はハイドロタルサイトを含む。
【0032】
本発明で利用可能なハイドロタルサイトは、天然ハイドロタルサイトとして、ハイドロタルサイトMgAl(OH)16CO・4HOおよびスチチタイト(Stichtite)MgCr(OH)16CO・4HO、ピロオーライト(Pyroaurite)MgFe(III)(OH)16CO・4HO、デサウテルサイト(Desautelsite)MgMn(III)(OH)16CO・4HO、などが挙げられる。なお、「III」は3価であることを示す。
【0033】
また、合成物であるハイドロタルサイト様化合物は、2価と3価の組み合わせで説明すると、一般式[M2+3+(OH)2m+2n]Xn/zz−・bHOで表される化合物である。ここで、M2+は、Mg(マグネシウム)、Ca(カルシウム)、Sr(ストロンチウム)、Cu(銅)、Ba(バリウム)、Zn(亜鉛)、Cd(カドミウム)、Pb(鉛)、Ni(ニッケル)、Zr(ジルコン)、Co(コバルト)、Fe(鉄)、Mn(マンガン)およびSn(錫)から選択される少なくとも1つの2価の金属イオンであり、複数種の金属イオンが選ばれてもよい。M3+はAl(アルミニウム)、Fe(鉄)、Cr(クロム)、Ga(ガリウム)、Ni(ニッケル)、Co(コバルト)、Mn(マンガン)、V(バナジウム)、Ti(チタン)、In(インジウム)から選択される少なくとも1つの3価の金属イオンであり、m、nは実数であり、Xn/zz−はz価アニオンである。従って、zは通常1〜3の整数をとる。
【0034】
m、nはm:nが8:1〜3:2の範囲が好ましく、さらに5:1〜2:1の範囲がより好ましい。nが上記範囲より外れると、インターカレートされるゲストとの相性が変化し、適切にインターカレートされなくなるからである。
【0035】
具体的に用いることのできるハイドロタルサイト様化合物を例示すると、MgAl(OH)16CO・4HO、Mg4.5Al(OH)13CO・3.5HO、Mg4.5Al(OH)13CO、MgAl(OH)12CO・3.5HO、MgAl(OH)14CO・4HO、MgAl(OH)10CO・1.7HO、MgZnAl(OH)12CO・wHO、MgZnAl(OH)12CO、MgAl(OH)12CO・3HO、Mg3.5Zn0.5Al(OH)12CO・3HO、が挙げられる。なお、wは実数である。また、ここに示したハイドロタルサイトは例示であって、これに限定されるものではない。
【0036】
ハイドロタルサイト様化合物は、フラックス中0.5〜10重量%、好ましくは1〜5重量%の範囲で用いられる。0.5重量%以下だと電気的信頼性に効果が無く、10%以上になると粘度の基礎値が高くなりすぎるため使用しにくい。粘度の基礎値が高いとは、フラックス中のフィラの割合が高くなり、粘度が高くなるということである。
【0037】
本発明のフラックスに利用できるベース樹脂としては、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン、これら変性ロジンおよびロジンエステルなどのロジン系樹脂、テルペン樹脂およびテルペンフェノール樹脂などのテルペン系樹脂、エポキシエステル樹脂が使用できる。ベース樹脂はフラックス中3〜60重量%、好ましくは5〜50重量%の範囲で用いられる。
【0038】
本発明で活性剤として用いられるものには、有機酸とハロゲン化物を含む。これらは有機酸だけ若しくはハロゲン化物だけで用いてもよいし、有機酸とハロゲン化物の両方を併用してもよい。これらは、フラックス中に0.01〜20重量%、好ましくは0.1〜10重量%の範囲で用いられる。活性剤は特に液体である必要はなく、固形物であってもよい。以下に本発明のフラックスに用いることのできる有機酸とハロゲン化物の具体例のいくつかを例示する。しかし、本発明に用いることのできる活性剤は、これらの例示に限定されるものではない。
【0039】
本発明で用いられる有機酸としては、カルボン酸、スルホン酸、スルフィン酸、フェノール、エノール、チオール、酸イミド、オキシム、スルホンアミドなどの酸性の官能基をもつ化合物が挙げられる。
【0040】
カルボン酸としては、炭素数1〜24の炭素を有するアシル基を有するものが使用できる。具体的には、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸などの炭素数1〜21の鎖状炭化水素基を有するカルボン酸、アクリル酸、メタクリル酸などの炭素数2〜10の不飽和炭化水素基を有するカルボン酸、安息香酸などのベンゾイル基を有するカルボン酸などの一塩基酸や、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカ二酸、エイコサ二酸などの炭素数2〜20の鎖状炭化水素基を有する二塩基酸、マレイン酸、フマル酸などの炭素数2〜10の不飽和炭化水素基を有する二塩基酸、フタル酸などのフタロイル基を有する二塩基酸などが挙げられる。
【0041】
スルホン酸は、一般式RSOHで表され、Rが芳香族である芳香族スルホン酸とRが脂肪族である脂肪族スルホン酸のいずれをも含む。スルフィン酸は、一般式RSOHで表され、Rが芳香族である芳香族スルフィン酸とRが脂肪族である脂肪族スルフィン酸のいずれをも含む。フェノールは、ベンゼン核などの芳香族性の環の水素がヒドロキシ基で置換された化合物である。チオールは、一般式RSHで表される化合物で、メタンチオール、エタンチオールなどの鎖状脂肪族チオール、シクロヘキサンチオールなどの環状鎖状脂肪族チオール、メルカプト安息香酸などの芳香族チオールのいずれをも含む。スルホンアミドは、RSONHまたはSONHRで表される化合物である。なお、Sはイオウ、Oは酸素、Hは水素である。
【0042】
ハロゲン化物としては、炭化水素の水素がフッ素、塩素、臭素、ヨウ素のいずれかのハロゲンで置換された有機ハロゲン化物と、アミン、ピリジン、キノリンなどの塩基性の有機窒素化合物と、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素のいずれかのハロゲン化水素とが塩を形成したものの、いずれも含む。有機ハロゲン化物としては、例えばトランス−2,3−ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオール、テトラブロモメタン、2,3−ジブロモプロピオン酸、2,3−ジブロモ−1−プロパノール、2,2−ビス(ブロモメチル)−1,3−プロパンジオール、テトラブロモビスフェノールA、デカブロモジフェニルオキサイドなどが挙げられ、有機窒素化合物とハロゲン化水素との塩としては、例えばジフェニルグアニジン・HBr、シクロヘキシルアミン・HBr、ジエチルシクロヘキシルアミン・HBr、ジエチルアミン・HBr、イソプロピルアミン・HBrなどが挙げられる。なお、前記の表記中で、例えばジフェニルグアニジン・HBrは、ジフェニルグアニジンの臭化水素塩を表す。なお、上記に示した有機酸およびハロゲン化物は、例示でありこれらに限定されるものではない。
【0043】
また、溶剤として用いることができるのは、へキシレングリコール、ブチルグリコール、ヘキシルジグリコール、ターピネオールなどの通常のフラックスに使用されるものが使用できる。溶剤はフラックス中に20〜80重量%、好ましくは30〜60重量%の範囲で用いられる。
【0044】
また、チキソ剤として用いることができるのは、モノアマイド系、ビスアマイド系、置換尿素系のものを用いることができる。よく使われるのは硬化ヒマシ油などである。チキソ剤はフラックス中に1〜20重量%、好ましくは5〜10重量%の範囲で用いられる。
【0045】
また、ソルダペーストとする際に用いることのできるはんだ粉末合金は、錫−銀系、錫−銅系、錫−銀−銅系、錫−ビスマス系、錫−アンチモン系、錫−インジウム系、錫−亜鉛系などの無鉛はんだがある。
【0046】
本発明のフラックスは、ベース樹脂、チキソ剤、活性剤、ハイドロタルサイトを溶剤中に投入し、加熱攪拌溶解した後冷却して本発明のフラックスとする。材料を投入する際には他の添加物を入れてもよい。また、活性剤としては有機酸とハロゲン化物のいずれか一方若しくは両方共に用いてもよい。また、他の活性剤を投入してもよい。
【0047】
また、ハイドロタルサイトとハロゲン化物および有機酸を予め混ぜ合わせておき、ハイドロタルサイトのゲストとしてこれらをインターカレートさせておいたものを作成しておくこともできる。例えば、インターカレート処理用の溶剤中に活性剤となるハロゲン化物および有機酸に溶かし、そこにハイドロタルサイトを投入し攪拌する。このようにすることでハイドロタルサイトに活性剤がインターカレートされる。なお、活性剤はハロゲン化物と有機酸の両方を用いてもよいし、どちらか一方を用いてもよい。また、インターカレートする際に熱を加えるなどの処理を行ってもよい。インターカレート処理用の溶剤は、活性剤を溶かせる溶剤であれば特に限定はない。
【0048】
その後ろ過することによって活性剤がインターカレートされたハイドロタルサイトを回収する。このようなハイドロタルサイトを用いてソルダペーストを作製すると、インターカレートされずに残る有機酸やハロゲン化物が少なくなり、ソルダペーストの安定性はさらに増す。このように活性剤をインターカレートされたハイドロタルサイトは、機能性活性剤と言える。
【0049】
このようにして作成したフラックスとはんだ粉末合金を混合機で攪拌し分散する。以上のようにして本発明のソルダペーストを得ることができる。
【0050】
得られたソルダペーストは以下のような項目で試験評価を行う。ペーストの粘度をJISZ3284付属書6のスパイラル粘度計(10回転)により、電気的信頼性をJISZ3284付属書3、14により、熱だれ試験をJISZ3284付属書8により、評価した。ボイドの試験は、ソルダペーストを印刷した試験基板にQFP(Quad Flat Package)を載せ、リフローした後、X線透過装置でボイド率(面積率)を観察した。
【0051】
上記試験方法について、具体的に説明しておく。ペーストの粘度は、JISZ3284付属書6のスパイラル粘度計(10回転)にて評価した。ここで用いるスパイラル方式粘度計は、外筒が回転し、スパイラル溝のある内筒が静止している構造をもち、その内外筒間の空げきやスパイラル溝に詰まっているソルダペーストが、外筒の回転に従い導入口から進入し、溝をずり上がって排出口から排出される。このとき、ソルダペーストが受けるずり応力を内筒が受けるトルクとして検出し、外筒の回転数から粘度特性を求める。
【0052】
測定手順は以下の通りである。
(1)ソルダペーストを室温又は摂氏25度で2〜3時間放置する。
(2)ソルダペースト容器のふたをあけ、スパチュラで空気の混入を避けるようにして丁寧に1〜2分かき混ぜる。
(3)ソルダペースト容器を恒温槽に入れる。
(4)スパイラル粘度計の回転速度を10rpm(rounds per minute)に調節し、温度を摂氏25度にセットし、約3分後ロータに吸引されたソルダペーストが排出口から現れたことを確認後、ロータを停止させ、温度一定になるまで待つ。
(5)温度調節完了後、10rpmに調節し、3分後の粘度値を読み取る。
【0053】
電気的信頼性をJISZ3284付属書3、14により絶縁抵抗試験で行う。絶縁試験には、所定のくし型電極基盤を用いる。これは、ガラス布基材エポキシ樹脂銅張積層板であり、21本のくし型電極の間に20本のくし型電極を重ねた形状をしている。電極が重なっている部分では、導体幅0.318mm、導体間隔0.318mm、重ね代15.75mmとなっている。
【0054】
このくし型電極の重ね代の電極部分に電極のパターンに合わせてスリット状に加工した100μmの厚さのメタル板を使用し、ソルダペーストを厚さ約100μmで均一に印刷する。
【0055】
摂氏150度に設定した乾燥器中に2分間入れ、続いて摂氏260度に保持したホットプレートでソルダペーストを30秒間溶融させる(はんだ溶融後は15秒以上保持する)。放冷後、これを試験片とする。
【0056】
電極への配線は、同軸ケーブルを用い、恒温恒湿器に入れる前に試験電圧DC100V(直流100ボルト)で各端子間の絶縁抵抗値を絶縁抵抗計を用いて測定する。
【0057】
試験片を凝集した水滴がくし型パターン面におちないように配慮して、温度摂氏85±2度、相対湿度85〜90%の環境の恒温恒湿器に入れる。投入後48時間と1000時間後に、試験片を槽内に入れたままでDC100Vで絶縁抵抗を測定する。
【0058】
マイグレーション試験はJISZ3284付属書14により行った。試験片の作成、電極の配線、恒温恒湿器の条件は電気的信頼性の場合と同じである。恒温恒湿器に試験片を投入後、電極間に45〜50Vの電圧を印加する。
【0059】
そのまま放置し、1000時間後に恒温恒湿器から取り出し、拡大鏡(20倍以上)でマイグレーションを確認する。なおここで、マイグレーションとは、エレクトロマイグレーションのことであり、電界の影響で、金属成分が非金属媒体の上や中を横切って移動する現象である。従って、くし型電極間のはんだ部分で、動いた部分の有無を拡大鏡で確認する。後述する実施例では、DC100Vで絶縁抵抗も測定した。
【0060】
熱だれ試験はJISZ3284付属書8により行う。すなわち、一定の印刷孔パターンを有するステンシルを用いてソルダペーストを印刷し、過熱した際にどの程度の間隔まで横に広がらないかという観点で評価する。
【0061】
ステンシルのパターンは、以下の通りである。孔の大きさは3.0×0.7mmである。この孔が0.2mmから1.2mmまで0.1mmステップで配置されている。具体的には、最初の孔があると、0.2mmおいてその隣に2番目の孔があり、次は0.3mmおいて3番目の孔、以下孔と孔の間隔が順次広がってゆく。間隔が0.2mmから1.2mmまで11個あるので、孔は全部で12個開いている。ステンシルにはこの列が4列ある。また、厚みは0.20±0.001mmでステンレス鋼板である。
【0062】
まず、研磨紙で、銅張積層板を磨き、イソプロピルアルコールで洗浄する。次に銅張積層板上にステンシルを置き、適切なスキージを用いてソルダペーストを印刷する。その後ステンシルを取り除く。空気循環式加熱炉中で、印刷された試験板を、摂氏150度で1分間加熱する。今回の場合は、はんだが錫−銀−銅系(Sn96.5重量%、Ag3.0重量%、Cu0.5重量%)であるので、加熱温度は摂氏150度である。しかし、より厳しい試験を行うために後述の実施例では摂氏200度で行った。
【0063】
4列のパターンのうち、印刷されたソルダペーストすべてが一体にならない最小間隔を熱だれの値とする。例えば熱だれの値が0.2であるとは、ソルダペーストを0.2mm間隔で印刷しても、加熱によって隣同士接触することがないことを意味している。
【実施例1】
【0064】
以下、本発明のフラックスを用いたソルダペーストの実施サンプルおよび比較サンプルを示す。本発明のフラックスは、一般的なソルダペーストの調製法を用いて作ることができる。
【0065】
フラックス100重量%に対して、ベース樹脂としてアクリル酸変性ロジンを50重量%、溶剤としてヘキシルジグリコールを30重量%、硬化ヒマシ油を10重量%、ハロゲン系活性剤を3重量%、有機酸を2重量%、ハイドロタルサイトを5重量%とした。これらの材料をヘキシルジグリコール中に順次投入し、加熱攪拌しながら溶解した。攪拌温度は、摂氏120〜200度である。溶解後、冷却してフラックスとした。なお、ハロゲン系活性剤とはハロゲン化物を少なくとも1種類は含む活性剤をいう。
【0066】
用いた有機酸は、グルタル酸、コハク酸、アジピン酸の3種類であった。また、用いたハイドロタルサイト様化合物は、MgAl(OH)16CO・4HO(以下Mg−Al系HTと記す)、MgAl(OH)12CO・3.5HO(以下Mg−Al系HTと記す)、MgAl(OH)14CO・4HO(以下Mg−Al系HTと記す)、MgZnAl(OH)12CO・wHO(以下Mg−Zn−Al系HTと記す)の4種類である。
【0067】
なお、比較例としてハイドロタルサイトが含まれないフラックスも作成した。この場合、ハイドロタルサイト様化合物の組成分は、溶剤であるヘキシルジグリコールの量を増加させることで補充した。
【0068】
次にこれらのフラックスを用いてソルダペーストを作成した。使用した粉末合金は、錫−銀−銅系(Sn96.5重量%、Ag3.0重量%、Cu0.5重量%)で粒子径25〜38μmである。
【0069】
この合金粉末88.5重量%と上記のフラックス11.5重量%を、一般のソルダペーストの調製に使用される混合機で攪拌混合してサンプルとして調製した。本発明のフラックスを用いたサンプルは実施サンプル、比較例としてハイドロタルサイトを入れなかったサンプルは比較サンプルとする。
【0070】
調製したソルダペーストは、ペーストの粘度、電気的信頼性、マイグレーション、熱だれ、ボイドについて評価を行った。それぞれのサンプルの組成と、評価結果を表1に示す。
【表1】

【0071】
実施サンプル1から6が本願発明のフラックスを含有した本願発明のソルダペーストである。実施サンプル1から4は、ハロゲン系活性剤と有機酸(グルタル酸)を固定し、ハイドロタルサイト様化合物の種類を、Mg−Al系HT、Mg−Al系HT、Mg−Al系HT、Mg−Zn−Al系HTにしたものである。実施サンプル5と6は、有機酸とハイドロタルサイト様化合物をそれぞれコハク酸とMg−Al系HT、アジピン酸とMg−Zn−Al系HTとの組み合わせにしたものである。比較サンプル1から3は、ハイドロタルサイトを含まない従来のフラックスを用いたソルダペーストである。以後実施サンプル1から6をまとめて実施サンプル、比較サンプル1から3をまとめて比較サンプルと呼ぶ場合もある。
【0072】
絶縁抵抗を見ると、実施サンプルは、48時間後も1000時間後も8.0×10オームから9.0×10オームと、ほとんど変化がない。これに対して比較サンプルは、48時間では1.0×10オーム以下になり、1000時間後には再び1.0×10オーム以上の抵抗値に戻っている。しかし、それでも実施サンプルまでには、高くならない。比較サンプルのこのような挙動は、残渣中のハロゲン系活性剤若しくは有機酸の影響によるものであると考えられる。つまり、本実施サンプルは残渣中のフラックスが電気特性へ影響を及ぼしていないということを示している。
【0073】
マイグレーションの試験では、絶縁抵抗も同時に測定しており、絶縁抵抗値が1.0×10オーム(Ω)以下であれば顕微鏡観察でマイグレーションが発見できなくとも、マイグレーションの兆候ありと判断する。比較サンプルは48時間経過後にマイグレーションの兆候が現れる。しかし、1000時間ではマイグレーションに関しては兆候はなくなっていた。実施サンプルは48時間および1000時間でも安定してマイグレーションはなく、もちろん兆候もない。なお、実施サンプルも比較サンプルも観測されたマイグレーションはなかった。表1中には括弧で記載した。
【0074】
粘度は、製造初期と1ヶ月後の測定値を示した。保存はボトルに入れ、蓋をして、摂氏35度下で保存した。製造初期では、どのサンプルも210(Pa・s)程度と同じくらいである。しかし、1ヶ月後を比較すると、実施サンプル1から6はほとんど粘度に変化がないのに対して、比較サンプルはどれも2倍弱に増加している。
【0075】
また、ボイド率の比較では、実施サンプルはどれも10%前後であるのに対して、比較サンプルは45%前後にも上がる。すなわち、実施サンプルのボイド率は極めて低い。このように本発明のフラックスを用いることで、保存性、ボイド率、電気的信頼性といった特性が格段に上昇したソルダペーストを得ることができる。
【0076】
なお、ハイドロタルサイトがソルダペーストに含まれるかどうかについて、以下のようにして確認することができる。ソルダペーストを溶剤に浸し、はんだを加熱溶解させる。溶解後、植物性油あるいは動物性油を投入し、そこへ有機酸を投入し加熱した後、沈殿物と上澄みにわける。ソルダペーストにハイドロタルサイトが含まれていた場合は、この沈殿物に含まれる。
【0077】
ハイドロタルサイト様化合物は、様々な元素から作ることができるが、特にMgとAlを用いると製造しやすい。これらの物質はハイドロタルサイト様化合物以外の成分としてはソルダペーストに含まれていないか、若しくは含まれていても微量である。従って、上記のようにして得た沈殿物にMgやAlが比較的多量に含まれている場合は、ハイドロタルサイト由来であると考えられる。すなわち、上記のようにして得られた沈殿物中にMgやAlといった元素を検出できればそのソルダペーストにはハイドロタルサイトが含有されていると推認することができる。
【0078】
なお、沈殿物に含まれる元素の検出は、X線回折法、波長分散型蛍光X線法、質量分散型蛍光X線法等の方法によって検出することが可能である。

【実施例2】
【0079】
本発明のフラックスは、ソルダペーストだけでなく、やに入りはんだにも利用することができる。やに入りはんだとは、はんだの中にフラックスを入れたはんだである。やに入りはんだに使用する際には、溶剤は用いないか、用いてもわずかの量である。本実施例では、以下の組成でやに入りはんだ用フラックスを作製した。
【0080】
フラックス100重量%に対して、ベース樹脂としてアクリル酸変性ロジンを90重量%、ハロゲン系活性剤を3重量%、有機酸を2重量%、ハイドロタルサイトを5重量%とした。これらの材料を攪拌器に順次投入し、加熱攪拌しながら溶解した。攪拌温度は、摂氏120〜200度である。
【0081】
用いた有機酸は、グルタル酸、コハク酸、アジピン酸の3種類であった。また、用いたハイドロタルサイト様化合物は、MgAl(OH)16CO・4HO(以下Mg−Al系HTと記す)、MgAl(OH)12CO・3.5HO(以下Mg−Al系HTと記す)、MgAl(OH)14CO・4HO(以下Mg−Al系HTと記す)、MgZnAl(OH)12CO・wHO(以下Mg−Zn−Al系HTと記す)の4種類である。
【0082】
なお、比較例としてハイドロタルサイトが含まれないフラックスも作成した。この場合、ハイドロタルサイト様化合物の組成分はベース樹脂であるアクリル酸変性ロジンの量を増加させることで補充した。
【0083】
次にこれらのフラックスを用いてやに入りはんだを作成した。使用した合金は、錫−銀−銅系(Sn96.5重量%、Ag3.0重量%、Cu0.5重量%)である。
【0084】
この合金中に上記のフラックスを挟み込み、円柱状に引き伸ばしながら直径0.8mmのやに入りはんだとした。このとき、中心にあるフラックはおよそ直径が0.3mm程度になっている。
【0085】
作成したやに入りはんだは、本願のフラックを用いた実施サンプル11から16および比較サンプル11から13とし、電気的信頼性について評価を行った。各サンプルの組成と結果を表2に示す。
【表2】

【0086】
実施サンプル11から16が本発明のフラックスを含有した本発明のやに入りはんだである。実施サンプル11から14は、ハロゲン系活性剤と有機酸(グルタル酸)を固定し、ハイドロタルサイト様化合物の種類を、Mg−Al系HT、Mg−Al系HT、Mg−Al系HT、Mg−Zn−Al系HTにしたものである。実施サンプル15と16は、有機酸とハイドロタルサイト様化合物をそれぞれコハク酸とMg−Al系HT、アジピン酸とMg−Zn−Al系HTとの組み合わせにしたものである。比較サンプル11から13は、ハイドロタルサイトを含まない従来のフラックスを用いたやに入りはんだである。
【0087】
本発明のやに入りはんだは、48時間後および1000時間後も8.0×10から9.1×10オームと安定して高い絶縁抵抗を示す。一方比較例サンプルでは、48時間後には1.0×10オーム以下になり、1000時間後には再度1.0×10オーム以上になり、絶縁抵抗が変化している。これは、実施例1の場合と同様に、本発明のフラックスは、はんだ付け後に活性剤をインターカレートし、接着後の合金との反応を防止するので、ソルダペーストだけでなく、やに入りはんだとして使用しても、電気的信頼性に効果がある。
【0088】
また、マイグレーション試験も行った。実施例1のソルダペーストの場合同様、実施サンプルおよび比較サンプルのどちらにも顕微鏡観察によるマイグレーションは観測されなかった。しかし、同時に測定した抵抗値では、実施サンプルが安定して1×10オーム以上の抵抗値を示しているのに対して、比較サンプルでは10オーム以下になる期間もあり、実施サンプルほどの安定性はないのが分かる。
【0089】
なお、本実施例では、フラックスの周囲にはんだを同心円状に配したが、やに入りはんだの断面中の複数の箇所にフラックスを配する構造でもよいし、またフラックスの一部が合金からはみでていてもよい。
【0090】
以上のように本実施のフラックスを用いたやに入りはんだは、接着後の活性剤と合金との反応を防止するので、電気的信頼性に優れたはんだによる接着を可能にする。





【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース樹脂と、活性剤と、価数の異なる金属イオンとヒドロキシ基からなり層構造を有する水酸化物を含むフラックス。
【請求項2】
前記金属イオンは、MgイオンとAlイオンである請求項1記載のフラックス。
【請求項3】
前記活性剤は、少なくとも有機酸若しくはハロゲン化物のいずれかを含む請求項1に記載のフラックス。
【請求項4】
前記水酸化物はハイドロタルサイトである請求項1若しくは3のいずれかに記載のフラックス。
【請求項5】
前記ハイドロタルサイトは、式1で表される請求項4に記載のフラックス。
[M2+3+(OH)2m+2n]Xn/zz−・bHO (1)
2+は、Mg、Ca、Sr、Cu、Ba、Zn、Cd、Pb、Ni、Zr、Co、Fe、MnおよびSnから選択される少なくとも1つの2価の金属イオンであり、
3+はAl、Fe、Cr、Ga、Ni、Co、Mn、V、Ti、Inから選択される少なくとも1つの3価の金属イオンであり、
m、nは実数であり、
n/zz−はz価アニオンであり、
bは実数である。
【請求項6】
前記アニオン(Xn/zz−)を発生する酸は、少なくとも一塩基酸、二塩基酸、ハロゲン系化合物のいずれかを含む請求項5のフラックス。
【請求項7】
前記アニオン(Xn/zz−)は炭酸イオンである請求項5のフラックス。
【請求項8】
さらに溶剤を含む請求項1乃至7のいずれか1つに記載のフラックス。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1つに記載のフラックスと、はんだ粉末を含むソルダペースト。
【請求項10】
請求項1乃至7のいずれか1つに記載のフラックスの周囲にはんだ合金を配したやに入りはんだ。