説明

ばら物の船積み装置

【課題】電動機が作動していない状態においてもシュート詰まりを検出することができる、安価でメンテナンスが容易なシュート詰まり検出手段を備えたばら物の船積み装置を提供する。
【解決手段】走行する機体に俯仰可能に支持されたブームと、ばら物を該ブームの先端部まで搬送するブームコンベアと、ブームの先端部から下方に向けて取り付けられ、ブームコンベアによって搬送されたばら物を落下させるシュートとを有するばら物の船積み装置において、ブームを俯仰させる電動シリンダ17のシリンダチューブ22に内装され、電動シリンダ17のロッド23の後退に伴ってロッド23に反力を負荷する反力部材26と、反力部材26の圧縮量に応じてスライドするストライカー29と、反力部材26の圧縮量が設定量を超えると、ストライカー29に当接して作動し、ブームコンベアを停止するリミットスイッチ30とを備えるシュート詰まり検出手段を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石灰石や鉱石等のばら物の船積みに使用される船積み装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、石灰石や鉱石等のばら物の船積みに使用されるシップローダやスタッカー等の船積み装置には、ばら物を装入するシュートがブーム先端部に取り付けられている。このシュートには種々のばら物が装入されるが、付着性のあるばら物や、水分が多く付着しやすいばら物が装入された場合、これらばら物がシュートに付着してシュート詰まりを起こすことがある。シュート詰まりが発生すると、ブームを支持している機体がバランスをくずし、最悪の場合、機体の損傷や転倒等の重大な事故につながるおそれがある。
【0003】
このような事故を防止するため、従来は、ブーム俯仰用の電動機に過負荷検出装置を取り付け、電動機の過負荷を検知することによりブームに作用する異常な負荷を検出していた。しかし、この方法の場合、電動機が作動していない状態においてブームに作用する過負荷を検出できないという問題があった。
【0004】
そこで、特許文献1では、ブームを支持する支持ピンにロードセルを組み込んだ船積機が開示されている。この船積機では、過荷重(過負荷)がブームに負荷されると、支持ピンに組み込まれたロードセルが過荷重を検知し、駆動装置に信号を出力することにより船積機の全動作が停止するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭62−83011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の船積機のように、過荷重検出装置としてロードセルを使用した場合、基準点(ゼロ点)を設けるためにロードセルの初期設定が必要となるだけでなく、基準点にズレが生じていないか定期的に確認する必要がありメンテナンスに手間が掛かるという問題がある。また、ロードセル自体が高価な精密機器であるため、屋外や海上桟橋等の過酷な環境下での使用には十分な配慮が必要となる。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、電動機が作動していない状態においてもシュート詰まりを検出することができる、安価でメンテナンスが容易なシュート詰まり検出手段を備えたばら物の船積み装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、走行する機体に俯仰可能に支持されたブームと、前記ブームに沿って設置され、ばら物を該ブームの先端部まで搬送するブームコンベアと、前記ブームの先端部から下方に向けて取り付けられ、該ブームコンベアによって搬送されたばら物を落下させるシュートとを有するばら物の船積み装置において、
前記ブームを俯仰させる電動シリンダのシリンダチューブに内装され、該電動シリンダのロッドの後退に伴って該ロッドに反力を負荷する反力部材と、前記反力部材の圧縮量に応じてスライドするストライカーと、前記反力部材の圧縮量が予め設定した量を超えると、前記ストライカーに当接して作動し、前記ブームコンベアを停止するリミットスイッチとを備えるシュート詰まり検出手段を有することを特徴としている。
【0009】
本発明では、電動機が作動していない状態において、シュート詰まりに起因する過荷重がブームに負荷された場合、電動シリンダのロッドが反力部材から反力を受けつつ徐々に後退する。一方、ロッドの後退に伴って反力部材は圧縮され、反力部材の圧縮量が予め設定した量を超えると、反力部材の圧縮量に応じてスライドするストライカーがリミットスイッチに当接する。これにより、リミットスイッチが作動し、ブームコンベアが停止する。
【0010】
また、本発明に係るばら物の船積み装置では、回転羽根を有し、該回転羽根の回転動作が阻害されると、前記ブームコンベアを停止する信号を出力するレベルセンサを前記シュート内に設置してもよい。
当該構成はフェイルセーフ機構を実現するものである。上記リミットスイッチに加えて、レベルセンサをシュート内に設置することで、リミットスイッチが故障等で作動しなかった場合でも、レベルセンサによりシュート詰まりを検知してブームコンベアを停止することができる。
【0011】
また、本発明に係るばら物の船積み装置では、前記レベルセンサが、前記シュートの上部と下部にそれぞれ設置されていることを好適とする。
当該構成では、シュート下部に設置したレベルセンサが故障等で作動しなかった場合でも、シュート上部にレベルセンサを設置しているので、確実にシュート詰まりを検知してブームコンベアを停止することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るばら物の船積み装置では、電動機が作動していない状態において、シュート詰まりに起因する過荷重がブームに負荷された場合、電動シリンダのロッドの後退に伴ってスライドするストライカーがリミットスイッチに当接してリミットスイッチが作動し、ブームコンベアが停止する。そのため、電動機が作動していない状態においてもシュート詰まりを検出することができる。
また、シュート詰まり検出手段が、電動シリンダに付随するストライカーとリミットスイッチというシンプルな構成なので、安価でメンテナンスが容易であると共に、屋外や海上桟橋等の過酷な環境下でも使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施の形態に係るばら物の船積み装置を側面から見た模式図である。
【図2】同ばら物の船積み装置に使用されている電動シリンダを正面から見た模式図である。
【図3】電動シリンダの機構を説明するための模式図であり、(A)は平常時、(B)は過荷重時を示している。
【図4】シュート部分の縦断面図である。
【図5】レベルセンサの詳細図である。
【図6】シュート詰まり検出手順を示したフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態に付き説明し、本発明の理解に供する。
【0015】
図1に、本発明の一実施の形態に係るばら物の船積み装置10(以下では、単に「船積み装置」と呼ぶ。)の模式図を示す。船積み装置10は、軌道20上を走行する台車12及び台車12に搭載された旋回フレーム13から構成される機体11と、機体11に俯仰可能に支持されたブーム14と、ブーム14上に設置されたブームコンベア15とを備えている。ブーム14の中間部と旋回フレーム13とは一対の電動シリンダ17で連結され(図2参照)、電動シリンダ17を伸縮させることでブーム14を俯仰させる。また、ブーム14の先端部には、下方に向けて拡幅する筒状のシュート16が取り付けられている。
【0016】
鉄鉱石や石灰石などのばら物Sを船舶に積み込む際は、機体11(台車12)を軌道20に沿って移動させた後、旋回フレーム13と電動シリンダ17を作動させて、シュート16を船倉19位置に合わせる。移送すべきばら物Sは、図示しないトリッパーを介してブームコンベア15まで搬送された後、ブームコンベア15によってブーム14の先端部まで搬送され、シュート16を利用して船倉19内に装入される。
【0017】
図2に示すように、ブーム14を挟んで設置された一対の電動シリンダ17は電動機21を介して連結され、1台の電動機21により同期して作動するようになっている。各電動シリンダ17には、後述する反力部材26、ストライカー29、及びリミットスイッチ30を備え、シュート詰まりに起因するブーム14の過荷重を検出するシュート詰まり検出手段が設けられている。
図3(A)、(B)に、電動シリンダ17の機構を説明するための模式図を示す。電動シリンダ17は、後端が閉塞された円筒状のシリンダチューブ22と、シリンダチューブ22に挿入された状態で進退する円筒状のロッド23とを有している。ロッド23の後端部23aにはボールねじナット25が固着され、電動機21を作動させると、ボールねじナット25に螺合するねじ軸24が回転する。これに伴い、ボールねじナット25がねじ軸24上を摺動し、ボールねじナット25が固着されたロッド23がシリンダチューブ22に対して進退する。ボールねじは、ねじ軸とナット間でボールが転がり運動をするので高い効率が得られ、従来の滑りねじに比べて駆動トルクが減少する。また、回転運動を直線運動に変換するだけでなく、直線運動を回転運動に変換することも容易にできる。
なお、ロッド23がシリンダチューブ22から出る向きを「前」側、シリンダチューブ22に戻る向きを「後」側としている。
【0018】
本実施の形態では、シリンダチューブ22の後端部22aとボールねじナット25との間に、ロッド23の後退に伴ってロッド23に反力を負荷する反力部材26が内装されている。反力部材26は、ボールねじナット25に当接するリング状の一対の当接板27と、シリンダチューブ22の後端部22aと当接板27との間に介装された圧縮バネ28とから構成されている。当接板27と圧縮バネ28はねじ軸24にそれぞれ環装されており、ねじ軸24上を摺動する。ここで、圧縮バネ28としては、例えば皿バネやコイルバネなどの弾性バネを使用することができる。
【0019】
一対の当接板27には、シリンダチューブ22に形成された軸方向スリット(図示省略)から延出するストライカー29が固着されている。一方、シリンダチューブ22の外側には、ストライカー29に当接して作動し、ブームコンベア15を停止するリミットスイッチ30が、ストライカー29の後方に設置されている。
【0020】
電動機21が作動していない状態において、シュート詰まりに起因する過荷重がブーム14に負荷された場合、ねじ軸24の回転が拘束されていないため、電動シリンダ17のロッド23が後退し、ボールねじナット25を介して当接板27に当接する。そして、反力部材26(圧縮バネ28)から反力を受けつつ徐々に後退する。一方、当接板27の後退に伴って圧縮バネ28が圧縮され、圧縮バネ28の圧縮量(当接板27の移動量)に応じてストライカー29が後方にスライドする。圧縮バネ28の圧縮量が予め設定した量Xを超えると、ストライカー29がリミットスイッチ30に当接し、リミットスイッチ30が作動する。これにより、制御盤(図示省略)を介してブームコンベア15が停止する。
なお、設定量Xは、圧縮バネ28のバネ定数と過荷重値が決まれば、フックの法則を用いて算出することができる。
【0021】
図4は、シュート16の縦断面を示したものである。シュート16の上部16a内面及び下部16b内面には、シュート詰まりを検出するレベルセンサ18がそれぞれ設置されている。レベルセンサ18は、図5に示すように、シャフト33の先端部に装着された板状の回転羽根32と、シャフト33を駆動する駆動部31とを有している。
操業中、回転羽根32はシュート16内で常時回転している。シュート16内で堆積したばら物Sによって回転羽根32の回転が阻害され、回転羽根32の回転が停止すると、レベルセンサ18は、ブームコンベア15を停止する信号を出力する。これにより、制御盤を介してブームコンベア15が停止する。
【0022】
[シュート詰まり検出手順]
本実施の形態に係る船積み装置10のシュート詰まり検出手順について、図6を用いて説明する。
(1)シュート16の直下でばら物Sが堆積して成長し、シュート16の下部16bにおいてシュート詰まりが発生した場合、シュート16内の下部16bに設置されているレベルセンサ18の回転羽根32の回転動作が、堆積したばら物Sによって阻害され、回転羽根32の回転が停止する。これにより、シュート16内の下部16bに設置されているレベルセンサ18から、シュート詰まりを知らせる信号が制御盤へ送信される(ST1)。
(2)レベルセンサ18からの出力信号を受信した制御盤はブームコンベア15を停止する信号を出力し、ブームコンベア15が停止する(ST4)。
【0023】
(3)万一、シュート16内の下部16bに設置されているレベルセンサ18が故障等で作動しなかった場合は、シュート16内の堆積物は増加し続け、ブーム14先端部の荷重が異常に増加する。
(4)その結果、電動シリンダ17のロッド23が後退し、圧縮バネ28が圧縮される。圧縮バネ28の圧縮に伴ってストライカー29が後退し、ブーム14先端部の荷重増加が設定値以上になると、リミットスイッチ30にストライカー29が当接する。これにより、リミットスイッチ30が作動し、シュート詰まりを知らせる信号がリミットスイッチ30から制御盤へ送信される(ST2)。
(5)リミットスイッチ30からの出力信号を受信した制御盤はブームコンベア15を停止する信号を出力し、ブームコンベア15が停止する(ST4)。
【0024】
(6)万一、リミットスイッチ30が故障等で作動しなかった場合は、さらにシュート16内の堆積物が増加、成長を続ける。その結果、シュート16内で堆積したばら物Sによって、シュート16内の上部16aに設置されているレベルセンサ18の回転羽根32の回転動作が阻害され、回転羽根32の回転が停止する。これにより、シュート16内の上部16aに設置されているレベルセンサ18から、シュート詰まりを知らせる信号がレベルセンサ18から制御盤へ送信される(ST3)。
(7)レベルセンサ18からの出力信号を受信した制御盤はブームコンベア15を停止する信号を出力し、ブームコンベア15が停止する(ST4)。
なお、レベルセンサ18及びリミットスイッチ30に故障等が無く、シュート詰まりも発生していない場合は、ST1ステップに戻る。
【0025】
以上、本発明の一実施の形態について説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、上記実施の形態では、レベルセンサをシュートの上部と下部に設置しているが、シュートの中間部に設置してもよい。
【符号の説明】
【0026】
10:船積み装置(ばら物の船積み装置)、11:機体、12:台車、13:旋回フレーム、14:ブーム、15:ブームコンベア、16:シュート、16a:上部、16b:下部、17:電動シリンダ、18:レベルセンサ、19:船倉、20:軌道、21:電動機、22:シリンダチューブ、23:ロッド、22a、23a:後端部、24:ねじ軸、25:ボールねじナット、26:反力部材、27:当接板、28:圧縮バネ、29:ストライカー、30:リミットスイッチ、31:駆動部、32:回転羽根、33:シャフト、S:ばら物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行する機体に俯仰可能に支持されたブームと、前記ブームに沿って設置され、ばら物を該ブームの先端部まで搬送するブームコンベアと、前記ブームの先端部から下方に向けて取り付けられ、該ブームコンベアによって搬送されたばら物を落下させるシュートとを有するばら物の船積み装置において、
前記ブームを俯仰させる電動シリンダのシリンダチューブに内装され、該電動シリンダのロッドの後退に伴って該ロッドに反力を負荷する反力部材と、前記反力部材の圧縮量に応じてスライドするストライカーと、前記反力部材の圧縮量が予め設定した量を超えると、前記ストライカーに当接して作動し、前記ブームコンベアを停止するリミットスイッチとを備えるシュート詰まり検出手段を有することを特徴とするばら物の船積み装置。
【請求項2】
請求項1記載のばら物の船積み装置において、回転羽根を有し、該回転羽根の回転動作が阻害されると、前記ブームコンベアを停止する信号を出力するレベルセンサが前記シュート内に設置されていることを特徴とするばら物の船積み装置。
【請求項3】
請求項2記載のばら物の船積み装置において、前記レベルセンサが、前記シュートの上部と下部にそれぞれ設置されていることを特徴とするばら物の船積み装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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