説明

ひずみ測定装置及びそれを利用したひずみの測定方法

【課題】本発明は、ひずみ測定装置及びその測定方法に関し、特にカーボンナノチューブを利用したひずみ測定装置及びその測定方法に関するものである。
【解決手段】本発明のひずみ測定装置は、ひずみゲージと、挟持具と、横ひずみ記録装置と、データ処理装置と、を含む。前記ひずみ測定装置において、前記ひずみゲージは、基板と、該基板に設置されたカーボンナノチューブ膜状構造体を含む。前記カーボンナノチューブ膜状構造体は複数のカーボンナノチューブからなり、該複数のカーボンナノチューブにおいて、一部のカーボンナノチューブが第一方向に沿って配列され、他のカーボンナノチューブが第二方向に沿って配列され、前記第一方向及び第二方向は、0°〜90°(0°を含まず)の角度で交叉する。また、本発明は、前記ひずみ測定装置を利用したひずみの測定方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ひずみ測定装置及びそれを利用したひずみの測定方法に関し、特にカーボンナノチューブを利用したひずみ測定装置及びそれを利用したひずみの測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ひずみ(歪み、strain)とは、材料工学・材料力学において材料の形状変化(変形)のことを言う。垂直に変化するひずみを垂直ひずみ、せん断に起きるひずみをせん断ひずみという。ひずみは記号εで表記される。材料はどのようなものであれ荷重を受け、材料内に応力が発生する。このとき、材料には応力によって形状が変化する。前記ひずみが正のひずみと負のひずみに分けられる。一般に、前記ひずみが非常に小さい。
【0003】
ひずみの測定方法には多くの種類がある。一般に、電気抵抗ひずみゲージでひずみを測定する。前記電気抵抗ひずみゲージは、サンプルの電気抵抗変化によって、該サンプルのひずみを測定することができる。
【0004】
前記電気抵抗ひずみゲージは、一般に、金属製のひずみゲージである。前記金属製のひずみゲージは、極めて細いワイヤや箔をグリッド状にしたものがある。グリッド状に構成することにより、金属製のワイヤまたは箔は、平行方向のひずみの量が最大になる。前記グリッド状ひずみゲージの断面が最小限にされるので、そのせん断ひずみが減少される。前記グリッドはキャリアと呼ばれる薄いバックプレートに接着され、このキャリアが直接サンプルに取り付けられる。したがって、前記サンプルのひずみが直接ひずみゲージに伝達され、ひずみゲージの電気抵抗が線形的に変化する。前記ひずみゲージに電圧を印加する場合、電流によって、その電気抵抗を測定することができて、前記サンプルのひずみが得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7045108号明細書
【特許文献2】国際公開第2007/015710号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Kaili Jiang、Qunqing Li、Shoushan Fan、“Spinning continuous carbon nanotube yarns”、Nature、2002年、第419巻、p.801
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ひずみが小さい場合、前記金属製のひずみゲージは電気抵抗の変化に敏感ではない。前記サンプルに外力を加える場合、前記金属製のひずみゲージは、小さなひずみを測定することができない。
【0008】
したがって、前記の課題を解決するために、ひずみ測定装置及びその測定方法を提供することが必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のひずみ測定装置は、ひずみゲージと、前記ひずみゲージとサンプルとを挟持する一対の挟持具と、前記一対の挟持具を相対移動させた場合に生じる横ひずみを記録する横ひずみ記録装置と、前記横ひずみ記録装置から転送された横ひずみデータを処理するデータ処理装置と、を含む。前記ひずみゲージは、基板と、該基板に設置されたカーボンナノチューブ膜状構造体を含み、前記カーボンナノチューブ膜状構造体は複数のカーボンナノチューブからなり、該複数のカーボンナノチューブにおいて、一部のカーボンナノチューブが第一方向に沿って配列され、他のカーボンナノチューブが第二方向に沿って配列され、前記第一方向及び第二方向は、0°〜90°(0°を含まず)の角度で交叉する。前記ひずみゲージが前記挟持具により引き伸ばされる方向が第三方向であり、該第三方向が、前記第一方向と第二方向と成す前記角度の二等分線と平行し、前記第三方向と垂直な方向が第四方向である。
【0010】
本発明のひずみ測定装置は、ひずみゲージと、前記ひずみゲージとサンプルとを挟持する一対の挟持具と、前記一対の挟持具を相対移動させた場合に生じる横ひずみを記録する横ひずみ記録装置と、前記横ひずみ記録装置から転送された横ひずみデータを処理するデータ処理装置と、を含む。前記ひずみゲージは、カーボンナノチューブ膜状構造体を含み、前記カーボンナノチューブ膜状構造体は少なくとも第一カーボンナノチューブフィルムと第二カーボンナノチューブフィルムからなり、該少なくとも第一カーボンナノチューブフィルム及び第二カーボンナノチューブフィルムが複数カーボンナノチューブからなる。前記第一カーボンナノチューブフィルムにおける複数のカーボンナノチューブが第一方向に沿って配列され、前記第二カーボンナノチューブフィルムにおける複数のカーボンナノチューブが第二方向に沿って配列され、前記第一方向及び第二方向は、0°〜90°(0°を含まず)の角度で交叉する。前記ひずみゲージが前記挟持具により引き伸ばされる方向が第三方向であり、該第三方向が、前記第一方向と第二方向と成す前記角度の二等分線と平行し、前記第三方向と垂直な方向が第四方向である。
【0011】
前記のひずみを利用して、ひずみ測定方法は、ひずみ測定装置を提供する第一ステップと、前記ひずみゲージの縦ひずみと横ひずみの関係を測定する第二ステップと、前記ひずみゲージをサンプルの表面に設置する第三ステップと、前記挟持具で前記サンプル及び前記ひずみゲージを挟持する第四ステップと、前記ひずみゲージ及び前記サンプルを引き伸ばして、前記ひずみゲージ及び前記サンプルに同じひずみが生じる第五ステップと、前記横ひずみ記録装置によって、前記サンプルの横ひずみを記録し、前記データ処理装置を用いて前記ひずみゲージの縦ひずみと横ひずみとの関係によって、該前記サンプルの縦ひずみを算出する第六ステップと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例1に係るひずみ測定装置の構造を示す図である。
【図2】図1中のひずみ測定装置に係るひずみゲージにおけるカーボンナノチューブ膜状構造体を示す図である。
【図3】図2中のひずみゲージのポアソン比と、ひずみと、の間の関係を示す図である。
【図4】図2中のひずみゲージにおけるカーボンナノチューブ膜状構造体のSEM写真である。
【図5】図4中のカーボンナノチューブ膜状構造体におけるドローン構造カーボンナノチューブフィルムのSEM写真である。
【図6】図5中のカーボンナノチューブフィルムのカーボンナノチューブセグメントの構造を示す図である。
【図7】本発明の実施例2に係るひずみ測定装置におけるひずみゲージの構造の上面図である。
【図8】本発明の実施例に係るひずみ測定装置におけるひずみゲージの構造の上面図である。
【図9】本発明の実施例に係るひずみゲージの縦ひずみと横ひずみの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面を参照し、本発明の実施例について説明する。
【0014】
(本実施例1)
図1を参照すると、本実施例のひずみ測定装置100は、横ひずみ記録装置102と、挟持具108と、ひずみゲージ12と、データ処理装置101と、を含む。前記ひずみ測定装置100を利用する場合、前記ひずみゲージ12をサンプル16の上に設置し、該サンプル16の前記ひずみゲージ12に接触した部分を、前記ひずみゲージ12に接着させる。データ線(図示せず)によって、前記データ処理装置101と前記横ひずみ記録装置102とを電気的に接続することができる。これにより、データが、前記横ひずみ記録装置102から前記データ処理装置101へ転送される。
【0015】
前記ひずみゲージ12及び前記サンプル16は、併せて前記挟持具108で挟まれる。前記挟持具108は第一クリップ104及び第二クリップ106を含む。前記第一クリップ104及び第二クリップ106は、相対的に移動することができる。前記ひずみ測定装置100が作動している間、前記ひずみゲージに接着したサンプル16及び前記ひずみゲージ12が、前記第一クリップ104と第二クリップ106との間に挟持される。前記第一クリップ104及び第二クリップ106は、金属、セラミック及びプラスチックなどの材料からなることができる。
【0016】
前記横ひずみ記録装置102は、前記ひずみゲージ12の横ひずみを記録することができる。前記第一クリップ104及び第二クリップ106により、前記ひずみゲージ12の軸に沿って、前記ひずみゲージ12に外力を加えると、前記ひずみゲージ12が横方向に沿って、収縮又は膨張することができる。前記横ひずみ記録装置102が作動している間、該横ひずみ記録装置102と前記ひずみゲージ12が一定の間隔を有する。前記横ひずみ記録装置102は、例えば、デジタルカメラ、ポータブルビデオカメラ、ビデオカメラなどの画像記録装置である。本実施例において、前記横ひずみ記録装置102はデジタルカメラである。
【0017】
前記データ処理装置101は、前記ひずみゲージ12の縦ひずみを算出することができる。該前記データ処理装置101は、例えば、小型計算機、パソコン、ノートパソコン、サーバー、スーパーコンピュータなどの計算装置である。本実施例において、前記データ処理装置101は小型計算機である。
【0018】
前記ひずみゲージ12はシート状であり、前記サンプル16の形状によって、該ひずみゲージ12の寸法を変更することができる。前記ひずみゲージ12は正のポアソン比を有する。図2を参照すると、本実施例において、前記ひずみゲージ12は長方形のカーボンナノチューブ膜状構造体146であり、その形状が前記サンプル16の形状と同じである。前記カーボンナノチューブ膜状構造体146は分子間力で結合された複数のカーボンナノチューブ145からなる。前記複数のカーボンナノチューブ145において、一部のカーボンナノチューブが第一方向Xに沿って配列され、他のカーボンナノチューブが第二方向Yに沿って配列され、前記第一方向及び第二方向は、0°〜90°(0°を含まず)の角度で交叉する。本実施例において、図2に示す、前記第一方向Xが、前記第二方向Yと垂直である。前記一部のカーボンナノチューブと前記他の一部のカーボンナノチューブとが交差して、複数の格子を形成する。
【0019】
前記第一方向Xと前記第二方向Yとが成した角度αの二等分線と平行する第三方向eに沿って、前記ひずみゲージ12を引き伸ばす場合、前記ひずみゲージ12が前記第三方向eと垂直である第四方向fに沿って、収縮する。その逆に、前記ひずみゲージ12が第三方向eに沿って縮められる場合に、前記ひずみゲージ12が第四方向fに沿って、膨張する。従って、前記ひずみゲージ12が、第三方向eに沿って伸ばされる又は縮められる場合に、正のポアソン比を有する。図2を参照すると、本実施例において、前記ひずみゲージ12が長方形である。前記第三方向eが前記ひずみゲージ12の二長辺と平行し、前記第四方向fが該ひずみゲージ12の二短辺と平行する。
【0020】
図3は、前記ひずみゲージ12のポアソン比と、ひずみと、の間の関係を示す図である。前記ひずみゲージ12の、第三方向eのひずみが5%に達する場合、そのポアソン比の値が2.25であり、その第三方向eのひずみが20%に達する場合、そのポアソン比の値が3.25である。
【0021】
前記カーボンナノチューブ膜状構造体146は、複数のカーボンナノチューブを含む自立構造を有するものである。ここで、自立構造とは、支持体材を利用せず、前記カーボンナノチューブ膜状構造体146を独立して利用することができるという形態のことである。即ち、前記カーボンナノチューブ膜状構造体146を対向する両側から支持して、前記カーボンナノチューブ膜状構造体146の構造を変化させずに、前記カーボンナノチューブ膜状構造体146を懸架させることができることを意味する。
【0022】
前記カーボンナノチューブ膜状構造体146は、図4に示すように、少なくとも二つの積層されたカーボンナノチューブフィルムからなる。このカーボンナノチューブフィルムはドローン構造カーボンナノチューブフィルム(drawn carbon nanotube film)である。前記カーボンナノチューブフィルムは、超配列カーボンナノチューブアレイ(非特許文献1を参照)から引き出して得られたものである。単一の前記カーボンナノチューブフィルムにおいて、複数のカーボンナノチューブが同じ方向に沿って、端と端が接続されている。即ち、単一の前記カーボンナノチューブフィルムは、分子間力で長さ方向端部同士が接続された複数のカーボンナノチューブからなる。図5と図6を参照すると、単一の前記カーボンナノチューブフィルム143aは、複数のカーボンナノチューブセグメント143bを含む。前記複数のカーボンナノチューブセグメント143bは、長手方向に沿って分子間力で端と端が接続されている。それぞれのカーボンナノチューブセグメント143bは、相互に平行に、分子間力で結合された複数のカーボンナノチューブ145を含む。単一の前記カーボンナノチューブセグメント143bにおいて、前記複数のカーボンナノチューブ145の長さが同じである。前記カーボンナノチューブセグメント143bの幅、厚さ、均一性及び形状は変化することができる。本実施例において、前記カーボンナノチューブフィルムの幅は100μm〜10cmに設けられ、厚さは0.5nm〜100μmに設けられる。前記カーボンナノチューブフィルム143aを有機溶剤に浸漬させることにより、該カーボンナノチューブフィルム143aの靭性及び機械強度を高めることができる。
【0023】
本実施例において、前記カーボンナノチューブ膜状構造体146の製造方法は、超配列カーボンナノチューブアレイ(Superaligned array of carbon nanotubes,非特許文献1を参照)を提供する第一ステップと、前記超配列カーボンナノチューブアレイから少なくとも一つの又は複数の、一定の幅を有するカーボンナノチューブを選択する第二ステップと、所定の速度で前記超配列カーボンナノチューブアレイにおける前記一つ又は複数のカーボンナノチューブを引き出し、複数のカーボンナノチューブセグメントからなる連続のカーボンナノチューブフィルム(特許文献1と特許文献2を参照)を形成する第三ステップと、フレームを提供し、前記少なくとも二つのカーボンナノチューブフィルムを前記フレームに積層して、前記カーボンナノチューブ膜状構造体146を形成する第四ステップと、を含む。
【0024】
前記第一ステップにおいて、超配列カーボンナノチューブアレイの製造方法は、平らな基板を提供する第一サブステップと、前記基板の表面に触媒層を形成する第二サブステップと、前記触媒層が形成された基板を700℃〜900℃の空気で30分〜90分間アニーリングする第三サブステップと、アニーリングされた前記基板を反応炉に置き、保護ガスで500℃〜740℃の温度で加熱する第四サブステップと、カーボンを含むガスを導入して、5分〜30分間反応を行って、前記基板にカーボンナノチューブを生長させ、超配列カーボンナノチューブアレイ(Superaligned array of carbon nanotubes,非特許文献1を参照)を形成する第五サブステップと、を含む。
【0025】
前記第一サブステップにおいて、前記基板はP型のシリコン基板、N型のシリコン基板及び酸化層が形成されたシリコン基板のいずれか一種である。本実施例において、4インチのシリコン基板を選択することが好ましい。
【0026】
前記第二サブステップにおいて、前記触媒層の材料は、鉄、コバルト、ニッケル及びその2種以上の合金のいずれか一種である。
【0027】
前記第四サブステップにおいて、前記保護ガスは窒素ガス、アンモニアガスまたは不活性ガスである。前記第五サブステップにおいて、前記カーボンを含むガスとしては、例えば、エチレン、アセチレン、メタン、エタン及びそれらの混合ガスなどの活性な炭化水素である。
【0028】
前記超配列カーボンナノチューブアレイの高さは200μm〜400μmである。該超配列カーボンナノチューブアレイは、相互に平行で基材に垂直に成長する複数のカーボンナノチューブからなる。前記超配列カーボンナノチューブアレイにおけるカーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ又は多層カーボンナノチューブの一種又は多種である。前記カーボンナノチューブが単層カーボンナノチューブである場合、直径は0.5nm〜10nmであり、前記カーボンナノチューブが二層カーボンナノチューブである場合、直径は1.0nm〜50nmであり、前記カーボンナノチューブが多層カーボンナノチューブである場合、直径は1.5nm〜50nmである。
【0029】
前記超配列カーボンナノチューブアレイは、例えば、アモルファスカーボン及び残存する触媒である金属粒子などの不純物を含まなくなる。該超配列カーボンナノチューブアレイにおけるカーボンナノチューブは、分子間力で接続されている。
【0030】
前記第二ステップにおいて、一定の幅を有するテープを利用して、前記超配列カーボンナノチューブアレイにおける複数のカーボンナノチューブを選択する。前記第三ステップにおいて、前記複数のカーボンナノチューブを引き出した方向はカーボンナノチューブが成長する方向と垂直である。
【0031】
前記複数のカーボンナノチューブを引き出す工程において、前記複数のカーボンナノチューブがそれぞれ前記基材から脱離すると、分子間力で前記カーボンナノチューブ束が端と端で接合され、連続のカーボンナノチューブフィルムが形成される。前記カーボンナノチューブフィルムは、所定の方向に沿って配列し、端と端で接合された複数のカーボンナノチューブからなる一定の幅を有するフィルムである。前記カーボンナノチューブフィルムは、均一な導電性及び均一な厚さを有する。このカーボンナノチューブフィルムの製造方法は、高効率で簡単であり、工業的に実用される。
【0032】
前記カーボンナノチューブフィルムの幅は、前記超配列カーボンナノチューブアレイの大きさに関係する。その長さは用途に応じて、任意に調整することができる。4インチのP型のシリコン基板を選択する場合、前記カーボンナノチューブフィルムの幅は0.01cm〜10cmであり、その厚さは、0.5nm〜100μmである。
【0033】
前記第四ステップにおいて、前記超配列カーボンナノチューブアレイにおける複数のカーボンナノチューブは、不純物が残らず、大きな比表面積を有するので、前記カーボンナノチューブフィルムが接着性を有する。従って、前記少なくとも一つのカーボンナノチューブフィルムは、前記フレームの表面に直接に接着することができ、前記カーボンナノチューブ膜状構造体146が形成される。
【0034】
複数の前記カーボンナノチューブフィルムが積層される場合、隣接する前記カーボンナノチューブフィルムは、分子間力で結合されている。隣接する前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブは、それぞれ0°〜90°の角度で交差している。隣接する前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが0°より大きな角度で交差する場合、前記カーボンナノチューブ膜状構造体146に複数の微孔が形成される。又は、前記複数のカーボンナノチューブフィルムは、隙間なく並列されることもできる。本実施例において、隣接する前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが90°角度で交差する。さらに、前記カーボンナノチューブ膜状構造体146の強度を高めるために、該カーボンナノチューブ膜状構造体146を基板に設置することができる。前記ひずみゲージ12におけるカーボンナノチューブフィルムの数量が限定されず、本実施例において、10〜5000枚のカーボンナノチューブフィルムを積層させてカーボンナノチューブ膜状構造体146を形成する。前記カーボンナノチューブ膜状構造体146の厚さは、0.04μm〜400μmである。
【0035】
(実施例2)
図7を参照すると、ひずみゲージ22は、カーボンナノチューブ膜状構造体146と、フレキシブルポリマー材料からなる基板24と、を含む。前記カーボンナノチューブ膜状構造体146が前記ポリマー基板24の表面に設置される。
【0036】
前記フレキシブルポリマー材料は、例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリウレタン(polyurethane)、エポキシ樹脂(epoxy resin)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)などの高分子材料である。本実施例において、フレキシブルポリマー材料はフレキシブル透明ポリジメチルシロキサン(PDMS)である。前記ポリジメチルシロキサン(PDMS)は、大きな破断点ひずみ(>150%)を有するので、前記ひずみゲージ22の破断点ひずみは22%程度に達することができる。本実施例において、フレキシブルポリマー基板24は厚さが100μm〜1000μmのフレキシブルポリマー層である。
【0037】
前記カーボンナノチューブ膜状構造体146は、前記フレキシブルポリマー基板24の中に埋め込まれるように配置されている。前記カーボンナノチューブ膜状構造体146は、複数のカーボンナノチューブからなる。該複数のカーボンナノチューブが分子間力で端と端が接続されているので、前記カーボンナノチューブ膜状構造体146には複数の微孔が形成される。前記フレキシブルポリマー基板24における高分子材料が完全に固化していない形態で、前記カーボンナノチューブ膜状構造体146を前記フレキシブルポリマー基板24の表面に設置すると、前記フレキシブルポリマー基板24における高分子材料が、前記カーボンナノチューブ膜状構造体146の微孔から前記カーボンナノチューブ膜状構造体146に浸透する。これにより、前記カーボンナノチューブ膜状構造体146は、前記フレキシブルポリマー基板24に埋め込まれて、層状の複合構造体になる。前記層状の複合構造体において、前記複数のカーボンナノチューブと前記高分子材料とが結合した範囲において、該複数のカーボンナノチューブが均一に分散する。
【0038】
図2と図7に示されるように、前記ひずみゲージ12及び前記ひずみゲージ22は長方形である。前記ゲージの形状は、例えば、円形、楕円形、三角形などの形状であることもできる。図8を参照すると、前記ひずみゲージ12はダンベル形状である。
【0039】
図1を参照すると、前記ひずみ測定装置を利用して、ひずみを測定する方法は、ひずみ測定装置100を提供する第一ステップと、前記ひずみゲージ12の縦ひずみ(ε)と横ひずみ(ε)の関係を測定し、
【0040】
ε=f(ε) (式1)
【0041】
を定義する第二ステップと、前記ひずみゲージ12をサンプル16の表面に設置する第三ステップと、前記第一クリップ104と第二クリップ106との間に前記サンプル16及び前記ひずみゲージ12を挟持させる第四ステップと、前記ひずみゲージ12及び前記サンプル16を伸ばして、前記ひずみゲージ12及び前記サンプル16に同じひずみを生じさせる第五ステップと、前記横ひずみ記録装置によって、前記サンプルの横ひずみを記録し、前記データ処理装置を用いて前記ひずみゲージの縦ひずみと横ひずみの関係によって、該前記サンプルの縦ひずみを算出する第六ステップと、を含む。
【0042】
前記第二ステップは、前記第三方向eに沿って、前記ひずみゲージ12を引き伸ばし、これを数回繰返し、毎回前記ひずみゲージ12の縦ひずみ(ε)及び横ひずみ(ε)を記録する第一サブステップと、二次多項式フィッテング(quadratic polynomial fitting)によって、前記ひずみゲージ12の縦ひずみ(ε)と横ひずみ(ε)の関係(式1)が得られる第二サブステップと、を含む。
【0043】
前記第二ステップの第一サブステップにおいて、図7に示す、前記ひずみゲージ12の第三方向eが該ひずみゲージ12の横ひずみ(ε)として定義され、前記ひずみゲージ12の第四方向fが該ひずみゲージ12の縦ひずみ(ε)として定義される。且つ前記第三方向eと前記第一方向Xとが45℃の角度を成す。該第三方向eが前記第四方向fと垂直である。
【0044】
前記第二ステップの第一サブステップにおいて、前記ひずみゲージ12を長方形とし、該ひずみゲージ12の二長辺を前記第三方向eと平行させて、前記サンプル16の二短辺を挟持する。前記ひずみゲージ12を引き伸ばし、これを数回繰返し、毎回前記ひずみゲージ12の縦ひずみ(ε)及び横ひずみ(ε)を記録する。
【0045】
前記第二ステップの第二サブステップに関し、図9には、前記ひずみゲージ12の縦ひずみ(ε)と横ひずみ(ε)の関係が示されている。曲線上の任意の一点において、前記ひずみゲージ12の横ひずみ(ε)は、その縦ひずみ(ε)より大きい。前記ひずみゲージ12の縦ひずみ(ε)が非常に小さくて測定できない場合、式1によって該ひずみゲージ12の縦ひずみ(ε)を前記データ処理装置101で算出する。本実施例において、前記ひずみゲージ12は100枚のカーボンナノチューブフィルムからなる。二次多項式フィッテング(quadratic polynomial fitting)によって、前記ひずみゲージ12の縦ひずみ(ε)と横ひずみ(ε)の関係はε=−2.45234+2.55284ε+0.03281εとして定義される。図8に示す、前記ひずみゲージ12のポアソン比を増加させるために、該ひずみゲージ12の形状を、長方形からをダンベル状に変更する。
【0046】
前記第三ステップにおいて、前記サンプル16は一定の厚さを有するシートであり、前記ひずみゲージ12と同じ形状を有する。前記サンプル16を使用する場合、前記ひずみゲージ12を一つの表面の二短辺に接着剤を塗布した前記サンプル16に挟持させる。これにより、前記サンプル16の二長辺を前記ひずみゲージ12の第三方向eと平行にする。前記サンプル16の二短辺は前記ひずみゲージ12の第四方向fと平行する。接着剤を使用せず、前記ひずみゲージ12を直接サンプル16の上に設置することもできる。
【0047】
前記第五ステップにおいて、前記第一クリップ104及び第二クリップ106によって、前記第三方向eに沿って、それぞれ前記ひずみゲージ12に接着させた前記サンプル16の二短辺を挟持する。この場合、外力で前記サンプル16を、前記第三方向eに沿って相対的に移動させ、該サンプル16と前記ひずみゲージ12とには、同じ縦ひずみ(ε)が生じる。
【0048】
前記第六ステップにおいて、前記横ひずみ記録装置102はデジタルカメラである。前記ひずみゲージ12に接着されたサンプル16に外力を加える場合、前記横ひずみ記録装置102によって、前記ひずみゲージ12の横ひずみ(ε)を記録することができる。前記データ処理装置101は、式1によって、前記ひずみゲージ12の縦ひずみ(ε)を算出することができる。本実施例において、前記データ処理装置101は小型計算機である。前記ひずみゲージ12の縦ひずみ(ε)と横ひずみ(ε)の関係はε=−2.45234+2.55284ε+0.03281εである。前記ひずみゲージ12及び前記サンプル16に同じひずみが生じるので、前記サンプル16の横ひずみ及び縦ひずみが得られる。
【符号の説明】
【0049】
12 ひずみゲージ
16 サンプル
100 ひずみ測定装置
101 データ処理装置
102 横ひずみ記録装置
104 第一クリップ
106 第二クリップ
108 挟持具
143a カーボンナノチューブフィルム
143b カーボンナノチューブセグメント
145 複数のカーボンナノチューブ
24 フレキシブルポリマー基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ひずみゲージと、
前記ひずみゲージとサンプルとを挟持する一対の挟持具と、
前記一対の挟持具を相対移動させた場合に生じる横ひずみを記録する横ひずみ記録装置と、
前記横ひずみ記録装置から転送された横ひずみデータを処理するデータ処理装置と、
を含むひずみ測定装置であって、
前記ひずみゲージは、基板と、該基板に設置されたカーボンナノチューブ膜状構造体を含み、前記カーボンナノチューブ膜状構造体は複数のカーボンナノチューブからなり、
該複数のカーボンナノチューブにおいて、一部のカーボンナノチューブが第一方向に沿って配列され、他のカーボンナノチューブが第二方向に沿って配列され、
前記第一方向と第二方向とは、0°〜90°(0°を含まず)の角度で交叉し、
前記ひずみゲージが前記挟持具により引き伸ばされる方向が第三方向であり、該第三方向が、前記第一方向と第二方向とが成す前記角度の二等分線と平行し、
前記第三方向と垂直な方向が第四方向であることを特徴とするひずみ測定装置。
【請求項2】
ひずみゲージと、
前記ひずみゲージとサンプルとを挟持する一対の挟持具と、
前記一対の挟持具を相対移動させた場合に生じる横ひずみを記録する横ひずみ記録装置と、
前記横ひずみ記録装置から転送された横ひずみデータを処理するデータ処理装置と、を含むひずみ測定装置であって、
前記ひずみゲージは、カーボンナノチューブ膜状構造体を含み、前記カーボンナノチューブ膜状構造体は少なくとも第一カーボンナノチューブフィルムと第二カーボンナノチューブフィルムからなり、該少なくとも第一カーボンナノチューブフィルムと第二カーボンナノチューブフィルムとは複数カーボンナノチューブからなり、
前記第一カーボンナノチューブフィルムにおける複数のカーボンナノチューブが第一方向に沿って配列され、前記第二カーボンナノチューブフィルムにおける複数のカーボンナノチューブが第二方向に沿って配列され、
前記第一方向と第二方向とは、0°〜90°(0°を含まず)の角度で交叉し、
前記ひずみゲージが前記挟持具により引き伸ばされる方向が第三方向であり、該第三方向が、前記第一方向と第二方向と成す前記角度の二等分線と平行し、
前記第三方向と垂直な方向が第四方向であることを特徴とするひずみ測定装置。
【請求項3】
請求項1又は2のひずみ測定装置を提供する第一ステップと、
前記ひずみゲージの縦ひずみと横ひずみの関係を測定する第二ステップと、
前記ひずみゲージをサンプルの表面に設置する第三ステップと、
前記挟持具で前記サンプルと前記ひずみゲージとを挟持する第四ステップと、
前記ひずみゲージと前記サンプルとを引き伸ばして、前記ひずみゲージと前記サンプルとに同じひずみが生じる第五ステップと、
前記横ひずみ記録装置によって、前記サンプルの横ひずみを記録し、前記データ処理装置を用い、前記ひずみゲージの縦ひずみと横ひずみとの関係によって、該前記サンプルの縦ひずみを算出する第六ステップと、
を含むことを特徴とするひずみ測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−117965(P2011−117965A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270376(P2010−270376)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(598098331)ツィンファ ユニバーシティ (534)
【出願人】(500080546)鴻海精密工業股▲ふん▼有限公司 (1,018)
【Fターム(参考)】