説明

まくらぎ支持構造,縁切り材,端面キャップ

【課題】端面キャップへのまくらぎの抜き差し時に生じる抵抗を、簡単な構成で抑える。
【解決手段】まくらぎ支持構造1は、道床に間隙材51,52及び防振マット6を載置すると共に間隙材51上に端面キャップ4を載置し、縁切り材3を接着剤等で取り付けたまくらぎ2の左右の端部を端面キャップ4に嵌め合わせた状態で、道床にコンクリートを打設し、端面キャップ4をコンクリートに埋設することで構成されている。まくらぎ2の取付部22に取り付けられた縁切り材3は、端面板31の内面を取付部22の左右の端面に密着させ、前後の側面板32の内面を取付部22の前後の側面に密着させている。また、側面板32の上面32aを取付部22の上縁部の傾斜面22aに、端面板31の上面を取付部22の左右の端面の上縁部にそれぞれ嵌め合わせている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道床に固定された端面キャップにまくらぎの端部を嵌め合わせ、道床に載置された弾性材で前記まくらぎを支持するまくらぎ支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
レールを支持するまくらぎは、道床に埋め込まれた端面キャップに端部を嵌め合わされ、下面を弾性材で支持されて道床に設置され、ボルト等の固着具で道床に固定される。このようなまくらぎの支持構造では、まくらぎや弾性材を交換する保守作業時に、端面キャップに対してまくらぎを着脱する必要がある。
【0003】
まくらぎを弾性支持して振動を抑えるために、端面キャップがゴム材等の弾性材から形成されていることから、まぐらぎの抜き差し時には端面キャップとまくらぎとが接触して大きな抵抗が生じる。このため、下記の特許文献1では、端面キャップとしてのコ字型弾性保持材の内面に複数の突起を設け、この突起でまくらぎを支持することで、まぐらぎの抜き差し時に生じる抵抗を抑えている。
【0004】
【特許文献1】特開昭59−641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のまくらぎの支持構造では、弾性材から形成された突起がまぐらぎの抜き差し時に損傷して十分な防振効果を得られない虞があり、また、損傷した端面キャップの交換に手間がかかるという問題があった。
【0006】
本発明は斯かる課題に鑑みてなされたもので、上記課題を解決することのできるまくらぎの支持構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するために、本発明のまくらぎ支持構造は、道床に固定された端面キャップにまくらぎの端部を嵌め合わせ、前記道床に載置された弾性材で前記まくらぎを支持するまくらぎ支持構造であって、前記まくらぎの前記端部には、前記端面キャップへの前記端部の抜き差し時に前記端面キャップと前記端部とを隔てて、前記端面キャップに摺接して滑動する縁切り材が取り付けられていることを特徴とする。
また、本発明は、前記縁切り材には、凹部又は凸部を設けて構成された嵌合部が設けられており、前記まくらぎには、前記嵌合部に嵌め合わされる被嵌合部が設けられていることを特徴とする。
また、本発明は、前記まくらぎには、前記縁切り材が嵌め合わされる段差部が設けられており、前記段差部の前記縁切り材が嵌め合わされる縁部には傾斜面が設けられ、前記縁切り部の前記段差部が嵌め合わされる縁部には前記傾斜面を受ける傾斜面が設けられていることを特徴とする。
また、本発明は、前記縁切り材は、前記端面キャップに対する前記端部の挿入方向側に位置した縁部に、前記まくらぎ側に向けて傾斜した傾斜面、又は、前記まくらぎ側に向けて屈曲した傾斜した屈曲面を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は上記の通り、端面キャップに摺接して滑動する縁切り材を、端面キャップと端部とを隔てるように端部に取り付けるという簡単な構成で、端面キャップへの端部の抜き差し時に生じる抵抗を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態のまくらぎ支持構造を示す図であり、(a)は左右方向に沿った端部の断面図,(b)は端部の平面図,(c)は前後方向に沿った端部の断面図である。
【図2】図1の縁切り材を示す図であり、(a)は平面図,(b)は右側面図,(c)は正面図である。
【図3】図1の端面キャップを示す図であり、(a)は左側面図,(b)は平面図,(c)は正面図である。
【図4】図1の間隙材を示す図であり、(a)は平面図,(b)は正面図である。
【図5】図1に示す間隙材を示す図であり、(a)は平面図,(b)は正面図である。
【図6】縁切り材の変形例を示す第1の図であり、(a)は第1の変形例,(b)は第2の変形例,(c)は第3の変形例を示している。
【図7】縁切り材の変形例を示す第2の図であり、(a)は第4の変形例,(b)は第5の変形例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づいて本発明の一実施形態を説明する。
図1は、本実施形態のまくらぎ支持構造1を示す図である。図2は、縁切り材を示す図である。図3は、端面キャップを示す図である。図4は、間隙材を示す図である。図5は、間隙材を示す図である。なお、以下の説明で用いる上下,前後,及び左右の各方向は説明に用いる各図に示している。この上下,前後,左右は説明のために記載したもので、実際の配置と異なってよいことはもちろんである。
【0011】
図1に示すまくらぎ支持構造1は、道床7に間隙材51,52及び防振マット6を載置すると共に間隙材51上に端面キャップ4を載置し、縁切り材3を接着剤等で取り付けたまくらぎ2の左右の端部を端面キャップ4に縁切り材3を介して嵌め合わせた状態で、道床7にコンクリートを打設し、端面キャップ4をコンクリートに埋設することで構成されている。
【0012】
まくらぎ2は、コンクリートで形成されており、縁切り材3を取り付けられる取付部22が左右の端部に設けられている。まくらぎ2の左側の取付部22は、まくらぎ2の左端部の前後の側面の下部を矩形に切り欠いた形状を有している。取付部22の上縁部は、外側から内側にかけて下方に傾斜した傾斜面22aとなっている。また、取付部22の右縁部は、右側から左側にかけて内方に傾斜した傾斜面22bとなっている。まくらぎ2の右側の取付部22は、上述した取付部22の左右を逆転させた構成を有しており、上縁部には傾斜面22aを、左縁部には傾斜面22bをそれぞれ備えている。
【0013】
縁切り材3は、まくらぎ2の左右の取付部22に取り付けられてまくらぎ2の左右の端部の下部の外周面を覆う部材であり、スチレンブタジエンゴム(SBR)等の硬質ゴム又は繊維強化プラスチック(FRP)から形成されている。まくらぎ2の左側の取付部22に取り付けられる縁切り材3は、矩形の平板体をコの字に屈曲させた形状を有しており、端面板31の右側面の前後の縁部から一対の側面板32を右方に延出させている。側面板32の上面32aは、前後方向の外縁から内縁にかけて下方に向けて傾斜している。また、側面板32の右側面32bは、前後方向の外縁から内縁にかけて左方に向けて傾斜している。また、側面板32の左端部には、右側から左側にかけて側面板32の内面を内側に向けて傾斜させてコーナー部32cが形成されている。
【0014】
まくらぎ2の右側の取付部22に取り付けられる縁切り材3は、上述した縁切り材3の左右を逆転させた構成を有しており、前後方向の外縁から内縁にかけて下方に向けて傾斜た上面32aと、前後方向の外縁から内縁にかけて右方に向けて傾斜した左側面32bと、左側から右側にかけて側面板32の内面を内側に向けて傾斜させたコーナー部32cとを側面板32に備えている。
【0015】
まくらぎ2の取付部22に取り付けられた縁切り材3は、端面板31の内面をまくらぎ2の左右の端面に密着させ、前後の側面板32の内面を取付部22の前後の側面に密着させている。また、側面板32の上面32aを取付部22の上縁部の傾斜面22aに、右側面32bを取付部22の左右の縁部の傾斜面22bにそれぞれ嵌め合わせている。
【0016】
端面キャップ4は、まくらぎ2の左右の端部が嵌め込まれて、まくらぎ2を弾性支持する部材であり、硬質ウレタンゴム等の弾性材から形成されている。まくらぎ2の左端部が嵌め込まれる端面キャップ4は、矩形の平板体をコの字に屈曲させた形状を有しており、端面部41の右側面の前後の縁部から一対の側面部42を右方に延出させている。端面部41及び側面部42の外側面には、上下の高さ方向中央部に沿って延びる係止凸部43が設けられている。係止凸部43は、矩形の断面形状を有しており、前側の側面部42の右端部から端面部41を通って後側の側面部42の右端部にまで延びている。まくらぎ2の右端部が嵌め込まれる端面キャップ4は、上述した端面キャップ4の左右を逆転させた構成を有しており、端面部41及び側面部42の外側面に係止凸部43を備えている。
【0017】
間隙材51は、発泡ポリエチレン等のクッション材から形成されており、矩形の平板状を呈している。まくらぎ2の左端部が載置される間隙材51は、左側の端面キャップ4の下端と道床7との間に挟み込まれる延出部51aを備えている。まくらぎ2の右端部が載置される間隙材51は、上述した間隙材51の左右を逆転させた構成を有しており、右側の端面キャップ4の下端と道床7との間に挟み込まれる延出部51aを備えている。間隙材52は、発泡ポリエチレン等のクッション材から形成されており、矩形の平板状を呈している。防振マット6は、発泡ポリエチレン等のクッション材から形成されており、矩形の平板状を呈している。
【0018】
このような構成を有したまくらぎ支持構造1では、まくらぎ2の左右の端部を端面キャップ4から上方に引き抜くと、取付部22に取り付けられた縁切り材3が、端面キャップ4とまくらぎ2の左右の端部とを隔てた状態で、端面キャップ4に摺接して滑動する。また、まくらぎ2の左右の端部を端面キャップ4内に挿入すると、縁切り材3が端面キャップ4とまくらぎ2の左右の端部とを隔てた状態で、端面キャップ4に摺接して滑動する。縁切り材3が端面キャップ4に対して滑動することで、端面キャップ4へのまくらぎ2の抜き差し時に生じる抵抗が抑えられる。
【0019】
本実施形態によれば、端面キャップ4に摺接して滑動する縁切り材3を、端面キャップ4とまくらぎ2の端部とを隔てるように取り付けるという簡単な構成で、端面キャップ4へのまくらぎ2の抜き差し時に生じる抵抗を抑えることができる。しかも、まくらぎ2の端部に縁切り材3を取り付けることから、端面キャップ4への抜き差し等で縁切り材3が損傷した際の交換も容易に行うことができる。
【0020】
また、本実施形態によれば、取付部22の上縁部に傾斜面22aを、右縁部に傾斜面22bをそれぞれ設けることで、取付部22の上縁部及び左右の縁部に欠けが生じるのを防止することができる。
【0021】
上記実施形態では、まくらぎ2の取付部22に接着剤等で縁切り材3を取り付けている場合について説明した。しかしながら、まくらぎ2の取付部22への縁切り材3の取付方法は任意であり、例えば図6(a)に示すように、縁切り材3に嵌合突起33を設け、取付部22に形成された嵌合凹部に嵌合突起33を嵌め合わせて、縁切り材3を取付部22に取り付けてもよい。図6(a)に示す嵌合突起33は、半円形の断面形状を有しており、側面板32の内面の左端から右端にかけて、側面板32の上下方向の中央部に沿って延びている。また、縁切り材3に設けた嵌合凹部を取付部22に形成された嵌合突起に嵌め合わせて、縁切り材3を取付部22に取り付けてもよい。また、嵌合突起33の形状は任意であり、台形,半円形等の断面形状としてもよく、複数列の嵌合突起33を縁切り材3に設けてもよい。
【0022】
この構成によれば、取付部22に設けられた嵌合部を縁切り材3の被嵌合部に嵌め合わせて、縁切り材3を取付部22に固定していることから、縁切り材3を取付部22に着脱するという簡単な作業で縁切り材3の交換を行える。
【0023】
また、まくらぎ2の取付部22に取り付けられた縁切り材3を端面キャップ4に嵌め込み易いように、図6(b)に示すように、側面板32の下端部の外縁に曲面部34を設けてもよい。また、図6(c)に示すように、側面板32及び側面板32の下端部に、下端側にかけて外面が徐々に内側に傾斜した肉薄部35を設けてもよい。また、端面板31から側面板32が延びる部分の縁切り材3の角部の外面に、図7(a)に示すように曲面部36を設けたり、図7(b)に示すように傾斜部37を設けてもよい。
【0024】
上記実施形態では、取付部22の上縁部及び左右の縁部に欠けが生じるのを避けるために、側面板32に傾斜した上面32a,右側面32bを設け、これらの上面32a,右側面32bに嵌め合わされるように取付部22の前後の上縁部及び左右の縁部に傾斜面22a,22bを設けた場合について説明した。しかしながら、端面板31もまくらぎ2に埋め込まれるように取り付ける場合、つまり、まくらぎ2の左右の端面にも取付部22を設ける場合には、端面板31の上端面も側面板32の上面32aと同様に外縁から内縁にかけて下方に向けて傾斜させ、この傾斜面と嵌め合わされる傾斜面をまくらぎ2の端面の取付部22の上縁部に設けてもよい。
【符号の説明】
【0025】
1………まくらぎ支持構造
2………まくらぎ
22………取付部(段差部)
22a………嵌合凹部
3………縁切り材
31………端面板
32………側面板
32a………上面
32b………右側面
32c………コーナー部
4………端面キャップ
41………端面部
42………側面部
43………係止凸部
51………間隙材
51a………延出部
52………間隙材
6………防振マット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道床に固定された端面キャップにまくらぎの端部を嵌め合わせ、前記道床に載置された弾性材で前記まくらぎを支持するまくらぎ支持構造であって、
前記まくらぎの前記端部には、前記端面キャップへの前記端部の抜き差し時に前記端面キャップと前記端部とを隔てて、前記端面キャップに摺接して滑動する縁切り材が取り付けられていることを特徴とするまくらぎ支持構造。
【請求項2】
前記縁切り材には、凹部又は凸部を設けて構成された嵌合部が設けられており、
前記まくらぎには、前記嵌合部に嵌め合わされる被嵌合部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のまくらぎ支持構造。
【請求項3】
前記まくらぎには、前記縁切り材が嵌め合わされる段差部が設けられており、
前記段差部の前記縁切り材が嵌め合わされる縁部には傾斜面が設けられ、
前記縁切り部の前記段差部が嵌め合わされる縁部には前記傾斜面を受ける傾斜面が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のまくらぎ支持構造。
【請求項4】
前記縁切り材は、前記端面キャップに対する前記端部の挿入方向側に位置した縁部に、前記まくらぎ側に向けて傾斜した傾斜面、又は、前記まくらぎ側に向けて屈曲した傾斜した屈曲面を備えることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のまくらぎ支持構造。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の縁切り材。
【請求項6】
請求項1〜4の何れかに記載の端面キャップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−179185(P2011−179185A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−42329(P2010−42329)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000162995)興和化成株式会社 (15)
【出願人】(303059071)独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構 (64)