説明

まな板およびその製造方法

【課題】白色および黒色の調理面をリバーシブルで使用することができ、かつ、製造過程で生じた端切れ材等を樹脂材料として容易にリサイクル可能なまな板を提供する。
【解決手段】まな板10は、第1表面層L1と、この第1表面層L1の反対側に設けられる第2表面層L2と、第1表面層L1と第2表面層L2との間に設けられる中間層L3とを備える。第1表面層L1、第2表面層L2および中間層L3は、同一の樹脂材料からなり、第1表面層L1が白色、第2表面層L2が黒色、中間層L3が第1表面層L1の白色と第2表面層L2の黒色との混合色にそれぞれ配色される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製まな板に関するもので、詳しくは多色の樹脂材料を用いる色付きまな板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の樹脂製まな板は、白を基調としたものが一般的である。白色の外観は清潔感があり、汚れ落ちが分かりやすいため使用者にも好まれている。
【0003】
一方、最近では、黒を基調とした樹脂まな板が注目されている。黒色のまな板は、外観が斬新であるだけでなく、豆腐や根菜などの白系食材が見やすために使い勝手が良好である。特に、白内障や色弱などの視覚障害者や視力の弱いお年寄りにも好まれて使用されている。
【0004】
なお、色付きまな板に関する先行技術としては、特許文献1〜3等が開示されている。
【0005】
【特許文献1】実開平7−9240号公報
【特許文献2】実用新案登録第3134737号公報
【特許文献3】特開2003−210341号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来の黒色まな板は、白系食材の調理には重宝するが、肉や緑野菜などの濃厚色の食材を処理する場合には黒色が邪魔して見づらくなることがある。予め白色と黒色のまな板をそれぞれ準備して食材毎に使い分ければよいが、保管場所の確保や使用後の洗浄に手間がかかる。
【0007】
これに対し、まな板の表裏面を白色と黒色にそれぞれ色分けしてリバーシブルにすることが考えられる。このような構成では、食材の色に合わせて一枚のまな板の表裏を使い分けることで、上記の問題点を解消することができる。
【0008】
ところが、このようなリバーシブルタイプのまな板は、製造コスト面で新たな問題が生じる。すなわち、従来の単一色のまな板では、製造過程で生じた端切れ材を原料に戻して使用しても色の変化が起こらないため、問題なく端切れ材の樹脂の再利用を図ることができる。しかしながら、白黒の2色のまな板では、端切れ材を原料に戻すと、互いの色が邪魔をして樹脂の色が変化するため、元の色に戻すことが困難となる。このため、端切れ材の樹脂を再利用することができず廃棄する他なくなる。
上記の対策としては、端切れ材の樹脂材料を白色部分と黒色部分に分離して各色の原料に混ぜることも考えられるが、このような樹脂の分離作業には手間がかかり、結果として製造コストが嵩むことになる。
【0009】
本発明は、このような現状に鑑みなされたもので、白色および黒色の調理面をリバーシブルで使用することができ、かつ、製造過程で生じた端切れ材を樹脂原料として容易にリサイクル可能なまな板を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[第1発明]
前記課題を解決するための第1発明のまな板は、
第1表面層と、
この第1表面層の反対側に設けられる第2表面層と、
前記第1表面層と前記第2表面層との間に設けられる中間層とを備えた積層構造の樹脂製まな板であって、
前記第1表面層、前記第2表面層および前記中間層は、同一の樹脂材料からなり、
かつ、前記第1表面層が白色、前記第2表面層が黒色、前記中間層が前記第1表面層の白色と前記第2表面層の黒色との混合色にそれぞれ配色される構成とした。
【0011】
第1発明のまな板によれば、第1表面層と第2表面層にそれぞれ白色と黒色の調理面が形成されるため、これらの調理面をリバーシブルで使用することができる。このため、食材毎に色の異なるまな板を別々に準備する必要がない。
【0012】
また、本発明では、まな板の中間層に第1表面層(白色)と第2表面層(黒色)との混合色を採用するため、製造過程で生じた端切れ材を中間層の樹脂原料に混ぜても色の変化が小さく、簡単に元の色に戻すことができる。このため、端切れ材を簡単にリサイクルすることができ、樹脂原料の有効利用を図ることができる。
つまり、白黒の2色の樹脂材料のみでまな板を製造すると、上記のように材料コスト面で問題が生じるが、本発明では中間層に第1表面層(白色)と第2表面層(黒色)の混合色を採用することで、端切れ材を中間層の原料として再利用することを可能とし、上記の問題を解決した。一般には、樹脂の色が増える程製造コストが増大するところ、本発明では樹脂の色が増えても樹脂原料を有効利用することにより逆に製造コストを抑えることができる。
【0013】
さらに、本発明によれば、中間層が第1表面層と第2表面層の混合色であるグレー色となるため、まな板の外観に各層がグラデーションとして表れる。これにより、単に表裏が白黒で色分けされるまな板に比べ、色の変化に富んだデザイン性の高いまな板を実現することができる。
【0014】
第1発明において、各層の色は、樹脂原料に黒または白の着色材を適量混合することで調整することができる。白色については樹脂原料の色付けをせずにそのまま採用してもよい。
【0015】
また、第1発明において、第1表面層または第2表面層は、一見して白または黒と判別できるものであればその色の濃さ(明度)にはこだわらない。例えば第1表面層を白に近い淡いグレー色、第2表面層を黒に近い濃いグレー色、中間層をこれらの混合したグレー色というように設定することもできる。
また、各層の樹脂原料に有彩色の着色材を少量添加して各層に色味を付けるようにしてもよい。
【0016】
第1発明のまな板は、前記中間層の色が、前記第1表面層の樹脂原料と前記第2表面層の樹脂原料とを両層の層厚比で混合して得られる樹脂材料とほぼ同一の色に設定されることが望ましい。
【0017】
第1発明において、中間層の樹脂原料として端切れ材を再利用する場合、第1表面層と第2表面層の層の厚みが異なると、中間層の混合色が厚みの大きい層の色に近づくように変化することが想定される。このような色の変化は、厚みの小さい層の着色材を添加することで比較的簡単に元の色に戻すことができるが、着色材の添加量によっては中間層の色にバラツキが出るおそれがある。
【0018】
前述したように、中間層の色があらかじめ第1表面層の樹脂原料と第2表面層の樹脂原料とを両層の層厚比で混合して得られる樹脂材料とほぼ同一の色に設定されていれば、端切れ材を中間層の樹脂原料に混ぜたとき、これらの第1表面層と第2表面層とが混ざり合って中間層とほぼ同じ色になる。この結果、着色材を添加しなくても中間層の色をほぼ一定に保ちやすく、まな板の品質(色相)の安定を図ることができる。
【0019】
第1発明のまな板の製法には、多色押出成形を適用すると効果的である。
すなわち、第1発明のまな板の製造方法は、
前記第1表面層の樹脂原料を押出機に導入する工程、
前記第2表面層の樹脂原料を押出機に導入する工程、
前記中間層の樹脂原料を押出機に導入する工程、
前記第1表面層、前記第2表面層および前記中間層が積層された板状体を前記押出機の金型から押し出す工程、
前記板状体を所定形状にカットしてまな板を仕上げる工程、
前記押出工程または前記仕上工程で生じた端切れ材を前記中間層の樹脂原料に混合する工程を含むことが望ましい。
【0020】
このような製造方法によれば、第1表面層、第2表面層および中間層の積層構造を同一の金型内で接着剤等を用いることなく確実に成形することができ、少ない工程で効率よく第1発明のまな板を製造することができる。
また、製造過程で生じた端切れ材を中間層の樹脂原料として無駄なく簡単に再利用することができ、原料の有効利用を図ることが可能になる。なお、本発明の「仕上工程」にはカット工程の他、まな板の表面加工などの工程が含まれる。
【0021】
[第2発明]
第1発明においては、第1表面層に白色、第2表面層に黒色をそれぞれ採用したが、第1表面層および第2表面層の色は必ずしもこれらに限定されず、白または黒以外の色を採用することもできる。第1表面層と第2表面層のいずれか一方または両方を赤、青、緑などの有彩色にしても構わない。例えば第1表面層を白色、第2表面層を赤色、中間層をこれらの混合色(ピンク色)とする構成、第1表面層を青色、第2表面層を黒色、中間層をこれらの混合色(紺色)とする構成、第1表面層を青色、第2表面層を赤色、中間層をこれらの混合色(紫色)とする構成等を採用することもできる。
【0022】
すなわち、第2発明のまな板は、
第1表面層と、
この第1表面層の反対側に設けられる第2表面層と、
前記第1表面層と前記第2表面層との間に設けられる中間層とを備えた積層構造の樹脂製まな板であって、
前記第1表面層、前記第2表面層および前記中間層は、同一の樹脂材料からなり、
かつ、前記第1表面層、前記第2表面層、前記中間層がそれぞれ異なる色に配色され、前記中間層の色が前記第1表面層の色と前記第2表面層の色との混合色になっている構成とした。
【0023】
このような構成によれば、第1発明と同様に、第1表面層と第2表面層の調理面をリバーシブルで使用することができる。
また、まな板の中間層の色に第1表面層と第2表面層との混合色が採用されるため、製造過程で生じた端切れ材を中間層の樹脂原料として簡単に再利用することができる。再生材を含む中間層はまな板の側面に見えるだけで表裏面には見えないため、仮に中間層の色がまな板の外観として好まれない色であっても、その影響が小さくなる。
さらに、各層の外観がグラデーションとして表れるため、まな板のデザイン性を向上させることもできる。
【0024】
第2発明において、前記中間層の色は、前記第1表面層の樹脂原料と前記第2表面層の樹脂原料とを両層の層厚比で混合して得られる樹脂材料とほぼ同一の色に設定されることが望ましい。
【0025】
このような構成によれば、前述したように端切れ材を中間層の樹脂原料に混ぜても、中間層の色をほぼ一定に保ちやすく、まな板の品質(色相)の安定を図ることができる。
【0026】
第2発明のまな板の製造方法としては、下記の多色押出成形によると効果的である。
すなわち、第2発明のまな板の製造方法は、
前記第1表面層の樹脂原料を押出機に導入する工程、
前記第2表面層の樹脂原料を押出機に導入する工程、
前記中間層の樹脂原料を押出機に導入する工程、
前記第1表面層、前記第2表面層および前記中間層が積層された板状体を前記押出機の金型から押し出す工程、
前記板状体を所定形状にカットしてまな板を仕上げる工程、
前記押出工程または前記仕上工程で生じた端切れ材を前記中間層の樹脂原料に混合する工程を含む構成とした。
【0027】
このような製造方法によれば、第1表面層、第2表面層および中間層の積層構造を単一の金型で簡単に成形することができ、少ない工程で効率よく第2発明のまな板を製造することができる。
また、製造過程で生じた端切れ材を中間層の樹脂原料として無駄なく簡単に再利用することができ、製造コストの節約を図ることが可能になる。
【0028】
[第3発明]
第2発明において、第1表面層と第2表面層との混合色を中間層に採用しているが、混合色の層は、必ずしも中間層である必要はなく、第1表面層または第2表面層に採用することもできる。
すなわち、第3発明のまな板は、
第1表面層と、
この第1表面層の反対側に設けられる第2表面層と、
前記第1表面層と前記第2表面層との間に設けられる中間層とを備えた積層構造の樹脂製まな板であって、
前記第1表面層、前記第2表面層および前記中間層は、同一の樹脂材料からなり、
かつ、前記第1表面層、前記第2表面層、前記中間層がそれぞれ異なる色に配色され、前記第1表面層、前記第2表面層、前記中間層のうちいずれか一層が他層の色の混合色になっている構成とした。
【0029】
このような構成によっても、第1表面層と第2表面層の調理面の色が異なるため、各面をリバーシブルで使用することができる。
また、第1表面層、第2表面層および中間層のうちいずれか一層に他の層の混合色が採用されるため、製造過程で生じた端切れ材を混合色の樹脂原料として簡単に再利用することができる。
【0030】
第3発明において、前記一層の色は、前記他層の樹脂原料を各層の層厚比で混合して得られる樹脂材料とほぼ同一の色に設定することが望ましい。
【0031】
このような構成によれば、端切れ材を前記一層の樹脂原料に混ぜても、混合色の色合いをほぼ一定に保ちやすく、まな板の品質(色相)の安定を図ることができる。
【0032】
第3発明のまな板の製造方法としては、下記の多色押出成形によると効果的である。
すなわち、第3発明のまな板の製造方法は、
前記第1表面層の樹脂原料を押出機に導入する工程、
前記第2表面層の樹脂原料を押出機に導入する工程、
前記中間層の樹脂原料を押出機に導入する工程、
前記第1表面層、前記第2表面層および前記中間層が積層された板状体を前記押出機の金型から押し出す工程、
前記板状体を所定形状にカットしてまな板を仕上げる工程、
前記押出工程または前記仕上工程で生じた端切れ材を前記一層の樹脂原料に混合する工程を含む構成とした。
【0033】
このような製造方法によれば、第1表面層、第2表面層および中間層の積層構造を単一の金型で簡単に成形することができ、少ない工程で効率よく第3発明のまな板を製造することができる。
また、製造過程で生じた端切れ材を混合色の層の樹脂原料として無駄なく簡単に再利用することができ、製造コストの節約を図ることが可能になる。
【0034】
[第4発明]
第3発明において、混合色の層が黒色、他の層が白を含まない有彩色になるように各層を配色してもよい。
すなわち、第4発明のまな板は、
第1表面層と、
この第1表面層の反対側に設けられる第2表面層と、
前記第1表面層と前記第2表面層との間に設けられる中間層とを備えた積層構造の樹脂製まな板であって、
前記第1表面層、前記第2表面層および前記中間層は、同一の樹脂材料からなり、
かつ、前記第1表面層、前記第2表面層、前記中間層がそれぞれ異なる色に配色され、前記第1表面層、前記第2表面層、前記中間層のうちいずれか一層が黒色であり、他の層が白を含まない有彩色である構成とした。
【0035】
このような構成によれば、第1表面層と第2表面層の調理面の色が異なるため、各面をリバーシブルで使用することができる。
また、第1表面層、第2表面層および中間層がうちいずれか一層が黒色で、他の層は白を含まない有彩色であるため、端切れ材を黒色の層の樹脂原料に混合して比較的簡単に黒に着色し直すことができる。このため、端切れ材をまな板の樹脂原料として有効に再利用することができる。
【0036】
第4発明のまな板の製造方法としては、下記の多色押出成形によると効果的である。
すなわち、第4発明のまな板の製造方法は、
前記第1表面層の樹脂原料を押出機に導入する工程、
前記第2表面層の樹脂原料を押出機に導入する工程、
前記中間層の樹脂原料を押出機に導入する工程、
前記第1表面層、前記第2表面層および前記中間層が積層された板状体を前記押出機の金型から押し出す工程、
前記板状体を所定形状にカットしてまな板を仕上げる工程、
前記押出工程または前記仕上工程で生じた端切れ材を前記一層の樹脂原料に混合するとともに黒色に着色する工程を含む構成とした。
【0037】
このような製造方法によれば、第1表面層、第2表面層および中間層の積層構造を単一の金型で簡単に成形することができ、少ない工程で効率よく第4発明のまな板を製造することができる。
また、製造過程で生じた端切れ材を黒色の層の樹脂原料として無駄なく簡単に再利用することができ、製造コストの節約を図ることが可能になる。
【0038】
[第1〜4発明]
本発明(第1〜4発明)において、まな板の用途は限定されず、家庭用であっても、業務用であっても構わない。
樹脂材料としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等を用いるとよい。各層の樹脂材料に同一の樹脂を採用することで、端切れ材や不良品を中間層の樹脂材料として容易に再利用することができる。
第1表面層および第2表面層の厚みは、中間層よりも十分に薄くすることが望ましい。このように設定することで、中間層に端切れ材を多量に混合しやすくなり、第1表面層および第2表面層に抗菌剤等の機能性材料を集中的に混入させることができる。
本発明(第1〜4発明)において、「仕上工程」はカット工程を含み、その他まな板の製造に必要な表面加工などの工程を含む。
また、本発明(第1〜4発明)において、中間層が複数の層であってもよい。中間層を複数の層にする場合には、各層にグラデーションが表れるように積層することで、まな板の外観を美しく保つことができる。
また、本発明(第1〜4発明)によるまな板の製造方法において、端切れ材を中間層の樹脂原料に混合する工程では、混合前に端切れ材を粉砕して用いることが望ましい。端切れ材をあらかじめ細かく砕いておくことで樹脂原料の溶融状態にムラが生じにくくなるためである。
【0039】
本発明(第1〜4発明)のまな板の製法としては、多色押出成形に限定されることなく、他の製法を用いてもよい。例えば射出成形による製法では、第1表面層、第2表面層および中間層の板状体を別個の金型で成形し、これらを貼り合わせてまな板を得ることができる。このような製法の場合でも、混合色または黒色の樹脂原料として端切れ材をリサイクルすることができ、樹脂原料の有効利用を図ることができる。
【0040】
本発明(第1〜4発明)において、端切れ材に代えて、製造過程で生じた不良品や、売れ残りや中古などの回収品を適用してもよい。このような不良品・回収品の樹脂を再利用することで、資源の有効利用を図ることができ、環境対策に寄与することが可能になる。
不良品・回収品の再利用の方法としては、例えば表面の汚れや劣化部分(望ましくは表裏および側面を合わせた六面全体)を切削をした後、洗浄工程を経て粉砕し、樹脂原料に混ぜる。変色や劣化の対策として、新品原料をブレンドして着色を行うようにしてもよい。
本発明(第1〜4発明)は、単独で適用してもよいし、組み合わせて適用してもよい。これらの発明に本明細書に記載される他の発明を組み合わせてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
第1実施形態のまな板を図1〜図3に示した。図1に示すように、まな板10は、ポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂を積層してなるもので、矩形の板体12の表裏面が調理面として使用される。まな板10の長手方向の端部には把手孔13が貫通している。板体12の四隅の角部は円弧状に面取りされている。
図示はされないが板体12の表裏の外周端および把手孔13の縁についても若干の面取りが施されている。これらの面取りによりまな板10を手で掴みやすくなっている。
【0042】
まな板10の厚み方向には、図1で上方側に第1表面層L1、下方側に第2表面層L2、第1表面層L1と第2表面層L2の間に中間層L3が設けられている。各層の色は、それぞれ異なる色に配色されており、第1表面層L1は白色、第2表面層L2は黒色、中間層L3は両層の混合色(グレー色)になっている。まな板10の調理面には白または黒の一色が見えるが、厚み方向の側面には各層が3色に見える。
【0043】
第1表面層L1、第2表面層L2および中間層L3の厚み(層厚)は、それぞれ板面方向に一定である。中間層L3の厚みは、第1表面層L1および第2表面層L2の厚みよりも十分に大きい。このように中間層L3の厚みを大きくとることで、まな板10の製造過程で生じた端切れ材や不良品、および売れ残りや中古などの回収品(以下、端切れ材等という。)を中間層L3の樹脂原料として利用しやすくなっている。
【0044】
中間層L3の混合色は、第1表面層L1の樹脂原料と第2表面層L2の樹脂原料とを両層の層厚比で混合して得られる樹脂材料の色と同一色に設定することが望ましい。例えば第1表面層L1と第2表面層L2との層厚比が等しい場合、両層の樹脂原料を均等に混合して得られる樹脂の色を中間層L3の色とする。第1表面層L1が第2表面層L2の倍の層厚になっているときは、第1表面層L1の樹脂原料と第2表面層L2の樹脂原料とをそれぞれ2対1の混合比で得られる樹脂の色を中間層L3の色とする。
このように第1表面層L1と第2表面層L2の層厚比に基づいて中間層L3の混合色を選定することで、中間層L3の樹脂原料にまな板10の端切れ材等を混合しても中間層L3の色合いがほとんど変化しなくなる。
【0045】
まな板10を使用する場合、肉や緑野菜などの濃厚色の食材を扱うときには、第1表面層L1(白色)の調理面を使うと、白色の背景に食材の輪郭がはっきり見えて作業が行いやすくなる。一方、豆腐や根菜などの淡白色の食材を扱うときには、まな板10を裏返して第2表面層L2(黒色)の調理面を使うと、黒の背景に白色系の食材の輪郭がはっきり見えて作業が行いやすくなる。
このようにまな板10では、白黒の調理面を必要に応じてリバーシブルで使い分けることができるため、食材毎に2枚のまな板を準備する手間がない。
【0046】
また、まな板10によれば、把手孔13を含めた厚み方向の側面に白色、グレー色、黒色のグラデーションが表れるため、見た目にも美しくキッチンにアクセントを与える効果もある。
【0047】
さらに、まな板10の構成によれば、第1表面層L1の白色と第2表面層L2の黒色の混合色が中間層L3に採用されているため、まな板10の端切れ材等を中間層L3の原料に加えても中間層L3の色合いがグレー色のままほとんど変化しない。このため、端切れ材等を中間層L3の原料として簡単に再利用することができる。
【0048】
まな板10の具体的な製造例を図4に示した。まな板10は、三色押出成形によって製造することができる。図4の製造装置おいて、符号15は押出機、符号16は冷却機、符号17は引出機、符号18は切断機であり、符号14は押出機15から板状体を押し出すための金型(ダイ)である。
【0049】
押出機15は3種の原料投入部15a〜15cを備えている。原料投入部15aには第1表面層L1の原料が投入され、原料投入部15bには第2表面層L2の原料、原料投入部15cには中間層L3の原料がそれぞれ投入される。
各原料は適量の着色材を混合して色調整される。これにより第1表面層L1が白色、第2表面層L2が黒色、中間層L3がグレー色になる。
【0050】
押出機15の原料投入部15a〜15cに樹脂原料を投入すると、金型14内で加熱溶融した原料が層状になって溶着し、金型14の前方に3層の板状体として押し出される。押し出された板状体は、冷却機16を通して引出機17側へ移動し、切断機18でカットされ、表面処理を施されてまな板10となる。
【0051】
ここで、切断機18でカットされた端切れ材19については、細かく粉砕した上で中間層L3の原料投入部15cに戻す。端切れ材19には黒色および白色の樹脂が含まれるが、これらが溶融混合してグレー色になるため、中間層L3の色合いにほとんど影響を与えない。同様に製造過程で生じた不良品や、売れ残りや中古などの回収品についても、中間層L3の原料に戻しても中間層L3の色合いはほとんど変化しない。
【0052】
このような製造方法によれば、三色の異なる樹脂材料を少ない工程で効率よく三層構造のまな板10にすることができる。
また、端切れ材等を中間層L3の樹脂材料として簡単に再利用することができ、製造コストを大幅に抑えることができる。
【0053】
次に、第2実施形態のまな板20を図5および図6に示した。
まな板20は、ポリエチレン、ポリプロピレン等からなるもので、矩形の板体22の表裏面が調理面として使用される。長手方向の両端部には、左右互い違いで縦断面弧状の切り欠きがあり、これらの切り欠きにより把手部23,24が形成されている。
【0054】
まな板20の厚み方向には、図5および図6で上方側に第1表面層L1、下方側に第2表面層L2、両層L1,L2の間に中間層L3が設けられる。第1表面層L1は白色、第2表面層L2は黒色、中間層L3は両層L1,L2の混合色(グレー色)にそれぞれ配色される。
【0055】
第2実施形態のまな板20によっても、第1表面層L1と第2表面層L2に白黒のリバーシブルの調理面が形成されるため、食材毎に使い分けることができる。
また、中間層L3に第1表面層L1と第2表面層L2との混合色が採用されるため、まな板20の端切れ材等を中間層L3の原料として簡単に再利用することができる。
さらに、板体22の厚み方向に側面に各層の色がグラデーションをなして表れるため、まな板のデザイン性を高めることができる。
さらには、まな板20の把手部23,24に手指を掛けて簡単にまな板20を裏返すことができ、リバーシブルの調理面をより快適に使用することができる。
【0056】
第3実施形態のまな板30を図7および図8に示した。
まな板30は、第1表面層L1に混合色を採用したものである。図7および図8に示すように、矩形の板体32の表裏に調理面が形成される。まな板30の厚み方向には、上方側に第1表面層L1、下方側に第2表面層L2、両層L1,L2の間に中間層L3が設けられる。第2表面層L2は黒色、中間層L3は白色、第1表面層L1は両層L2,L3の混合色(グレー色)にそれぞれ配色される。
【0057】
第1表面層L1、第2表面層L2および中間層L3の厚み(層厚)は、それぞれ板面方向に一定である。各層L1,L2,L3がそれぞれ等しい厚みになるように設定される。第1表面層L1の厚みは、前述の第1および第2実施形態に比べて大きく確保されているため、まな板30の端切れ材等を第1表面層L1の樹脂原料として利用しやすくなっている。
【0058】
第3実施形態のまな板30では、第1表面層L1と第2表面層L2にグレー色と黒色がそれぞれ表れるため、これらの調理面を食材毎にリバーシブルで使い分けることができる。
また、第1表面層L1に第2表面層L2と中間層L3との混合色が採用されるため、端切れ材等を第1表面層L1の原料として簡単に再利用することができる。
【0059】
第1〜3実施形態を説明したが、本発明の実施形態はこれらに限定されることなく、種々の変更を伴ってもよい。
例えば第1表面層L1、第2表面層L2および中間層L3のいずれか2層に赤、青、緑、黄などのそれぞれ異なる有彩色を採用し、残りの1層に他の層の混合色を採用してもよい。また、第1表面層L1、第2表面層L2および中間層L3のいずれか2層に白を含まない有彩色を採用し、残りの1層に黒色を採用してもよい。このような構成によれば、まな板の端切れ材等を混合色または黒色の層の樹脂原料として簡単に再利用することができる。
また、第1表面層L1、第2表面層L2および中間層L3に赤、青、緑、黄などの着色材を少量配合して色味を付けてもよい。このような構成によれば、各層にパステル調のグラデーションを与えることができ、高級感のあるまな板を得ることができる。
【0060】
その他、第1表面層L1および第2表面層L2に抗菌剤などの機能性材料を含有させることも可能である。
端切れ材等を中間層の樹脂原料に混合する方法としては、粒状または粉状にしたものを投入する他、切断機で適当な大きさに切断したものを投入してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の第1実施形態によるまな板を示すもので、第1表面層側から見た斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態によるまな板を示すもので、第2表面層側から見た斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態によるまな板を示す部分側面図である。
【図4】本発明の第1実施形態によるまな板の製造装置を示す概略構成図である。
【図5】本発明の第2実施形態によるまな板を示すもので、第1表面層側から見た斜視図である。
【図6】本発明の第2実施形態によるまな板を示す一部切欠側面図である。
【図7】本発明の第3実施形態によるまな板を示すもので、第1表面層側から見た斜視図である。
【図8】本発明の第3実施形態によるまな板を示す一部切欠側面図である。
【符号の説明】
【0062】
10 まな板(第1実施形態)
12 板体
13 把手孔
14 金型(ダイ)
15 押出機
16 冷却機
17 引出機
18 切断機
19 端切れ材
20 まな板(第2実施形態)
22 板体
23,24 把手部
30 まな板(第3実施形態)
32 板体
33 把手孔
L1 第1表面層
L2 第2表面層
L3 中間層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1表面層と、
この第1表面層の反対側に設けられる第2表面層と、
前記第1表面層と前記第2表面層との間に設けられる中間層とを備えた積層構造の樹脂製まな板であって、
前記第1表面層、前記第2表面層および前記中間層は、同一の樹脂材料からなり、
かつ、前記第1表面層が白色、前記第2表面層が黒色、前記中間層が前記第1表面層の白色と前記第2表面層の黒色との混合色にそれぞれ配色されることを特徴とするまな板。
【請求項2】
請求項1記載のまな板であって、前記中間層の色は、前記第1表面層の樹脂原料と前記第2表面層の樹脂原料とを両層の層厚比で混合して得られる樹脂材料とほぼ同一の色に設定される、まな板。
【請求項3】
請求項1または2記載のまな板の製造方法であって、
前記第1表面層の樹脂原料を押出機に導入する工程、
前記第2表面層の樹脂原料を押出機に導入する工程、
前記中間層の樹脂原料を押出機に導入する工程、
前記第1表面層、前記第2表面層および前記中間層が積層された板状体を前記押出機の金型から押し出す工程、
前記板状体を所定形状にカットしてまな板を仕上げる工程、
前記押出工程または前記仕上工程で生じた端切れ材を前記中間層の樹脂原料に混合する工程を含む、まな板の製造方法。
【請求項4】
第1表面層と、
この第1表面層の反対側に設けられる第2表面層と、
前記第1表面層と前記第2表面層との間に設けられる中間層とを備えた積層構造の樹脂製まな板であって、
前記第1表面層、前記第2表面層および前記中間層は、同一の樹脂材料からなり、
かつ、前記第1表面層、前記第2表面層、前記中間層がそれぞれ異なる色に配色され、前記中間層の色が前記第1表面層の色と前記第2表面層の色との混合色になっていることを特徴とするまな板。
【請求項5】
請求項4記載のまな板であって、前記中間層の色は、前記第1表面層の樹脂原料と前記第2表面層の樹脂原料とを両層の層厚比で混合して得られる樹脂材料とほぼ同一の色に設定される、まな板。
【請求項6】
請求項4または5記載のまな板の製造方法であって、
前記第1表面層の樹脂原料を押出機に導入する工程、
前記第2表面層の樹脂原料を押出機に導入する工程、
前記中間層の樹脂原料を押出機に導入する工程、
前記第1表面層、前記第2表面層および前記中間層が積層された板状体を前記押出機の金型から押し出す工程、
前記板状体を所定形状にカットしてまな板を仕上げる工程、
前記押出工程または前記仕上工程で生じた端切れ材を前記中間層の樹脂原料に混合する工程を含む、まな板の製造方法。
【請求項7】
第1表面層と、
この第1表面層の反対側に設けられる第2表面層と、
前記第1表面層と前記第2表面層との間に設けられる中間層とを備えた積層構造の樹脂製まな板であって、
前記第1表面層、前記第2表面層および前記中間層は、同一の樹脂材料からなり、
かつ、前記第1表面層、前記第2表面層、前記中間層がそれぞれ異なる色に配色され、前記第1表面層、前記第2表面層、前記中間層のうちいずれか一層が他層の色の混合色になっていることを特徴とするまな板。
【請求項8】
請求項7記載のまな板であって、前記一層の色は、前記他層の樹脂原料を各層の層厚比で混合して得られる樹脂材料とほぼ同一の色に設定される、まな板。
【請求項9】
請求項7または8記載のまな板の製造方法であって、
前記第1表面層の樹脂原料を押出機に導入する工程、
前記第2表面層の樹脂原料を押出機に導入する工程、
前記中間層の樹脂原料を押出機に導入する工程、
前記第1表面層、前記第2表面層および前記中間層が積層された板状体を前記押出機の金型から押し出す工程、
前記板状体を所定形状にカットしてまな板を仕上げる工程、
前記押出工程または前記仕上工程で生じた端切れ材を前記一層の樹脂原料に混合する工程を含む、まな板の製造方法。
【請求項10】
第1表面層と、
この第1表面層の反対側に設けられる第2表面層と、
前記第1表面層と前記第2表面層との間に設けられる中間層とを備えた積層構造の樹脂製まな板であって、
前記第1表面層、前記第2表面層および前記中間層は、同一の樹脂材料からなり、
かつ、前記第1表面層、前記第2表面層、前記中間層がそれぞれ異なる色に配色され、前記第1表面層、前記第2表面層、前記中間層のうちいずれか一層が黒色であり、他の層が白を含まない有彩色であることを特徴とするまな板。
【請求項11】
請求項10記載のまな板の製造方法であって、
前記第1表面層の樹脂原料を押出機に導入する工程、
前記第2表面層の樹脂原料を押出機に導入する工程、
前記中間層の樹脂原料を押出機に導入する工程、
前記第1表面層、前記第2表面層および前記中間層が積層された板状体を前記押出機の金型から押し出す工程、
前記板状体を所定形状にカットしてまな板を仕上げる工程、
前記押出工程または前記仕上工程で生じた端切れ材を前記一層の樹脂原料に混合するとともに黒色に着色する工程を含む、まな板の製造方法。
【請求項12】
請求項3、6、9または11記載のまな板の製造方法であって、前記端切れ材に代えて、前記まな板の製造過程で生じた不良品、または売れ残りや中古などの回収品を用いる、まな板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−57617(P2010−57617A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−224878(P2008−224878)
【出願日】平成20年9月2日(2008.9.2)
【出願人】(591167669)株式会社三洋化成 (9)
【Fターム(参考)】