説明

めっき用電源装置のファンカバーの係止構造

【課題】悪環境下で使用されるめっき用直流電源装置の裏面パネルのファンカバーを固定するねじが腐食して,ねじの頭部の十字穴がつぶれ,ねじを緩めることができなくなり,ファンカバーを取り外すことができず,冷却ファンの保守交換ができなくなる点である。
【解決手段】電源装置の筐体及びファンカバーを樹脂製とし,ファンカバーの筐体への係止構造において,ファンカバーに樹脂の弾性を利用した係止爪と係止爪上の突起を設け,筐体にはファンカバーの係止爪上の突起を嵌め込む係止溝を設け,ねじを使用することなくファンカバーを筐体に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
空冷式めっき用電源装置における冷却用ファンのファンカバーの係止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
めっき用電源装置は酸性あるいはアルカリ性のめっき槽の近傍で使用されることが多く,前記の電源装置が空冷式電源装置である場合は,使用される冷却ファンには常時腐食性ガスを含んだ空気が通流することになり,汚損がひどく,冷却用ファンは保守交換の対象部品となっている。
【0003】
従来のこの種の技術としては特許文献1にファンカバーが開示されている。さらに、図3に従来の空冷式めっき用電源装置を示す。図3において,冷却用ファンはめっき用電源装置1の裏面パネル14の内側に配置され,裏面パネル14に開口部15を設けて冷却用空気を排出あるいは吸入している。裏面パネル14の外面側には,入出力配線用端子台12及び制御配線用端子台13が設けられ,裏面パネル14は取り外す構造にはなっておらず,筐体2と一体になっている。従って,冷却ファンを保守交換するために,裏面パネル14は保守交換に必要な寸法で冷却ファン4に対応する部分をカットしている。裏面パネル14のカットした部分にはカット部17を覆うファンカバー3を取り付ける。ファンカバー3には,前述した冷却用空気を排出あるいは吸入するための開口部15を設けている。
【0004】
従来,ファンカバー3はねじ止めで固定されてあり,前記の冷却ファン4を保守交換するときには,ファンカバー3を取り外してから保守交換をすることになるが,めっき用直流電源装置1は前述のように悪環境下で使用されることが多いため,前記のファンカバー3を固定するねじ11が腐食し,前記のねじ11の頭部の十字穴がつぶれて,ねじ11を緩めることができなくなり,ファンカバー3を取り外して冷却ファン4を保守交換することができなくなる場合があった。
【0005】
【特許文献1】「特開平8−5154号」公報,「暖房機のファンカバー」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
悪環境下で使用されるめっき用電源装置の裏面パネルのファンカバーを固定するねじが腐食して,ねじの頭部の十字穴がつぶれ,ねじを緩めることができなくなり,冷却ファンの保守交換ができなくなる点である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
めっき用電源装置の筐体及びファンカバーを樹脂製とし,ファンカバーと筐体との係止構造において,樹脂の弾性を利用した係止爪をカバーに設けて,ねじを使用することなくファンカバーと筐体を固定する。
【発明の効果】
【0008】
ねじを使用しなくなり,めっき用電源装置を悪環境下で使用しても,ファンカバーを固定するねじが腐食することはなくなり,ねじの頭部の十字穴がつぶれてねじを緩めることができなくなり,ファンカバーを取り外せなく,冷却ファンの保守交換ができなくなることがなくなった。ねじを緩める作業がなくなり,マイナスドライバーなどで前記の係止爪をおさえることによりファンカバーを取り外すことができ,ファンの保守交換を簡単に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
ファンカバーをめっき用電源装置の筐体へ簡単に装着し取り外すという目的を,部品点数と作業工数を削減した上で実現した。
【0010】
図1は本発明の実施例であって,めっき用電源装置1の裏面パネル14の内側に冷却ファン4を配置している。裏面パネル14の冷却ファン4の配置位置に対応する部分には,冷却ファン4の保守交換をするために必要な寸法で一部をカットしている。裏面パネル14のカットした部分にはカット部17を覆うファンカバー3を取り付ける。ファンカバー3には,冷却用空気を排出あるいは吸入するための開口部15を配置している。尚、筐体2とファンカバー3はともに樹脂で形成されている。
【0011】
ファンカバー3と筐体2との係止の構造は,一部を引っ掛け10とし,一部を樹脂の弾性を利用した係止爪6による嵌め合い構造とし,本実施例ではともに2箇所で行っている。
【0012】
図2に筐体2の係止部5及びファンカバー3の係止爪6の構造を断面図を用いて説明する。図2の(1)は,筐体2の係止部5の説明図で,係止溝8を設けている。図2の(2)は,ファンカバー3の係止爪6の構造の説明図で,折り返した形状の係止爪6と係止爪6上に突起7を形成している。ファンカバー3を筐体2に嵌め合わせると,図2の(1)に破線で表しているようにファンカバー3の突起7が筐体2の係止溝8に嵌り,ファンカバー3は筐体2に係止する。
【0013】
ファンカバー3の係止爪6は,突起部7から係止爪6の先端部18までの外方に向かう部分は,ファンカバー3を筐体2に係合させたとき,筐体との間に隙間9を生じるように,筐体2の係止部5との接触面よりも厚みを薄く形成している。
【0014】
ファンカバー3を取り外す場合は,筐体2の係止部5とファンカバー3の係止爪6との隙間9にマイナスドライバ−16のようなもので係止爪6を押さえて,係止爪6の突起7を筐体2の係止部5の係止溝8から離し,ファンカバー3の筐体2との係止を解除し,ファンカバー3を取り外す。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明はめっき用電源装置を対象としたが,めっき用電源装置以外の電源装置や電気装置であっても,冷却ファンの保守交換用窓のカバーの係止構造として活用できる。 さらに,保守交換の対象は冷却ファンだけには限らず,半導体素子・ヒューズ・制御用プリント基板など他の保守交換を要する部品に対する保守交換操作用の窓のカバーに対する係止構造として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例
【図2】本発明の内容を説明する係止部の詳細断面図
【図3】従来の実施例
【符号の説明】
【0017】
1 めっき用電源装置
2 筐体
3 ファンカバー
4 冷却ファン
5 係止部
6 係止爪
7 突起
8 係止溝
9 隙間
10 引っ掛け
11 ねじ
12 入出力配線用端子台
13 制御配線用端子台
14 裏面パネル
15 開口部
16 マイナスドライバー
17 カット部
18 係止爪の先端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に冷却ファンを収容し,筐体の少なくとも一面から排気あるいは吸気を行い,配置された冷却ファンに対面する裏面パネルの部位をカットし,裏面パネルのカットした部分にはファンカバーを取り付け,筐体及びファンカバーは樹脂で形成された空冷式めっき用直流電源装置において,ファンカバーを筐体に装着するための係止構造は,ねじを使用することなく,樹脂の弾性を利用した構造としたことを特徴とするファンカバーの係止構造。
【請求項2】
請求項1のファンカバーの係止構造において,ファンカバーには弾性を有する係止爪と係止爪上の突起を備え,筐体には係止溝を備え,係止爪上の突起と係止溝が嵌め合うことで係止することを特徴とするファンカバーの係止構造。
【請求項3】
請求項2のファンカバーの係止構造において,ファンカバーの係止爪は折り返し形状とすることにより弾性を有する係止爪とすることを特徴とするファンカバーの係止構造。
【請求項4】
請求項3のファンカバーの係止構造において,ファンカバーを筐体に装着した状態で,筐体の係止部とファンカバーの係止爪との間に隙間を設け,前記の隙間から係止爪を押さえることで,係止爪と係止溝との嵌め合いが解除され,カバーを取り外す構造としたことを特徴とするファンカバーの係止構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−344661(P2006−344661A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−166962(P2005−166962)
【出願日】平成17年6月7日(2005.6.7)
【出願人】(000144393)株式会社三社電機製作所 (95)
【Fターム(参考)】