説明

めっき被覆アルミニウム合金、及びそのシリンダーブロック、めっき処理ライン、めっき方法

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、シリコンを含有するめっき被覆アルミニウム合金(ADC材、AC材、展伸材等)、該合金を用いたシリンダーブロック、該合金を製造するためのめっき前処理方法、めっき方法、めっき処理ラインに関する。本発明は、二輪車や四輪車の部品等のめっき、例えば、内燃機関に用いるアルミニウム合金鋳物製のシリンダーブロックのシリンダー内面、ピストン、クラッチ等へのめっきに適用される。なお、ピストンとクラッチカバーについては、ホーニング加工は行われない。
【0002】
【従来の技術】従来、アルミニウム合金への一般的なめっき方法として、2回亜鉛置換法(ダブルジンケート法)が知られている。この方法は、現在、工業的に最も多く採用されており、表1に示すような15の工程、すなわち、中性脱脂、水洗、アルカリ脱脂、水洗、アルカリエッチング、水洗、混酸処理、水洗、亜鉛置換、水洗、酸浸漬、水洗、亜鉛置換、水洗、めっきの各工程からなる。この方法は、亜鉛置換を2回行なうため、密着性が良好であるが、前処理工程として14の工程があるため、前処理時間が長く、また、工程が複雑であるため、信頼性に欠け、ライン管理が困難であり、コスト高となり、さらに処理液の管理も煩雑であるという欠点がある。
【0003】さらに、前処理工程で用いる混酸(硝酸とフッ酸)の取扱いが非常に難しく、耐酸性治具を用いなければならず、安全性等に注意を払う必要がある。例えば、シリンダーブロックをフロー方式によってめっきする場合、チャック面をシールする必要があり、処理工程が多いとシール回数も多くなり、シール不良が発生する危険性が高い。特に混酸等は、シール材を腐食し易く、シール不良による液漏れを起こす原因となるので、取扱いに注意を要する。なお、亜鉛置換法で用いる亜鉛(Zn)以外にFe、Cu、Ni等を添加した多元合金置換剤も開発されている。
【0004】
【表1】


【0005】また、陽極酸化法(アルマイト法)も知られている。この方法は、アルミニウム合金に陽極酸化処理を行い、多孔性の酸化皮膜を生成させ、この酸化皮膜をアンカーとして、めっきを行なうものである。この方法は、表1に示すように、11の工程、すなわち、中性脱脂、水洗、アルカリ脱脂、水洗、アルカリエッチング、水洗、混酸処理、水洗、陽極酸化処理、水洗、めっきの各工程からなる。この方法は、処理工程が長く、また、大きな凹凸を形成させることができないため、アンカー効果が小さいという欠点がある。さらに、アルミニウム合金とめっき皮膜の間にアルマイトの中間層が存在するため、密着不良が発生する危険性が大きい。さらに、この方法は、アルミニウム合金中の不純物(Si等)が多いと密着性が悪くなり、信頼性に欠けるという欠点がある。陽極酸化法として、特開平3−191095号公報に記載されているように、混酸処理を省き、工程を短くする方法も提案されている。しかし、混酸処理を省略すると、アルカリエッチングにより発生するスマットが除去されないので、そのままめっきを施すと、アルミニウム合金素材とめっき皮膜との界面にスマットが残留し、密着性が悪くなるという欠点がある。
【0006】これに対し、従来の方法の陽極酸化法によって得られるめっき被覆アルミニウム合金の断面を模式図で示すと、図10の通りである。図10に示すように、めっき皮膜(めっき層)91と、シリコンを含有するアルミニウム合金93の間に、陽極酸化皮膜92が、層状に形成される。このため、めっき皮膜91とアルミニウム合金93の間のアンカー効果を得ることができず、密着性が劣ることになる。
【0007】また、特公平2−40751号公報に記載されているような反転電解活性化法も知られている。この方法は、アルミニウム合金を電解液中に浸漬し、正及び負の電圧を交互に印加して、表面を活性化させる方法である。しかし、印加電圧の正負を反転させ、かつ反転比率を任意にコントロールすることのできる特殊な電源が必要であるため、設備コストが高くなる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来の技術である亜鉛置換法や陽極酸化法と比べて、工程が短く、簡易で、しかもめっきの密着性が高いアルミニウム合金上のめっき前処理方法、めっき方法、及びめっき被覆アルミニウム合金、さらにそれを用いたシリンダーブロックを得ることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明のめっき被覆アルミニウム合金は、シリコンを含有するアルミニウム合金と、該アルミニウム合金の表面に形成されためっき層と、該アルミニウム合金と該めっき層の間に橋渡しされた状態で存在するシリコンとからなることを特徴とする。本発明のめっき被覆アルミニウム合金においては、さらに、上記アルミニウム合金と上記めっき層の界面に凹凸が形成されたものとすることができる。本発明のめっき被覆アルミニウム合金は、さらに、上記アルミニウム合金と上記めっき層の間に、酸化されたアルミニウム合金層を含むことができる。本発明のめっき被覆アルミニウム合金は、例えば、シリンダーブロックとして好適に用いられる。
【0010】本発明のアルミニウム合金上のめっき前処理方法は、シリコンを含有するアルミニウム合金を陽極電解エッチングして、該アルミニウム合金の表面からシリコンを突出させる工程を含むことを特徴とする。本発明のアルミニウム合金上のめっき前処理方法において、上記陽極電解エッチングによって、さらに、上記アルミニウム合金の表面に凹凸を形成させることができる。本発明のアルミニウム合金上のめっき前処理方法において、シリコンを含有するアルミニウム合金を陽極とし、不溶性電極を陰極とし、電解液中で通電することによって、上記陽極電解エッチングを行なうことができる。
【0011】本発明のアルミニウム合金上のめっき方法は、シリコンを含有するアルミニウム合金を陽極電解エッチングして、該アルミニウム合金の表面からシリコンを突出させる工程と、めっき工程を含むことを特徴とする。本発明のアルミニウム合金上のめっき方法において、上記陽極電解エッチングによって、さらに、上記アルミニウム合金の表面に凹凸を形成させることができる。本発明のアルミニウム合金上のめっき方法は、上記めっき工程の前に、シリコンが突出した上記アルミニウム合金の表面を陽極酸化する工程を含むことができる。本発明のアルミニウム合金上のめっき方法において、シリコンを含有するアルミニウム合金を陽極とし、不溶性電極を陰極とし、電解液中で通電することによって、上記陽極電解エッチングを行なうことができる。上記電解液として、リン酸、硫酸、スルファミン酸等を用いることができる。本発明のアルミニウム合金のめっき処理ラインは、脱脂処理部と、電解エッチング処理部と、めっき処理部を含むことを特徴とする。本発明のアルミニウム合金のめっき処理ラインは、さらに、陽極酸化処理部を含むことができる。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明で用いるアルミニウム合金としては、例えば、ADC材、AC材、展伸材等を挙げることができる。より具体的には、JIS規格のAC4C、AC4B、AC4D、AC8A、ADC10、ADC12等を挙げることができる。特にアルミニウムダイカスト合金(ADC12等)は、金型成形されるので、砂型を使用するアルミニウム鋳造品と比べて、表層部の冷却速度が大きい。このため、成形品の表層部には、シリコンの密度が高くて、結晶粒の細かいチル層が、存在する。したがって、同じ合金組成(主にシリコン含有量)をもつアルミニウム鋳造品と比べて、アルミニウムダイカスト合金は、陽極電解エッチングによって表面に突出するシリコン量が多く、その形状も複雑で細かくなる。陽極電解エッチング処理したアルミニウム合金上にめっきすると、めっきがシリコン晶の隙間に入り込み、非常に大きなアンカー効果を得ることができる。
【0013】本発明の方法は、例えば、脱脂、水洗、陽極電解エッチング、水洗、めっきの順で行うことができる。
【表2】


【0014】脱脂は、NG30(キザイ社製)等の脱脂剤を用いて、40〜50℃の温度で5〜15分間行なう。陽極電解エッチングは、シリコンを含有するアルミニウム合金を電解液中に浸漬させ、該アルミニウム合金を陽極とし、不溶性電極を陰極として行う。この処理によって、シリコン含有アルミニウム合金中のアルミニウム成分が溶解して、シリコンがアルミニウム合金の表面に突出すると共に、アルミニウム合金の表面上に凹凸が形成される。この過程を図1に示す。図1中、(a)は、電解エッチング前の状態を表す。アルミニウム合金2中にシリコン1が含有されている。(b)は、電解エッチング後の状態を表す。(c)は、めっき後の状態を表す。シリコン1は、アルミニウム合金2とめっき皮膜(めっき層)3の間に橋渡しされた状態で存在する。
【0015】ここで、電解液としては、例えば、リン酸、硫酸、スルファミン酸等を用いることができる。電解液としてリン酸を用いる場合、40〜900g/Lの濃度、50〜100℃の温度、20〜400A/dm2 の陽極電流密度で、電解エッチングする。濃度が40g/L未満では、アルミニウムが溶解せず、シリコンの析出が不十分となって、十分なアンカー効果が得られないため、密着性が悪くなる。濃度が900g/Lを越えると、廃液処理や取扱いが困難になる。温度が50℃未満では、アルミニウムの表面に陽極酸化皮膜が生成するために、アルミニウムが溶解せず、シリコンの析出が不十分となって、十分なアンカー効果が得られず、めっきの密着性が悪くなる。温度が100℃を越えると、蒸発量が多く、頻繁に電解液を補給することが必要になり、好ましくない。陽極電流密度が20A/dm2 未満では、エッチング効果がなく、めっきの密着性が悪くなる。陽極電流密度が400A/dm2 を越えると、発熱量が多く、冷却装置が必要となり、好ましくない。
【0016】電解液としてスルファミン酸を用いる場合、75〜600g/Lの濃度、65〜100℃の温度、50〜300A/dm2 の陽極電流密度で、電解エッチングする。濃度が75g/L未満では、アルミニウムが溶解しないので、シリコンが析出せず、十分なアンカー効果が得られず、めっきの密着性が悪くなる。濃度が600g/Lを越えると、スルファミン酸が溶解せず、飽和した状態となるため、好ましくない。温度が65℃未満では、アルミニウムが溶解せず、シリコンの析出が不十分となって、十分なアンカー効果が得られず、めっきの密着性が悪くなる。温度が100℃を越えると、蒸発量が多くなり、頻繁に電解液を補給することが必要になり、好ましくない。陽極電流密度が50A/dm2 未満では、アルミニウムが溶解せず、シリコンの析出によるアンカー効果が得られない。陽極電流密度が300A/dm2 を越えると、発熱量が多く、冷却装置が必要になり、好ましくない。めっき液にスルファミン酸ニッケル液を用いる場合には、前処理後の水洗が不要になり、工程を短縮することができる。
【0017】電解液として硫酸を用いる場合、75〜600g/Lの濃度、50〜100℃の温度、50〜200A/dm2 の陽極電流密度で、電解エッチングする。濃度が75g/L未満では、アルミニウムの表面に陽極酸化皮膜が形成され、アルミニウムが溶解せず、シリコンの析出によるアンカー効果が得られず、めっきの密着性が悪くなる。濃度が600g/Lを越えると、廃液の処理や取扱いが困難となり、好ましくない。温度が50℃未満では、アルミニウム表面に陽極酸化皮膜が形成され、アルミニウムが溶解せず、シリコンの析出によるアンカー効果が得られず、めっきの密着性が悪くなる。温度が100℃を越えると、蒸発量が多くなり、頻繁に電解液を補給することが必要になり、好ましくない。陽極電流密度が50A/dm2 未満では、アルミニウムが溶解せず、アンカー効果が得られず、めっきの密着性が悪くなる。陽極電流密度が200A/dm2 を越えると、発熱量が多く、冷却装置が必要になり、好ましくない。
【0018】電解液としてリン酸と硫酸の混合液を用いる場合、リン酸0〜900g/L、硫酸0〜600g/Lの濃度、50〜100℃の温度、50〜300A/dm2の陽極電流密度で、電解エッチングする。リン酸と硫酸の混合比率については、特に制限はない。ただし、例えば、硫酸の混合割合が極めて小さい場合には、リン酸の濃度を少なくとも約40g/Lとする必要がある。温度範囲の限定理由、及び陽極電流密度の数値範囲の限定理由については、上記リン酸のみの場合または硫酸のみの場合と同じである。
【0019】リン酸と硫酸の混合液を用いた場合、次のような利点がある。すなわち、リン酸のみを用いた場合、電気抵抗が大きいため、発熱し易く、温度の管理が難しい。硫酸のみを用いた場合、電気抵抗は小さいが、陽極酸化皮膜が生成し易い。この点、リン酸と硫酸の混合液は、リン酸のみの場合と比べて、電気抵抗が小さく、発熱量が少なくなり、液温の管理が簡便になる。さらに、陽極酸化皮膜が生成せず、アルミニウムの溶解を促進し、シリコンの析出によるアンカー効果が得やすくなり、めっきの密着性が高まる。
【0020】電解時間は、上記いずれの種類の電解液を用いても、2〜15分間(通常、2〜5分間程度)である。不溶性電極としては、例えば、SUS(SUS304等)、Pt、Ti、TiにPtめっきを施したもの等を用いることができる。
【0021】めっきとしては、Ni−P−SiCめっき、Ni−Pめっき、Ni−SiCめっき、硬質クロムめっき等を挙げることができる。中でも、シリンダーブロックをめっきする場合、耐摩耗性の点から、特に好ましくはリンを添加したNi−Pめっき皮膜や、SiCを分散したNi−SiCめっき皮膜や、Ni−P−SiCめっき皮膜である。めっきは、通常、3.5〜4.5のpH、55〜60℃の温度のめっき浴中で、5〜20A/dm2 の電流密度で20〜60分間、通電することによって行なう。陽極電解エッチング処理後のアルミニウム合金上にめっきを施すと、シリコンの突出とアルミニウム合金上の凹凸の形成の双方のアンカー効果によって、密着性の良好なめっき皮膜(めっき層)を得ることができる。
【0022】次に、本発明の方法においては、シリコンの形状が、微細で凹凸形状をしていることが望ましく、また、アルミニウム合金中のシリコン濃度が高いことが望ましい。具体的には、アルミニウム合金の断面積104 μm2 当たり、シリコンの周囲長さの合計の平均値が、500μm以上であることが好ましい。また、シリコンを含有するアルミニウム合金中のシリコンの含有率が、4.5重量%以上であることが好ましい。
【0023】この点、従来法の亜鉛置換法においては、シリコン濃度が低いことが好ましい。亜鉛置換法では、アルカリエッチングにより、シリコンを主成分とするスマットが発生して表面に残留するため、スマットを次工程の混酸処理で除去する必要がある。しかし、除去しきれずにスマットが残留した場合、めっきの密着不良を起こすおそれがある。したがって、亜鉛置換法では、スマットの発生しない組成のアルミニウム合金、すなわち、シリコン含有量の少ないアルミニウム合金を用いることが望ましい。また、シリコンは、亜鉛置換反応においても活性が低いため、亜鉛粒子が析出しにくく、密着不良の要因となりやすい。従来法の陽極酸化法においても、アルミニウム合金中のシリコン濃度が低いことが好ましい。シリコンは、導電性が悪いため、陽極酸化反応時に通電しにくく、シリコンの存在する部位にはアルマイト層が形成されにくいからである。
【0024】本発明のめっき方法においては、また、陽極電解エッチング後に、ワーク表面のシリコン晶以外のアルミニウム合金部分に陽極酸化皮膜を生成させ、アルミニウム合金部分を多孔質化することもできる。陽極酸化後にめっきを行なうことによって、橋渡しされたシリコンと、ワーク表面の凹凸と、上記生成した多孔質とによって、密着性の高いめっき皮膜を形成させることができる。これによって、任意のシリコン濃度のアルミニウム合金に対して、優れた密着性を得ることができる。陽極酸化処理においては、陽極電解エッチングと全く同様の治具、設備、電解液を用いることができる。
【0025】前処理工程を少なくとも脱脂、電解エッチング、陽極酸化処理の3工程とした場合のアルミニウム合金製の4サイクルシリンダーの製造ラインを、図2を参照して、説明する。図2において、シリンダー機械加工ライン23、めっき処理ライン24、シリンダーホーニング加工ライン25を含む。アルミニウム合金製の4サイクルシリンダーは、シリンダー機械加工ライン23中で機械加工された後、めっき処理ライン24に投入される。めっき処理ラインにおいて、まず、脱脂処理槽11で切削油等の油分を除去した後、水洗槽12、13で水洗して、電解エッチング処理槽14に投入する。電解エッチング処理後、水洗槽15、16で水洗した後、陽極酸化処理槽17に投入する。陽極酸化処理の後、水洗槽18、19で水洗した後、めっき処理槽20でめっき処理し、さらに水洗槽21、22で水洗する。その後、シリンダーホーニング加工ライン25でホーニング加工する。
【0026】脱脂処理槽11及び水洗槽12、13を合わせて、脱脂処理部と呼び、電解エッチング槽14及び水洗槽15、16を合わせて、陽極電解エッチング部と呼び、陽極酸化処理槽17及び水洗槽18、19を合わせて、陽極酸化部と呼び、めっき槽20と水洗槽21、22を合わせて、めっき処理部と呼ぶ。ラインにおいて、アルミニウム合金成形体(ワーク)の搬送方法は、特に限定されず、任意である。例えば、レールに沿ってライン上を移動するワークチャックにワークを把持させて搬送することができる。なお、本発明において、陽極酸化部を省略することもできる。
【0027】陽極酸化処理は、リン酸、硫酸、シュウ酸等を電解液として行われる。中でも、リン酸が好ましく用いられる。リン酸を電解液として用いた場合、リン酸50〜500g/L、温度10〜60℃、電流密度2〜30A/dm2 、2〜15分間(通常、2〜5分間程度)の条件で、陽極酸化処理が行われる。電解エッチング処理と陽極酸化処理において、共に電解液としてリン酸を用いれば、電解エッチング処理後の水洗工程を省略することができ、また、ラインが短縮化され、生産性が向上する。
【0028】図3は、陽極酸化処理の工程を含む本発明の方法によって得られるめっき被覆アルミニウム合金の断面の模式図である。図3において、アルミニウム合金31とめっき層33の間には、アルミニウム合金の酸化層32が存在する。また、アルミニウム合金から突出したシリコン34は、めっき層33に対し、アンカー効果を与えている。
【0029】図4に、シリンダーを電解エッチングする装置の一例を示す。図4において、下部フレーム41a及び上部フレーム41bを有するフレーム41の下部フレーム41a上に、絶縁板46、電極板47、絶縁板48、電極板49、シリンダー(ワーク)50、パッキング52、上部治具53が配置されている。これらの部材の各々の中央には、シリンダーの内径と同じ径の孔が穿設してあり、これらの中心が全て同一軸線上に並ぶように配置され、液の通路が形成されている。また、これらの部材は、エアシリンダー55によって、押圧ロッド55aを介して、下方に押し付けられて固定される。電解液は、液槽42からポンプ44により圧送され、下部フレーム41aの下側に配設された液流入部45から流入し、シリンダーの内面を通って、上部治具53に配設された液流出部54から液槽42へ排出される。電極板47の孔部中央には電極支持47aが設けられ、この電極支持部47aに不溶性陰極(ステンレス製丸棒)の電極51が、電解液の通路の中央に位置するように支持固定される。通常は、電極51がマイナス、シリンダー(ワーク)50がプラスとなるように、電極板47をマイナス、電極板49をプラスとして、電源43から通電する。
【0030】このように、シリンダーの内面のみに電解液を流して、電解エッチングを行えば、余分な部分をエッチングすることがなく、また、手間のかかるマスキング等を必要としないため、効率が良い。また、陽極酸化処理を行う装置は、処理液が異なるだけで電解エッチングとほぼ同じ構造である。
【0031】特に、電解エッチング処理と陽極酸化処理の両方にリン酸を使用する場合は、配管及び装置を共通化することができる。図5中の符号の大部分は、図4と同様であるので、説明を省略する。図5において、液槽42に電解エッチング用のリン酸を、液槽42aに陽極酸化用のリン酸をそれぞれ入れ、三方弁56a、56bにより、順次流して、連続的に処理することができる。この場合、ワークであるシリンダーを固定したままの状態で、液を切り替えるだけでよいため、ワークを搬送する必要がなく、一連の処理の効率が良い。この場合のめっき処理ラインは、図6に示すように、さらに短縮することができる。すなわち、図2と比べて、水洗槽15、16を省略することができ、電解エッチング槽14と陽極酸化処理槽17を同じ装置で兼用することができる。シリンダーをめっきする装置は、上記電解エッチング装置とほぼ同じ構造であり、シリンダー(ワーク)50が陰極となり、電極51が陽極となる点、及び、電解液が異なる点を除き、図5と同様である。
【0032】次に、シリンダーブロックに前処理及びめっきを施す場合の装置の概略を、図7を参照して説明する。図7において、シリンダーブロック61は、下部治具63上に下部パッキング68を介して載置され、シリンダーの上部は、上部治具62及び上部パッキング67によって密封される。シリンダーブロック61と治具62、63のチャックは、エアシリンダーによる押圧方法やボルトによる固定等によって行なうことができる。前処理の電解液及びめっき液は、処理液タンク70からポンプ69により圧送され、処理液の流入口66から流入し、シリンダー内面を通って、上部治具62に配置された処理液流出口65を通って、処理液タンク70へ排出される。電極64は、シリンダーの中央に位置するように下部治具63に固定され、シリンダーブロック61と共に電源71に接続される。陽極電解エッチング及び陽極酸化処理の時は、電極64をマイナス、シリンダーブロック61をプラスとなるように通電する。めっきも同様な装置で電極64をプラス、シリンダーブロック61をマイナスに接続して行なう。このように、シリンダー内面のみに処理液を流すフロー方式は、ワークを処理液に浸漬させる方式に比べ、マスキング等が不要であり、余分な部分を処理する必要がないため、処理液の寿命も長く、効率的である。
【0033】シリンダーブロックの製造方法としては、AC4B材(Siの含有率:7〜10%)やAC4C材(Siの含有率:6.5〜7.5%)を用いた低圧鋳造法や、ADC12材(Siの含有率:9.6〜12%)を用いたダイキャスト法が一般的である。本発明のめっき前処理方法は、混酸を用いないため、安全性に優れるという利点を有する。特に図7に示すように、処理液をポンプ69で循環させる方式の場合には、その効果が著しい。この点を詳述すると、次の通りである。
【0034】一般の自動車用のシリンダーブロックでは、筒状部分の一端側にクランクケースが連結された構造となっており、複数のシリンダーを有する多気筒エンジンでは、クランクケースの各気筒間には隔壁が配設されている等、構造的に平らな部分が少ないため、シリンダーの開口部のシール方法が難しく、シールが不完全になり易い。しかし、混酸は、有毒であり、漏れ出すと大変危険である。したがって、シリンダーの開口部をシールして、処理液が漏れるのを防止する必要がある。また、強力な腐食性を有する混酸に対応して、配管、治具、ポンプ等を耐酸性材料とする必要があり、設備コストが高くなる。この点、本発明のめっき前処理方法では、混酸を用いないため、これらの欠点がない。
【0035】また、シリンダーブロックを各処理用治具へ搬送し、その都度チャックを行なう自動めっき処理ライン等においては、2回亜鉛置換法のように工程数が多いと、チャック回数も多くなるため、シール不良による液漏れが発生し易くなり、危険性が高くなる。この点、本発明のめっき前処理は、工程数が少ないので、シール不良を起こす可能性が低く、安全性の面で好ましい。さらに、電解エッチングと陽極酸化処理に用いる電解液をどちらもリン酸とすれば、電解エッチングと陽極酸化処理の間の水洗工程を省略できるだけでなく、搬送する必要がないので、チャックも1回で足り、液漏れの危険性が小さくなる。さらにラインを短縮することができ、生産性を向上させることができる。
【0036】
【実施例】以下、実施例及び比較例によって、本発明を説明する。
実施例1シリコンを含有するアルミニウム合金である「AC8A」(JIS呼称)を、水溶性脱脂剤「NG30」(キザイ社製)を用いて、45℃で10分間、中性脱脂した後、水洗した。「AC8A」の化学成分は、11.0〜13.0%のSi、0.8%のFe、0.8〜1.3%のCu、0.15%のMn、0.7〜1.3%のMg、0.15%のZn、0.8〜1.5%のNi、0.20%のTi、0.05%のPb、0.05%のSn、0.10%のCr、残部のAlである。
【0037】次に、脱脂したアルミニウム合金を電解液(200g/Lのリン酸水溶液、80℃)に浸漬し、100A/dm2 の電流密度で10分間電解エッチングした。不溶性電極として、SUS304を用いた。電解エッチング処理したアルミニウム合金を、pH4.0、温度57±2℃のめっき浴条件下で、5A/dm2 の電流密度で5分、通電し、さらに20A/dm2 の電流密度で30分、通電して、Ni−P−SiCめっきを施した。用いためっき浴の組成は、スルファミン酸ニッケル(Ni(NH2 SO3 2 ・4H2O)535mL/L、塩化ニッケル(NiCl2 ・6H2 O)15g/L、ホウ酸(H3 BO3 )45g/L、サッカリンソーダ3.2g/L、次亜リン酸1.5g/L、炭化珪素(SiC)40g/Lである。
【0038】めっき被覆アルミニウム合金の断面の顕微鏡写真(倍率:400倍)を図8に示す。図8において、下層の白い部分がシリコンを含有するアルミニウム合金であり、上層の灰色の部分がめっき皮膜であり、下層から上層の下部にかけて粒状または帯状に散在するものがシリコンである。上層中に点在するものは、SiC粒子である。めっき後に、めっきとアルミニウム合金の界面にカッターナイフを入れて剥離させることができるかどうかを調べる密着性試験を行った。
【0039】比較例1前処理として亜鉛置換を表1に示す条件で行い、その後、実施例1と同様のスルファミン酸ニッケル浴によるNi−P−SiCめっきを施し、実施例1と同様の密着性試験を行なった。
【0040】比較例2前処理として陽極酸化法を表1に示す条件で行い、その後、実施例1と同様のスルファミン酸ニッケル浴によるNi−P−SiCめっきを施し、実施例1と同様の密着性試験を行なった。めっき被覆アルミニウム合金の断面の顕微鏡写真(倍率:400倍)を図11に示す。図11R>1において、下層がアルミニウム合金であり、中間層(黒色)が陽極酸化皮膜であり、上層がめっき皮膜である。
【0041】以上の密着性試験の結果、及びめっき方法の工程数を表3に示す。本発明のめっき方法によって得られためっき皮膜(実施例1)は、剥離せず、良好な密着性を示した。亜鉛置換法により得られためっき皮膜(比較例1)は、良好な密着性を示すが、工程数が多く、処理時間が大きい等の欠点がある。陽極酸化法によって得られためっき皮膜(比較例2)は、小片状に剥離し、密着性が劣る。
【0042】
【表3】


【0043】実施例2〜5、比較例3次に、シリコン含有量およびシリコン晶の組織状態の異なるアルミニウム合金を用いて、めっき皮膜の密着性テストを行なった。陽極電解エッチング(前処理)およびめっきの各条件は、実施例1と同様である。めっきの密着性は、テストピース(40mm×50mm)を切り出し、めっき皮膜とアルミニウム合金の界面にカッターナイフを挿入して、剥離させて評価した。
【0044】テストピースとして、表4に示すように、シリコン含有量およびシリコン晶形状の異なるA5052(比較例3)、AC4D(実施例2)、ADC12(実施例3)、A4032(実施例4)、オリジナル(実施例5)の5種類のアルミニウム合金を使用した。なお、アルミニウム合金の呼称は、オリジナルのものを除き、いずれもJIS規格におけるものである。表4に示すように、シリコン含有量が0.25%では、アンカーとなるシリコンが少ないため、密着性が悪かったが、4.5%以上のアルミニウム合金では、良好な密着性が得られた。
【0045】また、シリコン晶の形状も密着性に影響しており、微細で凹凸形状になっているのが好ましい。凹凸形状の度合を評価するため、図9のようにシリコン晶の周囲長を測定した。図9において、シリコン晶81の外周に沿って測定した長さが、周囲長さ82である。測定は、アルミニウム合金の切断面を鏡面研磨した後、顕微鏡(倍率:400倍)で研磨面を観察し、画像処理/解析装置(ニレコ社製、ルーゼックスIID)を用いて、シリコン晶の周囲長さを測定した。100μm×100μm(104 μm2 )の断面に含まれるシリコン晶の周囲長さの合計を表4に示す。表4から、密着性の向上のために、周囲長さは、好ましくは500μm/104 μm2 以上、より好ましくは3000μm/104 μm2 以上必要であることがわかる。
【0046】
【表4】


◎ 非常に良い○ 良い△ 悪い× 非常に悪い
【0047】一般に、アルミニウム合金中のシリコン晶の形状は、冷却速度の影響を受けやすく、冷却速度が大きいと微細となり、徐々に冷却されるとシリコン晶が粗大となる傾向がある。アルミニウム合金の製造方法には、砂型鋳造法やダイカスト法等があり、ダイカスト法は、金型を用いるため、放熱性が良く、冷却速度が大きいので、シリコン晶が微細になることが知られている。ただし、本発明は、ダイカスト法に限定されるものではない。製造方法の種類にかかわらず、アルミニウム合金中のシリコン含有量が4.5%以上、またはシリコン周囲長さ500μm/104 μm2 以上であるシリコン含有アルミニウム合金に適用することができる。
【0048】実施例6〜8、比較例4〜5実施例1と同様の条件で、表5に示す種々のアルミニウム合金(実施例6〜8)をめっきした。めっき後、実施例1と同様のめっき密着性試験を行った。また、アルミニウム合金としてADC10を用い、亜鉛置換法(比較例4)または陽極酸化法(比較例5)でめっきを行なった。その結果を表5に示す。
【0049】
【表5】


◎ 非常に良い○ 良い△ 悪い× 非常に悪い
【0050】以上の実施例および比較例で用いたアルミニウム合金の成分組成を表6に示す。
【表6】


【0051】実施例9、比較例6シリコン含有アルミニウム合金であるAC4B(Si7〜10%)、AC4C(Si6.5〜7.5%)、ADC12(Si9.6〜12.0%)について、本発明の前処理方法と、従来技術の亜鉛置換法を用いて、前処理を行い、その上にスルファミン酸ニッケル浴によるNi−P−SiCめっきを施し、密着性の比較を行った。本発明の前処理方法の条件を表7に、亜鉛置換法の条件を表8に、両者に共通のめっき条件を表9に示す。密着性の評価は、めっき皮膜とアルミニウム合金との界面にカッターナイフを入れて、剥離させる密着性試験によって行なった。その結果を表10に示す。
【0052】
【表7】


【0053】
【表8】


【0054】
【表9】


【0055】
【表10】


○:良い ×:悪い
【0056】表10から、本発明の前処理方法によると、試験を行った全ての合金について良好な密着性を示すことがわかる。亜鉛置換法では、ADC12に対して十分な密着性を得ていない。
【0057】以下の実施例10〜28及び比較例7〜18は、めっきの電解液の種類、濃度、温度を変えて、めっきの密着性の評価を行なった実験例である。アルミニウム合金(テストピース)に対し、脱脂、陽極電解エッチング、めっきの順に処理を施した後、めっきの密着性を調べた。テストピースとしては、ADC12製50×60×1.2mm板を用いた。脱脂は、NG30(キザイ社製)等の脱脂剤を用いて、40〜50℃の温度で5〜10分間行なった。また、めっきは、pH4.0、温度57±2℃のめっき浴条件下で5A/dm2 の電流密度で5分通電し、さらに20A/dm2 の電流密度で30分通電して、Ni−P−SiCめっきを施した。めっき浴の組成は、スルファミン酸ニッケル535ml/L、塩化ニッケル15g/L、ホウ酸45g/L、サッカリンソーダ3.2g/L、次亜リン酸1.5g/L、炭化珪素40g/Lであった。
【0058】実施例10〜16、比較例7〜10実施例10〜16、比較例7〜10は、電解液として、リン酸を用いた実験例である。温度を一定にして、リン酸の濃度を変化させた場合、及び、リン酸の濃度を一定にして、温度を変化させた場合について調べた。陽極電流密度を100A/dm2 とし、表11及び表12に示す条件で、陽極電解エッチングを行なった後、めっきを施し、カッターによる剥離テストを行い、密着性の評価を行った。密着性の評価は、処理後のテストピースを切断し、めっき皮膜と母材の間にカッターの刃を入れて、皮膜が剥がれるかどうかを確認することによって行なった。
【0059】
【表11】


○:密着性が良好×:密着性が比較的悪い
【0060】
【表12】


○:密着性が良好×:密着性が比較的悪い
【0061】実施例17〜21、比較例11〜12実施例17〜21、比較例11〜12は、電解液として、スルファミン酸を用いた実験例である。温度を一定にして、スルファミン酸の濃度を変化させた場合、及び、スルファミン酸の濃度を一定にして、温度を変化させた場合について調べた。陽極電流密度を100A/dm2 とし、表13及び表14に示す条件で、陽極電解エッチングを行なった後、めっきを施し、カッターによる剥離テストを行い、密着性の評価を行った。
【0062】
【表13】


○:密着性が良好×:密着性が比較的悪い
【0063】
【表14】


○:密着性が良好×:密着性が比較的悪い
【0064】実施例22〜26、比較例13〜17実施例22〜26、比較例13〜17は、電解液として、硫酸を用いた実験例である。温度を一定にして、硫酸の濃度を変化させた場合、及び、硫酸の濃度を一定にして、温度を変化させた場合について調べた。陽極電流密度を100A/dm2 とし、表15及び表16に示す条件で、陽極電解エッチングを行なった後、めっきを施し、カッターによる剥離テストを行い、密着性の評価を行った。
【0065】
【表15】


○:密着性が良好×:密着性が比較的悪い
【0066】
【表16】


○:密着性が良好×:密着性が比較的悪い
【0067】実施例27〜28、比較例18実施例27〜28、比較例18は、電解液として、リン酸と硫酸の混合液を用いた実験例である。混合液の濃度を一定にして、温度を変化させた場合について調べた。陽極電流密度を100A/dm2 とし、表17に示す条件で、陽極電解エッチングを行なった後、めっきを施し、カッターによる剥離テストを行い、密着性の評価を行った。
【0068】
【表17】


○:密着性が良好×:密着性が比較的悪い
【0069】
【発明の効果】本発明の方法によると、従来の亜鉛置換法や陽極酸化法と比べて、工程が少なくて、処理時間が短く、生産効率が向上し、設備の小型化やコストダウンを図ることができる。取扱いの困難な混酸も、不要である。また、シリコン含有量の高いアルミニウム合金に、密着性の良好なめっきを施すことができる。さらに、アルミニウム合金の中でもADC12等は、めっき前処理が難しいため、従来、ADC12シリンダーに、鋳鉄スリーブを圧入または鋳込みにより挿入していた。これに対し、本発明では、鋳鉄スリーブが不要となり、軽量化や冷却性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のめっき方法の工程を示す図である。
【図2】本発明のめっき方法のシリンダー加工ラインの一例を示す図である。
【図3】本発明の方法を用いて得られるめっき被覆アルミニウム合金の断面の模式図である。
【図4】陽極電解エッチング装置の一例を示す図である。
【図5】陽極電解エッチング装置の一例を示す図である。
【図6】本発明のめっき方法の加工ラインの一例を示す図である。
【図7】シリンダーブロックのめっき処理装置の一例を示す図である。
【図8】本発明の方法を用いて得られるめっき被覆アルミニウム合金の断面の顕微鏡写真(倍率:400倍)である。
【図9】シリコンの周囲長さの一例を示す図である。
【図10】従来法(陽極酸化法)によって得られるめっき被覆アルミニウム合金の断面の模式図である。
【図11】従来法(陽極酸化法)によって得られるめっき被覆アルミニウム合金の断面の顕微鏡写真(倍率:400倍)である。
【符号の説明】
1 シリコン
2 アルミニウム合金
3 めっき皮膜
11 脱脂処理槽
12 水洗槽
13 水洗槽
14 電解エッチング槽
15 水洗槽
16 水洗槽
17 陽極酸化処理槽
18 水洗槽
19 水洗槽
20 めっき処理槽
21 水洗槽
22 水洗槽
23 シリンダー機械加工ライン
24 めっき処理ライン
25 シリンダーホーニング加工ライン
31 アルミニウム合金
32 アルミニウム合金の酸化層
33 めっき層
34 シリコン
41 フレーム
41a 下部フレーム
41b 上部フレーム
42 液槽
42a 液槽
43 電源
44 ポンプ
45 液流出部
46 絶縁板
47 電極板
47a 電極支持
48 絶縁板
49 電極板
50 シリンダー
51 電極
52 パッキング
53 上部治具
54 液流出部
55 エアシリンダー
55a 押圧ロッド
56a 三方弁
56b 三方弁
61 シリンダーブロック
62 上部治具
63 下部治具
64 電極
65 処理液流出口
66 処理液流入口
67 上部パッキング
68 下部パッキング
69 ポンプ
70 処理液タンク
71 電源
81 シリコン
82 周囲長さ
91 めっき層
92 アルミニウム合金の酸化層
93 アルミニウム合金

【特許請求の範囲】
【請求項1】 表面に凹凸が形成されているとともにシリコンを含有するADC12と、該ADC12の表面に形成された凹凸に沿った面および平滑面からなるめっき層と、該ADC12と該めっき層の間に橋渡しされた状態で存在するシリコンと、からなることを特徴とするシリンダーブロック。
【請求項2】 上記ADC12と上記めっき層の間に、陽極酸化層が設けられている請求項1に記載のシリンダーブロック。
【請求項3】 シリコンを含有するADC12を陽極電解エッチングして、該ADC12の表面からシリコンを突出させるとともに、該ADC12の表面に凹凸を形成させる工程と、上記陽極電解エッチングの後に、上記ADC12の表面を陽極酸化して、酸化されたアルミニウム合金層を形成させる工程と、を含み、上記陽極電解エッチング及び上記陽極酸化が、シリコンを含有するADC12を陽極とし、他方の電極を陰極とし、電解液中で通電することによって行われるとともに、該電解液として、リン酸、スルファミン酸、硫酸から選ばれる一種以上を用いるアルミニウム合金上のめっき前処理方法。

【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図9】
image rotate


【図1】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【図6】
image rotate


【図7】
image rotate


【図10】
image rotate


【図8】
image rotate


【図11】
image rotate


【特許番号】特許第3296543号(P3296543)
【登録日】平成14年4月12日(2002.4.12)
【発行日】平成14年7月2日(2002.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平9−230243
【出願日】平成9年8月12日(1997.8.12)
【公開番号】特開平11−1795
【公開日】平成11年1月6日(1999.1.6)
【審査請求日】平成12年2月25日(2000.2.25)
【前置審査】 前置審査
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【参考文献】
【文献】特開 平5−86972(JP,A)
【文献】特開 平5−222583(JP,A)
【文献】特開 平7−180080(JP,A)
【文献】特開 昭53−58443(JP,A)
【文献】特開 平7−166394(JP,A)
【文献】特公 平6−41789(JP,B2)
【文献】特公 平2−33907(JP,B2)