めっき装置
【課題】 一般的な回転バレルめっきのめっき工程においては、駆動系や制御系がめっき浴槽に設置されているため、めっき浴槽が多数にわたる場合は、めっきラインが大型化する。この場合、面積生産性が低いばかりでなく、設備運転費用や設備保全費用が高くなり、少量多品種生産に対応しがたいという問題があった。
【解決手段】 複数のめっき浴槽と、回転バレルと、前記回転バレルの前記めっき浴槽間における搬送手段と、を備えるめっき装置において、前記回転バレルが、回転駆動機構と、回転速度の検出機構と、前記回転速度の検出結果を前記回転駆動機構にフィードバックする回転制御機構と、前記回転バレルが位置する浴槽を認識する機能と、を備えることを特徴とする。
【解決手段】 複数のめっき浴槽と、回転バレルと、前記回転バレルの前記めっき浴槽間における搬送手段と、を備えるめっき装置において、前記回転バレルが、回転駆動機構と、回転速度の検出機構と、前記回転速度の検出結果を前記回転駆動機構にフィードバックする回転制御機構と、前記回転バレルが位置する浴槽を認識する機能と、を備えることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、電子部品の外部電極を形成するとき等に用いられるめっき工程のためのめっき装置に関する
【背景技術】
【０００２】
従来より、セラミック電子部品の外部電極を形成する際に、めっき方法が用いられる。たとえば、誘電体共振器における電極形成においては、用意された誘電体セラミックに対し、エッチング液による表面粗化、Ｓｎコロイド粒子付着、触媒用Ｐｄコロイド粒子付着、無電解Ｃｕめっき、防錆処理、という工程を経て、Ｃｕ無電解めっき膜からなる電極が形成される。さらに、上記の各工程間には、随時、水洗工程が入る。
【０００３】
被めっき物がセラミック電子部品のように小さい場合は、バレルめっき方法が用いられる。たとえば回転バレルの場合は、バレル内にセラミック素体を投入し、このバレルをめっき浴槽中のめっき液に浸漬し、回転させる、という工程をとる。このとき、回転にしたがってセラミック素体が攪拌されるので、めっき析出が安定化される。
【０００４】
さて、実際のめっき工程においては、エッチング工程、Ｓｎコロイド粒子付着工程、触媒用Ｐｄコロイド粒子付着工程、無電解Ｃｕめっき工程、防錆処理工程、各工程間の水洗処理工程、からなる全工程において、それぞれのめっき液（ここでは無電解めっき液だけを意味するのではなく、エッチング液、コロイド液、水洗用の水など、すべての処理液を意味する）で満たされためっき浴槽がそれぞれ用意される。
【０００５】
そして、回転バレルがめっき浴槽に浸漬され、ある回転速度でもって一定の時間回転され、その後めっき浴槽から揚げられる。こうして、そのめっき浴槽における工程が完了すると、バレルが次のめっき浴槽に搬送され、次のめっき浴槽にて同様の処理が行われる。これを繰り返すことによって、めっき全工程が完了する。
【０００６】
たとえば、特許文献１には、一般的なバレルめっき装置が開示されている。すなわち、複数のめっき浴槽間の間をバレル容器が搬送され、連続的なめっき処理が可能となっている。
【特許文献１】特開平６−２９９３９７号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００７】
しかしながら、特許文献１に記載されているめっき装置では、バレルの駆動機構が全めっき浴槽に設置されているため、各めっき浴槽が大型化するという問題があった。
【０００８】
また、特許文献１に記載のめっき装置を制御する場合は、バレルの駆動機構が各めっき浴槽に設置されているため、バレル駆動の制御機構や運転状態の検出機構を全めっき浴槽に設置する必要があるため、各めっき浴槽がさらに大型化するという問題があった。
【０００９】
また、バレルのめっき浴槽間の工程を集中自動制御で行う場合、集中制御機構と全めっき浴槽との間の情報伝送機構が複雑になり、めっき装置全体が大型化するという問題があった。
【００１０】
以上より、特許文献１に記載されているめっき装置では、めっき装置全体が大型化するため、面積生産性が悪化する。また、めっき装置が大掛かりな設備となるため、設備運転費用や設備保全費用などのコストがかかるという問題がある。さらに、最近の大量生産型から少量多品種生産型へのトレンドシフトを考慮すると、前述のような大掛かりな全自動ラインではコスト的に不利となる。
【００１１】
本発明はこのような問題点に鑑みなされたものであって、少量多品種生産にも対応可能な、低コストで面積生産性が高く、かつ高機能なめっき装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【００１２】
すなわち本発明は、複数のめっき浴槽と、回転バレルと、前記回転バレルの前記めっき浴槽間における搬送手段と、を備えるめっき装置において、前記回転バレルが、回転駆動機構と、回転速度の検出機構と、前記回転速度の検出結果を前記回転駆動機構にフィードバックする回転制御機構と、前記回転バレルが位置する浴槽を認識する機能と、を備えることを特徴とする。
【００１３】
また、本発明のめっき装置は、前記回転バレルが、めっき浴槽中の液面を検出する機能を有し、かつ、前記回転制御機構が、前記液面の検出結果を前記回転駆動機構にフィードバックする機能を有することを特徴とする。
【００１４】
さらに、本発明のめっき装置は、前記回転バレルが警報装置を有し、かつ、前記回転制御機構が、前記回転速度の検出結果、前記液面の検出結果、前記回転バレルが位置する浴槽の認識結果のうち少なくとも１つを前記警報装置にフィードバックする機能を有することが好ましい。
【００１５】
また、本発明のめっき装置は、前記回転バレルがめっき浴槽中の液温を検出する機能、および、前記液温の検出結果を前記警報装置にフィードバックする機構を備えることも好ましい。
【００１６】
本発明のめっき装置は、前記回転バレルが、前記複数の浴槽における回転速度および前記回転バレルの位置する浴槽に関する情報を有する媒体を備え、かつ、前記回転制御機構が前記媒体より前記回転速度および前記回転バレルの位置する浴槽に関する情報を読み取る機能を有することが好ましい。
【００１７】
また、本発明のめっき装置は、前記媒体が前記複数のめっき浴槽中の液温に関する情報を有しており、かつ、前記回転バレルが前記めっき浴中の液温の情報を読み取る機能をも有していてもよい。
【００１８】
さらに、本発明のめっき装置は、前記回転制御機構が、前記液温の検出結果を前記警報装置にフィードバックする機能、および前記液温の情報を前記媒体より読み取る機能、のうち少なくとも１種を有していてもよい。
【００１９】
また、本発明のめっき装置は、前記回転バレルの運転履歴が前記媒体に記録されることも好ましい。
【発明の効果】
【００２０】
本発明のめっき装置によれば、回転駆動に関する駆動機構、検出機能、および制御機構が、めっき浴槽側ではなく回転バレル側に設置されているため、めっき浴槽を小型化できる。よって、めっき装置には複数のめっき浴槽を要することから、めっき浴槽数が増加するほど、めっき装置全体を小型化することができる。
【００２１】
また、本発明によれば、めっき浴槽中の液面に関する検出機能および制御機構が回転バレル側に設置されている場合、また、めっき浴槽の液温に関する検出機能および制御機構が回転バレル側に設置されている場合、小型でより高機能なめっき装置を得ることができる。
【００２２】
また、本発明によれば、警報装置が回転バレル側に設置されており、かつ警報装置が回転バレル内に設置された制御機構により制御される場合、小型でより高機能なめっき装置を得ることができる。また、めっき装置に複数の回転バレルが同時に搬送されている場合、警報装置が回転バレル側に設置されていると、警報が発生した回転バレルのみを一時退避させることが容易であるので、他の回転バレルに影響を与えることなくめっき装置を継続運転させることも可能である。
【００２３】
また、本発明のめっき装置によれば、各種のめっき条件の情報がインプットされた媒体が回転バレル側に内蔵されているので、集中制御装置と各めっき浴槽との間の伝送線が不要になるばかりか、集中制御装置と回転バレルとの間の伝送線をも不要にできるので、めっき装置をより小型化することができる。また、各種情報がすべてバレル側で連続して取得されるため、精度が高くて加工性に優れた記録データを残すことができる。
【００２４】
以上より、本発明のめっき装置においては、駆動機構、検出機能、制御機構、警報装置、情報媒体、等が、めっき浴槽側でなく回転バレル側に設置されているため、めっき装置を大幅に小型化でき、面積生産性が向上する。また、本発明によるめっき装置は小型であるため、設備運転費用や保全費用の低減が可能となり、昨今の少量多品種生産に適合する。
【発明を実施するための最良の形態】
【００２５】
本発明のめっき装置に関して、図１を例にとり説明する。図１はめっき装置のラインの一部を横方向からみた図である。
【００２６】
本発明のめっき装置は、まず前提として、複数のめっき浴槽２と、回転バレル１と、回転バレルのめっき浴槽間における搬送手段と、を備える。搬送手段は図１では省略されている。
【００２７】
めっき浴槽２は、一般的には複数設置され、図１ではその一部であるめっき浴槽２Ａ、２Ｂ、２Ｃが示されている。めっき浴槽２Ａ、２Ｂ、２Ｃは、それぞれめっき液３Ａ、３Ｂ、３Ｃで満たされている。このめっき液とは、金属イオンの入っためっき液だけを意味するのではなく、エッチング液、水洗用の水、ＳｎやＰｄなどのコロイド液、防錆処理液など、処理液すべてを意味するものである。
【００２８】
このめっき浴槽２には、回転駆動機構や、回転制御機構などの大掛かりな機構は設置されていない。したがって、めっき浴槽２の占有面積は、回転バレルが浸漬するのに十分な大きさ程度に抑えられる。なお、めっき浴槽２には、必要に応じてめっき液温の温度制御をするための、温度センサ、温度コントローラ、ヒーターなどが設置されていてもよいが、これらの温度制御装置は十分小型に抑えられる。
【００２９】
次に、本発明のめっき装置における回転バレル１について説明する。図１には回転バレル１は１つしか示されていないが、複数を同時運転させても構わない。
【００３０】
回転バレル１には、一般的に容器１３や回転軸１４が含まれる。この容器１３内に、セラミック素体などの被めっき物が投入される（被めっき物は図示されない）。なお、容器１３の壁面は、一般に、回転バレル１がめっき浴槽２に浸漬されたときにめっき液３が容器１３の内部を満たすよう、液体が通過できるようになっている。なお、回転軸１４の方向は一般的に水平であるが、目的を損なわない程度に傾斜させるのは構わない。
【００３１】
注目すべきは、回転バレル１に種々の機構が設置されている点である。まず第一に、回転バレル１は回転駆動機構１２を備えている。すなわち、回転バレル１が、電源、モーター、歯車などを備えており、めっき浴槽２とは物理的に独立して回転駆動する。
【００３２】
上記の回転駆動機構１２による回転駆動は、そのバレルの位置する浴槽にて予め設定された回転速度において運転される。運転時の回転速度の状況は、これらを検出する機構（図１では省略されている）によりモニタリングされ、制御機構１１に伝送される。制御機構１１は、検出された回転速度が許容範囲内に維持されるよう、回転駆動機構に指示を送る。仮に回転速度が許容範囲内に維持できない場合、制御機構１１から警報装置１６にその情報が伝達され、警報が発せられる。同様に、回転バレルの位置する浴槽が本来あるべき浴槽と異なっている場合も警報が発せられる。よって、回転バレル１の回転制御は、回転バレル１の中のみで完結される。
【００３３】
回転バレル１には、めっき浴槽中の液面を検出する機能、例えば液面センサ１５が設置されてもよい。この液面センサ１５は、回転バレル１がめっき液３に十分に浸漬しているか否かを検知し、その情報を制御機構１１に伝送する。たとえば、回転駆動開始時においては、液面センサ１５が浸漬完了の旨の情報を制御機構１１に送り、制御機構１１が回転駆動開始の指示を回転駆動機構１２に送る。また、回転駆動中においては、何らかの原因により回転バレル１のめっき液３への浸漬が不十分になった場合、液面センサ１５がその情報を制御機構１１に送り、制御機構１１は警報装置１６に警報を発するよう指示を送る。
【００３４】
また、回転バレル１には、めっき液３の液温を検出する機能、たとえば液温センサ１８が設置されてもよい。この液温センサ１８は、めっき液３の液温を検知し、その温度情報を制御機構１１に送る。制御機構１１は、めっき液３の液温が予め設定された液温の許容範囲内にあるか否かを判定し、仮に許容範囲外であった場合は、制御機構１１が警報装置１６に警報を発するよう指示を送る。
【００３５】
さらに、予め設定された、回転速度、めっき液の液温、回転バレルの位置する浴槽、等の情報は、集中制御装置から有線で回転バレル１に随時伝送されていてもよいが、望ましくは、予め情報がインプットされた情報媒体１７を回転バレル１に設置することが好ましい。回転バレル１がめっき浴槽２Ａ→２Ｂ→２Ｃと搬送される毎に、制御機構１１はこの情報媒体１７にアクセスして、各めっき浴槽におけるめっき条件の情報を取得する。同様にして、各めっき浴槽における回転バレルの運転履歴もこの情報媒体１７に記録される。めっき工程が全て終了した後は、情報媒体１７に保存された運転履歴を取得し、必要に応じて集中管理すればよい。なお、この情報媒体１７が回転バレル１より取りはずし可能であると良い。めっき工程前の条件インプット、またはめっき工程後の履歴アウトプットの際は、この情報媒体１７のみをコンピュータなどに接続できるので、作業が非常に簡便となる。
【００３６】
なお、図１の例では、制御機構１１は、回転駆動の制御と、めっき液の液温検知の機能と、の両方を兼ねており、回転バレル１の小型化に寄与している。ただ、必ずしもこれら両方を１つの制御機構１１にまとめなくてもよい。
【００３７】
また、回転バレル１には、現在の運転状況を表示する機能があってもよい。さらに、めっき条件を直接入力、修正できる機能を有していてもよい。
【００３８】
また、回転バレル１のめっき浴槽間における搬送手段は、特に限定されない。たとえば、めっき装置全体の小型化を重視する場合は、自動搬送装置を設置するよりも手動で搬送する方法が好ましい。
【００３９】
また、図１の例におけるめっき装置は、還元剤による酸化作用により金属を析出させる無電解めっきを対象としているが、電解めっきにも対応可能である。電解めっきの場合は、めっき浴槽２の中に陽極を設置し、容器１３の中に陰極を設置し、この陽極と陰極と導電接続された電源装置を設置すればよい。
【図面の簡単な説明】
【００４０】
【図１】本発明のめっき装置の模式図。
【符号の説明】
【００４１】
１ 回転バレル
２ めっき浴槽
３ めっき液
１１ 制御機構
１２ 回転駆動機構
１３ 容器
１４ 回転軸
１５ 液面センサ
１６ 警報装置
１７ 情報媒体
１８ 液温センサ
【技術分野】
【０００１】
本発明は、電子部品の外部電極を形成するとき等に用いられるめっき工程のためのめっき装置に関する
【背景技術】
【０００２】
従来より、セラミック電子部品の外部電極を形成する際に、めっき方法が用いられる。たとえば、誘電体共振器における電極形成においては、用意された誘電体セラミックに対し、エッチング液による表面粗化、Ｓｎコロイド粒子付着、触媒用Ｐｄコロイド粒子付着、無電解Ｃｕめっき、防錆処理、という工程を経て、Ｃｕ無電解めっき膜からなる電極が形成される。さらに、上記の各工程間には、随時、水洗工程が入る。
【０００３】
被めっき物がセラミック電子部品のように小さい場合は、バレルめっき方法が用いられる。たとえば回転バレルの場合は、バレル内にセラミック素体を投入し、このバレルをめっき浴槽中のめっき液に浸漬し、回転させる、という工程をとる。このとき、回転にしたがってセラミック素体が攪拌されるので、めっき析出が安定化される。
【０００４】
さて、実際のめっき工程においては、エッチング工程、Ｓｎコロイド粒子付着工程、触媒用Ｐｄコロイド粒子付着工程、無電解Ｃｕめっき工程、防錆処理工程、各工程間の水洗処理工程、からなる全工程において、それぞれのめっき液（ここでは無電解めっき液だけを意味するのではなく、エッチング液、コロイド液、水洗用の水など、すべての処理液を意味する）で満たされためっき浴槽がそれぞれ用意される。
【０００５】
そして、回転バレルがめっき浴槽に浸漬され、ある回転速度でもって一定の時間回転され、その後めっき浴槽から揚げられる。こうして、そのめっき浴槽における工程が完了すると、バレルが次のめっき浴槽に搬送され、次のめっき浴槽にて同様の処理が行われる。これを繰り返すことによって、めっき全工程が完了する。
【０００６】
たとえば、特許文献１には、一般的なバレルめっき装置が開示されている。すなわち、複数のめっき浴槽間の間をバレル容器が搬送され、連続的なめっき処理が可能となっている。
【特許文献１】特開平６−２９９３９７号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００７】
しかしながら、特許文献１に記載されているめっき装置では、バレルの駆動機構が全めっき浴槽に設置されているため、各めっき浴槽が大型化するという問題があった。
【０００８】
また、特許文献１に記載のめっき装置を制御する場合は、バレルの駆動機構が各めっき浴槽に設置されているため、バレル駆動の制御機構や運転状態の検出機構を全めっき浴槽に設置する必要があるため、各めっき浴槽がさらに大型化するという問題があった。
【０００９】
また、バレルのめっき浴槽間の工程を集中自動制御で行う場合、集中制御機構と全めっき浴槽との間の情報伝送機構が複雑になり、めっき装置全体が大型化するという問題があった。
【００１０】
以上より、特許文献１に記載されているめっき装置では、めっき装置全体が大型化するため、面積生産性が悪化する。また、めっき装置が大掛かりな設備となるため、設備運転費用や設備保全費用などのコストがかかるという問題がある。さらに、最近の大量生産型から少量多品種生産型へのトレンドシフトを考慮すると、前述のような大掛かりな全自動ラインではコスト的に不利となる。
【００１１】
本発明はこのような問題点に鑑みなされたものであって、少量多品種生産にも対応可能な、低コストで面積生産性が高く、かつ高機能なめっき装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【００１２】
すなわち本発明は、複数のめっき浴槽と、回転バレルと、前記回転バレルの前記めっき浴槽間における搬送手段と、を備えるめっき装置において、前記回転バレルが、回転駆動機構と、回転速度の検出機構と、前記回転速度の検出結果を前記回転駆動機構にフィードバックする回転制御機構と、前記回転バレルが位置する浴槽を認識する機能と、を備えることを特徴とする。
【００１３】
また、本発明のめっき装置は、前記回転バレルが、めっき浴槽中の液面を検出する機能を有し、かつ、前記回転制御機構が、前記液面の検出結果を前記回転駆動機構にフィードバックする機能を有することを特徴とする。
【００１４】
さらに、本発明のめっき装置は、前記回転バレルが警報装置を有し、かつ、前記回転制御機構が、前記回転速度の検出結果、前記液面の検出結果、前記回転バレルが位置する浴槽の認識結果のうち少なくとも１つを前記警報装置にフィードバックする機能を有することが好ましい。
【００１５】
また、本発明のめっき装置は、前記回転バレルがめっき浴槽中の液温を検出する機能、および、前記液温の検出結果を前記警報装置にフィードバックする機構を備えることも好ましい。
【００１６】
本発明のめっき装置は、前記回転バレルが、前記複数の浴槽における回転速度および前記回転バレルの位置する浴槽に関する情報を有する媒体を備え、かつ、前記回転制御機構が前記媒体より前記回転速度および前記回転バレルの位置する浴槽に関する情報を読み取る機能を有することが好ましい。
【００１７】
また、本発明のめっき装置は、前記媒体が前記複数のめっき浴槽中の液温に関する情報を有しており、かつ、前記回転バレルが前記めっき浴中の液温の情報を読み取る機能をも有していてもよい。
【００１８】
さらに、本発明のめっき装置は、前記回転制御機構が、前記液温の検出結果を前記警報装置にフィードバックする機能、および前記液温の情報を前記媒体より読み取る機能、のうち少なくとも１種を有していてもよい。
【００１９】
また、本発明のめっき装置は、前記回転バレルの運転履歴が前記媒体に記録されることも好ましい。
【発明の効果】
【００２０】
本発明のめっき装置によれば、回転駆動に関する駆動機構、検出機能、および制御機構が、めっき浴槽側ではなく回転バレル側に設置されているため、めっき浴槽を小型化できる。よって、めっき装置には複数のめっき浴槽を要することから、めっき浴槽数が増加するほど、めっき装置全体を小型化することができる。
【００２１】
また、本発明によれば、めっき浴槽中の液面に関する検出機能および制御機構が回転バレル側に設置されている場合、また、めっき浴槽の液温に関する検出機能および制御機構が回転バレル側に設置されている場合、小型でより高機能なめっき装置を得ることができる。
【００２２】
また、本発明によれば、警報装置が回転バレル側に設置されており、かつ警報装置が回転バレル内に設置された制御機構により制御される場合、小型でより高機能なめっき装置を得ることができる。また、めっき装置に複数の回転バレルが同時に搬送されている場合、警報装置が回転バレル側に設置されていると、警報が発生した回転バレルのみを一時退避させることが容易であるので、他の回転バレルに影響を与えることなくめっき装置を継続運転させることも可能である。
【００２３】
また、本発明のめっき装置によれば、各種のめっき条件の情報がインプットされた媒体が回転バレル側に内蔵されているので、集中制御装置と各めっき浴槽との間の伝送線が不要になるばかりか、集中制御装置と回転バレルとの間の伝送線をも不要にできるので、めっき装置をより小型化することができる。また、各種情報がすべてバレル側で連続して取得されるため、精度が高くて加工性に優れた記録データを残すことができる。
【００２４】
以上より、本発明のめっき装置においては、駆動機構、検出機能、制御機構、警報装置、情報媒体、等が、めっき浴槽側でなく回転バレル側に設置されているため、めっき装置を大幅に小型化でき、面積生産性が向上する。また、本発明によるめっき装置は小型であるため、設備運転費用や保全費用の低減が可能となり、昨今の少量多品種生産に適合する。
【発明を実施するための最良の形態】
【００２５】
本発明のめっき装置に関して、図１を例にとり説明する。図１はめっき装置のラインの一部を横方向からみた図である。
【００２６】
本発明のめっき装置は、まず前提として、複数のめっき浴槽２と、回転バレル１と、回転バレルのめっき浴槽間における搬送手段と、を備える。搬送手段は図１では省略されている。
【００２７】
めっき浴槽２は、一般的には複数設置され、図１ではその一部であるめっき浴槽２Ａ、２Ｂ、２Ｃが示されている。めっき浴槽２Ａ、２Ｂ、２Ｃは、それぞれめっき液３Ａ、３Ｂ、３Ｃで満たされている。このめっき液とは、金属イオンの入っためっき液だけを意味するのではなく、エッチング液、水洗用の水、ＳｎやＰｄなどのコロイド液、防錆処理液など、処理液すべてを意味するものである。
【００２８】
このめっき浴槽２には、回転駆動機構や、回転制御機構などの大掛かりな機構は設置されていない。したがって、めっき浴槽２の占有面積は、回転バレルが浸漬するのに十分な大きさ程度に抑えられる。なお、めっき浴槽２には、必要に応じてめっき液温の温度制御をするための、温度センサ、温度コントローラ、ヒーターなどが設置されていてもよいが、これらの温度制御装置は十分小型に抑えられる。
【００２９】
次に、本発明のめっき装置における回転バレル１について説明する。図１には回転バレル１は１つしか示されていないが、複数を同時運転させても構わない。
【００３０】
回転バレル１には、一般的に容器１３や回転軸１４が含まれる。この容器１３内に、セラミック素体などの被めっき物が投入される（被めっき物は図示されない）。なお、容器１３の壁面は、一般に、回転バレル１がめっき浴槽２に浸漬されたときにめっき液３が容器１３の内部を満たすよう、液体が通過できるようになっている。なお、回転軸１４の方向は一般的に水平であるが、目的を損なわない程度に傾斜させるのは構わない。
【００３１】
注目すべきは、回転バレル１に種々の機構が設置されている点である。まず第一に、回転バレル１は回転駆動機構１２を備えている。すなわち、回転バレル１が、電源、モーター、歯車などを備えており、めっき浴槽２とは物理的に独立して回転駆動する。
【００３２】
上記の回転駆動機構１２による回転駆動は、そのバレルの位置する浴槽にて予め設定された回転速度において運転される。運転時の回転速度の状況は、これらを検出する機構（図１では省略されている）によりモニタリングされ、制御機構１１に伝送される。制御機構１１は、検出された回転速度が許容範囲内に維持されるよう、回転駆動機構に指示を送る。仮に回転速度が許容範囲内に維持できない場合、制御機構１１から警報装置１６にその情報が伝達され、警報が発せられる。同様に、回転バレルの位置する浴槽が本来あるべき浴槽と異なっている場合も警報が発せられる。よって、回転バレル１の回転制御は、回転バレル１の中のみで完結される。
【００３３】
回転バレル１には、めっき浴槽中の液面を検出する機能、例えば液面センサ１５が設置されてもよい。この液面センサ１５は、回転バレル１がめっき液３に十分に浸漬しているか否かを検知し、その情報を制御機構１１に伝送する。たとえば、回転駆動開始時においては、液面センサ１５が浸漬完了の旨の情報を制御機構１１に送り、制御機構１１が回転駆動開始の指示を回転駆動機構１２に送る。また、回転駆動中においては、何らかの原因により回転バレル１のめっき液３への浸漬が不十分になった場合、液面センサ１５がその情報を制御機構１１に送り、制御機構１１は警報装置１６に警報を発するよう指示を送る。
【００３４】
また、回転バレル１には、めっき液３の液温を検出する機能、たとえば液温センサ１８が設置されてもよい。この液温センサ１８は、めっき液３の液温を検知し、その温度情報を制御機構１１に送る。制御機構１１は、めっき液３の液温が予め設定された液温の許容範囲内にあるか否かを判定し、仮に許容範囲外であった場合は、制御機構１１が警報装置１６に警報を発するよう指示を送る。
【００３５】
さらに、予め設定された、回転速度、めっき液の液温、回転バレルの位置する浴槽、等の情報は、集中制御装置から有線で回転バレル１に随時伝送されていてもよいが、望ましくは、予め情報がインプットされた情報媒体１７を回転バレル１に設置することが好ましい。回転バレル１がめっき浴槽２Ａ→２Ｂ→２Ｃと搬送される毎に、制御機構１１はこの情報媒体１７にアクセスして、各めっき浴槽におけるめっき条件の情報を取得する。同様にして、各めっき浴槽における回転バレルの運転履歴もこの情報媒体１７に記録される。めっき工程が全て終了した後は、情報媒体１７に保存された運転履歴を取得し、必要に応じて集中管理すればよい。なお、この情報媒体１７が回転バレル１より取りはずし可能であると良い。めっき工程前の条件インプット、またはめっき工程後の履歴アウトプットの際は、この情報媒体１７のみをコンピュータなどに接続できるので、作業が非常に簡便となる。
【００３６】
なお、図１の例では、制御機構１１は、回転駆動の制御と、めっき液の液温検知の機能と、の両方を兼ねており、回転バレル１の小型化に寄与している。ただ、必ずしもこれら両方を１つの制御機構１１にまとめなくてもよい。
【００３７】
また、回転バレル１には、現在の運転状況を表示する機能があってもよい。さらに、めっき条件を直接入力、修正できる機能を有していてもよい。
【００３８】
また、回転バレル１のめっき浴槽間における搬送手段は、特に限定されない。たとえば、めっき装置全体の小型化を重視する場合は、自動搬送装置を設置するよりも手動で搬送する方法が好ましい。
【００３９】
また、図１の例におけるめっき装置は、還元剤による酸化作用により金属を析出させる無電解めっきを対象としているが、電解めっきにも対応可能である。電解めっきの場合は、めっき浴槽２の中に陽極を設置し、容器１３の中に陰極を設置し、この陽極と陰極と導電接続された電源装置を設置すればよい。
【図面の簡単な説明】
【００４０】
【図１】本発明のめっき装置の模式図。
【符号の説明】
【００４１】
１ 回転バレル
２ めっき浴槽
３ めっき液
１１ 制御機構
１２ 回転駆動機構
１３ 容器
１４ 回転軸
１５ 液面センサ
１６ 警報装置
１７ 情報媒体
１８ 液温センサ
【特許請求の範囲】
【請求項１】
複数のめっき浴槽と、回転バレルと、前記回転バレルの前記めっき浴槽間における搬送手段と、を備えるめっき装置において、
前記回転バレルが、回転駆動機構と、回転速度の検出機構と、前記回転速度の検出結果を前記回転駆動機構にフィードバックする回転制御機構と、前記回転バレルが位置する浴槽を認識する機能と、を備えることを特徴とする、めっき装置。
【請求項２】
前記回転バレルが、めっき浴槽中の液面を検出する機能を有し、かつ、前記回転制御機構が、前記液面の検出結果を前記回転駆動機構にフィードバックする機能を有することを特徴とする、請求項１に記載のめっき装置。
【請求項３】
前記回転バレルが警報装置を有し、かつ、前記回転制御機構が、前記回転速度の検出結果、前記液面の検出結果、前記回転バレルが位置する浴槽の認識結果のうち少なくとも１つを前記警報装置にフィードバックする機能を有することを特徴とする、請求項１または２に記載のめっき装置。
【請求項４】
前記回転バレルがめっき浴槽中の液温を検出する機能、および、前記液温の検出結果を前記警報装置にフィードバックする機構を備えることを特徴とする、請求項１〜３に記載のめっき装置。
【請求項５】
前記回転バレルが、前記複数の浴槽における回転速度および前記回転バレルの位置する浴槽に関する情報を有する媒体を備え、かつ、前記回転制御機構が前記媒体より前記回転速度および前記回転バレルの位置する浴槽に関する情報を読み取る機能を有する、請求項１〜４に記載のめっき装置。
【請求項６】
前記媒体が前記複数のめっき浴槽中の液温に関する情報を有しており、かつ、前記回転バレルが前記めっき浴の液温の情報を読み取る機能を有する、請求項４または５に記載のめっき装置。
【請求項７】
前記回転制御機構が、前記液温の検出結果を前記警報装置にフィードバックする機能、および前記液温の情報を前記媒体より読み取る機能、のうち少なくとも１種を有することを特徴とする、請求項１〜６に記載のめっき装置。
【請求項８】
前記回転バレルの運転履歴が前記媒体に記録されることを特徴とする、請求項１〜７に記載のめっき装置。
【請求項１】
複数のめっき浴槽と、回転バレルと、前記回転バレルの前記めっき浴槽間における搬送手段と、を備えるめっき装置において、
前記回転バレルが、回転駆動機構と、回転速度の検出機構と、前記回転速度の検出結果を前記回転駆動機構にフィードバックする回転制御機構と、前記回転バレルが位置する浴槽を認識する機能と、を備えることを特徴とする、めっき装置。
【請求項２】
前記回転バレルが、めっき浴槽中の液面を検出する機能を有し、かつ、前記回転制御機構が、前記液面の検出結果を前記回転駆動機構にフィードバックする機能を有することを特徴とする、請求項１に記載のめっき装置。
【請求項３】
前記回転バレルが警報装置を有し、かつ、前記回転制御機構が、前記回転速度の検出結果、前記液面の検出結果、前記回転バレルが位置する浴槽の認識結果のうち少なくとも１つを前記警報装置にフィードバックする機能を有することを特徴とする、請求項１または２に記載のめっき装置。
【請求項４】
前記回転バレルがめっき浴槽中の液温を検出する機能、および、前記液温の検出結果を前記警報装置にフィードバックする機構を備えることを特徴とする、請求項１〜３に記載のめっき装置。
【請求項５】
前記回転バレルが、前記複数の浴槽における回転速度および前記回転バレルの位置する浴槽に関する情報を有する媒体を備え、かつ、前記回転制御機構が前記媒体より前記回転速度および前記回転バレルの位置する浴槽に関する情報を読み取る機能を有する、請求項１〜４に記載のめっき装置。
【請求項６】
前記媒体が前記複数のめっき浴槽中の液温に関する情報を有しており、かつ、前記回転バレルが前記めっき浴の液温の情報を読み取る機能を有する、請求項４または５に記載のめっき装置。
【請求項７】
前記回転制御機構が、前記液温の検出結果を前記警報装置にフィードバックする機能、および前記液温の情報を前記媒体より読み取る機能、のうち少なくとも１種を有することを特徴とする、請求項１〜６に記載のめっき装置。
【請求項８】
前記回転バレルの運転履歴が前記媒体に記録されることを特徴とする、請求項１〜７に記載のめっき装置。
【図１】
【公開番号】特開２００９−２７５２５９（Ｐ２００９−２７５２５９Ａ）
【公開日】平成２１年１１月２６日（２００９．１１．２６）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００８−１２７３０９（Ｐ２００８−１２７３０９）
【出願日】平成２０年５月１４日（２００８．５．１４）
【出願人】（０００００６２３１）株式会社村田製作所 (3,635)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２１年１１月２６日（２００９．１１．２６）
【国際特許分類】
【出願日】平成２０年５月１４日（２００８．５．１４）
【出願人】（０００００６２３１）株式会社村田製作所 (3,635)
【Ｆターム（参考）】
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