説明

めっき装置

【課題】めっき槽内のめっき液を十分に撹拌することができて、めっき膜の厚さ及び組成を均一にする。
【解決手段】めっき液が貯留されるめっき槽1と、該めっき槽1の上部開口位置で被処理基板Sをめっき液に接触させた状態に支持する基板支持部3と、めっき槽1内にめっき液を供給する液供給手段4と、めっき槽1の上部からめっき液を外部に排出する液排出手段5とを具備するめっき装置であって、液供給手段4として、めっき槽1の底部から上方に向けてめっき液を噴出させる噴出ノズル11が設けられ、噴出ノズル11の噴出方向前方に攪拌翼21が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき槽の内部でめっき液を噴出してめっき槽の上部から流出させながら被処理基板にめっき膜を形成するめっき装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のめっき装置として特許文献1に示される技術が知られている。この特許文献1に示されるめっき装置は、めっき液が貯留されるめっき槽と、めっき槽の上部開口に設けられ該上部開口に対して被処理基板となるウェハを支持する基板支持部と、めっき槽の底部中央に設けられて該めっき槽上部の基板に向けてめっき液を噴出させる液供給管と、めっき槽の上部に形成されて該めっき槽から溢れためっき液を外部に排出する液流出路とを具備している。また、基板支持部に支持される基板をカソード電極とし、かつ該カソード電極の下方に間隔をおいて配置された電極をアノード電極として、電源に接続されている。そして、このようなめっき装置では、カソード電極及びアノード電極に対して電流を供給しつつ、液供給管から供給されためっき液を基板の被めっき面に向けて噴出して接触させることによって、基板の被めっき面に対してめっき処理を行なうものである。
【特許文献1】特開2006−28629号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記のようなめっき装置では、めっき槽の底部中央に設けられた液供給管から、めっき槽上部の基板に向けてめっき液が噴出させられ、基板の中心部に当って半径方向に沿って外側に流れていく。したがって、基板の中心部には常に新鮮なめっき液が供給され、基板へのめっき処理に供されながら外側に広がっていくことになるため、基板の中心部と基板の外周部とでは、めっき液の成分に分布が生じ、めっき膜の厚さや組成が面内で不均一になり易い。
また、上記めっき装置では、液供給管の内周面に螺旋状の溝を設けて、噴出されるめっき液を旋回上昇させるようにしているが、基板に到達するまでの間に旋回流が弱まってしまい、めっきの不均一の問題を解消しきれないという問題があった。
【0004】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、めっき槽内のめっき液を十分に撹拌することができて、めっき膜の厚さ及び組成を均一にすることができるめっき装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のめっき装置は、めっき液が貯留されるめっき槽と、該めっき槽の上部開口位置で被処理基板をめっき液に接触させた状態に支持する基板支持部と、前記めっき槽内にめっき液を供給する液供給手段と、前記めっき槽の上部からめっき液を外部に排出する液排出手段とを具備するめっき装置であって、前記液供給手段として、前記めっき槽の底部から上方に向けてめっき液を噴出させる噴出ノズルが設けられ、該噴出ノズルの噴出方向前方に攪拌翼が設けられていることを特徴とする。
【0006】
このように構成されためっき装置では、めっき槽の底部の噴出ノズルから上方に向けてめっき液が噴出させられ、その噴出方向前方で攪拌翼によって攪拌されるので、めっき槽内でめっき液が回転運動し、そのめっき液が回転しながら被処理基板の全面に接触し、厚さ及び組成が均一なめっき膜が形成される。
【0007】
また、本発明のめっき装置において、前記攪拌翼は回転自在に支持され、前記噴出ノズルからの噴流によって回転させられるようにするとよい。
めっき液の噴流によって攪拌翼を回転させる構造とすることにより、攪拌翼の回転のための駆動源が不要であり、装置構造の簡略化を図ることができる。
【0008】
また、本発明のめっき装置において、前記攪拌翼は、多数の貫通孔を有するアノード電極板の下方に設けられているとよい。
攪拌翼で回転流となっためっき液がアノード電極板の貫通孔を通過する際に、その回転成分が弱められながら、多数の貫通孔によって整流され、被処理基板の表面へのめっき液の接触をさらに均一化することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のめっき装置によれば、めっき槽の底部に設けた噴出ノズルから噴出しためっき液が攪拌翼によって攪拌されることにより、めっき槽内でめっき液が回転運動し、回転しながら上昇して被処理基板の全面に接触するので、厚さ及び組成が均一なめっき膜を形成することができ、また、めっき槽内で攪拌されることから滞留部分が生じないので、めっき液の効率的な利用が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係るめっき装置の実施形態を図面を参照しながら説明する。
図1は本発明に係るめっき装置の第1実施形態を示している。この実施形態のめっき装置100は、図1に示すように、めっき液が貯留されるめっき槽1と、めっき槽1の外側に設けられた架台2の上端部に設けられてめっき槽1の上部開口に被処理基板Sとなるウェハを配置する基板支持部3と、めっき槽1の底部に設けられて該めっき槽1上部の被処理基板Sに向けてめっき液を供給する液供給手段4と、めっき槽1からめっき液をオーバーフローさせながら外部に排出する液排出手段5とを有する構成とされている。
【0011】
基板支持部3は、被処理基板Sに接触するカソード電極6が設けられ、被処理基板Sが外部の電源7に接続されるようになっているとともに、めっき槽1の上部開口からわずかに上昇した位置で被処理基板Sが水平に支持されることにより、この上部開口からオーバーフローするめっき液の液面上に被処理基板Sの被めっき面を接触させた状態に保持できるようになっている。図1における符号8は被処理基板Sの上面に当接する錘である。
一方、めっき槽1の内部には、被処理基板Sの下方に間隔をおいてアノード電極板9が設けられている。このアノード電極板9は、例えばメッシュ状に形成されることにより、多数の貫通孔が形成された板状の導電体であって、めっき槽1内部の電極支持部10に水平に取付けられている。この電極支持部10は、例えばめっき槽1の内周面に周方向に間隔をおいて複数個設けられている。
【0012】
液供給手段4は、めっき槽1の底部の中心位置から垂直上方に向かってめっき液を噴出する噴出ノズル11と、該噴出ノズル11に対してめっき液を供給するめっき液供給部12とから構成されている。このめっき液供給部12は、めっき液を貯留するめっき液貯留部13と、めっき液貯留部13内のめっき液を噴出ノズル11に供給するためのめっき液供給管14と、該めっき液供給管14の途中に設けられたポンプ15とから構成される。
【0013】
また、液供給手段4の噴出ノズル11の上方位置(噴出方向の前方位置)であってアノード電極板9の下方位置には攪拌翼21が回転自在に支持されている。この攪拌翼21は、噴出ノズル11の周囲を同心状に囲むように立設された筒状体22の先端部に取り付けられており、筒状体22の先端部の中心位置に、その内周面から突出するステー23を介して軸受24が設けられ、この軸受24に攪拌翼21の軸25が回転自在に支持されている。筒状体22の先端は攪拌翼21の下面近傍位置まで延びており、噴出ノズル11から噴出されためっき液を攪拌翼21まで案内するようになっている。なお、攪拌翼21は図1に示すように筒状体22よりも半径外方に突出する大きさに設定されている。
【0014】
また、液排出手段5は、基板支持部3によって支持された被処理基板Sとめっき槽1の上部開口との間に形成される液流出路31と、めっき槽1の回りを囲むように設けられた外槽32と、この外槽32の内部を液供給手段4のめっき液貯留部13に接続する液回収管33とによって構成されており、めっき槽1内部のめっき液を液流出路31からオーバーフローさせて外槽32内に受け入れ、この外槽32に受け入れためっき液を液回収管33を経由して液供給手段4のめっき液貯留部13に回収することができるようになっている。めっき液貯留部13内のめっき液は、ポンプ15により噴出ノズル11からめっき槽1内に噴出され、めっき槽1をオーバーフローして液回収管33からめっき液貯留部13に戻る循環サイクルを経ることにより、成分が一定となるように調整される。
【0015】
このようなめっき装置100において、カソード電極6及びアノード電極板9に対して電源7から電流を供給しつつ、液供給手段4から供給されためっき液を、被処理基板Sの被めっき面に向けて噴射して接触させることによって、被処理基板Sの被めっき面に対してめっき処理を行う。そのめっき液としては、例えば、Sn−AgやPb−Sn成分を有するものが使用され、また、基板支持部3に支持される被処理基板Sとなるウェハとしては、予めレジストパターンが形成されたシリコンウェハが使用され、該レジストパターン開口部のシリコンウェハ上にAgめっきやSnめっきが施される。
【0016】
そして、上記のように構成しためっき装置100では、めっき槽1の底部の中心位置に配置された噴出ノズル11から垂直上方に向けてめっき液を噴出すると、めっき液は、筒状体22内を上昇し、該筒状体22の上方の攪拌翼21に衝突して、該攪拌翼21に回転運動を生じさせる。この攪拌翼21が回転することにより、噴出ノズル11からの噴流が矢印Aで示すように回転させられ、回転流となって上昇する。攪拌翼21の前方には、メッシュ状のアノード電極板9が水平に配置されていることから、めっき液の回転流は、このアノード電極板9のメッシュの貫通孔の中を通って上昇し、これら多数の貫通孔を通過する際に、そのときの抵抗によって回転流の回転成分が弱められるとともに、各貫通孔の貫通方向に沿う流れに分散されながら、全体として矢印Bで示すように整流され、被処理基板Sの全面に均一な流れとして接触する。したがって、被処理基板Sの全面に厚さ及び組成が均一なめっき膜を形成することができる。
【0017】
また、めっき槽1の底部の中心位置から噴出されためっき液が攪拌翼21によって回転させられ、めっき槽1の内周面に沿う回転流となって上昇するとともに、攪拌翼21の下方では攪拌翼21の回転に伴う吸引力で矢印Cで示すように上方に引き寄せられて回転流に混合されるので、めっき槽1の中でめっき液が滞留する部分がなく、めっき槽1内のめっき液を効率よく利用することができる。特に、この図1に示す例では、攪拌翼21が筒状体22の半径外方に突出する大きさに設定されているので、筒状体22の外側のめっき液も滞留させることなく、有効に吸引して回転流に混合させることができる。
【0018】
図2は本発明に係るめっき装置の第2実施形態を示している。第1実施形態では噴出ノズルとアノード電極板との間に攪拌翼を配置したが、この第2実施形態のめっき装置200では、アノード電極板9の上方に攪拌翼41が配置され、この攪拌翼41をめっき槽1の外部に設けたモータ等の駆動部42によって回転駆動するようになっている。この攪拌翼41は、めっき槽1の内径とほぼ同じ大きさに形成されており、その外周部が、めっき槽1の内周面とほぼ同径のリング枠43の内周面に一体に固定されている。このリング枠43は、めっき槽1の内壁部にベアリング44を介して回転自在に支持され、そのリング枠43の外周面に形成されたラック45を駆動部42のピニオン46によって駆動する構成とされる。その他、第1実施形態と共通部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0019】
そして、このめっき装置200では、噴出ノズル11から垂直上方に向けて噴出されためっき液は、アノード電極板9のメッシュの貫通孔を通って上昇し、このアノード電極板9の上方で攪拌翼41によって強制的に回転させられる。この攪拌翼41は、特にリング枠43の内側でめっき槽1のほぼ内径と同じ大きさに形成されているので、めっき槽1内のめっき液全体に矢印Dで示すように大きな回転流を生じさせる。このため、被処理基板Sの全面により均一にめっき液を接触させ、めっき膜の均一性をさらに高めることができる。
【実施例】
【0020】
図1に示した実施形態のめっき装置と、めっき液を底部の中央から上方に垂直に噴出させる従来型のめっき装置とを用いてめっき処理して、これらのめっきの膜厚及び成分を比較測定した。
この場合、めっき槽のタンク容量を100Lとし、被処理基板として30μmのレジストパターン(開口面積0.5dm)を有する8インチ径のシリコンウェハを使用した。めっき液としては、Sn2+ を49.5g/L、Ag+ を0.6g/L、遊離酸を120g/L含むSn‐Agめっき液を使用した。めっき槽内の液温は25℃、噴出ノズルからのめっき液噴出量は20L/min、カソード電極及びアノード電極を通じて供給される電流密度は、4A/dmに設定した。
そして、シリコンウェハの外周部付近、中心部、及びこれらの中間地点の半径方向に並ぶ3か所について、めっき膜厚と、Agの析出量とを測定した。めっき膜厚の測定結果を表1、Agの析出量を表2に示す。これらの表中、(1)〜(3)が測定部位を示し、図3に示すように(1)がシリコンウェハの外周部付近、(2)が外周部と中心部との間の中間地点、(3)が中心部である。
【0021】
【表1】

【0022】
【表2】

【0023】
これら表1及び表2からわかるように、従来型のめっき装置では、めっき膜厚が半径方向外側(符号(1)で示す位置では28μm)の方が内側(符号(3)で示す位置では32μm)より薄くなり、ばらつきが大きいのに対して、本実施形態のめっき装置では、(1)〜(3)の各所において、めっき膜厚が29〜31μmと安定している。また、ウェハ上に析出したAgは、従来型のめっき装置では、析出量が半径方向外側(符号(1)で示す位置では2.0wt%)の方が内側(符号(3)で示す位置では2.5wt%)より少なく、ばらつきが大きいのに対して、本実施形態のめっき装置では、(1)〜(3)の各所において、析出量が2.4〜2.5wt%と安定している。
【0024】
また、上記のめっき条件で、金属成分を補給しながら、単位液量当たり電解量が40AH/Lでめっき処理を行った(上記条件の場合は約7500枚めっきした)ところ、従来型のめっき装置では、めっき液に濁りが生じた(めっき液成分のバランスが崩れたことによると考察される)のに対して、本実施形態のめっき装置では、めっき液に濁りは生じず、さらに50AH/L(上記条件の場合は約9500枚のめっきとなる)まで単位液量当たりの電解量を上昇させてもめっき液に濁りは生じなかった。このような測定結果から、本実施形態に示すめっき装置では、めっき槽内のめっき液が十分に撹拌されており、ウェハの被めっき面に形成されるめっき膜の厚さ及び組成の均一性を向上させることが確認された。
【0025】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、図1及び図2とも、攪拌翼と噴出ノズルとを同軸上に配置したが、噴出ノズルからの噴流が攪拌翼に向けられる配置であれば、これらの軸をずらして配置してもよく、また、噴出ノズルを垂直姿勢でなく傾斜して配置してもよい。また、めっき液をオーバーフローさせる液流出路をめっき槽の上部開口と基板との間に形成するようにしたが、めっき槽の上端部に貫通孔や切欠きを設けて、これを液流出路とするようにしてもよい。また、アノード電極板を支持する電極支持部もアノード電極板と同様のメッシュ状に形成し、めっき槽の内周面全周に形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係るめっき装置の第1実施形態を示す縦断面図である。
【図2】本発明に係るめっき装置の第2実施形態を示す縦断面図である。
【図3】実施例においてめっき膜厚の測定部位を示すシリコンウェハの正面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 めっき槽
2 架台
3 ウェハ支持部
4 液供給手段
5 液排出手段
6 カソード電極
7 電源
8 錘
9 アノード電極板
10 電極支持部
11 噴出ノズル
12 液供給部
13 液貯留部
14 液供給管
15 ポンプ
21 攪拌翼
31 液流出路
32 外槽
33 液回収管
41 攪拌翼
100 めっき装置
200 めっき装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
めっき液が貯留されるめっき槽と、該めっき槽の上部開口位置で被処理基板をめっき液に接触させた状態に支持する基板支持部と、前記めっき槽内にめっき液を供給する液供給手段と、前記めっき槽の上部からめっき液を外部に排出する液排出手段とを具備するめっき装置であって、
前記液供給手段として、前記めっき槽の底部から上方に向けてめっき液を噴出させる噴出ノズルが設けられ、該噴出ノズルの噴出方向前方に攪拌翼が設けられていることを特徴とするめっき装置。
【請求項2】
前記攪拌翼は回転自在に支持され、前記噴出ノズルからの噴流によって回転させられることを特徴とする請求項1記載のめっき装置。
【請求項3】
前記攪拌翼は、多数の貫通孔を有するアノード電極板の下方に設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載のめっき装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−90467(P2010−90467A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−264213(P2008−264213)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)