説明

より高いメルト−フローを示す熱可塑性ポリアミド組成物およびそれから形成された物品の製造方法

従来のシステムと比較して低下したメルト−フローおよび類似の物理的特性を示す熱可塑性ポリアミド組成物の製造方法であって、ポリアミドが少なくとも1つの有機酸、および、任意選択的に、1つまたは複数の追加成分と溶融ブレンドされ、有機酸がポリアミドの融点吸熱の開始温度より約10℃低い温度以上である融点を有する方法。本方法は、熱可塑性ポリアミド組成物の物理的特性を維持しながらメルト−フローを下げるための他の方法と比較して標準加工装置の低下したレベルの腐食および浸食をもたらす。本明細書に記載される本方法および組成物に従って製造された製品もまた開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来のシステムと比較された時に低下したメルト−フローおよび類似の物理的特性を示すポリアミド組成物の製造方法に関する。より具体的には本発明は、ポリアミドが少なくとも1つの有機酸、および、任意選択的に、1つまたは複数の追加成分と溶融ブレンドされ、有機酸がポリアミドの融点吸熱の開始温度より約10℃低い温度以上の融点を有する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高いメルト−フロー(または低い溶融粘度、これらの用語は同じ意味で用いられる)は、それが射出成形などのプロセスでの非常に容易な使用を可能にするので、溶融加工性ポリマー樹脂組成物の非常に望ましい特性である。より高いメルト−フローまたはより低い溶融粘度の組成物は、この特性を持たない別の樹脂に比べて非常に容易に射出成形することができる。かかる組成物は、より低い射出圧力および温度ではるかに大きい程度まで金型を満たす能力と薄い断面の複雑な金型デザインを満たすより大きな能力とを有する。線状ポリマーについてはポリマー分子量と溶融粘度との間に正の相関が一般に存在する。
【0003】
所望の物理的特性を達成するためにガラス強化剤、またはゴム耐衝撃性改良剤などの追加のしばしば非混和性の成分を添加することもまたしばしば望ましい。しかしながら、かかる成分の存在はしばしば、生じた樹脂の溶融粘度の増加につながる。さらに、これらの追加成分は典型的には溶融ブレンディング法を用いて添加され、好ましくは最適物理的特性を得るためにポリマーマトリックス中に十分にうまく分散されるであろう。溶融ブレンディング中の成分の分散はしばしば、ポリマーマトリックスが高い粘度を有する時により効率的に起こるであろう。ポリマーマトリックスおよびゴム耐衝撃性改良剤などの、2つ以上のポリマーがブレンドされる場合、最適分散はしばしば、2つ以上のポリマーが類似の溶融粘度を有する時に得られる。
【0004】
マトリックスポリマーがポリアミドなどの縮合ポリマーである場合、溶融ブレンディング法で分子量低減添加剤と併せて高分子量マトリックスポリマーを使用することによって、十分に分散された添加剤および低い溶融粘度の両方を有する組成物を得ることはしばしば可能である。この方法では、マトリックスポリマーは添加剤の十分な分散を確実にするのに十分に高い溶融粘度を有するであろうし、分子量低減剤の作用はより低分子量のマトリックスポリマーをもたらすであろう。米国特許公報(特許文献1)は、良好なメルト−フローおよび靱性の両方を有する耐衝撃性改良ポリアミド組成物の製造での脂肪族有機酸の使用を開示している。しかしながら、この公報で開示された脂肪族酸の使用は溶融ブレンディング法で用いられる加工装置のスチールエレメントの速い腐食につながり得ることが発見された。
【0005】
このように、標準溶融加工装置の部品を改善された耐腐食性の高価な材料で製造されたものと置き換える必要なく加工装置の腐食速度の低下にもつながる改善されたメルト−フローのポリアミド組成物の製造方法が望ましいであろう。かかる方法は望ましくは、熱可塑性ポリアミド組成物の物理的特性を維持しながらメルト−フローを上げるための他の方法と比較して標準加工装置の低下したレベルの腐食をもたらすであろう。
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0018135号明細書
【特許文献2】米国特許第3,264,272号明細書
【特許文献3】米国特許第4,187,358号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
高いメルト−フローを示す樹脂組成物の製造方法であって、少なくとも1つのポリアミドを含む熱可塑性ポリマーを、ポリアミドの総重量を基準にして0.01〜10重量パーセントの少なくとも1つの有機酸、および、任意選択的に、1つまたは複数の追加成分と溶融ブレンドする工程を含み、有機酸がポリアミドの融点吸熱の開始温度より約10℃低い温度以上の融点を有する方法が本明細書で開示され、権利請求の対象となる。
【0008】
加えて、権利請求の対象とする方法による組成物から製造された製品が本明細書で開示され、権利請求の対象となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
向上したメルト−フローを有するポリアミド組成物の製造方法が提供される。本方法はポリアミドを、ポリアミドの融点吸熱の開始温度より約10℃低い温度以上の融点を有する有機カルボン酸と溶融ブレンドする工程を含む。本発明の方法は、加工装置の低下した腐食速度につながる。
【0010】
本発明の方法で使用されるポリアミドは少なくとも1つの熱可塑性ポリアミドである。好適なポリアミドは、ジカルボン酸およびジアミン、および/またはアミノカルボン酸の縮合生成物、および/または環状ラクタムの開環重合生成物であることができる。好適なジカルボン酸には、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、イソフタル酸、およびテレフタル酸が含まれる。好適なジアミンには、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、2−メチルオクタメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ビス(p−アミノシクロヘキシル)メタン、m−キシリレンジアミン、およびp−キシリレンジアミンが含まれる。好適なアミノカルボン酸は11−アミノドデカン酸である。好適な環状ラクタムはカプロラクタムおよびラウロラクタムである。好ましいポリアミドには、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド4,6、ポリアミド6,10、ポリアミド6,12、ポリアミド11、ポリアミド12などの脂肪族ポリアミド;およびポリ(m−キシリレンアジパミド)(ポリアミドMXD,6)、ポリ(ドデカメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド12,T)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド10,T)、ポリ(ノナメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド9,T)、ヘキサメチレンアジパミド−ヘキサメチレンテレフタルアミド・コポリアミド(ポリアミド6,T/6,6)、ヘキサメチレンテレフタルアミド−2−メチルペンタメチレンテレフタルアミド・コポリアミド(ポリアミド6,T/D,T)などの半芳香族ポリアミド;ならびにコポリマーおよびこれらのポリマーの混合物が含まれる。
【0011】
本発明の方法で使用される有機カルボン酸は1つまたは複数のモノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、高級酸、またはアミノ酸であってもよい。有機酸は、その融点がポリアミドの融点吸熱の開始温度より約10℃低い温度以上であるように選択される。有機酸の融点は好ましくはポリアミドの融点吸熱の開始温度より約5℃低い温度以上である。有機酸の融点はより好ましくはポリアミドの融点吸熱の開始温度以上であろう。有機カルボン酸に関連して本明細書で用いられるところでは、用語「融点」は、有機酸が融点を持たない場合には昇華点または分解点を意味する。
【0012】
ポリアミドの「融点吸熱の開始温度」とは、ASTM(米国材料試験協会)方法D341−−82(再認可1988年)に従って示差走査熱量測定法(DSC)によって測定されるようなポリアミドの溶融曲線の外挿開始温度(T)を意味する。ポリアミドが2つ以上の融点吸熱を有する場合、最低の融点吸熱の開始温度が選択される。2つ以上のポリアミドが使用される場合、最低の融点吸熱開始温度のポリアミドの融点吸熱の開始温度が選択される。
【0013】
有機酸は好ましくは、その融点がポリアミドと溶融ブレンディング中の溶融物の最高温度より約10℃高い温度以下であるように選択される。約200℃〜約310℃である融点吸熱開始温度のポリアミドについては、イソフタル酸およびテレフタル酸が好ましい有機酸である。約100℃〜約160℃である融点吸熱開始温度のポリアミドについては、アジピン酸およびドデカン二酸が好ましい有機酸である。
【0014】
有機酸は約0.01〜約10重量パーセントで、好ましくは約0.05〜約2重量パーセントで、またはより好ましくは約0.1〜約1重量パーセントで使用され、ここで重量百分率はポリアミドの総重量を基準とする。
【0015】
本発明の方法によって製造されたポリアミド組成物は添加剤を含有してもよい。添加剤の例には、耐衝撃性改良剤、繊維強化剤(ガラスファイバー、カーボンファイバー、ウォラストナイト、アラミドなど)、可塑剤、熱安定剤、酸化安定剤、UV光安定剤、難燃剤、化学安定剤、滑剤、着色剤(カーボンブラック、他の顔料、染料など)、金型剥離剤、核剤、ナノクレイなどが挙げられる。
【0016】
本発明の方法は、耐衝撃性改良剤および/または強化剤を含有するポリアミド組成物を製造するために特に有用である。
【0017】
ポリアミドでの使用のための好ましい耐衝撃性改良剤には、ポリオレフィン主鎖そのものの上か側鎖上かのどちらかでそれに結合したカルボン酸部分を有するポリオレフィンである、カルボキシル置換ポリオレフィンが含まれる。「カルボン酸部分」とは、ジカルボン酸、ジエステル、ジカルボン酸モノエステル、酸無水物、ならびにモノカルボン酸およびエステルの1つまたは複数などのカルボン酸基を意味する。有用な耐衝撃性改良剤には、ポリオレフィン主鎖そのものの上か側鎖上かのどちらかでそれに結合したジカルボン酸部分を有するポリオレフィンであるジカルボン酸置換ポリオレフィンが含まれる。「ジカルボン酸部分」とは、ジカルボン酸、ジエステル、ジカルボン酸モノエステル、および酸無水物の1つまたは複数などのジカルボン酸基を意味する。
【0018】
ポリアミドで使用される耐衝撃性改良剤は好ましくはエチレン/α−オレフィン・ポリオレフィンをベースにするであろう。1,4−ヘキサジエンまたはジシクロペンタジエンなどのジエンモノマーが任意選択的にポリオレフィンの製造に使用されてもよい。好ましいポリオレフィンは、1,4−ヘキサジエンおよび/またはジシクロペンタジエンから製造されたエチレン−プロピレン−ジエン(EPDM)ポリマーである。カルボキシル部分は、不飽和カルボキシル含有モノマーと共重合させることによってポリオレフィンの製造中に導入されてもよい。エチレンと無水マレイン酸モノエチルエステルとのコポリマーが好ましい。カルボキシル部分はまた、酸、エステル、二酸、ジエステル、酸エステル、または酸無水物などの、カルボキシル部分を含有する不飽和化合物でポリオレフィンをグラフトすることによって導入されてもよい。好ましいグラフト化剤は無水マレイン酸である。好ましい耐衝撃性改良剤は、本願特許出願人から商業的に入手可能である、フサボンド(Fusabond)(登録商標)N MF521Dなどの、無水マレイン酸でグラフトされたEPDMポリマーである。ポリエチレン、ポリプロピレン、およびEPDMポリマーなどのポリオレフィンとカルボキシル部分を含有する不飽和化合物でグラフトされたポリオレフィンとのブレンドが耐衝撃性改良剤として使用されてもよい。
【0019】
ポリアミドでの使用に好適な耐衝撃性改良剤にはまたアイオノマーが含まれてもよい。アイオノマーとは、亜鉛、ナトリウム、またはリチウムなどの金属カチオンで中和されたまたは部分的に中和されたカルボキシル基含有ポリマーを意味する。アイオノマーの例は、両方とも本明細書に参照により援用される、米国特許公報(特許文献2)および米国特許公報(特許文献3)に記載されている。好適なカルボキシル基含有ポリマーの例には、エチレン/アクリル酸コポリマーおよびエチレン/メタクリル酸コポリマーが挙げられるが、それらに限定されない。カルボキシル基含有ポリマーはまた、アクリル酸ブチルなどの、しかしそれに限定されない1つまたは複数の追加モノマーに由来してもよい。亜鉛塩が好ましい中和剤である。アイオノマーは、本願特許出願人からサーリン(Surlyn)(登録商標)商標で商業的に入手可能である。
【0020】
熱可塑性アクリル耐衝撃性改良剤はコア−シェル構造を有することが好ましい。コア−シェル構造は、コア部分が好ましくは0℃またはそれ未満のガラス転移温度を有するが、シェル部分が好ましくはコア部分のそれより高いガラス転移温度を有するものである。コア部分はシリコーンでグラフトされていてもよい。シェル・セクションは、シリコーン、フッ素などの低い表面エネルギー基材でグラフトされていてもよい。低い表面エネルギー基材を表面にグラフトされたコア−シェル構造のアクリルポリマーは、本発明の組成物のポリエステルおよび他の成分とのブレンディング中にまたはその後にそれ自体と凝集するだろうし、組成物中に容易に均一に分散され得る。
【0021】
本発明の方法では、ポリアミドおよび有機酸および任意の追加原料が溶融ブレンドされる。成分のすべてが溶融ブレンディング前に湿式ブレンドされてもよく、ポリアミドと追加添加剤との予め溶融ブレンドされた混合物が有機酸と溶融ブレンドされてもよく、ポリアミドと追加添加剤との予め溶融ブレンドされた混合物が有機酸および追加添加剤と溶融ブレンドされてもよい。
【0022】
溶融ブレンディングは、当業者に公知の任意の適切な方法を用いて実施されてもよい。好適な方法は、単軸または二軸スクリュー押出機、ブレンダー、混練機、バンバリー(Banbury)ミキサー、成形機などの使用を含んでもよい。本方法が耐衝撃性改良剤、および強化剤などの添加剤を含有する組成物を製造するために用いられる場合特に、二軸スクリュー押出が好ましい。
【0023】
本発明の方法で製造された組成物は高いメルト−フローを有し、射出成形、ロトモールディングおよび他の溶融加工技術を用いて様々な物品へ好都合にも成形されてもよい。
【実施例】
【0024】
(実施例1および比較例1)
表1に示す原料をドラム中で混転することによって湿式ブレンドした。ザイテル(Zytel)(登録商標)101 NC010は、本願特許出願人によって供給されるポリアミド6,6である。フサボンド(登録商標)N MF521Dは、同様に本願特許出願人によって供給される無水マレイン酸でグラフトされたEPDMエラストマーである。黒色コンセントレートはポリマーキャリア中に分散されたカーボンブラックである。等モル量のドデカン二酸およびテレフタル酸を使用した。
【0025】
混合物を、約270℃のバレル温度および約280℃のダイ温度の10バレル30mmワーナー・アンド・フライダー(Werner & Pfleiderer)共回転二軸スクリュー押出機で溶融ブレンドした。原料のすべてを第1バレル・セクションへ供給した。押出は真空下のポートで実施した。スクリュー速度は250rpmであり、押出機供給速度は30ポンド毎時であった。得られたストランドを水中で急冷し、ペレットへカットし、冷えるまで窒素でスパージングした。押出機を1日に約6.5〜約7時間10日間運転した。
【0026】
バレル3および4、6および7、ならびに9および10の間に、押出機は、押出機バレルのそれにマッチする輪郭を有する0.25インチ幅スチール・スペーサーを含有した。(バレルは、バレル10がダイに最も近いように順次番号を付ける。)スペーサー内側の異なるポイントでの開口部の直径をまた、押出の前後にレーザーマイクロメーターを用いて測定した。測定は、各バレルで左側および右側(押出機でのポリマー流れ方向に対して)開口部の両方について行った。これらの測定の結果を、押出機バレルの内面からのミル/年(mpy)単位の金属損失の速度に換算した。比較例1に関しては各スペーサーについて10ポイントでの測定を行い、実施例1に関しては各スペーサーについて8ポイントでの測定を行った。結果の範囲を表2に報告する。実験誤差のために、金属損失の低い速度は時々負であると計算された。負の速度は表2ではゼロとして報告する。スペーサーでの開口部の表面をまた40〜50倍倍率で目視検査した。目視検査は、実施例1で使用したスペーサーが比較例1で使用したものより著しく少ない腐食を示すことを示した。
【0027】
ノッチ付きアイゾット衝撃強度ならびに280℃および1,000秒−1での溶融粘度を比較例1および実施例1の組成物について測定した。ISO(国際標準化機構)方法ISO 180/1Aをノッチ付きアイゾット試験のために用いた。結果を表1に示す。
【0028】
【表1】

【0029】
【表2】

【0030】
実施例1および比較例1で使用したポリアミド、ポリアミド6,6は約264℃の融点を有する。比較例1で使用した有機酸、ドデカン二酸は、ポリアミド6,6のそれより135℃以上低い、約128〜130℃の融点を有する。ドデカン二酸の使用は、用いた押出装置で著しい腐食につながった。実施例1で使用した有機酸、テレフタル酸は、ポリアミド6,6の融点より30℃以上高い、300℃より高い昇華点を有する。テレフタル酸の使用は、比較例1で製造された組成物のそれらに非常に似た衝撃強度および溶融粘度を有する組成物につながると同時に、用いた押出装置で最小限の腐食につながった。
【0031】
(実施例2および比較例2)
臭素化難燃剤およびガラスファイバーを除いて表3に示す原料のすべてを乾式ブレンドし、約340〜350℃のバレル温度の40mmワーナー・アンド・フライダー共回転二軸スクリュー押出機の第1バレルに供給した。臭素化難燃剤およびガラスファイバーは押出機の下流でサイドフィーダーによって添加した。得られたストランドを水中で急冷し、ペレットへカットした。
【0032】
表3で、「ポリアミド6,T/6,6」はテレフタル酸、アジピン酸、およびヘキサメチレンジアミンから製造された約312℃の融点のコポリアミドを意味する。「滑剤」は脂肪酸ベースの有機滑剤を意味する。「サーリン(登録商標)8920」は、本願特許出願人によって供給される中和されたエチレン−メタクリル酸コポリマーを意味する。「ガラスファイバー」は、PPGインダストリーズ社(PPG Industries,Inc.)によって供給されるPPG3540を意味する。「臭素化難燃剤」は、グレート・レークス・ケミカル社(Great Lakes Chemical,Inc.)によって供給されるPDBS−80を意味する。黒色コンセントレートは、クラリエント社、タリータウン、ニューヨーク州(Clarient Corp.,Tarrytown,NY)によって供給されるポリアミド6T/66中の30重量パーセント配合のカーボンブラックである。
【0033】
得られた組成物の溶融粘度はカイエネス流動計(Kayeness rheometer)を用いて325℃および1000秒−1で測定した。その結果を表3に示す。引張強度および破断伸びはISO方法527−1/−2を用いて測定し、曲げ弾性率はISO 178を用いて測定し、ノッチ付きシャルピー(notched Charpy)衝撃強度はISO方法179 1eAを用いて測定した。結果を表3に示す。
【0034】
【表3】

【0035】
(実施例3〜5および比較例3)
ガラスファイバーを除いて表4に示す原料のすべてを乾式ブレンドし、約280℃より上のバレル温度の58mmワーナー・アンド・フライダー共回転二軸スクリュー押出機の第1バレルに供給した。ガラスファイバーは押出機の下流でサイドフィーダーによって添加した。得られたストランドを水中で急冷し、ペレットへカットした。
【0036】
表4で、「ポリアミド6,6」は、本願特許出願人によって供給されるザイテル(登録商標)101 NC010を意味する。「ガラスファイバー」は、PPGインダストリーズ社によって供給されるPPG3540を意味する。「黒色コンセントレート」はポリアミド6,6中の黒着色剤を意味する。
【0037】
得られた組成物の溶融粘度はカイエネス流動計を用いて280℃および1000秒−1で測定した。その結果を表4に示す。引張強度および破断伸びはISO方法527−1/−2を用いて測定し、曲げ弾性率はISO 178を用いて測定し、ノッチ付きシャルピー衝撃強度はISO方法179 1eAを用いて測定した。結果を表5に示す。
【0038】
【表4】

【0039】
(実施例6)
表5に示す原料をドラムで混転することによって乾式ブレンドした。エルバミド(Elvamide)(登録商標)8061は本願特許出願人によって供給されるコポリアミド6,6/6である。その融点は156℃であり、その融点吸熱の開始温度は129℃である。
【0040】
混合物を、約240℃のバレル温度および約250℃のダイ温度の10バレル30mmワーナー・アンド・フライダー共回転二軸スクリュー押出機で溶融ブレンドした。原料のすべてを第1バレル・セクションへ供給した。押出は真空下のポートで実施した。スクリュー速度は250rpmであり、押出機供給速度は30ポンド毎時であった。得られたストランドを水中で急冷し、ペレットへカットし、冷えるまで窒素でスパージングした。押出機を1日に約6.5〜約7時間10日間運転した。
【0041】
バレル3および4、6および7、ならびに9および10の間に、押出機は、押出機バレルのそれにマッチする輪郭を有する0.25インチ幅スチール・スペーサーを含有した。(バレルは、バレル10がダイに最も近いように順次番号を付ける。)インコネル(Inconel)(登録商標)625の追加の0.25インチ幅スペーサーをスチール・スペーサーおよびバレル4の間に入れた。スペーサー内側の異なるポイントでの開口部の直径をまた、押出の前後にレーザーマイクロメーターを用いて測定した。測定は、各バレルで左側および右側(押出機でのポリマー流れ方向に対して)開口部の両方について行った。これらの測定の結果を、押出機バレルの内面からのミル/年(mpy)単位の金属損失の速度に換算した。実施例6に関して各スペーサーについて10ポイントでの測定を行った。結果の範囲を表6に報告する。実験誤差のために、金属損失の低い速度は時々負であると計算された。負の速度は表6ではゼロとして報告する。スペーサーでの開口部の表面をまた40〜50倍倍率で目視検査した。目視検査は、実施例6で使用したスペーサーが最小限の腐食、および比較例1で使用したものより著しく少ない腐食を示すことを示した。
【0042】
ノッチ付きアイゾット衝撃強度ならびに280℃および1,000秒−1での溶融粘度を比較例1および実施例1の組成物について測定した。ISO方法ISO 180/1Aをノッチ付きアイゾット試験のために用いた。結果を表5に示す。
【0043】
【表5】

【0044】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのポリアミドを含む熱可塑性ポリマーを、ポリアミドの総重量を基準にして0.01〜10重量パーセントの少なくとも1つの有機酸、および、任意選択的に、1つまたは複数の追加成分と溶融ブレンドする工程を含み、有機酸がポリアミドの融点吸熱の開始温度より約10℃低い温度以上の融点を有することを特徴とする高いメルトフローを示す樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
前記有機酸が前記ポリアミドの融点吸熱の開始温度より約5℃低い温度以上の融点を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記有機酸が前記ポリアミドの融点吸熱の開始温度以上である融点を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ポリアミドの総重量を基準にして約0.05〜約2重量パーセントの少なくとも1つの有機酸が使用されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ポリアミドの総重量を基準にして約0.1〜約1重量パーセントの少なくとも1つの有機酸が使用されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリアミドが約200℃〜約310℃の開始温度の融点吸熱を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記有機酸がテレフタル酸および/またはイソフタル酸であることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリアミドが約100℃〜約160℃の開始温度の融点吸熱を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記有機酸がアジピン酸および/またはドデカン二酸であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリアミドが、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド6,10、ポリアミド6,12、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド4,6、ポリアミド9,T、ポリアミド10,T、ポリアミド12,T、ポリアミド6,T/6,6、およびポリアミド6,T/D,Tの1つまたは複数から選択されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項11】
ポリアミドが、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド6,10、ポリアミド6,12、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド4,6、ポリアミド9,T、ポリアミド10,T、ポリアミド12,T、ポリアミド6,T/6,6、およびポリアミド6,T/D,Tの1つまたは複数から選択されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記熱可塑性ポリマーが少なくとも1つのポリアミドであり、そして前記追加成分が耐衝撃性改良剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記耐衝撃性改良剤が無水マレイン酸でグラフトされたEPDMポリオレフィンを含むことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項14】
前記熱可塑性ポリマーが少なくとも1つのポリアミドであり、前記追加原料が少なくとも1つの強化剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記強化剤がガラスファイバーであることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法による組成物から製造されることを特徴とする製品。

【公表番号】特表2008−508400(P2008−508400A)
【公表日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−523783(P2007−523783)
【出願日】平成17年7月27日(2005.7.27)
【国際出願番号】PCT/US2005/026687
【国際公開番号】WO2006/015067
【国際公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】