説明

るつぼ供給機構

【課題】るつぼ供給機構を簡単な構成にするとともに低コストを実現し、小型化しながらもるつぼの収容数を増大する。
【解決手段】るつぼ供給機構において、傾斜した載置面311上に並列にるつぼを載置し、その載置面311を滑降するるつぼをテーパ状の案内面312bにより、出口312aに設けられたるつぼ移動機構313に集める。このるつぼ移動機構313は、るつぼを収容する収容凹部3131xを周面部3131aに備えており、滑降したるつぼを受け取る受取位置と、るつぼ供給口314と連通して、るつぼを落下させる供給位置との間を回転移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば鉄鋼や非鉄金属、セラミックスなどの測定試料中に含まれる炭素(C)、窒素(N)、水素(H)、硫黄(S)、酸素(O)等の元素を分析する元素分析装置に関し、特に、るつぼを供給するるつぼ供給機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の元素分析装置は、例えば特許文献1に示すように、上部電極及び下部電極に狭持されたるつぼに測定試料を収容して、電圧を印加することにより、るつぼ内の測定試料を加熱して、それによって生じたガスを分析して前記測定試料の元素を分析している。そして、この元素分析装置では、るつぼを供給するるつぼ供給機構を備え、当該るつぼ供給機構により供給されたるつぼを搬送機構によって下部電極上に搬送するようにしている。
【0003】
従来、るつぼ供給機構は、特許文献2に示すように、円筒状の収容空間内にるつぼを縦積みにして複数列収容し、るつぼを供給する際には、収容空間下部に設けられた開閉口を開口してるつぼを落下させることにより供給している。
【0004】
しかしながら、この構成では開閉口を開口してるつぼを落下させる際に、落下するるつぼ以外のるつぼを保持するアクチュエータ等の保持機構が必要となる。また、1列のるつぼが供給された後に、他の列からるつぼを落下させるために、収容空間を回転させて、開閉口の上部に他の列を移動させる回転機構が必要である。なお、各列が無くなったことを検出するためにセンサも必要である。そうすると、るつぼ供給機構が構造的に複雑になってしまい、製造コストも高くなるという問題がある。さらに、上記機構の設置空間など、るつぼ以外の部品の占める空間が大きくなってしまい、るつぼ供給機構が大型化してしまうとともに、その割にるつぼの収容数が少ないという問題がある。
【特許文献1】特許2949501号公報
【特許文献2】特表2006−504070号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、上記問題点を一挙に解決するためになされたものであり、るつぼ供給機構を簡単な構成にするとともに低コストを実現し、小型化しながらもるつぼの収容数を増大することをその主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明にるつぼ供給機構は、るつぼに入れた試料を加熱することにより、当該試料内部に含まれている元素をガス成分として抽出して分析する元素分析装置に用いられるるつぼ供給機構であって、複数のるつぼが並列に載置される傾斜した載置面と、前記載置面の傾斜方向下方に出口を形成し、前記載置面を自重により滑降するるつぼを前記出口に向かって案内する案内部材と、前記案内部材の出口及びるつぼを導出する供給口との間に介在して設けられ、前記出口に滑降したるつぼを前記供給口に移動するるつぼ移動機構と、を具備し、前記るつぼ移動機構が、前記案内部材の出口に設けられ、前記載置面を滑降するるつぼを収容する収容凹部が周面部に形成されたるつぼ移動体と、前記収容凹部が滑降するるつぼを受け取る受取位置と、前記収容凹部が前記供給口に連通して、前記収容凹部内のるつぼを前記供給口に落下させる供給位置との間を移動させる駆動部とを備えることを特徴とする。
【0007】
このようなものであれば、るつぼを並列に載置しているので、るつぼの収容数を増大させることができる。また、載置面を自重により滑降したるつぼが案内部材により出口に案内され、案内されたるつぼがそのまま収容凹部内に滑降し、供給口に搬送されるので、るつぼ供給機構の構成を簡単にし、製造コストを削減することができる。さらに、るつぼ供給機構の構成を簡単にすることにより、又るつぼを並列に載置することによりるつぼ供給機構を小型化することができる。
【0008】
るつぼ移動機構の構成を簡単にすることによってるつぼ供給機構の構成を簡単且つ小型化するためには、前記駆動部が、前記るつぼ移動体を回転駆動するものであり、前記るつぼ移動体が前記収容位置から回転した状態において、その周面部が前記出口を閉塞するものであることが望ましい。これならば、案内部材の出口から滑降するるつぼを堰き止める機構を不要にすることができる。
【0009】
また、案内部材の出口近傍において、るつぼが詰まり、るつぼ移動体の収容凹部内に滑降しなくなることを簡単な構成により防止するためには、前記るつぼ移動体が、前記収容位置及び前記供給位置間を移動する途中において、前記案内部材の出口近傍にあるるつぼに接触する突起部を備えることが望ましい。
【0010】
載置面上に載置したるつぼが転倒して、るつぼの供給を妨げることを好適に防止するためには、前記載置面上に載置されたるつぼの転倒を防止する転倒防止構造を備え、前記転倒防止構造が、前記載置面に対向して設けられた対向面により形成され、前記載置面と前記対向面との距離が前記るつぼの最長の対角線の長さ寸法よりも小さいことが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
このように本発明によれば、るつぼ供給機構を簡単な構成にするとともに低コストを実現し、小型化しながらもるつぼの収容数を増大することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。なお、図1は本実施形態の元素分析装置100の概略構成図、図2はるつぼ供給機構3の構成を示す模式的断面図、図3はるつぼ収容部31の正面図、図4はるつぼ移動機構313を模式的に示す断面図、図5はるつぼ移動体3131の動作を示す図、図6はるつぼ移動体3131及び案内部材312の出口312a近傍を主として示す部分斜視図、図7は転倒防止構造6を示す図である。
【0013】
<装置構成>
本実施形態に係る元素分析装置100は、るつぼR内に収容された金属試料(以下、単に試料とも言う)を加熱し、その際に発生するガス成分を分析することによって、当該試料中に含まれている元素を測定するもので、分析装置本体1と、当該分析装置本体1にるつぼRを搬送するるつぼ搬送機構2と、当該るつぼ搬送機構2に搬送されるるつぼRを供給するるつぼ供給機構3とを備えている。以下それぞれについて説明する。
【0014】
<<分析装置本体1>>
分析装置本体1から説明すると、この分析装置本体1の正面には、図1に示すように、上部電極12及び下部電極11が上下に離間させて設けられており、下部電極11上に、試料を収容したるつぼRを載置できるように構成してある。この図1に示す下部電極11上に載置されたるつぼ位置が加熱位置P1である。なお、図1中、符号13は下部電極11上におけるるつぼの有無を検知する検知センサ(例えば光電センサ)である。また、るつぼRは、上部が開口した円筒状をなす黒鉛を素材としたもので、下端部は先細りのテーパ形状をなしている。なお、るつぼRは、下端部が先細りテーパ形状をなすものの他、下端部の外周に環状凹溝が形成されたものであっても良い。
【0015】
そして分析時は、加熱位置P1に置かれたるつぼRに対して、下部電極11が上方にスライドし、上部電極12との間でるつぼRを挟み込む。この状態で、上部電極12の上方に設けられた試料投入口12Aから、るつぼR内に試料を投入されると、その後、電極11、12間に電流が印加され、るつぼRが発熱して内部の試料が加熱される。加熱された試料から発生したガスは、図示しない分析部に送られて成分が測定され、その結果から、試料に元々含まれていた元素が分析される。
【0016】
例えば、試料中の酸素量を測定する場合には、試料の加熱によって反応生成物であるCO(一酸化炭素)を発生させ、COを例えば分析部を構成する非分散形赤外線検出器を用いて測定し、そのCO値に基づいて当該試料中に存在していた酸素量を測定・算出する。その他、反応生成物とそれに応じた分析部を設定することにより、水素窒素などの成分も測定することができる。なお、分析後は、使用したるつぼRは、るつぼ搬送機構2により試料と共に廃棄処分される。
【0017】
<<るつぼ搬送機構2>>
るつぼ搬送機構2は、図1に示すように、後述するるつぼ設置部33に設置されたるつぼRを、分析装置本体1における加熱位置P1まで搬送するものであり、加熱位置P1(下部電極11)に対して進退移動可能なアーム部21と、当該アーム部21を駆動する駆動機構(図示しない)と、アーム部21の先端に取り付けられた一対の把持爪22とを具備するもので、別に設けた制御機器(図示しない)からの指令によって制御される。
【0018】
アーム部21の基端部は、基台101に設けられた駆動機構の回転軸に連結されており、この駆動機構により、アーム部21は、加熱位置P1及び加熱位置P1から離間した退避位置の間を回転して進退移動する。ここで、退避位置は、加熱位置P1に対して、るつぼ設置部33よりも外方に位置している。また、把持爪22は、少なくとも一方が例えば概略くの字形をなすものである。各把持爪22は、基端部においてアーム部21にスライド駆動可能に保持されており、前記制御機器からの指令で把持爪22間の距離を縮めるようにスライドさせることによって、各把持爪22の中央部分間で前記るつぼRの側周面を狭圧把持できるように構成されている。
【0019】
るつぼ搬送機構2の動作について説明すると、るつぼ搬送時において、アーム部2が退避位置から回転移動して、るつぼ設置部33に至る。そして、把持爪21がるつぼ設置部33にあるるつぼRを把持する。その後、再び回転移動して、加熱位置P1に移動し、加熱位置P1(下部電極11上)にるつぼRを載置する。載置後、アーム部2は退避位置に戻る。また分析後は、アーム部21が退避位置から加熱位置P1に移動し、把持爪21が下部電極11上にあるるつぼRを把持し、図示しない廃棄容器に搬送して廃棄する。
【0020】
<<るつぼ供給機構3>>
るつぼ供給機構3は、るつぼ搬送機構2により搬送されるるつぼRを自動的に供給するものであり、特に図2に示すように、複数のるつぼRを収容可能なるつぼ収容部31と、るつぼ収容部31からるつぼRを自重により落下させる案内路32と、案内路32の導出口32bに設けられ、落下したるつぼRを受け取るるつぼ設置部33と、を備えている。
【0021】
るつぼ収容部31は、図2及び図3に示すように、複数のるつぼRが並列に載置される傾斜した載置面311と、載置面311の傾斜方向下方に出口312aを形成し、自重により載置面311を滑降するるつぼRを出口312aに向かって案内する案内部材312と、案内部材312の出口312a、及びるつぼRを案内路32に供給する供給口314の間に介在して設けられ、出口312aに滑降したるつぼRを供給口314に移動させるるつぼ移動機構313と、を備える。なお、供給口314は、平板31xの載置面311下方に設けられている。
【0022】
載置面311は、図2に示すように、水平方向に対して、るつぼRが転倒すること無く、自重により滑降する角度に傾斜しており、水平方向に対して傾斜して設けられた平板31xの上面に形成されている。この傾斜角度は、供給口314に移動されたるつぼRが、自重により落下する角度であり、具体的には約30度である。
【0023】
案内部材312は、図3に示すように、前記平板31xの上面において載置面311の周囲を覆うように設けられている。具体的に案内部材312は、載置面311の上部及び傾斜方向上方を開放するように、載置面311の左右側方及び傾斜面下方に立設されている。そして、傾斜方向下方には、るつぼRを滑降させて外部に導くための出口312aを形成している。また、本実施形態の案内部材312は、出口312a近傍において、滑降するるつぼRを出口312aに集めるために、左右対向面の幅が出口312aに向かうに従って徐々に狭くなるテーパ状をなす案内面312bを備えている。なお、載置面311の傾斜方向上方を開口させていることにより、るつぼRの補給を容易に行うことができる。
【0024】
るつぼ移動機構313は、図3及び図4に示すように、載置面311を滑降するるつぼRを収容する収容凹部3131xが周面部3131aに形成されたるつぼ移動体3131と、収容凹部3131xが滑り降りるるつぼRを受け取り収容する収容位置Sと、収容凹部3131xが供給口314に連通して、収容凹部3131x内のるつぼRを自重により供給口314に落下させる供給位置Tとの間を回転移動させる駆動部3132と、を備える。
【0025】
るつぼ移動体3131は、平板31xの上面において、案内部材312の出口312a近傍に設けられている。また、るつぼ移動体3131は概略回転体形状をなし、本実施形態では概略円柱形状である。そして、るつぼ移動体3131は、その中心軸に回転軸RSを有し、この回転軸RSにより一軸周りに回転可能に構成されている。
【0026】
また、るつぼ移動体3131の周面部3131aには、その軸方向に沿って、軸方向一端面である上面から他端面である下面に亘って形成された収容凹部3131xが設けられている。この収容凹部3131xは、1つのるつぼRが収容する大きさを有しており、るつぼRを収容した状態において、当該るつぼRがるつぼ移動体3131の仮想外接円内に位置する。
【0027】
駆動部3132は、平板31xの裏面側に設けられ、装置本体側に固定されている。そして、駆動部3132は、図4に示すように、るつぼ移動体3131を回転軸RS周りに回転するものであり、モータMと当該モータMの回転をるつぼ移動体3131に設けられた回転軸RSに伝達する駆動軸DSとを備えている。なお、るつぼ移動体3131の回転軸RSは、平板31xに設けられた貫通孔を通って、平板31xの裏面側に延出しており、駆動部3132の駆動軸DSに連結される。
【0028】
そして、本実施形態では、前記駆動部3132と、るつぼ移動体3131及び平板31x(載置面311、案内部材312)とを分離可能にしている。つまり、るつぼ移動体3131に接続された回転軸RSと、駆動部3132の駆動軸DSとの間に、分離連結機構315が設けられている。この分離連結機構315は、回転軸RS又は駆動軸DSの一方に設けられた凹部315mと、他方に設けられた凸部315nとから構成される。これら凹部315m及び凸部315nは、軸方向に着脱可能であり、連結時において相対回転不能に係合するように構成されている。この分離連結機構315により、るつぼ移動体3131及び平板31xを装置本体から容易に取り外すことができ、例えばるつぼ移動体3131及び平板31xの清掃等を簡単に行うことができる。
【0029】
また、駆動部3132は、図5に示すように、収容凹部3131xが滑り降りるるつぼRを受け取り収容する収容位置S(図5(A))と、収容凹部3131xが供給口314に連通して、収容凹部3131x内のるつぼRを自重により供給口314に落下させる供給位置T(図5(B))との間を回転移動するように、るつぼ移動体3131を一方向に回転させるものである。
【0030】
収容位置Sにおいて、収容凹部3131xは、案内部材312の出口312a内に位置し、傾斜方向上方を向く。なお、供給口314は、収容凹部3131xを回転軸RSを回転中心として回転させたときに、その移動円上に設けられている。
【0031】
また、るつぼ移動体3131は、駆動部3132により収容位置Sから回転移動されたときに、再び収容位置Sに達するまで、その周面部3131aが案内部材312の出口312aを閉塞する(図5参照)。これにより、出口312aから下方に滑降するるつぼRを堰き止めることができる。また、別個に案内部材312の出口312aを閉塞する機構を不要にすることができる。
【0032】
さらに、るつぼ移動体3131は、図3、5及び6に示すように、収容位置S及び供給位置T間を移動する途中において、案内部材312の出口312a近傍にあるるつぼRに接触する突起部317を備える。この突起部317は、るつぼ移動体3131の周面部3131aに設けられており、具体的には、収容凹部3131xの回転方向近傍に設けられている。これにより、収容凹部3131xが供給位置Tから収容位置Sに移動する途中で、収容凹部3131xが案内部材312の出口312aに到達する前に突起部317が出口312a近傍のるつぼRに接触してるつぼRの詰まりを壊すことができる(図5(C))。なお、案内部材312には、図6に示すように、当該突起部317の移動を妨げないために、出口312aに突起部317が通過する切り欠き溝312Mが設けられている。
【0033】
さらに、本実施形態の供給口314は、回転軸RSよりも傾斜方向下側に設けられており、るつぼRを収容凹部3131xに保持させたまま回転させると、供給口314に移動する前に、収容凹部3131xから周面部3131aの外方に落下してしまう恐れがある。この落下を防止するために、図3、5及び6に示すように、るつぼ移動体3131の周囲に落下防止壁316が設けられている。この落下防止壁316は、少なくともるつぼ移動体3131の傾斜方向下側側面に沿って設けられ、収容凹部3131xが傾斜方向下方を向くときに、当該収容凹部3131xの周面部側開口を覆うものである。
【0034】
さらに、るつぼ収容部31は、図7に示すように、前記載置面311上に載置されたるつぼRの転倒を防止する転倒防止構造6を備えている。この転倒防止構造6は、載置面311に対向して設けられた対向面318により形成され、載置面311と対向面318との距離が前記るつぼRの最長の対角線の長さ寸法よりも小さくなるように設けられている。具体的に対向面318は、案内部材312に着脱可能に設けられるカバー体31yの載置面311側を向く面により形成されている。このカバー体31yは、案内部材312に対して表裏いずれにおいても取り付けることができる。そして、表面又は裏面の一方に板厚部31y1を設け、裏面側を取り付けた場合(図7(A))と表面側を取り付けた場合(図7(B))とで、載置面311と対向面318との距離が異なるようにし、異なるサイズのるつぼRに対応して転倒防止構造6の機能を発揮できるようにしている。具体的には、前述した下端部が先細りテーパ形状をなす黒鉛るつぼ、及びそれと長さ寸法の異なる水素分析等に用いられる下端部に環状凹溝が形成された黒鉛るつぼ等のように異なるサイズのるつぼRに対応して転倒防止構造6の機能を発揮できるようにしている。
また、カバー体31yには、図1、図2及び図7に示すように、るつぼRを補給するための補給孔319が設けられている。この補給孔319は、るつぼRの外径よりも若干大きく形成された貫通孔である。これならば、るつぼRを随時補給することが可能となり、また、補給孔319からるつぼRを追加しても、前記転倒防止構造6(対向面318)により、補給されたるつぼRが転倒しないため、補給が容易になる。
【0035】
案内路32は、るつぼRを略鉛直方向に落下させて、るつぼ設置部33に案内するものであり、図2に示すように、一端がるつぼRを導入する導入口32aとして開口し、他端がるつぼRを導出する導出口32bとしてるつぼ設置部33の上方に開口している。本実施形態の案内路32は、概略円筒形状をなす案内管5により略鉛直方向に形成されており、案内路32の導入口32aは、るつぼ収容部31の排出口312に連通している。
【0036】
また、案内路32は、るつぼ収容部31から導入されたるつぼRを上下正向きの状態のまま落下させるものであり、るつぼRが落下する際に上下反転しない内径、例えば、るつぼRの最長の対角線の長さ寸法よりも小さい内径である。
【0037】
案内管5の側壁には、供給口314から導入されたるつぼR以外の異物(例えばるつぼRの破片等)を出口(導出口32b)に到達させること無く案内管5の外部に排出するための、例えばスリット状の貫通孔5Aが1又は複数個設けられている。具体的には、案内管5中、傾斜面311に略垂直に設けられた屈曲部51の側壁下方に貫通孔5Aが設けられている。これにより、破片は自重により貫通孔5Aを通って案内管5外に排出される。また、この貫通孔5Aにより、案内路32におけるるつぼRの詰まりを確認することもできる。
【0038】
また、案内路32の出口近傍には、るつぼRの落下速度を低下させるためのテーパ部321が形成されている。このテーパ部321の最小径は、るつぼRの外径よりも若干大きく、るつぼRが通過可能なものである。また案内路32におけるテーパ部321の下流側は、テーパ部321の最小径と同一径を有する。これならば、案内路32の出口近傍におけるるつぼRの落下速度を小さくすることができ、るつぼ設置部33に着地する際のるつぼRの損傷を防止することができる。また、るつぼ設置部33での設置位置の位置ずれを防止することができ、精度良く設置することができる。
【0039】
るつぼ設置部33は、図1及び図2に示すように、基台101に設けられたエアシリンダ等からなる昇降機構34の駆動軸341の先端部に設けられている。そして、るつぼ設置部33は、案内路32に接続されて、落下したるつぼRを受け取る受取位置Q1と、当該受取位置Q1から鉛直下方に離間した離間位置であるるつぼ搬送位置Q2との間を昇降移動するものである。
【0040】
具体的にるつぼ設置部33は、図2に示すように、るつぼRを収容可能な凹部331xを有し、るつぼRを受け取るるつぼ受け本体331と、当該るつぼ受け本体331の凹部331x内に設けられた載置突起332とを備えている。
【0041】
るつぼ受け本体331は、概略有底円筒形状をなし、内部を視認可能な透明樹脂から形成されており、その凹部331xの内径は、るつぼRの外径よりも大きい。また、るつぼ受け本体331の上端部外周面には、テーパ面331tが形成されている。そして、るつぼ設置部33がるつぼ搬送位置Q2から受取位置Q1に移動するにつれて、前記案内路32を形成する案内管5の出口側端面に設けられたテーパ面5tと嵌ることにより、るつぼ受け本体331及び載置突起332と案内路32との位置決めを行う位置決め機能を発揮する(図2参照)。
【0042】
載置突起332は、概略円柱形状をなすものであり、その直径がるつぼRの開口径よりも若干小さく設定されている。そして、載置突起332は、るつぼ受け本体331の凹部331x内において同軸上に設けられ、るつぼRが上下正向きに設置された場合には、その略水平な上面332aにるつぼRが載置される。一方、載置突起332は、るつぼRが上下逆向きに設置された場合には、るつぼR内に収容される。この構成により、るつぼRを上下正向きに設置した場合と、るつぼRを上下逆向きに設置した場合とで、るつぼ設置部33におけるるつぼRの高さ位置が異なる。
【0043】
また、載置突起332の長さは、用いられる種々のるつぼRにおいて、いずれの深さ寸法よりも長くして、るつぼRのサイズを問わない構造としている。つまり、載置突起332の長さは、上下逆向きに設置した場合に、るつぼRの開口が凹部底面に接触しない長さである。つまり、載置突起332の長さは、上下逆向きに設置した場合に、凹部底面と、るつぼRの開口端面との間に空間が形成されるように設定されている。これにより、るつぼRの破片等の異物が凹部331xに蓄積されている場合であっても、るつぼ受け本体331は、上下逆向きにるつぼRを収容することができる。
【0044】
さらにこのるつぼ供給機構3は、図1及び図2に示すように、るつぼ検知センサ41を備え、前記るつぼ設置部33とともに反転検出機構4を構成する。
【0045】
るつぼ検知センサ41は、載置突起332にるつぼRが上下正向きに設置された場合にのみるつぼRを検出する、光を利用したものである。具体的には、光電センサを用いており、光電センサ41の発光部を出て受光部に到達する光L1の軌道が、るつぼ設置部33に上下正向きに設置されたるつぼRの外周面で反射して受光部に到達するように構成されている。
【0046】
このような構成により、るつぼRを上下正向きに設置した場合には、発光部から出た光L1は、るつぼRの側面により反射されて受光部により受光される。一方、るつぼRを上下逆向きに設置した場合には、発光部から出た光L1は、るつぼRの外側周面により反射されることなく、受光部により受光されない。以上により、るつぼ設置部33にるつぼRが設置されていない場合、設置されていても上下逆向きに設置されている場合には、受光部が光L1を受光しないことから、るつぼRの有無及びるつぼRの反転を検知できる。また、受光部の検知信号は、図示しない報知手段に出力され、警報音等でオペレータに報知するようにしている。なお、るつぼ検知センサ41は、上述した反射型のものに限られず、透過型のものでもよいし、超音波を利用したもの等を用いても構わない。
【0047】
<本実施形態の効果>
【0048】
このように構成した本実施形態に係る元素分析装置100によれば、るつぼRを並列に載置しているので、るつぼRの収容数を増大させることができる。また、載置面311を自重により滑降したるつぼが案内部材312により出口に案内され、案内されたるつぼがそのまま収容凹部3131x内に滑降し、供給口314に搬送されるので、るつぼ供給機構3の構成を簡単にし、製造コストを削減することができる。特に本実施形態では、るつぼ移動体3131を一回転させるだけで、1つずつるつぼRを収容し、そしてるつぼRの供給口314への供給を行うことができ、極めて簡単な構成でるつぼ供給機構3を構成することができる。このように、るつぼ供給機構3の構成を簡単にすることにより、又るつぼRを並列に載置することによりるつぼ供給機構3を小型化することができる。
【0049】
<その他の変形実施形態>
【0050】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。以下の説明において前記実施形態に対応する部材には同一の符号を付すこととする。
【0051】
例えば、前記実施形態のるつぼ移動体3131は、その周面部3131aに1つの収容凹部3131xが設けられるものであったが、その他、複数個の収容凹部3131xを周面部3131aに所定間隔で設けるようにしても良い。
【0052】
また、黒鉛るつぼの他に、セラミックるつぼを用いるものであっても良い。この場合、分析装置本体は高周波加熱炉を備えるものであり、試料中に存在する炭素又は硫黄などを分析するものであっても良い。
【0053】
また、前記実施形態のるつぼ移動機構313は、回転機構により構成されるものであったが、図8に示すように、スライド機構により構成しても良い。この場合、駆動部3132は、るつぼ移動体3131’を、案内部材312’の出口312a’に対して、例えば傾斜方向に沿った方向、又は傾斜方向に垂直な方向に進退移動させて収容位置Sと供給位置Tとの間を移動させることが考えられる。特にるつぼ移動体3131’を案内部材312’の出口312a’に対して、傾斜方向に沿った方向に移動させる場合には、収容位置Sから離間した位置において、当該出口312a’からるつぼRが滑降しないように閉塞機構7を設けることが考えられる。
【0054】
その他、前述した実施形態や変形実施形態の一部又は全部を適宜組み合わせてよいし、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施形態に係る元素分析装置の模式的構成図。
【図2】同実施形態におけるるつぼ供給機構の構成を示す縦断面図。
【図3】同実施形態におけるるつぼ収容部の平面図。
【図4】るつぼ移動体の平面図。
【図5】同実施形態におけるるつぼ移動体の動作を示す図。
【図6】同実施形態におけるるつぼ搬送体及び案内部材の出口近傍を示す部分斜視図。
【図7】転倒防止構造を示す断面図。
【図8】変形実施形態におけるるつぼ移動機構を示す図。
【符号の説明】
【0056】
100 ・・・元素分析装置
R ・・・るつぼ
3 ・・・るつぼ供給機構
311 ・・・載置面
312 ・・・案内部材
312a ・・・案内部材の出口
314 ・・・供給口
313 ・・・るつぼ移動機構
3131 ・・・るつぼ移動体
3131x・・・収容凹部
3131a・・・周面部
S ・・・収容位置
T ・・・供給位置
3132 ・・・駆動部
6 ・・・転倒防止構造
318 ・・・対向面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
るつぼに入れた試料を加熱することにより、当該試料内部に含まれている元素をガス成分として抽出して分析する元素分析装置に用いられるるつぼ供給機構であって、
複数のるつぼが並列に載置される傾斜した載置面と、
前記載置面の傾斜方向下方に出口を形成し、前記載置面を自重により滑降するるつぼを前記出口に向かって案内する案内部材と、
前記案内部材の出口及びるつぼを供給するための供給口との間に介在して設けられ、前記出口に滑降したるつぼを前記供給口に移動させるるつぼ移動機構と、を具備し、
前記るつぼ移動機構が、
前記案内部材の出口に設けられ、前記載置面を滑降するるつぼを収容する収容凹部が周面部に形成されたるつぼ移動体と、
前記収容凹部が滑降するるつぼを受け取り収容する収容位置と、前記収容凹部が前記供給口に連通して、前記収容凹部内のるつぼを前記供給口に落下させる供給位置との間を移動させる駆動部とを備える、るつぼ供給機構。
【請求項2】
前記駆動部が、前記るつぼ移動体を回転駆動するものであり、前記るつぼ移動体が前記収容位置から回転した状態において、その周面部が前記出口を閉塞するものである請求項1記載のるつぼ供給機構。
【請求項3】
前記るつぼ移動体が、前記収容位置及び前記供給位置間を移動する途中において、前記案内部材の出口近傍にあるるつぼに接触する突起部を備える請求項1又は2記載のるつぼ供給機構。
【請求項4】
前記載置面上に載置されたるつぼの転倒を防止する転倒防止構造を備え、
前記転倒防止構造が、前記載置面に対向して設けられた対向面により形成され、
前記載置面と前記対向面との距離が前記るつぼの最長の対角線の長さ寸法よりも小さい請求項1、2又は3記載のるつぼ供給機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−8230(P2010−8230A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−167978(P2008−167978)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)
【Fターム(参考)】