説明

ろう接炉

【課題】生産性の向上を図り、製品に応じたろう付け条件でのろう付けを可能とするろう接炉を提供する。
【解決手段】複数種類のろう接対象物10を炉体110の内部で加熱して、ろう接するろう接炉において、箱状の炉体110に、複数の方向からのろう接対象物10の内部への搬入と、それぞれの搬入側への搬出とを可能とする複数の搬入搬出口115、116を設けると共に、複数の搬入搬出口115、116から順に搬入されるろう接対象物10の複数の種類に応じて、ろう接時のろう接条件を調整可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばアルミニウム製の熱交換器をろう接対象物として組み立て体を一体的にろう接する、ろう接炉に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のろう付け炉として、例えば特許文献1に示されるものが知られている。即ち、このろう付け炉は、アルミニウム製品のろう付け用連続雰囲気炉であり、ろう付け炉の途中部分には、内部が窒素雰囲気に維持される予熱炉、加熱炉が設けられている。そして、駆動装置によってメッシュベルトが炉内を貫通して一方向に移動されるようになっており、アルミニウム製品は、メッシュベルトによって搬送され、予熱炉で予熱された後に、加熱炉でろう付けされるようになっている。
【特許文献1】特開2004−50223号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のような連続雰囲気炉においては、大きさや形状の異なる種々のアルミニウム製品を連続的に搬送してろう付けすることができるので、大量生産向きであるが、ろう付け条件(ろう付け温度、ろう付け時間等)については、種々のアルミニウム製品のうち、最大サイズのものに合わさざるを得ないので、小型の製品に対しては、熱エネルギーの無駄を伴っていた。
【0004】
これに対して、内部に一つの部屋を形成して一方側からの製品の搬入搬出によってろう付けを行なうバッチ式のろう付け炉においては、個々の製品の大きさに合わせたろう付け条件でのろう付けが可能となるが、上記連続雰囲気炉に比べて生産性が落ちるという短所がある。
【0005】
本発明の目的は、上記問題に鑑み、生産性の向上を図り、製品に応じたろう付け条件でのろう付けを可能とするろう接炉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するために、以下の技術的手段を採用する。
【0007】
請求項1に記載の発明では、複数種類のろう接対象物(10)を炉体(110)の内部で加熱して、ろう接するろう接炉において、炉体(110)は、箱状を成して、複数の方向からのろう接対象物(10)の内部への搬入と、それぞれの搬入側への搬出とを可能とする複数の搬入搬出口(115、116)を備えると共に、複数の搬入搬出口(115、116)から順に搬入されるろう接対象物(10)の複数の種類に応じて、ろう接時のろう接条件を調整可能としたことを特徴としている。
【0008】
これにより、複数の搬入搬出口(115、116)を用いて、1つのろう付け対象物(10)を搬出しながら、別のろう付け対象物(10)を搬入して、連続的にろう接を行なうことができる。また、複数の種類に応じたろう接条件でろう接することができるので、熱エネルギーの無駄を無くすことができる。総じて、生産性の向上を図り、ろう接対象物(10)に応じたろう接条件でのろう付けを可能とするろう接炉(100)とすることができる。
【0009】
請求項2に記載の発明では、請求項1におけるろう接条件は、ろう接に要するろう接時間であることを特徴としている。
【0010】
これにより、炉体(110)内の加熱設定温度を変更する必要が無いので、容易にろう接条件を調整することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明では、炉体(110)は、複数設けられたことを特徴としている。
【0012】
これにより、同時にろう接できるろう接対象物(10)の数を増加させることができるので、更に生産性を向上させることができる。
【0013】
請求項4に記載の発明では、複数の方向は、2方向であり、互いが対向する方向に設定されたことを特徴としている。
【0014】
これにより、複数の搬入搬出口(115、116)におけるろう接対象物(10)の搬入搬出時の互いの干渉を最大限、避けることができるので、安定した搬入搬出ができる。
【0015】
請求項5に記載の発明では、複数の搬入搬出口(115、116)には、それぞれの搬入側から炉体(110)内部へ繋がる複数の搬送手段(131、132)が設けられたことを特徴としている。
【0016】
これにより、ろう付け対象物(10)の搬入搬出を容易に行なうことができる。
【0017】
請求項6に記載の発明では、複数の方向は、2方向であり、互いが対向する方向に設定されており、複数の搬送手段(131、132)は、ベルト式のコンベア(131、132)であり、それぞれのコンベア(131、132)は、ろう付け対象(10)を積載する積載部(133)を残して、幅方向に分割されると共に、少なくとも炉体(110)内で互いに挟みあうように配置されたことを特徴としている。
【0018】
これにより、コンベア(131、132)配設用のスペースを小さくできるので、コンパクトなろう接炉(100)とすることができる。また、炉体(110)内においては、コンベア(131、132)が互いに挟みあうように配置されていることから、一方のコンベア(131)と他方のコンベア(132)のそれぞれの積載部(133)を炉体(110)内のほぼ中央部へ移動させることができるので、ろう接対象物(10)を炉体(110)内に偏りなく置いて、安定したろう接が可能となる。
【0019】
本ろう接炉(100)は、請求項7に記載の発明のように、炉体(110)内に不活性ガスが充填されて、低酸素濃度雰囲気でろう接を行うものに適用して好適であり、酸素による酸化の影響を抑えた良好なろう接が可能となる。
【0020】
請求項8に記載の発明では、炉体(110)の外側には、搬入搬出口(115、116)から繋がって、ろう接されたろう接対象物(10)を徐冷する徐冷部(121、122)が設けられたことを特徴としている。
【0021】
これにより、ろう接時のろう接温度から、短時間でろう接対象物(10)の温度を低下させることができるので、ろう接後のろう接対象物(10)の取り扱いが容易となる。
【0022】
請求項9に記載の発明では、徐冷部(121、122)内に不活性ガスが充填されることを特徴としている。
【0023】
これにより、徐冷部(121、122)内を低酸素濃度雰囲気とすることができるので、酸素によるろう接対象物(10)の酸化を防止できる。
【0024】
請求項10に記載の発明では、搬入搬出口(115、116)と徐冷部(121、122)との間には、搬入されるろう接対象物(10)を予熱する予熱部(151、152)が設けられたことを特徴としている。
【0025】
これにより、炉体(110)内でのろう接対象物(10)の昇温時間を短縮することができるので、ろう接対象物(10)一台当たりのタクトタイムを短縮して、生産性を向上させることができる。
【0026】
請求項11に記載の発明では、予熱部(151、152)内に不活性ガスが充填されることを特徴としている。
【0027】
これにより、予熱部(151、152)内を低酸素濃度雰囲気とすることができるので、酸素によるろう接対象物(10)の酸化を防止できる。
【0028】
ろう接対象物(10)は、請求項12に記載の発明のように、アルミニウム製の熱交換器(10)として好適である。
【0029】
尚、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
(第1実施形態)
以下、本実施形態におけるろう付け炉100について図1〜図4を用いて説明する。本ろう付け炉(本発明におけるろう接炉に対応)100は、内部に不活性ガスが封入されて低酸素濃度雰囲気中で、アルミニウム製の熱交換器(本発明におけるろう接対象物)10を対象として、そのろう付け(本発明におけるろう接に対応)を行うバッチ式の雰囲気ろう付け炉に適用したものである。尚、図1はろう付け炉100を示す正面図、図2はろう付け炉100を示す平面図、図3は左右のコンベア131、132を示す平面図、図4は左右のコンベア131、132を示す正面図である。
【0031】
ろう付け炉100は、図1、図2に示すように、横長の台座としてのベース101に配設される箱状の炉体110、左右の窒素置換徐冷部(本発明における徐冷部に対応)121、122、左右のコンベア(本発明における搬送手段に対応)131、132等を有している。
【0032】
炉体110は、箱状を成すいわゆるバッチ式の炉を基本としたものであり、外側から内側に向けて順に本体部111、外マッフル112、内マッフル113が配設されて形成されている。本体部111は、縦長の直方体を成しており、各壁部内に断熱材が埋め込まれて形成されている。外マッフル112は、高熱伝導性を有し、熱歪みの小さいグラファイト板材から箱組みされて形成されており、本体部111の各内壁面に当接するように配設されている。更に、内マッフル113は、上記外マッフル112と同様にグラファイト板材から箱組みされて形成されており、立方体を成して、対向する2つの側面が外マッフル112の内壁面に当接するように、且つ、外マッフル112の略中心部に配設されている。
【0033】
上記のように形成される炉体110には、外部の複数の方向から内部に繋がる複数の搬入搬出口(115、116)が形成されている。搬入搬出口(115、116)は、ろう付け前の熱交換器10を炉体110内部に搬入すると共に、内部でろう付けされた熱交換器10を外部に搬出するための炉体開口部である。
【0034】
ここでは、内マッフル113が外マッフル112の内壁面に当接する側の2つの側面に直行する方向を図1、図2に示すように左右方向として、炉体110の左側壁面、および右側壁面の2箇所に、それぞれ左搬入搬出口115、右搬入搬出口116が形成されるようにしている。そして、左右の搬入搬出口115、116は、互いに対向する位置に配設され、後述する左右のコンベア131、132がそれぞれ挿通可能となり、更に左右のコンベア131、132上に積載される熱交換器10が通過可能となる大きさで開口されている。
【0035】
尚、内マッフル113の上壁113aの上側には複数(ここでは3つ)の第1ヒータ114aが設けられている。同様に、内マッフル113の下壁113bの下側には複数(ここでは3つ)の第2ヒータ114bが設けられている。これら各ヒータ114a、114bは、独立して温度調節が可能となっている。
【0036】
また、炉体110の内部(内マッフル113の内部)には、窒素用配管140によって、不活性ガスとしての窒素ガスが充填されて、低酸素濃度でのろう付けが行われるようになっている。尚、窒素ガスは窒素用配管140の途中に配設されたヒータ141によって、ろう付け時の設定温度近傍(600℃)まで加熱されて、炉体110内に充填されるようになっている。
【0037】
左右の窒素置換徐冷部121、122は、上記炉体110と同様に、窒素用配管140によって、窒素ガスが内部に充填されて、ろう付け後の熱交換器10を冷却する箱状の部屋を形成するものである。左右の窒素置換徐冷部121、122は、炉体110の左右にそれぞれ配置されており、左右の窒素置換徐冷部121、122の左右方向の側壁面には、それぞれ開口部121a、121b、122a、122bが形成されている。そして、2つの開口部121a、121bと左搬入搬出口115とが繋がり、また、2つの開口部122a、122bと右搬入搬出口116が繋がるように配置されている。
【0038】
左窒素置換徐冷部121の左側、左窒素置換徐冷部121と炉体110との間、右窒素置換徐冷部122の右側、右窒素置換徐冷部122と炉体110との間には、それぞれ薄肉金属板材から暖簾状に形成されたメタルカーテン123が設けられている。メタルカーテン123の下端側は、左右の搬入搬出口115、116、開口部121a、121b、122a、122bの上端側よりも所定量下側となるように配設されている。
【0039】
そして、左右の窒素置換徐冷部121、122の内部には、充填された窒素ガスを冷却するための水冷式の熱交換器124が後述する左右のコンベア131、132を挟むように設けられており、更に、左右の窒素置換徐冷部121、122の上部には、充填された窒素ガスを攪拌するファン125が設けられている。
【0040】
左右のコンベア131、132は、ベルト式のコンベアである。左コンベア131は、左窒素置換徐冷部121の左側から右側に延びて、左窒素置換徐冷部121、炉体110、右窒素置換徐冷部122内を貫通して、左右方向への切替え駆動が可能となるように配設されている。また、右コンベア132は、上記左コンベア131と同様に、右窒素置換徐冷部122の右側から左側に延びて、右窒素置換徐冷部122、炉体110、左窒素置換徐冷部121内を貫通して、左右方向への切替え駆動が可能となるように配設されている。
【0041】
そして、図3、図4に示すように、左右のコンベア131、132は、それぞれ積載部としてのトレイ133を残して、駆動方向と交差する幅方向において分割されており、互いに挟みあうように配設されている。以下、左コンベア131を代表としてその詳細を説明すると、左コンベア131は、2本のメッシュベルト131aに分割されており(右コンベア131は、2本のメッシュベルト132a)、2本のメッシュベルト131aが所定間隔を持って平行に並ぶように形成されている。そして、このメッシュベルト131aの上側に、2本のメッシュベルト131a間を接続するようにトレイ133が設けられている。
【0042】
トレイ133は、複数のワイヤ133aと立板133bとを有している。ワイヤ133aは、その長手方向がコンベア131の幅方向に延びて、メッシュベルト131a間を接続するように配置され、コンベア131の駆動方向に複数並べられている。そして、この複数のワイヤ133aの上側に熱交換器10が積載されるようになっている。また、立板133bは、断面L字状に形成された板部材であり、複数のワイヤ133aの並べられる方向の両側に配置されている。立板133bの上端側は、メタルカーテン123の下端側に接触する位置まで延設されている。つまり、メタルカーテン123と立板133bとが一致する位置においては、このメタルカーテン123と立板133bとによって、左右の搬入搬出口115、116、開口部121a、121b、122a、122bは閉塞されるようになっている。
【0043】
そして、左コンベア131と右コンベア132は、各メッシュベルト131a、132aが互いに挟みあうように配置されている。このように互いに挟みあうように形成された左右のコンベア131、132においては、右コンベア132のトレイ133が図1に示すように右窒素置換徐冷部122よりも右側に位置する時に、左コンベア131のトレイ133は、最左端側と炉体110との間を左右方向に移動可能となる。また、同様に、左コンベア131のトレイ133が図1に示すように左窒素置換徐冷部121よりも左側に位置する時に、右コンベア132のトレイ133は、最右端側と炉体110との間を左右方向に移動可能となる。
【0044】
上記左右のコンベア131、132には、図2に示すように、付帯設備としての左右の投入取出しコンベア134、135と、接続コンベア136、137とが設けられている。左右の投入取出しコンベア134、135は、左右のコンベア131、132に平行に配設されたコンベアで、それぞれ左右方向への切替え駆動を可能としている。また、接続コンベア136は、左コンベア131の左端側と左投入取出しコンベア134の左端側とを接続するコンベアであり、両コンベア131、134を結ぶ方向への切替え駆動を可能としている。更に、接続コンベア137は、右コンベア132の右端側と右投入取出しコンベア135の右端側とを接続するコンベアであり、両コンベア132、135を結ぶ方向への切替え駆動を可能としている。
【0045】
次に、上記構成に基づくろう付け炉100の作動およびその作用効果について説明する。
【0046】
本ろう付け炉100にてろう付けされる熱交換器10は、例えばそれぞれのサイズが異なると言ったように複数の種類を有しており、ランダムに流動されるようになっている。また、これらの熱交換器10は、例えば600℃近傍(フラックス融点540℃、ろう材融点585℃)でろう付けされるものとしている。サイズの異なる熱交換器10は、それぞれの熱容量が異なるため、ろう付けに必要とされるろう付け条件、即ち、ろう付けに要する熱量=加熱温度×保持時間がそれぞれ異なる。ここでは、炉体110内の温度は一定として、それぞれの熱交換器10に応じた保持時間(ろう付け時間)を調整することで対応するようにしている。
【0047】
まず、ヒータ114a、114bによって、炉体110内の温度が600℃となるように設定される。そして、ヒータ141によって600℃に加熱された窒素ガスが、炉体110(内マッフル113)内に充填され、また、左右の窒素置換徐冷部121、122に窒素ガス(冷却用)が充填され、炉体110(内マッフル113)内、おおび左右の窒素置換徐冷部121、122内が所定の酸素濃度以下となるように調整される。
【0048】
次に、組付けされたろう付け前の熱交換器10が、左右の投入取出しコンベア134、135の中央部から作業者Aによって左右のいずれかに投入される。左側に投入されたろう付け前の熱交換器10は、左投入取出しコンベア134→接続コンベア136から左コンベア131のトレイ133の上に移され、開口部121aから窒素ガス雰囲気となる左窒素置換徐冷部121内に入り、開口部121b、左搬入搬出口115を経て炉体110内に搬入される。
【0049】
炉体110内では、左コンベア131が停止されることで、ろう付け前の熱交換器10は、この熱交換器10の熱容量に応じたろう付け時間だけ保持されて、確実なろう付けが成される。
【0050】
そして、ろう付けの完了したろう付け後の熱交換器10は、左搬入搬出口115から搬出されて、開口部121bから左窒素置換徐冷部121内に入り、窒素ガスによって徐冷される。更に、開口部121a→左コンベア131→接続コンベア136→左投入取出しコンベア134を経て作業者Aに至り、作業者Aはろう付け後の熱交換器10を次工程に送る(以上、左サイクルろう付け)。
【0051】
一方、作業者Aによって右側に投入され投入されたろう付け前の熱交換器10は、右投入取出しコンベア135→接続コンベア137から右コンベア132のトレイ133の上に移され、開口部122aから窒素ガス雰囲気となる右窒素置換徐冷部122内に入り、開口部122b、右搬入搬出口116を経て炉体110内に搬入される。
【0052】
炉体110内では、右コンベア131が停止されることで、ろう付け前の熱交換器10は、この熱交換器10の熱容量に応じたろう付け時間だけ保持されて、確実なろう付けが成される。
【0053】
そして、ろう付けの完了したろう付け後の熱交換器10は、右搬入搬出口116から搬出されて、開口部122bから右窒素置換徐冷部122内に入り、窒素ガスによって徐冷される。更に、開口部122a→右コンベア132→接続コンベア137→右投入取出しコンベア135を経て作業者Aに至り、作業者Aはろう付け後の熱交換器10を次工程に送る(以上、右サイクルろう付け)。
【0054】
ここで、左サイクルろう付けと、右サイクルろう付けとにおいて、各サイクルろう付けの熱交換器10が炉体110の左右から搬入搬出されるタイミングは、以下のようになっている。尚、以下の説明では、簡略化のために、左サイクルろう付けの熱交換器10を左熱交換器10と呼び、右サイクルろう付けの熱交換器10を右熱交換器10と呼ぶこととする。
【0055】
図1に示すように、左熱交換器10が炉体110内に搬入されてろう付けが実施されている時に、右熱交換器10は、右窒素置換徐冷部122内に搬入されている。そして、左熱交換器10のろう付けが完了すると、左コンベア131は左側に駆動して、左熱交換器10は炉体110から搬出されると共に、左窒素置換徐冷部121に搬入されて、徐冷される。以下、左サイクルろう付けの流れによって左熱交換器10は、作業者A側に至り、取出しされる。上記のように左熱交換器10が炉体110から搬出される際に、右コンベア132は左側に駆動して、右窒素置換徐冷部122内の右熱交換器10は、炉体110内に搬入される。
【0056】
この時、左サイクルろう付けにおいては、左コンベア131が右側に駆動して、次の左熱交換器10が左窒素置換徐冷部121まで搬送されている。そして、炉体110内での右熱交換器10のろう付けが完了すると、右コンベア132は右側に駆動して、右熱交換器10は炉体110から搬出されると共に、右素置換徐冷部122に搬入されて、徐冷される。以下、右サイクルろう付けの流れによって右熱交換器10は、作業者A側に至り、取出しされる。上記のように右熱交換器10が炉体110から搬出される際に、左コンベア131は右側に駆動して、左窒素置換徐冷部121内の左熱交換器10は、炉体110内に搬入される。
【0057】
このように、左熱交換器10と右熱交換器10は、交互に連続的に炉体110内へ搬入、および搬出が繰り返されることになる。
【0058】
以上のように、本実施形態のろう付け炉100においては、炉体110に異なる方向で開口する左右の搬入搬出口115、116を設けて、更に、異なる種類の熱交換器10毎に、ろう付け条件(ろう付け時間)を変えて、ろう付けするようにしているので、左搬入搬出口115を用いて、左(右)熱交換器10を搬出しながら、右(左)搬入搬出口116から右(左)熱交換器10を同時に搬入して、連続的にろう付けを行なうことができる。また、異なる種類に応じたろう付け条件で各熱交換器10をろう付けすることができるので、ろう付け炉100の熱エネルギーの無駄を無くすことができる。総じて、生産性の向上を図り、熱交換器10に応じたろう付け条件でのろう付けを可能とするろう接炉100とすることができる。
【0059】
また、ろう付け時間によってろう付け条件を調整するようにしているので、炉体110内の設定温度を変更する必要が無く、ろう付け条件の調整を容易にすることができる。
【0060】
また、炉体110における搬入搬出口(115、116)を互いに対向するように左右の搬入搬出口115、116として設定しているので、複数の搬入搬出口(115、116)における熱交換器10の搬入搬出時の互いの干渉を最大限、避けることができるので、安定した搬入搬出ができる。
【0061】
また、炉体110に対して熱交換器10を搬入搬出する搬送手段としての左右のコンベア131、132を設けるようにしているので、熱交換器10の搬入搬出を容易に行なうことができる。
【0062】
また、上記左右のコンベア131、132は、ベルト式のコンベア(131、132)であり、幅方向に分割されて、炉体110内、および左右の窒素置換徐冷部121、122内で互いに挟みあうように配置されているので、左右のコンベア131、132配設用のスペースを小さくすることができ、コンパクトなろう接炉100とすることができる。また、炉体110内においては、左右のコンベア131、132が互いに挟みあうように配置されていることから、左コンベア131と右コンベア132のそれぞれのトレイ133を炉体110内のほぼ中央部へ移動させることができるので、熱交換器10を炉体110内に偏りなく置いて、安定したろう接が可能となる。
【0063】
また、炉体110に隣接して、左右の窒素置換徐冷部121、122を設けて、ろう付け後の熱交換器10を徐冷するようにしているので、ろう付け時のろう付け温度から、短時間で熱交換器10の温度を低下させることができ、ろう付け後の熱交換器10の取り扱いが容易となる。
【0064】
尚、本ろう接炉100は、炉体110内に窒素ガスが充填されて、低酸素濃度雰囲気でろう付けを行うものであり、酸素による酸化の影響を抑えた良好なろう付けが可能である。そして、左右の窒素置換徐冷部121、122にも窒素ガスを充填するようにしているので、左右の窒素置換徐冷部121、122内を低酸素濃度雰囲気とすることができ、熱交換器10の酸化を防止できる。
【0065】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態を図5に示す。第2実施形態は、上記第1実施形態に対して、炉体110、左右の窒素置換徐冷部121、122、左右のコンベア131、132を増設して、これらが並列となるように配置すると共に、増設された左右のコンベア131、132を接続コンベア136、137で接続したものとしている。ここでは、炉体110がトータルで3つとなるものとしている。
【0066】
左右のコンベア131、132の左端側および右端側には、上下に昇降するリフター(図示省略)を設け、接続コンベア136、137は、上下2段仕様としている。作業者Aから投入される熱交換器10は炉体110に向けて接続コンベア136、137の上側を移動し、炉体110から搬出された熱交換器10は作業者Aに向けて接続コンベア136、137の下側を移動するようにして、熱交換器10の行き来における干渉が防止されるようになっている。
【0067】
これにより、同時にろう付けできる熱交換器10の数を増加させることができるので、更に生産性を向上させることができる。
【0068】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態を図6に示す。第3実施形態は、上記第1実施形態に対して、左窒素置換徐冷部121と炉体110との間に左予熱部(本発明における予熱部に対応)151を介在させ、また、右窒素置換徐冷部122と炉体110との間に右予熱部(本発明における予熱部に対応)152を介在させて、炉体110内に搬入される前の熱交換器10を事前に所定温度まで予熱するようにしたものである。
【0069】
これにより、炉体110内での熱交換器10の昇温時間を短縮することができるので、熱交換器10一台当たりのタクトタイムを短縮して、生産性を向上させることができる。
【0070】
(その他の実施形態)
上記各実施形態では、炉体110内でのろう付け条件として、異なる熱交換器10毎にろう付け時間を調整して対応するものとしたが、ヒータ114a、114bによるろう付け温度を調整するものとしても良い。あるいは、ろう付け時間とろう付け温度の両者で調整するものとしても良い。
【0071】
また、炉体110における複数の搬入搬出口115、116の設定位置は、互いに対向する位置に限らず、直方体を成す炉体110の隣り合う側壁面にそれぞれ設けるようにしてもよい。
【0072】
また、熱交換器10を搬送する搬送手段としての左右のコンベア131、132、左右の投入取出しコンベア134、135、および接続コンベア136、137を廃止して、作業者によって炉体110への搬入搬出を行なうものとしても良い。あるいは、左右の投入取出しコンベア134、135、および接続コンベア136、137を廃止して、作業者によって左コンベア131の左端側、右コンベア132右端側のそれぞれから熱交換器10が投入取出しされるようにしても良い。
【0073】
また、左右のコンベア131、132は、メッシュベルト131a、132aが分割されて、互いが挟み込まれるものとしたが、通常のコンベアとして形成して、両コンベアが隣接して並ぶようにしたものとしても良い。
【0074】
また、左右のコンベア131、132はベルト式のものに限らず、ハンガー式等他の型式のものとしても良い。
【0075】
また、ろう付け後の熱交換器10の取り扱い上、問題がなければ、左右の窒素置換徐冷部121、122は廃止しても良い。
【0076】
また、ろう付け炉100として、不活性ガスを用いた雰囲気炉としたがこれに限らず、真空ろう付け炉や大気ろう付け炉等に適用しても良い。
【0077】
また、ろう付け対象物をアルミニウム製の熱交換器10としたが、銅材、ステンレス材等を用いた他の製品に適用しても良い。また、ろう付けに限らず、半田付けするものに適用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】第1実施形態におけるろう付け炉を示す正面図である。
【図2】第1実施形態におけるろう付け炉を示す平面図である。
【図3】第1実施形態における左右のコンベアを示す平面図である。
【図4】第1実施形態における左右のコンベアを示す正面図である。
【図5】第2実施形態におけるろう付け炉を示す平面図である。
【図6】第3実施形態におけるろう付け炉の概略を示す正面図である。
【符号の説明】
【0079】
10 熱交換器(ろう付け対象物)
100 ろう付け炉(ろう接炉)
110 炉体
115 左搬入搬出口(搬入搬出口)
116 右搬入搬出口(搬入搬出口)
121 左窒素置換徐冷部(徐冷部)
122 右窒素置換徐冷部(徐冷部)
131 左コンベア(搬送手段)
132 右コンベア(搬送手段)
133 トレイ(積載部)
151 左予熱部
152 右予熱部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類のろう接対象物(10)を炉体(110)の内部で加熱して、ろう接するろう接炉において、
前記炉体(110)は、箱状を成して、複数の方向からの前記ろう接対象物(10)の内部への搬入と、それぞれの前記搬入側への搬出とを可能とする複数の搬入搬出口(115、116)を備えると共に、複数の前記搬入搬出口(115、116)から順に搬入される前記ろう接対象物(10)の前記複数の種類に応じて、前記ろう接時のろう接条件を調整可能としたことを特徴とするろう接炉。
【請求項2】
前記ろう接条件は、ろう接に要するろう接時間であることを特徴とする請求項1に記載のろう接炉。
【請求項3】
前記炉体(110)は、複数設けられたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のろう接炉。
【請求項4】
前記複数の方向は、2方向であり、互いが対向する方向に設定されたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載のろう接炉。
【請求項5】
複数の前記搬入搬出口(115、116)には、それぞれの前記搬入側から前記炉体(110)内部へ繋がる複数の搬送手段(131、132)が設けられたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載のろう接炉。
【請求項6】
前記複数の方向は、2方向であり、互いが対向する方向に設定されており、
複数の前記搬送手段(131、132)は、ベルト式のコンベア(131、132)であり、
それぞれの前記コンベア(131、132)は、前記ろう付け対象(10)を積載する積載部(133)を残して、幅方向に分割されると共に、少なくとも前記炉体(110)内で互いに挟みあうように配置されたことを特徴とする請求項5に記載のろう接炉。
【請求項7】
前記炉体(110)内に不活性ガスが充填されて、低酸素濃度雰囲気で前記ろう接を行うことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1つに記載のろう接炉。
【請求項8】
前記炉体(110)の外側には、前記搬入搬出口(115、116)から繋がって、ろう接された前記ろう接対象物(10)を徐冷する徐冷部(121、122)が設けられたことを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1つに記載のろう接炉。
【請求項9】
前記徐冷部(121、122)内に不活性ガスが充填されることを特徴とする請求項8に記載のろう付け炉。
【請求項10】
前記搬入搬出口(115、116)と前記徐冷部(121、122)との間には、搬入される前記ろう接対象物(10)を予熱する予熱部(151、152)が設けられたことを特徴とする請求項8または請求項9に記載のろう接炉。
【請求項11】
前記予熱部(151、152)内に不活性ガスが充填されることを特徴とする請求項10に記載のろう付け炉。
【請求項12】
前記ろう接対象物(10)は、アルミニウム製の熱交換器(10)であることを特徴とする請求項1〜請求項11のいずれか1つに記載のろう接炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−62296(P2008−62296A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−245854(P2006−245854)
【出願日】平成18年9月11日(2006.9.11)
【出願人】(000157072)関東冶金工業株式会社 (20)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)