説明

ろ紙を不要とした転写装置、その作製キット、緩衝液の添加剤および転写方法

【課題】ろ紙を不要とした転写装置を提供する。
【解決手段】転写装置100は、緩衝液を含んだ分離媒体170および転写膜180を格納し、緩衝液を介して分離媒体170に電流を流すことによって分離媒体170中の被転写物171を転写膜180上へ転写する、ろ紙を不要とした転写装置であって、上記緩衝液が、水酸基およびカルボニル基の少なくともいずれか一方を含有する芳香族化合物を含有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、ろ紙を不要とした転写装置に関するものであり、詳しくは、分離媒体に緩衝液を介して電流を流すことによって上記分離媒体中の被転写物質を上記転写膜上へ転写する、ろ紙を不要とした転写装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タンパク質、核酸等の生体分子の解析または検査を行うため、ウェスタンブロッティング等のブロッティングと称される技術が用いられることがある。ブロッティングを行うためには、まず、生体分子を電気泳動によってゲル等の分離媒体中において分離し、分離した生体分子を上記分離媒体から転写膜上へ転写することが行われる。これにより、解析対象の生体分子を、分離した状態で転写膜上に配置することができるため、さらなる解析を首尾よく行うことができる。
【0003】
このとき、上記分離媒体から上記転写膜への生体分子の転写のために、転写装置が用いられる。転写装置が行う転写の方法としては、毛細管現象を利用した方法、電圧を印加する方法、真空引きする方法が知られている(非特許文献1参照)。
【0004】
上記のうち電圧を印加する方法は、転写効率がよいことが知られている。電圧を印加する方法を実施する転写装置としては、タンク式およびセミドライ式の二種類がある(非特許文献2参照)。タンク式の転写装置では、緩衝液によって満たされたタンク内に、分離媒体および転写膜を保持し、タンクに備えられた電極を用いて分離媒体および転写膜に電圧を印加する。セミドライ式の転写装置では、緩衝液に浸漬させておいたろ紙を用い、電極、ろ紙、分離媒体、転写膜、ろ紙および電極をこの順に重ねて、両電極間に電圧を印加する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−298644(平成20年12月11日公開)
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Sambrook et al., Molecular Cloning, A laboratory manual, 3rd ed., Cold Spring Harbor Laboratory(2001), 6.33-6.38
【非特許文献2】大藤道衛「電気泳動なるほどQ&A」161〜163頁、羊土社、2005年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した転写方法は、いずれも電極と分離媒体または転写膜との間にろ紙を挟むものである(非特許文献1のFigure6−1、6−2および6−3、非特許文献2の図1および図2等参照)。タンク式の転写装置においても、分離媒体および転写膜をろ紙で挟んだ状態でタンク内に保持する(非特許文献2の図1参照)。このろ紙は、伝統的に用いられているものであり、一般的なプロトコル集には必ず記載されている。それゆえか、ろ紙を不要とした転写装置について検討した報告はない。
【0008】
ところが、本発明者らは、自らが以前発明した電気泳動および転写の両方を実施するための装置(特許文献1参照)について検討を進めていく過程において、独自の観点に基づき、ろ紙を不要とした転写装置が有用であることに想到した。
【0009】
すなわち、特許文献1に記載の装置は、分離媒体を搬送せずに、同じ位置で、電気泳動および転写の両方を行うものであるが、本発明者らが検討したところ、上記転写のために分離媒体をろ紙で挟んだ場合、当該ろ紙によって上記電気泳動が阻害されることが見出された。この知見に基づき、本発明者らは、特許文献1に記載の装置の場合、ろ紙を不要とした転写装置を組み込むことが好ましいことに想到し、さらに検討を重ね、ろ紙を不要とした転写装置ば、特許文献1に記載の装置に組み込む場合のみに限らず、装置を構成する際にろ紙を挟む工程が不要となり、ろ紙のコストも省くことができる点において、従来の転写装置に対して有利であることに想到した。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、これまで検討されていなかった、ろ紙を不要とした転写装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討したところ、従来技術に係る転写装置から単にろ紙を取り除いただけでは、実用的なろ紙を不要とした転写装置を提供することができないことを見出した。すなわち、従来技術に係る転写装置からろ紙を取り除いた場合、転写量が極端に低下することが起こり得る。
【0012】
本発明者らは、さらなる検討を行い、ろ紙を取り除いたことに起因する転写量の低下が、水の電気分解によって発生した気泡により電流の流れが阻害されることが原因であるという独自の知見を得た。
【0013】
すなわち、転写装置の緩衝液に電流が流れたとき、水の電気分解が起こる場合がある。このとき、ろ紙が存在すれば、上記電気分解より生じた気泡は、ろ紙内に取り込まれるが、ろ紙を取り除いた場合、気泡が分離媒体または転写膜と電極との間に入り込む場合がある。気体は不導体であるため、電流は気泡を避けて流れ、電流の方向が散乱してしまう。そのため、被転写物質の移動方向も散乱するために、被転写物質が拡散し、転写量が低減してしまう。この問題を解決するために、本発明者らは鋭意検討を行い、本発明を完成させた。
【0014】
すなわち、本発明に係る、ろ紙を不要とした転写装置は、緩衝液を含んだ分離媒体および転写膜を格納し、上記緩衝液を介して上記分離媒体に電流を流すことによって上記分離媒体中の被転写物を上記転写膜上へ転写する、ろ紙を不要とした転写装置であって、上記緩衝液が、水酸基およびカルボニル基の少なくともいずれか一方を含有する芳香族化合物を含有していることを特徴としている。上記転写装置は、上記分離媒体に電流を流すためのアノード電極およびカソード電極を備えており、上記分離媒体および上記転写膜は、上記アノード電極および上記カソード電極の間に配置されていることが好ましい。
【0015】
上記の構成によれば、緩衝液を含んだ分離媒体および転写膜を格納し、上記緩衝液を介して上記分離媒体に電流を流すことによって上記分離媒体中の被転写物を上記転写膜上へ転写する、ろ紙を不要とした転写装置において、上記緩衝液が、水酸基およびカルボニル基の少なくともいずれか一方を含有する芳香族化合物を含有しているため、上記緩衝液に電流を流したときに、上記緩衝液中の水の電気分解よりも、上記芳香族化合物の酸化または還元が優先して行われるため、水の電気分解が抑制される。これにより、転写を首尾よく行うことができる、ろ紙を不要とした転写装置を提供することができる。
【0016】
上記芳香族化合物は、ハイドロキノンまたはパラベンゾキノンであることが好ましい。また、上記緩衝液中の上記芳香族化合物の濃度は、0.01M以上0.4M以下の範囲であることが好ましい。上記アノード電極および上記カソード電極の少なくともいずれか一方が、白金、銅、亜鉛、金または鉄からなる導電体を備えていることが好ましい。
【0017】
このような芳香族化合物および電極を用いることによって、上記転写装置は、さらに首尾よく転写を行うことができる。
【0018】
本発明に係る転写装置では、上記アノード電極および上記カソード電極の少なくともいずれか一方が、互いに平行な複数の帯状の導電体を備えているものであってもよい。
【0019】
互いに平行な複数の帯状の導電体は、当該帯状の導電体が伸びる方向と直交する方向に形成される電位勾配を阻害しない。そのため、上記の構成によれば、上記アノード電極および上記カソード電極の少なくともいずれか一方は、上記分離媒体における電気泳動を疎外しないため、当該電気泳動を首尾よく行うことができる。このとき、本発明に係る転写装置は、ろ紙を不要とした転写装置であるので、ろ紙が、上記電気泳動を阻害することなく、さらに首尾よく上記電気泳動を行うことができるという効果を奏する。
【0020】
本発明に係る転写方法は、分離媒体中の被転写物を転写膜上へ転写する、ろ紙を不要とした転写方法であって、上記分離媒体および上記転写膜に、水酸基およびカルボニル基の少なくともいずれか一方を含有する芳香族化合物を含有する緩衝液を含ませる工程と、上記分離媒体に上記緩衝液を介して電流を流す工程とを包含することを特徴としている。
【0021】
上記の構成によれば、本発明に係る転写装置と同等の効果を奏することができる。
【0022】
本発明に係る、ろ紙を不要とした転写装置に用いる緩衝液の添加剤は、水酸基およびカルボニル基の少なくともいずれか一方を含有する芳香族化合物を含有していることを特徴としている。上記芳香族化合物は、ハイドロキノンまたはパラベンゾキノンであることが好ましい。
【0023】
このような緩衝液の添加剤を用いて転写装置の緩衝液を調製することにより、本発明に係る、ろ紙を不要とした転写装置を容易に構成することができる。
【0024】
本発明に係る緩衝液の添加剤は、ハイドロキノンおよびパラベンゾキノンの両方を含有しており、ハイドロキノンの含有量に対するパラベンゾキノンの含有量の比が、1/2倍以上2倍以下であることが好ましい。
【0025】
このような緩衝液の添加剤を用いて調製された緩衝液を用いることにより、ろ紙を不要とした転写装置において、アノード電極およびカソード電極の両方の電極における気泡の発生を効率よく抑制することができる。
【0026】
本発明に係る作製キットは、分離媒体中の被転写物を転写膜上へ転写する、ろ紙を不要とした転写装置を作製するための作製キットであって、アノード電極およびカソード電極と、上記アノード電極および上記カソード電極の間に上記分離媒体および上記転写膜を格納するための格納部と、水酸基およびカルボニル基の少なくともいずれか一方を含有する芳香族化合物を含有している、緩衝液の添加剤とを備えていることを特徴としている。
【0027】
本発明に係る作製キットは、本発明に係る転写装置を構成するために好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る転写装置では、緩衝液が、ハイドロキノンおよびパラベンゾキノンの少なくともいずれか一方を含有しているので、緩衝液に電流を流すことによって生じる気泡の発生を抑制することができるため、転写を首尾よく行うことができる、ろ紙を不要とした転写装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態(第1の実施形態)に係る転写装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態(第1の実施形態)に係る転写装置の概略構成を示す断面図である。
【図3】本発明の一実施形態(第1の実施形態)に係る転写装置の機能を説明する図である。
【図4】本発明の一実施形態(第2の実施形態)に係る転写装置の概略構成を示す断面図である。
【図5】本発明の一実施形態(第3の実施形態)に係る転写装置の概略構成を示す斜視図である。
【図6】本発明の一実施形態(第3の実施形態)に係る転写装置の概略構成を示す断面図である。
【図7】本発明の一実施形態(第3の実施形態)に係る転写装置の電極の概略構造を示す模式図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る転写装置および対照となる転写装置を用いた転写結果を示す図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る転写装置および対照となる転写装置を用いた転写結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
〔第1の実施形態〕
図1は、本発明の一実施形態(第1の実施形態)に係る転写装置100の概略構成を示す斜視図である。図2は、転写装置100の概略構成を示す断面図である。図1および2に示すように、転写装置100は、アノード電極150、カソード電極151、および格納部110(絶縁体板140および141、スペーサー142ならびに保持部材143)を備えており、アノード電極150およびカソード電極151の間に、分離媒体170および転写膜180を格納している。なお、転写装置100は、アノード電極150およびカソード電極151間に電圧を印加するための図示しない電圧印加手段190を備えている。
【0031】
(概略機能)
図3は、転写装置100の概略機能を説明する図である。図3に示すように、分離媒体170には、被転写物171が含まれている。本実施形態において被転写物は、負の電荷を有している。また、分離媒体170および転写膜180は、還元体(ハイドロキノン(hydroquinone))161および酸化体(パラベンゾキノン(パラbenzoquinone))162を含有する緩衝液160を含んでいる。図3に示すように、還元体161および酸化体162は、アノード電極150およびカソード電極151の近傍にも上記緩衝液を介して供給される。
【0032】
電圧印加手段190が、アノード電極150およびカソード電極151間に電圧を印加すると、緩衝液160を介して分離媒体170中を電流が流れる。電圧印加手段190は、カソード電極151に対して、アノード電極150の電位が高くなるように電圧を印加する。すなわち、電流は、転写膜180から分離媒体170へ向かう方向へ流れる(電子(e)は逆方向に移動する)。
【0033】
分離媒体170中に電流が流れると、負の電荷を有する被転写物171は、電気浸透現象により分離媒体170から転写膜180へと移動する。これによって、被転写物171を転写膜180上に転写することができる。なお、正の電荷を有する被転写物を転写するときは、転写膜180および分離媒体170の位置関係を逆にすればよい。
【0034】
このとき、アノード電極150およびカソード電極151上では、電極から緩衝液160への電子授受に伴う水の電気分解が起こり、気体が発生する。具体的には、アノード電極150(プラス極)では酸素が発生し、カソード電極151(マイナス電極)では水素が発生する。発生した気体は、気泡を形成する。上述したように、この気泡に起因して転写が阻害される。本発明者らは、この気泡を発生させないようにすることで、ろ紙を不要とした転写装置においても、首尾よく転写を行うことができることを見出した。
【0035】
すなわち、本発明に係る転写装置(転写装置100)では、電極(アノード電極150およびカソード電極151)と接する溶液(緩衝液160)中に、酸化還元物質(還元体161および酸化体162)を溶解させておき、転写時には、酸化還元物質と電極との間で電子授受させる事で水の電気分解を抑制する。すなわち、アノード電極150側では、還元体161が、アノード電極150に電子を供与して、酸化体162となる。カソード電極151側では、酸化体162が、カソード電極151から電子を受け取って、還元体161となる。これにより、気泡(酸素および水素)の発生を抑制することができる。
【0036】
望ましい酸化還元物質は、水溶液に溶解し、かつ酸化還元に伴い気体を生成しない物質であり、さらに望ましくは、酸化還元に伴い固体を生成させない物質である。また、アノード電極150側の反応、すなわち、還元体161が、アノード電極150に電子を供与して、酸化体162となる反応が、水の電気分解よりも低い電位において起こり、カソード電極151側の反応、すなわち、酸化体162が、カソード電極151から電子を受け取って、還元体161となる反応が、水の電気分解よりも高い電位において起こるような物質であることが望ましい。
【0037】
以上のような条件を満たし、転写時の気泡の発生を抑制する酸化還元物質について、本発明者らが鋭意検討したところ、上記酸化還元物質として、水酸基およびカルボニル基の少なくともいずれか一方を含有する芳香族化合物、例えば、ハイドロキノン、パラベンゾキノンが好適であることを見出した。言い換えれば、還元体161としてはフェノール類が、酸化体162としてフェノール類の酸化体(フェノール類の水酸基がカルボニル基に置換されたもの)が好適である。
【0038】
すなわち、緩衝液を含んだ分離媒体および転写膜を格納し、上記緩衝液を介して上記分離媒体に電流を流すことによって上記分離媒体中の被転写物を上記転写膜上へ転写する、ろ紙を不要とした転写装置であって、上記緩衝液が、水酸基およびカルボニル基の少なくともいずれか一方を含有する芳香族化合物を含有している転写装置であれば、ろ紙を不要とし、かつ、首尾よく転写を行うことができる。
【0039】
以下、転写装置100の構成の詳細について説明する。
【0040】
(格納部)
格納部110は、絶縁体140および141、スペーサー142ならびに保持部材143を備えている。格納部110は、アノード電極150、カソード電極151、分離媒体170および転写膜180を適切に配置するための部材であり、その形状は、当業者が適宜設計することができる。絶縁体140および141ならびにスペーサー142は、絶縁体によって形成されていればよい。格納部110を構成する部材も、本実施形態におけるものに限られず、さらに他の保持部材等を追加してもよいし、いくつかの部材を省略または一体化させてもよい。
【0041】
絶縁体140上には、カソード電極151が設けられている。また、絶縁体141上には、アノード電極150が設けられている。そして、アノード電極150と、カソード電極151が対向し、カソード電極151、分離媒体170、転写膜180およびアノード電極150がこの順に重なるように、保持部材143が、絶縁体140および141を保持する。なお、アノード電極150およびカソード電極151の間には、分離媒体170の変形を防ぐために、スペーサー142を挟んでいてもよい。
【0042】
図1および2では、カソード電極151が下部に記載されているが、アノード電極150を下部に設けてもよい。また、上述したように、転写すべき被転写物質の性質(電荷の正負)によって、分離媒体170および転写膜180の順番を入れ替えてもよい。
【0043】
(分離媒体および転写膜)
分離媒体170は、被転写物171を含んでいる媒体であれば特に限られないが、ゲルであることが好ましく、一般に電気泳動に用いられるゲルを用いることができ、例えば、アガロースゲル、ポリアクリルアミドゲル等を好適に用いることができる。
【0044】
被転写物171としては、特に限られないが、生物材料(例えば、生物個体、体液、細胞株、組織培養物、または組織断片)からの調製物等を用いることができ、さらに好ましくはポリペプチドまたポリヌクレオチドを用いることができる。これらの生体分子は、例えば、SDSで平衡化することにより、容易に負の電荷を与えることができる。
【0045】
転写膜180としては、被転写物171を固定し得る物質からなるものであればよく、形状も特に限られないが、薄膜状のものがよい。具体的には、転写膜180としては、周知のウェスタンブロッティング法等の生体高分子解析技術に用いる、ニトロセルロースメンブレン、PVDFメンブレン、ナイロンメンブレン等を好適に用いることができる。
【0046】
また、カソード電極151とアノード電極150との間には、緩衝液160が供給される。すなわち、分離媒体170および転写膜180は、緩衝液160を含んでいる。これにより、カソード電極151とアノード電極150との間に電流を流し、分離媒体170中の被転写物171を電気泳動して転写膜180へと転写することができる。緩衝液160の供給の方法としては、分離媒体170および転写膜180を緩衝液160に予め浸しておくことにより、これらに緩衝液を含ませていてもよく、転写装置100全体または一部を緩衝液160中に浸してもよい。例えば、還元体161および酸化体162の少なくともいずれか一方を含有する緩衝液160を用いて、SDS−PAGE等の電気泳動を実施して、分離媒体170中において被転写物171を分離し、その分離媒体170をそのまま用いてもよい。さらに、後述する第2および第3の実施形態のように、緩衝液160を供給するための緩衝液槽を設けてもよい。
【0047】
(緩衝液)
緩衝液160は、転写時の気泡の発生を抑制する酸化還元物質を含有する電解液であれば、用途に応じて適宜選択すればよいが、例えば、トリス、CAPS、炭酸塩等の伝導性の強い緩衝効果のある試薬が含まれていることが好ましい。
【0048】
上述したように、転写時の気泡の発生を抑制する酸化還元物質としては、水酸基およびカルボニル基の少なくともいずれか一方を含有する芳香族化合物を用いることが好ましく、ハイドロキノンまたはパラベンゾキノンを用いることがさらに好ましい。緩衝液160中における上記芳香族化合物の濃度は、0.01M以上であることが好ましく、0.02M、0.04M、0.06Mまたは0.08M以上であることがより好ましく、また、0.4M以下であることが好ましく、0.35M、0.3M、0.25M、0.2Mまたは0.15M以下であることがより好ましい。
【0049】
なお、緩衝液160に還元体161および酸化体162の両方が含まれている場合は、還元体161の濃度に対する酸化体162の濃度の比は、等倍に近いことが好ましく、例えば、1/2倍以上2倍以下、2/3倍以上3/2倍以下、3/4倍以上4/3倍以下、4/5倍以上5/4倍以下または9/10倍以上10/9倍以下とすることができる。還元体161の濃度に対する酸化体162の濃度の比を等倍に近いものとすることによって、アノード電極150およびカソード電極151の両方における気泡の発生を同様に抑制することができるため効率がよい。
【0050】
緩衝液160にはまた、pH調整剤、変性剤、界面活性剤、アルコール等が含まれていてもよい。例えば、ポリペプチドの転写を行う場合、ポリペプチドと転写膜180との結合を促進するためにアルコールが含まれていることが好ましく、ポリペプチドを変性させるためにSDSが含まれていることが好ましい。また、ポリヌクレオチドの転写を行なう場合、変性剤としてはNaOH等のアルカリ塩を用いることができる。具体的には、これに限定されるものではないが、例えば、Tris/グリシン系緩衝液、酢酸緩衝溶液、炭酸ナトリウム系緩衝液、CAPS緩衝液、Tris/ホウ酸/EDTA緩衝液、Tris/酢酸/EDTA緩衝液、MOPS、リン酸緩衝液、Tris/トリシン系緩衝液等の緩衝液を用いることができる。
【0051】
(電極および電圧印加手段)
アノード電極150およびカソード電極151は、導電性を有する素材で形成されていればよく、用いられる電解液に接触させても劣化しない素材が好ましく、具体的には、これらに限られるものではないが、白金、銅、亜鉛、金、鉄、およびそれらの合金等から形成することができる。形状としては、例えば、平板状とすることができる。
【0052】
電圧印加手段190は、例えば、市販のパワーサプライを用いることができる。電圧印加手段190と、アノード電極150およびカソード電極151との間は、一般的な電線コード等により電気的に接続すればよい。
【0053】
〔第2の実施形態〕
図4は、本発明の一実施形態(第2の実施形態)に係る転写装置200の概略構成を示す断面図である。以下、転写装置200について説明するが、第1の実施形態に係る転写装置100と同様の部材を用いることができる場合には、同じ番号を付して説明を省略する。
【0054】
図4に示すように、転写装置200は、緩衝液槽240、アノード電極150、カソード電極151、緩衝液160および媒体保持部材241を備えている。なお、転写装置200は、転写装置100とは異なり、縦置きとなっている。このように、本発明に係る転写装置は、縦置きであっても横置きであってもよい。
【0055】
媒体保持部材241は、絶縁体により形成されており、分離媒体170および転写膜180を保持する部材である。媒体保持部材241は、例えば、網目状の構造を有しており、緩衝液160を通過し得る。
【0056】
緩衝液槽240は、緩衝液160を貯める。緩衝液槽240は媒体保持部材241につながっており、緩衝液槽240内の緩衝液160は、アノード電極150と転写膜180との間、分離媒体170とカソード電極151との間に侵入したり、転写膜180および分離媒体170に吸収されたりする。
【0057】
このように本実施形態に係る転写装置200は、緩衝液160を、アノード電極150およびカソード電極151に挟まれた領域に供給する緩衝液槽240を備えているので、緩衝液を容易に供給することができる。
【0058】
〔第3の実施形態〕
次に、本発明に係る転写装置を、特許文献1に記載の電気泳動兼転写装置に適用した場合について説明する。
【0059】
図5は、本発明の一実施形態(第3の実施形態)に係る転写装置300の概略構成を示す斜視図である。図6は、転写装置300の概略構成を示す断面図であり、図5における点線で切断した断面図である。以下、転写装置300について説明するが、第1の実施形態に係る転写装置100と同様の部材を用いることができる場合には、同じ番号を付して説明を省略する。
【0060】
図5および6に示すように、転写装置300は、アノード電極350、カソード電極351、絶縁体140および141ならびに電気泳動用電極352および353を備えている。絶縁体140および141は、格納部310ならびに緩衝液槽320および321を構成する。緩衝液槽320および321は、緩衝液160を貯める。格納部310は、アノード電極350およびカソード電極351の間に、分離媒体170および転写膜180を格納する。
【0061】
図7は、転写装置300のカソード電極351の概略構造を示す模式図である。図7に示すように、カソード電極351は、互いに平行な複数の帯状導電体354を備えており、帯状導電体354によって、転写のための電流を流すものである。帯状導電体354の伸びる方向は、電気泳動用電極352および353間を結ぶ方向と直交している。なお、アノード電極350は、平板状の電極であってもよいが、カソード電極351と同様、互いに平行な複数の帯状導電体を備えていてもよい。
【0062】
なお、転写装置300は、アノード電極350およびカソード電極351間ならびに電気泳動用電極352および353間に電圧を印加するための図示しない結線手段355および電圧印加手段190を備えている。
【0063】
転写装置300は、分離媒体170中で被転写物171を分離し、続けて、分離媒体170から転写膜180へ被転写物171を転写することができる。すなわち、分離媒体170に被転写物171を含ませ、電気泳動用電極352および353間に電圧を印加することにより、電気泳動により、分離媒体170中で被転写物171を分離することができる。
【0064】
カソード電極351は、互いに平行な複数の帯状導電体354を備えているが、帯状導電体354の伸びる方向は、電気泳動の方向と直交しているため、電気泳動の方向へ形成される電位勾配を阻害しない。これにより、上記電気泳動を首尾よく行うことができる。このとき、アノード電極350が、平板状の電極である場合には、電気泳動時、アノード電極350を、絶縁体141とともに取り外しておくことが好ましい。
【0065】
ここで、転写装置300は、ろ紙を不要としているために、上記電気泳動をさらに首尾よく行うことができる。
【0066】
電気泳動が完了したら、アノード電極350およびカソード電極351間に電圧を印加することによって、転写を行うことができる。
【0067】
(緩衝液の添加剤)
本発明はまた、ろ紙を不要とした転写装置に用いる緩衝液の添加剤を提供する。本発明に係る緩衝液の添加剤は、水酸基およびカルボニル基の少なくともいずれか一方を含有する芳香族化合物を含有しており、例えば、転写装置100、200および300において用いることができる。
【0068】
上記芳香族化合物としては、ハイドロキノンおよびパラベンゾキノンの少なくともいずれか一方であることが好ましく、ハイドロキノンおよびパラベンゾキノンの両方であることがより好ましい。特に、ハイドロキノンに対するパラベンゾキノンの比は等倍に近いことが好ましく、例えば、1/2倍以上2倍以下、2/3倍以上3/2倍以下、3/4倍以上4/3倍以下、4/5倍以上5/4倍以下または9/10倍以上10/9倍以下とすることができる。ハイドロキノンに対するパラベンゾキノンの比が等倍に近ければ、上述のように、本発明に係る緩衝液を用いる転写装置において、アノード電極およびカソード電極における均等な気泡発生の抑制効果を得ることができるため、効率がよい。
【0069】
なお、本発明に係る緩衝液の添加剤は、液体であっても、固体(粉末状、顆粒状等)であってもよく、上記芳香族化合物の他に、一般的な緩衝液に含まれ得る他の成分、例えば、Tris、グリシン、酢酸、EDTA、ホウ酸、DMSO等を含んでいてもよい。本発明に係る緩衝液の添加剤が液体である場合には、例えば、蒸留水等で希釈して用いることができ、希釈の倍率は特に限定されない。
【0070】
(作製キット)
また、本発明は、本発明に係る転写装置を作製するための作製キットを提供する。上記作製キットは、例えば、第1の実施形態に係る転写装置100を作製するための作製キットであり得る。転写装置100を作製するための作製キットは、アノード電極150およびカソード電極151と、アノード電極150およびカソード電極151の間に分離媒体170および転写膜180を格納するための格納部110と、水酸基およびカルボニル基の少なくともいずれか一方を含有する芳香族化合物を含有している、緩衝液の添加剤とを備えていればよい。このような作製キットを用いれば、転写装置100を容易に構成することができる。また、本発明に係る作製キットは、第2の実施形態に係る転写装置200、第3の実施形態に係る転写装置300等、本発明に係る、ろ紙を不要とした転写装置を作製するために好適に用いることができる。
【実施例】
【0071】
以下、実施例および対照例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0072】
〔実施例1〕
以下の操作を、実施例1、対照例1(ポジティブコントロール)および対照例2(ネガティブコントロール)についてそれぞれ行った。
【0073】
(ゲルの調製)
ゲル作製用容器に、調整した分離ゲル溶液(13%アクリルアミドミックス(アクリルアミド:ビスアクリルアミド=29.2:0.8)、375mM Tris−HCl(pH8.8)、0.05%APS、0.1%TEMED)を添加し、7ウェルコームで蓋をした。
【0074】
ゲル(分離媒体)が重合した後、試料(被転写物)として用いるSeeBlue(登録商標)Pre−Stained Standard(invitrogen)と0.25%アガロース(ReadyPrep Overlay Agarose、BIO−RAD)を1:1で混合し、1ウェルあたり15μlを添加して垂直状態のまま約15分間4℃で冷した。
【0075】
(電気泳動)
試料がゲル化した後、POWER PAC 3000(BIO−RAD)を電源として、定電流20mA設定で約30分間泳動した。
【0076】
ここで、対照例1および2では、電気泳動用の緩衝液として、25mM Tris、192mM グリシン+0.1%SDSを用いた。一方、実施例1では、電気泳動用の緩衝液として、25mM Tris、192mM グリシン+0.1%SDS+50mMパラベンゾキノン+50mMヒドロキノンを用いた。
【0077】
(転写)
電気泳動が終了した後、ゲル作成容器からゲルを取り出し、48mm×48mmに切り出した。同サイズの1×TGSに浸した孔径0.45μmセルロースメンブレン(Membranfilter porafil(商標登録) membrane filters、MACHEREY−NAGEL)と重ね、ゲルが潰れないように1mmのスペーサーを左右に置き、両面をアノード電極およびカソード電極で挟みさらにガラス板で挟み大型クリップで固定した。このとき、対照例1では、1×TGSに浸したゲルと同サイズのろ紙を、アノード電極とメンブレンとの間、およびカソード電極とゲルとの間に挟んだ。
【0078】
電源には、KX−100L(Regulated DC Power Supply、TAKASAGO)を用いて、Step1:1V、600sec、Step2:2V、600sec、およびStep3:5V、2400secを設定した。電流電圧値をKEITHLEY 2000 MULTIMETERでモニタリングしながら転写を行なった。転写条件は、1Vで600秒、2Vで600秒、5Vで2400秒行った。
【0079】
アノード電極およびカソード電極としてPtをスパッタリングしたPPMA基板(Ptスパッタ電極)を用いた。
【0080】
(検出)
転写終了後のゲルを撮影した。図8(a)に対照例1の結果を、図8(b)に対照例2の結果を、図8(c)に実施例1の結果をそれぞれ示す。
【0081】
図8(a)に示すように、対照例1では、濃いバンドが転写されている。一方、図8(b)に示すように、対照例2では、バンドが非常に薄くなっている。すなわち、ろ紙を用いない場合、従来の転写装置では、転写量が非常に低減してしまう。
【0082】
ここで、図8(c)に示すように、実施例1では、ろ紙を用いていないにも関わらず、十分に濃いバンドが観察された。なお、実施例1において、バンドの間隔が狭まっているのは、電気泳動時の条件のためであり、本発明の効果とは関係ない。
【0083】
〔実施例2〕
次に、電極としてストライプ電極(互いに平行な複数の帯状導電体を備えた電極)を用いた場合について実施した。以下の操作を、実施例2、対照例3(ポジティブコントロール)および対照例4(ネガティブコントロール)についてそれぞれ行った。なお、電極としてストライプ電極を用いたこと、および電圧の設定の他は、実施例2は実施例1と、対照例3は対照例1と、対照例4は、対照例2と同様の手順および条件で実施した。
【0084】
(ストライプ電極の作製)
スパッタ装置(CFS−4EパラLL、芝浦メカトロニクス)を用いて、48mm×66mmのPMMA板(厚さ3mm)上に電極を成膜した。続いて、CO2レーザー彫刻機(Trotec 8010 Speedy 100 C25、Trotec Co.)を用いて、成膜した上記電極を加工して、導電体の幅が約300μm、導電体同士の間隔が約100μmである互いに平行な複数の帯状の導電体を形成することにより、ストライプ電極を作製した。切断(加工)条件は、レーザーパワーを5.5%、加工スピードを20.0%、1000PPIとした。
【0085】
(転写)
電圧の設定以外は、実施例1、対照例1および2と同様に実施した。電圧の設定は、Step1:2V、600sec、Step2:4V、600sec、およびStep3:10V、2400secとした。
【0086】
(結果2)
図9(a)に対照例3の結果を、図9(b)に対照例4の結果を、図9(c)に実施例2の結果をそれぞれ示す。
【0087】
図9(a)に示すように、対照例1では、濃いはっきりとしたバンドが転写されている。一方、図9(b)に示すように、対照例2では、バンドが非常に薄くなっている。すなわち、ろ紙を用いない場合、ストライプ電極を用いた場合であっても従来の転写装置では、転写量が非常に低減してしまう。
【0088】
ここで、図9(c)に示すように、実施例2では、ろ紙を用いていないにも関わらず、実施例1と同様、濃いバンドが観察された。なお、実施例2において、バンドの間隔が狭まっているのは、電気泳動時の条件のためであり、本発明の効果とは関係ない。
【0089】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、例えば、生体分子の解析または検査のための器具または装置等の製造分野において利用可能である。
【符号の説明】
【0091】
100、200、300 転写装置
110、310 格納部
140、141 絶縁体
142 スペーサー
143 保持部材
150、350 アノード電極
151、351 カソード電極
170 分離媒体
180 転写膜
160 緩衝液
161 還元体
162 酸化体
171 被転写物
190 電圧印加手段
240、320、321 緩衝液槽
241 媒体保持部材
352、353 電気泳動用電極
354 帯状導電体
355 結線部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
緩衝液を含んだ分離媒体および転写膜を格納し、上記緩衝液を介して上記分離媒体に電流を流すことによって上記分離媒体中の被転写物を上記転写膜上へ転写する、ろ紙を不要とした転写装置であって、
上記緩衝液が、水酸基およびカルボニル基の少なくともいずれか一方を含有する芳香族化合物を含有していることを特徴とする転写装置。
【請求項2】
上記芳香族化合物が、ハイドロキノンまたはパラベンゾキノンであることを特徴とする請求項1に記載の転写装置。
【請求項3】
上記緩衝液中の上記芳香族化合物の濃度が、0.01Mから0.4Mの範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載の転写装置。
【請求項4】
上記分離媒体に電流を流すためのアノード電極およびカソード電極を備えており、
上記分離媒体および上記転写膜は、上記アノード電極および上記カソード電極の間に配置されていることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の転写装置。
【請求項5】
上記アノード電極および上記カソード電極の少なくともいずれか一方が、互いに平行な複数の帯状の導電体を備えていることを特徴とする請求項4に記載の転写装置。
【請求項6】
上記アノード電極および上記カソード電極の少なくともいずれか一方が、白金、銅、亜鉛、金または鉄からなる導電体を備えていることを特徴とする請求項4または5に記載の転写装置。
【請求項7】
分離媒体中の被転写物を転写膜上へ転写する、ろ紙を不要とした転写方法であって、
上記分離媒体および上記転写膜に、水酸基およびカルボニル基の少なくともいずれか一方を含有する芳香族化合物を含有する緩衝液を含ませる工程と、
上記分離媒体に上記緩衝液を介して電流を流す工程と
を包含することを特徴とする転写方法。
【請求項8】
分離媒体中の被転写物を転写膜上へ転写する、ろ紙を不要とした転写装置を作製するための作製キットであって、
アノード電極およびカソード電極と、
上記アノード電極および上記カソード電極の間に上記分離媒体および上記転写膜を格納するための格納部と
水酸基およびカルボニル基の少なくともいずれか一方を含有する芳香族化合物を含有している、緩衝液の添加剤と
を備えていることを特徴とする作製キット。
【請求項9】
水酸基およびカルボニル基の少なくともいずれか一方を含有する芳香族化合物を含有していることを特徴とする、ろ紙を不要とした転写装置に用いる緩衝液の添加剤。
【請求項10】
上記芳香族化合物が、ハイドロキノンまたはパラベンゾキノンであることを特徴とする請求項9に記載の緩衝液の添加剤。
【請求項11】
ハイドロキノンおよびパラベンゾキノンの両方を含有しており、ハイドロキノンの含有量に対するパラベンゾキノンの含有量の比が、1/2倍以上2倍以下であることを特徴とする請求項9に記載の緩衝液の添加剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−216861(P2010−216861A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−61403(P2009−61403)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)