説明

ろ過装置

【課題】 被処理液に合わせたろ材を選定することなく、ろ材層全体を有効に利用し、所定のろ過性能を発揮できるろ過装置を提供する。
【解決手段】 不定形ろ材で構成したろ材層に被処理液を通水してろ過処理を行うろ過装置において、懸濁物質を捕捉するろ材4と、懸濁物質を含む被処理液を通水させるろ過助材5が、混在した状態でろ材層3を形成もので、ろ過工程において、ろ過助材を介して容易にろ材層内部まで被処理液を通水させるので、ろ材層表面だけでなくろ材層の内部を有効にろ過作用に利用して、懸濁物質の大量捕捉、ろ過圧力の上昇防止、ろ過継続時間の増大が図れる。また、ろ過助材の割合を変更するだけで様々な被処理水に対応でき、処理水のSS濃度の調整も可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、生活排水(廃水)や工場排水(廃水)などの被処理液に含まれている懸濁物質を分離除去する際に、不定形ろ材を用いてろ材層を形成するろ過装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から不定形の粒状ろ材でろ材層を構成したろ過装置が固液分離や生物処理装置に多く使用されている。被処理液中の懸濁物質を、主にろ材層の表面で捕捉する表層ろ過は、ろ材層の表面に捕捉した懸濁物質が蓄積し、ろ材層全体を有効に利用していない状態でもろ材層に目詰まりが生じ、短時間でろ過圧力が上昇するため、頻繁にろ材の洗浄が必要となる。ろ材層の通水路(隣接するろ材同士の間隙)が狭い場合、ろ材層のバランスが悪くなり表層ろ過が起こりやすい。被処理液中の懸濁物質を、ろ材層の表面だけでなく、ろ材層内部でも捕捉する深層ろ過は、ろ材層のろ過圧力が増大しにくく、1サイクル当りの固形分捕捉量が多い。懸濁物質が通過可能な通水路をろ材層内部まで形成している場合、ろ材層全体を有効に利用できることになる。
ろ材層を構成するろ材の一例として、内部に空隙性のある不定形の粒状繊維ろ材で一定の厚さのろ材層を形成し、そのろ材内部・表面で被処理液に含まれている懸濁物質を捕捉するろ過装置が、特許文献1において本出願人より提案されている。
比重や粒度の異なる砂やアンスラサイト等の粒状物を多層に構成し、有効径の大きな粒子で形成した大きな間隙で大きな懸濁物質を捕捉し、有効径の小さな粒子で形成した小さな間隙で小さな懸濁物質を捕捉するろ過装置が特許文献2において提案されている。
また、2種類の粒径の異なるろ材(粒径aと粒径3〜5a)を適量混ぜ合わせてろ材層を形成することにより、ろ過圧力をあまり増大せず、ろ過能力を長時間維持させることができるろ過方法が特許文献3において提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−011305号公報
【特許文献2】特開平7−284355号公報
【特許文献3】特開平7−232007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
不定形の粒状繊維ろ材でろ過作業を行う場合、被処理液に対するろ材の選定が困難である。前記ろ材で構成したろ材層は、時間の経過とともに、ろ材層表層部から徐々に被処理液の流れ方向に沿って懸濁物質の捕捉帯が進行する。繊維ろ材は、ろ過圧力で圧密されるため通水路が減少する。
ろ材内部を構成する繊維間の通水路が狭い繊維ろ材を用いると、懸濁物質を大量に捕捉する清澄ろ過が可能となる。しかし、懸濁物質をろ材層表面付近のろ材で大量に捕捉する表層ろ過となり、早期に目詰まりし、ろ過圧力が上昇する。所定のろ過圧力あるいは所定のろ過継続時間に基づいて洗浄工程に移行する。しかし、ろ材層の最深部まで有効にろ過作用に利用していないので、懸濁物質の捕捉量に対して洗浄工程の回数が増加し、処理量が減少する。
ろ材内部を構成する繊維間の通水路が広い繊維ろ材や、ろ過圧力で圧密しないだけの強度を有する繊維ろ材を用いると、ろ材層の最深部まで捕捉帯が進行する深層ろ過が可能となる。ろ過圧力はあまり上昇しないが、処理液の水質が悪く、ろ過開始の初期から被処理液に含まれている懸濁物質が処理液とともに流出(ブレイクスルー現象)する。
【0005】
比重や粒度の異なる砂やアンスラサイト等の粒状物をろ材として多層に構成したろ過装置は、被処理液に含まれる懸濁物質の粒径の大きなものが最初に粗粒子ろ材層で捕捉され、順次、細粒子ろ材層に向かって粒径の小さなものが捕捉されていく。ろ材層全体が有効に利用される深層ろ過となるが、ろ材槽内の通水路がろ材同士の間隙のみであり処理速度が遅い。ろ材洗浄において、逆洗による洗浄では高圧流体を噴射させる必要がある。また、攪拌による洗浄では洗浄後に多層に構成するよう各ろ材の比重差を大きくしなければならない。この場合、比重の大きなろ材を攪拌させるための大きな動力が必要となる。ろ材洗浄時にほぐし切れない間隙部の懸濁物質の塊が充填層の中に残ってしまうおそれがある。
2種類の粒径の異なるろ材(粒径aと粒径3〜5a)を適量混ぜ合わせたろ材層は、ろ材同士の間隙分布を調整し、ろ材層全体で効率よく懸濁物質の捕捉を行うものである。大きな粒径(3〜5a)のみのろ材層では、ろ材同士の間隙が大きいため深層ろ過となるが、懸濁物質の捕捉量が少なくブレイクスルー現象が発生しやすくなる。逆に小さな粒径(a)のみのろ材層では、懸濁物質の捕捉量が多いが、ろ材同士の間隙が狭いため表層ろ過となり、短時間でろ過圧力が上昇し、頻繁にろ材洗浄が必要となる。しかし、大小の粒径を混ぜ合わせることで、ろ材同士の間隙は平均となり、結局、2種類の平均粒径で構成したろ材層と同等のろ過性能となる。
【0006】
それぞれ被処理液の性状や条件に適したろ材を選定することで、深層ろ過となり所定のろ過性能を発揮できるものであるが、被処理液は無機、有機を含め多種多様である。ろ材内部の空隙率やろ材強度等それぞれに適合するろ材を準備する必要があり、そのための生産・在庫管理が困難となる。
この発明は、被処理液に合わせたろ材を選定することなく、ろ過継続時間の長い深層ろ過を行いながらブレイクスルー現象が発生し難く、且つ清澄ろ過が可能なろ過装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るろ過装置は、不定形ろ材で構成したろ材層に被処理液を通水してろ過処理を行うろ過装置において、懸濁物質を捕捉するろ材と、懸濁物質を含む被処理液を通水させるろ過助材が、混在した状態でろ材層を形成しているので、ろ過助材を介して容易にろ材層内部まで被処理液を通水させ、ろ材層表面だけでなくろ材層の内部を有効にろ過作用に利用することができる。
具体的には、ろ材層が、ウェーブ状のフィラメントを互いに接着して内部に多大な空隙を有し、繊維間が緻密で懸濁物質を捕捉する機能を持たせる繊維ろ材と、強度を有した繊維間が粗いろ過助材を混合してろ過装置を構成したので、被処理液を適度にろ材層内部へ流入させ、ろ材層全体を用いた深層ろ過ができる。
【0008】
また、前記ろ過助材がろ過運転中にろ材より大きい内部空隙を有するので、ろ過圧力が上昇してろ材層が圧密されても、ろ過助材を通じてろ材層内部への通水路を確保できる。ろ過助材の一部に繊維を立毛させて、この繊維で懸濁物質を捕捉できるようにすると、ろ材とろ過助材との間隙で有効に懸濁物質を捕捉でき、清澄ろ過を促進できる。
【0009】
ろ材とろ過助材とをろ材層に均等に混在させたので、懸濁物質を含む被処理液を適度にろ材層内部へ流入させ、ろ材層全体を用いた深層ろ過ができる。ろ過助材をろ材層の上流側表層に多く混在させると、ろ材の目詰まりが発生しやすい表層付近のろ過圧力の上昇を防止でき、積極的にろ材層の内部に被処理液を流入させ、ろ材層全体を用いた深層ろ過ができる。
【発明の効果】
【0010】
この発明のろ過装置を形成するろ材層は、被処理液に含有する懸濁物質を捕捉するろ材と、懸濁物質を含有する被処理液をろ材層の下流側へ通水させるろ過助材とを混合して構成している。ろ過工程において、ろ過助材を介して容易にろ材層内部まで被処理液を通水させるので、ろ材層表面だけでなくろ材層の内部を有効にろ過作用に利用して、懸濁物質の大量捕捉、ろ過圧力の上昇防止、ろ過継続時間の増大が図れ、清澄ろ過が可能となる。また、ろ過助材を混在させる割合を変更するだけで様々な被処理水に対応でき、異なる仕様のろ材に変更する必要がなく、処理水のSS濃度の調整も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明に係るろ過装置のろ材層の概略構成図である。
【図2】同じく、下向流方式のろ過装置である。
【図3】同じく、他の実施例の上向流方式のろ過装置である。
【図4】同じく、矩形状繊維ろ材の概略図である。
【図5】同じく、球状繊維ろ材の概略図である。
【図6】同じく、モール状繊維ろ材の概略図である。
【図7】同じく、筒状繊維ろ材の概略図である。
【図8】同じく、矩形状ろ過助材の概略図である。
【図9】同じく、球状ろ過助材の概略図である。
【図10】同じく、モール状ろ過助材の概略図である。
【図11】同じく、筒状ろ過助材の概略図である。
【図12】同じく、ろ材層の一部拡大図である。
【図13】同じく、他の実施例の表層分散したろ材層の概略構成図である。
【図14】この発明と従来技術に係るろ過圧力とろ過継続時間の比較表である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この発明に係るろ過装置を図面に基づき詳述すると、図1はろ材層の概略構成図であって、ろ過槽2にろ材4とろ過助材5を充填し、混在させた状態でろ材層3を形成している。ろ材4とろ過助材5の比重がそれぞれ1.0以上の場合、ろ過槽2の下方にろ材層3aが形成され、図2に示す下向流方式のろ過装置1aとなる。ろ材4とろ過助材5の比重がそれぞれ1.0未満の場合、ろ過槽2の上方にろ材層3bが形成され、図3に示す上向流方式のろ過装置1bとなる。
【0013】
図4〜7は本発明に係る不定形ろ材の概略図である。本実施例では、ろ材4をウェーブ状のフィラメントで互いに接着し、その内部に多大な空隙を有している繊維ろ材で構成している。ろ材4の内部空隙を被処理液が懸濁物質とともに通過可能であるため高速ろ過を行うことができる。ろ材4の内部の繊維間は緻密に構成されており、ろ材4の内部の繊維間で懸濁物質を捕捉できる。ろ材4表面には繊維が立毛しているので、ろ材4,4同士の間隙を通過する懸濁物質を、ろ材4表面でも捕捉することが可能である。
ろ材層3を形成して被処理液を通水する際、内部に空隙を有する繊維ろ材4が適度に圧縮されて充填されるため、ろ材4,4同士の間隙を均一に保つことができ、効率よくろ過することができる。
【0014】
図4は不定形の矩形状繊維ろ材であって、大型のマット状にした媒体から定形品に裁断することで矩形状に形成することができる。ろ材4を繊維で構成しているので、矩形状繊維ろ材4a表面の立毛繊維あるいは矩形状ろ材4a内部の繊維間で懸濁物質を捕捉できる。矩形状繊維ろ材4aをろ過槽2に充填してろ材層3を形成すると、ろ材4a,4a同士に大小の間隙が形成され、懸濁物質を捕捉しつつ、被処理液をろ材層3内部へと通水させる。
図5は他の実施例の不定形のろ材であって、ろ材を球状に形成している。矩形状繊維ろ材4aと同様に、繊維で構成しているので、球状繊維ろ材4b表面の立毛繊維あるいは球状繊維ろ材4b内部の繊維間で懸濁物質を捕捉できる。
【0015】
図6は他の実施例の不定形のろ材であって、ろ材をモール状に形成している。矩形状繊維ろ材4aと同様に、繊維で構成しているので、モール状繊維ろ材4c表面の立毛繊維あるいはモール状繊維ろ材4c内部の繊維間で懸濁物質を捕捉できる。
図7は他の実施例の不定形のろ材であって、ろ材4を筒状に形成している。矩形状繊維ろ材4aと同様に、繊維で構成しているので、筒状繊維ろ材4d表面の立毛繊維あるいは筒状繊維ろ材4d内部の繊維間で懸濁物質を捕捉できる。
【0016】
図8〜11は本発明に係る不定形ろ過助材の概略図である。本実施例のろ過助材5は、繊維間が粗く、ろ過助材5の一方から他方へ懸濁物質を含む被処理液が通過するのに十分な空隙あるいは開口を有している。ろ材4で形成したろ材層3内にろ過助材5が混在しているので、ろ過助材5の上流側のろ材層3で捕捉されていない懸濁物質を被処理液と共に下流側へ通水させる。そして、下流側のろ材層3にてろ過助材5の内部を通過した懸濁物質を捕捉する。
ろ材層3表面で多くの懸濁物質を捕捉しても、ろ材層3内部に適度にろ過助材5が混在しているので、ろ材層3内部への通水路が確保でき、ろ過圧力が上昇し難い。ろ過助材5がろ材層3内部に被処理液を導いて、ろ材層3内部での深層ろ過を促進させる。1回のろ過時間を長く設定でき、処理量が増大する。
【0017】
ろ過助材5は圧密しても形状が維持できるだけの構造、例えば、強度を有する部材を使用、あるいは繊維径を大きくする等の構造で形成している。具体的には、ろ過助材5をプラスチック等の合成樹脂や合成繊維で成形してもよい。
ろ過助材5の内部はろ材4よりはるかに大きな空隙を有し、その内部に通じる開口は少なくとも2以上を有している。ろ過助材5の内部空隙および開口は、懸濁物質を含む被処理液が通過するのに十分な大きさである。懸濁物質を含む被処理液は、ろ過助材5の一方の開口から内部に流入し、内部の空隙を通って他方の開口から流出する。開口からろ過助材5の内部空隙を通り、ろ材層3の下流側に通水できる大きさであれば形状、大きさ等は特定しない。内部と外部を連通させる開口は、対称位置に2以上を設けることが望ましい。
ろ過助材5を構成する部材は、ろ材層3内部で圧密されても、容易に圧縮による変形がない。そのため、ろ過運転中でもろ材層3はろ過助材5内部の空隙による通水路を常時確保できる。
ろ過助材5の大きさを、ろ材4とほぼ同等とすると、ろ材4,4同士の間隙とろ材4とろ過助材5の間隙がほぼ同等となり、ろ材層3内で懸濁物質の捕捉量が偏るようなろ過(偏重ろ過)が発生し難い。
また、ろ過助材5の一部、例えば表面に繊維を立毛させて、ろ過助材5表面で懸濁物質を捕捉できるようにしてもよい。
【0018】
図8は不定形の矩形状ろ過助材であって、矩形状繊維ろ材4aと同様に生成しているが、矩形状ろ過助材5aは繊維間を粗く構成している。内部は懸濁物質を含む被処理液が通過できる十分な空隙を有する。被処理液の通水時に、通水圧力により形状が変形しないように、ろ過助材5を構成する繊維を太くして強度を高めてもよい。
図9は他の実施例の不定形のろ材であって、ろ材助材5を球状に形成している。球状繊維ろ材4bと同様に生成しているが、球状ろ過助材5bは繊維間を粗く構成している。
【0019】
図10は他の実施例の不定形のろ材であって、ろ材助材5をモール状に形成している。モール状繊維ろ材4cと同様に生成しているが、モール状ろ過助材5cは繊維間を粗く構成している。
図11は他の実施例の不定形のろ材であって、ろ材助材5を筒状に形成している。円筒状繊維ろ材4dと同様に生成しているが、円筒状ろ過助材5dは繊維間を粗く構成している。
【0020】
図12はろ材層の一部拡大図であって、粒状ろ材4の中にろ過助材5が混在している。
ろ材層3に被処理液を通水すると、ろ材層3表面付近に位置するろ材4で多量の懸濁物質が捕捉される。懸濁物質を取り除かれた処理液と一部の懸濁物質を含む被処理液は、ろ材4,4同士の間隙、ろ材4内部の空隙、ろ材4とろ過助材5の間隙、あるいはろ過助材5内部の空隙を通過してろ材層3内部へと流入する。その際に、ろ材4内部の空隙あるいはろ材4,4同士の間隙で懸濁物質が捕捉される。したがって、ろ材層3における懸濁物質の捕捉量は、ろ材層3の上流から下流に向かって減少する。
ろ材層3にはろ過助材5が混在しており、被処理液はろ過助材5内部を容易に通過できる。ろ過助材5を通過した後、下流側にろ材4があれば、ろ材4の空隙あるいはろ材4,4同士の間隙に応じて懸濁物質が捕捉される。さらに、被処理液はろ材4,4同士の間隙、ろ材4内部の空隙、ろ材4とろ過助材5の間隙、あるいはろ過助材5内部の空隙を通過してろ材層3内部へと流入し、ろ材層3内部のろ材4によって懸濁物質を捕捉される。
このようにして、ろ過助材5を介してろ材層3内部に懸濁物質を含む被処理液を通水させることで、ろ材層3内部でも効率よくろ過を行い、ろ材層3全体を有効に利用できる深層ろ過とすることができる。
【0021】
図1に示すように、ろ材4とろ過助材5の比重は、下向流方式のろ過装置1aの場合、ともに1.0以上〜3.0未満、上向流方式のろ過装置1bの場合、ともに0.1以上〜1.0未満であれば適度に分散する。
上記のように、ろ材4とろ過助材5とで比重差を少なく設定し、さらに、同形状のろ材4とろ過助材5を用いた場合、図1に示すように、洗浄攪拌を行っても均等に混在してろ材層3を形成する均等分散となる。
【0022】
ろ材4とろ過助材5とで比重差が大きく異なるよう設定、あるいは異形状のろ材4とろ過助材5を用いた場合、攪拌・洗浄を行うと、比重、形状の相違により、ろ材層3の一方(上流側あるいは下流側)にろ材4あるいはろ過助材5を偏重して混在させることができる。
具体的には、図13に示すように、ろ過助材5をろ材層3の上流側に偏重させた表層分散とすると、ろ材4の目詰まりが発生しやすい表層付近のろ過圧力の上昇を防止でき、積極的にろ材層3の内部に被処理液を流入させて懸濁物質を捕捉できる。
【0023】
ろ材4とろ過助材5の混合比を調整することで、様々な被処理液に対応可能であり、空隙率や大きさの異なる多種のろ材4を準備する必要がない。条件に応じてろ材層3の圧密度を調整することにより、ろ材4内部の空隙率やろ材4,4同士の間隙を設定できる。
比重がともに1.0以上の場合は、ろ材層3aはろ過槽1a下部に沈殿するので、下向流により被処理液を通水させる。比重がともに1.0未満の場合は、ろ材層3bはろ過槽1b上部に浮上するので、下向流により被処理液を通水させる。
【0024】
図2において、1aは下降流方式のろ過装置である。ろ過槽2内には、下端から所定の高さにろ材4およびろ過助材5が流出するのを防止するろ材流出防止スクリーン6が設置されている。そして、ろ材流出防止スクリーン6の上側に、ろ材4およびろ過助材5によって所定の厚さのろ材層3aが形成されている。ろ材4およびろ過助材5でろ材層3aを形成する際、繊維ろ材4が適度に圧縮されて充填されるため、ろ材4,4同士の間隙を均一に保つことができ、効率よくろ過することができる。
被処理液供給管7は、ろ材層3aの上側へ被処理液を供給するように、ろ過槽2に接続されている。
洗浄装置8は、供給するエアーでろ材層3aを構成するろ材4を攪拌して洗浄できるように、ろ材層3aの下側部分に対応する、すなわち、ろ材流出防止スクリーン6の上側部分に対応するろ過槽2に接続されている。
ろ過槽2のろ材流出防止スクリーン6よりも下側部分には、被処理液(被処理水)などを排出する排出管9が接続されている。
【0025】
次に、ろ過装置1aにおけるろ過の一例について説明する。
被処理液供給管7からろ過槽2内に被処理液を供給することにより、被処理液はろ材層3a内を下降してろ過され、排出管9を介して排出される。
そして、例えば、ろ材層3aで捕捉した懸濁物質による目詰まりにより、ろ過圧力が上昇した場合、または、累積稼働時間が所定時間に達したならば、または、処理液が所定の基準に達しなくなったならば、洗浄装置8からエアーを供給する。
このように、ろ過槽2内に被処理液およびエアーを供給すると、エアーによってろ材4が攪拌されることにより、ろ材4が洗浄され、ろ材4が捕捉している懸濁物質が剥離、沈降し、排出管9を介して排出される。ろ材4とろ過助材5の大きさ、比重等はほぼ同様であるので、ろ材4の洗浄時にはろ過助材5も同様に攪拌される。なお、ろ材4を洗浄する場合、ろ過槽2内へ供給する洗浄液(洗浄水)は、所定の基準に達して洗浄水、例えば、処理液(処理水)を供給してもよい。
【0026】
図3はこの発明のろ過装置の他の実施例を示す概略構成図であり、図2と同一部分または相当部分に同一符号を付し、その説明を省略する場合がある。
図3において、1bは上向流方式のろ過装置である。ろ過槽2内には、ろ過槽2の下方にろ材が流出するのを防止するろ材流出防止下側スクリーン6aが設置されるとともに、ろ過槽2の上方にろ材4が流出するのを防止するろ材流出防止上側スクリーン6bが設置されている。そして、ろ材流出防止上側スクリーン6bの下側に、ろ材4およびろ過助材5によって所定の厚さのろ材層3bが形成されている。
被処理液供給管7は、ろ材流出防止下側スクリーン6aの下側へ被処理液を供給するように、ろ過槽2に接続されている。
洗浄装置8は、供給するエアーでろ材層3bを構成するろ材を攪拌して洗浄できるように、ろ材流出防止下側スクリーン6aの上側部分に対応するろ過槽2に接続されている。
ろ過槽2のろ材流出防止下側スクリーン6aよりも下側部分には、被処理液(被処理水)などを排出する排出管9が接続されている。
ろ過槽2のろ材流出防止上側スクリーン6bよりも上側部分には、処理液(処理水)を排出する処理液排出管10が接続されている。
なお、このろ過装置1bに使用するろ材4およびろ過助材5は、比重が1.0未満のろ材4およびろ過助材5を使用する。
【0027】
次に、ろ過装置1bにおけるろ過の一例について説明する。
被処理液供給管7からろ過槽2内に被処理液を供給することにより、被処理液はろ材層3b内を上向してろ過され、処理液排出管10を介して排出される。
そして、例えば、ろ材層3bで捕捉した懸濁物質による目詰まりにより、ろ過圧力が上昇した場合、または、累積稼働時間が所定時間に達したならば、または、処理液が所定の基準に達しなくなったならば、洗浄装置8からエアーを供給する。
このように、ろ過槽2内に被処理液およびエアーを供給すると、エアーによってろ材4が攪拌されることにより、ろ材4が洗浄され、ろ材4が捕捉している懸濁物質が剥離、沈降し、排出管9を介して排出される。なお、ろ材4を洗浄する場合、ろ過槽2内へ供給する洗浄液(洗浄水)は、所定の基準に達して洗浄水、例えば、処理液(処理水)を供給してもよい。
また、このろ材4は、密閉式の上向流方式のろ過装置にも適用可能で、同様のろ過性能を発揮するとともに、撹拌翼によるろ材洗浄でも同様の洗浄効果を得ることができる。
【実施例】
【0028】
従来の不定形ろ材のみで構成したろ材層と、本発明の不定形ろ材とろ過助材を混在させて構成したろ材層とで、下向流方式のろ過装置により、比較試験を行った。ろ材、ろ過助材、ろ過装置は下記の仕様とした。
被処理液 :凝集させた池水 or 藻類を含む池水
ろ材 :モール状繊維ろ材4c
ろ過助材 :モール状ろ過助材5c
本体槽高さ:4000mm
本体槽内径:Φ600mm
通水速度 :40m/h
【0029】
図14はこの発明と従来技術に係るろ過圧力とろ過継続時間の比較表であって、立軸をろ過圧力(kPa)、横軸をろ過継続時間(h)としている。ろ過圧力が15kPaまで上昇すると、ろ材4から懸濁物質を取り除くために、ろ材洗浄が必要となる。
【0030】
従来のろ材4のみで構成したろ材層では、4.5時間でろ過圧力が15kPaまで上昇している。これは、4.5時間毎にろ材洗浄が必要であることを示している。
一方、本発明のろ材4とろ過助材5を混在させて形成しているろ材層3では、ろ過圧力が上昇するまでの時間が飛躍的に長くなった。
具体的には、ろ材4を90%、ろ過助材5を10%として均等に混在させたろ材層3’では、4.5時間でろ過圧力が6〜7kPaまでしか上昇しない。15kPaまでろ過圧力が上昇するのに7時間を要する。なお、7時間後のろ過処理後の処理液中のSS濃度は、従来技術と本発明とで差異はなかった。
また、ろ材4を80%、ろ過助材5を20%として均等に混在させたろ材層3’’では、15kPaまでろ過圧力が上昇するのに8.5時間を要する。しかし、4時間が経過すると、ろ過処理後の処理液中のSS濃度が急上昇し、ブレイクスルー現象が確認できた。
【0031】
従来のろ材4のみで構成したろ材層は、ろ材4,4同士の間隙が狭く、また、ろ材4内部の空隙が狭いため、ろ材層の表面付近に堆積しているろ材4が短時間に多くの懸濁物質を捕捉する。しかし、懸濁物質の捕捉により、ろ材4の通水面積が減少し、ろ過装置としては短時間にろ過圧力が上昇する。
一方、ろ材4とろ過助材5を混在させて形成しているろ材層3では、被処理液がろ過助材5を通じてろ材層3内部へと通水される。特に、ろ過助材5を10%混入したろ材層3では、ろ材層3表面付近のろ材4により懸濁物質を捕捉しても、適度にろ過助材5を通じてろ材層3内部へと通水する通路が確保される。そして、ろ過助材5を通じて通水される被処理液は、ろ過助材5の下流側のろ材4により懸濁物質が捕捉される。結果的にろ材層3全体を有効に利用することになるので、ろ過面積が大きく、ろ過圧力の上昇が緩やかとなる。
なお、ろ過助材5の割合を増加させると、ろ材層3の下流側で多くの懸濁物質を捕捉することがあり、ブレイクスルー現象が発生しやすくなる。また、ろ材層3の上流から下流までろ過助材5が連結して通水路を形成する場合があり、処理液中のSS濃度が高くなることがある。
ろ材4とろ過助材5の混合比率は、被処理液の性状や処理水量、ろ過装置に応じて適宜選択してよい。ろ過圧力の上昇時間やブレイクスルー現象を考慮すれば、ろ材4とろ過助材5の混合比率は、9.5〜7.0:0.5〜3.0が望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
ろ材とろ過助材の混合比を調整することにより、被処理液の性状や処理条件に応じてろ材層の機能を最適化できるので、表層ろ過になり易い凝集ろ過や高濁度水、あるいはプール等の高清澄度が要求される特殊な用途にもろ材層全体を有効に利用できるものである。
【符号の説明】
【0033】
1 ろ過装置
3 ろ材層
4 ろ材
5 ろ過助材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不定形ろ材で構成したろ材層に被処理液を通水してろ過処理を行うろ過装置において、
懸濁物質を捕捉するろ材(4)と、懸濁物質を含む被処理液を通水させるろ過助材(5)が、混在した状態でろ材層(3)を形成している
ことを特徴とするろ過装置。
【請求項2】
前記ろ材層(3)が、
ウェーブ状のフィラメントを互いに接着して内部に多大な空隙を有し、繊維間が緻密で懸濁物質を捕捉する機能を持たせる繊維ろ材(4)と、
強度を有した繊維間が粗いろ過助材(5)を混合してろ過装置(1)を構成した
ことを特徴とする請求項1に記載のろ過装置。
【請求項3】
前記ろ過助材(5)がろ過運転中に
ろ材(4)より大きい内部空隙を有する
ことを特徴とする請求項1または2の何れか1項に記載のろ過装置。
【請求項4】
前記ろ過助材(5)の一部に繊維を立毛させて、
この繊維で懸濁物質を捕捉できるようにした
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のろ過装置。
【請求項5】
前記ろ材(4)とろ過助材(4)とをろ材層(3)に均等に混在させた
ことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のろ過装置。
【請求項6】
前記ろ過助材(5)をろ材層(3)の上流側表層に多く混在させた
ことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のろ過装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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