説明

アイアン型ゴルフクラブヘッド

【課題】ヘッド形状や重心の位置などの設計上の自由度が高く、しかも強度の高いアイアン型ゴルフクラブヘッドを提供する。
【解決手段】ホゼル部3にホゼル部埋設体7が配置され、ソール部6にソール部埋設体8が配置され、フェース部2の上部にトップ部埋設体9が配置されている。また、本体部2とホゼル部3とをつなぐシャンク部(ネック部)には、ホゼル部埋設体7とソール部埋設体8とを連結する連結用埋設体10が配置されている。これらの埋設体7〜10を合成樹脂層11が被包している。ホゼル部埋設体7及び連結用埋設体10は好ましくは金属よりなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アイアン型ゴルフクラブヘッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ゴルフクラブとしては、ドライバー、フェアウェーウッドなどのウッド、フェアウェー、ラフ、バンカーなどからのショットや、ショートホール(パー3のホール)のティーショット等に主として用いられるアイアンのほか、これらに近似した形状のユーティリティ、さらにはパターなどが用いられている。
【0003】
アイアンのヘッドとしては、ステンレススチール、炭素鋼、各種合金などでフェース部からホゼル部まで形成したものが広く用いられているが、特開2003−325710の0011段落及び図3には、フェース部を金属板にて構成し、それ以外の本体部を合成樹脂製とし、この合成樹脂製本体部のフェース面に金属製フェースプレートを嵌合したものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−325710
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
金属製のアイアンヘッドでは、ヘッド形状や重心の位置などの設計上の自由度が小さい。本体部を合成樹脂製とした特開2003−325710のヘッドでは、強度が低く、実用化することは極めて困難であると考えられる。
【0006】
本発明は、ヘッド形状や重心の位置などの設計上の自由度が高く、しかも強度の高いアイアン型ゴルフクラブヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1のアイアン型ゴルフクラブヘッドは、補強用又は重量調節用の埋設体と、該埋設体を被包する合成樹脂層とで構成されているものである。
【0008】
請求項2のアイアン型ゴルフクラブヘッドは、請求項1において、前記埋設体として、少なくとも、アイアン型ゴルフクラブヘッドのソール部に配置されたソール部埋設体と、ホゼル部に配置されたホゼル部埋設体とを備えてなり、該ホゼル部埋設体にホゼル穴が設けられていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項3のアイアン型ゴルフクラブヘッドは、請求項2において、該ソール部埋設体とホゼル部埋設体とが連結用埋設体を介して連結されていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項4のアイアン型ゴルフクラブヘッドは、請求項3において、該ソール部埋設体、ホゼル部埋設体及び連結体が金属製であることを特徴とするものである。
【0011】
請求項5のアイアン型ゴルフクラブヘッドは、請求項1ないし4のいずれか1項において、埋設体としてさらにフェース部の上部に配置されたトップ部埋設体を備えたことを特徴とするものである。
【0012】
請求項6のアイアン型ゴルフクラブヘッドは、請求項1ないし5のいずれか1項において、前記合成樹脂層の外面に金属メッキが施されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明のアイアン型ゴルフクラブヘッドは、補強用又は重量調節用の埋設体と、該埋設体を被包する合成樹脂層とを有しており、埋設体の形状、材料等を幅広く選ぶことができる。また、合成樹脂層は種々の形状のものを容易に形成することができる。このため、本発明のアイアン型ゴルフクラブヘッドは設計上の自由度が高い。
【0014】
本発明では、補強用埋設体を用いることにより、アイアン型ゴルフクラブヘッドの強度を十分に高くすることもできる。例えば、ホゼル部にホゼル穴を有したホゼル部埋設体を配置することにより、ホゼル部の強度を高くすることができる。ソール部埋設体とホゼル部埋設体とを連結体で連結することにより、ソール部からホゼル部にかけての強度を高くすることができる。
【0015】
フェース部の上部にトップ部埋設体を配置することにより、フェース部上部の補強やヘッドの慣性モーメントの調節等を行うことができる。また、ソール部埋設体として高比重材を用いることにより、アイアン型ゴルフクラブヘッドの重心を低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施の形態に係るアイアン型ゴルフクラブヘッドの斜視図である。
【図2】図1のアイアン型ゴルフクラブヘッドの内部構成図である。
【図3】図1のIII−III線断面図である。
【図4】別の実施の形態に係るアイアン型ゴルフクラブヘッドの内部構成図である。
【図5】図4のアイアン型ゴルフクラブヘッドの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1〜3を参照して第1の実施の形態について説明する。
【0018】
このアイアン型ゴルフクラブヘッド1は、ボールを打つための本体部2と、本体部2に連なるホゼル部3とを有している。ホゼル部3にはシャフトを差し込むためのホゼル穴4が設けられている。本体部2の前面がフェース面であり、多数のスコアライン(溝)5が設けられている。本体部2の下部は後方に膨出した形状のソール部6となっている。
【0019】
このアイアン型ゴルフクラブヘッド1にあっては、ホゼル部3にホゼル部埋設体7が配置され、ソール部6にソール部埋設体8が配置され、フェース部2の上部にトップ部埋設体9が配置されている。ホゼル穴4はこのホゼル部埋設体7に設けられている。また、本体部2とホゼル部3とをつなぐシャンク部(ネック部)には、ホゼル部埋設体7とソール部埋設体8とを連結する連結用埋設体10が配置されている。これらの埋設体7〜10を合成樹脂層11が被包している。合成樹脂層11は、ホゼル部埋設体7のホゼル穴4の内周面を除くすべてのヘッド外面において埋設体7〜10を被包している。
【0020】
ホゼル部埋設体7及び連結用埋設体10としてはマルエージング鋼、ステンレス鋼、炭素鋼、チタン、チタン合金、アルミニウム合金、マグネシウム合金などの金属よりなるものが好適である。ホゼル部埋設体7、ソール部埋設体8及び連結用埋設体10がすべて金属製である場合、連結用埋設体10をホゼル部埋設体7,8に対し溶接等により連結することが好ましい。連結用埋設体10は、棒状又はパイプ状のものが好ましいが、板状であってもよい。
【0021】
ソール部埋設体8としては、上記の金属のほか、タングステン、タングステン合金、銅、銅合金などの金属も用いることができる。また、セラミックスや、高比重合成樹脂なども用いることができる。高比重合成樹脂としては、タングステン、タングステン合金、銅、銅合金などの金属粉末を含んだ合成樹脂が例示される。
【0022】
トップ部埋設体9としては、チタン、チタン合金、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金などの金属のほか、繊維強化樹脂や、セラミックなども用いることができる。
【0023】
合成樹脂層11を構成する合成樹脂としては、ABS、ポリカーボネートなどが例示される。
【0024】
この合成樹脂層11の表面に金属メッキを施してもよい。金属メッキを施すことにより、合成樹脂層表面の耐候性、耐水性、耐薬品性、耐食性や耐摩耗性を高めることができる。金属メッキの金属としては、クロム、ニッケル、銅などが好適である。メッキの手法としては無電解メッキ、電気メッキなどを採用することができる。例えば、無電解ニッケルメッキを施した後、電気メッキによりニッケルメッキを施すことができる。金属メッキの付着性を高めるために、合成樹脂層の表面を粗面化してもよい。
【0025】
このアイアン型ゴルフクラブヘッド1は、埋設体7〜10と、該埋設体7〜10を被包する合成樹脂層11とを有しており、埋設体7〜10の形状、材料等を幅広く選ぶことができる。また、合成樹脂層11は種々の形状のものを射出成形により容易に形成することができる。このため、このヘッド1は設計上の自由度が高い。また、ホゼル部埋設体7及び連結用埋設体10を用いることにより、ホゼル部3及びシャンク部の強度を十分に高くすることもできる。また、ソール部埋設体8として高比重材を用いることにより、ヘッド1の重心を低くすることができる。フェース部2の上部にトップ部埋設体9を配置しているので、フェース部2の上部の補強や、ヘッド1の慣性モーメントの調節等を行うことができる。
【0026】
本発明のアイアン型ゴルフクラブヘッドは、埋設体7〜10を金型内に配置しておき、合成樹脂を射出して合成樹脂層11を形成し、その後、必要に応じメッキ処理することにより容易に製造することができる。このアイアン型ゴルフクラブヘッド1の製造は、鋳造や鍛造による従来のアイアンヘッドの製造に比べて容易である。
【0027】
このアイアン型ゴルフクラブヘッド1のホゼル穴4にシャフトを差し込み、接着剤で固定することにより、アイアン型ゴルフクラブが構成される。
【0028】
上記のアイアン型ゴルフクラブヘッド1では、トップ部埋設体9とソール部埋設体8とが若干離隔しているが、本発明では、図4,5に示す第2の実施の形態に係るアイアン型ゴルフクラブヘッド1Aのように、トップ部埋設体9とソール部埋設体8とを接着剤等によって連結して一体化してもよい。この実施の形態では、ソール部埋設体8の上部フェース面側に凹段部が設けられ、トップ部埋設体9の下部が延長され、この凹段部に係合している。そして、ソール部埋設体8とトップ部埋設体9との前面が面一状となっている。
【0029】
図示のアイアン型ゴルフクラブヘッド1,1Aは、従来のアイアンヘッドと同一外観構成のものであるが、本発明はアイアンヘッドに近似した外観形状のアイアン型ユーティリティヘッドにも適用することができる。
【符号の説明】
【0030】
1,1A アイアン型ゴルフクラブヘッド
2 本体部
3 ホゼル部
4 ホゼル穴
6 ソール部
7 ホゼル部埋設体
8 ソール部埋設体
9 トップ部埋設体
10 連結用埋設体
11 合成樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
補強用又は重量調節用の埋設体と、該埋設体を被包する合成樹脂層とで構成されているアイアン型ゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
請求項1において、前記埋設体として、少なくとも、アイアン型ゴルフクラブヘッドのソール部に配置されたソール部埋設体と、ホゼル部に配置されたホゼル部埋設体とを備えてなり、該ホゼル部埋設体にホゼル穴が設けられていることを特徴とするアイアン型ゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
請求項2において、該ソール部埋設体とホゼル部埋設体とが連結用埋設体を介して連結されていることを特徴とするアイアン型ゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
請求項3において、該ソール部埋設体、ホゼル部埋設体及び連結体が金属製であることを特徴とするアイアン型ゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、埋設体としてさらにフェース部の上部に配置されたトップ部埋設体を備えたことを特徴とするアイアン型ゴルフクラブヘッド。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項において、前記合成樹脂層の外面に金属メッキが施されていることを特徴とするアイアン型ゴルフクラブヘッド。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−147950(P2012−147950A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8994(P2011−8994)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(592014104)ブリヂストンスポーツ株式会社 (652)
【Fターム(参考)】