説明

アイソレータ用インキュベータ

【課題】インキュベータの培養室内及びガス供給用配管やサンプリング用配管内まで確実に滅菌することができるアイソレータ用インキュベータを提供する。
【解決手段】アイソレータ40用インキュベータ1は、培養室4内の培養用ガスの濃度制御を行うために当該培養室4内に連通して設けられたガス濃度制御用配管16と、培養室4内からガス濃度制御用配管16に渡って滅菌ガスを循環させるための滅菌ガス循環用配管26と、この滅菌ガス循環用配管26に設けられた循環用ポンプ24とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アイソレータのチャンバー内に連結されるインキュベータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、無菌状態を維持したままで人体または動物などの生物から採取した細胞(細菌などを含む)や、微生物の培養が行われる、所謂微生物学的にコントロールされた環境のアイソレータが使用されている。該アイソレータは、無菌箱や無菌操作箱(グローブボックス)を直列に複数台接続して使用することで、無菌状態下で細胞や微生物を培養することができるように構成されている。そして、アイソレータのチャンバー内ではグローブまたは類似の滅菌アクセスデバイスを介して、オペレーターによって細胞や微生物の培養実験などの作業が行われていた(特許文献1参照)。
【0003】
また、アイソレータのチャンバー内で培養作業が行われた細胞や微生物に培養液を加える等の作業が行われた後、細胞や微生物はこれもまた無菌箱にて構成されたインキュベータ(培養庫)の培養室内に入れられて培養されている(特許文献2参照)。係るインキュベータの培養室内では、一般的に培養液のpH調整用として二酸化炭素ガス(CO2)、低酸素培養から高酸素培養を行う場合には窒素ガス/酸素ガス(N2/O2)が、それぞれインキュベータの培養室内に連通するガス供給用配管から供給されることにより、無菌状態下で細胞や微生物の培養が行えるようになっていた。
【0004】
係るアイソレータのチャンバー内は、細胞操作の作業を行わないときに雑菌を除去する必要がある。即ち、アイソレータで培養実験する細胞や微生物を変更する際、雑菌の侵入があったり、以前の培養実験で使用した細胞や微生物がチャンバー内に残留していると、次に培養実験する細胞や微生物にその影響が出て、良好な実験結果が得られない不都合が発生する。そこで、アイソレータに過酸化水素ガス(H2O2)などの滅菌ガス発生装置を備え、この滅菌ガス発生装置からチャンバー内に滅菌ガスを供給し、充満させてチャンバー内を滅菌する滅菌作業が行われていた。尚、インキュベータの培養室内は、滅菌液で拭き取ることにより滅菌していた。
【0005】
一方、前者のアイソレータに後者のインキュベータが連結されると共に、ガス供給用配管やサンプリング用配管などが設けられた培養装置も使用されている。この培養装置内に侵入した雑菌や前回培養した細胞や微生物が残っていると、次の培養実験結果に影響が出て、良好な培養実験結果が得られなくなってしまう。このため、培養装置では、滅菌ガスをアイソレータのチャンバー内からインキュベータの培養室内に自然循環させることにより滅菌していた。
【特許文献1】特表2001−518816号公報
【特許文献2】特開2005−118021号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、アイソレータのチャンバー内からインキュベータの培養室内に滅菌ガスを自然循環させた場合、箱形に形成された培養室内の隅部はどうしてもガスの流れが悪く、滅菌ガスが循環し難かった。このため、インキュベータの培養室内全体を完全に滅菌することができないと言う問題があった。
【0007】
また、自然循環による滅菌ガスは、特にインキュベータの培養室内に二酸化炭素などの培養ガスを供給するガス供給用配管やサンプリング用配管内には自然循環されない。このため、やはり二酸化炭素などの培養ガスを供給するガス供給用配管やサンプリング用配管内も滅菌することができないと言う問題があった。
【0008】
本発明は、係る従来技術の課題を解決するために成されたものであり、インキュベータの培養室内及びガス供給用配管やサンプリング用配管内まで確実に滅菌することができるアイソレータ用インキュベータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち、本発明のアイソレータ用インキュベータは、アイソレータのチャンバー内に連結されるものであって、培養室内の培養用ガスの濃度制御を行うために当該培養室内に連通して設けられたガス濃度制御用配管と、培養室内からガス濃度制御用配管に渡って滅菌ガスを循環させるための滅菌ガス循環用配管と、該滅菌ガス循環用配管に設けられた循環用ポンプとを備えたことを特徴とする。
【0010】
また、請求項2の発明のアイソレータ用インキュベータは、上記に加えて、循環用ポンプより滅菌ガスの下流側に位置するガス濃度制御用配管に設けられたフィルタを備えたことを特徴とする。
【0011】
また、請求項3の発明のアイソレータ用インキュベータは、請求項1又は請求項2に加えて、循環用ポンプを運転する滅菌モードを有する制御装置と、培養室内において培養用ガスを循環させるための送風機とを備え、制御装置は、滅菌モードにおいて送風機を運転することを特徴とする。
【0012】
また、請求項4の発明のアイソレータ用インキュベータは、請求項3に加えて、循環用ポンプより滅菌ガスの下流側に位置して、複数種類の培養用ガスを培養室内にそれぞれ供給するための複数のガス濃度制御用配管を備え、制御装置は、循環用ポンプより吐出された滅菌ガスを各ガス濃度制御用配管に交互に流入させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、アイソレータのチャンバー内に連結されるインキュベータにおいて、培養室内の培養用ガスの濃度制御を行うために当該培養室内に連通して設けられたガス濃度制御用配管と、培養室内からガス濃度制御用配管に渡って滅菌ガスを循環させるための滅菌ガス循環用配管と、この滅菌ガス循環用配管に設けられた循環用ポンプとを備えているので、アイソレータ内を滅菌ガスで滅菌する際、インキュベータの培養室内をアイソレータのチャンバー内に連通させた状態で、循環用ポンプを運転することにより、滅菌ガスを培養室内からガス濃度制御用配管に渡って循環させることができるようになる。これにより、アイソレータのチャンバー内の滅菌作業にあわせ、培養室内に加えてガス濃度制御用配管まで滅菌ガスで滅菌することができるようになるものである。
【0014】
請求項2の発明では上記発明に加えて、循環用ポンプより滅菌ガスの下流側に位置するガス濃度制御用配管に設けられたフィルタを備えているので、循環用ポンプにて発生した異物はこのフィルタで吸着除去される。これにより、係る異物が培養室内に侵入する不都合を未然に回避することができるようになる。
【0015】
請求項3の発明では上記各発明に加えて、循環用ポンプを運転する滅菌モードを有する制御装置を備えているので、アイソレータの滅菌作業にあわせてインキュベータを滅菌モードとすることで、容易に培養室内及びガス濃度制御用配管の滅菌を行うことができるようになる。特に、培養室内において培養用ガスを循環させるための送風機を、この滅菌モードにおいて運転するようにしているので、アイソレータのチャンバー内に充満する滅菌ガスを培養室の隅々まで行き渡らせることができるようになるものである。
【0016】
請求項4の発明では、上記発明に加えて循環用ポンプより滅菌ガスの下流側に位置して、複数種類の培養用ガスを培養室内にそれぞれ供給するための複数のガス濃度制御用配管を備えている場合、循環用ポンプより吐出された滅菌ガスを各ガス濃度制御用配管に交互に流入させるようにしたので、各ガス濃度制御用配管に同時に流入する場合の如く、何れか一方の配管に滅菌ガスの循環が偏る不都合も未然に回避することができるようになるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、インキュベータの培養室内及びガス濃度制御用配管内を確実に滅菌するため、滅菌ガス循環用ポンプと、培養室内において滅菌モードにて培養用ガスを循環させるための送風機を運転することを最も主要な特徴とする。インキュベータの培養室内とガス濃度制御用配管内を確実に滅菌するという目的を、滅菌ガス循環用ポンプを設け滅菌モードで送風機を運転するだけの簡単な構成で実現した。
【実施例1】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の一実施例を示すアイソレータ40用インキュベータ1(培養室4)の断面概略図、図2は本発明のアイソレータ40用インキュベータ1(断熱扉7を開いた状態)の斜視図 、図3は本発明のアイソレータ40用インキュベータ1(断熱扉7を閉じた状態)の斜視図をそれぞれ示している。
【0019】
アイソレータ40用インキュベータ1は、所謂マルチガスインキュベータで、図1に示すように、アイソレータ40の側面に取り付けられて使用される。該インキュベータ1は、無菌状態を維持したまま人体または動物などの生物から採取した細胞(細菌などを含む)や微生物の培養が行われる。
【0020】
このアイソレータ40のチャンバー42内では、オペレーターによってグローブまたは類似の滅菌アクセスデバイスを介して、細胞や微生物の培養実験などが行われる。アイソレータ40のチャンバー42内には、配管を介して滅菌ガス供給装置(図示せず)が接続されており、アイソレータ40のチャンバー42内は、この滅菌ガス供給装置から滅菌ガスとして過酸化水素ガス(H22)が供給されることにより、チャンバー42内が滅菌できるように構成されている。
【0021】
該インキュベータ1は、図示しないが断熱箱と、この断熱箱内側に設けられた金属製の内箱とから成る断熱箱本体2と、この断熱箱本体2内に構成された培養室4の開口2Aを、アイソレータ40のチャンバー42内から開閉自在に閉塞する断熱扉7とから構成されている。断熱箱本体2には、取付枠10が断熱扉7近傍に位置して設けられており、この取付枠10は断熱箱本体2より所定寸法突出して設けられると共に、断熱箱本体2の全周囲に設けられている。
【0022】
該取付枠10は、インキュベータ1の断熱扉7がアイソレータ40のチャンバー42内に位置した状態で、アイソレータ40の取付枠孔(図示せず)内に合致するように構成されている。尚、アイソレータ40の取付枠孔内にインキュベータ1の取付枠10が取り付けられた状態で、取付枠10の周囲と、取付枠孔とはシール部材(図示せず)でシールされ、アイソレータ40のチャンバー42内は密封される。
【0023】
また、インキュベータ1は、図2、図3に示すように、断熱箱本体2の開口2Aを開閉自在に閉塞する透明扉3(内扉)が設けられており、その外側に位置して断熱扉7が設けられている。この断熱扉7は、培養室4の開口2Aからの熱進入を防止する外扉で、右側がヒンジによって断熱箱本体2に開閉自在に支持され、その裏面周囲には磁石入りのガスケット8が設けられている。
【0024】
透明扉3は、その右側がヒンジにより断熱箱本体2に開閉自在に支持されており、培養室4の開口2A部分に設けられたガスケット2Bによって気密的に開口2Aを閉塞している。そして、培養室4は、開口2Aが断熱扉7で閉塞された断熱箱本体2内の空間に形成されている。この培養室4内には、アイソレータ40のチャンバー42内から断熱扉7と透明扉3とを開いて培養物を出し入れする。
【0025】
培養室4内の上部には、培養室4内の培養用ガスを強制循環させるための送風機14が配置されている。この培養室4には、図示しないが背面及び底面にそれぞれダクトが形成されている。そして、送風機14によってダクトに連通する背面上部に吸込口から培養室4内の培養ガスが吸い込まれると共に、ダクトに連通し底面前部及び側面に形成された吹出口から培養室4内に吹き出される。これによって培養ガスの強制循環が行われる(図1実線矢印)。
【0026】
断熱箱本体2の側面(培養室4外側の側面)には、電源スイッチ12や、手動コックA、電磁弁B、C、D、E(図4に図示)などが配設された機械室11が設けられている。機械室11内には、送風機14の駆動や、培養室4内に窒素ガスや酸素ガス等の供給ガスを供給するためのガス濃度制御用配管16、及び図示しない制御基板や、電装部品を配置するための基板などが設けられている。
【0027】
また、機械室11内には、送風機14や、手動コックA、電磁弁B、C、Dなどが設けられている。該送風機14は、図示しないファンとモータと軸とで構成されており、モータは機械室11内に配置され、軸はこの機械室11のモータから断熱箱本体2の側面を貫通してファンに接続されている。
【0028】
また、アイソレータ40のチャンバー42外に位置するインキュベータ1の外面には操作パネル13が設けられており、操作パネル13は外部から操作可能とされている。また、操作パネル13には、図示しないが通常モード運転、滅菌モード運転などを行う複数の操作ボタン13Aが設けられている。操作パネル13の内側には、汎用マイクロコンピュータ(マイコン)にて構成されると共に、種々のデータを記憶可能な記憶部(メモリ)を備えた制御装置20(図3点線)が設けられている。
【0029】
該制御装置20は、断熱箱本体2と内箱間に設けられた図示しないヒータや、送風機14を制御して培養室4内を培養に適した温度に維持する。培養室4内に設けたガス濃度測定用センサにて検出された培養室4内のガス濃度により、制御装置20は、電磁弁B、C、D、E(図4に図示)の開閉制御を行う。尚、制御装置20による電磁弁B、C、D、Eの開閉制御については後で詳しく説明する。
【0030】
前記、断熱箱本体2の開口2Aは、アイソレータ40側に向けて開口しており、断熱扉7はアイソレータ40のチャンバー42内に面して、チャンバー42内側から断熱扉7を開放することで、培養室4内はチャンバー42内に連通する。この状態で、培養室4内で培養される細胞をチャンバー42内に取り出し、また、チャンバー42内で操作された細胞を再び培養室4内に戻す作業が成される。尚、これらは全てチャンバー42に取り付けられたグローブを介して作業されることは言うまでもない。
【0031】
インキュベータ1は、図4に示すように、サンプリング用のガスを採取するためのサンプリングポート(サンプリング用配管15)が設けられており、このサンプリング用配管15は、インキュベータ1の培養室4内に連通している。また、二酸化炭素ガス(CO2)を供給する第1ガス供給用配管17と、窒素ガス/酸素ガスを供給する第2ガス供給用配管18とからなるガス濃度制御用配管16が、インキュベータ1の培養室4に連通して設けられている。尚、第1ガス供給用配管17の端部には二酸化炭素ガス供給装置(図示せず)、第2ガス供給用配管18の端部には窒素ガス/酸素ガス供給装置(図示せず)が接続されている。
【0032】
サンプリング用配管15には、培養室4内から当該培養室4内の培養用ガスに含まれる薬品或いは微生物や細菌等の危険な試料などを除去して略100%の清浄度を得ることができるフィルタ22Aを介して、手動式の手動コックAが接続されている。そして、手動コックAがオペレーターにより開閉操作されることにより、サンプリング用配管15から培養室4内のガスを採取して、濃度や成分などを調べられるように構成されている。
【0033】
第1ガス供給用配管17もサンプリング用配管15同様、培養室4内からフィルタ22C、電磁弁D、フィルタ22Dを介して、図示しない二酸化炭素ガス供給装置内に接続されている。そして、制御装置20により電磁弁Dの開度が制御されて二酸化炭素ガス供給装置から培養室4内に所定量の二酸化炭素ガスが供給される。
【0034】
第2ガス供給用配管18もサンプリング用配管15同様、培養室4内からフィルタ22B、電磁弁E、フィルタ22Eを介して、図示しない窒素ガス/酸素ガス供給装置に接続されている。そして、制御装置20により、電磁弁Eの開度が制御されて窒素ガス/酸素ガス供給装置から培養室4内に所定量の窒素ガス/酸素ガスが供給される。尚、フィルタ22A、D、Eは、培養室4から細胞が外部に漏出しないようにするための高性能なHEPAフィルタにて構成されている。
【0035】
即ち、制御装置20は、電磁弁Dの開閉を制御(開弁)して第1ガス供給用配管17から培養室4内に所定量の二酸化炭素ガスを供給する。また、制御装置20は、電磁弁Eの開閉制御して、第2ガス供給用配管18から培養室4内に所定量の窒素ガス/酸素ガスを供給する。これによって、培養室4内に所定の細胞培養用のガス環境(ガス濃度)を作り出す。
【0036】
一方、サンプリング用配管15からガス濃度制御用配管16に渡って滅菌ガス循環用配管26が設けられている。即ち、サンプリング用配管15から第1ガス供給用配管17と第2ガス供給用配管18に渡って滅菌ガス循環用配管26が設けられている。詳しくは、滅菌ガス循環用配管26に循環用ポンプ24が設けられ、この循環用ポンプ24の下流側が分岐して、それぞれ第1ガス供給用配管17と第2ガス供給用配管18に接続されている。
【0037】
該循環用ポンプ24と第1ガス供給用配管17との間には電磁弁Cが設けられ、循環用ポンプ24と第2ガス供給用配管18との間には電磁弁Bが設けられている。即ち、滅菌ガス循環用配管26は、インキュベータ1とフィルタ22Aとの間から循環用ポンプ24を介して分岐した分岐管25(25A、25B)が設けられている。一方の分岐管25Aは、電磁弁Cを介して第1ガス供給用配管17の電磁弁Dとフィルタ22C間に接続され、他方の分岐管25Bは電磁弁Bを介して第2ガス供給用配管18の電磁弁Eとフィルタ22B間に接続されている。尚、滅菌ガス循環用配管26と分岐管25は同じ配管である。
【0038】
係る循環用ポンプ24にて発生した塵などの異物はこれらのフィルタ22B、22Cで吸着除去される。これにより、係る異物が培養室4内に侵入する不都合を未然に回避することができるようになっている。尚、サンプリング用配管15と滅菌ガス循環用配管26との接続部より上流側にフィルタ22Aを設けても良いが、そこにフィルタ22Aを設けると、培養室4から吸引された滅菌ガスも吸着されてしまう可能性があり、滅菌効果が阻害されてしまうので、下流側に設けている。
【0039】
他方、前記制御装置20は図5に示す如きインキュベータ1の通常モード、サンプリングモード、滅菌モードなどのプログラムを有し、これらはマイコンのメモリに記憶格納されて実行されるように構成されている。そして、インキュベータ1の通常モード時に、制御装置20は電磁弁B、Cを閉じて、電磁弁D、Eを開閉制御すると共に、循環用ポンプ24をOFF(運転停止)にする。
【0040】
また、サンプリングモードでは、制御装置20は電磁弁B、Cを閉じて、電磁弁D、Eを開閉制御すると共に、循環用ポンプ24をOFFにする。更に、滅菌モードでは、制御装置20は電磁弁B、Cを開/閉、及び、閉/開制御すると共に、電磁弁D、Eを閉じ、循環用ポンプ24をON(運転)にする。係る滅菌モードでは、制御装置20は電磁弁B、Cを交互に開閉する。
【0041】
次に、インキュベータ1の通常モードとサンプリングモードと滅菌モードの具体的な説明を行う。尚、インキュベータ1の断熱扉7及び手動コックAは閉じられているものとする。まず、図4を参照してインキュベータ1の通常モードの説明を行う。インキュベータ1を通常モードで運転する場合、オペレーターにより操作パネル13の操作スイッチ13A(この場合、通常モード運転用スイッチ)が押されると、制御装置20は電磁弁B、Cを閉じて、電磁弁D、Eを開閉制御すると共に、循環用ポンプ24をOFFにして、送風機14の運転を行う。
【0042】
即ち、制御装置20が電磁弁D、Eの開閉制御を行うことにより二酸化炭素ガス供給装置から第1ガス供給用配管17を介して所定量の二酸化炭素ガスがインキュベータ1の培養室4内に供給されると共に、窒素ガス/酸素ガス供給装置から第2ガス供給用配管18を介して所定量の窒素ガス/酸素ガスがインキュベータ1の培養室4内に供給される(図4実線矢印)。これにより、インキュベータ1の培養室4内に所定量の細胞培養用のガスが供給される。
【0043】
そして、制御装置20は、濃度検出装置の検出値に基づいて、培養室4内の各ガスの濃度が予め設定された所定の濃度に至っていない場合、各第1ガス供給用配管17と第2ガス供給用配管18に設けられた電磁弁D、Eの開閉制御を行い、インキュベータ1の培養室4内に所定量の二酸化炭素ガス及び窒素ガス/酸素ガスを供給する。このようにして制御装置20は、培養室4内のガス濃度を制御し、培養室4内に所定の細胞培養用のガス環境(ガス濃度)を作り出す。
【0044】
次に、図6を参照してインキュベータ1のサンプリングモードの説明を行う。尚、サンプリングモードは、制御装置20が通常モード運転の状態で実行される。即ち、インキュベータ1の運転が通常モードの時、オペレーターにより手動コックAが開かれる。これにより、サンプリング用配管15から培養室4内のガスが取り出され(図6実線矢印)、培養室4内のガスの濃度や成分分析が行われる。これによって、培養室4内のガス環境を管理している。
【0045】
次に、図7を参照してインキュベータ1の滅菌モード運転の説明を行う。尚、インキュベータ1の培養室4内の滅菌は、アイソレータ40のチャンバー42内を滅菌するとき同時に実行するものとする。また、培養室4内を滅菌する時は、オペレーターにより予めアイソレータ40のチャンバー42内からインキュベータ1の断熱扉7及び透明扉3が開かれ、手動コックAは閉じられる。また、図7ではインキュベータ1の断熱扉7及び透明扉3を図示していない。
【0046】
係るインキュベータ1の滅菌モード運転を行う場合、アイソレータ40のチャンバー42内に滅菌ガス(過酸化水素ガス)が供給され、チャンバー42内が滅菌されているときに、オペレーターにより操作パネル13の操作スイッチ13A(この場合、滅菌モード運転用スイッチ)が押される。滅菌モード運転用スイッチが押されると、制御装置20は電磁弁B、Cを開閉制御、電磁弁D、Eを閉じると共に、循環用ポンプ24をONにして、送風機14を運転する。
【0047】
そして、送風機14の運転により、アイソレータ40のチャンバー42内の滅菌ガスは培養室4の開口2A上部から背面上部の吸込口に吸引され、吸引された滅菌ガスは底面前部及び側面に形成された吹出口から吹き出される。これによって、アイソレータ40のチャンバー42内の滅菌ガスは培養室4内に強制循環されると共に、図7に点線矢印で示すように培養室4内の隅部まで行き渡り、培養室4内全体が完全に滅菌される。
【0048】
また、制御装置20により循環用ポンプ24が運転されることにより、培養室4内の滅菌ガスは、サンプリング用配管15に吸い込まれ、分岐管25に流入する。このとき、制御装置20は、電磁弁B、Cを所定の時間間隔で交互に開閉制御(この場合、電磁弁Bを開いた時は電磁弁Cを閉じ、電磁弁Bを閉じた時は電磁弁Cを開く)する。即ち、制御装置20は、分岐管25に設けた電磁弁B、Cを交互に開いて(この場合、両方の電磁弁B、Cを同時には開かず、何れか一方のみ開いて、これを所定時間毎に切り換えて繰り返す)、下流側の各ガス濃度制御用配管16(第1、第2ガス供給用配管17、18)に交互に滅菌ガスを循環させる。尚、両方の電磁弁B、Cを所定時間同時に開いた後、何れか一方の電磁弁B或いは電磁弁Cを開いて、これを所定時間毎に切り換えて繰り返すようにしても差し支えない。この場合、両電磁弁B、Cが同時に閉じることがないので、循環用ポンプ24の負荷が少なくなる。これにより、循環用ポンプ24の耐久性を延ばすことができ便利である。
【0049】
尚、各ガス濃度制御用配管16(第1、第2ガス供給用配管17、18)に同時に滅菌ガスを循環させた場合、フィルタ22B或いはフィルタ22Cの内のどちらか一方のフィルタ抵抗が大きいと、抵抗が小さい方のフィルタに殆どの滅菌ガスが流れてしまい、抵抗が大きい方の配管内の滅菌効果が低下してしまう。このため、交互に第1、第2ガス供給用配管17、18内に滅菌ガスを循環させている。
【0050】
そして、培養室4内からサンプリング用配管15を介して分岐管25に流入した滅菌ガスは、一方の分岐管25Aに流入し、開いている電磁弁C(このとき電磁弁Bは閉じている)、第1ガス供給用配管17、フィルタ22Cを介して培養室4内に循環(図7点線矢印)する。そして、所定時間経過すると、制御装置20は電磁弁Cを閉じ、電磁弁Bを開く。
【0051】
制御装置20により電磁弁Bが開かれて、培養室4からサンプリング用配管15を介して分岐管25に流入した滅菌ガスは、他方の分岐管25Bに流入し、開いている電磁弁B(このとき電磁弁Cは閉じている)、第2ガス供給用配管18、フィルタ22Bを介して培養室4内に循環(図7点線矢印)し、これが所定時間間隔で交互に行われる。これにより、循環用ポンプ24の上流側のサンプリング用配管15には常に滅菌ガスが循環される。従って、滅菌ガス循環用配管26との接続点より上流側(培養室4側)のサンプリング用配管15と、接続点より下流側(培養室4側)の分岐管25B及び各ガス濃度制御用配管16内は滅菌ガスによって滅菌される。
【0052】
このように、アイソレータ40内を滅菌ガスで滅菌する際、インキュベータ1の断熱扉7を開いて培養室4内をアイソレータ40のチャンバー42内に連通させた状態で、循環用ポンプ24を運転することにより、滅菌ガスを培養室4内からガス濃度制御用配管16(第1、第2ガス供給用配管17、18)に渡って循環させることができる。これにより、アイソレータ40のチャンバー42内の滅菌作業にあわせ、培養室4内に加えてガス濃度制御用配管16まで滅菌ガスで滅菌することができる。
【0053】
また、循環用ポンプ24より滅菌ガスの下流側に位置する第1、第2ガス供給用配管17、18にそれぞれフィルタ22C、22Bを設けているので、循環用ポンプ24にて発生した異物(この場合、循環用ポンプ24の駆動により摩耗して発生した異物や、循環用ポンプ24の製造時の異物など)はこのフィルタ22C、22Bで吸着除去することができる。これにより、係る異物が培養室4内に侵入する不都合を未然に回避することができる。また、フィルタ22C、22Bは循環用ポンプ24の下流側に位置しているので、フィルタ22C、22Bが滅菌ガスの循環を阻害する不都合も解消若しくは抑制することができる。
【0054】
また、制御装置20に循環用ポンプ24を運転する滅菌モードを備えているので、アイソレータ40の滅菌作業にあわせてインキュベータ1を滅菌モードとすることで、容易に培養室4内及びガス濃度制御用配管16の滅菌を行うことができる。特に、滅菌モードにおいて、制御装置20は、培養室4内で培養用ガスを循環させるための送風機14を運転するようにしているので、アイソレータ40のチャンバー42内に充満する滅菌ガスを培養室4の隅々まで行き渡らせることができて、培養室4内隅部まで確実に滅菌することが可能となる。
【0055】
また、循環用ポンプ24より吐出された滅菌ガスを、循環用ポンプ24より滅菌ガスの下流側に位置する各ガス濃度制御用配管16(第1、第2ガス供給用配管17、18)に交互に流入させるようにしているので、滅菌ガスが第1、第2ガス供給用配管17、18に同時に流入する場合の如く、何れか一方の配管に滅菌ガスの循環が偏る不都合も未然に回避することができる。これにより、第1、第2ガス供給用配管17、18内を確実に滅菌することが可能となる。
【実施例2】
【0056】
次に、図8には本発明の他の実施例のアイソレータ40用インキュベータ1の配管接続図を示している。該アイソレータ40用インキュベータ1は、前述の実施例と略同じ構成を有している。以下、異なる部分について説明する。尚、前述の実施例と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、説明を省略する。アイソレータ40用インキュベータ1は、図8に示すように、実施例1に対してガス濃度制御用配管16においては、第1ガス供給用配管17だけ使用(第2ガス供給用配管18は削除)している。尚、実施例2では、実施例1で第2ガス供給用配管18に付随して設けている電磁弁B、E及びフィルタ22B、22Eも削除している。
【0057】
即ち、アイソレータ40用インキュベータ1は、サンプリング用配管15(サンプリングポート)と、ガス濃度制御用配管16(第1ガス供給用配管17)が、インキュベータ1の培養室4内に接続されると共に、連通して設けられている。分岐管25は、インキュベータ1とフィルタ22Aとの間から循環用ポンプ24、電磁弁Cを介して第1ガス供給用配管17の電磁弁Dとフィルタ22C間に接続されている。
【0058】
そして、制御装置20は図9に示す如くインキュベータ1の通常モード、サンプリングモード、滅菌モードなどのプログラムを有し、これらはマイコンのメモリに記憶格納されて実行される。係るインキュベータ1の通常モード時に、制御装置20は電磁弁Cを閉じて、電磁弁Dを開閉制御すると共に、循環用ポンプ24をOFFにする。また、サンプリングモード時に、制御装置20は電磁弁Cを閉じて、電磁弁Dを開閉制御すると共に、循環用ポンプ24をOFFにする。更に、滅菌モード時に、制御装置20は電磁弁Cを開いて、電磁弁Dを閉じると共に、循環用ポンプ24をONにする。
【0059】
次に、インキュベータ1の通常モードとサンプリングモードと滅菌モードの具体的な説明を行う。尚、インキュベータ1の断熱扉7及び手動コックAは閉じられているものとする。まず、図8を参照してインキュベータ1の通常モードの説明を行う。インキュベータ1を通常モードで運転する場合、オペレーターにより操作パネル13の操作スイッチ13A(この場合、通常モード運転用スイッチ)が押されると、制御装置20は電磁弁Cを閉じて、電磁弁Dを開閉制御すると共に、循環用ポンプ24をOFFにして、送風機14の運転を行う。
【0060】
即ち、制御装置20が電磁弁Dの開閉制御を行うことにより二酸化炭素ガス供給装置から第1ガス供給用配管17を介して所定量の二酸化炭素ガスがインキュベータ1の培養室4内に供給される(図8実線矢印)。これにより、インキュベータ1の培養室4内に所定の細胞培養用のガスが供給される。
【0061】
そして、制御装置20は、濃度検出装置の検出値に基づいて、培養室4内の各ガスの濃度が予め設定された所定の濃度に至っていない場合、第1ガス供給用配管17に設けられた電磁弁Dの開閉制御を行い、インキュベータ1の培養室4内に所定量の二酸化炭素ガスを供給する。このようにして制御装置20は、培養室4内のガス濃度を制御し、培養室4内に所定の細胞培養用のガス環境(ガス濃度)を作り出す。
【0062】
次に、図10を参照してインキュベータ1のサンプリングモードの説明を行う。尚、サンプリングモードは、制御装置20が通常モード運転の状態で実行される。即ち、インキュベータ1の運転が通常モードの時、オペレーターにより手動コックAが開かれる。これにより、サンプリング用配管15から培養室4内のガスが取り出され(図10実線矢印)、培養室4内のガスの濃度分析や成分分析などが行われる。これによって、培養室4内のガス環境を管理している。
【0063】
次に、図11を参照してインキュベータ1の滅菌モード運転の説明を行う。尚、インキュベータ1の培養室4内の滅菌は、前述同様アイソレータ40のチャンバー42内を滅菌するとき同時に実行されるものとする。また、培養室4内を滅菌する時は、オペレーターにより予めアイソレータ40のチャンバー42内からインキュベータ1の断熱扉7及び透明扉3が開かれ、手動コックAは閉じられる。また、図11ではインキュベータ1の断熱扉7及び透明扉3を図示していない。
【0064】
係るインキュベータ1の滅菌モード運転は、アイソレータ40のチャンバー42内に滅菌ガス(過酸化水素ガス)が供給され、チャンバー42内が滅菌されているときに、オペレーターにより操作パネル13の操作スイッチ13A(この場合、滅菌モード運転用スイッチ)が押される。滅菌モード運転用スイッチが押されると、制御装置20は電磁弁Cを開いて、電磁弁Dを閉じると共に、循環用ポンプ24をONにして、送風機14を運転する。そして、送風機14の運転により、アイソレータ40のチャンバー42内の滅菌ガスは、図11に点線矢印で示すように培養室4内に強制循環され、培養室4内全体(隅部を含む)が完全に滅菌される。
【0065】
また、制御装置20により循環用ポンプ24が運転されることにより、培養室4内の滅菌ガスは、サンプリング用配管15に吸い込まれ、分岐管25に流入する。分岐管25に流入した滅菌ガスは循環用ポンプ24、電磁弁C(このとき電磁弁Dは閉じている)、第1ガス供給用配管17、フィルタ22Cを介して培養室4内に循環(図11点線矢印)する。
【0066】
これにより、循環用ポンプ24の上流側のサンプリング用配管15には常に滅菌ガスが循環される。従って、分岐管25との接続点より上流側(培養室4側)のサンプリング用配管15と、接続点より下流側(培養室4側)の分岐管25B及び各ガス濃度制御用配管16内は滅菌ガスによって滅菌される。
【0067】
このように、アイソレータ40内を滅菌ガスで滅菌する際、インキュベータ1の断熱扉7及び透明扉3を開いて培養室4内をアイソレータ40のチャンバー42内に連通させた状態で、循環用ポンプ24を運転することにより、滅菌ガスを培養室4内からガス濃度制御用配管16(第1ガス供給用配管17)に渡って循環させることができる。これにより、実施例1同様アイソレータ40のチャンバー42内の滅菌作業にあわせ、培養室4内に加えてガス濃度制御用配管16まで滅菌ガスで滅菌することができる。
【0068】
尚、本発明は、上記各実施例のみに限定されるものではなく、この発明の範囲を逸脱することなく他の様々な変更を行っても本発明は有効である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の一実施例を示すアイソレータ用インキュベータの断面概略図である(実施例1)。
【図2】本発明のアイソレータ用インキュベータ(断熱扉を開いた状態)の斜視図である。
【図3】本発明のアイソレータ用インキュベータ(断熱扉を閉じた状態)の斜視図である。
【図4】本発明のアイソレータ用インキュベータの配管図(通常モード)である。
【図5】アイソレータ用インキュベータの運転仕様図である。
【図6】本発明のアイソレータ用インキュベータの配管図(サンプリングモード)である。
【図7】本発明のアイソレータ用インキュベータの配管図(滅菌モード)である。
【図8】本発明の他の実施例のアイソレータ用インキュベータの配管図(通常モード)である(実施例2)。
【図9】アイソレータ用インキュベータの運転仕様図である。
【図10】本発明のアイソレータ用インキュベータの配管図(サンプリングモード)である。
【図11】本発明のアイソレータ用インキュベータの配管図(滅菌モード)である。
【符号の説明】
【0070】
1 インキュベータ
2 断熱箱本体
2A 開口
4 培養室
7 断熱扉(外扉)
10 取付枠
11 機械室
12 電源スイッチ
13 操作パネル
13A 操作ボタン
14 送風機
15 サンプリング用配管
16 ガス濃度制御用配管
17 第1ガス供給用配管
18 第2ガス供給用配管
20 制御装置
22A フィルタ
22B フィルタ
22C フィルタ
22D フィルタ
22E フィルタ
24 循環用ポンプ
25 分岐管
26 滅菌ガス循環用配管
40 アイソレータ
42 チャンバー
A 手動コック
B 電磁弁
C 電磁弁
D 電磁弁
E 電磁弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アイソレータのチャンバー内に連結されるインキュベータであって、
培養室内の培養用ガスの濃度制御を行うために当該培養室内に連通して設けられたガス濃度制御用配管と、
前記培養室内から前記ガス濃度制御用配管に渡って滅菌ガスを循環させるための滅菌ガス循環用配管と、
該滅菌ガス循環用配管に設けられた循環用ポンプとを備えたことを特徴とするアイソレータ用インキュベータ。
【請求項2】
前記循環用ポンプより滅菌ガスの下流側に位置する前記ガス濃度制御用配管に設けられたフィルタを備えたことを特徴とする請求項1に記載のアイソレータ用インキュベータ。
【請求項3】
前記循環用ポンプを運転する滅菌モードを有する制御装置と、前記培養室内において前記培養用ガスを循環させるための送風機とを備え、
前記制御装置は、前記滅菌モードにおいて前記送風機を運転することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のアイソレータ用インキュベータ。
【請求項4】
前記循環用ポンプより滅菌ガスの下流側に位置して、複数種類の前記培養用ガスを前記培養室内にそれぞれ供給するための複数の前記ガス濃度制御用配管を備え、
前記制御装置は、前記循環用ポンプより吐出された滅菌ガスを各ガス濃度制御用配管に交互に流入させることを特徴とする請求項3に記載のアイソレータ用インキュベータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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