説明

アイディーユニット及びそれを装着したポット容器

【課題】アイディー装着ポット容器により多種類の乳剤色素等ゲル化ゲル状物質の情報処理を誤ることなく管理しながら円滑で効率的な溶解釜へのゲル状物質投入を可能にする。
【解決手段】電波によるデータ通信が可能であって個別のアイディーの情報を有する円筒状のメモリーチップ21を、前記アイディーに対応した視認可能な識別標識を設けられたマーカーチューブ内に挿通させ、透明な筐体22内に封入したことを特徴とするアイディーユニット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ポット容器の内壁にぴったり貼り付いて充填されているゲル状物質の殆ど全量を自動的に溶解釜に効率よく投入でき、ポット容器の中身であるゲル状物質の種類が明確に安定して判別できるようにした装置として、アイディーユニット、それを装着したポット容器及び該ポット容器内ゲル状物質の自動投入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
写真感光材料等の製造工程では調整された各種乳剤、色素類はポット容器に入れられてゲル化セットされて、一時、冷蔵保存される。そして必要時に必要な種類の乳剤色素類が呼び出されて裁断位置に運ばれて裁断され、各溶解位置に運ばれて溶解釜に投入されて溶解された後、塗布装置に送られて支持体に対する塗布が行われるようにしてある。
【0003】
このような工程において大事なことは、第1にポット容器に入れられゲル化されて冷蔵保存されている各種ゲル状物質が指令を受けて、その種類を間違えることなく確実に別々の溶解釜に供給されることである。これには識別手段として、例えば、バーコードを使用するシステムが採られているが、ポット容器に貼り付けられたバーコードが剥がれたり汚染されたりして十分に識別機能が発揮されないばかりでなく、バケツ型のポット容器側面に貼ったバーコードラベルはバーコードリーダに対する位置及び方向を常に一定に保てないため、読み取りが安定しない。そのために誤読により誤った乳剤や色素のゲル状物質を選択溶解してしまうような重大なミスに繋がることがある。第2にはポット容器内のゲル状物質である乳剤や色素が溶解釜に裁断剥離投入されるとき、殆ど残量無く全量に近い投入を可能にして、効率よく連続して溶解作業が進捗することである。これについては、例えば、特許文献1に裁断刃と補助裁断刃を組み合わせる手段によってポット容器内に残留するゲル状物質が少なくなるような方法が記載されてはいる。しかし、必ずしも十分に目的が達成されていない。
【特許文献1】特開平10−296105号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記のような問題点を解消して、円形断面を有するバケツ型のポット容器内のゲル状物質の種類等の重要データが安定して確実に識別できる識別手段を持たせるために、アイディーユニットとそれを装着したポット容器を提供することを課題目的にする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は次の技術手段(1)〜(6)の何れかによって達成される。
(1) 電波によるデータ通信が可能であって個別のアイディーの情報を有する円筒状のメモリーチップを、前記アイディーに対応した視認可能な識別標識を設けられたマーカーチューブ内に挿通させ、透明な筐体内に封入したことを特徴とするアイディーユニット。
(2) 前記透明な筐体はほぼ円筒状であることを特徴とする(1)項に記載のアイディーユニット。
(3) 前記透明な筐体にねじを設けたことを特徴とする(1)又は(2)項に記載のアイディーユニット。
(4) ゲル状物質を収納する円形断面を有するバケツ型のポット容器であって、該ポット容器の底面中央部に、電波によるデータ通信が可能であって個別のアイディーの情報を有するメモリーチップを内蔵したことを特徴とするポット容器。
(5) ゲル状物質を収納する円形断面を有するバケツ型のポット容器であって、該ポット容器の底面中央部に、(1)〜(3)項の何れか1項に記載のアイディーユニットを取り付け可能にしたことを特徴とするポット容器。
(6) 前記ポット容器の底面以外の場所に、前記個別のアイディーの情報に対応した、視認可能な識別標識を設けたことを特徴とする(4)又は(5)項に記載のポット容器。
【発明の効果】
【0006】
本発明の、アイディーユニット、それを装着したポット容器及び該ポット容器内ゲル状物質の自動投入装置により多種類の乳剤色素類等のゲル状物質は、その情報処理を誤ることなく管理されながら円滑で効率的に溶解釜に投入されるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の実施の形態を図を用いて説明するが、本発明はそれに限定されるものではない。
【0008】
また、本実施例では写真感光材料用の乳剤や色素類についてのゲル状物質の扱いについて説明しているが他のゲル状物質、例えば食品、化粧品等にも適用できる。
【0009】
写真感光材料等の製造工程では調整された各種乳剤はポット容器10に入れられてゲル化セットされて冷蔵保存される。このポット容器10の底部中心部には、図3のポット容器の断面図や図4のメモリチップの斜視図に示すように、このシステムで利用するアイディーとしての固有の識別番号を持った通信可能なメモリーチップ21が、その対応する数字を印刷したマーカーチューブ25にはめられて樹脂製の透明なパイプ状の筐体22に封入されていて、その端部にテーパーねじの切られた頭部23が設けられている。一方、ポット容器10の本体11の底部には別の底部板12が設けられて2重構造が採られ、該底部板12における中心部に開けられたねじ孔に前記頭部23がねじ込まれ、内部に埋め込まれた状態にして前記筐体22は底部近くの空洞部13に収納された形態をとっている。このため可成り乱暴に取り扱われても破損されることなく常に正しいアイディーとしての固有情報及びそれに基づく通信機能が維持し続けられる。
【0010】
また、市販のアイディーのメモリーチップは樹脂等でモールドされているが、外から見ただけではアイディーの認識番号が刻印されていないので取り付け取り外しの際、いちいちリーダでメモリーチップのデータを読み取りしなければならず大変不便であった。本発明ではメモリーチップ保護部材としてのモールド材に刻印するのと違いマーカーチューブ25とアイディーのメモリーチップ21を透明樹脂の筐体22に封入することで、印字の保護と直接視認確認の目的を達成すると共に、モールドケースとしての筐体22を多量に安価に製作できる利点がある。
【0011】
そして、メモリーチップ21がポット容器10の中心部底部に取りつけられているために、ポット容器10が搬送コンベア上でどのような向きに載置されていても、メモリーチップ21は常に同一ライン上、即ちそのアイディー読取部27の設置位置に最近接して通って行くことになり、該読取部のセンサ感度を特に上げることもなく容易に正確に情報伝達ができることになる。
【0012】
また、アイディーとしての固有情報に対応した前記識別番号はマーカーチューブと同じように目視可能なポット容器10の側面に少なくとも1つ設けられ、該ポット容器10がどのようなアイディー(ID番号)を持つものかが常時目視確認できる状態にしてある。
【0013】
図1の側面図及び図2の平面図に示すように、冷蔵保存箇所からゲル状物質が充填されたポット容器10は、搬送ライン40のローラコンベア41によりアイディー(ID番号)読取部27の位置、ポット容器加熱手段50で加温する位置、裁断刃挿入手段62及び裁断刃回転剥離手段63でゲル状物質を裁断剥離する位置、溶解釜90へ裁断剥離したゲル状物質を投入する位置、空の投入済みポット容器10を洗浄するポット容器洗浄手段75の位置へと搬送される。洗浄済みポット容器は更に、ゲル状物質仕込み位置へと戻るように搬送される。また、裁断刃挿入手段62(裁断刃を抜き出す手段を兼ねる)及び裁断刃回転剥離手段63が作動する位置のローラコンベア41に隣接して裁断刃洗浄手段70が設けられ、洗浄槽71や各種温水を用いた洗浄水のホースやノズル72が配置されている。
【0014】
最初に、ローラコンベア41で搬送されてきたゲル状物質が収納されているポット容器10は、アイディー(ID番号)読取部27で、指令して呼び出された正しいアイディーのものであることを再確認される。正しいと判断されたとき、次の各工程が継続されて行く。
【0015】
先ず、ゲル状物質が収納されているポット容器10に予熱を与えるポット容器加熱手段50が作動する。ポット容器加熱手段50には、昇降可能にした加温昇降ブース56が設けられ、該加温昇降ブース56は加温時には図示しない昇降装置によって下降してローラコンベア41上のポット容器10の全体を空隙を残して被せるようにしてある。前記加温昇降ブース56には熱風発生器51からブロワー52によって固定ダクト53、送風側のフレキシブルホース54、前記ブース56への導入パイプ55、を通って温風が吹き込まれ、戻りの排出パイプ57、フレキシブルホース58、固定ダクト59を通ってブロワー52に戻され、温風が前記空隙を充たしながら循環可能にしてある。そしてポット容器10の内壁と接触するゲル状物質の部分が流動し始める程度にポット容器10に予熱が与えられると、前記加温昇降ブース56は前記昇降装置によって上昇を開始し、上昇し終えた位置で次のポット容器10が送られてくるまで待機する。ポット容器10に予熱が与えられると、ポット容器10の内壁にぴったり貼り付いているゲル状物質は裁断刃61の回転により剥離し易くなる。尚、このときの発生熱風の一部を裁断刃加熱手段として次の裁断刃61の待機位置に送り、裁断刃とゲル状物質との接触部のゲル状物質が僅かに流動を開始する程度に予熱を供することが可能である。また、裁断刃加熱手段としては、独立してヒータを裁断刃61の中に内蔵させる構成にしても良い。
【0016】
また、ポット容器内のゲル状物質を裁断剥離する位置には、固定のフレーム構造体68及びその上面のレール66上を移動できるようにした移動構造体65が設けられ、該移動構造体65には裁断刃61と、それを昇降駆動する裁断刃挿入手段62及び回転駆動する裁断刃回転剥離手段63とが設けられ、また、固定のフレーム構造体68には、ポット容器10のクランプ手段64が設けられている。ローラコンベア41上のポット容器10に対して先ず、前記クランプ手段64が働きポット容器10を固定し、前記裁断刃挿入手段62の昇降駆動によって図5の斜視図に模式的にも示すような、4枚刃の裁断刃61が下降して、それがゲル状物質に挿入されることにより、ゲル状物質の裁断がなされる。ここに裁断刃61の刃の枚数は上記の4枚に限定されるものではない。次に、裁断刃回転剥離手段63が回転して裁断されたゲル状物質のポット容器10からの剥離を行い、その後、裁断刃挿入手段62がポット容器10から後退すべく上昇して裁断回転剥離工程が終了する。その後、移動構造体65がフレーム構造体68のレール66上を移動して裁断刃洗浄手段70の洗浄槽71の上方に至り、裁断刃61は前記裁断刃挿入手段62の下降により洗浄槽71内に至り、温水散布による洗浄がなされた後、再び前記裁断刃挿入手段62が上昇して、前記移動構造体65が戻りに入ると共に原位置に復帰して次のポット容器10が到着するまで待機する。この待機中に前述の裁断刃加熱手段により裁断刃61に対する予熱が加えられる。
【0017】
次に、ポット容器内の裁断回転剥離されたゲル状物質の溶解釜90への投入が行われる。
【0018】
溶解釜90はローラコンベア41の片側に近接して設けられていて、ゲル状物質が中で裁断剥離された状態のポット容器は、ローラコンベア41から投入前リフトコンベア80のコンベア81上に移載され、リフター82でコンベア81ごと上昇した上でポット容器を傾けて投入される位置までコンベア81上を移送され、その位置でロボットハンドで構成される投入手段95がポット容器10を掴み上げて溶解釜90の上で傾けて、既に中で裁断回転剥離されている中身のゲル状物質はポット容器10の内面を滑りながら自重で投入口91から溶解釜90に移し込まれ、投入操作が完了する。ポット容器10は前述のゲル状物質との接触部が予熱によって剥離し易くなっており、更には裁断刃61も予熱によりゲル状物質から剥離し易く、したがって挿入裁断もし易くなっており、回転剥離は円滑に行われ、残留するゲル状物質は僅かになっている。しかしゲル状物質は極力無駄にしたくない。そこで、投入済みの空のポット容器10は、上昇して傾斜された位置のまま、溶解釜90に隣接したポット容器洗浄手段75の位置に移され、温水をノズル76で散布されてポット容器10内に残された少量の残留ゲル状物質は洗い流されるが、この洗浄済みの液は溶解液として、洗浄排水供給手段としてのポンプや配管78を通して、溶解釜90に供給することが可能にされている。この場合、残留ゲル状物質は悉く溶解されることになり、貴重なゲル状物質は僅かの無駄もなく100%活用可能になる。洗浄済みのポット容器10は、再びローラコンベア83上に移されセット仕込み位置へと戻される。尚、前述の洗浄槽71で使用した裁断刃の洗浄排水液も、洗浄排水供給手段としてのポンプや配管73で溶解釜90に供給して溶解液として使用可能である。
【0019】
前記洗浄温水や裁断刃の予熱付与のための加熱熱源は、前記ポット容器の予熱付与のための加熱熱源と兼用させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のポット容器内ゲル状物質の自動投入装置における実施の形態の一例の側面図である。
【図2】本発明のポット容器内ゲル状物質の自動投入装置における実施の形態の一例の平面図である。
【図3】本発明に用いるポット容器の断面図である。
【図4】本発明に用いるメモリーチップの一例の斜視図である。
【図5】本発明に用いる裁断刃を模式的に示した斜視図である。
【符号の説明】
【0021】
10 ポット容器
11 本体
12 底部板
13 空洞部
21 メモリーチップ
22 筐体
23 頭部
25 マーカーチューブ
27 アイディー読取部
40 搬送ライン
41 ローラコンベア
50 ポット容器加熱手段
51 熱風発生器
52 ブロワー
53,59 固定ダクト
54,58 フレキシブルホース
56 加温昇降ブース
61 裁断刃
62 裁断刃挿入手段
63 裁断刃回転剥離手段
64 クランプ手段
65 移動構造体
66 レール
68 フレーム構造体
70 裁断刃洗浄手段
71 洗浄槽
75 ポット容器洗浄手段
80 リフトコンベア
81 コンベア
82 リフター
90 溶解釜
91 投入口
95 投入手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波によるデータ通信が可能であって個別のアイディーの情報を有する円筒状のメモリーチップを、前記アイディーに対応した視認可能な識別標識を設けられたマーカーチューブ内に挿通させ、透明な筐体内に封入したことを特徴とするアイディーユニット。
【請求項2】
前記透明な筐体はほぼ円筒状であることを特徴とする請求項1に記載のアイディーユニット。
【請求項3】
前記透明な筐体にねじを設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載のアイディーユニット。
【請求項4】
ゲル状物質を収納する円形断面を有するバケツ型のポット容器であって、該ポット容器の底面中央部に、電波によるデータ通信が可能であって個別のアイディーの情報を有するメモリーチップを内蔵したことを特徴とするポット容器。
【請求項5】
ゲル状物質を収納する円形断面を有するバケツ型のポット容器であって、該ポット容器の底面中央部に、請求項1〜3の何れか1項に記載のアイディーユニットを取り付け可能にしたことを特徴とするポット容器。
【請求項6】
前記ポット容器の底面以外の場所に、前記個別のアイディーの情報に対応した、視認可能な識別標識を設けたことを特徴とする請求項4又は5に記載のポット容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−15769(P2007−15769A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−190125(P2006−190125)
【出願日】平成18年7月11日(2006.7.11)
【分割の表示】特願平11−268809の分割
【原出願日】平成11年9月22日(1999.9.22)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】