説明

アイドリング・ストップ用外部電源式冷暖房装置

【課題】車両用動力源の駆動により発電される電気を蓄電することで、車両停止時に車両動力源が停止されたときに、蓄電装置により汎用性国内産冷暖房換気送風機器を稼働させ、温室効果ガスの削減、化石燃料の使用の削減、乗務員の健康管理の充実できるアイドリング・ストップ用外部電源冷暖房装置の実現を図る。
【解決手段】汎用性国内産冷暖房換気送風機器と、車外に取り付け設置する電気制御箱とサブバッテリーボックスと室外機からなるアイドリング・ストップ用外部電源式冷暖房装置において、電気制御箱とサブバッテリーボックスは車両用動力源の駆動により発電される電気を蓄電する蓄電手段であって、室外機は車両屋根上部に設置される。これにより車両停車時あるいはエンジンの出力に影響なく冷暖房装置を稼働させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車輌のアイドリング・ストップ用外部電源冷暖房装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、大半の空調装置の駆動は、エンジンの始動後使用可能のため、アイドリングを促進する結果になり多くの問題を含んできた。従来システムの水冷エンジンは、温水式ヒーターシステムとなっており、エンジン始動によって温められた温水を熱源としてヒーター・コアに送っている。この上を換気の空気が通過すると温められ 車内へ送られ送風される。冷房、除湿はエンジンの回転力で、コンプレッサーを回し冷媒を圧縮、その圧縮された冷媒を車内のコンデンサーに送る。コンデンサーに車内の空気を循環させて車内温度を下げる、というものである。このコンプレッサーもエンジンの回転がクランクシャフトからマグネットクラッチなどにより伝わり、冷媒を圧縮し冷房機能が作動をはじめる。このように従来のヒーターシステムおよびクーラーシステムでは、エンジンを始動させてからでないとこれらを始動させることはできない。
【0003】
このため特に長距離運行を行なう営業用車両等では休憩、仮眠、荷降ろし、荷待ちの駐停車時に冷房または暖房あるいは除湿換気を必要とするときはエンジンを稼動、アイドリングだけのためにガソリンを消費し二酸化炭素ガスを排出している。このことは二酸化炭素ガス排出、化石燃料消費、停車地近辺への大気汚染、騒音公害、音と震動により熟睡できない運転者の健康管理上の問題等など様々な問題を引き起こしている。本発明は自動車環境低公害化をめざすアイドリングストップ対策である。地球温暖化防止、化石燃料の節減効果をあわせもつ自動車環境対応策である。
【0004】
近年、低公害車の普及が進められ、電気や天然ガス、メタノールを燃料に動く自動車、燃料電池自動車などクリーンエネルギーを使用する自動車の開発普及がすすみ、ハイブリッドカーのようなガソリンエンジンと電気モーターの原動力を併用し組み合わせて走る省エネの自動車も多く市場に出てきている。しかし、大型車両等では高額になるため、最近の経済環境では普及するにはかなり時間が必要と考えられる。
【0005】
従来、例えば、エンジン停止中に車室内を冷房するものとして、特許2820681号公報、特開2003−48425号公報に記載のものが知られている。特許2820681号公報は、エンジン駆動中に、冷房用圧縮機を駆動し、この余剰能力を蓄冷して、それをエンジン停止時の冷房熱源として利用するというものである。特開2003−48425号公報は走行中の余剰発電電力を専用のバッテリに蓄電し、それを電気式空気調和装置に供給して、停車中に好適な冷暖房空調を行う、というものである。そしてその方式は車両に搭載されている電装品駆動用のバッテリをより高性能なものとし、電装品駆動と電気式空気調和装置の駆動を同時に行うようにするというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許2820681
【特許文献2】特開2003−48425
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術の特許2820681号公報の蓄冷式については蓄冷熱を利用するものにおいては空調負荷が大きい場合、余剰冷房能力が少ない。蓄冷を行うためには、少なくとも3〜4時間の圧縮機の運転が必要であるため、蓄冷途中ではエンジン停止ができないという問題がある。したがって、蓄冷が十分に行えない場合がある。そのようなときこそ、運転者が仮眠するなどのエンジン停止時にも十分な冷房が要求されるにも関わらず、それができないという問題点を抱えている。蓄冷のために利用する蓄冷材は、潜熱蓄熱を利用する場合であっても、100ワット時/キログラム程度の値である。このため、数キロワット時の蓄熱のためには膨大な重量、体積の蓄熱材を必要とするので、実用化し得る大きさの蓄熱材によって蓄冷できる熱量での冷房能力は、車両運転時に圧縮機による能力の1/30程度と非常に小さいという問題があるので積載重量に制限がある車輌に搭載するのは非実用的である。また蓄冷によって貯めた熱エネルギーは、一挙に放出する事が難しい。したがって、冷房効果が現れてくるまでにかなりの時間を必要とする。即ち、事前に冷房されている車室内でないと利用者に不快感を与えるという問題がある。、蓄冷装置及びそれを利用する冷房装置は専用装置となるため、新車の状態、即ち車両製造段階でしか取り付けられない。したがって、車両を購入した後、エンジン停止時に仮眠室などの冷房手段を追加しようとしても難しい状況にある。
特開2003−48425はエンジンの駆動力が伝達され冷媒を圧縮する開放型圧縮機と、バッテリから電力が供給され冷媒を圧縮する密閉型電動圧縮機とを備えた車両用空気調和機で車両に搭載されている電装品駆動用のバッテリーを大型のバッテリーに置換する必要がある。しかし大型のバッテリーに置換しても、アイドリング・ストップ用外部電源冷暖房装置の充放電量が大きいためメインバッテリーの寿命が短くなる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は汎用性国内産冷暖房換気送風機器と、車外に取り付け設置する電気制御箱とサブバッテリーボックスと室外機からなるアイドリング・ストップ用外部電源式冷暖房装置によって解決される。車両走行時、オルタネーターにより発電される電気をサブバッテリーに蓄電し、車両停止時に当該蓄電装置に蓄電された電気により汎用性国内産冷暖房換気送風機器を稼働させる。
【0009】
汎用性国内産冷暖房換気送風機器は室外機と車室内とを連通する吹出ダクトが車両屋根部を通して、車室内天井部に設けられている。電気制御箱にはサブバッテリーチャージャー、充電器及び各継電器、各機器類間の配線を収納する。電気制御箱とサブバッテリーボックスは振動、風雨の影響を受けるシャーシに取付けるため、耐久性、防水性の仕様で自社製作である。室外機は、風圧対策のため運転席の屋根上に横に向けて設置する。
【0010】
車輌停止時はサブバッテリーに蓄電された電気をインバーターにより直流から交流に変流して、汎用性国内産冷暖房換気送風機器を稼働させる。使用中の営業用車両にも簡易に接続取付けが可能である。
【0011】
オルタネーターにより発電された電力はサブバッテリチャージャーによりメインバッテリーを優先的に充電し、ライト・オーディオ・セルモータなど、電装品への電源供給のメインバッテリーを優先に充電するため走行に影響を与えない。
【0012】
サブバッテリーを取り付ける理由としてメインバッテリーの容量を増やすと(例12V130Ah*6個使用すると)アイドリングストップ外部電源冷暖房装置の充放電量が、大きいためメインバッテリーの寿命が短くなりコスト高になる。低コストで外部電源冷暖房装置を導入できることが、多くの運送事業者の外部電源冷暖房装置の導入意欲をかきたて、ひいてはそのことが二酸化炭素ガス排出、化石燃料消費、停車地近辺への大気汚染、騒音公害の削減につながると考える。そのため導入コストを考え、オルタネーターで発電して、サブバッテリーで蓄電する方式とした。冷暖房装置も市販のものを使うことでコストを下げることができた。
【0013】
またサブバッテリを取り付ける理由としてバッテリー交換時はオルタネーターの充電容量が50A〜65Aしか無いので、負担がかかるためである。
【0014】
走行時のオルタネーターの余剰電力をサブバッテリーに蓄える、アイドリングストップ外部電源冷暖房装置の機能を長期に発揮させるためにサブバッテリーに、バッテリー再生延命器ナノパルサーを付けコスト削減をはかった。
【0015】
室外機は、風圧対策のため運転席の屋根上に横に向けて設置。エンジン停止時あるいはエンジンの出力に影響なく冷暖房装置の稼動を持続させられる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、従来のバッテリーにサブバッテリーを追加する方式のため、低コストで外部電源式冷暖房装置を設置することができる。現在使用中の車輌に軽微な改良を加えるだけでアイドリング・ストップ用外部電源冷暖房装置を設置することができる。
【0017】
本発明は、車両がアイドリングストップしていても、冷暖房を稼働させることができる装置である。そのため、温室効果ガスの削減、化石燃料の使用の削減、トラックなど車輛乗務員の睡眠時の騒音、振動がなくなることによる乗務員の健康管理の充実、車輌の停車地周辺への排気ガス、騒音の低減効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施例を説明する前に本発明に係る実施例の概要につき簡単に説明する。トラックの車両は、エンジンが駆動している間その動力を利用して発電機を作動させて発電し、車内電装品などの電機部品を駆動する。この際、余剰電力をバッテリーに充電しておき、エンジン停止時の電力要求に応えるようにしている。しかし、このエンジン作動中の発電能力には十分な余力があり、その結果として、かなりの電力相当分のエネルギーを無駄に捨てている。本実施例はこの点に着目したものである。
【0019】
第一の着眼点は、メインバッテリー充電後の余剰電力を蓄えたサブバッテリーによってエンジン停止時のエアコンの駆動を行うようにすることである。
【0020】
第二の着眼点は、室内機と室外機に分離され、それぞれを連通する噴出ダストでつなぐことにより使用中の車輌にも簡易に接続できる
【0021】
第三の着眼点は、室外機を車両屋根上部に、室内機を運転席後方に設置するようにして、設置スペースをとらず、また前記したような空調必要時点にてサブバッテリーに充電されている電力をエネルギー源として、空調負荷に応じた最適な冷房暖房運転をできるようにするものである。
【0022】
第四の着眼点は、室内機と室外機が分離された装置を用いることにより、必要な取付スペースが小さくなり、また使用中の車輌にも、必要が生じたときに簡易にアイドリング・ストップ用外部電源式冷暖房装置を取り付けられるようにするものである。
【実施例1】
【0023】
以下、本発明の実施例を詳細に説明する。ブロック図1は、エネルギー(動力、電力)の伝達・利用関係を示した模式図である。エンジンaからオルタネーターbにより発電された電力が、メインバッテリーを先に充電する装置であるサブバッテリーチャージャーcを通り、メインバッテリーdを満杯にする。その後サブバッテリーチャージャーcでサブバッテリーeに電力が供給されるよう切り替えられる。
【0024】
制御箱内部図3の制御箱fの中のインバーターgにて直流電気から交流電気に変換される。サブバッテリーに蓄えられた電気は、図2のリモートスイッチhのオンにより、室内機wを作動させ、冷暖房送風が機能する。連通する噴出ダストから室外機jを作動させ吸排気する。直流電気から交流電気への変換の理由は、使用している汎用性国内産連暖房換気送風機器が交流電気なためである。またAC100Vの交流電気の方が電力降下も少ない。図3の制御箱内部は、サブバッテリーチャージャーc、ナノパルサーk、インバーターpで構成される。ナノパルサーkでサブバッテリーe内部をクリーニングすることによりサブバッテリーの延命をはかる。
【0025】
図4において、車輌運行時にオルタネーターbで発電された電気はサブバッテリーチャージャーcに入り、メインバッテリーdを優先的に充電する。メインバッテリーdが充電されるとサブバッテリーチャージャーcが切り替わりサブバッテリーeを充電する。車輌停止時には4個のサブバッテリーeに蓄電された電気がインバーターpで交流に変換され冷暖房装置を稼動させ室内機wを作動させる。サブバッテリーはシャーシー上に搭載するために、1〜3個では大きくなりすぎ、4個以上では、コストがかかりすぎるため、4個のサブバッテリーが最適である。

【産業上の利用可能性】
【0026】
自動車交通分野の二酸化炭素ガスの排出量は運輸部門の二酸化炭素ガス排出量の9割を占めており、京都議定書の目標達成を確実なものにするには、自動車交通分野の二酸化炭素ガス排出量の削減が重要である。しかしハイブリッドカーのようなガソリンエンジンと電気モーターの原動力を併用し組み合わせて走る省エネの自動車は現時点ではトラック等営業用車両として導入するには高価であり、運送事業者にとって現実的ではない。本発明は既存の営業用車輌にも必要に応じて簡易な接続取付けが可能である。
【0027】
本発明が導入されるならば、トラック等運輸車輌の荷降ろし、荷待ちの駐停車時にアイドリングストップをした状態で、運転室内は冷暖房稼働可能である。また休憩、仮眠時にアイドリングストップをした状態で、運転室内は冷暖房稼働可能である。冷暖房稼働を行わない場合、トラック等運輸車輌の運転室内は夏には50度を超え、冬には0度近くに達する。アイドリングストップをすることにより、小売店等の駐車場で駐車して仮眠することが可能になる。小売店等の駐車場では近隣への騒音、排ガス等の迷惑を考慮して、アイドリングストップを要請している。そのため従来の車輌では、小売店の駐車場に駐車することができなくて、道路の端で駐車して仮眠や休憩を取っている車が多く、交通の妨げにもなっている。
よって本発明の導入は化石燃料消費節減、温室効果ガスの削減、雇用主の責務である被雇用者である運転者の健康管理、道路の交通の妨げにも貢献する。
【0028】
現在国内500万台の自動車のうちで、長距離運行トラックは約100万台である。10tトラックに当該装置を設置した場合、年間に1台当たり7.5tの二酸化炭素排出削減が可能である。現在運行中の長距離運行車輌の内40%がこの装置を設置すれば、年間300万tの二酸化炭素排出削減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施例にかかるエネルギー(電力)の伝達・利用関連図である。
【図2】アイドリング・ストップ用外部電源式冷暖房装置の車両への配置図である。
【図3】制御箱内部の配置図である。
【図4】本発明の一実施例にかかる制御装置の動作フロー図である。
【符号の説明】
【0030】
a…エンジン
b…オルタネーター
c…サブバッテリーチャージャー
d…メインバッテリー
e…サブバッテリー
f…制御箱
g…インバーター
h…リモートスイッチ
w…室内機
j…室外機
k…ナノパルサー
p…インバーター



【特許請求の範囲】
【請求項1】
汎用性国内産冷暖房換気送風機器と、車外に取り付け設置する電気制御箱とサブバッテリーボックスと室外機からなるアイドリング・ストップ用外部電源式冷暖房装置において、該室外機は車両屋根上部に横向きに設置され、該電気制御箱はサブバッテリーチャージャーと充電器及び継電器を収納し、シャーシーに設置されることを特徴とするアイドリング・ストップ用外部電源式冷暖房装置。

【請求項2】
前記サブバッテリーは4つであることを特徴とする請求項1のアイドリング・ストップ用外部電源式冷暖房装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−68189(P2011−68189A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−218951(P2009−218951)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(309028709)株式会社平田自動車 (1)
【Fターム(参考)】