説明

アイポイント検出方法及びアイポイント検出用検眼用マスク

【課題】低コスト及び簡便にアイポイントを設定したり設定したアイポイント位置を確認することのできるアイポイント検出方法及びアイポイント検出用検眼用マスクを提供すること。
【解決手段】アイポイントを測定するためにレンズが装着された眼鏡フレームを装用した装用者の同眼鏡フレームの物体側に配置される薄板状の検眼用マスク1はマスク本体3と柄2から構成されている。マスク本体3の右眼帯部5Bにはピンホール6が形成されている。装用者は柄2を把持し、ピンホール6から能動的に視標に対して遠用視あるいは近用視する。そして、ピンホールを介して装用者自身あるいは験者によってマスク本体3前方側からピンホール6内に露出している瞳孔位置をペンのような印点用具先端によってレンズ上に印点して同印点位置を当該装用者のアイポイント位置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は眼鏡用レンズのアイポイントの位置を測定し、あるいは測定されたアイポイントの位置が正しいかどうか確認するためのアイポイント検出方法及びその方法に使用されるアイポイント検出用検眼用マスクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
眼鏡用レンズに設定されたアイポイント位置が装用者の実際のアイポイント位置とずれていると物体を見るのに眼が疲れてしまったり視力が低下したりする原因となる。そのため、従来から眼鏡用レンズ上に顧客のアイポイント位置を正確に設定し、あるいは設定したアイポイントが正しい位置にあるかどうかを確認する手段が種々提案されている。
例えば特許文献1に記載の技術は、装用フレームを装用した顧客の顔を撮影し、装用フレームデータと撮影した映像データに基づいてアイポイントを演算して求めるというものである。これによってアイポイント位置を正確に設定することが可能となる。
また、特許文献2に記載の技術は、いわゆるミラー法というアイポイント位置確認手段の改良であって、顧客(被験者)用に調整された眼鏡用レンズに設定されたアイポイント位置が正しいものであるかどうかを鏡に反射した顧客の像から確認するものである。製造メーカーから提供された顧客の眼鏡用レンズはシールを貼着する等の手段でアイポイント位置が指示されているため、顧客に実際にその眼鏡用レンズを装用してもらい実際のアイポイントがこのシール位置と一致するかどうかを眼鏡店側で確認するものである。
【特許文献1】特開平9−145324号公報
【特許文献2】特開平11−52307号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1のような撮影によってアイポイントを設定する方法では、撮影に使用する機材や表示モニター及び操作機器等が大がかりとなり高コスト化を招来することとなっていた。また、撮影自体も手間がかかり機器の設置場所も必要となる。そのため、簡便でコストのかからないアイポイント位置の設定手段が求められていた。
また、特許文献2のようなミラー法では実際に装用する顧客ではなくあくまで眼鏡店側でアイポイント位置を確認するわけであるため、このような確認検査ができるようになるにはかなりの熟練が要求されることとなる。そのため、より簡便なアイポイント位置を確認する手段が求められていた。
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、低コスト及び簡便にアイポイントを設定したり設定したアイポイント位置を確認することのできるアイポイント検出方法及びアイポイント検出用検眼用マスクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために請求項1の発明では、レンズが装着された眼鏡フレームを装用した装用者の同眼鏡フレームの物体側に検眼用マスクを隣接して配置し、装用者に能動的に同検眼用マスクを操作させて同検眼用マスクのマスク本体に形成されたピンホールを通して視標に対して遠用視あるいは近用視させるとともに、装用者自身あるいは験者によって同マスク本体前方側から同ピンホール内に露出している瞳孔位置を印点用具先端によって前記レンズ上に印点し、同印点位置を当該装用者のアイポイント位置とするようにしたことをその要旨とする。
また、請求項2の発明では、眼鏡フレームを装用した装用者の同眼鏡フレームの物体側に検眼用マスクを隣接して配置し、装用者に能動的に同検眼用マスクを操作させて同検眼用マスクの透明あるいは半透明のマスク本体に形成されたピンホールを通して視標に対して遠用視あるいは近用視させるとともに、験者によって同マスク本体前方側から同ピンホール内に露出している瞳孔位置を同マスク本体に設けられた目盛りに基づいて前記眼鏡フレームの基準点からの方向と距離として測定し、その瞳孔位置を当該装用者のアイポイント位置とするようにしたことをその要旨とする。
また請求項3の発明では請求項2の発明の構成に加え、前記眼鏡フレームにはレンズが装着されていることをその要旨とする。
【0005】
また、請求項4の発明では、アイポイントを測定するためにレンズが装着された眼鏡フレームを装用した装用者の同眼鏡フレームの物体側に配置される検眼用マスクであって、同検眼用マスクは薄板状のマスク本体を備え、装用者の瞳孔前方位置に配置される同マスク本体には装用者が能動的に視標に対して遠用視あるいは近用視するためのピンホールが形成されており、同ピンホールを介して装用者自身あるいは験者によって同マスク本体前方側から同ピンホール内に露出している瞳孔位置を印点用具先端によって前記レンズ上に印点して同印点位置を当該装用者のアイポイント位置とすることができるようにしたことをその要旨とする。
また、請求項5の発明では請求項4の発明の構成に加え、前記マスク本体の前面には印点用具を印点位置と退避位置の両位置を取りうるように保持する保持部材が配設され、同保持部材には操作部が併設され、同操作部の操作によって同印点用具は退避位置から印点位置に移動するようにしたことをその要旨とする。
また、請求項6の発明では請求項5の発明の構成に加え、前記印点用具の退避位置から印点位置への移動は操作部の操作によってロック状態の付勢手段の付勢力が解放され、その付勢力によって実行されるようにしたことをその要旨とする。
【0006】
また、請求項7の発明では、アイポイントを測定するために眼鏡フレームを装用した装用者の同眼鏡フレームの物体側に配置される検眼用マスクであって、同検眼用マスクは透明あるいは半透明の薄板状のマスク本体を備え、装用者の瞳孔前方位置に配置される同マスク本体には装用者が能動的に視標に対して遠用視あるいは近用視するためのピンホールと同ピンホールの前記眼鏡フレームの所定部位に対する相対位置を測定するための目盛りが形成されており、同ピンホールを介して験者によって同マスク本体前方側から同ピンホール内に露出している瞳孔位置を同マスク本体に設けられた目盛りに基づいて測定し、同目盛りによって特定される瞳孔位置を当該装用者のアイポイント位置とすることができるようにしたことをその要旨とする。
また、請求項8の発明では請求項4〜6のいずれか発明の構成に加え、前記マスク本体は透明あるいは半透明に構成されるとともに、前記ピンホールの周囲は同マスク本体の他の部分に比べて濃色に着色されていることをその要旨とする。
また、請求項9の発明では請求項7の発明の構成に加え、前記マスク本体に形成された前記ピンホールの周囲は同マスク本体の他の部分に比べて濃色に着色されていることをその要旨とする。
また、請求項10の発明では請求項4〜9のいずれか発明の構成に加え、前記マスク本体は両方の眼を覆う眼帯部をそれぞれ備え、前記ピンホールは一方の眼帯部のみに形成されているようにしたことをその要旨とする。
また、請求項11の発明では請求項10の発明の構成に加え、前記ピンホールが形成されている側の前記いずれか一方の眼帯部は透明あるいは半透明に構成され、いずれか他方の眼帯部は不透明に構成されていることをその要旨とする。
また、請求項12の発明では請求項4〜11のいずれか発明の構成に加え、前記ピンホールは前記マスク本体に1つのみ形成されていることをその要旨とする。
また、請求項13の発明では請求項4〜12のいずれか発明の構成に加え、前記マスク本体には装用者が把持するための柄が形成されていることをその要旨とする。
【0007】
上記のような構成では、アイポイントを測定するために2つの手段が考えられる。
第1の手段として、レンズが装着された眼鏡フレームを装用した装用者の同眼鏡フレームの物体側に検眼用マスクを配置する。検眼用マスクは薄板状のマスク本体を備えており、マスク本体には装用者が能動的に視標に対して遠用視あるいは近用視するためのピンホールが形成されている。能動的とは装用者の積極的な意思としてこのピンホールを通して視標を見ることをいい、自身で動かしてもあるいは手が不自由であれば装用者に代わって付き添いの者が動かすような場合をも含むものである。ピンホールの直径は0.5〜2.0mm程度が妥当であり、より好ましくは1.0〜1.5mm程度である。尚、形状は特に限定されるものではない。
このようなピンホールを通して視標に対して遠用視あるいは近用視した状態でピンホールを介して装用者自身あるいは験者によってマスク本体前方側から同ピンホール内に露出している瞳孔位置を印点用具先端によって前記レンズ上に印点する。視標に対して遠用視した状態で印点すればその印点位置が遠用アイポイントとなり、視標に対して近用視した状態で印点すればその印点位置が近用アイポイントとなる。これによって低コスト及び簡便にアイポイントを設定したり設定したアイポイント位置を確認することが可能となる。印点用具としては凡そ当接することでレンズ面に印点可能な器具であれば筆記具には限定されない。
印点用具先端による印点作業は装用者自身あるいは験者によっても行われるが、例えば装用者自身あるいは験者が印点用の印点用具を持って実行するようにしてもよく、印点用具を印点位置と退避位置の両位置を取りうるように保持する保持部材に保持させるようにしてもよい。つまり別途のメカニカルな機構によって実行してもよい。保持部材には操作部が併設され、操作部の操作によって印点用具は退避位置から印点位置に移動するようにする。その場合に印点用具の退避位置から印点位置への移動は操作部の操作によってロック状態の付勢手段の付勢力が解放され、その付勢力によって実行されることが印点作業を確実かつ簡単に実行する上で好ましい。
このような保持部材を利用して手段は特に装用者自身による印点作業において特に有意義である。
【0008】
第2の手段として、眼鏡フレームを装用した装用者の同眼鏡フレームの物体側に検眼用マスクを配置する。検眼用マスクは透明あるいは半透明の薄板状のマスク本体を備えており、マスク本体には装用者が能動的に視標に対して遠用視あるいは近用視するためのピンホールが形成されている。能動的の意は上記と同様である。ピンホールの直径・形状についても上記と同様である。
このようなピンホールを通して視標に対して遠用視あるいは近用視した状態でピンホールを介して験者によってマスク本体前方側から同ピンホール内に露出している瞳孔位置をマスク本体に設けられた目盛りに基づいて測定する。マスク本体は透明あるいは半透明であるためマスク本体を透かして眼鏡フレームを目視することができる。瞳孔位置はマスク本体の目盛りを読んで眼鏡フレームの基準点(例えば眼鏡フレームの外側縁等)からどの方向のどの目盛り位置にあるかによって決定される。そして、目盛りによって特定される瞳孔位置が当該装用者のアイポイント位置となる。視標に対して遠用視した状態の目盛りによって特定される瞳孔位置が遠用アイポイントとなり、視標に対して近用視した状態の目盛りによって特定される瞳孔位置が近用アイポイントとなる。これによって低コスト及び簡便にアイポイントを設定したり設定したアイポイント位置を確認することが可能となる。
ここに、マスク本体に設けられた目盛りは一方向だけでもよいが、好ましくは2つ以上の異なる方向に目盛りが設けられている方が瞳孔位置をより特定しやすい。目盛りは験者が目視する際に眼鏡フレーム周縁と交叉し、眼鏡フレーム周縁から一般的なアイポイント位置以上の長さの測定ができる程度にマスク本体上に十分長く形成することが測定のしやすさという点から好ましい。一般的には水平方向と垂直方向の目盛りが使いやすい。目盛りの一例としてはピンホールの真上を基点として鼻側に鼻あて部中心を越える程度に水平に配置される方向と(これは一般に40mm程度)、ピンホールの真横(好ましくは耳側)を基点に上又は下方向に垂直に配置される方向(一般に20〜30mm程度)が考えられる。尚、眼鏡フレームにはレンズが装着されていてもされていなくとも構わない。
【0009】
上記各手段において、基本的にはマスク本体は両方の眼を覆う眼帯部をそれぞれ備え、ピンホールは一方の眼帯部のみに形成されていることが好ましい。
そもそも視標を目視させてその瞳孔位置でアイポイントの位置を決める場合には片目のみで視標を目視させるよりも両眼視をさせる方が実際の目視状態となってより正確なアイポイントの位置の決定のためには好ましい。その際、検眼する側の眼ではピンホールを通して視標を見させ、検眼しないほうの眼ではピンホールとは無関係に自由な眼位置で視標を見させるべきなので、ピンホールは一方の眼帯部(検眼する側)のみに形成させることが好ましい。
ところで、常に検眼する側の眼で正しくピンホールから視標を目視できればよいが、眼にはいわゆる「効き眼」があって、検眼しないほうの眼が効き眼である場合には効き側だけで遠用視あるいは近用視をしてしまい、検眼する側の眼では正しくピンホールを通して視標を目視できない可能性がある。このような場合は無理に両眼視をさせるよりも検眼しないほうの眼を不透明の眼帯部で覆うことが好ましい。尚、マスク本体が片方の眼のみを覆う眼帯部を有しているアイポイント検出用検眼用マスクを排除するものではない。
また、当該眼帯部のピンホールの数は特に限定はされるものではないが、当該眼帯部に1つのみ存在することが好ましい。例えば遠用アイポイント用と近用アイポイント用にそれぞれピンホールを用意することも可能ではあるが、両者を取り違えたり装用者にその違いを伝えたりする面倒さがあるのでかえって1つのほうが使い勝手がよい。
また、マスク本体が透明あるいは半透明であるとした場合、装用者は視標に対して遠用視あるいは近用視する際に周囲の景色が同時に目に入ることで、なかなかピンホールからの視標に対する目視状態に導入させられないことがある。それに加えて、ピンホールの周囲が透明に近いとピンホール効果が得られにくい。そのため、ピンホールの周囲をマスク本体の他の部分に比べて濃色に着色して、装用者のピンホールからの視標に対する目視導入を容易にすることも可能である。
また、マスク本体には装用者が把持するための柄をつけることが片手で操作する上では都合がよい。両手で操作する場合には柄はなくとも構わない。
【発明の効果】
【0010】
上記各請求項の発明では、従来に比べて低コストかつ簡便にアイポイントを設定したり設定したアイポイント位置を確認することが可能となる。
また、本発明は眼鏡を新しく作るケース、つまり装用者が眼鏡店の店頭で選択したばかりのフレームを使って、そのフレームとアイポイントの位置関係を検出するケースで使用されることが多いと考えられるが、その時点ではフレームに入っているレンズは未だ度数は入っていない。しかし本発明ではピンホールによって被検眼にとっての絞りを小さくする効果があるので、眼鏡レンズ又はコンタクトレンズによって装用者の屈折矯正がなされていない状態であっても、あるいは装用者が老視であっても、遠くの視標も近くの視標も見やすいというメリットがある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の具体的な実施例を図面に基づいて説明する。
(実施例1)
図1に示すように、アイポイント検出用検眼用マスク1(以下、マスク1とする)はポリカーボネート製の薄く半透明な透明プレート体から外形形状が構成されている。本実施例ではマスク1の板厚は2mmとされている。マスク1の外方に突起した角部分は面取りがされている。マスク1は柄2と柄の上方に片持ち梁状に延出されるマスク本体3から構成されている。マスク本体3は左右方向において中央下部位置に富士山型に切り欠かれた鼻上載置部4が形成されており、鼻上載置部4を境界として左右がそれぞれ眼帯部5A,5Bとされている。ここでは図上左側を左眼帯部5Aとし、柄2と隣接する右側を右眼帯部5Bとする。右眼帯部5Bには中央付近に表裏に連通する円形形状のピンホール6が形成されている。つまり、右手で柄2を握って使用する場合、右眼でピンホール6をのぞき込むようにし、左手で柄2を握って使用する場合表裏反転させて左眼でピンホール6をのぞき込むようにする。本実施例1ではピンホール6の直径は1.5mmとされている。
本実施例1の右眼帯部5Bには2箇所に目盛り7a,7bが印刷されている。水平目盛り7aはピンホール6の中心位置を基点として鼻上載置部4の中央位置まで延出されている。1目盛りは1mmで設定されている。両目盛り7a,7bは表裏いずれからも目視可能である。マスク本体3の表裏両面であって周縁寄りには細かい毛からなるモール様の縁取り8が貼着されている。
【0012】
(実施例2)
図2に示すように、実施例2は実施例1において左眼帯部5Aが不透明に着色されているだけが異なり、後は実施例1と同じ構成である(図上着色状態は斜線で表す)。
(実施例3)
図3に示すように、実施例3は実施例1においてピンホール6の周囲にピンホール6よりほど色の濃くなる不透明な着色部分9を設けたことが異なり、後は実施例1と同じ構成である(図3では作図上濃淡の境界がはっきりしているが、実際は徐々に濃くなるようにする)。
(実施例4)
図4に示すように、実施例4は実施例1において左眼帯部5Aをカットして面取りをした片方の眼のみを覆う眼帯部を有するマスク1である。
【0013】
次に図8〜図10に基づいて実施例1〜実施例4のマスク1を使用した遠用及び近用アイポイントの位置を求める方法について説明する。
まず、遠用アイポイントを設定する場合について説明する。図8に示すように、被験者としての装用者はレンズLが装着された眼鏡フレームFを正しく装用し、装用した状態で図のように右手でマスク1の柄2を把持し、鼻上載置部4が自身の鼻の上に載置されるように構える。この際になるべくマスク1はレンズLに接近させるようにする。
そして、まず装用者に遠用視をさせる。これは装用者に検査場のある程度離れた物体や絵などを視標としてピンホール6からそれを目視するように指示することで実行される。験者は装用者の前方に回り、図9のように印点用具としてのペンPの先端をピンホール6の前側から挿入し、レンズL上の瞳位置に対して印点する。このように装用者がピンホール6から目視している状態はとりも直さず装用者の遠用アイポイントが瞳とピンホール6を結ぶ直線上に存在することとなるため、この印点位置は遠用アイポイント位置を示していることとなる。
次に近用アイポイントを設定する場合について説明する。上記遠用アイポイント位置の印点が終了するとそのまま装用者に近用視をさせる。これは装用者に手元にある本や紙片(名刺)を視標として目視するように指示することで実行される。図10に示すように験者は近用視をさせた状態で斜め下方向から遠用視と同様にペンPの先端をピンホール6の前側から挿入し、レンズL上の瞳位置に対して印点する。上記と同様この印点位置は近用アイポイント位置を示していることとなる。
このような一連の作業によって当該装用者の右目の遠用及び近用アイポイントの位置を右側のレンズL上に印点することが可能である。
次にマスク1を反転させて左目について同様の行程で当該装用者の左目の遠用及び近用アイポイントの位置を左側のレンズL上に印点する。
【0014】
このように構成することによって、実施例1〜実施例4のマスク1を使用した場合、次のような効果が奏される。
(1)装用者は単に遠用視及び近用視するだけで、特に面倒な作業を強いられることがないため、レンズ上のアイポイントの位置の設定作業の協力を得られやすく、また、験者側(一般に眼鏡店、眼科医、視能訓練士等)も特別な装置が不要であるにも関わらず正確なアイポイント位置を得られるので有利である。
(2)ピンホールを通して目視することによって焦点深度が深くなり物体を見やすくなるといういわゆるピンホール効果によって、近視、遠視あるいは老視のある装用者において指標が見やすくなり検査が行いやすくなる。また、験者側もピンホール内にペンPを差し込むだけでよいため、検査する側の作業にも面倒さはない。
(3)ピンホール6には目盛り7a,7bが併設されているため、同時に瞳位置のフレームFの内側及び下側からの距離も測ることができ、例えば自身の眼に向かってペンPの先端が接近するのを嫌う装用者にも対応することが可能である。
(4)実施例1においてはマスク1は半透明に構成されており、ピンホール6周辺に周囲の景色を同時に目視しながら指標を目視できるので、いかにも検査といった堅い雰囲気にならず、緊張によって装用者側に不要な調節を発生させることがない。また、指標も探しやすい。
(5)例えば検眼していない側の眼が効き眼である場合にはそれを覆わないと検眼側の眼のアイポイントにずれが生じてしまう可能性があるが、実施例2においては検眼している側の眼ではない眼は不透明な左眼帯部5Aによって覆われることとなるため検眼の妨げになることはない。一方、視標を両眼視した上で検眼側の眼がピンホールをのぞくようにできれば実施例3のような片目タイプのマスク1を使用させることができる。
(6)マスク本体3の表裏には縁取り8が貼着されているため、装用者がマスク1を眼鏡フレームFに接近させてもレンズLが傷つくことがない。
【0015】
(実施例5)
図5〜図7に示すように、実施例1と同じ構成のマスク1(但し、実施例5では目盛り7a,7bはない)の表面側には印点機構10が配設されている。印点機構10は保持部材としての印点部11と操作部としてのレバー12を備えている。印点部11はマスク本体3に立設された軸受け13に対して軸14によって回動可能に軸支されている。印点部11は本体15と本体15上部に形成された突起部16から構成されている。突起部16先端にはインクをしみ込ませたタンポ部17が取着されている。印点部11が印点用具に相当する。軸受け13に隣接する位置には柱脚18が立設されている。印点部11の本体15と柱脚18との間にはコイルばね20が配設されており、このコイルばね20によって印点部11は柱脚18から離間する方向に付勢されている。レバー12はこの柱脚18先端において軸19によって回動可能に軸支されている。レバー12の先端にはフック21が形成されており、本体15先端に係合可能とされている。レバー12と柱脚18との間には板ばね22が配設されており、この板ばね22によってレバー12は図上反時計回り方向に回動するように付勢されている。
図6に示すように、印点部11はレバー12の先端のフック21によって係合された筐体では軸受け13上に立設されて保持される。一方、図7に示すように印点部11とフック21との係合関係が解除された状態では印点部11はコイルばね20の付勢力によって回転させられ突起部16がピンホール6内に挿入されるようになっている。
【0016】
次に図6及び図7に基づいて実施例5のマスク1を使用した遠用及び近用アイポイントの位置を求める方法について説明する。
装用者は上記実施例1等と同様に眼鏡フレームFを正しく装用し、装用した状態で図のように右手でマスク1の柄2を把持し、鼻上載置部4が自身の鼻の上に載置されるように構える。まず上記と同様に遠用視した状態で、柄2を把持した手の人差し指でレバー12を引く。すると図6においてレバー12は軸19を中心に基端側は矢印pのように図上時計回り方向に回動し、レバー12先端は矢印qのように反時計回り方向に回動する。するとレバー12先端のフック21と印点部11の本体15との係合状態が解除され、印点部11はコイルばね20の付勢力によって図7の矢印rのように軸14を中心に一挙に回動させられる。印点部11の突起部16はピンホール6内に挿入され、その先端のタンポ部17がレンズL表面に当接し印点する。一方、矢印pのように回動させられたレバー12は板ばね22によって矢印sのように若干前下がりに保持される。
この遠用アイポイントの印点動作の終了にともなって、一旦マスク1を鼻から下ろし、印点部11を再び図6の状態にセットし、近用アイポイントを同様の操作で印点する。このような一連の作業によって当該装用者の右目の遠用及び近用アイポイントの位置を右側のレンズL上に印点することが可能である。
次にマスク1と鏡像の関係にあるマスク1(図示せず)を使用して左目について同様の行程で当該装用者の左目の遠用及び近用アイポイントの位置を左側のレンズL上に印点する。
尚、実施例5は基本的に装用者自身がレバー12を操作してアイポイントを印点することを前提とするが、験者が装用者に代わって操作することを排除するものではない。
このように構成することによって、実施例5のマスク1を使用した場合、上記効果に加え、験者に煩わされることなく装用者自身でアイポイントを印点することができ、なおかつ特別面倒な作業を強いられることもないという効果が奏される。
【0017】
なお、この発明は前記実施例に限定されるものではなく、次のように変更して具体化することも可能である。
・レンズに度を入れても良い。また、実施例1のマスク1を印点せずに使用することがわかっていればレンズは不要である。
・例えば、柄2をマスク本体3に重ねるようにしたり、左右眼帯部5A,5Bを重ねるようにしたりする等マスク1を複数の部分で構成しそれらを重複させるようにしてもよい。重複状にする方法は例えば軸を中心に各部分を回転させたり、隣接する部分間に折り目を設けて折り畳んだりすることが想定される。このように構成すれば例えば検者のポケットに常時差し込んでおくような気軽な携帯が可能となる。
・目盛り7a,7bの数、方向は一例であって、他のパターンで目盛りを構成することは自由である。
・縁取り8以外の傷付きを防止する手段を採用することは自由である。例えば、マスク1の材質をレンズが傷つきにくい可撓性のあるものにしたり、面全体に植毛加工する等が考えられる。また、レンズは一般にメニスカスレンズで前方に張り出して、特にピンホール6付近がマスク1と接触しやすいと考えられるためピンホール6の周囲の一定範囲にのみ傷付きを防止する手段(例えば植毛加工したシールや、フェルトを貼着する等)を施すようにしてもよい。
・縁取り8は特になくともよい。例えば、縁取り8を設ける代わりにシリコーンのような柔らかな素材からマスク1を構成したり、シリコーン素材の膜体を表裏に貼着する等して透明性を確保してもよい。
・マスク1の形状、材質、厚みは上記に限定されるものではない。また、柄2はなくともよい。
・印点機構10の構成は上記以外でも構わない。
その他本発明の趣旨を逸脱しない態様で実施することは自由である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施例1におけるアイポイント検出用検眼用マスクの正面図。
【図2】本発明の実施例2におけるアイポイント検出用検眼用マスクの一部切り欠き正面図。
【図3】本発明の実施例3におけるアイポイント検出用検眼用マスクの一部切り欠き正面図。
【図4】本発明の実施例4におけるアイポイント検出用検眼用マスクの一部切り欠き正面図。
【図5】本発明の実施例5におけるアイポイント検出用検眼用マスクの一部切り欠き正面図。
【図6】本発明の実施例5におけるアイポイント検出用検眼用マスクを使用した印点作業を説明する説明図。
【図7】本発明の実施例5におけるアイポイント検出用検眼用マスクを使用した印点作業を説明する説明図。
【図8】本発明の実施例1〜4におけるアイポイント検出用検眼用マスクを使用したアイポイント位置を決定する検眼作業を説明する説明図。
【図9】図8における遠用アイポイント位置を決定する検眼作業において験者によって印点する状態を説明する説明図。
【図10】図8における近用アイポイント位置を決定する検眼作業において験者によって印点する状態を説明する説明図。
【符号の説明】
【0019】
1…アイポイント検出用検眼用マスク、3…マスク本体、6…ピンホール、7a,7b…目盛り。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズが装着された眼鏡フレームを装用した装用者の同眼鏡フレームの物体側に検眼用マスクを隣接して配置し、装用者に能動的に同検眼用マスクを操作させて同検眼用マスクのマスク本体に形成されたピンホールを通して視標に対して遠用視あるいは近用視させるとともに、装用者自身あるいは験者によって同マスク本体前方側から同ピンホール内に露出している瞳孔位置を印点用具先端によって前記レンズ上に印点し、同印点位置を当該装用者のアイポイント位置とすることを特徴とするアイポイント検出方法。
【請求項2】
眼鏡フレームを装用した装用者の同眼鏡フレームの物体側に検眼用マスクを隣接して配置し、装用者に能動的に同検眼用マスクを操作させて同検眼用マスクの透明あるいは半透明のマスク本体に形成されたピンホールを通して視標に対して遠用視あるいは近用視させるとともに、験者によって同マスク本体前方側から同ピンホール内に露出している瞳孔位置を同マスク本体に設けられた目盛りに基づいて前記眼鏡フレームの基準点からの方向と距離として測定し、その瞳孔位置を当該装用者のアイポイント位置とすることを特徴とするアイポイント検出方法。
【請求項3】
前記眼鏡フレームにはレンズが装着されていることを特徴とする請求項2に記載のアイポイント検出方法。
【請求項4】
アイポイントを測定するためにレンズが装着された眼鏡フレームを装用した装用者の同眼鏡フレームの物体側に配置される検眼用マスクであって、同検眼用マスクは薄板状のマスク本体を備え、装用者の瞳孔前方位置に配置される同マスク本体には装用者が能動的に視標に対して遠用視あるいは近用視するためのピンホールが形成されており、同ピンホールを介して装用者自身あるいは験者によって同マスク本体前方側から同ピンホール内に露出している瞳孔位置を印点用具先端によって前記レンズ上に印点して同印点位置を当該装用者のアイポイント位置とすることができることを特徴とするアイポイント検出用検眼用マスク。
【請求項5】
前記マスク本体の前面には印点用具を印点位置と退避位置の両位置を取りうるように保持する保持部材が配設され、同保持部材には操作部が併設され、同操作部の操作によって同印点用具は退避位置から印点位置に移動することを特徴とする請求項4に記載のアイポイント検出用検眼用マスク。
【請求項6】
前記印点用具の退避位置から印点位置への移動は操作部の操作によってロック状態の付勢手段の付勢力が解放され、その付勢力によって実行されることを特徴とする請求項5に記載のアイポイント検出用検眼用マスク。
【請求項7】
アイポイントを測定するために眼鏡フレームを装用した装用者の同眼鏡フレームの物体側に配置される検眼用マスクであって、同検眼用マスクは透明あるいは半透明の薄板状のマスク本体を備え、装用者の瞳孔前方位置に配置される同マスク本体には装用者が能動的に視標に対して遠用視あるいは近用視するためのピンホールと同ピンホールの前記眼鏡フレームの所定部位に対する相対位置を測定するための目盛りが形成されており、同ピンホールを介して験者によって同マスク本体前方側から同ピンホール内に露出している瞳孔位置を同マスク本体に設けられた目盛りに基づいて測定し、同目盛りによって特定される瞳孔位置を当該装用者のアイポイント位置とすることができることを特徴とするアイポイント検出用検眼用マスク。
【請求項8】
前記マスク本体は透明あるいは半透明に構成されるとともに、前記ピンホールの周囲は同マスク本体の他の部分に比べて濃色に着色されていることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載のアイポイント検出用検眼用マスク。
【請求項9】
前記マスク本体に形成された前記ピンホールの周囲は同マスク本体の他の部分に比べて濃色に着色されていることを特徴とする請求項7に記載のアイポイント検出用検眼用マスク。
【請求項10】
前記マスク本体は両方の眼を覆う眼帯部をそれぞれ備え、前記ピンホールは一方の眼帯部のみに形成されていることを特徴とする請求項4〜9のいずれかに記載のアイポイント検出用検眼用マスク。
【請求項11】
前記ピンホールが形成されている側の前記いずれか一方の眼帯部は透明あるいは半透明に構成され、いずれか他方の眼帯部は不透明に構成されていることを特徴とする請求項10に記載のアイポイント検出用検眼用マスク。
【請求項12】
前記ピンホールは前記マスク本体に1つのみ形成されていることを特徴とする請求項4〜11のいずれかに記載のアイポイント検出用検眼用マスク。
【請求項13】
前記マスク本体には装用者が把持するための柄が形成されていることを特徴とする請求項4〜12のいずれかに記載のアイポイント検出用検眼用マスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−112377(P2009−112377A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−285990(P2007−285990)
【出願日】平成19年11月2日(2007.11.2)
【出願人】(000219738)東海光学株式会社 (112)