説明

アイロンシュー

本発明は、本発明はアイロンシュー(10)に係る。該アイロンシューは、衣類接触表面(15)を有し、抗菌剤等である衣類ケア剤を収容する手段を備える。収容手段は、衣類ケア剤を収容する衣類接触表面によって少なくとも形成され、該衣類接触表面は、衣類片に対して衣類ケア剤を移すことができる。アイロン掛け中に行なわれる通り、衣類接触表面を衣類片に接触させることによって、薬剤は、衣類に対して移される。本発明は更に、アイロンシューを製造する方法に係る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アイロンシュー、及びアイロンシューを製造する方法に係る。
【背景技術】
【0002】
JP−09056997(特許文献1)は、蒸気アイロンを開示する。該蒸気アイロンは、本体部、ヒータ及びスチーム噴出口を備えられるベース部、所定の量の水、及び給水タンクにおいて与えられる抗菌部材を有する。アイロンベース部の下方表面から抗菌部材を含有する蒸気を噴出させることによって、抗菌部材は、衣服に対して適用される。
【0003】
ユーザは、抗菌剤の使用可能性を確実なものとするよう、アイロンの給水タンクを水及び抗菌剤で充填及び再充填しなければならない。これは、面倒であり得、水及び/又は抗菌部材をこぼす危険性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】JP−09056997
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、アイロンを衣類ケア剤で再充填する必要なく、衣類片(a piece of garment)に対して衣類ケア剤を適用する容易な方途を与える、ことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、シューソール(shoe sole)を有するアイロンシューによって達成される。該シューソールは、衣類接触表面を有し、また衣類ケア剤を収容する手段を備える。該手段は、衣類ケア剤を収容する衣類接触表面によって少なくとも形成され、該衣類接触表面は、衣類片に対して衣類ケア剤を移すこと(transferring)ができる。
【0007】
かかるアイロンシューは、実際には既知である。かかるシューは通常、アイロンのソールプレートに対して取り付けられる場合、衣類と接触する表面の温度を低下させるよう使用される。シューは、周辺部(periphery)を有するシューソールを有し、該シューソールの周辺部は、アイロンのソールプレートのソール周辺部に対応する。シューソールは、衣類接触表面を有する。衣類接触表面は、アイロンに対するシューの取付け後、アイロンのソールプレートから離れる向きにされる。
【0008】
アイロン掛け中、本発明に従ったアイロンシューの衣類接触表面は、衣類片に接触し、ある量の衣類ケア剤は、衣類に対して移される。
【0009】
驚くべきことには、衣類ケア剤は、本発明に従ったアイロンシューを単純に置くこと及び衣類表面にわたってアイロンシューを動かすことによって、衣類上に配置される。
【0010】
このようにして、衣類ケア剤を有する溶液を包含するリザーバを与える必要なく、衣類ケア剤が衣類片に対して塗布される。
【0011】
衣類ケア剤は、抗菌剤、嗅剤(olfactory agent)、防皺剤、又はそれらの組合せであり得る。適切な防皺剤は、Witco社(米国)からのSilwet(登録商標)化合物等である有機ケイ素界面活性剤であり得る。
【0012】
抗菌剤は、抗菌特性を有する。これは、特には衣類片のアイロン掛けされた表面において抗菌剤が、菌(バクテリア)等である微生物の成長を止めるかあるいは遅くすること(抗菌作用)、及び/又は菌類等である微生物の成長を止めるかあるいは遅くすること(例えばかびとして既知である菌類に対する抗真菌作用)、及び/又はウイルス等である微生物の成長を止めるかあるいは遅くすること(抗ウイルス作用)、及び/又は寄生虫等である微生物の成長を止めるかあるいは遅くすること、を意味する。
【0013】
本発明に従ったアイロンシューを使用してアイロン掛けした後、衣類片のアイロン掛けされた表面は、ある量の抗菌剤を与えられる。よって得られたアイロン掛けされた表面は、抗菌特性を有する。本発明に従ったアイロンシューを使用して衣類片をアイロン掛けすることによって、菌、菌類、及び/又はかびに対する抵抗性は高められる。
【0014】
嗅剤は、香り特性を有する。このことは、嗅剤が、本発明に従ったアイロンシューを使用してアイロン掛けされる衣類片に対して香り、芳香、香料を与える、ということを意味する。通常、好ましいと感じられるにおいは、アイロンシューによって与えられる。制限的ではない例は、花のにおい又は洗い立てのリネンのにおいである。
【0015】
防皺剤は、アイロン掛け中に衣類片からの皺の除去を容易にし、また、例えば使用中の衣類の皺寄りの容易性を低減して、持続するアイロン掛け効果を与えるよう支援し得る。
【0016】
抗菌剤は、制限的ではないが抗菌金属イオンを有する。抗菌金属イオンは、抗菌特性を有する金属イオンである。適切な例は、銀、銅、亜鉛、プラチナ、セレンのイオン、又はそれらの組合せである。Ag+の抗菌特性は、既知である。かかる抗菌金属イオンは、アイロンのソールプレートの高温において熱安定性があり、約250℃の温度において少なくとも4時間、安定している。
【0017】
アイロン掛け自体は、熱の使用を有し、アイロン掛けの工程中に衣類片上にある菌の一定の割合を殺し得るが、そのことは、菌又は菌類等に対する衣類の抵抗性を高めるものではない。衣類の使用中、菌は成長し始める。絹等である繊細なファブリックは通常、高温で洗濯及びアイロン掛けされるべきであるため、このことは、かかるファブリックに対して特に関連する。衣類ケア剤として抗菌剤を有する本発明に従ったアイロンシューを使用して衣類片にアイロン掛けすることによって、この抗菌剤は、衣類にわたって蒸着され、衣類は、より長い時間の間、より洗い立てなまま残る。衣類をより衛生的にすることに加えて、抗菌剤を有するアイロンシューソール自体は、より清潔であるという傾向があり、また衣類接触表面における菌/菌類の成長を低減する。
【0018】
衣類の表面にわたって抗菌剤を蒸着することによって、菌の成長は、防がれるか、あるいは減速される。チリダニは、衣類等において存在する菌から栄養を与えられる。したがって、衣類における菌の成長の阻止又は減速はまた、衣類におけるチリダニの菌栄養源が低減され且つ成長が減速されるため、チリダニに影響を及す。したがって、本発明に従ったアイロンシューを使用するアイロン掛けは、アイロン掛けされた表面において防チリダニ効果を有する。
【0019】
衣類片の表面に対して移される衣類ケア剤の量は、とりわけ、衣類表面が受けるストロークの回数、及びアイロンシューの衣類接触表面において存在する衣類ケア剤の量に依存する。より多くのストロークは、衣類ケア剤の更なる移動をもたらす。衣類接触表面における衣類ケア剤のより高い濃度は、衣類ケア剤の更なる移動をもたらす。
【0020】
衣類ケア剤の移動は、シューソールの衣類ケア剤を有する衣類接触表面とアイロン掛けされる衣類片との間の表面接触を必要とする。衣類ケア剤が粒子、又は粒子の一部として存在する場合、移動は、かかる粒子の表面積が比較的大きい際により効率的である。銀、亜鉛、銅、セレン、又はプラチナ等の小粒子は、より大きな粒子と比較される際、比較的大きい表面積を有する。本発明に従ったアイロンシューの一実施例において、シューソールは、1nm乃至500nm、望ましくは10−200nmの範囲において平均寸法を有する銀、亜鉛、銅、セレン、又はプラチナの粒子、あるいはそれらの組合せを有する。適切な選択は、5−50nmの平均銀粒子寸法を有する製品及び50−200nmの平均銀粒子寸法を有する製品として使用可能である、Bio Gate AG社(独国)からのHyGate(登録商標)ナノシルバーである。
【0021】
基材(carrier)は、衣類ケア剤がアイロンシューにおいて存在する表面を強め得、故に薬剤の放出を容易にする。
【0022】
本発明に従ったアイロンシューは、衣類ケア剤として抗菌剤を有する基材を有し得る。特定の一実施例において、基材はゼオライトである。
【0023】
ゼオライトは、構造上開放的且つ多孔性である無機のセラミック材料である。
【0024】
優れた結果は、ゼオライトの格子内にある銀イオンを使用して得られる。適切な抗菌剤を有する適切な基材は、市販されている(AgION antimicrobial technologies Inc.社による)AgION(登録商標)である。あるいは、例えばAgION(登録商標)Silver Copper Zeoliteが使用され得る。
【0025】
AgION(登録商標)抗菌化合物は、活性成分(銀イオン)、及びゼオライトとして既知である不活性ミネラル運搬材料を有する無機抗菌剤系である。AgION(登録商標)は、イオン交換運搬系を形成するよう銀の抗菌特性をゼオライトに組み合わせる。ゼオライトに対する銀の接合は、長期間にわたる金属の連続的な制御放出を確実なものとする。これは、要望に応じた長く持続する抗菌効果をもたらし、将来起き得る汚れを抑える。水分が存在する際、イオン交換が発生する。
【0026】
水分は、濡れた衣類片又は湿った衣類片をアイロン掛けすることによって存在し得る。衣類片は、洗濯されて完全に乾燥していないため、該衣類を湿らすよう水を噴霧されたため、あるいは例えば本発明に従ったアイロンシューを有する蒸気アイロンからの蒸気を使用することによって、濡らされ得る。銀イオンは、AgION(登録商標)化合物から放出され、環境においてイオンと交換している。
【0027】
本発明に従ったアイロンシューを使用するアイロン掛けは、衣類において銀イオンを適用することをもたらす。
【0028】
(蒸気生成手段を有さず)通常イオンと協働して使用されるよう意図される本発明に従ったアイロンシューは、必ずしもシューソール開口を有する必要はない。
【0029】
蒸気アイロン装置と協働して使用されるよう意図される本発明に従ったアイロンシューは、蒸気アイロン装置から蒸気を通過させるよう、少なくとも1つのシューソール開口を有する。
【0030】
本発明に従ったアイロンシューの一実施例において、アイロンシューは、蒸気を通過させる少なくとも1つの開口を備えるシューソールを有する。
【0031】
アイロンのソールプレートは通常、電気加熱素子によって加熱される。ソールプレートの温度は、サーモスタット及び温度ダイヤルを用いて所望の温度において維持される。温度ダイヤルにおけるドットの数は、アイロンのソールプレート表面の温度を以下の通り示す:
・ 1ドットは、平均100℃であり、これは大半のアイロンにおいて低温設定である。
・ 2ドットは、平均150℃であり、これは大半のアイロンにおいて中温設定である。
・ 3ドットは、平均200℃であり、これは大半のアイロンにおいて高温設定である。
【0032】
絹及びベルベット等である繊細なファブリックは、該ファブリックが損傷されるため、2ドット又は3ドットにさらされ得ない。したがって、繊細なファブリックをアイロン掛けすることは通常、アイロンの1ドット低温設定を使用して行なわれる。これは、所望されるアイロン掛け結果を与え得ない。したがってユーザは、蒸気を使用することを望む。蒸気アイロンシステムによって作られる蒸気は、アイロン掛けされるべきファブリックを湿らせる役割を有する。アイロン掛け中の衣類に対する水分の適用は、アイロン掛け工程をより容易にし、かかる時間を低減させる。
【0033】
蒸気アイロンに対して、2ドット又は3ドット温度設定が通常推奨されるが、水の滴り又は吐出の危険性はある。この2ドット又は3ドット温度設定は通常、繊細なファブリックをアイロン掛けするには高すぎるため、アイロンシューが使用され得る。アイロンシューは、アイロンに対して取外し可能である付属品として使用され得る。ユーザがアイロンのソールプレートに対してシューを取り付ける場合、アイロンシューは、衣類に接触する表面の温度を低減させる熱障壁として作用する。このようにして、蒸気アイロンは2又は3ドット温度設定において作動され得る一方、衣類に接触する表面の温度は低減される。このようにして、繊細な衣類片は、アイロンの低すぎる温度による水の滴り又は吐出の危険性を有することなく、蒸気を使用してアイロン掛けされ得る。
【0034】
本発明に従ったアイロンシューの一実施例において、シューソールは、少なくとも衣類ケア剤の0.05重量パーセントを有するソール材料(a sole material comprising at least 0.05 weight percent of the garment care agent)から作られる。
【0035】
あるいは、シューソールは、シューソールの重量に基づいて抗菌剤の0.1−35重量パーセントを有する。
【0036】
シューソールの重量は、シューソールの本体の重さを量ることによって確定される。シューソールの本体の境界は、衣類接触表面、アイロン接触表面、及びかかる2つの表面の間の最短距離によって、画定される。アイロン接触表面は、シューがアイロンのソールプレートに対して取り付けられる場合にアイロンのソールプレートに接触する表面である。衣類接触表面とアイロン接触表面との間の距離は、シューソールの厚さである。
【0037】
本発明に従ったアイロンシューの一実施例において、アイロンシューソール材料は、シリコンラバー、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PI)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアミドイミド(PAI)、又はメチルトリメトクシシレン基材料等である三次元無機ポリマ、を有する群から選択される。これらは、アイロンの3ドット設定において熱いソールプレートに対してさらされて使用され得る熱安定性ポリマの例である。
【0038】
シューソールは例えば、8重量%AgION(登録商標)を有するポリエーテルエーテルケトンから作られ得る。
【0039】
アイロンシューを製造する本発明に従った方法は、シューソールを有し、該シューソールは、衣類ケア剤を収容する衣類接触表面を有する。衣類接触表面は、衣類片に対して衣類ケア剤を移すことができる。当該方法は:
・ 衣類ケア剤を有する材料からシューソールを形成する段階、
を有する。
【0040】
本発明に従った方法の実用的な実施例において、アイロンシューは、衣類ケア剤を有する成形可能な熱可塑性ポリマを使用して射出成形される。一例は、例えばAgION(登録商標)の形状であるAg+イオンを有するPEEKを使用してアイロンシューを成形し得る。あるいは、アイロンシューは、衣類ケア剤を有するフォイルからシューソールをスタンピングする段階を有して製造される。
【0041】
本発明に従ったアイロンシューの一実施例において、衣類ケア剤を収容する手段は、衣類ケア剤を有する薬剤層(an agent layer)を有し、衣類接触表面は、該薬剤層の表面である。
【0042】
かかる一実施例において、アイロンシューのシューソールの少なくとも一部は、衣類ケア剤を有する薬剤層を備えられ、薬剤層は、衣類接触表面を有する。このようにしてアイロンシューに対する衣類ケア剤の量は、低減され得る。
【0043】
薬剤層を使用することは、本発明に従ったアイロンシューの設計において追加的な自由度を与える。
【0044】
本発明に従ったアイロンシューの第1の実用的な例において、アイロンシューは、アイロンのソールプレートのソール周辺部に対応するラミネート周辺部(laminate periphery)を備えるラミネートを有する。ソールプレートは、ソールプレート表面を有する。ラミネートは、アイロン掛けに対して衣類接触表面を有する熱伝達層、及びアイロンのソールプレート表面に接触するアイロン接触表面を有する断熱層を有する。
【0045】
本発明に従ったアイロンシューの第2の実用的な例において、アイロンシューは、アイロンのソールプレートのソール周辺部に対応するラミネート周辺部を備えるラミネートを有する。該ソールプレートは、ソールプレート表面を有する。ラミネートは、アイロンのソールプレートに接触するアイロン接触表面を有する熱伝達層、及びアイロン掛けに対して衣類接触表面を有する断熱層を有する。第2の例において、熱伝達層及び断熱層は、第1の例と比較して反対のオーダで位置付けられる。
【0046】
典型的には、断熱層は、シリコンラバー、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PI)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアミドイミド(PAI)、又はメチルトリメトクシシレン基材料等である三次元無機ポリマ、を有する群から選択される。これらのポリマは、適切な熱安定性(3ドット設定に対して使用可能)、及び断熱特性を有する。
【0047】
熱伝達層は、典型的には金属層を有する。金属層は、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、又はステンレススチールを有して作られ得る。金属層が薬剤層である場合、該層は、衣類ケア剤を有する。これは、空気の存在において外側表面に銀イオンを有する銀粒子等である粒子の形状であり得る。
【0048】
構造に依存して、断熱層又は熱伝達層のいずれかは薬剤層であり、衣類ケア剤及び衣類接触表面を有する。
【0049】
シューソールは、衣類接触表面を有するよう与えられる追加層を有し得る。実際には、これは、追加層がアイロンシューの外側に存在する、ことを意味する。かかる状況において、追加層は薬剤層である。
【0050】
この追加層は、例えば、アルミニウム又はステンレススチール等である金属層上に与えられる衣類ケア剤を有するエナメルコーティング又はゾルゲルコーティングを有し得る。金属層は、追加層と断熱層との間において割り込まれる。この例における熱伝達層は、金属層及び追加層を有する。
【0051】
あるいは、追加層は、銀、銅、銅合金、又は亜鉛の層である。この層が空気中に存在する酸素に露出される際、金属酸化物に対する金属の変換は、かかる粒子の表面において自然発生的に発生し、衣類接触表面における抗菌金属イオン(この場合は銀、銅、又は亜鉛)の存在をもたらす。
【0052】
薬剤層に関しては、0.5−250ミクロンの範囲における厚さが適切であると判明している。
【0053】
アイロンシューの衣類接触表面の温度は、アイロンのソールプレートと比較して低下される。この低下された温度の結果として、薬剤層において存在する衣類ケア剤に対して必要とされる温度安定性は、低下される。結果として、より広範の衣類ケア剤が薬剤層において成功裏に適用され得る。例えば、クロロヘキセチジン、又は1,3−ジハロ−5,5ジメチルヒダントイン、オキサゾリジノン(oxazolidionores)、又はイミダゾリジノン(imidazolidinones)が使用される。あるいは、Triclosan(CAS Nr:3380−34−5)は使用され得る。
【0054】
これは、アイロンシューの第1の実例において特に当てはまる。この例において、使用中に熱いアイロンソールプレートに接触する層は、絶縁層である。衣類接触表面を有する薬剤層の温度は、低下される。
【0055】
本発明に従ったアイロンシューの一実施例において、薬剤層は、衣類ケア剤の少なくとも0.05重量パーセントを有する。
【0056】
衣類ケア剤は、衣類ケア剤が存在する表面がより大きい差異に、より容易に移される。基材は、衣類ケア剤が広げられる表面を強化する支援をし得るため、衣類ケア剤の放出を容易にする。本発明に従ったアイロンシューの代替案において、薬剤層は、特には抗菌剤である衣類ケア剤を有する基材を有する。特定の一実施例において、基材は、銀、銅、又は亜鉛のイオン、あるいはそれらの組合せを有するゼオライトである。
【0057】
一実施例において、ゾルゲル又はエナメル材料層、又は熱可塑性ポリマを有して作られる薬剤層は、衣類ケア剤の0.1−35重量パーセントを有する。
【0058】
薬剤層を有するシューソールを備えるアイロンシューを製造する本発明に従った方法は、薬剤層を与える段階、を有する。薬剤層は、衣類ケア剤を有し、衣類接触表面を備える。衣類接触表面は、衣類片に対して衣類ケア剤を移すことができる。
【0059】
薬剤層を与える適切な方途は、アイロンシューのシューソールにおいて金属をスパッタリングすることによるものであり、このようにして典型的には0.5−3ミクロンの厚さを有する層が得られ得る。
【0060】
あるいは、金属層は、アイロンシューのソールプレート上へとワルスされる(walsed)。このようにして、150−250ミクロンの範囲の厚さを有する金属層を備えるソールプレートが得られる。
【0061】
請求項8において定義付けられる本発明に従った方法を実行する他の方途は、抗菌剤等である衣類ケア剤を有するポリマ層を適用することである。適切な熱可塑性ポリマは、シリコン(ケイ素)、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルアミド、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニスサルファイド、及びポリテトラフルオロエチレン、等である熱安定性ポリマである。
【0062】
本発明に従ったこの方法を実行する他の方途は、衣類ケア剤を有するゾルゲルコーティングを適用することである。
【0063】
かかるゾルゲルコーティングを適用することは既知であり、ソールプレートを製造するよう、典型的には、
1) ゾルゲル溶液を与える段階、
2) このゾルゲル溶液をアイロンプレート上へと噴霧する段階、
3) アイロンプレートを加熱することによって、得られたゾルゲル層を乾燥させ、溶液がゲルネットワークを残して蒸発される段階、
4) 加熱によってゲルを硬化させる段階、
が有される。
【0064】
段階3及び4、即ち乾燥段階及びその後の硬化段階は通常、1つの硬化段階において組み合わされる。
【0065】
本発明に従った方法を実行する方途は、上述された段階1において衣類ケア剤をゾルゲル溶液と混合させる、ことである。
【0066】
本発明に従った方法を実行する他の方途において、既知のゾルゲル溶液は、シューソールに対して適用され、この既知であるゾルゲル溶液の上方において、抗菌剤等である衣類ケア剤は、例えば衣類ケア剤を有する溶液を噴霧することによって適用され得る。故に得られたシューソールは、硬化される。この実施例において、衣類ケア剤は、(上述の)段階2の後に、ウェットゾルゲル(湿ったゾルゲル)層上へと噴霧され、少なくとも部分的にウェットゾルゲル層へと浸透し、このようにして得られた二部層は、その後硬化される(段階3及び4)。この実施例における衣類ケア剤は、アイロンシューの外側上に位置決めされる大変薄い層において存在する。即ち該薄い層は、衣類ケア表面を有する。この大変薄い層は、0.5−1.5ミクロンの範囲における厚さを有し得る。
【0067】
本発明は更に、本発明に従ったソールプレート及びアイロンシュー備えるアイロンを有する衣類ケアシステムに係る。該ソールプレート及びアイロンシューは、相互に協働するよう配置される。本発明に従ったアイロンシューは、例えば、隆起した側面部(raised flank portion)及び突起等である固定手段を与えられ、既知のアイロンのシューに対してシューを取り付けることができるようにし、且つ使用中にソールプレートからシューが外れることを防ぐようにする。衣類ケアシステムは、上述されたアイロンシューの利点と同一の利点を有する。
【0068】
本発明はまた、請求項のいずれか一項記載の対象及び特性の可能な組合せを有する。
【0069】
本発明はこれより、添付の図面を参照して一例として説明される。原則的に、態様は組み合わされ得る。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明に従ったアイロンシューの第1の実施例を概略的に図示する。
【図2】本発明に従ったアイロンシューの第2の実施例を概略的に図示する。
【図3】本発明に従ったアイロンシューの第3の実施例を概略的に図示する。
【図4】蒸気アイロン上に取り付けられた、本発明に従ったアイロンシューの第3の実施例を概略的に図示する。
【図5】蒸気アイロン上に取り付けられた、本発明に従ったアイロンシューの第2の実施例を概略的に図示する。
【発明を実施するための形態】
【0071】
図1中、本発明に従ったアイロンの第1の実施例は、概略的に示される。アイロンシュー10は、衣類接触表面15及びアイロン接触表面14を備えるシューソール13を有する。シューソールは、衣類剤を有する。衣類接触表面15を衣類片とアイロン掛け中に接触させることによって、抗菌剤等である衣類ケア剤は、衣類片に移される。
【0072】
シュー10は、既知のファスナ19を備えられる。
【0073】
図2は、本発明に従ったアイロンシューの第2の実施例を概略的に示す。アイロンシュー20は、衣類ケア剤を有する薬剤層23を備えられるシューソール22を有する。薬剤層は、衣類接触表面25を有する。薬剤層23は、アイロン接触表面24を有する内側シート21上において与えられる。シュー20は、既知であるファスナ29を備えられる。
【0074】
図3は、本発明に従ったアイロンシューの第3の実施例を概略的に示す。アイロンシュー30は、少なくとも1つのシューソール開口37を備えるシューソール32を有する。シューソールは、アイロン掛けに対して衣類接触表面35を備え、また衣類ケア剤を有する、薬剤層33を有する。
【0075】
図4は、蒸気アイロンにおいて取り付けられる本発明に従ったアイロンシューの第3の実施例を概略的に示す。
【0076】
本発明に従ったアイロンシュー40は、既知であるファスナ49を介して既知である蒸気アイロン60上に取り付けられるよう図示される。既知の蒸気アイロン60は、ソールプレート表面63を備えるソールプレート62、及び蒸気チャンバ69(概略的に図示)及び水リザーバ(図示せず)を有する蒸気生成手段を有する。開口67は、蒸気生成手段によって生成される蒸気を通すようソールプレート62において存在する。
【0077】
シューソール42は、アイロンのソールプレート62の底周辺部と同様の周辺部を有する。アイロンシュー40は、蒸気41を通すよう少なくとも1つのシューソール開口47を備えるシューソール42を有する。シューソールは、アイロン掛けに対して衣類接触表面45を備え、また衣類ケア剤を有する、薬剤層43を有する。
【0078】
図5は、アイロンにおいて取り付けられた本発明に従ったアイロンシューの第3の実施例を概略的に示す。
【0079】
本発明に従ったアイロンシュー50は、既知であるファスナ59を介して既知であるアイロン70のソールプレート72上に取り付けられた位置において図示される。シューソール52は、アイロン70のソールプレート72の底周辺部と同様の周辺部を有する。シューソール52は、アイロン掛けに対して衣類接触表面55を備え、また衣類ケア剤を有する、薬剤層53を有する。
【0080】
衣類ケア剤が水の存在下でより効果的に移される場合、ユーザは、水トリガ79を始動させ得、衣類を湿らせるようスプレイヤ78から衣類片に対して水を噴霧する。
【0081】
銀、銅、亜鉛、プラチナ、セレンのイオン、又はそれらの組合せ等であるイオンの移動に対して、湿気は必要とされる。実験により、追加的な水が加えられなくても、銀イオンは、衣類接触表面から衣類片の表面まで移される、ことが示された。
【0082】
特定の抗菌剤を選択する効果を示すよう、以下の例が与えられる。
【0083】
[試験]
特定の抗菌剤を選択する効果を示すよう、以下の例が与えられる。
【0084】
<基準>
アイロンシューは、抗菌剤の存在を有さずにゾルゲルコーティングを有し、基本的には基準アイロンシューである。S1と称される。
【0085】
<例1>
基準アイロンシューの製造段階が行なわれ、ゾルゲルトップコーティングの適用後、2.5wt%AgION(登録商標)エタノール溶液は、ウェットトップコーティング上へと噴霧された(2.5wt%AgION(登録商標)は、0.06wt%Ag+を有する)。続いて、シューは、乾燥及び硬化された。この例において、抗菌剤は、ウェットゾルゲルトップコート層上へと噴霧され、このウェットゾルゲル層へと少なくとも部分的に浸透し、このように得られた二部層は硬化される。この例における抗菌剤は、約10ミクロンのゾルゲルトップコートへと約1ミクロンの深さに浸透された、と推測された。このようにして、アイロンシューS2は得られた。
【0086】
<例2>
基準アイロンシューの製造段階が行なわれ、ゾルゲルトップコーティングの混合において、AgION(登録商標)エタノール溶液(重量において30:70の割合)が混入される。このようにして、抗菌ゾルゲル混合物は、約8%のAgION(登録商標)を有して得られる。
【0087】
ゾルゲル混合物がアルコールベースであるため、アルコール適合AgION(登録商標)パウダーが使用された。
【0088】
当業者は、望ましい場合は、異なる重量比率を選択し得る。
【0089】
続いて、シューは、乾燥及び硬化された。このようにしてアイロンシューS3が得られ、該アイロンシューは、約10ミクロンの厚さである抗菌トップコート層を有した。
【0090】
<例3>
水ベースのAgION(登録商標)懸濁液は、Teflon(登録商標)(Du Pont社による)ベースのCeralonコーティング(Whitford社による)と混合される。
【0091】
この2.5固体wt%AgION(登録商標)混合物は、噴霧することによってアイロンシュー上へと塗布される。Ceralonコーティングは、水ベースコーティングであり、混合物を得るよう、水ベースAgION(登録商標)(懸濁液)が使用された。故に得られた層は、乾燥及び硬化された。このようにして、アイロンシューS4が得られた。
【0092】
<アイロン掛け試験>
アイロンシューS1−S4を使用する試験は、Philips社からの同一のAzurアイロンを使用して行なわれた。
【0093】
使用されるアイロンは、蒸気アイロンであったが、蒸気発生機能は、複数の実験においてスイッチをオフにされた。
【0094】
記載される全てのサンプルは、1回の実行において試験された。
【0095】
複数の標準的な布(各々は、同一の波紋織りファブリック(moire fabric)0.4g/mから切断されている)が切断され(約13.5×約66.5cm)、以下の通り取り扱われた:
1)洗う;
2)上述された通り準備されたソールプレート1−4の1つを使用してアイロン掛けをする;
3)3日後、布は、黄色ブドウ球菌を植菌された。これは、布に対して菌液を塗布することによって実行される(ATCC 6538に準ずる);
4)18時間後、培養は停止され、その後、抗菌性能が確定された。
【0096】
菌液は、日本工業規格(JIS)「繊維製品の抗菌性試験方法及び抗菌効果」[規格番号:JIS L 1902:2002(E)第11頁;8.1.2試験菌液の調製、b)定量試験(菌液吸収法)の菌液]に従った特定の濃度における菌を有する培養液(アガール)である。
【0097】
調製された菌液は、複数の点で試験片上におかれる。また、試験片自体は、バイアル瓶にある(更なる詳細に関しては、JIS L 1902:2002、第20頁:20;10.1.3 試験操作、及び10.1.2試験片の殺菌を参照のこと)。
【0098】
以下が確定された:
・ Ma:標準布上における菌液の植菌直後の3つの試験片の生菌数の共用対数(common log)の平均;
・ Mb:標準布上における植菌の18時間後の3つの試験片の生菌数の共用対数の平均;
・ Mc:抗菌処理された試料上における植菌の18時間後の3つの試験片の生菌数の共用対数の平均。
【0099】
かかる実験データから、成長値(F)、静菌作用値(S)、及び殺菌作用値(L)は、導き出された。
【0100】
これらは、
F(成長値)=Mb−Ma
と定義付けられる。該成長値は、試験が有効であったか否かを確定するよう導き出される。F>1.5の場合、試験は有効であると考えられ、静菌及び殺菌作用値は、計算された。F<=1.5である場合、試験は、反復される。
【0101】
作用試験(activity test)は、使用される菌試料がアクティブであったことを示した。
【0102】
S(静菌作用値)=Mb−Mc
であり、抗菌加工を施された繊維製品及び標準布上において植菌が行なわれ、培養後の生菌数がカウントされ、加工製品と標準布との間の生菌数の差異は、静菌作用値を示す。
【0103】
L(殺菌作用値)=Ma−Mc
であり、菌制御加工を施された繊維製品及び標準布上において植菌が行なわれ、培養後の生菌数をカウントされ、植菌数と加工製品上における生菌数との差異は、殺菌作用値を示す。
【0104】
菌破壊(The Bacterium Kill)は:
{(0時間での標準布における菌数−18時間後での抗菌加工された布における菌数)/0時間での標準布における菌数}×100%
として確定された。
【0105】
結果は、以下の通り評価される:
静菌作用値≧2.0は、製品が菌の成長を阻止することができる、ことを示す。
【0106】
殺菌作用値≧0は、製品が菌の成長を抑えることができる、ことを示す。
【0107】
基準アイロンシュー1を使用する試験において、蒸気機能のスイッチはオフにされた。アイロンシューは実際には、ドライアイロンとして使用された。0である静菌値、<−1である殺菌値、及び無殺菌(no bacterium kill)は、植菌の18時間後に確定された。
【0108】
試験は、蒸気発生及びドライ状態下においてアイロンシューS2−S4を使用して、基準として同一のストローク量を使用して、実行された。
【0109】
比較試験において、アイロンシューS2は、アイロンシューS3より優れた抗菌結果を与えた。
【0110】
アイロンシューS2に対して、蒸気及びドライ試験はいずれも、>2の静菌値及び>0の殺菌値をもたらした。アイロンシューS2に対して、蒸気及び乾燥試験は、>90%のBacterium Kill(殺菌)をもたらした。
【0111】
複数の静菌作用は、アイロンシュー24に対して観察され、衣類は、リフレッシュされていると評価された。
【0112】
アイロンシューS2を使用してアイロン掛けされた布片は、そのアイロン掛けされた表面上において約0.004マイクログラムAg/cm2を有することが確定された。
【0113】
要約すれば、本発明は、抗菌剤を収容する手段及び衣類接触表面を備えるアイロンシューを有するアイロンに関連する。該手段は、少なくとも抗菌剤を収容する衣類接触表面によって形成される。衣類接触表面は、抗菌剤を衣類片に移すことができる。実用的な一実施例において、かかる手段は、抗菌剤を有する層を有し、該層は、衣類接触表面を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シューソールを有するアイロンシューであって、
該シューソールは、衣類接触表面を有し、また衣類ケア剤を収容する手段を備え、
該収容手段は、前記衣類ケア剤を収容する前記衣類接触表面によって少なくとも形成され、該衣類接触表面は、衣類片に対して前記衣類ケア剤を移すことができる、
アイロンシュー。
【請求項2】
蒸気を通過させるよう少なくとも1つの開口を備えるシューソールを有する、
ことを特徴とする請求項1記載のアイロンシュー。
【請求項3】
前記シューソールは、少なくとも0.05重量パーセントの前記衣類ケア剤を有するソール材料を有して作られる、
ことを特徴とする請求項1又は2記載のアイロンシュー。
【請求項4】
前記ソール材料は、シリコンラバー、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリフェニレン、又はポリアミドイミド(PAI)を有する群から選択される、
ことを特徴とする請求項3記載のアイロンシュー。
【請求項5】
前記衣類ケア剤を収容する手段は、前記衣類ケア剤を有する薬剤層を有し、前記衣類接触表面は、該薬剤層の表面である、
ことを特徴とする請求項1又は2記載のアイロンシュー。
【請求項6】
前記薬剤層は、前記衣類ケア剤の少なくとも0.5重量パーセントを有する、
ことを特徴とする請求項6記載のアイロンシュー。
【請求項7】
前記衣類ケア剤は、銀、亜鉛、銅、セレン、プラチナ、及びトリクロサンのイオン、あるいはそれらの組合せを有する群から選択される、
ことを特徴とする請求項1乃至6のうちいずれか一項記載のアイロンシュー。
【請求項8】
シューソールを備えるアイロンシューを製造する方法であって、
前記シューソールは、薬剤層を有し、該層は、衣類ケア剤を有し、また衣類接触表面を備え、該衣類接触表面は、衣類片に対して前記衣類ケア剤を移すことができ、
当該方法は:
・ 前記薬剤層を与える段階、
を有する方法。
【請求項9】
シューソールを有するアイロンシューを製造する方法であって、
前記シューソールは、衣類ケア剤を収容する衣類接触表面を有し、該衣類接触表面は、衣類片に対して前記衣類ケア剤を移すことができ、
当該方法は:
・ 前記シューソールを衣類ケア剤を有する材料から形成する段階、
を有する方法。
【請求項10】
請求項1乃至8のうちいずれか一項記載のソールプレート及びアイロンシューを備えるアイロンを有する衣類ケアシステムであって、
前記ソールプレート及び前記アイロンシューは、相互に協働するよう配置される、
衣類ケアシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−505495(P2010−505495A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−530988(P2009−530988)
【出願日】平成19年10月2日(2007.10.2)
【国際出願番号】PCT/IB2007/053991
【国際公開番号】WO2008/044165
【国際公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】