説明

アイロン

【課題】アイロン掛けの動作状態が変化した場合であっても、スチーム供給量にバラツキが生じることがないようにし、アイロン掛けの仕上がり品質を向上できるアイロンを提供することを目的とする。
【解決手段】アイロンベース2をヒータ6で加熱すると共にタンク16内の水をポンプ29により気化室7に供給してスチームを発生させるアイロンにおいて、前記スチームアイロンの姿勢を検知すると共にアイロン掛け作業の動作状態を検知する動作状態検知手段42と、この動作状態検知手段42が検知する信号の継続時間をカウントする時間カウント手段39と、前記信号の継続時間または時間間隔に応じてスチーム供給量を可変制御する制御手段43と、を有することを特徴とするアイロンによって上記の課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布地等のアイロン掛けに用いるアイロンに関する。
【背景技術】
【0002】
アイロン掛け作業に必要とされるスチーム量は、アイロン掛け作業の過程において変化するものであることから、アイロンの姿勢を検知して、その姿勢に応じてスチーム量を調節するようにしたアイロンがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、このようなアイロンでは、球体の移動を検出してアイロンの姿勢を検知する姿勢検知手段が用いられている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平6−205897号公報
【特許文献2】特開平11−169600号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来技術においては、アイロンが一定時間以上継続して所定状態とされた場合にスチームの発生を停止させているにすぎない。このようなアイロンでは、アイロンが別の姿勢を保つ限りスチームを発生し続けることになってスチームが無駄に消費されることになる。さらに、アイロン掛け作業において、アイロンを動かす速さによってスチーム供給量にバラツキが生じることになる。このようにスチーム供給量にバラツキが生じると、アイロン掛けの仕上がり品質が不均一になるという問題がある。
【0005】
また、アイロンの温度を検知してスチーム供給量を調節しても、温度検出とスチーム供給量との間にはタイムラグが生じるため、アイロンを動かす速さによってスチーム供給量にバラツキが生じることになる。したがって、上述したアイロン掛けの仕上がり品質に不均一が生じるという問題は避けられない。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、アイロンにおいて、アイロン掛けの動作状態に応じてスチーム供給量を調節し、アイロン掛けの動作状態が変化した場合であっても、スチーム供給量にバラツキが生じることがないようにし、アイロン掛けの仕上がり品質を向上することができるアイロンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、スチームを発生させるアイロンにおいて、アイロン掛け作業の動作状態を検知する検知手段と、この検知手段が検知する信号の継続時間をカウントする時間カウント手段と、前記信号の継続時間または時間間隔に応じてスチーム供給量を可変制御する制御手段と、を有することを特徴とするアイロンである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の発明によれば、アイロン掛けの動作状態に応じてスチーム供給量を調節でき、アイロン掛けの動作状態が変化した場合であっても、スチーム供給量にバラツキが生じることがない。したがって、アイロン掛けの仕上がり品質を向上することができるアイロンを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例を示すスチームアイロンの断面図である。
【図2】同上、動作状態検知手段を示すものであり、(a)は外観斜視図、(b)は水平状態での断面図、(c)は垂直状態での断面図、(d)は前進動作中の断面図、(e)後進動作中の断面図である。
【図3】同上、制御ブロック図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施形態について添付図面を参照しながら説明する。図1は本発明の実施例を示すスチームアイロンの断面図であり、1はアイロン本体である。このアイロン本体1は、例えばアルミダイカストで形成されたアイロンベース2の上面に遮熱板3を設け、この遮熱板3の上面をカバー4で覆い、このカバー4の上にハンドル5を取り付けてなる。
【0011】
前記アイロンベース2にはヒータ6が鋳込まれているとともに、上面に気化室7が形成され、この気化室7内がアイロンベース2の下面に設けられたスチーム噴出孔8を介してその下面側に連通している。
【0012】
前記遮熱板3の上面には通水継手9が設けられ、この通水継手9の一端側の上面に開口10が形成され、この開口10の内側に押し棒11が形成され、この押し棒11の上端部が開口10を通して通水継手9の上方に突出している。前記通水継手9の内部には、前記開口10に連通する流入部12と、この流入部12に対して隔壁9aにより隔てられた流出部13とが形成されている。
【0013】
前記流出部13の下部には滴下ノズル14が設けられ、この滴下ノズル14が前記気化室7内に突出し、この滴下ノズル14を介して前記流出部13内が気化室7内に連通している。
【0014】
前記アイロン本体1の前部には、例えばカセット式に構成された水タンク16が着脱可能に設けられている。この水タンク16の底部には流出口17および弁機構18が設けられ、前記弁機構18は支持体19に摺動自在に支持された弁杆20の中間部に円板状の弁体21を取り付け、この弁体21を、スプリング22を介して前記流出口17の配置側、つまり流出口17を閉塞する方向に弾性的に付勢してなる。
【0015】
そして、流出口17が通水継手9の開口10に液密的に接続し、この状態で通水継手9の押し棒11が弁杆20に当接して弁体21をスプリング22に抗して上方に押し上げ、これにより流出口17が開放状態に保持され、水タンク16内に収容された水がこの流出口17から開口10を通して通水継手9の流入部12内に流入するようになっている。
【0016】
なお、水タンク16の前面の上部には注水口23が形成され、この注水口23に注水蓋24が設けられ、この注水蓋24を開放して注水口23から水タンク16内に水を適宜注入することができるものである。
【0017】
前記通水継手9の他端側の上面には支持リブ27および支持板28が一体に形成され、これら支持リブ27および支持板28を介して通水継手9に電磁ポンプ29が取り付けられている。
【0018】
この電磁ポンプ29はコ字形のホルダー30によりその上下面が保持され、前記ホルダー30の下面がゴムなどの弾性材31を介して前記支持リブ27の上面に支持され、前記ホルダー30の側面がゴムなどの弾性材32を介して前記支持板28の側面に接合され、この状態でホルダー30がねじ33により前記支持板28に締付固定されている。
【0019】
電磁ポンプ29は一端側の端面に吸水口35を、他端側の端面に排水口36を有し、前記排水口36が上方を、前記吸水口35が下方を向く起立状態で前記ホルダー30を介して支持され、前記排水口36に逆U字状の送水パイプ37が接続されている。
【0020】
そして、前記吸水口35が通水継手9の流入部12内に挿入され、前記送水パイプ37の先端部が流出部13内に挿入され、電磁ポンプ29の作動により前記流入部12内の水が吸水口35から吸入され、この水が排水口36から送水パイプ37を通して流出部13内に供給されるようになっている。
【0021】
前記アイロンベース2の上面にはサーミスタなどからなる温度検知手段40が設けられ、またハンドル5の内部に基板41が設けられ、この基板41の上に姿勢を検知すると共にアイロン掛け作業の動作状態をも検出する動作状態検出手段42が設けられている。
【0022】
前記基板41の上には、マイクロコンピュータを内蔵した制御手段43、麻、綿、毛等の各種布地に合わせてアイロンベース2の温度の設定を行なうとともに温度設定状態をリセットする切モードを設定する温度設定スイッチ44、スチーム発生及びドライを交互に切換える自動復帰式のスチーム/ドライスイッチ45、麻、綿、毛等の各種布地に合わせた温度設定状況などを表示する複数のLED46およびブザー47が設けられ、前記温度設定スイッチ44、スチーム/ドライスイッチ45、LED46がハンドル5の上面に露出するように配置されている。
【0023】
図2は、前記動作状態検出手段42を示すものであり、その筐体50は、外観斜視図(a)に示すように略直方体をしている。(b)〜(e)は、動作状態検知手段42の動作状態を説明するための図面である。
【0024】
動作状態検出手段42は、たとえば反射形のフォトセンサ51と、反射体としての球体52と、この球体52をガイドする傾斜面50aを有する筐体50とにより構成されている。アイロン本体1の傾斜が所定の傾斜角度以下の場合、球体52は傾斜面50aの最下部に位置し、球体52はフォトセンサ51の光を反射する。その結果、フォトセンサ51の出力はオンとなり、この状態を水平状態としている。また、アイロン本体1の傾斜が所定の傾斜角度以上の場合、球体52はフォトセンサ51と対向しない位置になり、球体52による光の反射がないことからフォトセンサ51の出力はオフとなる。この状態を垂直状態としている。
【0025】
また、この動作状態検出手段42は、傾斜面50aの長手方向がアイロン本体1の前後方向と一致して設けられている。その結果、アイロン本体1を前後方向に移動させると、球体52は慣性の法則により傾斜面50a上を移動し、フォトセンサ51からはオン・オフ信号が出力されることになる。すなわち、動作状態検出手段42は、アイロン本体1が略垂直状態にあるときには自立状態と判断し、アイロン本体1が略水平状態にあるときには、アイロン掛けが実際に実行されていると判断する機能のみならず、アイロン本体1の前後移動の頻度に応じてオン・オフ信号を出力するアイロン掛けの動作状態を検知する機能をも有することになる。
【0026】
次に、動作状態検出手段42が前後方向に往復動作される場合の出力信号について、図2(b)〜(e)に基づいて説明する。
【0027】
(b)は、動作状態検出手段42の長手方向断面図であり、具体的にはアイロン本体1を水平にした状態の断面図である。筐体50の下部の平行面50bには反射型のフォトセンサ51が設けられ、該フォトセンサ51を設置した部位以外は傾斜面50aとされている。本実施例ではアイロン本体1の前部寄りに平行面50bが設けられ、アイロン本体1の後部寄りに傾斜面50aが設けられている。すなわち、傾斜面50aはアイロン本体1の後部寄りが高くなるように設けられており、アイロン本体1を水平状態にした場合、球体52は平行面50bに設けられたフォトセンサ51上に位置することになる。その結果、フォトセンサ51のトランジスタ53がオンとなり、制御手段43に対して信号Lを出力することになる。
【0028】
(c)は、アイロン掛け作業を一時中断してアイロン本体1を垂直状態に置いた場合を示している。この場合、球体52はフォトセンサ51上から離れた位置になり、フォトセンサ51のトランジスタ53はオフとなって、制御手段43に対して信号Hを出力することになる。すなわち、動作状態検出手段42は、(b)の状態と(c)の状態とで制御手段43に対して異なる信号を出力することととなり、アイロン本体1が水平姿勢であるか垂直姿勢であるかを検知することができる。
【0029】
(d)及び(e)は、アイロン本体1を水平状態で前後方向に往復動作させた場合の球体52の位置を示すものである。(d)はアイロン本体1を前方に移動させる場合を示し、(e)はアイロン本体1を後方に移動させる場合を示している。アイロン本体1を前方に移動させると、球体52は拘束されることなく自由移動できることから、慣性の法則により傾斜面50aを駆け上がるように移動する。この場合にはフォトセンサ51のトランジスタ53はオフとなって、制御手段43に対して信号Hが出力されることになる。
【0030】
一方、アイロン本体1を後方に移動させると、球体52は筐体50の前方側壁50cによって拘束されることから、フォトセンサ51上に位置したままとなる。この場合にはフォトセンサ51のトランジスタ53はオンとなって、制御手段43に対して信号Lが出力されることになる。すなわち、アイロン本体1を前後方向に往復動作させる場合には、フォトセンサ51のトランジスタ53は略等間隔のオン・オフ信号を交互に出力し、この信号を制御手段43に伝えることになる。また、アイロン本体1を前後方向に往復動作させる場合において、往復動作を一時停止する場合、球体52はフォトセンサ51上に位置することになり、フォトセンサ51のトランジスタ53は停止時間に対応したオン信号Lを出力することになる。
【0031】
このことから、アイロン本体1を高速で往復動作させる場合には、フォトセンサ51のトランジスタ53からの信号H,Lの発生頻度が高くなり、アイロン本体1を低速で往復動作させる場合には、フォトセンサ51のトランジスタ53からの信号H,Lの発生頻度が低くなる。アイロン本体1を高速で往復動作させることは、換言するなら単位時間当たりのアイロン掛け面積が多くなるということである。したがって、布地の単位面積当たりのスチーム量を均一化するためには、アイロン本体1を高速で往復動作する場合にはスチームを多量に発生させる一方、アイロン本体1を低速で往復動作する場合にはスチームを少量発生させることが必要である。
【0032】
図3は、本発明に係るスチームアイロンの制御ブロック図である。43は、マイコンからなる制御手段であり、時間カウント手段39が含まれる。この制御手段43にはヒータ6、温度検知手段40、温度設定手段44および表示手段46が接続されると共に、アイロン本体1の姿勢および動作状態を検知する動作状態検出手段42および電磁ポンプ29が接続されている。
【0033】
ここで、ヒータ6は制御手段43からの制御信号により通電され、アイロンベース2を加熱する。温度検知手段40は温度センサにより検知された温度信号を制御手段43に伝え、温度設定手段44は設定温度を制御手段43に伝える機能を有する。
【0034】
動作状態検出手段42はアイロン本体1の姿勢を検知すると共にアイロン本体1の動作状態をも検知してその信号を制御手段43に伝え、制御手段43は動作状態検出手段42の信号に基づいて電磁ポンプ29を制御するようになっている。すなわち、アイロン本体1を前後方向に往復動作させる毎に、動作状態検出手段42のトランジスタ53はオン・オフ信号を制御手段43に対して出力することになる。そして、制御手段43が、そのオン・オフ信号に応じてポンプ29を周期的に駆動することで、アイロンの動作状態に応じて布地に対するスチーム供給量を変化させることができる。
【0035】
例えば、信号Hが60秒以上継続する場合には、アイロンが自立姿勢であると判断してポンプ29の駆動を停止する。一方、信号Hの発生間隔が30秒〜60秒である場合には、スチームの噴出を少量とすべくポンプ29を長い周期で間欠駆動する。また、信号Hの発生間隔が15秒〜30秒である場合には、スチームの噴出を中量とすべくポンプ29を中程度の周期で間欠駆動する。さらに、信号Hの発生間隔が5秒〜15秒である場合には、スチームの噴出を多量とすべくポンプ29を短い周期で間欠駆動する。ここで、一周期当たりのポンプ29の駆動時間は一定としている。したがって、短い周期でポンプ29を駆動すればスチーム発生量が多くなり、長い周期でポンプ29を駆動すればスチーム発生量が少なくなる。
【0036】
このようにして、本実施例によるスチームアイロンでは、アイロンの姿勢検知のみならず、アイロンの動作状態をも検知して動作状態に応じて布地に対するスチーム供給量を変化させることができる。その結果、布地の単位面積当たりのスチーム供給量にバラツキが生じることがなく、アイロン掛けの仕上がり品質を向上させることができる。
【0037】
以上、本発明を実施例に基づいて説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。例えば上記実施例では、動作状態検知手段42のアイロン本体1への取り付けを、アイロンが前進動作する場合に球体52が傾斜面50aを転がり上がる方向にしたが、逆にアイロンが後進動作する場合に球体52が傾斜面50aを転がり上がる方向にしてもよい。また、動作状態検知手段42のセンサとして、フォトセンサに替えて磁性センサを用いることもできる。
【符号の説明】
【0038】
2 アイロンベース
6 ヒータ
7 気化室
16 タンク
29 ポンプ
39 時間カウント手段
42 動作状態検知手段
43 制御手段(制御部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチームを発生させるアイロンにおいて、
アイロン掛け作業の動作状態を検知する検知手段と、この検知手段が検知する信号の継続時間をカウントする時間カウント手段と、前記信号の継続時間または時間間隔に応じてスチーム供給量を可変制御する制御手段と、を有することを特徴とするアイロン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−10755(P2011−10755A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−156020(P2009−156020)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(390010168)東芝ホームテクノ株式会社 (292)