説明

アクチュエータ,アクチュエータモジュール及びアクチュエータシステム

【課題】低温環境でも安定して動作する軽量のフィルムアクチュエータを提供する。
【解決手段】エラストマーフィルム1の両面に取り付けた電極2,3の一方の電極3をヒータとしても機能させて,アクチュエータ動作温度を制御する。エラストマーフィルムをジュール熱によってガラス転移温度より高い温度に加熱して使用することで,安定したアクチュエータ動作を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,リニアアクチュエータ,それを用いたアクチュエータモジュール及びアクチュエータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
高齢化が世界的に進行している。それに伴い,高齢者の福祉政策や,介護問題,労働問題など様々な問題が顕在化しつつある。このような問題を解決するため,人の機能をアシストするロボットが注目されている。たとえば,装着することで下肢機能や上肢機能をアシストするロボットが報告されている。このような装着型のアシストロボットには装着性のよさや,人の意思どおりに動作することが必要である。そのため,このようなロボットに使用するアクチュエータには,制御性と軽量性の両方が必要とされる。
【0003】
このような装着型のアシストロボットに使用可能なアクチュエータの有力な候補のひとつにSRIインターナショナルが報告した誘電エラストマーアクチュエータがある(非特許文献1)。誘電エラストマーアクチュエータとは,フィルム状エラストマー材料に対し,表面と裏面に伸縮性がある電極を積層した構造のアクチュエータである。このアクチュエータは表面の電極と裏面の電極に電圧を印加すると,電極間にクーロン力引力が発生し,2つの電極でエラストマーフィルムを圧縮するように変形する。誘電エラストマーアクチュエータは出力エネルギー密度が高く,高速で動作するといわれており,軽量で制御性の高いアクチュエータとなる可能性がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Ron Pelrine, Roy Kornbluh, Qibing Pei, Jose Joseph; High-Speed Electrically Actuated Elastomers with Strain Greater Than 100%; Science, vol.287, p.836 (2000)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
誘電エラストマーアクチュエータは,エラストマー材料のゴム弾性変形を用いて動作する。エラストマー材料の弾性率は温度に大きく依存する。そのため,エラストマー材料によっては,使用環境の温度が変わると変形特性,すなわち誘電エラストマーアクチュエータのアクチュエータ特性が変わってしまうという問題があった。特に低温環境では硬化するため,材料によっては同じ電圧を印加しても変形量が少なくなる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような問題を解決するため,本発明では変形させるためにエラストマーフィルムの両面に取り付けた電極の少なくとも一方をヒータとしても機能させて,アクチュエータ動作温度を制御する。すなわち,エラストマーフィルムを変形させるための電極の一方の端から他方の端まで電流を流すことによりジュール熱を発生させ,ヒータとして使用する。
【0007】
すなわち,本発明によるアクチュエータは,誘電エラストマー材料からなるフィルムと,フィルムの第1の面に形成された伸縮性を有する第1の電極と,フィルムの第2の面に形成された伸縮性を有する第2の電極とを有し,第1の電極と第2の電極間への電圧印加によりフィルムが圧縮されるように変形するアクチュエータにおいて,第1の電極に,ジュール加熱のための電流を流す配線が接続されているものである。
【0008】
第1の電極の上記配線には,ジュール加熱のための電流を供給する第1の電源が接続され,第2の電極にはアクチュエータ動作のための電圧を印加する第2の電源が接続される。
【0009】
そして,第1の電源から第1の電極に第1の電圧を印加したときの電流値から第1の電極の温度を見積もり,その温度が予め決めた所定の温度以下であれば,第1の電源から第1の電極に第1の電圧より高い第2の電圧を印加して第1の電極をジュール加熱によって所定の温度以上とし,その後,第2の電源から第2の電極に電圧印加してアクチュエータ動作させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば,低温環境でも安定して動作することができる誘電エラストマーアクチュエータモジュールを提供することができる。
上記した以外の,課題,構成及び効果は,以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1A】従来の誘電エラストマーアクチュエータの斜視外略図。
【図1B】従来の誘電エラストマーアクチュエータの基本配線図。
【図2A】本発明の誘電エラストマーアクチュエータの基本構造を表す斜視外略図。
【図2B】本発明の誘電エラストマーアクチュエータの基本配線図。
【図3】エラストマー材料の弾性率の温度依存性を示す図。
【図4】導電性微粒子のポリマーコンポジット材料の電気伝導度の導電微粒子含量依存性を示す図。
【図5】導電性微粒子のポリマーコンポジット材料の電気伝導度の温度依存性を示す図。
【図6A】誘電エラストマーアクチュエータの形状の例を示す概略図。
【図6B】誘電エラストマーアクチュエータの形状の例を示す概略図。
【図6C】誘電エラストマーアクチュエータの形状の例を示す概略図。
【図7】本発明の誘電エラストマーアクチュエータを動作させるための動作フローの例を示す図。
【図8A】本発明の誘電エラストマーアクチュエータの回路を表す概略図。
【図8B】本発明の誘電エラストマーアクチュエータの回路を表す概略図。
【図9A】上面動作電極側から見た誘電エラストマーアクチュエータモジュールの一例の概略図。
【図9B】下面動作電極側から見た誘電エラストマーアクチュエータモジュールの一例の概略図。
【図9C】上面動作電極側から見た誘電エラストマーアクチュエータモジュールの一例の概略斜視図。
【図10A】本発明の誘電エラストマーアクチュエータモジュールの動作の一例を表す模式図であり,動作をさせる前の状態を示す図。
【図10B】本発明の誘電エラストマーアクチュエータモジュールの動作の一例を表す模式図であり,下面動作電極の温度を測定する状態を示す図。
【図10C】本発明の誘電エラストマーアクチュエータモジュールの動作の一例を表す模式図であり,アクチュエータ動作させた状態を示す図。
【図11A】本発明の誘電エラストマーアクチュエータモジュールの一例の動作前の状態を示す図。
【図11B】本発明の誘電エラストマーアクチュエータモジュールの一例の伸長動作をさせた状態を示す図。
【図12A】本発明の積層型誘電エラストマーアクチュエータの概略斜視図。
【図12B】本発明の積層型誘電エラストマーアクチュエータの配線を表す概略図。
【図13A】積層型誘電エラストマーアクチュエータモジュールの変形動作前の状態を示す図。
【図13B】積層型誘電エラストマーアクチュエータモジュールの変形後の状態を示す図。
【図14】本発明のアクチュエータを用いたシステム例を示す図。
【図15】本発明のアクチュエータを用いたシステム例の動作例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下,図面を参照して本発明の実施の態様を説明する。
【実施例】
【0013】
[実施例1]
実施例1では,本発明のアクチュエータの基本的な構造及び使用方法について説明する。
はじめに,アクチュエータの基本的な構造について説明する。図1Aは従来の誘電エラストマーアクチュエータの基本構造を表す斜視概略図,図1Bは従来の誘電エラストマーアクチュエータの基本配線図である。
【0014】
図1Aに示すように,従来の誘電エラストマーアクチュエータ100は誘電エラストマーフィルム1の両面に上面動作電極2及び下面動作電極3が取り付けられた構造を持つ。上面動作電極2には高圧電源6と接続するための上面電極配線4が,下面動作電極3には電気的に接地するための下面電極配線5が接続されている。
【0015】
アクチュエータ動作をさせるときは,高圧電源6より上面動作電極2と下面動作電極3の間に電圧を印加する。このことにより上面動作電極2と下面動作電極3の間にクーロン引力が働き,誘電エラストマーフィルム1が変形する。この変形をアクチュエータ動作に使用する。
【0016】
図1AのようにXYZ軸を取った場合,上面動作電極2と下面動作電極3の間に発生するクーロン引力によるz方向の応力Pは,印加電圧Vを用いて次のように表わすことができる。
【0017】
【数1】

ここで,ε0は真空の誘電率,εは誘電エラストマーフィルム1の比誘電率,dは上面動作電極2と下面動作電極3との間の距離である。誘電エラストマーアクチュエータの場合,上面動作電極2と下面動作電極3との間の距離dは,誘電エラストマーフィルム1の厚さと同じである。また,この応力Pによるz方向の変形率σは,近似的に次のように表すことができる。
【0018】
【数2】

式(2)で,Yは誘電エラストマーフィルム1の弾性率である。
【0019】
式(1)及び式(2)より,変形率σzは式(3)のように近似的に表すことができる。また,変形した時のエラストマーフィルムの体積が一定と考えた場合,x,y方向の変形率は式(4)で表すことができる。
【0020】
【数3】

【0021】
式(3)及び式(4)式より,同じ電圧を印加しても弾性率Yが異なると変形率σも異なることがわかる。
【0022】
本発明では,誘電エラストマーフィルムの材料となるエラストマー材料として,弾性率が0.1MPaから10MPa,伸び率が80%以上の材料を使用する。エラストマー材料の弾性率の温度依存性の典型例を図3に示す。一般に,ガラス転移温度Tg付近より高温では,弾性率の小さなエラストマー特性を示し,ガラス転移温度Tg付近より低温では,弾性率が大きいガラス特性を示す。特に,ガラス転移温度Tg付近より低温では弾性率が急激に増加する。このことは,ある電圧で誘電エラストマーアクチュエータを動作させる場合,ガラス転移温度Tg付近より低温で動作させると,ガラス転移温度Tg付近より高温で動作させた時と比べ,変形率が著しく小さくなることを意味している。したがって,誘電エラストマーアクチュエータを大きく安定して動作させるには,ガラス転移温度Tgより高温で弾性率の温度依存性が充分小さくなった領域で使用する必要がある。本実施例では,誘電エラストマーの温度に対する弾性率の変化が10%以下になる温度領域でアクチュエータを使用した。
【0023】
ガラス転移温度Tgは材料種に依存する物理量である。例えば,シリコン系エラストマーではガラス転移温度Tgが−50℃以下のものが多いが,室温で弾性率が低いアクリル系エラストマーの場合,ガラス転移温度Tgは0℃から−20℃程度と室温に近いものが多い。このようなガラス転移温度Tgが室温に近い誘電エラストマーアクチュエータを寒冷地で使用すると,エラストマーフィルムがガラス状態となり,変形量,すなわちアクチュエータ動作が室温で動作させた時と比べ,著しく小さくなってしまう可能性がある。
【0024】
本発明によれば,動作電極に電流を流し,ジュール熱によりアクチュエータを内部から加熱することで,外部環境がガラス転移温度Tg以下であっても,アクチュエータ温度をガラス転移温度Tgより高い設定温度以上にして,室温での使用時と同等の安定した動作をさせることができる。
【0025】
本発明のアクチュエータの基本的な構造について,図2A及び図2Bを用いて説明する。図2Aは本発明の誘電エラストマーアクチュエータの基本構造を表す斜視外略図,図2Bは本発明の誘電エラストマーアクチュエータの基本配線図である。
【0026】
本発明の誘電エラストマーアクチュエータ7は,図1Aに示した従来の誘電エラストマーアクチュエータ100と同様,誘電エラストマーフィルム1の両面に伸縮性を有する上面動作電極2及び下面動作電極3が積層された構造を持つ。上面動作電極2には高圧電源6と接続するための上面電極配線4が,下面動作電極3には電気的に接地するための下面電極配線5が接続されている。
【0027】
従来の誘電エラストマーアクチュエータ100と本発明の誘電エラストマーアクチュエータ7との構造の違いは,下面動作電極3をジュール熱によるヒータとしても使用するため,配線の取り出し口が下面電極配線5だけでなく,下面動作電極3の下面電極配線5と対向する位置に下面電極ヒータ配線8が設置されているところにある。下面電極ヒータ配線8には電流計10を介して電源9が接続されている。
【0028】
誘電エラストマーアクチュエータをガラス転移温度Tg以下の環境温度で使用する際は,下面動作電極3をヒータとして使用する。すなわち,下面電極ヒータ配線8に接続された電源9より,電気的に接地している下面電極配線5に対して電圧を印加する。これにより,下面動作電極3内に電流が流れ,下面動作電極3がジュール熱により発熱する。下面動作電極3が発熱することにより誘電エラストマーフィルム1が加熱され,ガラス転移温度Tg以上にすることができ,安定した動作が得られる。
【0029】
このように本発明では,伸縮性を有する下面動作電極3をジュール熱によるヒータとして使用するが,ジュール熱のエネルギー率Wは,印加した電圧をV,ヒータの電気抵抗をRとすると
【0030】
【数4】

と表わされるため,使用に適した電気抵抗値になるよう,下面動作電極3の電気伝導度を調節する必要がある。本発明では,電気伝導度の調整が容易な導電性微粒子のポリマーコンポジット材料を下面動作電極3の材料に用いる。導電性微粒子には,炭素微粒子,炭素繊維,カーボンナノチューブなどの炭素材料や,金や白金や銀などの金属材料も使用することができる。マトリクスとしてのポリマーには誘電エラストマーフィルムの変形に準じて変形する必要があるため柔軟性が必要とされる。そのため,アクリル系,シリコン系,ウレタン系,スチレン系のエラストマー材料や,シリコングリスなど高粘性材料などが使用できる。また,炭素微粒子,炭素繊維,カーボンナノチューブなどの炭素系微粒子材料単体でも下面動作電極3の材料に用いることは可能である。
【0031】
このような導電性微粒子のポリマーコンポジット材料を用いた電極のうち,炭素微粒子とアクリル系エラストマーを用いた電極の作製方法の一例を次に記す。アクリル系エラストマーの骨格分子を有機溶剤に溶解させた溶液に炭素微粒子を加えて攪拌し,炭素微粒子ポリマーコンポジットインクを作製する。作製したインクをスクリーン印刷法で誘電エラストマー材料膜表面に印刷する。この時,スクリーン印刷のほかに,ディスペンサーやインクジェットによるパターン描画法で印刷することもできる。印刷後,有機溶剤を蒸発させるためにベークし,乾燥させることで,炭素微粒子とアクリル系エラストマーを用いた電極を作ることができる。ここでは,導電性微粒子として炭素微粒子を使用したが,炭素繊維,カーボンナノチューブなどの炭素系材料や金や白金や銀などの金属材料を用いても同様の方法で作製することができる。また,アクリル系エラストマーの代わりにシリコン系,ウレタン系,スチレン系のエラストマー材料を用いても同様に作製することができる。エラストマーの代わりにシリコングリスなどの高粘性材料を使用する場合は,印刷後特にベークをする必要はない。炭素微粒子,炭素繊維,カーボンナノチューブなどの炭素微粒子材料単体で電極を作製するときは,一度,炭素微粒子材料を溶剤に分散させた後に印刷で電極パターンを作製するか,誘電エラストマー材料膜表面に電極形状の空きパターンを有したステンシルマスクを介して直接微粒子材料を吹き付けてもよい。
【0032】
導電性微粒子に炭素系材料を用いると,金属微粒子と比べ電極としての電気抵抗は高くなりやすいが,軽量の電極を作製することができる。マトリクスにエラストマー溶液を用いると,グリスを用いた時と比べてベーク工程が余分に必要となるが,微粒子が均一に分散した電極が作りやすい。
【0033】
図4に,本発明で使用する導電性微粒子のポリマーコンポジット材料の典型的な電気伝導度の導電微粒子含量依存性を示す。導電微粒子含量を調整することで電気伝導度を調整できることがわかる。
【0034】
また,このような導電性微粒子のポリマーコンポジット材料は,電気伝導度が温度依存性をもつ。図5に,導電性微粒子のポリマーコンポジット材料の典型的な電気伝導度の温度依存性を示す。温度が上がるにつれ,電気伝導度は上昇する。この性質を使用して,下面動作電極3の抵抗値を測定することで,誘電エラストマーアクチュエータの温度を見積もることができる。
【0035】
図6A〜6Cに,本発明の誘電エラストマーアクチュエータのいくつかを下面動作電極3側からみた形状概略図を示す。誘電エラストマーアクチュエータの形状は,図6Aに示すような円形状だけでなく,使用するときの必要に応じて図6Bに示すような四角形のような多角形にしてもよい。この場合,図6Cに示すように,下面動作電極3の下面電極配線5と下面電極ヒータ配線8が接続されている辺に低抵抗領域11を設けると,下面動作電極3をジュール加熱する際に,電束の分布が均一になるため下面動作電極3を均一に加熱することができ望ましい。
【0036】
本発明の誘電エラストマーアクチュエータを動作させるための動作フローの一例を図7に示す。はじめに,下面動作電極3の抵抗値を測定し(S11),温度を見積もる(S12)。そして,その温度が予め設定した安定動作に必要な温度よりも低ければ(S13),下面動作電極を加熱し誘電エラストマーアクチュエータを加熱する(S14)。加熱後,再び下面動作電極の抵抗測定から下面動作電極温度と設定値と比較する。この工程を,下面動作電極温度が設定値より高くなるまで繰り返し,高くなったら上面動作電極に電圧を印加し,アクチュエータ動作をさせる(S15)。
【0037】
下面動作電極加熱後,誘電エラストマーアクチュエータを動作させる際,下面動作電極3を加熱しない,すなわち電源9より電圧を印加しないで,アクチュエータ動作をさせる方法以外に,下面動作電極3を加熱しながらアクチュエータ動作させることも可能である。その場合,アクチュエータ動作のための高圧電源6から供給される電圧値に対して,下面動作電極3を加熱するために電源9から供給される電圧値が十分の1以下程度と十分小さくなるよう,下面動作電極3の電気抵抗を調節するとよい。このようにすることで,加熱中は下面動作電極3内に電位分布が発生するが,アクチュエータ動作させる際の上面動作電極2との間の電位差と比べて充分小さくできる。従って,動作させるために上面動作電極2に電位を印加すると,2つの電極2,3間をほぼ均一に収縮させることができる。
【0038】
また,上面動作電極2と下面動作電極3がショートしても電源9に影響を与えないように,図8Aのように高圧電源6と上面動作電極2との間にヒューズ13を入れる,あるいは図8Bのようにサージ防止回路12をつけることが望ましい。
【0039】
[実施例2]
実施例2では,本発明のアクチュエータを用いたアクチュエータモジュールの基本的な構造及び使用方法について説明する。
【0040】
図9A〜9Cは,本実施例の誘電エラストマーアクチュエータモジュールの一つの形態を示す模式図である。図9Aは上面動作電極側から見た概略平面図,図9Bは下面動作電極側から見た概略平面図,図9Cは上面動作電極側から見た概略斜視図である。
【0041】
誘電エラストマーアクチュエータモジュール20は,誘電エラストマーフィルム1の両面に,伸縮性を有する上面動作電極2及び下面動作電極3が設けられ,上面動作電極2には高圧電源6と接続するための上面電極配線4が,下面動作電極3には電気的に接地するための下面電極配線5が接続されている。また,下面動作電極3の下面電極配線5と下面電極ヒータ配線8が接続されている辺に,低抵抗領域11が設けられている。また,アクチュエータ電圧印加によって誘電エラストマーフィルム1が伸長する方向の両端には,硬質の固定具22が接続されている。固定具22は,アクチュエータの変形を外部負荷の移動に利用するためのものである。さらに,この誘電エラストマーアクチュエータモジュール20の上面電極配線4には外部配線21が,下面電極配線5には外部配線23が,下面電極ヒータ配線8には外部配線24がそれぞれ接続されている。
【0042】
図10A〜10Cは,誘電エラストマーアクチュエータモジュール20の動作の一例を表す模式図である。誘電エラストマーアクチュエータモジュール20の外部配線23は電気的に接地され,外部配線24はスイッチ25及び電流計10を介して電源9に,外部配線21はスイッチ26を介して高圧電源6に接続されている。
【0043】
誘電エラストマーアクチュエータモジュール20を動作させる前の状態では,スイッチ25,26ともに開いている(図10A)。次に,誘電エラストマーアクチュエータモジュール20の温度を測定するため,スイッチ25を閉じ,下面動作電極が発熱しないよう5V程度の小さな電圧を印加し,下面動作電極の抵抗を測定して温度を見積もる(図10B)。誘電エラストマーアクチュエータモジュール20の温度が安定動作可能な温度より低い場合,電源9より50V程度の電圧を印加し,下面動作電極を加熱する。誘電エラストマーアクチュエータモジュール20の温度が,安定動作可能な温度になった後,スイッチ26を閉じ,高圧電源6から1kV程度の電圧を上面動作電極に印加することで,誘電エラストマーアクチュエータモジュール20は伸長動作する(図10C)。
【0044】
ガラス転移温度Tg以上でも弾性率の温度依存性が大きい材料で,正確な温度制御が必要な場合は,電源9から印加する電圧を一定温度になるよう調整する。
【0045】
誘電エラストマーフィルム材料にガラス転移温度が0℃のアクリル系エラストマーを用いた,膜厚0.03mm,長さ100mm,幅20mmの誘電エラストマーアクチュエータモジュール20の場合,20℃付近の室温環境では,高圧電源6より1kV印加したところ50mmの伸長動作をすることができた。しかし,−10℃の動作環境で下面動作電極3を加熱せずに高圧電源6より1kV印加したところ,1mm以上の伸長動作は生じなかった。そのため,下面動作電極3を20℃になるように電源9より50V電圧を印加して電流を流し加熱したところ,室温と同じ50mmの伸長動作が安定して得られることができた。
【0046】
この誘電エラストマーアクチュエータモジュール20はフィルム状であるため,伸長時に伸長方向を妨げる方向に負荷があると,フィルムが折れ曲がり,伸長動作して負荷を動かすことは難しい。誘電エラストマーアクチュエータモジュール20では,伸長時の動作より伸長後,動作電極の電圧を下げる際に生じる収縮動作による収縮方向に発生する力を利用して負荷を動かすことが望ましいが,図11A及び図11Bに示すような構造のアクチュエータモジュールを用いれば,収縮時だけでなく,伸長時の変形動作でも外部の負荷を移動させることができる。
【0047】
図11A,図11Bに,伸長時の変形動作でも外部の負荷を移動させることができる誘電エラストマーアクチュエータモジュールの概略図を示す。この誘電エラストマーアクチュエータモジュール28は,二つの固定具22の間に押しバネ27が装着されている(図11A)。このことにより,誘電エラストマーアクチュエータモジュール28は常に伸長方向に負荷がかかり,伸長時に伸長を妨げる方向に負荷があっても押しバネ27の力で負荷を動かすことができる(図11B)。
【0048】
上記のアクリル系エラストマー材料を用いた断面形状が0.03mm×20mm,長さ100mmの誘電エラストマーアクチュエータの場合,押しバネに,最初に60mm圧縮したばね定数0.0015N/mmのばねを使用すれば,誘電エラストマーアクチュエータが約20mm伸長された状態でつり合い,誘電エラストマーアクチュエータに電圧を加えると,押しバネの力で約3gfの負荷を動かすことができる。
【0049】
この押しバネが装着されている構造は,誘電エラストマーアクチュエータを多層に積層したアクチュエータモジュールにも使用することができる。
【0050】
[実施例3]
実施例3では,実施例2とは異なった構造のアクチュエータを用いたアクチュエータモジュールについて説明する。
【0051】
誘電エラストマーアクチュエータを用いて大きな変位を得るため,積層型ピエゾアクチュエータとの類推で,誘電エラストマーアクチュエータを積層する方法が考えられる。実際に,Sensors and Actuators A 155 (2009) 299-307には積層型誘電エラストマーアクチュエータモジュールの作製例が報告されている。
【0052】
このような積層型誘電エラストマーアクチュエータも通常の誘電エラストマーアクチュエータと同じく,ガラス転移温度Tg以下では動作が著しく小さくなるといった課題があった。本発明を用いれば,低温でも安定に動作する積層型誘電エラストマーアクチュエータモジュールを提供することができる。
【0053】
図12A,図12Bは,本実施例の積層型誘電エラストマーアクチュエータの原理を示した図である。図では分かりやすいように誘電エラストマーアクチュエータを5層重ねた例を記しているが,必要に応じて積層枚数は調整することができる。図12Aは構造を表す概略斜視図,図12Bは配線を表す概略図である。
【0054】
本実施例の積層型誘電エラストマーアクチュエータ30は,実施例1の図2に示した誘電エラストマーアクチュエータ7を誘電エラストマーフィルムの膜厚方向に積層した構造を有し,一番下の層の誘電エラストマーアクチュエータには,下面に実施例1の図2の下面動作電極3に相当するヒータを兼ねる伸縮性を有するヒータ動作電極31Aが,上面に実施例1の図2の上面動作電極2に相当する伸縮性を有する動作電極32Aが設置されている。下から2番目の層の誘電エラストマーアクチュエータは,下面に一番下の層の誘電エラストマーアクチュエータと共通の動作電極32Aが,上面にヒータ動作電極31Bが設置されている。下から3番目の層の誘電エラストマーアクチュエータは,下面に下から2番目の層の誘電エラストマーアクチュエータと共通のヒータ動作電極31Bが,上面に動作電極32Bが設置されている。下から4番目の層の誘電エラストマーアクチュエータは,下面に下から3番目の層の誘電エラストマーアクチュエータと共通の動作電極32Bが,上面にヒータ動作電極31Cが設置されている。一番上の層の誘電エラストマーアクチュエータは,下面に下から4番目の層の誘電エラストマーアクチュエータと共通のヒータ動作電極31Cが,上面に動作電極32Cが設置されている。このように,上下に隣接する誘電エラストマーアクチュエータ間で,アクチュエータ動作電極とヒータ動作電極を交互に共用する構造になっている。
【0055】
一番下の層のヒータ動作電極31Aは,グランド配線36Aを介してグランドと接続されている。ヒータ動作電極31Aは,その他にヒータ配線35Aを介しヒータ電源34に接続されている。動作電極32Aは,高圧電源配線37Aを介しアクチュエータ動作用高圧電源33に接続されている。他の層のヒータ動作電極も一番下の層と同様に,グランド配線を介しグランドと,ヒータ配線を介しヒータ電源34に,動作電極も高圧電源配線を介しアクチュエータ動作用高圧電源33に接続されている。
【0056】
動作手順は,実施例1の図7で述べた方法と同様である。初めに,ヒータ動作電極の電気抵抗の値より温度を見積もる。そして,その温度が予め設定した安定動作に必要な温度よりも低ければ,ヒータ電源34より電圧を印加して電流を流すことでヒータ動作電極を加熱し,それによって誘電エラストマーアクチュエータ30を加熱する。加熱後,再びヒータ動作電極の抵抗測定からヒータ動作電極温度と設定値とを比較する。この工程を,ヒータ動作電極温度が設定値より高くなるまで繰り返し,設定値より高くなったら動作電極に高圧電源33より電圧を印加し,アクチュエータ動作をさせる。すると,各層が変形し,全体として積層方向に大きな収縮動作が得られる。
【0057】
図13A及び図13Bは,積層型誘電エラストマーアクチュエータモジュールの構造と変形動作前後の外観を示す概略斜視図である。図13Aは変形動作前の状態を示し,図13Bは変形後の状態を示している。
【0058】
積層型誘電エラストマーアクチュエータモジュールは,図12で説明した積層型誘電エラストマーアクチュエータ30を,アクチュエータ積層方向の上端と下端に固定された非伸縮性の固定具38,39により挟んだ構造を持つ。積層型誘電エラストマーアクチュエータモジュール50の表面には,各層からのグランド配線を接続する外部グランド配線40,ヒータ配線を接続する外部ヒータ配線41,高圧電源配線を結ぶ外部高圧電源配線42が設けられ,それぞれ,絶縁性の固定具38の内部を通り,それぞれ外部配線43,45,44に接続されている。外部配線43はグランド,外部配線45はヒータ電源,外部配線44は高圧電源に接続されている。
【0059】
誘電エラストマーフィルム材料にガラス転移温度が0℃のアクリル系エラストマーを用いた,膜厚0.03mm,直径15mmの誘電エラストマーアクチュエータを3000層積層し,全長を90mmとした誘電エラストマーアクチュエータモジュール50の場合,室温環境では高圧電源33より1kV印加したところ,積層方向に40mmの伸長動作をすることができた。しかし,−10℃の動作環境でヒータ動作電極を加熱せずに高圧電源33より1kV印加したところ,1mm以上の伸長動作は生じなかった。ヒータ動作電極を20℃になるように電源34より電流を流したところ,室温と同じ40mmの伸長動作を安定して得ることができた。
【0060】
[実施例4]
本発明のアクチュエータは軽量でフレキシブルなため,ロボットや装着型パワードスーツへの応用が期待される。本実施例では,ロボットの関節の屈伸に相当する,ヒンジで接続された2つのアームを本発明のアクチュエータを用いたワイヤー駆動で屈曲運動させるためのシステムについて記述する。
【0061】
図14は,本実施例のアーム屈曲システムの概略図である。アーム屈曲システム60はアーム部61,アクチュエータ部62,アクチュエータ制御部63から構成される。
【0062】
アーム部61は,大きく分けると,ヒンジ64とそれにつながる上部アーム65,下部アーム66及び,アクチュエータの伸縮運動をアームの屈曲運動に伝達変換するワイヤー67から成る。下部アーム66にはワイヤー固定部68が,上部アーム65にはワイヤーガイド69が搭載されている。ワイヤー67の一方の端はワイヤー固定部68に固定され,他方の端はワイヤーガイドプーリー69を通り,アクチュエータ部62の固定具72に接続されている。下部アーム66のヒンジとは逆の端には負荷79が取り付けられている。また,下部アーム66はヒンジ64を中心とした回転運動(屈曲運動)ができるが,上部アーム65は動かないように固定されている。
【0063】
アクチュエータ部62は実施例3の積層型誘電エラストマーアクチュエータモジュール50と同様の,積層した誘電エラストマーアクチュエータ70の上下を固定具71,72で挟んだ構造であり,各層からそれぞれ,グランド配線を接続する外部グランド配線73,ヒータ配線を接続する外部ヒータ配線74,高圧電源配線を結ぶ外部高圧電源配線75がでている。外部グランド配線73はグランドに設置されている。固定具71は上部アーム65に固定されている。
【0064】
アクチュエータ制御部63は高圧電源80,ヒータ抵抗測定用電流計81,ヒータ電源82,コントローラ83を備える。高圧電源配線75は高圧電源80に,外部ヒータ配線74はヒータ抵抗測定用電流計81を介しヒータ電源82に接続されている。高圧電源80,ヒータ抵抗測定用電流計81,ヒータ電源82はそれぞれコントローラ83に接続され,制御及び計測されている。コントローラ83に接続されたメモリ84には,アクチュエータの安定動作に必要な最低温度(設定値),アクチュエータに用いられているエラストマー材料の弾性率の温度依存性を示す情報,及びヒータとしての機能を有する動作電極の抵抗値と温度の関係を示す情報が演算式やテーブルなどの形で格納されている。エラストマー材料の弾性率の温度依存性を示す情報の代わりに,温度をパラメータとした所望のアクチュエータ動作に必要な印加電圧の情報を格納してもよい。
【0065】
上部アーム65及び下部アーム66は断面が半径5cmの円形で,上部アーム65の一方の端にあるヒンジ64から他方の端までの長さは40cm,下部アーム66の一方の端にあるヒンジ64から他方の端にある負荷79までの長さは30cmである。負荷79を10kgとすると,図15に示すように上部アーム65と下部アーム66のなす角が180度から上部アーム65と下部アーム66のなす角が90度になるように屈曲させるには,ワイヤー67を7.9cm上に引っ張る必要がある。その際,最大約590Nの力が必要となる。
【0066】
本実施例では誘電エラストマーアクチュエータ70に,アクリル系エラストマーを使用した膜厚0.03mm,断面形状が10mm×30mmの誘電エラストマーアクチュエータを10000層積層して作製したものを使用した。
【0067】
次に,本実施例のアーム屈曲システムの動作手順について記述する。動作手順は実施例1の図7で述べた方法と同様である。初めに,ヒータ電源82からヒータ電極に5V印加し,その際の電流値をヒータ抵抗測定用電流計81で測定してコントローラ83に送る。コントローラ83では,測定された電流値を抵抗値へ変換し,メモリ84に格納されたヒータ電極の抵抗値と温度の関係を示す情報を参照して,ヒータ電極の温度を見積もる。そして,その温度が予め設定した安定動作に必要な温度である20℃よりも低ければ,ヒータ電源83より電圧を50V印加して電流を流すことでヒータ動作電極を加熱し,誘電エラストマーアクチュエータ70を加熱する。加熱後,再びヒータ動作電極の抵抗測定からヒータ動作電極温度と設定値と比較する。この工程を,ヒータ動作電極温度が設定値より高くなるまで繰り返し,高くなったら動作電極に高圧電源80より電圧を印加する。高圧電源80より1kV印加したところ,下部アーム66が負荷79を持ち上げながら90度回転した。なお,所望のアクチュエータ動作に必要な印加電圧はそのときのアクチュエータ温度に依存して変わるため,精密な制御が必要とされる場合には,見積もられた電極温度を元にメモリ84に格納されているエラストマー材料の弾性率の温度依存性を示す情報,あるいは温度をパラメータとした所望のアクチュエータ動作に必要な印加電圧の情報を参照して,印加電圧を調整してもよい。
【0068】
なお,本発明は上記した実施例に限定されるものではなく,様々な変形例が含まれる。例えば,上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり,必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また,ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり,また,ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また,各実施例の構成の一部について,他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 誘電エラストマーフィルム
2 上面動作電極
3 下面動作電極
4 上面電極配線
5 下面電極配線
6 高圧電源
7 誘電エラストマーアクチュエータ
8 下面電極ヒータ配線
9 電源
10 電流計
11 低抵抗領域
12 サージ防止回路
13 ヒューズ
20 誘電エラストマーアクチュエータモジュール
21 外部配線
22 固定具
23,24 外部配線
25,26 スイッチ
27 押しバネ
28,30 誘電エラストマーアクチュエータモジュール
31A,31B,31C ヒータ動作電極
32A,32B,32C 動作電極
33 高圧電源
34 ヒータ電源
35A ヒータ配線
36A グランド配線
37A 高圧電源配線
38,39 固定具
40 外部グランド配線
41 外部ヒータ配線
42 外部高圧電源配線
43,44,45 外部配線
61 アーム部
62 アクチュエータ部
63 アクチュエータ制御部
64 ヒンジ
65 上部アーム
66 下部アーム
67 ワイヤー
68 ワイヤー固定部
69 ワイヤーガイド
70 誘電エラストマーアクチュエータ
71,72 固定具
80 高圧電源
81 ヒータ抵抗測定用電流計
82 ヒータ電源
83 コントローラ
84 メモリ
100 誘電エラストマーアクチュエータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電エラストマー材料からなるフィルムと,
前記フィルムの第1の面に形成された伸縮性を有する第1の電極と,
前記フィルムの第2の面に形成された伸縮性を有する第2の電極とを有し,
前記第1の電極と前記第2の電極間への電圧印加により前記フィルムが圧縮されるように変形するアクチュエータにおいて,
前記第1の電極に,ジュール加熱のための電流を流す配線が接続されていることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
請求項1記載のアクチュエータにおいて,前記配線は,前記第1の電極を接地するための配線と対向する位置に設けられていることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項3】
請求項1記載のアクチュエータにおいて,前記電極は導電性微粒子とエラストマーのコンポジット材料からなることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項4】
請求項1記載のアクチュエータにおいて,第1の面に前記第1の電極が形成され第2の面に前記第2の電極が形成されたフィルムが膜厚方向に複数積層され,隣接するフィルム間で前記第1の電極と前記第2の電極を交互に共用していることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項5】
誘電エラストマー材料からなるフィルムと,
前記フィルムの第1の面に形成された伸縮性を有する第1の電極と,
前記フィルムの第2の面に形成された伸縮性を有する第2の電極とを有し,
前記第1の電極に,ジュール加熱のための電流を流す配線を流す配線が接続されており,前記第1の電極と前記第2の電極間への電圧印加により前記フィルムが圧縮されるように変形するアクチュエータと,
前記アクチュエータの変形を外部負荷の移動に利用するために前記アクチュエータに固定された一対の固定具と,
を有することを特徴とするアクチュエータモジュール。
【請求項6】
請求項5記載のアクチュエータモジュールにおいて,第1の面に前記第1の電極が形成され第2の面に前記第2の電極が形成されたフィルムが膜厚方向に複数積層され,隣接するフィルム間で前記第1の電極と前記第2の電極を交互に共用していることを特徴とするアクチュエータモジュール。
【請求項7】
請求項5記載のアクチュエータモジュールにおいて,前記一対の固定具は前記第1の電極と前記第2の電極間に電圧を印加したとき前記フィルムが伸長する方向の両端にそれぞれ固定され,前記伸長方向の負荷を前記一対の固定具間に常時作用させるための押しバネが設けられていることを特徴とするアクチュエータモジュール。
【請求項8】
請求項5記載のアクチュエータモジュールにおいて,第1の面に前記第1の電極が形成され第2の面に前記第2の電極が形成されたフィルムが膜厚方向に複数積層され,隣接するフィルム間で前記第1の電極と前記第2の電極を交互に共用しており,前記一対の固定具は,前記フィルムの積層方向の下端と上端に固定されていることを特徴とするアクチュエータモジュール。
【請求項9】
誘電エラストマー材料からなるフィルムと,
前記フィルムの第1の面に形成された伸縮性を有する第1の電極と,
前記フィルムの第2の面に形成された伸縮性を有する第2の電極とを有し,
前記第1の電極に,ジュール加熱のための電流を流す配線を流す配線が接続されており,前記第1の電極と前記第2の電極間への電圧印加により前記フィルムが圧縮されるように変形するアクチュエータと,
前記アクチュエータに固定され,前記アクチュエータの変形を外部負荷の移動に利用するための一対の固定具と,
前記第1の電極の前記配線に接続され前記ジュール加熱のための電流を供給する第1の電源と,
前記第2の電極にアクチュエータ動作のための電圧を印加する第2の電源と,
前記第1の電源及び前記第2の電源を制御するコントローラと,
を有することを特徴とするアクチュエータシステム。
【請求項10】
請求項9記載のアクチュエータシステムにおいて,前記コントローラは,前記第1の電源から前記第1の電極に第1の電圧を印加したときの電流値から前記第1の電極の温度を見積もり,前記見積もった温度が予め決めた所定の温度以下であれば,前記第1の電源から前記第1の電極に前記第1の電圧より高い第2の電圧を印加して前記第1の電極をジュール加熱によって前記所定の温度以上とし,その後,前記第2の電源から前記第2の電極に電圧印加してアクチュエータ動作させることを特徴とするアクチュエータシステム。
【請求項11】
請求項9記載のアクチュエータシステムにおいて,第1の面に前記第1の電極が形成され第2の面に前記第2の電極が形成されたフィルムが膜厚方向に複数積層され,隣接するフィルム間で前記第1の電極と前記第2の電極を交互に共用しており,前記一対の固定具は,前記フィルムの積層方向の下端と上端に固定されていることを特徴とするアクチュエータシステム。
【請求項12】
請求項10記載のアクチュエータシステムにおいて,前記コントローラは,前記見積もった温度に応じて前記アクチュエータ動作させるために前記第2の電源から前記第2の電極に印加する電圧を調整することを特徴とするアクチュエータシステム。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−249388(P2012−249388A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118107(P2011−118107)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】