説明

アクチュエータ

【課題】簡単な構成で回転駆動源の回転運動をロッドの直線運動に変換することができ、コスト低減を図ることができるアクチュエータを提供する。
【解決手段】電動アクチュエータ11は、モータの回転運動を、アクチュエータ本体12に出没可能に支持された第1及び第2のロッド24,26の直線運動に変換する変換機構を備える。この変換機構は、モータの回転力が伝達されて回転するとともに弾性力を有し、第1及び第2のロッド24,26に外装される第1及び第2のコイルバネ19,22を備える。さらに、変換機構は、第1及び第2のコイルバネ19,22の螺旋線材19a,22aに接するように第1及び第2のロッド24,26から突設されるとともに、アクチュエータ本体12の内周面に形成されたガイド溝12aに挿入される回り止めローラ29を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転駆動源の回転運動を、アクチュエータ本体に出没可能に支持されたロッドの直線運動に変換する変換機構を備えたアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばモータの駆動力によりロッドをアクチュエータ本体から出没させる電動アクチュエータとしては、例えば、特許文献1に開示されるものがある。図6に示すように、この電動アクチュエータ80のアクチュエータ本体81内にはロッド82が設けられるとともに、ロッド82の内部には小径圧縮コイルバネ83が挿入されている。この小径圧縮コイルバネ83には、モータ84の回転軸84aが連結されている。小径圧縮コイルバネ83の外側には大径圧縮コイルバネ85が外挿されるとともに、大径圧縮コイルバネ85の外周はロッド82の内周面に固着されている。
【0003】
小径圧縮コイルバネ83の内側にはリテーナ86が小径圧縮コイルバネ83の軸方向へ移動可能に収容されている。リテーナ86は、リテーナ本体86aと、その両端外周面から小径圧縮コイルバネ83の径方向に沿って突設された規制ピン86bとから形成されている。この規制ピン86bは、小径圧縮コイルバネ83と大径圧縮コイルバネ85との間の空間部87に位置されている。この空間部87には、両圧縮コイルバネ83,85の螺旋線材83a,85aに接する複数の転動ボール88が介在されている。これら転動ボール88は、両螺旋線材83a,85aに沿って螺旋状に配列されるとともに、規制ピン86bにより離散しないように保持されている。
【0004】
ロッド82の内端には環状のピストン90が固定されるとともに、ピストン90はアクチュエータ本体81に支持されている。ピストン90の外縁部にはアクチュエータ本体81の軸方向に延びるガイド棒89が貫通されるとともに、ガイド棒89の両端部はアクチュエータ本体81に固定されている。そして、ピストン90とガイド棒89とによって小径圧縮コイルバネ83と大径圧縮コイルバネ85が共回りして大径圧縮コイルバネ85が回転運動するのを防止する。
【0005】
そして、電動アクチュエータ80によれば、モータ84が回転すると、その回転運動が回転軸84aを介して小径圧縮コイルバネ83に伝達され、小径圧縮コイルバネ83は回転する。すると、小径圧縮コイルバネ83の回転に伴い、リテーナ86が回転しながら小径圧縮コイルバネ83の軸方向へ移動するとともに、大径圧縮コイルバネ85が回転することなく直線的に移動する。その結果、大径圧縮コイルバネ85に固着されたロッド82が直線的に移動する。
【0006】
この電動アクチュエータ80において、ロッド82の先端が対象物に突き当たると、ロッド82の移動が規制される。このとき、小径圧縮コイルバネ83及び大径圧縮コイルバネ85が圧縮されて弾性変形し、両圧縮コイルバネ83,83に蓄積される弾性力により、モータ84が停止された後にロッド82を対象物に押し付けるのに必要な推力が確保される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−211725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、特許文献1の電動アクチュエータ80は、モータ84の回転運動をロッド82の直線運動に変換するために、小径圧縮コイルバネ83、大径圧縮コイルバネ85、リテーナ86、及び複数の転動ボール88よりなる変換機構を必要とし、変換機構の構成が複雑化するとともに、コストが嵩んでしまっていた。さらに、モータ84の回転運動をロッド82の直線運動に変換するために、変換機構に加えて、回り止め機構としてピストン90とガイド棒89とを必要とし、電動アクチュエータ80の内部構造が複雑化するとともに、コストが嵩んでしまっていた。
【0009】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、簡単な構成で回転駆動源の回転運動をロッドの直線運動に変換することができ、コスト低減を図ることができるアクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、回転駆動源の回転運動を、アクチュエータ本体に出没可能に支持されたロッドの直線運動に変換する変換機構を備えたアクチュエータであって、前記変換機構を、前記回転駆動源の回転力が伝達されて回転するとともに弾性力を有し、前記ロッドに外装されるコイルバネと、前記コイルバネの螺旋線材に接するように前記ロッドから突設されるとともに、前記アクチュエータ本体の内周面に形成されたガイド溝に挿入される回り止め部とから構成したことを要旨とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のアクチュエータにおいて、前記回り止め部は、前記ロッドから突設された支軸と、該支軸に回転可能に支持され前記螺旋線材に接して回転する第1回転体と、前記支軸に回転可能に支持され前記ガイド溝に接して回転するとともに前記第1回転体に対して独立して回転可能な第2回転体とから構成されていることを要旨とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載のアクチュエータにおいて、前記ロッドとして、第1のロッドと、該第1のロッドに対し該第1のロッドの軸方向へ移動可能に内挿された第2のロッドとを備えるとともに、第1及び第2のロッドの先端にはハンド部材が一体化され、前記第1のロッドに外装された第1のコイルバネと、前記第2のロッドに外装された第2のコイルバネとを備え、前記第1のコイルバネと第2のコイルバネの螺旋線材の巻方向を逆にしたことを要旨とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡単な構成で回転駆動源の回転運動をロッドの直線運動に変換することができ、コスト低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】クランプ位置に配置された電動アクチュエータを示す断面図。
【図2】第1の実施形態の電動アクチュエータを示す斜視図。
【図3】第1の実施形態の電動アクチュエータを示す図2の3−3線断面図。
【図4】アンクランプ位置に配置された電動アクチュエータを示す断面図。
【図5】第2の実施形態の電動アクチュエータを示す断面図。
【図6】背景技術の電動アクチュエータを示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施形態)
以下、本発明のアクチュエータを電動アクチュエータに具体化した第1の実施形態を図1〜図4にしたがって説明する。
【0016】
図1に示すように、電動アクチュエータ11は、両側に開口部を有する筒状のアクチュエータ本体12を備えるとともに、そのアクチュエータ本体12の両端開口部はカバー13a,13bにより塞がれている。図2に示すように、アクチュエータ本体12の軸方向の中央部外面には回転駆動源としてのモータ14が固設されている。図1に示すように、モータ14により駆動される駆動軸14aはウォームギアよりなる。駆動軸14aはアクチュエータ本体12を貫通してアクチュエータ本体12内に引込まれている。
【0017】
アクチュエータ本体12内の軸方向の中央部には、ウォームホイール15が軸受16を介してアクチュエータ本体12に回転可能に支持されている。ウォームホイール15は、駆動軸14aに噛合連結されている。そして、駆動軸14aの回転によりウォームホイール15が回転するようになっている。
【0018】
アクチュエータ本体12内の軸方向の一端部には、第1の回転部材17が軸受18を介してアクチュエータ本体12に回転可能に支持されている。ウォームホイール15の軸方向の一端部には、第1のコイルバネ19の一端が固着されるとともに、この第1のコイルバネ19の他端は、第1の回転部材17に固着されている。また、アクチュエータ本体12内の軸方向の他端部には、第2の回転部材20が軸受21を介してアクチュエータ本体12に回転可能に支持されている。ウォームホイール15の軸方向の他端部には、第2のコイルバネ22の一端が固着されるとともに、この第2のコイルバネ22の他端は、第2の回転部材20に固着されている。第1及び第2のコイルバネ19,22は等ピッチに形成されている。
【0019】
第1のコイルバネ19の螺旋線材19aと、第2のコイルバネ22の螺旋線材22aとは、螺旋線材19aの螺旋が延びる方向(巻方向)と、螺旋線材22aの螺旋が延びる方向(巻方向)とが逆になっている。そして、モータ14により駆動軸14aが回転するとともに、ウォームホイール15が回転すると、第1のコイルバネ19及び第2のコイルバネ22が同時に回転するようになっている。
【0020】
アクチュエータ本体12内には、その軸方向に沿って延び、かつ外端開口部がキャップ23aによって塞がれた筒状をなす第1のロッド24が設けられている。キャップ23aには第1のハンド部材Haが固定されている。この第1のロッド24は、アクチュエータ本体12の一端開口部を塞ぐカバー13aに滑り軸受25aを介して摺動可能に貫通支持されている。また、第1のロッド24は、一端側が第1の回転部材17内に挿通されるとともに、他端側がウォームホイール15内に挿通されている。
【0021】
アクチュエータ本体12内には、その軸方向に沿って延び、かつ外端開口部がキャップ23bによって塞がれた筒状をなす第2のロッド26が設けられている。キャップ23bには第2のハンド部材Hbが固定されている。この第2のロッド26は、アクチュエータ本体12の他端開口部を塞ぐカバー13bに滑り軸受25bを介して摺動可能に貫通支持されている。また、第2のロッド26は、一端側が第2の回転部材20内に挿通されるとともに、他端側が第1のロッド24に内挿されている。
【0022】
第1のロッド24の内径は、第2のロッド26の外径より大きく形成されている。そして、第1のロッド24には、第2のロッド26の内端側が内挿されるとともに、第1のロッド24と第2のロッド26は、両ロッド24,26の軸方向へ相対移動可能になっている。
【0023】
第1及び第2のロッド24,26それぞれには、一対の支軸27が第1及び第2のロッド24,26の周方向に対向する位置から外径方向に沿って突設されるとともに、螺旋線材19a,22aのピッチ間に挿入されている。各支軸27には第1回転体としての送りローラ28が回転可能に支持されている。また、各支軸27には、回り止め部及び第2回転体としての回り止めローラ29が回転可能に支持されている。送りローラ28と回り止めローラ29とは互いに独立して回転可能に支軸27に支持されている。一対の支軸27は、一方の送りローラ28の周面の一部が、螺旋線材19a,22aに常に接触し、他方の送りローラ28の周面の一部が、螺旋線材19a,22aに常に接触する位置に突設されている。すなわち、一対の送りローラ28が各螺旋線材19a,22aの軸方向に各送りローラ28を挟む位置(前後)に常に接触しており、この接触により第1及び第2のコイルバネ19,22の軸方向への移動が規制されている。
【0024】
また、アクチュエータ本体12内面の対向する位置それぞれにはガイド溝12aがアクチュエータ本体12の軸方向全体に亘って直線状に延びるように形成されている。そして、各ガイド溝12a内には、回り止めローラ29が配置されるとともに、回り止めローラ29はガイド溝12aの内面に接触することで回転するようになっている。
【0025】
回り止めローラ29がガイド溝12a内で回転することにより、第1のコイルバネ19及び第2のコイルバネ22の回転に伴い第1のロッド24及び第2のロッド26が共回りすることが防止されるようになっている。これにより、第1のコイルバネ19及び第2のコイルバネ22の回転運動が、送りローラ28に伝達され、送りローラ28が回転する。すると、第1及び第2のコイルバネ19,22の回転運動が、第1のロッド24及び第2のロッド26の直線運動に円滑に変換される。本実施形態では、第1及び第2のコイルバネ19,22と、回り止めローラ29とから、モータ14の回転運動を第1及び第2のロッド24,26の直線運動に変換する変換機構が構成されている。
【0026】
また、電動アクチュエータ11においては、モータ14が正方向に回転されると、図4に示すように、第1及び第2のロッド24,26は、アクチュエータ本体12から突出されることなり、対象物Wをアンクランプするアンクランプ位置に配置される。反対に、モータ14が逆方向に回転されると、図1に示すように、第1及び第2のロッド24,26は、アクチュエータ本体12内に没入されることとなり、クランプ位置に配置される。
【0027】
さて、図1に示すように、第1及び第2のロッド24,26が没入されている状態で、モータ14が正方向に駆動されると、駆動軸14aの回転に伴いウォームホイール15が回転し、ウォームホイール15の回転に伴い第1及び第2のコイルバネ19,22が正方向へ回転する。すると、第1及び第2のロッド24,26が第1及び第2のコイルバネ19,22の軸方向に沿って直線的に移動され、図4に示すように、第1及び第2のロッド24,26はアンクランプ位置に配置される。
【0028】
そして、第1及び第2のロッド24,26が突出している状態で、モータ14が逆方向に駆動されると、駆動軸14aの回転に伴いウォームホイール15が回転し、ウォームホイール15の回転に伴い第1及び第2のコイルバネ19,22が逆方向へ回転する。すると、第1及び第2のロッド24,26が第1及び第2のコイルバネ19,22の軸方向に沿って直線的に移動され、図1に示すように、第1及び第2のロッド24,26はクランプ位置に配置される。
【0029】
そして、第1及び第2のハンド部材Ha,Hbの内面が対象物Wに突き当たると、第1及び第2のロッド24,26の移動が規制される。このとき、第1及び第2のコイルバネ19,22には、送りローラ28の圧接により圧縮されて共に弾性変形する。送りローラ28の圧接により第1及び第2のコイルバネ19,22の螺旋線材19a,22aが弾性変形すると、送りローラ28に圧接する前と比べると、送りローラ28が圧接した螺旋線材19a,22aの傾斜角度が維持されなくなり(小さくなり)、分力が小さくなる。その結果、第1及び第2のロッド24,26にクランプ推力が付与される。この分力は第1及び第2のコイルバネ19,22のバネ定数に基づくものであるため、第1及び第2のコイルバネ19,22のバネ定数を適宜設定することで、所望するクランプ推力を得ることができる。
【0030】
そして、第1及び第2のロッド24,26に付与されるクランプ推力が必要十分な値に達するまでモータ14は回転し続け、必要十分なクランプ推力が得られた時点でモータ14への通電が遮断される。よって、モータ14の駆動が停止された状態で、電動アクチュエータ11とは別体でモータブレーキ等の保持機構を設けなくても、対象物Wに第1及び第2のハンド部材Ha,Hbが押し付けられたままの状態を保持することが可能になる。
【0031】
また、モータ14への通電が遮断されても、モータ14と第1及び第2のコイルバネ19,22とは慣性エネルギー(慣性力)を有している。そのため、第1及び第2のロッド24,26の移動が規制されているにも拘わらず、モータ14と第1及び第2のコイルバネ19,22とは、クランプする方向への回転力が働く。しかし、第1及び第2のコイルバネ19,22が弾性的に圧縮されることで、モータ14及び第1及び第2のコイルバネ19,22の慣性エネルギーは吸収される。
【0032】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)電動アクチュエータ11は、モータ14の回転運動を第1及び第2のロッド24,26の直線運動に変換する変換機構を備えている。そして、この変換機構は、第1及び第2のロッド24,26に外装される第1及び第2のコイルバネ19,22と、第1及び第2のコイルバネ19,22の螺旋線材19a,22aに接するように各ロッド24,26から突設されるとともに、アクチュエータ本体12のガイド溝12aに挿入される回り止めローラ29とから形成されている。よって、背景技術のように、変換機構が小径圧縮コイルバネ83、大径圧縮コイルバネ85、リテーナ86、及び複数の転動ボール88よりなる場合と比べると、変換機構の構成を簡素化することができるとともに、電動アクチュエータ11のコスト低減を図ることができる。
【0033】
(2)電動アクチュエータ11の変換機構は、第1及び第2のコイルバネ19,22と、第1及び第2のロッド24,26から突設されるとともに、アクチュエータ本体12のガイド溝12aに挿入される回り止めローラ29とから形成されている。そして、この変換機構により、モータ14の回転運動が第1及び第2のロッド24,26の直線運動に変換することができると同時に、第1及び第2のロッド24,26の回り止めも行うことができる。したがって、背景技術のように、変換機構に加え、回り止め機構としてピストン90とガイド棒89とを必要とした場合と比べると、電動アクチュエータ11の内部構造を簡素化して、電動アクチュエータ11のコスト低減を図ることができる。
【0034】
(3)電動アクチュエータ11の変換機構において、第1及び第2のコイルバネ19,22の回転運動は送りローラ28の回転を介して第1及び第2のロッド24,26の直線運動に変換される。このため、第1及び第2のコイルバネ19,22を円滑に回転させることができるとともに、第1及び第2のコイルバネ19,22の回転運動を第1及び第2のロッド24,26の直線運動に効率良く変換することができる。
【0035】
(4)第1及び第2のロッド24,26の周方向に対向する位置から支軸27が突設され、一方の支軸27に支持された送りローラ28の周面が、第1及び第2のコイルバネ19,22の螺旋線材19a,22aに常に接触し、他方の支軸27に支持された送りローラ28の周面が、螺旋線材19a,22aに常に接触している。このため、一対の送りローラ28は、第1及び第2のコイルバネ19,22の軸線に対し線対称となる位置で螺旋線材19a,22aに接触している。よって、一対の送りローラ28にバランスよく第1及び第2のコイルバネ19,22からの負荷が加わり、第1及び第2のロッド24,26を安定した状態で直線運動させることができる。
【0036】
(5)第1及び第2のロッド24,26の周方向に対向する位置から支軸27が突設され、一方の支軸27に支持された送りローラ28の周面が、第1及び第2のコイルバネ19,22の螺旋線材19a,22aに常に接触し、他方の支軸27に支持された送りローラ28の周面が、螺旋線材19a,22aに常に接触している。すなわち、送りローラ28が各螺旋線材19a,22aの軸方向に各送りローラ28を挟む位置(前後)に常に接触しており、この接触により第1及び第2のコイルバネ19,22の軸方向への移動が規制されている。このため、送りローラ28に対して第1及び第2のコイルバネ19,22が、がたつくことを抑制することができる。
【0037】
(6)第1及び第2のロッド24,26の回り止め防止のため、第1及び第2のロッド24,26から突設された支軸27に回り止めローラ29を回転可能に支持させるとともに、その回り止めローラ29を、アクチュエータ本体に形成したガイド溝12a内に配置した。そして、第1及び第2のコイルバネ19,22の回転運動が、第1及び第2のロッド24,26の直線運動に変換されるとき、回り止めローラ29がガイド溝12a内で回転する。よって、回り止めのための機構の摺接抵抗を減らして、第1及び第2のロッド24,26を円滑に移動させることができる。
【0038】
(7)第1及び第2のコイルバネ19,22の内側に第1及び第2のロッド24,26を内挿するとともに、第1及び第2のロッド24,26に送りローラ28及び回り止めローラ29を設けるだけで、モータ14の回転運動を第1及び第2のロッド24,26の直線運動に変換することができる。よって、例えば、モータ14によって回転する部材を、ボール螺子や滑り螺子で形成する場合と比べると、電動アクチュエータのコストを低減することができるとともに、軽量化を図ることができる。
【0039】
(8)電動アクチュエータ11は、モータ14の回転運動が駆動軸14a及びウォームホイール15を介して第1及び第2のコイルバネ19,22の回転運動に変換される。そして、第1のコイルバネ19と、第2のコイルバネ22とは、同軸上に配置されながら螺旋の延びる方向(巻方向)が逆になっている。このため、ウォームホイール15が回転すると、第1のコイルバネ19と第2のコイルバネ22によって直線運動する第1のロッド24と第2のロッド26とを互いに接近又は離間させることができる。よって、電動アクチュエータ11によれば、モータ14の駆動により第1のハンド部材Haと第2のハンド部材Hbを互いに接近又は離間させ、対象物Wをクランプ又はアンクランプすることができる。
【0040】
(第2の実施形態)
次に、本発明のアクチュエータを電動アクチュエータに具体化した第2の実施形態を図5にしたがって説明する。なお、以下の説明では、既に説明した実施形態と同一構成について同一符号を付すなどし、その重複する説明を省略又は簡略する。
【0041】
図5に示すように、電動アクチュエータ41は、両側に開口部を有する筒状のアクチュエータ本体42を備えており、そのアクチュエータ本体42の一端開口部はカバー43により塞がれている。アクチュエータ本体42の他端側には、回転駆動源としてのモータ44が取り付けられている。モータ44の駆動軸44aには、連結部材45を介してコイルバネ46の一端が固着されるとともに、このコイルバネ46の他端は滑り軸受53を介してカバー43の内端面に当接支持されている。
【0042】
アクチュエータ本体42内には、その軸線方向に沿って延び、かつ外端開口部がキャップ47によって塞がれた筒状をなすロッド48が設けられている。このロッド48は、アクチュエータ本体42のカバー43に滑り軸受49を介して摺動可能に貫通支持されている。ロッド48はコイルバネ46内に挿入されている。ロッド48には、一対の支軸50がロッド48の周方向に対向する位置から外径方向に沿って突設されている。各支軸50には第1回転体としての送りローラ51と、回り止め部及び第2回転体としての回り止めローラ52が回転可能に支持されている。送りローラ51と回り止めローラ52とは互いに独立して回転可能に支軸50に支持されている。一対の支軸50は、一方の送りローラ51の後端面が、コイルバネ46の螺旋線材46aに常に接触し、他方の送りローラ51の前端面が、螺旋線材46aに常に接触する位置に突設されている。
【0043】
また、アクチュエータ本体42内面において、対向する位置それぞれにはガイド溝42aがアクチュエータ本体42の軸方向全体へ直線状に延びるように形成されている。そして、各ガイド溝42a内には、回り止めローラ52が配置されている。
【0044】
第2の実施形態の電動アクチュエータ41においては、モータ44が正方向に回転されるとロッド48は、アクチュエータ本体42から突出されることなり、対象物Wをクランプするクランプ位置に配置される。反対に、モータ44が逆方向に回転されると、ロッド48は、アクチュエータ本体42内に没入されることとなり、アンクランプ位置に配置される。また、滑り軸受53により、ロッド48がアクチュエータ本体42から突出する際に送りローラ51を介してコイルバネ46に加わる荷重及びコイルバネ46の回転が受承されるようになっている。
【0045】
従って、第2の実施形態によれば、第1の実施形態に記載の(1)〜(7)と同様の効果を得ることができる。
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
【0046】
○ 各実施形態において、回り止め部は回り止めローラ29のような回転体でなく、ガイド溝12a,42aに対し滑る樹脂製の凸部で形成してもよい。さらに、各コイルバネ19,22,46に接触して回転する送りローラ28を樹脂に変更してもよい。
【0047】
○ 各実施形態において、各コイルバネ19,22,46のピッチを不等ピッチに変更してもよい。
○ 第1の実施形態では、モータ14が正方向に回転されると第1及び第2のロッド24,26がアクチュエータ本体12から突出されるようにしたが、モータ14が正方向に回転されると第1及び第2のロッド24,26がアクチュエータ本体12内に没入するようにしてもよい。
【0048】
○ 第2の実施形態では、モータ44が正方向に回転されるとロッド48がアクチュエータ本体42から突出されるようにしたが、モータ44が正方向に回転されるとロッド48がアクチュエータ本体42内に没入するようにしてもよい。
【0049】
○ 回転駆動源としてモータ14,44の他にエアモータ、内燃機関等に変更してもよい。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
【0050】
(イ)前記第1回転体は、前記螺旋線材の軸方向に前記第1回転体を挟む位置に常に接触している請求項2に記載のアクチュエータ。
(ロ)前記支軸は前記ロッドの周方向に対向する位置に一対設けられるとともに、各支軸に支持された前記第1回転体は前記コイルバネの軸線に対し線対称となる位置に配置されている請求項2に記載のアクチュエータ。
【符号の説明】
【0051】
Ha…第1のハンド部材、Hb…第2のハンド部材、11,41…アクチュエータとしての電動アクチュエータ、12,42…アクチュエータ本体、12a,42a…ガイド溝、14,44…回転駆動源としてのモータ、19,22,46…コイルバネ、19a,22a,46a…螺旋線材、24…第1のロッド、26…第2のロッド、27,50…支軸、28,51…第1回転体としての送りローラ、29,52…回り止め部及び第2回転体としての回り止めローラ、48…ロッド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動源の回転運動を、アクチュエータ本体に出没可能に支持されたロッドの直線運動に変換する変換機構を備えたアクチュエータであって、
前記変換機構を、前記回転駆動源の回転力が伝達されて回転するとともに弾性力を有し、前記ロッドに外装されるコイルバネと、
前記コイルバネの螺旋線材に接するように前記ロッドから突設されるとともに、前記アクチュエータ本体の内周面に形成されたガイド溝に挿入される回り止め部とから構成したアクチュエータ。
【請求項2】
前記回り止め部は、前記ロッドから突設された支軸と、該支軸に回転可能に支持され前記螺旋線材に接して回転する第1回転体と、前記支軸に回転可能に支持され前記ガイド溝に接して回転するとともに前記第1回転体に対して独立して回転可能な第2回転体とから構成されている請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記ロッドとして、第1のロッドと、該第1のロッドに対し該第1のロッドの軸方向へ移動可能に内挿された第2のロッドとを備えるとともに、第1及び第2のロッドの先端にはハンド部材が一体化され、前記第1のロッドに外装された第1のコイルバネと、前記第2のロッドに外装された第2のコイルバネとを備え、前記第1のコイルバネと第2のコイルバネの螺旋線材の巻方向を逆にした請求項1又は請求項2に記載のアクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−169349(P2011−169349A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−31676(P2010−31676)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【出願人】(000106760)シーケーディ株式会社 (627)
【Fターム(参考)】