説明

アクリル系粘着剤組成物及びこれを含む偏光フィルム

【課題】アルキル基、ヒドロキシ基及びフリル基を有するアクリル系共重合体を含ませることによって光漏れ現象の改善効果を奏するアクリル系粘着剤組成物及びこれを含む偏光フィルムの提供。
【解決手段】(A)一つ以上のアルキル基、一つ以上のヒドロキシ基及び一つ以上のフリル基を有するアクリル系共重合体と、(B)硬化剤とを含んで粘着剤組成物を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリル系粘着剤組成物及びこれを含む偏光フィルムに関するもので、より具体的に、本発明は、アルキル基、ヒドロキシ基及びフリル基を有するアクリル系共重合体を含ませることによって、光漏れ(light leakage)現象の改善効果を奏するアクリル系粘着剤組成物及びこれを含む偏光フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
偏光板は、液晶表示装置(LCD;Liquid Crystal Display)に含まれる光学部材である。偏光板は、一般的には、一定の方向に配列されたヨード系化合物又は異色性偏光物質を含む。偏光板は、両面に偏光フィルム又は素子を保護するための保護フィルムなどが形成されている多層構造を有する。
【0003】
このような多層構造の偏光板を構成する各フィルムは、互いに異なる構造の分子構造及び組成を有する材料で製造され、その結果、異なる物理的特性を示す。特に、光学フィルムは、高温又は高湿条件下で長期間使用される場合、光学フィルムの寸法変化によって発生する内部応力が光学フィルムの中央部に比べて周辺部に集中することによって、液晶素子の周辺部が中央部よりも明るくなる光漏れ現象が発生するようになる。
【0004】
このような光漏れ現象を改善するために、多様な粘着剤組成物が提案されている。例えば、粘着剤バインダーとして、ブチルアクリレートを主成分にして末端がアルキル基のみで構成されたアクリル系粘着バインダーを用いることによって、応力を最大限緩和させる組成が提案されている。すなわち、アクリル系バインダーの分子量を150万〜200万g/molにし、少量の熱硬化剤を使用して塗膜の柔軟性を最大限確保する方法である。しかしながら、このような末端がアルキル基のみで構成されるアクリル系粘着剤バインダーは、熱又は湿熱条件では光漏れ現象を十分に改善できないという問題を有する。
【0005】
また、既存の偏光フィルム用粘着剤組成物は、一般的にアクリル系粘着バインダー、イソシアネート系熱硬化剤及びシランカップリング剤を含む。シランカップリング剤は、ガラスとの接着力を向上させるために使用されている。しかしながら、微量のシランカップリング剤を使用すると、混合に失敗するおそれがある。また、撹拌が容易でない場合は、偏光フィルムが形成された後、粘着力が均一にならないという問題が発生する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、光漏れ現象の改善効果を奏するアクリル系粘着剤組成物及びこれを含む偏光フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一観点である粘着剤組成物は、(A)一つ以上のアルキル基、一つ以上のヒドロキシ基及び一つ以上のフリル基を有するアクリル系共重合体と、(B)硬化剤とを含むことができる。
【0008】
一具体例で、アクリル系共重合体は、(a1)アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(a2)ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル及び(a3)フリル基を有する化合物を共重合した共重合体である。
【0009】
一具体例で、アクリル系共重合体は、(a1)約60〜98質量%の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(a2)約1〜10質量%の(メタ)アクリル酸エステル、及び(a3)約1〜30質量%の上記化合物を共重合した共重合体である。
【0010】
一具体例で、化合物(a3)は、フリル基として、フリル基、テトラヒドロフリル基、フルフリル基又はテトラヒドロフルフリル基を有する。
【0011】
一具体例で、アクリル系共重合体には、シリル基(シラン基)を有する単量体がさらに重合される。
【0012】
一具体例で、アクリル系共重合体には、イミド基を有する単量体がさらに重合される。
【0013】
一具体例で、アクリル系共重合体には、カルボキシ基を有する単量体がさらに重合される。
【0014】
一具体例で、アクリル系共重合体の重量平均分子量は、約800,000〜1,500,000g/molである。
【0015】
一具体例で、アクリル系共重合体の多分散度(polydispersity)は、約2以上10以下である。
【0016】
一具体例で、粘着剤組成物は(C)シランカップリング剤をさらに含むことができる。
【0017】
本発明の他の観点である偏光フィルムは前記粘着剤組成物を含む。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、アルキル基、ヒドロキシ基及びフリル基を有するアクリル系共重合体を含ませることによって、光漏れ現象の改善効果を奏するアクリル系粘着剤組成物及びこれを含む偏光フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
粘着剤組成物は、(A)一つ以上のアルキル基、一つ以上のヒドロキシ基及び一つ以上のフリル基を有するアクリル系共重合体と、(B)硬化剤とを含むことができる。
【0020】
((A)アクリル系共重合体)
アクリル系共重合体は、一つ以上のアルキル基、一つ以上のヒドロキシ基及び一つ以上のフリル基を有することができる。
【0021】
アクリル系共重合体におけるアルキル基、ヒドロキシ基及びフリル基の配列順序は、特別に制限されるものではなく、適宜変更可能である。また、アクリル系共重合体における一つ以上のアルキル基、一つ以上のヒドロキシ基又は一つ以上のフリル基は、それぞれ連続的に配列されることもある。
【0022】
アクリル系共重合体は、例えば、(a1)アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(a2)ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル、及び(a3)フリル基を有する化合物を共重合した共重合体である。
【0023】
望ましくは、アクリル系共重合体は、(a1)約60〜98質量%の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(a2)約1〜10質量%の(メタ)アクリル酸エステル及び(a3)約1〜30質量%の化合物(上記化合物(a3))を共重合した共重合体である。
【0024】
さらに望ましくは、アクリル系共重合体は、(a1)約65〜85質量%の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(a2)約5〜10質量%の(メタ)アクリル酸エステル及び(a3)約10〜25質量%の化合物(上記化合物(a3))を共重合した共重合体である。
【0025】
アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、エステル部分(moiety)に炭素が1個〜20個である直線状又は分枝状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むことができる。より好ましくは、炭素が2個〜12個である直線状又は分枝状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むことができる。さらに好ましくは炭素が3個〜8個である直線状又は分枝状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むことができる。
【0026】
例えば、アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、iso−プロピル(メタ)アクリレート、n―ブチル(メタ)アクリレート、t―ブチル(メタ)アクリレート、iso―ブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート及びラウリル(メタ)アクリレートからなる群から選択される1種以上になり得るが、これらに制限されることはない。特に好ましくは、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、iso−プロピル(メタ)アクリレート、n―ブチル(メタ)アクリレート、t―ブチル(メタ)アクリレート、iso―ブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート及びオクチル(メタ)アクリレートからなる群から選択される1種以上である。
【0027】
アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、アクリル共重合体のうち約60〜98質量%の量で共重合されることが好ましい。前記範囲内では、粘着剤組成物の初期粘着力に優れ、信頼性の評価時、フィルムの枠部で浮き上がり現象が発生しなくなる。また、再作業工程でスティックスリップ(stick―slip)が発生しないので、再作業が容易に行われる。また、裁断工程時にも、粘着バインダーの抜け現象が起きず優れた作業性を示す。より好ましくは、アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、約65〜85質量%で共重合されることが望ましい。かかる範囲であると、上記で述べた効果がより顕著になる。
【0028】
ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルは、エステル部分の末端位置又はその構造内にヒドロキシ基を有し、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル又はフリル基を有する化合物と共重合可能であれば、特別に限定されない。例えば、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルは、例えば、炭素数1〜20の直鎖状または分枝状のアルキル基を有するヒドロキシ(メタ)アクリレートであることが好ましく、より好ましくは、炭素数1〜10の直鎖状または分枝状のアルキル基を有するヒドロキシ(メタ)アクリレートであり、さらに好ましくは炭素数2〜6の直鎖状または分枝状のアルキル基を有するヒドロキシ(メタ)アクリレートである。
【0029】
より具体的には、2―ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4―ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2―ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2―ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6―ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、1,4―シクロへキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、1―クロロ―2―ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1,6―へキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、2―ヒドロキシ―3―フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、4―ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2―ヒドロキシ―3―フェニルオキシ(メタ)アクリレート、4―ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、及びシクロへキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレートからなる群から選択される1種以上になり得るが、これらに制限されることはない。中でも、2―ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4―ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2―ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2―ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート及び6―ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートからなる群から選択される1種以上のような「炭素数2〜6の直鎖状または分枝状のアルキル基を有するヒドロキシ(メタ)アクリレート」が好ましい。
【0030】
また、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルの代わりに、2―ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドを使用することができる。
【0031】
ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルは、好ましくは、アクリル系共重合体のうち約1〜10質量%の量で重合される。前記範囲内では、アクリル系共重合体の架橋度に優れており、粘着フィルムの裁断時に押され現象が起きず、また、リワーク(rework)時にガラスに転移される現象が発生せず、優れた初期粘着力を有する。ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルは、約5〜10質量%で重合されることがより望ましい。
【0032】
フリル基を有する化合物は、フリル基を有しながら、(a1)(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び/又は(a2)ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能であれば、特別に限定されない。あるいは、フリル基を有する化合物は、フリル基を有しながら、(a2)ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルのヒドロキシ基自体に結合可能であれば、特別に限定されない。
【0033】
フリル基は、フリル基自体又はフリル基の変形形態であるテトラヒドロフリル基、フルフリル基又はテトラヒドロフルフリル基である。フリル基は、テトラヒドロフルフリル基であることが望ましい。
【0034】
フリル基を有する化合物として、例えば、フルフリルイソシアネート、テトラヒドロフルフリルイソシアネート、フルフリルプロピオネート,テトラヒドロフルフリルプロピオネート,テトラヒドロフルフリルペンタノエート又はフルフリルペンタノエートが挙げられるが、これらに制限されることはない。また、フリル基を有する化合物は、下記の化3の構造を有することができる。
【0035】
【化1】

【0036】
(前記式で、Rは、―H又は―(CH―CHで、nは、0〜5の整数で、Rは、フリル基、テトラヒドロフリル基、フルフリル基又はテトラヒドロフルフリル基である。)
化3の化合物の例としては、フルフリル(メタ)アクリレート又はテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートがある。フリル基を有する化合物の望ましい例としては、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートがある。
【0037】
フリル基を有する化合物は、好ましくは、アクリル系共重合体のうち約1〜30質量%で重合される。前記範囲内では、耐熱性改善効果に優れており、90%の相対湿度で60℃又は85℃で250時間経過した後にも光漏れ現象が生じない。フリル基を有する化合物は、約10〜25質量%で重合されることが望ましい。
【0038】
アクリル系重合体は、一つ以上のアルキル基、ヒドロキシ基及びフリル基の他に、シリル基、イミド基及びカルボキシ基からなる群から選択される1種以上をさらに有することができる。
【0039】
一具体例で、アクリル系重合体は、一つ以上のアルキル基、ヒドロキシ基、フリル基及びシリル基を有することができる。「シラン」又は「シリル基」は、シラン(SiH)又は1個〜3個の置換基、例えば、ハロゲン又は炭素数1〜6(C1〜C6)の直線状又は分枝状のアルコキシに置換されたシランを意味する。
【0040】
アクリル系重合体におけるアルキル基、ヒドロキシ基、フリル基及びシリル基の配列順序は、特別に制限されるものではなく、適宜変更可能である。また、アクリル系重合体における一つ以上のアルキル基、ヒドロキシ基、フリル基又はシリル基は、それぞれ連続的に配列されることもある。
【0041】
アクリル系共重合体には、(a1)アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(a2)ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル、及び(a3)フリル基を有する化合物の他に、シリル基を有する単量体が重合される(グラフト重合)。シリル基を有する単量体は、「シラン」又は「シリル基」を有しながら、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルのヒドロキシ基に結合可能であれば、特別に限定されない。前記シリル基を有する単量体は、イソシアネート部分を通してヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルのヒドロキシ基に結合されることが望ましい。
【0042】
シリル基を有する単量体は、好ましくは、3―イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3―イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、ビニル卜リクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン及びビニルトリエトキシシランからなる群から選択される1種以上であるが、これらに制限されることはない。シリル基を有する単量体は、3―イソシアネートプロピルトリエトキシシランであることが望ましい。
【0043】
シリル基を有する単量体は、アクリル系共重合体100質量部に対して約0.01〜5質量部の量でアクリル系共重合体に重合される。より好ましくは約1〜4質量部でアクリル系共重合体に重合される。
【0044】
前記範囲内では、ガラス基板との接着力に優れており、アクリル系共重合体自体の貯蔵安定性にも優れている。
【0045】
他の具体例で、アクリル系重合体は、一つ以上のアルキル基、ヒドロキシ基、フリル基及びイミド基を有することができる。
【0046】
アクリル系重合体におけるアルキル基、ヒドロキシ基、フリル基及びイミド基の配列順序は、特別に制限されるものではなく、適宜変更可能である。また、アクリル系重合体における一つ以上のアルキル基、ヒドロキシ基、フリル基又はイミド基は、それぞれ連続的に配列されることもある。
【0047】
アクリル系共重合体には、(a1)アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(a2)ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル、及び(a3)フリル基を有する化合物の他に、イミド基を有する単量体が重合される。イミド基を有する単量体は、マレイミド、フェニルマレイミド、N―メチルマレイミド、N―エチルマレイミド、N―プロピルマレイミド、N―イソプロピルマレイミド、N―ブチルマレイミド、N―イソブチルマレイミド、N―t―ブチルマレイミド、N―シクロヘキシルマレイミド、N―クロロフェニルマレイミド、N―メチルフェニルマレイミド、N―ブロモフェニルマレイミド、N―ナフチルマレイミド、N―ラウリルマレイミド、N―ヒドロキシフェニルマレイミド、N―メトキシフェニルマレイミド、N―カルボキシフェニルマレイミド、N―ニトロフェニルマレイミド及びN―ベンジルマレイミドからなる群から選択される1種以上を含むことができるが、これらに制限されることはない。イミド基を有する単量体は、フェニルマレイミドであることが望ましい。
【0048】
イミド基を有する単量体は、好ましくは、アクリル系共重合体のうち約1〜20質量%の量で重合される。前記範囲内では、耐熱性に優れており、光漏れ現象が生じない。
【0049】
また、他の具体例で、アクリル系重合体は、一つ以上のアルキル基、ヒドロキシ基、フリル基及びカルボキシ基を有することができる。
【0050】
アクリル系重合体におけるアルキル基、ヒドロキシ基、フリル基及びカルボキシ基の配列順序は、特別に制限されるものではなく、適宜変更可能である。また、アクリル系重合体における一つ以上のアルキル基、ヒドロキシ基、フリル基又はカルボキシ基は、それぞれ連続的に配列されることもある。
【0051】
アクリル系共重合体には、(a1)アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(a2)ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル、及び(a3)フリル基を有する化合物の他に、カルボキシ基を有する単量体が重合される。
【0052】
カルボキシ基を有する単量体は、好ましくは、カルボキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルであって、例えば、下記の化5の構造を有することができる。
【0053】
【化2】

【0054】
(前記式で、Rは、―H又は―(CH―CHで、nは、0〜5の整数で、rは、1〜10の整数である。)
例えば、カルボキシ基を有する単量体は、2―カルボキシエチル(メタ)アクリレートである。
【0055】
カルボキシ基を有する単量体は、好ましくは、アクリル系共重合体のうち約1〜20質量%の量で重合される。前記範囲内では、耐熱性に優れており、光漏れ現象が生じない。
【0056】
アクリル系共重合体には、アクリル系共重合体100質量部に対して芳香族官能基を有する単量体が約1〜20質量部の量でさらに重合される。前記範囲内では、耐熱性に優れており、光漏れ現象が生じない。芳香族官能基を有する単量体は、約5〜15質量部の量でさらに重合されることが望ましい。
【0057】
芳香族官能基を有する単量体は、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル化β―ナフトールアクリレート、ビフェニル(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルトルエン及びα―メチルスチレンから選択される1種以上であるが、これらに制限されることはない。
【0058】
一具体例で、アクリル系共重合体は、一つ以上の下記の化1、2及び3の単量体を共重合した共重合体である。
【0059】
【化3】

【0060】
(前記式で、Rは、―H又は―(CH―CHで、nは、0〜5の整数で、pは、0〜20の整数である。)
ここで、pは、好ましくは0〜19の整数であり、1〜11の整数であり、より好ましくは2〜7の整数である。
【0061】
【化4】

【0062】
(前記式で、Rは、―H又は―(CH―CHで、nは、0〜5の整数で、qは1〜20の整数である。)
ここで、qは、好ましくは1〜10の整数であり、より好ましくは2〜6の整数である。
【0063】
【化5】

【0064】
(前記式で、Rは、―H又は―(CH―CHで、nは、0〜5の整数で、Rは、フリル基、テトラヒドロフリル基、フルフリル基又はテトラヒドロフルフリル基である。)
ここで、nは、好ましくは0〜3の整数であり、より好ましくは0〜1の整数である。
【0065】
アクリル系共重合体における前記化1、2及び3の単量体の配列順序は、特別に制限されるものではなく、同一の単量体が連続的に配列されることもある。
【0066】
例えば、アクリル系共重合体における化1、2及び3の単量体は、約65〜90:1〜10:5〜25のモル数比で共重合される。モル数比は、単量体の分子量が決まれば、あとは、重量との関係で決まる。前記モル数比の範囲内では、光漏れ現象を改善することができ、耐熱性に優れ、剥離強度が高いため再剥離性がなく、浮き上がり現象を抑制する粘着剤組成物を製造することができる。化1、2及び3の単量体は、約67〜87:5〜10:8〜23のモル数比で重合されることが望ましい。
【0067】
他の具体例で、アクリル系共重合体は、下記の化1、2、3及び4の単量体を共重合した共重合体である。
【0068】
【化6】

【0069】
(前記式で、Rは、―H又は―(CH―CHで、nは、0〜5の整数で、pは、0〜20の整数である。)
ここで、pは、好ましくは0〜19の整数であり、1〜11の整数であり、より好ましくは2〜7の整数である。
【0070】
【化7】

【0071】
(前記式で、Rは、―H又は―(CH―CHで、nは、0〜5の整数で、qは、1〜20の整数である。)
ここで、qは、好ましくは1〜10の整数であり、より好ましくは2〜6の整数である。
【0072】
【化8】

【0073】
(前記式で、Rは、―H又は―(CH)n―CH3で、nは0〜5の整数で、Rは、フリル基、テトラヒドロフリル基、フルフリル基又はテトラヒドロフルフリル基である。)
ここで、nは、好ましくは0〜3の整数であり、より好ましくは0〜1の整数である。
【0074】
【化9】

【0075】
(前記式で、R、R及びRは、ハロゲン又は炭素数が1〜5であるアルコキシ基であり、sが0である場合、Rはビニル基で、sが、1〜10である場合、Rは、NCOである。)
ここで、R、R及びRは、好ましくは、炭素数が1〜4であるアルコキシ基である。
【0076】
アクリル系共重合体における前記化1、2、3及び4の単量体の配列順序は、特別に制限されるものではなく、同一の単量体が連続的に配列されることもある。
【0077】
例えば、アクリル系共重合体における化1、2、3及び4の単量体は、約65〜90:1〜10:5〜25:0.1〜5のモル数比で共重合される。前記モル数比の範囲内では、シランカップリング剤を別途に使用したときに発生しうる粘着力の不均一性を解消し、ガラス基板との接着力に優れ、アクリル系共重合体自体の貯蔵安定性に優れている。化1、2、3及び4の単量体は、約67〜87:5〜10:8〜23:0.5〜2.5のモル数比で重合されることが望ましい。
【0078】
アクリル系共重合体における化4の単量体は、アクリル系共重合体の主鎖に重合されたり、又は化2のヒドロキシ基に結合される。
【0079】
アクリル系共重合体は、重量平均分子量が約600,000〜2,000,000g/molである。例えば、約800,000〜1,500,000g/molである。重量平均分子量が600,000〜2,000,000g/molの範囲内では、アクリル系共重合体の共重合が容易に行われる。
【0080】
アクリル系共重合体の多分散度は、2以上10以下であり、2以上10未満であることが望ましく、3〜5であることがより望ましい。前記範囲内である場合、分子量の分布度が狭いので均一な粘着力を示し、その結果、光漏れ現象も発生しない。
【0081】
((B)硬化剤)
粘着剤組成物は、アクリル系共重合体100質量部に対して約0.1〜10質量部の硬化剤を含むことができる。より好ましくは、アクリル系共重合体100質量部に対して約0.3〜5質量部の硬化剤を含むことができる。
【0082】
硬化剤は、熱硬化剤、例えば、イソシアネート系、エポキシ系、アジリジン系、メラミン系、アミン系、イミド系、カルボジイミド系及びアミド系からなる群から選択される1種以上であるが、これらに制限されることはなく、イソシアネート系熱硬化剤であることが望ましい。
【0083】
イソシアネート系熱硬化剤としては、当業者に知られた通常のものを使用することができる。例えば、イソシアネート系熱硬化剤は、2,4―トリレンジイソシアネート、2,6―トリレンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、1,3―キシレンジイソシアネート、1,4―キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタル―4,4―ジイソシアネート、1,3―ビスイソシアナトメチルシクロヘキサン、テトラメチルキシレンジイソシアネート、1,5―ナフタレンジイソシアネート、2,2,4―トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4―トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート付加物、トリメチロールプロパンのキシレンジイソシアネート付加物、トリフェニルメタントリイソシアネート及びメチレンビストリイソシアネートからなる群から選択される1種以上を含むことができる。
【0084】
((C)シランカップリング剤)
粘着剤組成物は、(C)シランカップリング剤をさらに含むことができる。シランカップリング剤は、例えば、アクリル系共重合体100質量部に対して約0.01〜5質量部で粘着剤組成物に含まれる。より好ましくは、シランカップリング剤は、アクリル系共重合体100質量部に対して約0.05〜4質量部で粘着剤組成物に含まれる。
【0085】
前記範囲内である場合、ガラス基板との接着力に優れており、アクリル系共重合体自体の貯蔵安定性に優れている。
【0086】
シランカップリング剤は、通常のシランカップリング剤を意味する。例えば、シランカップリング剤は、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシランなどの重合性不飽和基含有ケイ素化合物と、3―グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、3―グリシドオキシプロピルメチルジメトキシシラン、2―(3,4―エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ構造を有するケイ素化合物と、3―アミノプロピルトリメトキシシラン、N―(2―アミノエチル)―3―アミノプロピルトリメトキシシラン、N―(2―アミノエチル)―3―アミノプロピルメチルジメトキシシランなどのアミノ基含有ケイ素化合物と、3―クロロプロピルトリメトキシシランなどからなる群から選択される1種以上を含むことができるが、これらに制限されることはない。
【0087】
粘着剤組成物は、(a1)アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(a2)ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル、及び(a3)フリル基を有する化合物を共重合してアクリル系共重合体を製造する段階(第1の段階)、及び前記アクリル系共重合体に硬化剤を添加する段階(第2の段階)によって製造される。
【0088】
(第1の段階)
第1の段階は、アクリル系共重合体バインダーを製造する段階であって、(a1)アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(a2)ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル、及び(a3)フリル基を有する化合物に開始剤を添加して重合することによってアクリル系共重合体を製造することができる。
【0089】
前記開始剤は、例えば、2,2―アゾビス(2,4―ジメチルバレロニトリル)、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、tert―ブチル―(2―エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネート、tert―アミル―(2―エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネート、1,1―ジ(tert―ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1―ジ(tert―アミルペルオキシ)シクロヘキサン、tert―ブチルペルオキシ―3,5,5―トリメチルヘキサノエート、1,1―ジ(tert―ブチルペルオキシ)―3,3,5―トリメチルシクロヘキサン、カリウムペルスルフェート、ナトリウムペルスルフェート、アンモニウムペルスルフェート及びアゾ系水溶性開始剤からなる群から選択された1種又は2種以上であるが、これらに制限されることはなく、アゾビスイソブチロニトリルを使用することが望ましい。
【0090】
前記開始剤は、(a1)(メタ)アクリル酸アルキルエステル100質量部に対して約0.001〜2質量部で含まれる。
【0091】
第1の段階では、(a1)アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(a2)ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル、及び(a3)フリル基を有する化合物を溶解可能な溶剤を含むことができる。溶剤としては、当業者に知られている通常のものを使用できるが、例えば、エチルアセテートなどを使用することができる。
【0092】
前記第1の段階では、シリル基を有する単量体、イミド基を有する単量体及びカルボキシ基を有する単量体のうち1種以上をさらに重合し、アクリル系共重合体を製造することができる。
【0093】
重合温度と重合時間は適宜調節することができ、例えば、重合温度を約65〜70℃にして約6〜8時間重合することができる。また、シリル基を有する単量体、イミド基を有する単量体及びカルボキシ基を有する単量体のうち1種以上をさらに重合する形態においては、一旦冷却し、必要に応じて触媒を添加して、さらに8〜15時間程度反応させることが好ましい。
【0094】
第1の段階では、硬化触媒を更に含み得る。硬化触媒は、硬化剤100重量部に対し、約0.01乃至3重量部で粘着剤組成物に含まれ得る。このような硬化触媒としては、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(1,4−diazabicyclo[2,2,2]octane)、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル(bis(2−dimethylaminoethyl)ether)、トリメチルアミノエチルエタノールアミン(trimethylaminoethylethanolamine)、N,N,N’,N’,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン(N,N,N’,N’,N”−pentamethyldiethylenetriamine)、N,N’−ジメチルエタノールアミン(N,N−dimethylaminoethylmorpholine)、ジメチルアミノプロピルアミン(dimethylaminopropylamine)、N−エチルモルホリン(N−ethylmorpholine)、N,N−ジメチルアミノエチルモルホリン(N,N−dimethylaminoethylmorpholine)、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン(N,N−dimethylcyclohexylamine)、2−メチル−2−アザノルボルナン(2−methyl−2−azanorbornane)、ジブチル錫ジラウレート(dibutyltin dilaurate)、オクタン酸第一錫(stannous octoate)、ジブチル錫ジアセテート(dibutyltin diacetate)、ジブチル錫ジメルカプチド(dibutyltin dimercaptide)等からなる群から選択される1種以上を含み得るが、これらに制限されるわけではない。
【0095】
(第2の段階)
第2の段階は、前記アクリル系共重合体に硬化剤を添加し、最終のアクリル系粘着剤組成物を製造する段階である。粘着剤組成物の製造は、通常の方法で行われる。例えば、粘着剤組成物は、溶媒(例えば、メチルエチルケトン)にアクリル系重合体と硬化剤を添加し、約25℃で約30〜60分間撹拌することによって製造される。
【0096】
前記第2の段階では、シランカップリング剤をさらに添加することができる。シランカップリング剤としては、特に制限はなく、従来公知のものを使用することができる。例えば、本願の実施例で使用するようなものが好ましい。
【0097】
本発明は、前記粘着剤組成物を含む偏光フィルムを提供する。偏光フィルムにおける前記粘着剤組成物は、偏光フィルムを構成する偏光子、透明支持体、位相差フィルムなどを含む補償フィルムを接着するための粘着剤として使用される。
【0098】
本発明に関するより詳細な内容は次の具体的な製造例及び試験例を通して説明し、ここに記載されていない内容は、この技術分野の当業者であれば充分に技術的に類推可能であるので、それに対する説明は省略する。
【実施例】
【0099】
(製造例1:アクリル系共重合体の製造)
1L 4つ口フラスコにエチルアセテート60g、 n−ブチルアクリレート75g、4―ヒドロキシブチルアクリレート8g、テトラヒドロフルフリルメタクリレート10gを投入し、70℃に昇温して維持した。開始剤であるアゾビスイソブチロニトリル0.08gをエチルアセテート20gに溶かして投入した。65℃で5時間反応させ、アクリル系共重合体を製造した。全体の反応工程は、窒素を10cc/分で投入しながら行った。
製造されたアクリル系共重合体は、粘度が9,000cpsで、固形分は25%であった。また、重量平均分子量は900,000g/molで、多分散度は3.8であった。
【0100】
粘度は、Brookfield粘度計であるDV−II+により25℃でSpindle No.#7で測定した。
【0101】
重量平均分子量、数平均分子量は、まず試料前処理を施した後に測定した。
【0102】
多分散度値は、重量平均分子量を数平均分子量で割算した値である。試料0.01g〜0.015gをTHF約10mLに溶解し、溶解された試料0.45μmをシリンジフィルターを用いて濾過した。測定デテクターは、Waters2414RIdetectorを用いて測定した。スタンダードサンプルはPolystyrene Shodex社SM−105の10種を利用した。
【0103】
(製造例2:アクリル系共重合体の製造)
1L 4つ口フラスコにエチルアセテート60g、ブチルアクリレート70g、4―ヒドロキシブチルアクリレート8g、テトラヒドロフルフリルメタクリレート20gを投入し、70℃に昇温して維持した。開始剤であるアゾビスイソブチロニトリル0.08gをエチルアセテート20gに溶かして投入した。3時間維持した後、エチルアセテート320gを投入し、40℃に冷却させた。その後、3―イソシアネートプロピルトリエトキシシラン2gと触媒DBTDL(dibutyltin dilaurate)0.01gを投入して40℃に12時間反応させた。
【0104】
全体の反応工程は、窒素を10cc/分で投入しながら行った。製造されたアクリル系共重合体は、粘度が8,800cpsで、固形分は25%であった。また、重量平均分子量は850,000g/molで、多分散度は4.3であった。
【0105】
(製造例3:アクリル系共重合体の製造)
1L 4つ口フラスコにエチルアセテート60g、ブチルアクリレート75g、4―ヒドロキシブチルアクリレート8g、テトラヒドロフルフリルメタクリレート10gを投入し、70℃に昇温して維持した。開始剤であるアゾビスイソブチロニトリル0.08gをエチルアセテート20gに溶かして投入した。3時間維持した後、エチルアセテート320gを投入し、40℃に冷却させた。その後、3―イソシアネートプロピルトリエトキシシラン2gと触媒DBTDL(dibutyltin dilaurate)0.01gを投入して12時間反応させた。全体の反応工程は、窒素を10cc/分で投入しながら行った。製造されたアクリル系共重合体は、粘度が10,500cpsで、固形分は25%であった。また、重量平均分子量は820,000g/molで、多分散度は4.2であった。
【0106】
(製造例4:アクリル系共重合体の製造)
前記製造例1でテトラヒドロフルフリルメタクリレート10gを使用しないことを除いては、同一の方法を実施してアクリル系重合体を製造した。
【0107】
(製造例5:アクリル系共重合体の製造)
前記製造例3でテトラヒドロフルフリルメタクリレート10gを使用しないことを除いては、同一の方法を実施してアクリル系共重合体を製造した。
【0108】
(実施例1〜3と比較例1〜2)
前記製造したアクリル系共重合体、硬化剤及び/又はシラン化合物を、下記の表1に示した質量比基準の含量(質量部、固形分基準)でメチルエチルケトン10質量部に入れ、25℃で30分間撹拌して粘着剤組成物を製造した。
【0109】
【表1】

【0110】
前記製造した粘着剤組成物に対し、表2に示した評価項目を評価した。
【0111】
*評価方法:
1.コーティング液の外観観察
実施例及び比較例で製造した粘着剤組成物を常温(25℃)で1日間放置した後、透明/不透明可否を観察した。
【0112】
2.剥離強度(gf/25mm)
粘着剤組成物とガラス基板との間の180°剥離力は、JIS K 6854で規定された方法によって測定した。
【0113】
粘着剤組成物の試料を25mm×100mmに切断し、これをガラス面にラミネートした。引張試験測定器(texture analyzer)を使用して30kgfのロードセルで粘着層とガラス基板を上下のジグに連結した後、300mm/minの引張速度で剥離し、剥離時の荷重を測定した。
【0114】
3.切断性/リワーク(rework)性
実施例及び比較例で製造された粘着剤組成物がコーティングされた偏光板(400mm×250mm)をトムソン刃(thomson cutter)で切断し、粘着層の切り取られた断面を観察した。これをガラス基板の両面に付着し、4〜5kg/cmの圧力をかけて試片を製作した。試片を70℃で6時間放置した後、常温で1時間以上徐冷しながらガラス基板面における粘着剤の残渣有無を確認した。評価基準は次に示す通りである。
【0115】
○:切断面の粘着剤残留物及び粘着剤が抜け出た程度が良好である(リワーク時に残渣なし)。
【0116】
△:切断面の粘着剤残留物及び粘着剤が抜け出た程度が多少ある(リワーク時に残渣が多少ある)。
【0117】
×:切断面の粘着剤残留物及び粘着剤が抜け出た程度がある(リワーク時に残渣がある)。
【0118】
4.光漏れ(光透過度の均一性)
下記の耐久信頼性の評価時と同一の試片を使用して光透過度の均一性を調査した。バックライトを用いて暗室から光が漏れる部分があるかどうかを観察した。コーティングされた偏光板(400mm×200mm)をガラス基板(400mm×200mm×15mm)の両面に光軸を交差して付着した。光透過度均一性の評価に使用された試片は、80℃の温度で250時間、又は耐湿熱条件である60℃の温度及び90%の相対湿度条件で250時間放置した後、常温で1時間以上放置して使用した。評価基準は次に示す通りである。
【0119】
○:光透過性の不均一現象を肉眼で判断しにくい。
【0120】
△:光透過性の不均一現象が多少ある。
【0121】
×:光透過性の不均一現象がある。
【0122】
5.粘着剤クリープ(creep)(mm)
実施例及び比較例で製造した粘着剤組成物を適用した偏光板を1.5cm×1.5cmの接着面積でガラス板に付着した後、常温で3日間放置して試片を製造した。UTM(Universal Test Machine)を用いて試片に2kgfの力を10分間加えたとき、押された距離(mm)によって粘着剤クリープを測定した。
【0123】
6.耐久信頼性
実施例及び比較例で製造した粘着剤組成物がコーティングされた偏光板(100mm×175mm)をガラス基板の両面に付着し、4〜5kg/cmの圧力をかけて試片を製作した。このとき、気泡や異物が生じないようにクリーンルーム作業を行った。製造された各試片の耐熱特性は、80℃の温度で500時間放置した後、気泡や剥離の発生有無を観察して評価した。耐湿熱特性は、60℃の温度及び90%の相対湿度条件下で500時間放置した後、気泡や剥離の発生有無を観察して評価した。そして、評価直前に常温で1時間放置した後、肉眼又は顕微鏡で評価した。評価基準は次に示す通りである。
【0124】
○:気泡や剥離がない。
【0125】
△:気泡や剥離が多少ある。
【0126】
×:気泡や剥離がある。
【0127】
【表2】

【0128】
前記表2によると、本発明に係る粘着剤組成物は、耐久性に優れ、且つ光漏れを抑制する効果に優れ、著しい粘着性と剥離強度を示すことが分かる(実施例1〜3参照)。主鎖にフリル基が導入されたアクリル系共重合体を含む粘着剤組成物は、光漏れを抑制する効果に優れており、耐熱性改善効果に優れていることが分かる(実施例1〜3、比較例1と2参照)。
【0129】
以上、添付の図面及び表を参照して本発明の各実施例を説明したが、本発明は、前記各実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で製造可能である。また、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者であれば、本発明の技術的思想や必須な特徴を変更せずに他の具体的な形態で実施可能であることを理解できるであろう。したがって、以上記述した各実施例は、全ての面で例示的なものであって、限定的なものでないことを理解しなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)一つ以上のアルキル基、一つ以上のヒドロキシ基及び一つ以上のフリル基を有する、アクリル系共重合体と、
(B)硬化剤と、
を含む、粘着剤組成物。
【請求項2】
前記(A)アクリル系共重合体は、
(a1)アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、
(a2)ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルと、
(a3)フリル基を有する化合物と、
を共重合した共重合体である、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
前記(A)アクリル系共重合体は、
(a1)60〜98質量%の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、
(a2)1〜10質量%の(メタ)アクリル酸エステルと、
(a3)1〜30質量%のフリル基を有する化合物と、
を共重合した共重合体である、請求項1または2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
前記(a2)ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルは、2―ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4―ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2―ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2―ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6―ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、1,4―シクロへキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、1―クロロ―2―ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1,6―へキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、2―ヒドロキシ―3―フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、4―ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2―ヒドロキシ―3―フェニルオキシ(メタ)アクリレート、4―ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、及びシクロへキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレートからなる群から選択される1種以上である、請求項2または3に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
前記フリル基は、フリル基、テトラヒドロフリル基、フルフリル基又はテトラヒドロフルフリル基である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
前記(a3)フリル基を有する化合物は、下記の化3の構造を有する、又は、フルフリルイソシアネート、テトラヒドロフルフリルイソシアネート、フルフリルプロピオネート、テトラヒドロフルフリルプロピオネート、テトラヒドロフルフリルペンタノエート、フルフリルペンタノエートからなる群から選択される1種以上である、請求項2〜5のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
【化1】

(前記式で、Rは、―H又は―(CH―CHで、nは0〜5の整数で、Rは、フリル基、テトラヒドロフリル基、フルフリル基又はテトラヒドロフルフリル基である。)
【請求項7】
前記アクリル系重合体は、シリル基、イミド基及びカルボキシ基からなる群から選択される1種以上をさらに有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
【請求項8】
前記アクリル系重合体は、
(a1)アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、
(a2)ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルと、
(a3)フリル基を有する化合物と、
シリル基を有する単量体と、
を重合した共重合体であることを特徴とする、請求項7に記載の粘着剤組成物。
【請求項9】
前記シリル基を有する単量体は、3―イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3―イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、ビニル卜リクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン及びビニルトリエトキシシランからなる群から選択される1種以上であることを特徴とする、請求項8に記載の粘着剤組成物。
【請求項10】
前記アクリル系重合体は、(a1)アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(a2)ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル、(a3)フリル基を有する化合物、及びイミド基を有する単量体を重合した共重合体であることを特徴とする、請求項7に記載の粘着剤組成物。
【請求項11】
前記イミド基を有する単量体は、マレイミド、フェニルマレイミド、N―メチルマレイミド、N―エチルマレイミド、N―プロピルマレイミド、N―イソプロピルマレイミド、N―ブチルマレイミド、N―イソブチルマレイミド、N―t―ブチルマレイミド、N―シクロヘキシルマレイミド、N―クロロフェニルマレイミド、N―メチルフェニルマレイミド、N―ブロモフェニルマレイミド、N―ナフチルマレイミド、N―ラウリルマレイミド、N―ヒドロキシフェニルマレイミド、N―メトキシフェニルマレイミド、N―カルボキシフェニルマレイミド、N―ニトロフェニルマレイミド及びN―ベンジルマレイミドからなる群から選択される1種以上である、請求項10に記載の粘着剤組成物。
【請求項12】
前記アクリル系共重合体は、(a1)アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(a2)ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル、(a3)フリル基を有する化合物、及びカルボキシ基を有する単量体を重合した共重合体であることを特徴とする、請求項7に記載の粘着剤組成物。
【請求項13】
前記カルボキシ基を有する単量体は、下記の化5の構造を有する、請求項12に記載の粘着剤組成物。
【化2】

(前記式で、Rは、―H又は―(CH―CHで、nは、0〜5の整数で、rは、1〜10の整数である。)
【請求項14】
前記(A)アクリル系共重合体は、下記の化1、2及び3の単量体を共重合した共重合体であることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
【化3】

(前記式で、Rは、―H又は―(CH―CHで、nは、0〜5の整数で、pは、0〜20の整数である。)
【化4】

(前記式で、Rは、―H又は―(CH―CHで、nは0〜5の整数で、qは1〜20の整数である。)
【化5】

(前記式で、Rは、―H又は―(CH―CHで、nは、0〜5の整数で、Rは、フリル基、テトラヒドロフリル基、フルフリル基又はテトラヒドロフルフリル基である。)
【請求項15】
前記(A)アクリル系共重合体は、下記の化4及び5からなる群から選択される1種以上の単量体がさらに共重合された共重合体であることを特徴とする、請求項14に記載の粘着剤組成物。
【化6】

(前記式で、R、R及びRは、ハロゲン又は炭素数が1〜5であるアルコキシ基であり、sが0である場合、Rは、ビニル基で、sが1〜10である場合(製造例:s=3)、Rは、NCOである。)
【化7】

(前記式で、Rは―H又は―(CH―CHで、nは、0〜5の整数で、rは、1〜10の整数である。)
【請求項16】
前記(B)硬化剤は、前記(A)アクリル系共重合体100質量部に対して0.1〜10質量部で含まれる、請求項1〜15のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
【請求項17】
前記(B)硬化剤は、2,4―トリレンジイソシアネート、2,6―トリレンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、1,3―キシレンジイソシアネート、1,4―キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタル―4,4―ジイソシアネート、1,3―ビスイソシアナトメチルシクロヘキサン、テトラメチルキシレンジイソシアネート、1,5―ナフタレンジイソシアネート、2,2,4―トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4―トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート付加物、トリメチロールプロパンのキシレンジイソシアネート付加物、トリフェニルメタントリイソシアネート及びメチレンビストリイソシアネートからなる群から選択される1種以上であることを特徴とする、請求項1〜16のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
【請求項18】
前記粘着剤組成物は、シランカップリング剤をさらに含む、請求項1〜17のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか1項に記載の粘着剤組成物を含む偏光フィルム。

【公開番号】特開2012−52086(P2012−52086A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−716(P2011−716)
【出願日】平成23年1月5日(2011.1.5)
【出願人】(500005066)チェイル インダストリーズ インコーポレイテッド (263)
【Fターム(参考)】