説明

アクリロニトリルのための分散剤防汚剤

アクリロニトリルの製造プロセスにおいて用いられる装置の汚損を防ぐ効果が非常に高いスチレンスルホン酸塩ポリマー。本スチレンスルホン酸塩ポリマーは、アクリロニトリル製造プロセスのクエンチカラム、回収段階および廃水処理区画へ導入すると特に効果がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
なし。
【0002】
連邦委託の研究または開発に関する声明
該当せず。
【0003】
本発明は、アクリロニトリルの調製のためのプロセスに関する。より詳しくは、本発明は、スチレンスルホン酸塩のポリマーを含む防汚剤がアクリロニトリル製造プロセスのクエンチ、回収および廃水プロセスにおける少なくとも1つのステップに加えられるプロセスに関する。
【背景技術】
【0004】
一般的に、アクリロニトリルの製造は、反応段階、回収段階および精製段階の3つの段階を含む。反応段階において、プロピレンをアンモニアおよび酸素との反応によってアンモ酸化してアクリロニトリルを形成させる。これは、多くの場合、高温における気相触媒反応である。結果として得られるアクリロニトリル含有流出物を次に水でクエンチし、未反応のアンモニアを硫酸で中和する。回収段階において、クエンチした反応段階の生成物を、アクリロニトリルを捕捉する水吸収プロセスと、同じく反応段階の間に生成した水および他の重質成分からアクリロニトリルを分離する回収プロセスとに付す。回収段階の内部で水をリサイクルする。回収したアクリロニトリルを、次に精製段階へ送る。
【0005】
回収段階の間に、汚損化合物が形成され、リサイクルされる水の中に集まる傾向がある。汚損化合物は、さまざまな組み合わせのモノマー、オリゴマー、プレポリマーおよびポリマーの形の無機化合物と有機化合物との両方を含んでいる。これらの汚損化合物は、熱交換器、リボイラおよびカラムなどの回収段階の装置のいくつかに沿って堆積物を形成する。熱交換器およびリボイラの熱交換表面に堆積すると、汚損化合物は熱伝達装置の効率を低下させる。さらに、汚損物が堆積すると、影響を受ける装置を通る流れ抵抗が発生し、プロセス流れの閉塞さえ引き起こされる。その結果、汚損物を取り除くために装置を定期的に運転停止しなければならず、それによって生産量低下、清掃費用、運転上の不自由さならびに関連する安全上および環境上の問題が生じる結果となる。
【0006】
この問題に対処する既知の方法は、問題のある装置へ分散剤防汚剤を加えることを含む。分散剤は、汚損物をプロセス流の中に懸濁した状態に保ち、汚損物が装置表面へ堆積することを防ぐコロイド安定剤として機能する。1つのそのような例は、リサイクルされる水を冷却するために用いられる熱交換器の熱伝達表面上の汚損物堆積を最小にするリグノスルホン酸金属塩の使用を記載している米国特許第3,691,226号に開示されている。別の例は、アクリロニトリルストリッパの中の熱交換器の汚損を防ぐナフタレンスルホン酸塩−ホルムアルデヒド縮合物ポリマーの使用を教示している米国特許第5,650,072号である。
【0007】
本節に記載されている技術は、特に断らない限り、本明細書において参照されるいずれかの特許、刊行物またはその他の情報が本発明に対して「先行技術」であるという承認を構成するものではない。さらに、本節は、調査がなされたかまたは米国特許法施行規則第1.56条(a)項に定義されている関連情報が存在しないことを意味すると解釈するべきではない。本出願内で引用されるすべての特許および特許出願は、参照によって本明細書に全体として組み込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第3,691,226号明細書
【特許文献2】米国特許第5,650,072号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の少なくとも1つの実施態様は、式I:
【化1】


による繰り返し単位式を有するスチレンスルホン酸塩ポリマー分散防汚剤を導入することによって、アクリロニトリルの製造プロセスのクエンチ段階および回収段階における汚損問題を軽減するかまたは排除するための方法を目的とする。本分散剤は、汚損化合物がクエンチおよび回収段階の装置上へ堆積することを防ぐ。実験データによって、本分散剤は従来技術より優れていることが証明された。
【0010】
以下、具体的に図面を参照して本発明の詳細な説明を記載する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の分散剤を用いるアクリロニトリルの製造プロセスの全体的な構成を例示する図である。
【図2】本発明の分散剤を用いるアクリロニトリル製造の回収段階における1つの設計のより詳細な構成を例示する図である。
【図3】本発明の分散剤を用いるアクリロニトリル製造の回収段階における別の設計のより詳細な構成を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、図1を参照すると、本発明の分散剤が加えられる、アクリロニトリルの製造プロセスの3つの共通の段階の全体的な例示が示されている。当業者は、アクリロニトリルの製造プロセスには知られている多くの変化形があり、図1はこれらの既知の変化形の代表であると認めるであろう。これらの3つの段階は、反応段階(25)、回収段階(24)および精製段階(23)である。反応段階(25)において、投入されたプロピレン(15)がアンモ酸化反応の間に反応器(1)内で酸素または空気(16)およびアンモニア(14)と反応してアクリロニトリルを形成する。反応流出物は、次にクエンチ塔(2)へ流れて行き、そこで循環水(18)でクエンチされ、そこで未反応のアンモニアが硫酸で中和される。クエンチ操作の後、生成物は回収段階へ流れて行き、そこで生成物は吸収カラム(3)へ入る。吸収カラム(3)の中で、アクリロニトリルおよび重質成分は希薄水(26)で軽質成分(O、CO、COおよび未反応のプロピレン等など)から洗い落とされる。濃厚水(27)として知られているアクリロニトリルを含む吸収カラム底分は、回収カラム(4)へ送られ、一方、軽質成分は、吸収カラム(3)頂部を通ってオフガス(17)となり、焼却される。
【0013】
回収カラム(4)の中で、濃厚水は、抽出蒸留される。アクリロニトリルおよびシアン化水素は、それらの共沸混合物および水とともに回収カラム(4)の上にある部分を通って取り出される。濃厚水流とともに流れて来る水の大部分は、回収カラム(4)の下段区画から取り出され、希薄水として吸収カラム(3)へリサイクルされる。溶媒水が、回収カラム(4)の上にある部分へ同じように流れて行く。回収カラム(4)からの水のごく一部が回収カラム(4)の底を通ってパージされ、この水は、クエンチカラムへ送り返されるかまたは処分のために廃水プロセスへ送られる。図1において、回収カラム蒸留操作は、回収カラム(4)に付属するリボイラ熱交換器によって維持される。
【0014】
回収カラム(4)の上にある部分のアクリロニトリル保持流は、次に、精製段階(23)へ流れて行き、そこでシアン化水素(19)、水(20)および重質成分がアクリロニトリル生成物(21)から分離される。精製段階(23)は、回収カラムの上にあるデカンタ(5)、ヘッドカラム(6)、ドライカラム(7)、ヘッド/ドライデカンタ(8)および生成物カラム(9)を含む。アクリロニトリルを形成するアンモ酸化反応に関するより多くの情報については米国特許第3,691,226号に見ることができる。
【0015】
本出願の場合、濃厚水の定義は、吸収カラムから回収カラムへ流れ、アクリロニトリルの濃度が高い水である。本出願の場合、希薄水は、濃厚水が回収カラムを下向きに流れた後に残り、その中にアクリロニトリルがもはやないものである。希薄水は、リサイクルされて吸収カラムの中へ戻り、オフガス成分とは向流でこのカラムを下向きに流れる。本出願の場合、溶媒水(26)は、同じく回収カラムを下向きに流れた濃厚水の後に残るものであり、従ってその中にアクリロニトリルはもはやない。溶媒水は、回収カラム頂部区画の中へ供給されてデカンタ(5)の中へ流れるアクリロニトリル流の汚染を減らす。
【0016】
アクリロニトリルプラントの間で設計の変化はごく普通のことである。図2および図3は、回収および廃水の取り扱いにおける2つの異なる設計を示している。図2の設計において、別個のストリッピングカラム(10)が加えられている。これは、溶媒水(26)からアセトニトリル(22)および軽質成分をストリップする。図3において、廃水処分を最小にするために、多段階蒸留廃水プロセス(11および12)を用いて回収カラム底パージ流から水をストリップする。塔頂抜き出し水(28)は、リサイクルされてクエンチ段階へ戻され、底分(29)は、廃水処理施設へ送られる。
【0017】
希薄水および溶媒水が回収段階を通ってリサイクルされ、回収カラム底パージがストリッパカラムまたは多段階廃水蒸留を通るとき、それらは、さまざまな物理的および化学的変化を受け、その結果回収段階ならびに廃水プロセスのさまざまな構成部品、槽および装置の中の汚損物形成を招く。本出願の場合、汚損物という用語の定義は、製造プロセスおよび/または化学プロセスの操作の間に装置上に蓄積され、望ましくないことがあり、プロセスの操作および/または効率を減退させることがある物質堆積物である。汚損物が蓄積すると、特に回収カラムを通る液体のスループットが滞り、閉塞する。汚損物は、希薄水および溶媒水を冷却する熱交換器、およびリボイラまたはストリッパに沿って蓄積すると、汚損物の熱伝導率不良によってこれらの構成部品の効率の低下を引き起こすので、特に有害である。
【0018】
本発明の少なくとも1つの実施態様は、アクリロニトリル製造プロセスの流体流の1つ以上の中へのスチレンスルホン酸塩ポリマーの添加である。スチレンスルホン酸塩ポリマーは、下式の繰り返し単位を含むポリマー材料であり、
【化2】


式中、Mは、水素、アルカリ金属またはアンモニウム、あるいはそれらの混合物であり、Rは、水素、アルキル、アリール、アルキルアリール、またはアリールアルキルであり、Rは、ヘテロ原子を含んでよく、nは、整数である。
【0019】
少なくとも1つの実施態様において、スチレンスルホン酸塩ポリマーは、クエンチカラムおよび回収段階ならびに廃水プロセスの流体流の1つ以上の中へ導入され、そこで汚損物堆積を防ぎ、以前に堆積した汚損物の除去さえ容易にする分散剤として作用する。さまざまな製造プロセスにおいて用いられている分散剤の既知の例は、スルホン化油、スルホン化脂肪酸、硫酸化油、硫酸化脂肪酸、ナフタレンスルホン酸塩−ホルムアルデヒド、スルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸およびリグノ硫酸金属塩を含む(米国特許第5,650,072号、第4,650,072号、第5,746,924号および第3,691,226号に記載されている)。しかし、実験データによると、アクリロニトリル製造の回収段階において、スチレンスルホン酸塩ポリマーは、これらの既存の分散剤のすべてを上回る優れた分散剤特性を有することが証明される。
【0020】
従来技術の分散剤の効果が出にくい低いpHおよび/またはより高い汚染濃度において、スチレンスルホン酸塩ポリマーは、優れた分散性能を提供する。少なくとも1つの実施態様において、本分散剤は、50,000ダルトンから2,000,000ダルトンの分子量を有する。少なくとも1つの実施態様において、本分散剤は、少なくとも100,000ダルトンから1,000,000ダルトンの分子量を有する。
【0021】
クエンチ、回収段階および廃水プロセスの流体回路には、スチレンスルホン酸塩ポリマー分散剤を導入することができる複数の理想的な位置がある。これらは、クエンチカラムの循環流、希薄水冷却装置交換器の前の希薄水回路、溶媒水冷却装置交換器の前または後の溶媒水回路、リボイラへの供給ライン、ストリッパカラムへの供給および多段階蒸留廃水プロセスへの供給を含むがこれに限定されるものではない。特に、熱交換器またはリボイラの直前での分散剤の導入は、劣化していない十分な量の分散剤を交換器またはリボイラへ提供するので、効果的である。効果的な用量は、汚損の深刻さおよび処理経済性に応じて1重量ppmから10,000重量ppmの範囲である。実際には、好ましい用量は、5ppmから1000ppmの範囲であり、最も好ましい用量は、10ppmから200ppmである。
【0022】
スチレンスルホン酸塩ポリマー分散剤それ自体は、一般に、固体として存在し、一般に、溶媒を用いてそれを溶解し、液体調合物を調製する。これは、一般に、スチレンスルホン酸塩ポリマーが作られるときに行われている。スチレンスルホン酸塩ポリマーは多くの溶媒に可溶であるが、明らかな理由により水が最も多くの場合に用いられる溶媒である。経済性を考慮すると、一般に、高濃度のスチレンスルホン酸塩ポリマー調合物が望ましい。補助溶媒を水とともに用いて溶解性を高め、生成物安定性および取り扱い性を改善してよい。
【0023】
以下の実施例は、本発明の実施態様および有用性を記載するために提示され、請求項において特に明記されない限り、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0024】
実施例1A. 溶媒水冷却装置汚損をシミュレーションする分散試験:
アクリロニトリルプラントの回収溶媒水冷却用熱交換器から汚損物堆積物質の試料を採取した。汚損物試料を乾燥させ、挽いて粉にした。汚損物の粉を有機溶媒に溶解させることによって汚損物溶液を調製した。15mLの体積の遠心管の中に同じアクリロニトリルプラントから回収カラムの15mLの回収カラム溶媒水を加えた。1mLの上記のように調製した汚損物溶液を遠心管に加えた。管の中の内容物をよく振り、次に管を常温で静置した。管の中に沈殿が見られた。2.5時間後、管の底において約0.5mLの沈殿物が記録された。
【0025】
実施例2A. 本発明のスチレンスルホン酸塩ポリマーで処理した試料:
汚損物溶液を加える前に39ppmの本発明のスチレンスルホン酸塩ポリマーを管の内容物に加えた点を除けば、実施例1Aにおける手順と同じ手順を実行した。この管は、本実験の2日間の期間に沈殿をまったく示さなかった。本実施例は、本発明のスチレンスルホン酸塩ポリマーがこの汚損状況に対して効果的な分散剤であることを示している。
【0026】
実施例3A. 従来技術の分散剤で処理した試料:
汚損物溶液を加える前に57ppmのナフタレンスルホン酸塩ポリマーを管の内容物に加えた点を除けば、実施例1Aにおける手順と同じ手順を実行した。静置20時間まで沈殿は起らなかった。3日後、管の底において約0.2mLの固体沈殿物が測定された。ナフタレンスルホン酸塩ポリマーは、この汚損状況に対してある程度の効果しかない。
【0027】
実施例1B. 回収カラム底汚損をシミュレーションする分散試験:
アクリロニトリルプラントの回収カラムリボイラから汚損物堆物物質の試料を採取した。汚損物試料を乾燥させ、挽いて粉にした。汚損物の粉を有機溶媒に溶解させて汚損物溶液を調製した。15mLの体積の遠心管の中に、同じアクリロニトリルプラントから回収カラムの15mLの回収カラム底パージ水を加えた。この回収カラム底パージ流は、溶媒水流より高い濃度の汚染物を含み、溶媒水流より低いpHを示した。所定量の上記で調製した汚損物溶液を同じ遠心管に加えた。管の内容物をよく振り、次に管を常温で静置した。5分経過する前に沈殿が起った。30分後、管の底において約3mLの沈殿物が記録された。
【0028】
実施例2B. スチレンスルホン酸塩ポリマーで処理した試料:
汚損物溶液を加える前に39ppmの本発明のスチレンスルホン酸塩ポリマーを管の内容物に加えた点を除けば、実施例1Bにおける手順と同じ手順を実行した。この管は本実験の3日間の期間に沈殿をまったく示さなかった。本実施例は、本発明のスチレンスルホン酸塩ポリマーがこの汚損状況に対して効果的な分散剤であることを示している。
【0029】
実施例3B. 従来技術の分散剤で処理した試料:
汚損物溶液を加える前に57ppmのナフタレンスルホン酸塩ポリマーを管の内容物に加えた点を除けば、実施例1Bにおける手順と同じ手順を実行した。数分後、沈殿が起った。30分後、管の底において約3mLの沈殿物が記録された。ナフタレンスルホン酸塩ポリマーは、この汚損状況に対して効果がない。
【0030】
実施例1C. 回収カラムリボイラの汚損をシミュレーションする分散試験:
アクリロニトリルプラントの回収カラムリボイラから汚損物堆積物質の試料を採取した。汚損物試料を乾燥させ、挽いて粉にした。汚損物の粉を有機溶媒に溶解させて汚損物溶液を調製した。10mLの体積の遠心管の中にアクリロニトリルプラントから8mLの回収カラム底パージ水を加えた。2マイクロリットルの氷酢酸を内容物に加えてそのpHを低下させた。50マイクロリットルの上記のように調製した汚損物溶液を同じ遠心管に加えた。管をよく振り、次に管を高い温度で静置した。約70℃において、未処理の管の中で沈殿が起った。
【0031】
実施例2C. 従来技術のリグノスルホン酸塩分散剤で処理した試料:
汚損物溶液を加える前に39ppmのリグノスルホン酸塩分散剤を管の内容物に加えた点を除けば、実施例1Cにおける手順と同じ手順を実行した。この管は70℃において沈殿をまったく示さなかった。しかし、温度を90℃へ上げると沈殿が観察された。本実施例は、リグノスルホン酸塩分散剤の限定的な有効性を示している。
【0032】
実施例3C. 従来技術のナフタレンスルホン酸塩樹脂分散剤で処理した試料:
汚損物溶液を加える前に57ppmのナフタレンスルホン酸塩ポリマーを管の内容物に加えた点を除けば、実施例1Cにおける手順と同じ手順を実行した。70℃および90℃において沈殿は見られなかった。次に、追加の3マイクロリットルの酢酸を内容物に加えた。直ちに沈殿が観察された。本実施例は、ナフタレンスルホン酸塩ポリマーがこの汚損状況に対して限られた分散効果を有することを示している。
【0033】
実施例4C. 本発明のスチレンスルホン酸塩ポリマー分散剤で処理した試料:
管の内容物を57ppmの本発明のスチレンスルホン酸塩ポリマー分散剤で処理した点を除けば、実施例3Cにおける手順と同じ手順を実行した。70℃および90℃において沈殿は見られなかった。3マイクロリットルの酢酸を加えても沈殿は観察されなかった。本実施例は、スチレンスルホン酸塩ポリマーがこの汚損状況に対して従来技術より効果的な分散剤であることを示している。
【0034】
本発明は、多くの異なる形で具体化することができるが、本発明の特定の好ましい実施態様が図面に示され、本明細書に詳細に記載されている。本開示は、本発明の原理の例示であり、例示した特定の実施態様に本発明を限定するものではない。
【0035】
上記の開示は、例示であり、網羅的でないものとする。本記載は、多数の変化形および代替形を当業者に示唆することになる。すべてのこれらの代替形および変化形は、請求項の範囲内に含まれるものとし、請求項において、用語「を含む」は、「を含むがこれに限定されるものではない」を意味する。当業者は、本明細書に記載されている特定の実施態様の他の均等物を認識することができよう。そのような均等物も請求項に包含されるものとする。
【0036】
これによって、本発明の好ましい実施態様および代替実施態様の記載を完了する。当業者は、本明細書に記載されている特定の実施態様の他の均等物を認識するであろう。そのような均等物は、本明細書に添付の請求項に包含されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリロニトリルの製造プロセスにおいて汚損物堆積を防ぐ方法であって、
前記方法は、次式の繰り返し単位式を含むスチレンスルホン酸塩ポリマーの有効な汚損防止量を前記製造プロセスの流体相へ加えることを含み、
【化1】


式中、Mは、水素、アルカリ金属またはアンモニウム、あるいはそれらの混合物であり、Rは、水素、アルキル、アリール、アルキルアリール、またはアリールアルキルであり、Rは、ヘテロ原子を含んでよく、nは、整数である方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記流体相は、プロピレン、アンモニアおよび酸素(および/または空気)のアンモ酸化反応由来である方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、前記製造プロセスは、前記スチレンスルホン酸塩ポリマーが、回収段階、水リサイクル用パイプライン、多段階蒸留廃水プロセス、クエンチカラム、熱交換器、リボイラおよびストリッパ、ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群から選ばれた少なくとも1つの項目へ加えられることをさらに含み、前記少なくとも1つの選ばれた項目は、前記群の他の項目と封止性流体連通している方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、前記アンモ酸化反応器流出物を循環水流で冷却するクエンチカラムをさらに含み、前記スチレンスルホン酸塩ポリマーは、前記循環水流へ加えられる方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、回収段階をさらに含み、前記回収段階それ自体は、少なくとも1つの吸収カラムおよび少なくとも1つの回収カラムを含み、すべてが互いに封止性流体連通し、
前記吸収カラムの中で希薄水による吸収によって高い濃度のアクリロニトリルを有する濃厚水が形成され、
前記回収カラムの中で蒸留分離によってアクリロニトリルが回収され、
前記スチレンスルホン酸塩ポリマーは、前記吸収カラムおよび前記回収カラムからなる群から選ばれた少なくとも1つのカラムへ加えられる
方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、前記製造プロセスの一部分から水を取り、前記水を前記製造プロセスの別の部分へ移動させることによって前記水をリサイクルする少なくとも1つのリサイクル水パイプラインをさらに含み、前記スチレンスルホン酸塩ポリマーは、前記リサイクル水パイプラインへ加えられる方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、前記リサイクル水パイプラインによって移動する前記水は、回収カラムの頂部へ循環される溶媒水を含み、前記スチレンスルホン酸塩ポリマーは、前記溶媒水へ加えられる方法。
【請求項8】
請求項6に記載の方法であって、前記リサイクル水パイプラインによって移動する前記水は、希薄水を含み、前記スチレンスルホン酸塩ポリマーは、前記希薄水へ加えられる方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、前記回収カラム底からのパージ流を多段階蒸留操作によって加工する廃水処理区画をさらに含み、前記スチレンスルホン酸塩ポリマーは、前記廃水処理区画への供給流へ加えられる方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法であって、前記スチレンスルホン酸塩ポリマーは、50,000から2,000,000の分子量を有する方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法であって、前記スチレンスルホン酸塩ポリマーは、100,000から1,000,000の分子量を有する方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法であって、前記スチレンスルホン酸塩ポリマーは、1から10,000ppmの用量で加えられる方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法であって、前記スチレンスルホン酸塩ポリマーは、10から1000ppmの用量で加えられる方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法であって、前記スチレンスルホン酸塩ポリマーは、20から200ppmの用量で加えられる方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法であって、前記スチレンスルホン酸塩ポリマーは、分散剤、重合抑制剤、腐食抑制剤、消泡剤などの他の防汚剤と組み合わされ、別々に注入されるかまたは一緒に注入されるかのどちらかによって用いられる方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法であって、前記スチレンスルホン酸塩ポリマーは、溶媒の中に溶解した固体である方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって、補助溶媒をさらに含む方法。
【請求項18】
請求項16に記載の方法であって、前記溶媒は、水である方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−509341(P2012−509341A)
【公表日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−537599(P2011−537599)
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際出願番号】PCT/US2009/065057
【国際公開番号】WO2010/059770
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(507248837)ナルコ カンパニー (91)
【Fターム(参考)】