説明

アシストグリップ

【課題】別部品を取り付けることなく、低コストでグリップ本体の打音を解消することができるアシストグリップを提供する。
【解決手段】捻りコイルばね7の一端部に、グリップ本体1の端部に設けたばね係止部17に係止される係止片部23が設けられる。捻りコイルばね7の他端部近傍に、ヒンジ部3に設けたばね係合部15に係合する係合片部24が設けられる一方、捻りコイルばね7の係合片部24の延設部分に緩衝部25が設けられる。緩衝部25は、グリップ本体1を使用状態から非使用側に戻し回動させたとき、グリップ本体1の一部が当接して、グリップ本体1の3ヒンジ部に対する衝撃を緩衝する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車室内の天井面等に取り付けられるアシストグリップに関し、特にグリップ本体を回動可能に、ヒンジ部を介して車内の被固定部に固定するアシストグリップに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車室内の天井面には、搭乗者が室内で身体を支持するために、アシストグリップが取り付けられる。この種のアシストグリップとして、グリップ本体の両側に脚部が形成され、その脚部が取付台に対し軸を介して回動可能に取り付けられ、グリップ本体が両側の取付台を介して回動可能に装着され、グリップ本体を取付台に対し格納状態(非使用状態)に付勢する捻りコイルばねが装着された構造のものが、下記特許文献1などで知られている。
【0003】
このアシストグリップは、使用者がグリップ本体を持って使用状態まで回動させて使用し、使用を終えてグリップ本体から手を離すと、捻りコイルばねの付勢力によりグリップ本体が格納状態(非使用状態)に戻される。このとき、グリップ本体の回動部に制動機構がないと、グリップ本体が格納位置に戻ったとき、ばねの付勢力によりグリップ本体が別の部位に当り、打音が発生する。
【0004】
このため、この種の回動式のアシストグリップでは、グリップ本体と取付台との間に摩擦抵抗式の制動部材を取り付け、または収納時にグリップ本体の一部が取付台に当接する箇所にクッション材を取り付け、或いはオイルダンパーを一方の取付台の軸部に設けて、収納時に、グリップ本体に制動をかけながら収納する構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3610535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、摩擦抵抗式の制動部材、クッション材、或いはオイルダンパーは、別部品として、アシストグリップに取り付ける必要があり、部品点数の増大、部品の取り付け工数の増大から、製造コストの増加を招く課題がある。
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、別部品を取り付けることなく、低コストでグリップ本体の打音を解消することができるアシストグリップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るアシストグリップは、左右両端の基部にヒンジ用取付部が設けられたグリップ本体と、該両側のヒンジ用取付部に枢軸を介して回動可能に取り付けられるヒンジ本体を有した1対のヒンジ部と、該ヒンジ本体の該枢軸の外周部に各々装着され、該グリップ本体を非使用側に付勢する捻りコイルばねと、を備え、該捻りコイルばねの付勢力に抗して該グリップ本体を回動させて使用状態とするアシストグリップにおいて、該捻りコイルばねの一端部に、該グリップ本体の端部に設けたばね係止部に係止される係止片部が設けられ、該捻りコイルばねの他端部近傍に、該ヒンジ部のヒンジ本体に設けたばね係合部に係合する係合片部が設けられる一方、該捻りコイルばねの該係合片部の延設部分に緩衝部が設けられ、該グリップ本体を使用状態から非使用側に戻し回動させたとき、該グリップ本体の一部が該緩衝部に当接して、該グリップ本体の該ヒンジ部に対する衝撃を緩衝することを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、グリップ本体を使用状態から非使用側に戻し回動させたとき、グリップ本体の一部が捻りコイルばねの緩衝部に当接して、グリップ本体のヒンジ部に対する衝撃を緩衝するので、別部品を取り付けることなく、低コストでグリップ本体の打音を解消することができる。
【0010】
ここで、上記捻りコイルばねは、一方向に巻回された第1コイル部と他方向に巻回された第2コイル部とを有し、該第1コイル部と該第2コイル部の一端部に各々前記係止片部が設けられる一方、該第1コイル部と第2コイル部の他端近傍に前記係合片部が設けられ、該係合片部の延設部分に前記緩衝部が該第1コイル部と第2コイル部と連続して設けられることが望ましい。
【0011】
この発明によれば、第1コイル部と第2コイル部間の係合片部の延設部分に緩衝部を連続して設けているので、連続形状の緩衝部をグリップ本体の一部に当てて、グリップ本体が非使用状態に戻る際の衝撃を効果的に且つ確実に緩衝させ、打音を解消することができる。
【0012】
また、上記ヒンジ部は、ヒンジ本体の正面側にカバーを嵌着して構成され、上記捻りコイルばねの緩衝部は該カバーに設けた開口部から正面側に突出させる構成とすることが望ましい。
【0013】
この発明によれば、捻りコイルばねの緩衝部のみをヒンジ部から露出させるようにして、ヒンジ部の良好な外観を保持しつつ、グリップ本体の非使用時の打音を防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のアシストグリップによれば、別部品を取り付けることなく、低コストで、グリップ本体が非使用状態に戻る際の打音を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態を示すアシストグリップの背面側からの斜視図である。
【図2】アシストグリップの分解斜視図である。
【図3】アシストグリップのヒンジ部の分解斜視図である。
【図4】捻りコイルばねの正面図(a)と右側面図(b)である。
【図5】ヒンジ部のヒンジ本体の正面側からの斜視図である。
【図6】カバーとヒンジ本体の左側面図(a)とカバーをヒンジ本体に被せた状態の左側面図(b)である。
【図7】ヒンジ本体の断面図である。
【図8】グリップ本体を使用状態としたアシストグリップの断面図である。
【図9】グリップ本体を非使用状態としたアシストグリップの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1はアシストグリップをその背面側から見た斜視図を示し、以下の説明で使用する正面、背面、左右上下は、装着姿勢のアシストグリップを正面から見た場合を基準とし、図1などで示したFRは前方(正面側)、REは後方(背面側)、UPは上側、DOは下側、RIは右側、LEは左側を示す。
【0017】
図1、2において、1は合成樹脂で一体成形されたグリップ本体であり、グリップ本体1の左右両端に設けられた基部の背面に、略長方形の凹部として、ヒンジ用取付部11,12が形成されている。両側のヒンジ用取付部11,12内における左右両側壁部には、各々軸孔13,14が形成され、枢軸8が、各々、ヒンジ部3,4の支持片31に設けた軸孔32と共に当該側壁部の軸孔13,14に挿通され、各ヒンジ部3,4はグリップ本体1に対し回動可能に軸支される。1対のヒンジ部3、4は、その背面側が自動車の車体側に固定され、グリップ本体1が非使用状態と使用状態との間で、相対的にヒンジ部3、4に対し回動可能とされる。
【0018】
図2、3に示すように、左右のヒンジ部3,4は、捻りコイルばね7収納用の背面開口凹部33を有し正面側に正面開口凹部35を有したヒンジ本体30と、ヒンジ本体30の正面側を覆うカバー5と、背面開口凹部33内に装着されグリップ本体1を非使用状態に付勢する捻りコイルばね7と、を備えて構成される。ヒンジ部3のヒンジ本体30とヒンジ部4のヒンジ本体30とは、基本的に同じ形状に形成されるが、左右の曲線部の曲率を左右のヒンジ部で変えるなどして、左右のヒンジ本体30を線対称とする相違した形状に形成することもできる。
【0019】
ヒンジ本体30は、図3、5、7に示すように、正面を略略正方形とする立方体形状に形成され、その下部背面側の両側に支持片31を突設して、合成樹脂により一体成形される。1対の支持片31間には、捻りコイルばね7用の収納スペースとして、背面開口凹部33が形成される一方、ヒンジ本体30の正面側には、図5のように、正面開口凹部35が形成され、その正面開口凹部35と背面開口凹部33を上下で連通させるように、矩形穴34が設けられる。この矩形穴34には、後述の捻りコイルばね7の延設部26が挿入され、矩形穴34の前縁は、図7,8のように、ばねの係合片部24が係合するばね係合部37となっている。
【0020】
さらに、図3,7に示す如く、ヒンジ本体30の背面には平坦な座部30aが形成され、座部30aの中央に取付孔36が設けられ、車体にアシストグリップを取り付ける際、座部30aをボディパネルの表面に押し当て、取付ねじ9を取付孔36に挿入して締め付け固定するようになっている。
【0021】
ヒンジ本体30の下部に突設された両側の支持片31には軸孔32が貫通穴として形成される。図3のように、この軸孔32には枢軸8が挿通される一方、枢軸8に両端部がグリップ本体1のヒンジ用取付部11,12の両側の軸孔13,14に嵌入され、ヒンジ本体30をグリップ本体1のヒンジ用取付部11、12内で回動可能に支持する構造となっている。
【0022】
さらに、図5に示すように、ヒンジ本体30の正面側には、正面開口凹部35が形成され、この正面開口凹部35から取付孔36に取付ねじ(ボルト)9を挿入し、ボディパネルにヒンジ部3,4を固定する構造である。図6などに示す如く、この正面開口凹部35の周囲には、カバー5が覆うように被せられるが、カバー5を嵌着するために、図3のように、カバー係止部39がヒンジ本体30の両側部に設けられ、カバー5内の両側壁に設けた係止爪5aをカバー係止部39に係止させて、カバー5を取り付けるようになっている。
【0023】
図2,3に示すように、グリップ本体1を非使用状態に付勢する捻りコイルばね7が枢軸8の回りの背面開口凹部33内に配設される。捻りコイルばね7は、図3,4に示すように、第1コイル部21と、第2コイル部22と、第1コイル部21と第2コイル部22間を接続しそこから上に延設される延設部26と備えて構成され、第1コイル部21と第2コイル部22はばね線材を相反方向に巻回して形成され、第1コイル部21及び第2コイル部22の一端に、グリップ本体1のばね係止部17,18に係止される係止片部23が曲折端部として形成されている。
【0024】
また、第1コイル部21と第2コイル部22を結ぶ延設部26は、略コ字状に曲折されて連続し、延設部26の元部に係合片部24が、図8の如く、左右のヒンジ部3,4のヒンジ本体30のばね係合部37と係合可能に設けられる。さらに、延設部26の先端には緩衝部25が形成される。この捻りコイルばね7の緩衝部25は、図8に示すように、ヒンジ部3,4のカバー5の開口部5bから前方に突出し、アシストグリップの使用時、グリップ本体1から手を離し、捻りコイルばね7の付勢力によりグリップ本体1が非使用位置に戻ったとき、グリップ本体1の一部がその緩衝部25に当接し、打音を防止するように作用する。
【0025】
カバー5は、図3,6に示すように、ヒンジ本体30の正面開口凹部35をその前面から覆う形状に形成され、中央部に縦長の開口部5bが形成され、その開口部5bから捻りコイルばね7の緩衝部25を正面側に突出させる。また、カバー5の内側の両側壁には、ヒンジ本体30の両側部のカバー係止部39に係止される係止爪5aが設けられている。
【0026】
上記構成のアシストグリップを組み立てる場合、まず、図1,2,3に示すように、ヒンジ本体30内の背面開口凹部33内の定位置に、捻りコイルばね7を挿入した状態で、左右のヒンジ部3,4のヒンジ本体30を、グリップ本体1のヒンジ用取付部11,12内に配置する。このとき、捻りコイルばね7の端部の係止片部23はグリップ本体1のばね係止部17,18に係止させ、捻りコイルばね7の中間位置の延設部26の係合片部24はヒンジ本体30のばね係合部37(図8,9)に係合させた状態とする。この状態で、枢軸8,8を左右のヒンジ用取付部11,12の軸孔13,14に各々差し込み、圧入する。これにより、左右のヒンジ部3,4のヒンジ本体30は、各々、枢軸8,8を軸にグリップ本体1に対し回動可能に軸支される。ヒンジ本体30の正面側には、各々カバー5が嵌着され、捻りコイルばね7の緩衝部25はカバー5の開口部5bから正面側に突出する。
【0027】
この状態で、グリップ本体1と左右のヒンジ部3,4は、図9に示す如く、各々、捻りコイルばね7の付勢力(捻りばね力)により相互に重ね合うように、つまり左右のヒンジ部3,4がグリップ本体1のヒンジ用取付部11,12内に入いるように付勢され、左右のヒンジ部3,4がグリップ本体1のヒンジ用取付部11,12内に入った状態で静止する。このとき、図9のように、捻りコイルばね7の延設部26先端の緩衝部25はカバー5の開口部5bから正面側に突出しているので、グリップ本体1の一部が緩衝部25に当接した状態となる。
【0028】
アシストグリップを自動車室内の所定位置に取り付ける場合、カバー5を外し、図8のように、グリップ本体1を前方に開いた状態で、左右のヒンジ部3,4を図示しない車体の成形天井などに当て、ヒンジ本体30の取付孔36に取付ねじ9を挿入し、成形天井などとボディパネルに設けたねじ穴に、取付ねじ9をねじ込み、左右のヒンジ部3,4を締め付け固定する。この後、左右のヒンジ本体30の正面にカバー5を嵌着するが、上記のように、捻りコイルばね7の延設部26先端の緩衝部25は、カバー5の開口部5bから正面側に突出しているので、捻りコイルばね7により非使用状態(グリップ本体1のヒンジ用取付部11,12がヒンジ部3,4に重ね合わせられた状態)で、図9のように、グリップ本体1の一部が緩衝部25に略当接した状態となる。
【0029】
アシストグリップを使用する際、使用者は、図9の状態から、グリップ本体1を持って下側に引くと、グリップ本体1は左右のヒンジ部3,4に対し枢軸8,8を軸にして、下側に回動し、図8のような使用状態となる。そして、使用者が使用状態のグリップ本体1から、手を離すと、グリップ本体1は捻りコイルばね7の付勢力により、図8の時計方向に回動し、図9のように、左右のヒンジ部3,4がグリップ本体1のヒンジ用取付部11,12内に入り、非使用状態となったとき、グリップ本体1の一部(ヒンジ用取付部11,12の内側面)が捻りコイルばね7の延設部26の先端の緩衝部25に当接し、グリップ本体1の回動が停止する。
【0030】
このため、グリップ本体1を戻り回動させた際の衝撃は、捻りコイルばね7の緩衝部25により吸収され、グリップ本体1が非使用状態に戻る際に発生しやすい打音の発生は効果的に防止される。
【0031】
このように、グリップ本体1を使用状態から非使用側に戻し回動させたとき、グリップ本体1の一部が捻りコイルばね7の緩衝部25に当接して、グリップ本体1のヒンジ部3,4に対する衝撃を緩衝するので、別部品を取り付けることなく、低コストでグリップ本体1の打音を解消することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 グリップ本体
3 ヒンジ部
5 係止爪
5 カバー
5a 係止爪
5b 開口部
8 枢軸
9 取付ねじ
11 ヒンジ用取付部
12 ヒンジ用取付部
13 軸孔
17 係止部
21 第1コイル部
22 第2コイル部
23 係止片部
24 係合片部
25 緩衝部
26 延設部
30 ヒンジ本体
30a 座部
31 支持片
32 軸孔
33 背面開口凹部
34 矩形穴
35 正面開口凹部
36 取付孔
37 係合部
39 カバー係止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右両端の基部にヒンジ用取付部が設けられたグリップ本体と、
該両側のヒンジ用取付部に枢軸を介して回動可能に取り付けられるヒンジ本体を有した1対のヒンジ部と、
該ヒンジ本体の該枢軸の外周部に各々装着され、該グリップ本体を非使用側に付勢する捻りコイルばねと、
を備え、該捻りコイルばねの付勢力に抗して該グリップ本体を回動させて使用状態とするアシストグリップにおいて、
該捻りコイルばねの一端部に、該グリップ本体の端部に設けたばね係止部に係止される係止片部が設けられ、
該捻りコイルばねの他端部近傍に、該ヒンジ部のヒンジ本体に設けたばね係合部に係合する係合片部が設けられる一方、該捻りコイルばねの該係合片部の延設部分に緩衝部が設けられ、
該グリップ本体を使用状態から非使用側に戻し回動させたとき、該グリップ本体の一部が該緩衝部に当接して、該グリップ本体の該ヒンジ部に対する衝撃を緩衝することを特徴とするアシストグリップ。
【請求項2】
前記捻りコイルばねは、一方向に巻回された第1コイル部と他方向に巻回された第2コイル部とを有し、該第1コイル部と該第2コイル部の一端部に各々前記係止片部が設けられる一方、該第1コイル部と第2コイル部の他端近傍に前記係合片部が設けられ、該係合片部の延設部分に前記緩衝部が該第1コイル部と第2コイル部と連続して設けられたことを特徴とする請求項1記載のアシストグリップ。
【請求項3】
前記ヒンジ部は前記ヒンジ本体の正面側にカバーを嵌着して構成され、前記捻りコイルばねの緩衝部が該カバーに設けた開口部から正面側に突出することを特徴とする請求項1または2記載のアシストグリップ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−131285(P2012−131285A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283609(P2010−283609)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(308016242)豊和化成株式会社 (65)
【Fターム(参考)】