説明

アシストグリップ

【課題】グリップ本体を引き起こし位置に保持可能として、容易に把持できるようにしたアシストグリップを提供する。
【解決手段】アシストグリップは、左右両端の基部にヒンジ用凹部11,12が設けられたグリップ本体1と、両側のヒンジ用凹部11,12に枢軸15,16を介して回動可能に取り付けられ、被固定部に固定されるヒンジ本体21,31を有した1対のヒンジ部2,3と、ヒンジ本体11の枢軸15に外嵌され、グリップ本体1を上部格納側に付勢する捻りコイルばね6と、を備える。ヒンジ部2を取り付けたグリップ本体1に、グリップ側係止部17が設けられ、グリップ本体1がヒンジ部2に対し引き起こし回動されたとき、グリップ側係止部17に係止されるヒンジ側係止部21dがヒンジ部2のヒンジ本体21に設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車室内の天井面等に取り付けられるアシストグリップに関し、特にグリップ本体が、車内の被固定部に固定されたヒンジ部に対し回動可能に取り付けられる回動型のアシストグリップに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車室内の天井面には、搭乗者が室内で身体を支持するために、アシストグリップが取り付けられる。この種のアシストグリップとして、グリップ本体の両側にヒンジ用凹部が形成され、そのヒンジ用凹部内にヒンジ部が回動可能に取り付けられ、グリップ本体が両側のヒンジ部を介して回動可能に装着される構造の回動型アシストグリップが、各種の自動車で使用されている。
【0003】
このアシストグリップは、下記特許文献1に記載されるように、非使用時にグリップ本体が上方に回動して格納状態となり、搭乗者が使用する場合、グリップ本体を持って下側に回動させながらそれを引き起こし、引き起こした状態のグリップ本体を持って使用される。
【0004】
しかしながら、グリップ本体は、ヒンジ部のヒンジ本体内に装着された捻りコイルばねのばね力により、常に上方の格納側に付勢されているので、使用者がグリップ本体から手を離すと、グリップ本体はそのばね力により元の上部格納状態に戻ることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−121633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このため、例えば、搭乗者がグリップ本体の把持と離脱を頻繁に繰り返すようにアシストグリップを使用する場合、グリップ本体から手を離すたびにグリップ本体が元の格納位置に戻ってしまい、次に使用する際には、格納位置のグリップ本体を持って引き起こす必要があり、煩雑な操作を必要としていた。
【0007】
また、自動車が急ブレーキをかけたような場合、搭乗者は咄嗟にアシストグリップを持ちたい場合があるが、そのような状態において、グリップ本体は格納状態となっているので、搭乗者が手を伸ばしてグリップ本体を把持しようとしても、咄嗟にグリップ本体を持つことが難しいという課題があった。
【0008】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、グリップ本体を引き起こし位置に保持可能として、容易に把持できるようにしたアシストグリップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明のアシストグリップは、
左右両端の基部にヒンジ用凹部が設けられたグリップ本体と、
該両側のヒンジ用凹部に枢軸を介して回動可能に取り付けられ、被固定部に固定されるヒンジ本体を有した1対のヒンジ部と、
少なくとも一方のヒンジ本体の該枢軸に外嵌され、該グリップ本体を上部格納側に付勢する捻りコイルばねと、
を備えたアシストグリップにおいて、
該ヒンジ部を取り付けた該グリップ本体に、グリップ側係止部が設けられ、該グリップ本体が該ヒンジ部に対し引き起こし回動されたとき、該グリップ側係止部に係止されるヒンジ側係止部が該ヒンジ部のヒンジ本体に設けられたことを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、搭乗者がアシストグリップを使用する場合、格納状態のグリップ本体を持って下側に回動させながら、それを使用状態まで引き起こすと、グリップ側係止部がヒンジ側係止部に係止され、グリップ本体が引き起こした使用状態に保持される。したがって、グリップ本体から手を離して場合でも、グリップ本体が元の格納位置に戻ることはなく、搭乗者が一旦グリップ本体を離した後で、容易にグリップ本体を持つことができ、グリップ本体の把持と離脱を頻繁に繰り返す場合であっても、或いは自動車が急ブレーキをかけたような場合に咄嗟にアシストグリップを持ちたいときでも、搭乗者は容易にグリップ本体を持つことができる。
【0011】
ここで、上記アシストグリップにおいて、上記枢軸が上記ヒンジ本体を貫通する軸孔は長円形軸孔とし、該枢軸が該長円形軸孔内で軸と垂直方向に僅かに移動可能とすることが好ましい。
【0012】
この発明によれば、簡単な構造によって、グリップ側係止部がヒンジ側係止部に係止される状態と、グリップ側係止部がヒンジ側係止部から外れる状態とを、容易に発生させることができ、特に、グリップ本体を引き起こした使用状態から元の格納状態に戻す際、軽くグリップ本体を押し上げるだけで、グリップ側係止部とヒンジ側係止部の係止を外し、捻りコイルばねのばね力によりグリップ本体を元の格納状態に戻すことができる。
【0013】
ここで、上記グリップ側係止部は、上記グリップ本体のヒンジ用凹部の下側縁部に設け、上記ヒンジ側係止部は、上記ヒンジ部のヒンジ本体の下側端部に設けることが好ましい。これによれば、グリップ側係止部とヒンジ側係止部を、グリップ本体とヒンジ部の成形時に簡単に形成することができる。
【0014】
ここで、上記アシストグリップにおいて、上記1対のヒンジ本体の略中央に矩形開口部が設けられ、該矩形開口部に取付クリップが各々挿入され、該取付クリップはばね弾性を有する金属を略U字状に曲折し両側に弾性脚部を設けて形成され、該両側の弾性脚部には外側に膨出する弾性膨出部が設けられ、該取付クリップの両側の弾性脚部の内側に挿入されるクリップ支持部を有したカバーが、該取付クリップを挿入した状態の該ヒンジ本体の該矩形開口部に、該ヒンジ部の前面を覆うように嵌着されるように構成することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のアシストグリップによれば、グリップ本体を引き起こし位置に保持可能として、頻繁にアシストグリップを使用する場合や咄嗟にアシストグリップを把持する場合でも、容易にグリップ本体を持つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態を示すアシストグリップの背面からの斜視図である。
【図2】アシストグリップの底面図である。
【図3】同アシストグリップの右側面図である。
【図4】同アシストグリップの背面からの分解斜視図である。
【図5】右のヒンジ部2の背面からの分解斜視図である。
【図6】左のヒンジ部3の背面からの分解斜視図である。
【図7】(a)はヒンジ部2のヒンジ本体21の右側面図、(b)はその背面図、(c)はその平面図である。
【図8】(a)は同ヒンジ本体21の正面上方から見た斜視図、(b)は同ヒンジ本体21の角度を変えて見た斜視図である。
【図9】(a)は図7のIXa-IXa断面図、(b)は対応するヒンジ部3の断面図である。
【図10】取付クリップをヒンジ本体21に挿入する際の断面説明図である。
【図11】(a)はカバーの底面側からの斜視図、(b)はその右側面図、(c)はその底面図、(d)はその平面図である。
【図12】仮組付けしたカバーを押し込み、アシストグリップを車体ボディパネルに取り付ける際の説明断面図である。
【図13】アシストグリップを車体ボディパネルに完全に取り付けた状態の断面図である。
【図14】アシストグリップの使用時に、グリップ本体を引き起こし、保持された状態の断面図である。
【図15】グリップ本体を元の格納位置に戻す際の断面図である。
【図16】他の実施形態のグリップ側係止部を示す部分斜視図である。
【図17】車体側係止部を用いてグリップ本体を係止する他の実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1はアシストグリップの背面からの斜視図を示し、図2はその底面図を示し、図3はその右側面図を示し、図4はその分解斜視図を示している。なお、以下の説明で使用する左右上下は、装着姿勢のアシストグリップを正面から見たときの左右上下を示し、図示で使用したFRは前、LEは左、RIは右、UPは上、REは後、DOは下を示す。
【0018】
図1〜図4において、1は合成樹脂で一体成形されたグリップ本体であり、グリップ本体1の左右両端に設けられた基部の背面に、略長方形のヒンジ用凹部11,12が形成されている。両側のヒンジ用凹部11,12内における左右両側壁部には、各々軸孔13,14が形成され、枢軸15,16が、ヒンジ部2,3の内側支持片22、32、外側支持片23,33に設けた長円形軸孔22a,23a及び軸孔32a,33aと共に当該側壁部の軸孔13,14に挿通され、各ヒンジ部2,3はグリップ本体1に対し回動可能に軸支される。1対のヒンジ部2,3は、自動車の車体側に固定され、グリップ本体1が格納状態(非使用状態)と引き起こし状態(使用状態)との間で、相対的にヒンジ部2,3に対し回動可能とされる。捻りコイルばね6を外嵌させた枢軸15が貫通する長円形軸孔22a,23aは、枢軸15がその軸と垂直方向に僅かに移動可能に、長円形の軸孔として形成されている。長円形軸孔としては、卵型、小判型、楕円形の軸孔が例示される。
【0019】
図4、5、6に示すように、右側のヒンジ部2は、ヒンジ本体21と、ヒンジ本体21に対しその正面側(前面側)から嵌め込んで取り付けられ、図示しない車体側ボディパネルの矩形孔に嵌入されて係止される取付クリップ5と、ヒンジ本体21に対しその正面側を覆って嵌着され、ヒンジ本体21内の矩形開口部27にクリップ支持部42を進入させて取付クリップ5を内側から支持するカバー4と、ヒンジ本体21の下部に突設された内側支持片22と外側支持片23の間に装着される捻りコイルばね6と、から構成される。
【0020】
左側のヒンジ部3は、同様に、ヒンジ本体31と、ヒンジ本体31に対し正面側から嵌め込んで取り付けられ、図示しない車体側ボディパネルの矩形孔に嵌入されて係止される取付クリップ5と、ヒンジ本体31に対しその正面側を覆って嵌着され、ヒンジ本体31内の矩形開口部37にクリップ支持部42を進入させて取付クリップ5を内側から支持するカバー4と、ヒンジ本体31の下部に突設された内側支持片32と外側支持片33の間に挿入され、グリップ本体1に回動負荷を付与するオイルダンパー8と、から構成される。
【0021】
右側のヒンジ部2のヒンジ本体21は、図5、7、8に示すように、正面を略略正方形とする立方体形状に形成され、その下部に内側支持片22、外側支持片23を突設して、合成樹脂により一体成形される。その内側支持片22と外側支持片23間には捻りコイルばね6用のスペースが設けられ、ヒンジ本体21の略中央部分には矩形開口部27が設けられる。さらに、矩形開口部27の背面側には矩形枠部21aが突設され、その矩形枠部21aの周囲の一段下った部分に、座部21bが形成され、ヒンジ本体21をボディパネルの矩形孔に嵌め込む際、矩形枠部21aをその矩形孔に嵌入し、座部21bをボディパネルの表面に押し当てるように形成される。
【0022】
ヒンジ本体21の下側に突設された内側支持片22及び外側支持片23には長円形軸孔22a、23aが貫通穴として形成される。この長円形軸孔22a,23aには枢軸15が挿通され(図4)、ヒンジ本体21をグリップ本体1のヒンジ用凹部11内で回動可能に支持する一方、グリップ本体1を使用状態に引き起こしたとき、後述のグリップ側係止部17とヒンジ側係止部21dを係止させ、グリップ本体1を元の格納状態に戻す際、グリップ側係止部17とヒンジ側係止部21dの係合を外すように、グリップ本体1に支持された枢軸15が僅かに軸と直角方向に移動可能な構造となっている。
【0023】
図7,8のように、ヒンジ本体21の両側部にはカバー係止部29が形成され、後述のカバー4をヒンジ本体21の正面側に嵌着させる際、カバー4の内側に設けた係止爪43が係止されるようになっている。また、ヒンジ本体21の略中央部に形成された矩形開口部27は、図5に示すように、後述の取付クリップ5をその背面側から挿入可能な形状に形成されると共に、カバー4を嵌める際、カバー4の背面側に突設されたクリップ支持部42を挿入可能な形状に形成される。また、ヒンジ本体21の矩形開口部27の一方の内側面には、図7、8のように、ガイド溝21cが前後方向に沿って、つまりカバー4の挿入方向に沿って形成され、カバー4のクリップ支持部42の一方の側面に設けたガイドリブ44がガイド溝21cに嵌合して摺動するようになっている。
【0024】
さらに、ヒンジ本体21の矩形開口部27の両内側部には、図9aに示すように、後述の取付クリップ5の段部54を係止させるために、内側縁部25が内側に突出して設けられる。また、その内側縁部25の前面側に穴部24が形成され、その穴部24の前面側に被係止部26が、取付クリップ5の係止爪55を係止させるように、矩形開口部27の両内側部に設けられている。
【0025】
また、ヒンジ本体21の穴部24の下側に、ヒンジ側係止部21dが設けられ、図14のように、グリップ本体1を引き起こして使用状態としたとき、そのグリップ側係止部17がヒンジ側係止部21dに係止されて、グリップ本体1が使用位置に保持されるようになっている。ヒンジ側係止部21dとグリップ側係止部17は、グリップ本体1を使用位置に保持するために設けられるが、ヒンジ本体21及びグリップ本体1を合成樹脂材料により型成形する際、それらを一体成形することができるので、別の部品を取り付けることなく、安価にグリップ本体1の保持機構を製造することができる。
【0026】
一方、図7などに示すように、ヒンジ本体21の矩形開口部27の両側に、突部28が背面側に向けて突設され、組み付け時に、ヒンジ本体21をボディパネルの矩形孔に嵌入したとき、矩形孔の左右両側縁部にこの突部28の外側面を接触させ、ヒンジ本体及びグリップ本体1の左右のガタツキを防止するようにしている。
【0027】
左側のヒンジ部3のヒンジ本体31は、図6に示す如く上記右側のヒンジ本体21とほぼ同様に、正面を略略正方形とする立方体形状に形成され、その下部に内側支持片32、外側支持片33を突設して、合成樹脂により一体成形される。その内側支持片32と外側支持片33間にはオイルダンパー8用のスペースが設けられ、ヒンジ本体31の略中央部分には矩形開口部37が設けられる。さらに、矩形開口部37の背面側には矩形枠部31aが突設され、その矩形枠部31aの周囲の一段下った部分に、座部31bが形成され、ヒンジ本体31をボディパネルの矩形孔に嵌め込む際、矩形枠部31aをその矩形孔に嵌入し、座部31bをボディパネルの表面に押し当てるように形成される。
【0028】
図6に示すように、ヒンジ本体31の下部に突設した内側支持片32、外側支持片33には、軸孔32a、33aが貫通穴として形成される。この軸孔32a,33aには枢軸16が挿通され、ヒンジ本体31をグリップ本体1のヒンジ用凹部12内で回動可能に支持する構造である。ヒンジ本体31の両側部にはカバー係止部が形成され、カバー4をヒンジ本体31の正面側に嵌着させる際、カバー4側の係止爪43が係止されるようになっている。また、ヒンジ本体31の略中央部に形成された矩形開口部37は、図6に示すように、取付クリップ5をその背面側から挿入可能な形状に形成されると共に、カバー4を嵌める際、カバー4の背面側に突設されたクリップ支持部42を挿入可能な形状に形成される。また、ヒンジ本体31の矩形開口部37の一方の内側面には、図9bのように、ガイド溝31cが前後方向に沿って、つまりカバー4の挿入方向に沿って形成され、カバー4のクリップ支持部42の一方の側面に設けたガイドリブ44がガイド溝31cに嵌合して摺動するようになっている。
【0029】
さらに、ヒンジ本体31の矩形開口部37の両内側部には、図9bに示すように、取付クリップ5の段部54が係止される内側縁部35が内側に突出して設けられる。また、その内側縁部35の前面側に穴部34が形成され、その穴部34の前面側に被係止部36が、取付クリップ5の係止爪55を係止させるように、矩形開口部37の両内側部に設けられている。
【0030】
ヒンジ本体21,31の矩形開口部27,37には、図10のように、取付クリップ5が前面側から挿入され嵌め込まれるが、この取付クリップ5は、図5に示すように、ばね弾性を有する金属を略U字状に曲折して形成され、両側に弾性脚部51がばね弾性を有して形成される。また、両側の弾性脚部51には、弾性膨出部52がその内側の一部を外側に切り起こして開くように形成される。両側の弾性膨出部52は、弾性脚部51より外側に開くように、弾性変形可能に形成され、その弾性膨出部52の先端には、略くの字状に湾曲した第1係止部53と平坦な板状の第2係止部57が形成され、被固定部となる車体ボディパネルの矩形孔に取付クリップ5を差し込んだ際、その矩形孔の縁部に第1係止部53が係止され、ボディパネルの背面(内側面)に第2係止部57の先端が係止されるようになっている。つまり、図10に示すように、弾性膨出部52の先端部中央に第1係止部53がくの字状に湾曲して形成され、第1係止部53の両側に第2係止部57が弾性膨出部52の平面と平行な板状に、斜め方向に傾斜して突設されている。
【0031】
さらに、両側の弾性脚部51の先端近傍には、図5に示すように、段部54が脚部に対し略直角に曲折して形成され、その段部54の先端側に延設部56が取付クリップ5の挿入方向と略平行につまり弾性脚部51と略平行に延設され、先端部を形成している。延設部56の中央部分には係止爪55が、その中央部分を切り起こし外側に開く形態で形成されている。図10のように、取付クリップ5をヒンジ本体31に組み付ける場合、ヒンジ本体31の矩形開口部37に前面側から取付クリップ5の頭部を挿入し、そのまま取付クリップ5を挿入端まで押し込むが、このとき、矩形開口部37の両側の内側縁部35に、取付クリップ5の両側の段部54が係止され、且つ両側の係止爪55が、ヒンジ本体31の矩形開口部37内の両側穴部34に進入し、その穴部34の前面側の被係止部36に係止されるように形成されている。
【0032】
図10は左側のヒンジ部3のヒンジ本体31内に取付クリップ5を組み付ける状態を示し、右側のヒンジ部2のヒンジ本体21については、図示を省略しているが、図8bに示す如く、右側のヒンジ部2のヒンジ本体21についても同様に、ヒンジ本体21の矩形開口部27内には、両側に穴部24が形成され、その穴部24の内側縁部25に、取付クリップ5の段部54が係止されるようになっている。
【0033】
ヒンジ本体21,31の正面(前面)側にはカバー4がヒンジ本体21,31の前面を覆うように組み付けられる。カバー4は、図5,6,11に示すように、ヒンジ本体21,31の正面を覆うカバー本体41と、カバー本体41の背面側に突出して設けられた1対のクリップ支持部42とを備えて構成される。両側に突設された一方のクリップ支持部42の外側面には、ガイドリブ44が、その押し込む方向に沿って設けられ、このガイドリブ44に嵌合可能なガイド溝21c、31cが図7,8,9に示すようにヒンジ本体21,31の矩形枠部21a,31aの内側つまり矩形開口部27,37の内側面に設けられる。これにより、カバー4のクリップ支持部42をヒンジ部2,3の矩形開口部27,37に挿入するようにカバー4をヒンジ部2または3に押し込んだとき、ガイドリブ44がヒンジ本体21,31側のガイド溝21c、31cに嵌合して摺動し、カバー4が傾くことなく常に適正に嵌め込むことができるようになっている。
【0034】
一方、カバー本体41内の両側部には、図11に示すように、上記ヒンジ本体21,31の両側部に設けられたカバー係止部29(図7,8)に係止される係止爪43が設けられている。
【0035】
右側のヒンジ用凹部11に装着されたヒンジ本体21の内側支持片22と外側支持片23の間に、グリップ本体1をヒンジ部2,3に対し格納位置(上側の非使用状態)に付勢するための捻りコイルばね6が装着される。捻りコイルばね6は図5に示すように、一端部61と他端部62を有し、その一端部61は、装着時、ヒンジ本体21の内側支持片22の内側近傍に係止され、捻りコイルばね6の他端部62は、グリップ本体1のヒンジ用凹部11内に設けた係止凹部11aに係止される。これにより、捻りコイルばね6は、グリップ本体1をヒンジ本体21に対し上方の格納位置に付勢するように、ヒンジ用凹部11の外側支持片23と内側支持片22の間に配設されることとなる。
【0036】
左側のヒンジ用凹部12に装着されたヒンジ本体31の内側支持片32と外側支持片33の間には、図4、6に示す如く、オイルダンパー8が取り付けられる。オイルダンパー8は、円筒体の内筒82と、その内筒82を内包するように回転可能に取り付けられる外筒81とから構成され、内筒82と外筒81の間に形成された空隙にオイルが充填され、内筒82と外筒81が相対的に回動する際、オイルの粘性抵抗により制動力を生じさせるようになっている。
【0037】
オイルダンパー8の内筒82の軸心位置に、軸孔83が形成され、その軸孔83に、枢軸16が図4のように挿通される。また、図6に示すように、内筒82の先端軸支位置に長円ボス部84が突設され、オイルダンパー8をヒンジ本体31の内側支持片32と外側支持片33間に挿入したとき、内側支持片32の内側に形成した長円ボス用嵌入部32bに、その長円ボス部84が嵌入するようになっている。
【0038】
一方、外筒81の外周部には突条部85が突設され、オイルダンパー8をヒンジ本体31の内側支持片32と外側支持片33間に挿入したとき、その突条部85が、ヒンジ用凹部12内に設けた突条用係止部12a(図4)に係止され、グリップ本体1が回動操作されたとき、オイルダンパー8の外筒81がグリップ本体1と共に回動するようになっている。ヒンジ部3は車体ボディパネル側に固定され、オイルダンパー8の内筒82はその端部の長円ボス部84を内側支持片32に係止させているため、ヒンジ部3に対しグリップ本体1を回動させたとき、オイルダンパー8の内筒82が外筒81に対し回動し、適度な回動抵抗を付与するように動作する。
【0039】
アシストグリップを組み立てるに際し、先ず、両側のヒンジ本体21,31に取付クリップ5を組み付ける。取付クリップ5は、図10に示すように、ヒンジ本体21,31の前面側からその矩形開口部27,37内に、クリップの頭部から挿入し、そのまま背面側に取付クリップ5押し込むだけで、簡単に組み付けることができる。このとき、取付クリップ5は、その弾性脚部51を僅かに内側に収縮させるだけで、ヒンジ本体21,31の矩形開口部27,37内に容易に進入し、その進入端で段部54がヒンジ本体21,31の内側縁部25,35に当接し、且つ係止爪55がヒンジ本体21,31の被係止部26,36に係止される。これにより、取付クリップ5はヒンジ本体21,31の所定位置に確実に係止され、取付クリップ5を車体のボディパネルの矩形孔に差し込む際、前面側に取付クリップ5をずらすことなく、良好に組付固定することができる。
【0040】
次に、右側のヒンジ本体21の内側支持片22と外側支持片23間に捻りコイルばね6を配置した状態で、ヒンジ本体21をヒンジ用凹部11内の所定位置に配置し、枢軸15をヒンジ用凹部11の外側から軸孔13に差し込み、さらに外側支持片23の長円形軸孔23aから捻りコイルばね6内を通し、さらに枢軸15を内側支持片22の長円形軸孔22aに挿通させ、さらに枢軸15の先端を他方の軸孔13に挿入し、これにより、ヒンジ本体21をグリップ本体1に対し回動可能に軸支させる。このとき、捻りコイルばね6の一端部61はヒンジ本体21の一部に係止され、他端部62がグリップ本体1のヒンジ用凹部11の縁部に係止され、ヒンジ本体21は捻りコイルばね6のばね力によりヒンジ用凹部11側に付勢され、ヒンジ用凹部11内に進入した格納状態となる。
【0041】
同様に、左側のヒンジ本体31では、内側支持片32と外側支持片33間にオイルダンパー8を挿入した状態で、ヒンジ本体31をヒンジ用凹部12内の所定位置に配置し、枢軸16をヒンジ用凹部12の軸孔14に外側から差し込み、さらに外側支持片33の軸孔33aからオイルダンパー8内を通し、さらに枢軸16を内側支持片32の軸孔32aに挿通させ、さらに枢軸16の先端を他方の軸孔14に挿入し、これにより、ヒンジ本体31をグリップ本体1に対し回動可能に軸支させる。このとき、オイルダンパー8の長円ボス部84は内側支持片32の内側の長円ボス用嵌入部32bに嵌入し、オイルダンパー8の外筒の突条部85はグリップ本体1のヒンジ用凹部12の突条用係止部12aに係止され、ヒンジ本体31にはオイルダンパー8のオイルの粘性抵抗により、回動抵抗が付与されることとなる。
【0042】
次に、ヒンジ本体21,31の前面にカバー4を仮止めする。カバー4を仮止めする場合、その背面側に突設したクリップ支持部42をヒンジ本体21,31の矩形開口部27、37内の中間位置に挿入するようにカバー4を嵌め込み仮止めする。このとき、カバー4のカバー本体41の側部に設けたガイドリブ44がヒンジ本体21,31の矩形開口部27,37の内側面のガイド溝21c、31cに嵌合摺接して挿入されるので、カバー4を容易に適正位置に挿入することができる。そして、カバー4の係止爪43をヒンジ本体21,31のカバー係止部29、39の手前に係止させて仮止めする。このように、カバー4は、取付クリップ5をボディパネルの矩形孔に嵌め込んだとき、取付クリップ5の弾性膨出部52などが動き得る仮止め状態として、ヒンジ本体21,31の前面側に装着される。
【0043】
アシストグリップを自動車の室内の所定位置に取り付ける場合、図12に示すように、グリップ本体1を持ってその両側基部のヒンジ部2,3を、車体の成形天井材とボディパネルBに設けた矩形孔に押し込む。このとき、両側のヒンジ本体21,31に設けた取付クリップ5、5の弾性膨出部52、52は矩形孔の縁部に当たって内側に弾性変形しながら矩形孔に進入し、取付クリップ5、5の弾性膨出部52、52が矩形孔に完全に嵌入したとき、弾性膨出部52、52の第1係止部53,53及び第2係止部57,57が外側に開くように弾性復元し、第1係止部53,53がボディパネルBの矩形孔の縁部に係止され、第2係止部57,57の先端がボディパネルBの背面(内側面)に係止される状態となる。これにより、ボディパネルBの矩形孔の縁部がヒンジ本体21,31の座部21b、31bと第2係止部57,57との間で挟持される状態となり、弾性膨出部52、52の第2係止部57,57はその先端がボディパネルBの背面に係止されることにより、高い抜け耐力を持ってヒンジ本体21,31がボディパネルBに固定され組み付けられる。
【0044】
この後、仮止め状態となっていたカバー4,4を、図12のように、ヒンジ本体21,31の内部に押し込み、その内側の係止爪43,43をヒンジ本体21,31の両側のカバー係止部29,39に完全に嵌め込む(図13)。このとき、カバー4のカバー本体41の側部に設けたガイドリブ44がヒンジ本体21,31の矩形開口部27,37の内側面のガイド溝21c、31cに嵌合摺接してカバー4がヒンジ本体21,31に押し込まれるので、カバー4は傾くことなく真直ぐにヒンジ本体21,31内に進入し、最後にカバー4の係止爪43をヒンジ本体21,31のカバー係止部29、39に係止させて、カバー4が適正位置に嵌着される。
【0045】
この状態で、図13に示すように、カバー4、4のクリップ支持部42,42が取付クリップ5、5の内側に完全に嵌入し、取付クリップ5,5の弾性膨出部52,52の第1係止部53,53及び第2係止部57,57は、車体の被固定部のボディパネルBに対し強固に係止され、アシストグリップの取り付けを完了する。
【0046】
アシストグリップの使用時、使用者は、図3、14に示すように、ヒンジ部2,3に対しグリップ本体1を下側に回動させて使用する。グリップ本体1は使用者によりその中央部が下方に引かれ、このとき、捻りコイルばね6は、その他端部62がグリップ本体1におけるヒンジ用凹部11の係止凹部11aの回動によりその捻りばね力に抗してねじられる。これにより、グリップ本体1は捻りばね力に抗して下側に回動し、図14に示すように、グリップ本体1のグリップ側係止部17がヒンジ部2のヒンジ本体21下部のヒンジ側係止部21dに当接したとき、ヒンジ本体21の長円形軸孔22a,23aと枢軸15の摺動作用により、グリップ側係止部17がヒンジ側係止部21dを乗り越え、グリップ本体1は図14のような、引き起こした使用状態に保持される。このとき、グリップ本体1は、捻りコイルばね6にばね力によりグリップ側係止部17をヒンジ側係止部21dに係止させる側に付勢される。
【0047】
したがって、グリップ本体1から手を離して場合でも、グリップ本体1が元の格納位置に戻ることはなく、搭乗者が一旦グリップ本体1を離した後で、容易にグリップ本体1を持つことができ、グリップ本体1の把持と離脱を頻繁に繰り返す場合であっても、或いは自動車が急ブレーキをかけたような場合に咄嗟にアシストグリップを持ちたいときでも、搭乗者は容易にグリップ本体1を持つことができる。
【0048】
一方、アシストグリップの使用を終えた場合、グリップ本体1を元の格納位置に戻すために、グリップ本体1を手で少し押し上げると、図15に示すように、ヒンジ本体21の長円形軸孔22a,23aと枢軸15の摺動作用により、グリップ本体1が図15の矢印方向(図の右下側)にずれて、図15の如く、枢軸15の軸心C1が長円形軸孔22a,23aの軸心C2から偏倚し、これにより、グリップ側係止部17とヒンジ側係止部21dの係止が外れる。このため、グリップ本体1は、捻りコイルばね6から上向き(図15の反時計方向)の付勢力を受けて同方向に回動し、図13の格納位置に戻る。このとき、オイルダンパー8の作用により、グリップ本体1の回動に制動がかけられ、低速でグリップ本体1は格納状態に戻ることとなる。
【0049】
このように、グリップ本体1を引き起こして使用状態としたとき、グリップ側係止部17がヒンジ側係止部21dに係止されて、グリップ本体1は引き起こした使用状態に保持されるので、グリップ本体1から手を離して場合でも、グリップ本体1が元の格納位置に戻ることはなく、搭乗者が一旦グリップ本体1を離した後で、容易にグリップ本体1を持つことができ、グリップ本体1の把持と離脱を頻繁に繰り返す場合であっても、或いは自動車が急ブレーキをかけたような場合に嗟にアシストグリップを持ちたいときでも、搭乗者は容易にグリップ本体1を持つことができる。
【0050】
また、グリップ本体1を格納位置に戻す場合には、グリップ本体1を手で少し押し上げるのみの簡単な操作により、グリップ本体1を素早く格納位置に戻すことができ、非常に簡便に使用することができる。さらに、グリップ側係止部17はグリップ本体1に、ヒンジ側係止部21dはヒンジ本体21に一体的に設けることができるので、別の部品は不要となり、安価にグリップ本体1の格納位置保持機構を実現することができる。
【0051】
なお、図16に示すように、グリップ本体1の端部に設けたグリップ側係止部17aの両側に側溝17bを形成すれば、グリップ側係止部17aの係止時の撓み量を大きくして、少しの操作力でグリップ本体の係止と離脱を容易に行うことができる。
【0052】
また、上記実施形態では、ヒンジ本体21にヒンジ側係止部21dを設けたが、図17に示すように、車体の成形天井材(樹脂製ガーニッシュ)とボディパネルBに設けた矩形孔の真下位置の成形天井材Gに、車体側係止部60をグリップ側係止部17と係止可能に突設することもできる。この場合には、グリップ本体1を引き起こして使用状態としたとき、グリップ側係止部17が車体側係止部60に係止され、グリップ本体1を引き起こした使用状態に保持することとなる。
【符号の説明】
【0053】
1 グリップ本体
2 ヒンジ部
3 ヒンジ部
4 カバー
5 取付クリップ
8 オイルダンパー
11 ヒンジ用凹部
11a 係止凹部
12 ヒンジ用凹部
12a 突条用係止部
13 軸孔
14 軸孔
15 枢軸
16 枢軸
17 グリップ側係止部
21 ヒンジ本体
21a 矩形枠部
21b 座部
21c ガイド溝
21d ヒンジ側係止部
22 内側支持片
22a 長円形軸孔
23 外側支持片
23a 長円形軸孔
24 穴部
25 内側縁部
26 被係止部
27 矩形開口部
28 突部
29 カバー係止部
31 ヒンジ本体
31a 矩形枠部
31b 座部
31c ガイド溝
32 内側支持片
32a 軸孔
32b 長円ボス用嵌入部
33 外側支持片
33a 軸孔
34 穴部
35 内側縁部
36 被係止部
37 矩形開口部
41 カバー本体
42 クリップ支持部
43 係止爪
44 ガイドリブ
51 弾性脚部
52 弾性膨出部
53 第1係止部
54 段部
55 係止爪
56 延設部
57 第2係止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右両端の基部にヒンジ用凹部が設けられたグリップ本体と、
該両側のヒンジ用凹部に枢軸を介して回動可能に取り付けられ、被固定部に固定されるヒンジ本体を有した1対のヒンジ部と、
少なくとも一方のヒンジ本体の該枢軸に外嵌され、該グリップ本体を上部格納側に付勢する捻りコイルばねと、
を備えたアシストグリップにおいて、
該ヒンジ部を取り付けた該グリップ本体に、グリップ側係止部が設けられ、該グリップ本体が該ヒンジ部に対し引き起こし回動されたとき、該グリップ側係止部に係止されるヒンジ側係止部が、該ヒンジ部のヒンジ本体に設けられたことを特徴とするアシストグリップ。
【請求項2】
前記枢軸が前記ヒンジ本体を貫通する軸孔は長円形軸孔として形成され、該枢軸が該長円形軸孔内で軸と垂直方向に僅かに移動可能とされたことを特徴とする請求項1記載のアシストグリップ。
【請求項3】
前記グリップ側係止部は、前記グリップ本体のヒンジ用凹部の下側縁部に設けられ、前記ヒンジ側係止部は、前記ヒンジ部のヒンジ本体の下側端部に設けられたことを特徴とする請求項1または2記載のアシストグリップ。
【請求項4】
前記1対のヒンジ本体の略中央に矩形開口部が設けられ、該矩形開口部に取付クリップが各々挿入され、該取付クリップは、ばね弾性を有する金属を略U字状に曲折し両側に弾性脚部を設けて形成され、該両側の弾性脚部には外側に膨出する弾性膨出部が設けられ、該取付クリップの両側の弾性脚部の内側に挿入されるクリップ支持部を有したカバーが、該取付クリップを挿入した状態の該ヒンジ本体の該矩形開口部に、該ヒンジ部の前面を覆うように嵌着されることを特徴とする請求項1乃至3記載のアシストグリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−218506(P2012−218506A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84006(P2011−84006)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【出願人】(308016242)豊和化成株式会社 (65)
【Fターム(参考)】