説明

アシストグリップ

【課題】修理などの際、車体のボディパネルに固定されたヒンジ本体の取付クリップを容易に外して、ヒンジ本体を簡単に車体から取り外すことができるアシストグリップを提供する。
【解決手段】ヒンジ部2,3のヒンジ本体21,31の略中央に設けられた矩形開口部に取付クリップ5が各々挿入される。取付クリップ5は、ばね弾性を有する金属を略U字状に曲折し両側に弾性脚部51を設けて形成され、両側の弾性脚部51には外側に膨出する弾性膨出部52が設けられる。弾性膨出部52には車体の被固定部に係止される係止部53が設けられる。弾性脚部51の先端にはヒンジ本体の矩形開口部の内側縁部に係止される段部54が設けられる。弾性膨出部52の係止部53には、内側に窪むと共に取付クリップ5の挿入方向と平行に平坦部53bを設けた窪み部が53a設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車室内の天井面等に取り付けられるアシストグリップに関し、特にグリップ本体を回動可能に、ヒンジ部を介して車内の被固定部に固定するアシストグリップに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車室内の天井面には、搭乗者が室内で身体を支持するために、アシストグリップが取り付けられる。この種のアシストグリップとして、グリップ本体の両側にヒンジ用凹部が形成され、そのヒンジ用凹部内にヒンジ部が回動可能に取り付けられ、グリップ本体が両側のヒンジ部を介して回動可能に装着される構造のものが、各種の自動車で使用されている。
【0003】
このアシストグリップは、下記特許文献1に記載されるように、その両側のヒンジ部に金属製の取付クリップを設け、取付クリップにより車体のボディパネルに固定するように取り付けられる。この取付クリップは、ばね弾性を持った金属により略U字状に形成され、ヒンジ部のヒンジ本体の中央支持板を覆うように、ヒンジ本体に嵌め込まれる。車体への装着時、車体のボディパネルに設けた矩形穴に取付クリップを嵌め込み、取付クリップの両側膨出部の係止部を、ボディパネルの矩形穴の縁部に係止させ、アシストグリップを車体に固定する構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−121633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、アシストグリップは、車体修理の際などに、車体から取り外す場合がある。車体からアシストグリップを取り外す場合、両側のヒンジ本体からカバーを外し、ヒンジ本体内に装着された取付クリップを、その両側の弾性脚部を内側に撓ませると共に、中間位置の膨出部に設けられる係止爪を内側に撓ませる。それにより、ボディパネルの矩形孔の縁部から取付クリップの係止爪を外して、取付クリップを矩形孔から抜き取り、その後、両側のヒンジ本体を車体から外し、アシストグリップを車体から取り外している。
【0006】
しかし、従来のアシストグリップに使用される取付グリップは、上記特許文献1に記載されるように、その中間部の両側に膨出する膨出部に設けた係止爪が比較的短く、略くの字状に曲折され、くの字状の係止爪がボディパネルに設けた矩形孔の縁部に係止されている。このため、取付クリップを取り外す場合、作業者はヒンジ本体の内部に位置する取付クリップに工具等を使用して、膨出部の係止爪を両側から摘むようにして内側に撓ませ、取り外すことになるが、係止爪が短いために、ヒンジ本体内の係止爪が見にくく、工具等がかかりにくい。このため、アシストグリップをボディパネルから取り外しにくく、アシストグリップの取り外しの作業性に課題があった。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、修理などの際、車体のボディパネルに固定されたヒンジ本体の取付クリップを容易に外して、ヒンジ本体を簡単にボディパネルから取り外すことができるアシストグリップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明のアシストグリップは、左右両端の基部にヒンジ用凹部が設けられたグリップ本体と、該両側のヒンジ用凹部に枢軸を介して回動可能に取り付けられる1対のヒンジ本体を有したヒンジ部と、該1対のヒンジ本体に設けられた矩形開口部に各々挿入される取付クリップと、を備え、該取付クリップは、ばね弾性を有する1対の弾性脚部を略U字状に曲折して形成され、該両側の弾性脚部には外側に膨出する弾性膨出部が設けられる一方、該弾性膨出部には車体の被固定部に係止される係止部が設けられ、該弾性脚部の先端近傍に、該ヒンジ本体の矩形開口部の内側縁部に係止される段部が設けられてなるアシストグリップにおいて、該弾性膨出部の該係止部には、内側に窪むと共に該取付クリップの抜去方向に延設部を有した窪み部が設けられたことを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、取付クリップの両側の弾性膨出部に設けた係止部に、延設部を設けた窪み部が設けられるので、その延設部により係止部の長さが、従来の取付クリップのくの字状の係止部より長くなる。このため、修理の際などに、アシストグリップをボディパネルから外す際、ヒンジ本体からカバーを外したとき、取付クリップの係止部が作業者から見やすくなる。
【0010】
このため、取付クリップを外すために、両側の弾性脚部を内側に撓ませ、且つ中間位置の弾性膨出部を内側に撓ませる際、作業者は工具等を係止部の先端に容易にかけることができる。これにより、作業者は、アシストグリップを取り外す際、弾性膨出部を内側に容易に撓ませて、取付クリップの係止部をボディパネルの矩形孔の縁部から外し、アシストグリップのヒンジ本体を車体から容易に取り外すことができる。
【0011】
ここで、上記取付クリップの両側に設けた上記弾性膨出部は、上記係止部の隣接部位に短い係止爪を突設して構成され、該係止爪は車体の被固定部の内側に係止可能に構成することが好ましい。
【0012】
この発明によれば、取付クリップ両側の弾性膨出部の係止爪と係止部の窪み部とを被固定部に係止させ、アシストグリップのヒンジ本体をボディパネルなどの被固定部に、より一層がたつきなく強固に取り付けることができる。
【0013】
また、上記弾性脚部の上記段部は、略クランク状に曲折して形成され、該段部の先端側には3個に分割された突出部が設けられ、中央の突出部が係止爪として外側に傾斜して突設される構成とすることができる。
【0014】
この発明によれば、取付クリップをボディパネルの矩形孔に押し込み、ヒンジ本体を被固定部に固定する際、取付クリップの押し込み時の反力が弾性脚部にかかるが、弾性脚部の係止爪がヒンジ本体の一部に安定して係止され、取付クリップの押し込み時の反力は係止爪により所定位置で確実に保持され、取付クリップのボディパネルに対する装着位置のばらつきを少なくすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のアシストグリップによれば、修理などの際、車体のボディパネルに固定されたヒンジ本体の取付クリップを容易に外して、ヒンジ本体を簡単にボディパネルから取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態を示すアシストグリップを背面から見た斜視図である。
【図2】同アシストグリップの右側面図である。
【図3】同アシストグリップを背面から見た分解斜視図である。
【図4】右のヒンジ部2を背面から見た分解斜視図である。
【図5】左のヒンジ部3を背面から見た分解斜視図である。
【図6】ヒンジ部2のヒンジ本体21の右側面図(a)、その背面図(b)、その平面図(c)である。
【図7】同ヒンジ本体21の正面上方から見た斜視図(a)、同ヒンジ本体21の角度を変えて見た斜視図(b)である。
【図8】ヒンジ部3のヒンジ本体31の右側面図(a)、その背面図(b)、その平面図(c)である。
【図9】同ヒンジ本体31の正面上方から見た斜視図(a)、同ヒンジ本体31の角度を変えて見た斜視図(b)である。
【図10】図6のXa-Xa断面図(a)、図8のXb-Xb断面図(b)である。
【図11】取付クリップの側面図(a)、その平面図(b)、その背面図(c)である。
【図12】取付クリップの図11(b)の拡大XII-XII断面図である。
【図13】取付クリップをヒンジ部のヒンジ本体に挿入する際の説明断面図である。
【図14】アシストグリップを車体ボディパネルに取り付ける際の説明断面図である。
【図15】アシストグリップを車体ボディパネルから外す際の説明断面図である。
【図16】アシストグリップを車体ボディパネルから外す際の説明断面図である。
【図17】他の実施形態の取付クリップの側面図(a)、その平面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1はアシストグリップの背面から見た斜視図を示し、図2はその右側面図を示し、図3はその分解斜視図を示している。なお、以下の説明で使用する左右上下は、装着姿勢のアシストグリップを正面から見たときの左右上下を示し、図示で使用したFRは前、LEは左、RIは右、UPは上、REは後、DOは下を示す。
【0018】
先ず、アシストグリップの概略構成を説明すると、図1〜図3において、1は合成樹脂で一体成形されたグリップ本体であり、グリップ本体1の左右両端に設けられた基部の背面に、略長方形のヒンジ用凹部11,12が形成されている。両側のヒンジ用凹部11,12内における左右両側壁部には、各々軸孔13,14が形成され、枢軸15,16が、ヒンジ部2,3の内側支持片22、32、外側支持片23,33に設けた軸孔22a,23a,32a,33aと共に当該側壁部の軸孔13,14に挿通され、各ヒンジ部2,3はグリップ本体1に対し回動可能に軸支される。1対のヒンジ部2,3は、自動車の車体側に固定され、グリップ本体1が非使用状態と使用状態との間で、相対的にヒンジ部2,3に対し回動可能とされる。
【0019】
図3,4,5に示すように、右側のヒンジ部2は、ヒンジ本体21と、ヒンジ本体21に対しその正面側(前面側)から嵌め込んで取り付けられ、車体ボディパネルの矩形孔に嵌入されて係止される取付クリップ5と、ヒンジ本体21に対しその正面側を覆って嵌着され、ヒンジ本体21内の矩形開口部27にクリップ支持部42を進入させて取付クリップ5を内側から支持するカバー4と、ヒンジ本体21の下部に突設された内側支持片22と外側支持片23の間に装着される捻りコイルばね6と、から構成される。
【0020】
左側のヒンジ部3は、同様に、ヒンジ本体31と、ヒンジ本体31に対し正面側から嵌め込んで取り付けられ、車体側のボディパネルの矩形孔に嵌入されて係止される取付クリップ5と、ヒンジ本体31に対しその正面側を覆って嵌着され、ヒンジ本体31内の矩形開口部37にクリップ支持部42を進入させて取付クリップ5を内側から支持するカバー4と、ヒンジ本体31の下部に突設された内側支持片32と外側支持片33の間に挿入され、グリップ本体1に回動負荷を付与するオイルダンパー8と、から構成される。
【0021】
右側のヒンジ部2のヒンジ本体21は、図4、6,7に示すように、正面を略略正方形とする立方体形状に形成され、その下部に内側支持片22、外側支持片23を突設して、合成樹脂により一体成形される。その内側支持片22と外側支持片23間には捻りコイルばね6用のスペースが設けられ、ヒンジ本体21の略中央部分には矩形開口部27が設けられる。さらに、矩形開口部27の背面側には矩形枠部21aが突設され、その矩形枠部21aの周囲の一段下った部分に、座部21bが形成され、ヒンジ本体21をボディパネルの矩形孔に嵌め込む際、矩形枠部21aをその矩形孔に嵌入し、座部21bをボディパネルの表面に押し当てるように形成される。
【0022】
ヒンジ本体21の下側に突設された内側支持片22及び外側支持片23には軸孔22a、23aが貫通穴として形成される。この軸孔22a,23aには枢軸15が挿通され(図3)、ヒンジ本体21をグリップ本体1のヒンジ用凹部11内で回動可能に支持する構造となっている。図6,7のように、ヒンジ本体21の両側部にはカバー係止部29が形成され、後述のカバー4をヒンジ本体21の正面側に嵌着させる際、カバー4の内側に設けた係止爪43が係止されるようになっている。また、ヒンジ本体21の略中央部に形成された矩形開口部27は、図4に示すように、後述の取付クリップ5をその背面側から挿入可能な形状に形成されると共に、カバー4を嵌める際、カバー4の背面側に突設されたクリップ支持部42を挿入可能な形状に形成される。
【0023】
さらに、ヒンジ本体21の矩形開口部27の両内側部には、図10(a)に示すように、後述の取付クリップ5の段部54を係止させるために、内側縁部25が内側に突出して設けられる。また、その内側縁部25の前面側に穴部24が形成され、その穴部24の前面側に被係止部26が、取付クリップ5の係止爪55を係止させるように、矩形開口部27の両内側部に設けられている。なお、図6などに示すように、ヒンジ本体21の矩形開口部27の両側に、突部28が背面側に向けて突設され、組み付け時に、ヒンジ本体21をボディパネルの矩形孔に嵌入したとき、矩形孔の左右両側縁部にこの突部28の外側面を接触させ、ヒンジ本体及びグリップ本体1の左右のガタツキを防止するようにしている。
【0024】
左側のヒンジ部3のヒンジ本体31は、図3,5,8に示す如く上記右側のヒンジ本体21とほぼ同様に、正面を略略正方形とする立方体形状に形成され、その下部に内側支持片32、外側支持片33を突設して、合成樹脂により一体成形される。その内側支持片32と外側支持片33間にはオイルダンパー8用のスペースが設けられ、ヒンジ本体31の略中央部分には矩形開口部37が設けられる。さらに、矩形開口部37の背面側には矩形枠部31aが突設され、その矩形枠部31aの周囲の一段下った部分に、座部31bが形成され、ヒンジ本体31をボディパネルの矩形孔に嵌め込む際、矩形枠部31aをその矩形孔に嵌入し、座部31bをボディパネルの表面に押し当てるように形成される。
【0025】
図3,5,8に示すように、ヒンジ本体31の下部に突設した内側支持片32、外側支持片33には、軸孔32a、33aが貫通穴として形成される。この軸孔32a,33aには枢軸16が挿通され、ヒンジ本体31をグリップ本体1のヒンジ用凹部12内で回動可能に支持する構造である。図8,9のように、ヒンジ本体31の両側部にはカバー係止部39が形成され、カバー4をヒンジ本体31の正面側に嵌着させる際、カバー4側の係止爪43が係止されるようになっている。また、ヒンジ本体31の略中央部に形成された矩形開口部37は、図5に示すように、取付クリップ5をその背面側から挿入可能な形状に形成されると共に、カバー4を嵌める際、カバー4の背面側に突設されたクリップ支持部42を挿入可能な形状に形成される。
【0026】
さらに、ヒンジ本体31の矩形開口部37の両内側部には、図10(b)に示すように、取付クリップ5の段部54が係止される内側縁部35が内側に突出して設けられる。また、その内側縁部35の前面側に穴部34が形成され、その穴部34の前面側に被係止部36が、取付クリップ5の係止爪55を係止させるように、矩形開口部37の両内側部に設けられている。
【0027】
ヒンジ本体21,31は、図6〜図9に示すように、従来のものとは異なり、その矩形開口部27,37には中央支持板を設けずに開口部全体を開口した構造としているため、ヒンジ本体21,31の成形型の構造を簡単化することができ、これにより製造コストを低減することができる。
【0028】
続いて、本発明の要部である取付クリップ5について説明する。取付クリップ5は、ヒンジ本体21,31の矩形開口部27,37に、各々、前面側から挿入され嵌め込まれるが、左右両側のヒンジ本体21,31に嵌入される取付クリップ5は同じ構造となっている。取付クリップ5は、図11、12に示すように、ばね弾性を有する金属を略U字状に曲折して形成され、両側に弾性脚部51がばね弾性を有して形成される。
【0029】
両側の弾性脚部51には、弾性膨出部52がその内側の一部を外側に切り起こして開くように形成される。両側の弾性膨出部52は、弾性脚部51より外側に開くように、弾性変形可能に形成され、その弾性膨出部52の先端は、3つに分割され、両側に係止爪52a,52aがその先端部を真直ぐに切断した状態に形成され、中央部には1本の長尺の係止部53、53が、各々、内側に曲折した形状に形成されている。
【0030】
両側の係止部53は被固定部となる車体ボディパネルの矩形孔に取付クリップ5を差し込んだ際、その矩形孔の縁部に係止される部分であり、係止部53には、図12に示すように、内側に窪むと共に取付クリップ5の抜去方向と平行に延設部53bを設けた窪み部53aが設けられている。延設部53bは、長さαを持って先端側に長くなる形態に形成され、取付クリップ5をヒンジ本体21,31から取り外す際、係止部53がヒンジ本体21,31の前方から容易に見え、且つ工具などをかけやすくしている。両側の係止爪52a,52aは、ボディパネルの矩形孔に取付クリップ5を差し込んだ際、ボディパネルの内側に係止可能となっている。
【0031】
さらに、取付クリップ5の両側の弾性脚部51の先端近傍には、図11、12に示すように、段部54が脚部に対し略直角に曲折して形成され、その段部54の先端側に突出部56が取付クリップ5の挿入方向と略平行につまり弾性脚部51と略平行に且つ3つに分割して突設され、先端部を形成している。突出部56の中央部分は係止爪55として、切り起こして外側に傾斜して開くように形成されている。図13のように、取付クリップ5をヒンジ本体31に組み付ける場合、ヒンジ本体31の矩形開口部37に前面側から取付クリップ5の頭部を挿入し、そのまま取付クリップ5を挿入端まで押し込むが、このとき、矩形開口部37の両側の内側縁部35に、取付クリップ5の両側の段部54が係止され、且つ両側の係止爪55が、ヒンジ本体31の矩形開口部37内の両側穴部34に進入し、その穴部34の前面側の被係止部36に係止されるように形成されている。
【0032】
図13は左側のヒンジ部3のヒンジ本体31内に取付クリップ5を組み付ける状態を示し、右側のヒンジ部2のヒンジ本体21については、図示を省略しているが、図10(a)に示す如く、右側のヒンジ部2のヒンジ本体21についても同様に、ヒンジ本体21の矩形開口部27内には、両側に穴部24が形成され、その穴部24の内側縁部25に、取付クリップ5の段部54が係止されるようになっている。また、その穴部24の前面側に被係止部26が形成され、取付クリップ5をヒンジ本体21の矩形開口部27内に前面側から挿入した際、取付クリップ5の係止爪55が被係止部26に係止される構造となっている。
【0033】
ヒンジ本体21,31の正面(前面)側にはカバー4がヒンジ本体21,31の前面を覆うように組み付けられる。カバー4は、図4,5に示すように、ヒンジ本体21,31の正面を覆うカバー本体41と、カバー本体41の背面側に突出して設けられたクリップ支持部42とを備えて構成され、クリップ支持部42には、上記取付クリップ5の内側に嵌入される2対の尖頭部が突設され、カバー本体41内の両側部には、上記ヒンジ本体21,31の両側部に設けられたカバー係止部29,39に係止される係止爪43が設けられている。
【0034】
右側のヒンジ用凹部11に装着されたヒンジ本体21の内側支持片22と外側支持片23の間に、グリップ本体1をヒンジ部2,3に対し非使用位置(図2の実線で示す状態)に付勢するための捻りコイルばね6が装着される。捻りコイルばね6は図4に示すように、一端部61と他端部62を有し、その一端部61は、装着時、ヒンジ本体21の内側支持片22の内側近傍に係止され、捻りコイルばね6の他端部62は、グリップ本体1のヒンジ用凹部11内に設けた係止凹部11aに係止される。これにより、捻りコイルばね6は、グリップ本体1をヒンジ本体21に対し非使用状態に付勢するように、ヒンジ用凹部11の外側支持片23と内側支持片22の間に配設されることとなる。
【0035】
左側のヒンジ用凹部12に装着されたヒンジ本体31の内側支持片32と外側支持片33の間には、図3、5に示す如く、オイルダンパー8が取り付けられる。オイルダンパー8は、円筒体の内筒82と、その内筒82を内包するように回転可能に取り付けられる外筒81とから構成され、内筒82と外筒81の間に形成された空隙にオイルが充填され、内筒82と外筒81が相対的に回動する際、オイルの粘性抵抗により制動力を生じさせるようになっている。
【0036】
オイルダンパー8の内筒82の軸心位置に、軸孔83が形成され、その軸孔83に、枢軸16が図3のように挿通される。また、図5に示すように、内筒82の先端軸支位置に長円ボス部84が突設され、オイルダンパー8をヒンジ本体31の内側支持片32と外側支持片33間に挿入したとき、内側支持片32の内側に形成した長円ボス用嵌入部32bに、その長円ボス部84が嵌入するようになっている。
【0037】
一方、外筒81の外周部には突条部85が突設され、オイルダンパー8をヒンジ本体31の内側支持片32と外側支持片33間に挿入したとき、その突条部85が、ヒンジ用凹部12内に設けた突条用係止部12a(図3)に係止され、グリップ本体1が回動操作されたとき、オイルダンパー8の外筒81がグリップ本体1と共に回動するようになっている。ヒンジ部3は車体ボディパネル側に固定され、オイルダンパー8の内筒82はその端部の長円ボス部84を内側支持片32に係止させているため、ヒンジ部3に対しグリップ本体1を回動させたとき、オイルダンパー8の内筒82が外筒81に対し回動し、適度な回動抵抗を付与するように動作する。
【0038】
アシストグリップを組み立てるに際し、先ず、両側のヒンジ本体21,31に取付クリップ5を組み付ける。取付クリップ5は、図13に示すように、ヒンジ本体21,31の前面側からその矩形開口部27,37内に、クリップの頭部から挿入し、そのまま背面側に取付クリップ5押し込むだけで、簡単に組み付けることができる。このとき、取付クリップ5は、その弾性脚部51を僅かに内側に収縮させるだけで、ヒンジ本体21,31の矩形開口部27,37内に容易に進入し、その進入端で段部54がヒンジ本体21,31の内側縁部25,35に当接し、且つ係止爪55がヒンジ本体21,31の被係止部26,36に係止される。これにより、取付クリップ5はヒンジ本体21,31の所定位置に確実に係止され、取付クリップ5を車体のボディパネルの矩形孔に差し込む際、前面側に取付クリップ5をずらすことなく、良好に組付固定することができる。
【0039】
次に、右側のヒンジ本体21の内側支持片22と外側支持片23間に捻りコイルばね6を配置した状態で、ヒンジ本体21をヒンジ用凹部11内の所定位置に配置し、枢軸15をヒンジ用凹部11の外側から軸孔13に差し込み、さらに外側支持片23の軸孔23aから捻りコイルばね6内を通し、さらに枢軸15を内側支持片22の軸孔22aに挿通させ、さらに枢軸15の先端を他方の軸孔13に挿入し、これにより、ヒンジ本体21をグリップ本体1に対し回動可能に軸支させる。このとき、捻りコイルばね6の一端部61はヒンジ本体21の一部に係止され、他端部62がグリップ本体1のヒンジ用凹部11の縁部に係止され、ヒンジ本体21は捻りコイルばね6のばね力によりヒンジ用凹部11側に付勢され、ヒンジ用凹部11内に進入した状態となる。
【0040】
同様に、左側のヒンジ本体31では、内側支持片32と外側支持片33間にオイルダンパー8を挿入した状態で、ヒンジ本体31をヒンジ用凹部12内の所定位置に配置し、枢軸16をヒンジ用凹部12の軸孔14に外側から差し込み、さらに外側支持片33の軸孔33aからオイルダンパー8内を通し、さらに枢軸16を内側支持片32の軸孔32aに挿通させ、さらに枢軸16の先端を他方の軸孔14に挿入し、これにより、ヒンジ本体31をグリップ本体1に対し回動可能に軸支させる。このとき、オイルダンパー8の長円ボス部84は内側支持片32の内側の長円ボス用嵌入部32bに嵌入し、オイルダンパー8の外筒の突条部85はグリップ本体1のヒンジ用凹部12の突条用係止部12aに係止され、ヒンジ本体31にはオイルダンパー8のオイルの粘性抵抗により、回動抵抗が付与されることとなる。
【0041】
次に、ヒンジ本体21,31の前面にカバー4を仮止めする。カバー4は背面側に突設したクリップ支持部42をヒンジ本体21,31の矩形開口部27、37内の中間位置に挿入するようにして仮止めする。このように、カバー4は、取付クリップ5をボディパネルの矩形孔に嵌め込んだとき、取付クリップ5の弾性膨出部52などが動き得る仮止め状態としてヒンジ本体21,31の前面側に装着される。
【0042】
アシストグリップを自動車の室内の所定位置に取り付ける場合、図14に示すように、その両側基部のヒンジ部2,3を、車体の成形天井材とボディパネルBに設けた矩形孔に押し込む。このとき、両側のヒンジ本体21,31に設けた取付クリップ5、5の弾性膨出部52、52は矩形孔の縁部に当たって内側に弾性変形しながら矩形孔に進入し、取付クリップ5、5の弾性膨出部52、52が矩形孔に完全に嵌入したとき、弾性膨出部52、52の係止部53,53の窪み部53aとヒンジ本体21,31の先端の座部21b、31bとの間で、ボディパネルBの矩形孔の縁部が挟持され、係止された状態となる。
【0043】
ヒンジ部2,3の取付クリップ5をボディパネルBの矩形孔に嵌め込む際、取付クリップ5はボディパネルBからの反力によりヒンジ部2,3の前面側(図13の下側)に、抜け方向の荷重を受けるが、取付クリップ5の弾性脚部51の先端に設けた係止爪55が、図14に示すように、ヒンジ本体21,31の被係止部26,36に係止されてその荷重を支持する。このため、ボディパネルBの矩形孔に取付クリップ5を嵌め込む際、取付クリップ5に位置ずれさせず、ボディパネルの矩形孔の縁部に取付クリップ5を確実に係止させて、ヒンジ部2,3を簡単に且つ強固に車体側のボディパネルBに固定することができる。
【0044】
この後、仮止め状態となっていたカバー4,4を、ヒンジ本体21,31の内部に押し込み、その内側の係止爪43,43をヒンジ本体21,31の両側のカバー係止部29,39に嵌め込む。この状態で、図14に示すように、カバー4、4のクリップ支持部42,42が取付クリップ5、5の内側に完全に嵌入し、取付クリップ5,5は、車体の被固定部に対し強固に係止され、アシストグリップの取り付けを完了する。
【0045】
このように、取付クリップ5、5をヒンジ本体21,31に取り付ける際、ヒンジ本体21,31の前面側から矩形開口部27,37に挿入して簡単に組み付けることができ、組付状態では両側の弾性脚部51,51の段部54,54がヒンジ本体21,31の矩形開口部27,37の内側縁部25,35に係止される一方、係止爪55,55が被係止部26,36に係止されるので、従来のヒンジ部のように矩形開口部内に突設した中央支持板により取付クリップを支持させることなく、ヒンジ本体21,31に対し取付クリップ5,5を安定して取り付けることができる。
【0046】
これにより、取付クリップ5,5をヒンジ本体21,31に取り付ける際、作業者はヒンジ部2,3の正面側から弾性脚部51,51を、ばね弾性に抗して強く押し縮めることなく、容易に組み付けることができる。また、組み付け時に、取付クリップ5の弾性脚部51,51を、ばね弾性に抗して強く押し縮めることがないので、取付クリップ5、の弾性脚部51の弾性が低下し、或いは弾性脚部51を破損させる不具合を抑制することができる。また、従来のヒンジ部のように矩形開口部内に中央支持板を突設せず、矩形開口部全体を開口形成するため、ヒンジ本体21,31を成形する際の成形型の構造が簡単となり、製造コストを低減することができる。
【0047】
また、取付クリップ5は、ヒンジ本体21,31に取り付ける際、その弾性脚部51を僅かに内側に収縮させるだけで、ヒンジ本体21,31の矩形開口部27,37内に容易に進入し、その進入端で段部54がヒンジ本体21,31の内側縁部25,35に当接し、且つ係止爪55がヒンジ本体21,31の被係止部26,36に係止されるので、取付クリップ5はヒンジ本体21,31の所定位置に確実に係止され、取付クリップ5をボディパネルBの矩形孔に差し込む際、前面側に取付クリップ5をずらすことなく、良好に組付固定することができる。
【0048】
アシストグリップの使用時、使用者は、図2に示すように、ヒンジ部2,3に対しグリップ本体1を下側に回動させて使用する。グリップ本体1は使用者によりその中央部が下方に引かれ、このとき、捻りコイルばね6は、その他端部62がグリップ本体1におけるヒンジ用凹部11の係止凹部11aの回動によりその捻りばね力に抗してねじられる。これにより、グリップ本体1は捻りばね力に抗して下側に回動し、使用者がグリップ本体1を把持することによりグリップ本体1の使用状態が保持される。
【0049】
使用者がアシストグリップの使用状態のグリップ本体1から手を離すと、グリップ本体1は捻りコイルばね6の他端部62から上向き(図2の時計方向)の付勢力を受けて同方向に回動し、非使用状態(図2の実線位置)に戻るが、このとき、オイルダンパー8の作用により、グリップ本体1の回動に制動がかけられ、低速でグリップ本体1は非使用状態の位置に戻ることとなる。
【0050】
一方、修理などで、アシストグリップを車体から取り外す場合、先ず、図15に示すように、グリップ本体1を下側に回動させた状態で、カバー4をヒンジ本体21,31から手前に引くようにして取り外す。具体的には、カバー4とヒンジ本体21,31との隙間に工具などを差し込み、ヒンジ本体21,31の両側のカバー係止部29,39からカバー4,4の係止爪43,43を外し、カバー4を手前に引いて外す。この状態で、図16に示すように、作業者は、ヒンジ本体21,31の内部が正面から見える状態となり、工具などを用いて取付クリップ5の両側の弾性脚部51の先端部を内側に撓ませると共に、弾性膨出部52の係止部53も内側に撓ませる。
【0051】
このとき、取付クリップ5は、その両側の弾性膨出部52に設けた係止部53に、延設部53bを設けた窪み部53aが設けられているので、その延設部53bにより係止部53の長さが、従来の取付クリップのくの字状の係止部より長く手前に位置している。このため、作業者は、ヒンジ本体21,31内の取付クリップ5の係止部53を容易に見ることができ、取付クリップ5を外すように、両側の弾性脚部51の先端や弾性膨出部52の係止部53の先端に工具などを容易にかけることができる。これにより、作業者は、アシストグリップを取り外す際、工具などで弾性膨出部52を内側に容易に撓ませて、取付クリップ5の係止部53の窪み部53aをボディパネルの矩形孔の縁部から外し、アシストグリップのヒンジ本体21,31を車体から容易に取り外すことができる。
【0052】
図17は、他の実施形態の取付クリップ5Aを示している。なお、上記取付クリップ5と同じ部分については、上記と同じ符号を図17に付してその説明を省略する。
【0053】
この取付クリップ5Aは、両側の弾性脚部51の先端近傍に、図17に示すように、段部54が脚部に対し略直角に曲折して形成され、その段部54の先端側に突出部56が取付クリップ5の挿入方向と略平行に、つまり弾性脚部51と略平行に且つ3つに分割して延設され、先端部を形成している。突出部56の中央部分は係止爪55aとして、切り起こして外側に開くように突出形成されている。係止爪55aは、図17に示す如く、段部54の平面と平行に、つまり取付クリップ5の挿入方向(弾性脚部51の長手方向)と直角の方向に、両側に開くように突設される。
【0054】
したがって、ヒンジ本体31に組み付ける場合、ヒンジ本体31の矩形開口部37に前面側から取付クリップ5の頭部を挿入し、そのまま取付クリップ5を挿入端まで押し込むが、このとき、矩形開口部37の両側の内側縁部35に、取付クリップ5の両側の段部54が係止される。また、両側の平坦な係止爪55aが、ヒンジ本体31の矩形開口部37内の両側穴部34に進入し、その穴部34の前面側の平坦な被係止部36に当って係止される。
【0055】
このため、この取付クリップ5Aを取り付けたヒンジ本体21,31のヒンジ部2,3を、車体のボディパネルに設けた矩形孔に挿入してアシストグリップを取り付ける際、取付クリップ5Aを矩形孔に差し込んだとき、係止爪55aは変形せずに、取付クリップ5Aを押し込む際に生じる取付クリップ5Aの反力は、係止爪55aの当接する被係止部36に良好に保持されることとなる。このため、ヒンジ本体21,31を車体のボディパネルに対し適正な位置にばらつきなく固定することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 グリップ本体
2 ヒンジ部
3 ヒンジ部
4 カバー
5 取付クリップ
8 オイルダンパー
11 ヒンジ用凹部
11a 係止凹部
12 ヒンジ用凹部
12a 突条用係止部
13 軸孔
14 軸孔
15 枢軸
16 枢軸
21 ヒンジ本体
21a 矩形枠部
21b 座部
22 内側支持片
22a 軸孔
23 外側支持片
23a 軸孔
24 穴部
25 内側縁部
26 被係止部
27 矩形開口部
28 突部
29 カバー係止部
31 ヒンジ本体
31a 矩形枠部
31b 座部
32 内側支持片
32a 軸孔
32b 長円ボス用嵌入部
33 外側支持片
33a 軸孔
34 穴部
35 内側縁部
36 被係止部
37 矩形開口部
39 カバー係止部
41 カバー本体
42 クリップ支持部
43 係止爪
51 弾性脚部
52 弾性膨出部
52a 係止爪
53 係止部
53a 窪み部
53b 延設部
54 段部
55 係止爪
56 突出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右両端の基部にヒンジ用凹部が設けられたグリップ本体と、該両側のヒンジ用凹部に枢軸を介して回動可能に取り付けられる1対のヒンジ本体を有したヒンジ部と、該1対のヒンジ本体に設けられた矩形開口部に各々挿入される取付クリップと、を備え、
該取付クリップは、ばね弾性を有する1対の弾性脚部が略U字状に曲折して形成され、該両側の弾性脚部には外側に膨出する弾性膨出部が設けられる一方、該弾性膨出部には車体の被固定部に係止される係止部が設けられ、該弾性脚部の先端近傍に、該ヒンジ本体の矩形開口部の内側縁部に係止される段部が設けられてなるアシストグリップにおいて、
該弾性膨出部の該係止部には、内側に窪むと共に該取付クリップの抜去方向に延設部を有した窪み部が設けられたことを特徴とするアシストグリップ。
【請求項2】
前記取付クリップの両側に設けた前記弾性膨出部は、前記係止部の隣接部位に短い係止爪を突設して構成され、該係止爪は車体の被固定部の内側に係止可能に構成されたことを特徴とする請求項1記載のアシストグリップ。
【請求項3】
前記弾性脚部の前記段部は、略クランク状に曲折して形成され、該段部の先端側には3個に分割された突出部が設けられ、中央の突出部が係止爪として外側に傾斜して突設されたことを特徴とする請求項1または2記載のアシストグリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−250548(P2012−250548A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122075(P2011−122075)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(308016242)豊和化成株式会社 (65)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】