アシスト機構付引手
【課題】レバーの突出を無くすとともに、見付け幅寸法を小さくしたアシスト機構付引手を提供する。
【解決手段】台座部2と、この台座部2の上面に重ねて配置されるとともに、下端側で前記台座部2に軸支されることにより揺動自在とされ、かつ前記台座部2の見付け幅とほぼ同等の見付け幅とされる操作レバー3と、前記台座部2の中間に形成された凹部20に配置され、中間部が台座部2に軸支され揺動自在とされるとともに、前記台座部2と操作レバー3とが軸支されている側の端部が前記操作レバー3に軸支され、操作レバー3の揺動に伴って揺動動作し窓枠を蹴り出して初期始動力を与える蹴出し部材4とからなり、前記操作レバー3の上面に指掛け用の起立壁34が形成されるとともに、該指掛け用起立壁34は引戸内方側となる位置に偏倚して設けられている。
【解決手段】台座部2と、この台座部2の上面に重ねて配置されるとともに、下端側で前記台座部2に軸支されることにより揺動自在とされ、かつ前記台座部2の見付け幅とほぼ同等の見付け幅とされる操作レバー3と、前記台座部2の中間に形成された凹部20に配置され、中間部が台座部2に軸支され揺動自在とされるとともに、前記台座部2と操作レバー3とが軸支されている側の端部が前記操作レバー3に軸支され、操作レバー3の揺動に伴って揺動動作し窓枠を蹴り出して初期始動力を与える蹴出し部材4とからなり、前記操作レバー3の上面に指掛け用の起立壁34が形成されるとともに、該指掛け用起立壁34は引戸内方側となる位置に偏倚して設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引戸を開操作する初期始動時に、小さな力で開操作ができるようにしたアシスト機構(開放補助機構)付引手に関する。
【背景技術】
【0002】
サッシに代表される引戸においては、引戸が閉められている状態の気密性を高めるために、戸先の縦框と窓枠又は開口枠との間に、ビードやモヘアなどの気密部材を介在させてある。とくに、サッシ窓においては、引き寄せ装置や気密装置などが設けられているため、開放当初の抵抗が大きい。しかも、最近は省エネルギー効果の点から断熱サッシが主流になりつつあるが、断熱サッシの引戸にはペアガラスが取り付けられ、また框も二重構造になっているものが多いので、全体重量が重くならざるをえない。特に大型のガラス障子は老齢者や病弱者には,開けることが容易でないという問題があった。
【0003】
そこで、特にこのような障子の開閉操作性を上げるために、テコの原理を応用し、障子の開放初期始動時に小さな力で開操作ができるようにしたアシスト機構付引手が知られている。
【0004】
例えば、下記特許文献1では、引き戸の戸先に固定された台座にレバーハンドルの中間部を回動自在に取り付け、レバーハンドルの一端をグリップ、他端を引き戸枠の縦枠を押圧可能な蹴り出し部とし、上記グリップを操作してレバーハンドルを回動させることにより蹴り出し部で引き戸枠を押圧したときの反力で引き戸を開く開き装置において、上記台座には引き戸の面と平行な開口部を貫通形成し、この開口部にレバーハンドルを貫通させ、非操作時には上記レバーハンドルの中間部と蹴り出し部とが収まるようにした引き戸の開き装置が提案されている。
【0005】
また、下記特許文献2では、引違い窓または片引き窓における障子の戸先框に設けられた固定部と、この固定部に対して前記障子の開閉方向にスライド自在に取り付けられた操作部と、前記固定部に軸支されるとともに、一端が前記操作部に回動自在に連結され、当該操作部のスライドに伴って回動する回動部とを備え、前記障子を閉じた状態において、前記戸先框が当接した前記引違い窓または片引き窓の縦枠から離れる方向に前記操作部をスライドさせることで、回動した前記回動部の他端が前記縦枠に向かって突出するとともに、当該縦枠に当接し、前記障子を前記縦枠から離れる方向に付勢する開放補助機構付き引手が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−13634号公報
【特許文献2】特開2005−97933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記特許文献1に係る開き装置の場合は、障子縦框へ取り付けられる本体部からレバーが突出して形成されているため、外観が悪い、カーテンなどと干渉する、身体とぶつかりケガをすることがあるなどの問題があるとともに、前記レバーが内方側に突き出しているため、開窓時に障子の引き残しが大きくなってしまい、開口幅が狭くなり、網戸のパッキンが外障子の召合せ框に接触しなくなる不具合が生じるか該召合せ框の見付け寸法を大きくする必要があるなどの問題があった。
【0008】
前記特許文献2に係る引手は、障子縦框への取付られる本体部の上面に引手が重なる構造となっているため、前述した問題点の多くは解消されるものの、構造が複雑で構成部品も多いため製作費が嵩む、縦框の見付け幅をより狭くしたい障子への適用が困難であるなどの問題点があった。
【0009】
また、窓枠側に突起物(見付け方向に内側に延出するフィン等)が存在している場合でも、開窓時の引き残しを少なくするとともに、十分な開口幅を確保するために、前記突起物と引手との間の隙間は小さく設定することになるが、そうすると、前記引手を摘んで障子を閉め切る際、前記突起物と引手との間の指が挟まれて事故に繋がる危険性があった。
【0010】
更には、前記特許文献1及び2に係る装置又は引手の場合は、原動側となるレバー(又は引手の移動によって回動される回動部)の揺動角と、作動側となる蹴出し部材の揺動角とが同一角となる構造であり、蹴出し部材の突出量を大きくしたい場合は、より多くレバーを揺動動作させたり、引手の移動量を大きく確保する必要があり、操作性が悪いなどの問題があった。
【0011】
そこで本発明の課題は、レバーの突出を無くすとともに、見付け幅寸法を小さくできるようにすることにある。また、窓枠側に突起物(見付け方向に内側に延出するフィン等)が存在している場合でも、障子を閉め切る際、前記突起物と引手との間の指が挟まれるような事故を未然に回避することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、台座部と、この台座部の上面に重ねて配置されるとともに、下端側又は上端側で前記台座部に軸支されることにより揺動自在とされ、かつ前記台座部の見付け幅とほぼ同等の見付け幅とされる操作レバーと、前記台座部に形成された凹部又は段部に配置され、中間部が前記台座部に軸支され揺動自在とされるとともに、前記台座部と操作レバーとが軸支されている側の端部が前記操作レバーに軸支され、前記操作レバーの揺動に伴って揺動動作し窓枠を蹴り出して初期始動力を与える蹴出し部材とからなり、前記操作レバーの上面に指掛け用の起立壁が形成されるとともに、該指掛け用起立壁は引戸内方側となる位置に偏倚して設けられていることを特徴とするアシスト機構付引手が提供される。
【0013】
上記請求項1記載の発明では、操作レバーは台座部の上面に重ねて配置されるとともに、操作レバーは台座部の見付け幅とほぼ同等の見付け幅となっているため、レバーの突出も無くなり美観が向上するとともに、他との干渉も無くなる。
【0014】
また、開窓時の引き残しも少なくでき、十分な開口幅が確保できるため、網戸のパッキンが外障子の召合せ框に接触しなくなる不具合が生じることがないとともに、該召合せ框の見付け寸法を特段に大きくする必要性が無くなる。更には、基本構成部材は、台座部と操作レバーと蹴出し部材からなる単純な構造であるため、製作費も安価となる。
【0015】
上記アシスト機構付引手においては、前記操作レバーの上面に指掛け用の起立壁が形成されるとともに、該指掛け用起立壁は引戸内方側となる位置に偏倚して設けられている。従って、窓枠側に突起物(見付け方向に内側に延出するフィン等)が存在している場合でも、障子を閉め切る際、この指掛け用起立壁を摘んで障子を閉めるようにすれば、窓枠と引手との間に指が挟まれるような事故を無くすことができる。
【0016】
さらに、前記アシスト機構付引手は、指掛け用起立壁は引戸内方側となる位置に偏倚して設けられているため、引手を窓枠に当接させるか、かなり近接させた状態で取付けできるようになるため、障子の開口幅をより広く確保することが可能となる。
【0017】
請求項2に係る本発明として、前記引戸内方側となる位置に偏倚して設けられた指掛け用起立壁とともに、引戸外方側となる位置に偏倚して設けられた第2の指掛け用起立壁を形成してある請求項1記載のアシスト機構付引手が提供される。
【0018】
上記請求項2記載の発明は、引戸を閉め切る際に操作方法のバリエーションを加えるとともに、操作者の便宜を図ったものである。前記引戸内方側となる位置に偏倚して設けられた指掛け用起立壁の場合は、この起立壁を親指と人差し指等で摘むようにしながら引戸を閉める必要があるが、操作者によっては、人差し指や中指等を押し当てるようにしながら引戸を閉め切るようにすることがあるため、障子の外方側となる位置に偏倚して設けられた第2の指掛け用起立壁を併存させるようにしたものである。また、障子を全開とした状態では、引手が召合せ框に当接した状態となる。すると、前記引戸内方側となる位置に偏倚して設けられた指掛け用起立壁と召合せ框との間に隙間が無いか少ないため、引戸を閉める際、この指掛け用起立壁に直接的に引手に指を掛けることができなくなるため、引戸外方側となる位置に偏倚して設けられた第2の指掛け用起立壁を設けておくことにより、この第2の指掛け用起立壁に指を掛けて引戸を閉操作することができるようになる。
【0019】
請求項3に係る本発明として、前記引戸内方側となる位置に偏倚して設けられた指掛け用起立壁は相対的に操作レバーの先端側に設けられ、前記第2の指掛け用起立壁は相対的に操作レバーの基端側に設けられている請求項2記載のアシスト機構付引手が提供される。
【0020】
上記請求項3記載の発明は、請求項2の引戸内方側となる位置に偏倚して設けられた指掛け用起立壁とともに、引戸外方側となる位置に偏倚して設けられた第2の指掛け用起立壁を形成する場合において、引戸内方側となる位置に偏倚して設けられた指掛け用起立壁は相対的に操作レバーの先端側に設け、前記第2の指掛け用起立壁は相対的に操作レバーの基端側に設けるようにしたものである。引戸を開操作する際は、引戸内方側となる位置に偏倚して設けられた指掛け用起立壁に指を掛けて開ける方が操作し易いとともに、テコの原理より大きな蹴出し力が得られるように該指掛け用起立壁を操作レバーの先端側に設けるようにしたものである。
【発明の効果】
【0021】
以上詳説のとおり、本発明によれば、レバーの突出を無くすとともに、見付け幅寸法を小さくできるようになる。また、窓枠側に突起物(見付け方向に内側に延出するフィン等)が存在している場合でも、障子を閉め切る際、前記突起物と引手との間の指が挟まれるような事故を未然に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係るアシスト機構付引手1の斜視図(平常時)である。
【図2】障子開操作時の作動状態を示す斜視図である。
【図3】本発明に係るアシスト機構付引手1の平面図である。
【図4】アシスト機構付引手1の縦断面図である。
【図5】台座部2を示す、(A)は側面図、(B)は正面図である。
【図6】操作レバー3を示す、(A)は側面図、(B)は正面図である。
【図7】蹴出し部材4を示す、(A)は側面図、(B)は正面図である。
【図8】操作レバー3及び蹴出し部材4の揺動状態を示す概略図である。
【図9】(A)〜(D)は操作量に応じた操作レバー3と蹴出し部材4の揺動角を示す作動図である。
【図10】サッシ窓に対する取付け例を示す、(A)は閉窓横断面図、(B)は開窓横断面図である。
【図11】本アシスト機構付引手1のサッシ窓への取付状態を示す正面図である。
【図12】台座2に対する蹴出し部材4の設置態様の変形例を示す概略図である。
【図13】指掛け用起立壁の変形例を示した第2形態例に係るアシスト機構付引手の平面図である。
【図14】その取付状態斜視図である。
【図15】指掛け用起立壁の変形例を示した第3形態例に係るアシスト機構付引手の平面図である。
【図16】その取付状態斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0024】
図1は本発明に係るアシスト機構付引手1の斜視図(平常時)、図2は障子開操作時の作動状態を示す斜視図、図3は平面図、図4は縦断面図である。
【0025】
図1〜図4に示されるように、アシスト機構付引手1は、基本的に、障子の窓枠側縦框に取り付けられる台座部2と、この台座部2の上面に重ねて配置されるとともに、下端側又は上端側で前記台座部に軸支されることにより揺動自在とされ、かつ前記台座部の見付け幅とほぼ同等の見付け幅とされる操作レバー3と、前記台座部2の中間に形成された凹部20に配置され、中間部が台座部に軸支され揺動自在とされるとともに、前記台座部2と操作レバー3との軸支側端部が前記操作レバー3に軸支され、前記操作レバー3の揺動に伴って揺動動作し窓枠を蹴り出して初期始動力を与える蹴出し部材4とからなり、前記操作レバー3の上面に指掛け用の起立壁34が形成されるとともに、該指掛け用起立壁34は引戸内方側となる位置に偏倚して設けられているものである。
【0026】
以下、更に具体的に詳述する。
【0027】
前記台座部2は、詳細には図5に示されるように、平面視で縦長に矩形状に成形された略立方体状の部材であり、部材長手方向の中間部は、蹴出し部材4を収容する凹部20が形成されているとともに、この凹部20内に蹴出し部材4を軸支するための軸設置孔21が形成されている。また、上下部にはそれぞれ障子縦框への取付のためにビス孔22、23が形成されているとともに、下端部に操作レバー3を軸支するための軸設置孔24が形成され、さらに上部側には、左右両側にスリット状のストッパー設置孔25、25が形成されている。ストッパー10は、同図に示されるように、相対的に高さの高いストッパー壁10aと、これに対峙するとともに、相対的に高さの低い起立壁10bと、これらを結合する結合部10cとからなる小片状部材であり、前記台座部2の裏面側から前記ストッパー壁10aと起立壁10bとを夫々、前記ストッパー設置孔25、25に嵌合させるように設置し、前記ストッパー壁10aのみを台座部2の上面から突出させる。前記ストッパー壁10aを左右いずれかのストッパー設置孔25から突出させるかによって、後述する操作レバー3の一方側への回動を規制するようになっている。すなわち、操作レバー3の規制方向を任意に設定可能とすることにより、引き違い障子において、左右の障子のどちら側にも共通的に使用可能となる。また、障子の閉操作時に、ストッパー10によって操作レバー3の揺動を抑えることができるとともに、ストッパー10が閉操作力を受けることによって軸部に荷重負担を掛けることも無くなる。なお、台座部2の側面に設けられた矩形状でかつ若干の隆起部27は、障子を全開した際に召合せ框に対する当接部である。
【0028】
前記操作レバー用軸設置孔24の上部位置には、バネ設置孔26が設けられており、図4に示されるように、嵌合されたバネ5の半分が台座部2に掛かり、残り半分が操作レバー3側に掛かることによって、操作レバー3を揺動させた際に、バネ部材の復元力によって、操作レバー3を元の垂直位置に戻すように付勢力を作用させるようになっている。なお、図4に示されるように、前記台座部2の裏面側には、ストッパー10を設置した状態で裏蓋6が設けられるとともに、この裏蓋6が蹴出し部材4を軸支するための軸部材7及び操作レバー3を軸支するための軸部材8を裏面側で軸受けする部材を兼ねている。
【0029】
前記操作レバー3は、詳細には図6に示されるように、平面視で縦長に矩形状に成形された略立方体状の部材であり、前記台座部2の見付け幅(短辺寸法)とほぼ同等の見付け幅とされ、台座部2の上面に重ねて配置される。下端側に形成された軸設置孔30に設置された軸部材8によって前記台座部2に軸支されることにより揺動自在とされ、前記軸設置孔30の上部側には蹴出し部材4を軸支するための軸設置孔31が形成されている。最下端に設けられた孔32は、台座部2を固定するビスを貫通させるための挿通孔である。前記軸設置孔30、31及び挿通孔32を覆い隠すためのカバー材11が着脱自在に設けられている。
【0030】
前記操作レバー3の側壁には、前記ストッパー壁10aの先端側形状にほぼ整合する形状で切欠き33が設けられている。この切欠き33の周縁は斜めにカットされており、前記ストッパー壁10aの先端側周縁が半円弧状に加工され、この先端側周縁のみが前記切欠き33の周縁と衝合するようになっている。これにより、正面から見た際、前記ストッパー壁10aが外側に突出せず、操作レバー3によって隠されるようになっている。
【0031】
前記操作レバー3の上面には、指掛け用の起立壁34が形成されるとともに、該指掛け用起立壁34は引戸内方側となる位置(引戸の開方向側)に偏倚して設けられている。なお、前記指掛け用起立壁34は引戸内方側となる位置にのみ設けられ、引戸外方側となる位置に指掛け用起立壁は存在しない。
【0032】
前記蹴出し部材4は、詳細には図7に示されるように、前記台座部2の凹部20に収容可能な寸法とされ、正面から見た際に、前記操作レバー3によって覆い隠され露出しない寸法とされる。中央よりやや下側に、台座部2に対して軸部材7によって軸支するための軸設置孔40が形成されているとともに、その下側位置に前記操作レバー3に対して軸部材9によって軸支するための軸設置孔41が形成されている。また、窓枠に対する当接面となる両側面には、着脱可能な当接部材12が嵌設されている。蹴出し部材4の窓枠当接部位に着脱可能な当接部材12を設けるようにすることで、窓枠との当接部が摩擦によってすり減っても当接部材の交換だけで対応することが可能となる。なお、前記軸設置孔41は、縦方向に長い長孔とされ、この長孔長さによって前記操作レバー3の揺動範囲が決定される。
【0033】
以上詳述したアシスト機構付引手1においては、図2に示されるように、操作レバー3の指掛け用起立壁34に指を掛けて障子を開方向に引くと、操作レバー3が軸部材8を揺動中心として揺動を開始する。操作レバー3が揺動すると、蹴出し部材4との連結部となっている軸部材9が同方向に揺動し、これに伴って蹴出し部材4の上端側(蹴出し側)が窓枠方向に突出するように揺動し、窓枠を蹴り出して初期始動力を与える。
【0034】
ところで、前記蹴出し部材4において、前記蹴出し部材4と操作レバー3とを連結する軸部材9の位置は、操作レバー3の揺動角αよりも蹴り出し部材の揺動角βが大きくなる位置に設定するのが良い。操作レバー3と蹴出し部材4とを一体とせずに別部材とした本発明の引手においては、蹴出し部材4と操作レバー3との軸支位置の設定を変えることによって、操作レバー3の揺動角に対する蹴出し部材4の揺動角を任意に設定することが可能となる。従って、蹴出し部材4と操作レバー3との軸支部は、操作レバー3の揺動角よりも蹴出し部材4の揺動角が大きくなる位置に設定することで、操作レバー3の少ない揺動操作で大きな蹴出し量を得ることができ、操作レバー3の揺動操作量を小さくすることで操作性を向上することができる。具体的には、図8に示されるように、操作レバー3の揺動角をαとするとき、蹴出し部材4の揺動角βは軸部材7と軸部材9との離隔距離Sに依存することになるから、この離隔距離Sを、蹴出し部材揺動角β>操作レバー揺動角αとなるように設定する。もちろん、蹴出し部材4の突出量は、軸部材7から蹴出し側先端までの部材長によっても変化するが、蹴出し部材4の揺動角βを大きく確保することにより、操作レバー3の少ない操作量で蹴出しすることができ、操作性が向上する。
【0035】
たとえば、図8において、軸部材7と軸部材8との離隔距離L:45mm、軸部材7と軸部材9との離隔距離S:19.05mmとした場合の例について、図9に基づいて説明すると、図9(A)の操作前の状態から図9(B)に示すように、操作レバー3を5.0°揺動させると、蹴出し部材4の揺動角βは7.4°となり、図9(C)に示すように、操作レバー3を13.6°揺動させると、蹴出し部材4の揺動角βは18.7°となり、図9(D)に示すように、操作レバー3を17.9°揺動させると、蹴出し部材4の揺動角βは23.2°となる。
【0036】
次いで、図10に本アシスト機構付引手1をサッシ窓に対して取り付けた例を示す。サッシ窓は、窓枠16内に外障子14と内障子15とがスライド可能に設置され、障子の外側に網戸13を備える。本例では、外障子14の窓枠側縦框と、内障子15の窓枠側縦框とに夫々、本アシスト機構付引手1、1が取り付けられる。外障子14側では、気密材を取り付けるための突片を蹴出し部材4の当接対象部材としているが、内障子15側で示したように、別途、当接対象部材6を設けるようにしても良い。
【0037】
図10(B)に示されるように、本アシスト機構付引手1では、レバーの突出を無くすとともに、見付け幅寸法を小さくできるため、開窓時の引き残しも少なくでき、十分な開口幅が確保できるようになるとともに、網戸13のパッキンが外障子14の召合せ框に接触しなくなるなどの不具合も無くなる。
【0038】
ところで、前記窓枠16には、図10に示されるように、引手1の手前側に見付け方向に内側に延出するフィン16aが形成されているが、開窓状態から障子を閉め切る際、図11に示されるように、指掛け用起立壁34を親指と人差し指等で摘んで障子14を閉めるようにすれば、窓枠16と引手1との間に指が挟まれるような事故を無くすことができる。
【0039】
〔第2形態例〕
図13及び図14に示された第2形態例に係るアシスト機構付引手1Aは、指掛け用起立壁34の内面(窓枠側の面)を波状とし、指掛けし易くするとともに、滑り難くしたものである。
【0040】
〔第3形態例〕
図15及び図16に示された第3形態例に係るアシスト機構付引手1Bは、前記引戸内方側となる位置に偏倚して設けられた指掛け用起立壁34とともに、引戸外方側となる位置に偏倚して設けられた第2の指掛け用起立壁35を形成したものである。この場合、前記引戸内方側となる位置に偏倚して設けられた指掛け用起立壁34は相対的に操作レバー3の先端側に設けるようにし、前記第2の指掛け用起立壁35は相対的に操作レバーの基端側に設けるようにするのが望ましい。
【0041】
前記引戸内方側となる位置に偏倚して設けられた指掛け用起立壁34の場合は、この起立壁34を親指と人差し指等で摘むようにしながら引戸を閉める必要があるが、操作者によっては、人差し指や中指等を押し当てるようにしながら引戸を閉め切るようにすることがあるため、障子の外方側となる位置に偏倚して設けられた第2の指掛け用起立壁35を併存させるようにしたものである。また、障子を全開とした状態では、引手1Bが召合せ框に当接した状態となる。すると、前記引戸内方側となる位置に偏倚して設けられた指掛け用起立壁34と召合せ框との間に隙間が無いか少ないため、引戸を閉める際、この指掛け用起立壁34に直接的に引手に指を掛けることができなくなるため、引戸外方側となる位置に偏倚して設けられた第2の指掛け用起立壁35を設けておくことにより、この第2の指掛け用起立壁35に指を掛けて引戸を閉操作することができるようになる。なお、前記指掛け用起立壁34の形成範囲と、前記第2の指掛け用起立壁35の形成範囲は部材長手方向に重なってはおらず、別々の範囲に形成されている。
【0042】
〔その他の形態例〕
(1)上記形態例では、操作レバー3は下端側を回転中心として揺動操作させるようにしたが、上端側を回転中心として揺動操作するように取り付けてもよい。
(2)上記形態例では、台座部2の中間に凹部20を形成し、該凹部20に蹴出し部材4を配置するようにしたが、図12に示されるように、台座部2に段部20’を形成し、この段部20’に前記蹴出し部材4を配置するようにしてもよい。
(3)上記形態例では、第1〜第3形態例に係る各アシスト機構付引手1,1A、1Bを説明したが、これらは居住者のニーズや嗜好に応じて、操作レバー3を付け替えるだけで変更が可能である。
【符号の説明】
【0043】
1・1A・1B…アシスト機構付引手、2…台座部、3…操作レバー、4…蹴出し部材、5…バネ、6…当接部材、10…ストッパー、11…カバー材、12…当接部材、13…網戸、14…外障子、15…内障子、16…窓枠、34…指掛け用起立壁、35…第2の指掛け用起立壁
【技術分野】
【0001】
本発明は、引戸を開操作する初期始動時に、小さな力で開操作ができるようにしたアシスト機構(開放補助機構)付引手に関する。
【背景技術】
【0002】
サッシに代表される引戸においては、引戸が閉められている状態の気密性を高めるために、戸先の縦框と窓枠又は開口枠との間に、ビードやモヘアなどの気密部材を介在させてある。とくに、サッシ窓においては、引き寄せ装置や気密装置などが設けられているため、開放当初の抵抗が大きい。しかも、最近は省エネルギー効果の点から断熱サッシが主流になりつつあるが、断熱サッシの引戸にはペアガラスが取り付けられ、また框も二重構造になっているものが多いので、全体重量が重くならざるをえない。特に大型のガラス障子は老齢者や病弱者には,開けることが容易でないという問題があった。
【0003】
そこで、特にこのような障子の開閉操作性を上げるために、テコの原理を応用し、障子の開放初期始動時に小さな力で開操作ができるようにしたアシスト機構付引手が知られている。
【0004】
例えば、下記特許文献1では、引き戸の戸先に固定された台座にレバーハンドルの中間部を回動自在に取り付け、レバーハンドルの一端をグリップ、他端を引き戸枠の縦枠を押圧可能な蹴り出し部とし、上記グリップを操作してレバーハンドルを回動させることにより蹴り出し部で引き戸枠を押圧したときの反力で引き戸を開く開き装置において、上記台座には引き戸の面と平行な開口部を貫通形成し、この開口部にレバーハンドルを貫通させ、非操作時には上記レバーハンドルの中間部と蹴り出し部とが収まるようにした引き戸の開き装置が提案されている。
【0005】
また、下記特許文献2では、引違い窓または片引き窓における障子の戸先框に設けられた固定部と、この固定部に対して前記障子の開閉方向にスライド自在に取り付けられた操作部と、前記固定部に軸支されるとともに、一端が前記操作部に回動自在に連結され、当該操作部のスライドに伴って回動する回動部とを備え、前記障子を閉じた状態において、前記戸先框が当接した前記引違い窓または片引き窓の縦枠から離れる方向に前記操作部をスライドさせることで、回動した前記回動部の他端が前記縦枠に向かって突出するとともに、当該縦枠に当接し、前記障子を前記縦枠から離れる方向に付勢する開放補助機構付き引手が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−13634号公報
【特許文献2】特開2005−97933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記特許文献1に係る開き装置の場合は、障子縦框へ取り付けられる本体部からレバーが突出して形成されているため、外観が悪い、カーテンなどと干渉する、身体とぶつかりケガをすることがあるなどの問題があるとともに、前記レバーが内方側に突き出しているため、開窓時に障子の引き残しが大きくなってしまい、開口幅が狭くなり、網戸のパッキンが外障子の召合せ框に接触しなくなる不具合が生じるか該召合せ框の見付け寸法を大きくする必要があるなどの問題があった。
【0008】
前記特許文献2に係る引手は、障子縦框への取付られる本体部の上面に引手が重なる構造となっているため、前述した問題点の多くは解消されるものの、構造が複雑で構成部品も多いため製作費が嵩む、縦框の見付け幅をより狭くしたい障子への適用が困難であるなどの問題点があった。
【0009】
また、窓枠側に突起物(見付け方向に内側に延出するフィン等)が存在している場合でも、開窓時の引き残しを少なくするとともに、十分な開口幅を確保するために、前記突起物と引手との間の隙間は小さく設定することになるが、そうすると、前記引手を摘んで障子を閉め切る際、前記突起物と引手との間の指が挟まれて事故に繋がる危険性があった。
【0010】
更には、前記特許文献1及び2に係る装置又は引手の場合は、原動側となるレバー(又は引手の移動によって回動される回動部)の揺動角と、作動側となる蹴出し部材の揺動角とが同一角となる構造であり、蹴出し部材の突出量を大きくしたい場合は、より多くレバーを揺動動作させたり、引手の移動量を大きく確保する必要があり、操作性が悪いなどの問題があった。
【0011】
そこで本発明の課題は、レバーの突出を無くすとともに、見付け幅寸法を小さくできるようにすることにある。また、窓枠側に突起物(見付け方向に内側に延出するフィン等)が存在している場合でも、障子を閉め切る際、前記突起物と引手との間の指が挟まれるような事故を未然に回避することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、台座部と、この台座部の上面に重ねて配置されるとともに、下端側又は上端側で前記台座部に軸支されることにより揺動自在とされ、かつ前記台座部の見付け幅とほぼ同等の見付け幅とされる操作レバーと、前記台座部に形成された凹部又は段部に配置され、中間部が前記台座部に軸支され揺動自在とされるとともに、前記台座部と操作レバーとが軸支されている側の端部が前記操作レバーに軸支され、前記操作レバーの揺動に伴って揺動動作し窓枠を蹴り出して初期始動力を与える蹴出し部材とからなり、前記操作レバーの上面に指掛け用の起立壁が形成されるとともに、該指掛け用起立壁は引戸内方側となる位置に偏倚して設けられていることを特徴とするアシスト機構付引手が提供される。
【0013】
上記請求項1記載の発明では、操作レバーは台座部の上面に重ねて配置されるとともに、操作レバーは台座部の見付け幅とほぼ同等の見付け幅となっているため、レバーの突出も無くなり美観が向上するとともに、他との干渉も無くなる。
【0014】
また、開窓時の引き残しも少なくでき、十分な開口幅が確保できるため、網戸のパッキンが外障子の召合せ框に接触しなくなる不具合が生じることがないとともに、該召合せ框の見付け寸法を特段に大きくする必要性が無くなる。更には、基本構成部材は、台座部と操作レバーと蹴出し部材からなる単純な構造であるため、製作費も安価となる。
【0015】
上記アシスト機構付引手においては、前記操作レバーの上面に指掛け用の起立壁が形成されるとともに、該指掛け用起立壁は引戸内方側となる位置に偏倚して設けられている。従って、窓枠側に突起物(見付け方向に内側に延出するフィン等)が存在している場合でも、障子を閉め切る際、この指掛け用起立壁を摘んで障子を閉めるようにすれば、窓枠と引手との間に指が挟まれるような事故を無くすことができる。
【0016】
さらに、前記アシスト機構付引手は、指掛け用起立壁は引戸内方側となる位置に偏倚して設けられているため、引手を窓枠に当接させるか、かなり近接させた状態で取付けできるようになるため、障子の開口幅をより広く確保することが可能となる。
【0017】
請求項2に係る本発明として、前記引戸内方側となる位置に偏倚して設けられた指掛け用起立壁とともに、引戸外方側となる位置に偏倚して設けられた第2の指掛け用起立壁を形成してある請求項1記載のアシスト機構付引手が提供される。
【0018】
上記請求項2記載の発明は、引戸を閉め切る際に操作方法のバリエーションを加えるとともに、操作者の便宜を図ったものである。前記引戸内方側となる位置に偏倚して設けられた指掛け用起立壁の場合は、この起立壁を親指と人差し指等で摘むようにしながら引戸を閉める必要があるが、操作者によっては、人差し指や中指等を押し当てるようにしながら引戸を閉め切るようにすることがあるため、障子の外方側となる位置に偏倚して設けられた第2の指掛け用起立壁を併存させるようにしたものである。また、障子を全開とした状態では、引手が召合せ框に当接した状態となる。すると、前記引戸内方側となる位置に偏倚して設けられた指掛け用起立壁と召合せ框との間に隙間が無いか少ないため、引戸を閉める際、この指掛け用起立壁に直接的に引手に指を掛けることができなくなるため、引戸外方側となる位置に偏倚して設けられた第2の指掛け用起立壁を設けておくことにより、この第2の指掛け用起立壁に指を掛けて引戸を閉操作することができるようになる。
【0019】
請求項3に係る本発明として、前記引戸内方側となる位置に偏倚して設けられた指掛け用起立壁は相対的に操作レバーの先端側に設けられ、前記第2の指掛け用起立壁は相対的に操作レバーの基端側に設けられている請求項2記載のアシスト機構付引手が提供される。
【0020】
上記請求項3記載の発明は、請求項2の引戸内方側となる位置に偏倚して設けられた指掛け用起立壁とともに、引戸外方側となる位置に偏倚して設けられた第2の指掛け用起立壁を形成する場合において、引戸内方側となる位置に偏倚して設けられた指掛け用起立壁は相対的に操作レバーの先端側に設け、前記第2の指掛け用起立壁は相対的に操作レバーの基端側に設けるようにしたものである。引戸を開操作する際は、引戸内方側となる位置に偏倚して設けられた指掛け用起立壁に指を掛けて開ける方が操作し易いとともに、テコの原理より大きな蹴出し力が得られるように該指掛け用起立壁を操作レバーの先端側に設けるようにしたものである。
【発明の効果】
【0021】
以上詳説のとおり、本発明によれば、レバーの突出を無くすとともに、見付け幅寸法を小さくできるようになる。また、窓枠側に突起物(見付け方向に内側に延出するフィン等)が存在している場合でも、障子を閉め切る際、前記突起物と引手との間の指が挟まれるような事故を未然に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係るアシスト機構付引手1の斜視図(平常時)である。
【図2】障子開操作時の作動状態を示す斜視図である。
【図3】本発明に係るアシスト機構付引手1の平面図である。
【図4】アシスト機構付引手1の縦断面図である。
【図5】台座部2を示す、(A)は側面図、(B)は正面図である。
【図6】操作レバー3を示す、(A)は側面図、(B)は正面図である。
【図7】蹴出し部材4を示す、(A)は側面図、(B)は正面図である。
【図8】操作レバー3及び蹴出し部材4の揺動状態を示す概略図である。
【図9】(A)〜(D)は操作量に応じた操作レバー3と蹴出し部材4の揺動角を示す作動図である。
【図10】サッシ窓に対する取付け例を示す、(A)は閉窓横断面図、(B)は開窓横断面図である。
【図11】本アシスト機構付引手1のサッシ窓への取付状態を示す正面図である。
【図12】台座2に対する蹴出し部材4の設置態様の変形例を示す概略図である。
【図13】指掛け用起立壁の変形例を示した第2形態例に係るアシスト機構付引手の平面図である。
【図14】その取付状態斜視図である。
【図15】指掛け用起立壁の変形例を示した第3形態例に係るアシスト機構付引手の平面図である。
【図16】その取付状態斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0024】
図1は本発明に係るアシスト機構付引手1の斜視図(平常時)、図2は障子開操作時の作動状態を示す斜視図、図3は平面図、図4は縦断面図である。
【0025】
図1〜図4に示されるように、アシスト機構付引手1は、基本的に、障子の窓枠側縦框に取り付けられる台座部2と、この台座部2の上面に重ねて配置されるとともに、下端側又は上端側で前記台座部に軸支されることにより揺動自在とされ、かつ前記台座部の見付け幅とほぼ同等の見付け幅とされる操作レバー3と、前記台座部2の中間に形成された凹部20に配置され、中間部が台座部に軸支され揺動自在とされるとともに、前記台座部2と操作レバー3との軸支側端部が前記操作レバー3に軸支され、前記操作レバー3の揺動に伴って揺動動作し窓枠を蹴り出して初期始動力を与える蹴出し部材4とからなり、前記操作レバー3の上面に指掛け用の起立壁34が形成されるとともに、該指掛け用起立壁34は引戸内方側となる位置に偏倚して設けられているものである。
【0026】
以下、更に具体的に詳述する。
【0027】
前記台座部2は、詳細には図5に示されるように、平面視で縦長に矩形状に成形された略立方体状の部材であり、部材長手方向の中間部は、蹴出し部材4を収容する凹部20が形成されているとともに、この凹部20内に蹴出し部材4を軸支するための軸設置孔21が形成されている。また、上下部にはそれぞれ障子縦框への取付のためにビス孔22、23が形成されているとともに、下端部に操作レバー3を軸支するための軸設置孔24が形成され、さらに上部側には、左右両側にスリット状のストッパー設置孔25、25が形成されている。ストッパー10は、同図に示されるように、相対的に高さの高いストッパー壁10aと、これに対峙するとともに、相対的に高さの低い起立壁10bと、これらを結合する結合部10cとからなる小片状部材であり、前記台座部2の裏面側から前記ストッパー壁10aと起立壁10bとを夫々、前記ストッパー設置孔25、25に嵌合させるように設置し、前記ストッパー壁10aのみを台座部2の上面から突出させる。前記ストッパー壁10aを左右いずれかのストッパー設置孔25から突出させるかによって、後述する操作レバー3の一方側への回動を規制するようになっている。すなわち、操作レバー3の規制方向を任意に設定可能とすることにより、引き違い障子において、左右の障子のどちら側にも共通的に使用可能となる。また、障子の閉操作時に、ストッパー10によって操作レバー3の揺動を抑えることができるとともに、ストッパー10が閉操作力を受けることによって軸部に荷重負担を掛けることも無くなる。なお、台座部2の側面に設けられた矩形状でかつ若干の隆起部27は、障子を全開した際に召合せ框に対する当接部である。
【0028】
前記操作レバー用軸設置孔24の上部位置には、バネ設置孔26が設けられており、図4に示されるように、嵌合されたバネ5の半分が台座部2に掛かり、残り半分が操作レバー3側に掛かることによって、操作レバー3を揺動させた際に、バネ部材の復元力によって、操作レバー3を元の垂直位置に戻すように付勢力を作用させるようになっている。なお、図4に示されるように、前記台座部2の裏面側には、ストッパー10を設置した状態で裏蓋6が設けられるとともに、この裏蓋6が蹴出し部材4を軸支するための軸部材7及び操作レバー3を軸支するための軸部材8を裏面側で軸受けする部材を兼ねている。
【0029】
前記操作レバー3は、詳細には図6に示されるように、平面視で縦長に矩形状に成形された略立方体状の部材であり、前記台座部2の見付け幅(短辺寸法)とほぼ同等の見付け幅とされ、台座部2の上面に重ねて配置される。下端側に形成された軸設置孔30に設置された軸部材8によって前記台座部2に軸支されることにより揺動自在とされ、前記軸設置孔30の上部側には蹴出し部材4を軸支するための軸設置孔31が形成されている。最下端に設けられた孔32は、台座部2を固定するビスを貫通させるための挿通孔である。前記軸設置孔30、31及び挿通孔32を覆い隠すためのカバー材11が着脱自在に設けられている。
【0030】
前記操作レバー3の側壁には、前記ストッパー壁10aの先端側形状にほぼ整合する形状で切欠き33が設けられている。この切欠き33の周縁は斜めにカットされており、前記ストッパー壁10aの先端側周縁が半円弧状に加工され、この先端側周縁のみが前記切欠き33の周縁と衝合するようになっている。これにより、正面から見た際、前記ストッパー壁10aが外側に突出せず、操作レバー3によって隠されるようになっている。
【0031】
前記操作レバー3の上面には、指掛け用の起立壁34が形成されるとともに、該指掛け用起立壁34は引戸内方側となる位置(引戸の開方向側)に偏倚して設けられている。なお、前記指掛け用起立壁34は引戸内方側となる位置にのみ設けられ、引戸外方側となる位置に指掛け用起立壁は存在しない。
【0032】
前記蹴出し部材4は、詳細には図7に示されるように、前記台座部2の凹部20に収容可能な寸法とされ、正面から見た際に、前記操作レバー3によって覆い隠され露出しない寸法とされる。中央よりやや下側に、台座部2に対して軸部材7によって軸支するための軸設置孔40が形成されているとともに、その下側位置に前記操作レバー3に対して軸部材9によって軸支するための軸設置孔41が形成されている。また、窓枠に対する当接面となる両側面には、着脱可能な当接部材12が嵌設されている。蹴出し部材4の窓枠当接部位に着脱可能な当接部材12を設けるようにすることで、窓枠との当接部が摩擦によってすり減っても当接部材の交換だけで対応することが可能となる。なお、前記軸設置孔41は、縦方向に長い長孔とされ、この長孔長さによって前記操作レバー3の揺動範囲が決定される。
【0033】
以上詳述したアシスト機構付引手1においては、図2に示されるように、操作レバー3の指掛け用起立壁34に指を掛けて障子を開方向に引くと、操作レバー3が軸部材8を揺動中心として揺動を開始する。操作レバー3が揺動すると、蹴出し部材4との連結部となっている軸部材9が同方向に揺動し、これに伴って蹴出し部材4の上端側(蹴出し側)が窓枠方向に突出するように揺動し、窓枠を蹴り出して初期始動力を与える。
【0034】
ところで、前記蹴出し部材4において、前記蹴出し部材4と操作レバー3とを連結する軸部材9の位置は、操作レバー3の揺動角αよりも蹴り出し部材の揺動角βが大きくなる位置に設定するのが良い。操作レバー3と蹴出し部材4とを一体とせずに別部材とした本発明の引手においては、蹴出し部材4と操作レバー3との軸支位置の設定を変えることによって、操作レバー3の揺動角に対する蹴出し部材4の揺動角を任意に設定することが可能となる。従って、蹴出し部材4と操作レバー3との軸支部は、操作レバー3の揺動角よりも蹴出し部材4の揺動角が大きくなる位置に設定することで、操作レバー3の少ない揺動操作で大きな蹴出し量を得ることができ、操作レバー3の揺動操作量を小さくすることで操作性を向上することができる。具体的には、図8に示されるように、操作レバー3の揺動角をαとするとき、蹴出し部材4の揺動角βは軸部材7と軸部材9との離隔距離Sに依存することになるから、この離隔距離Sを、蹴出し部材揺動角β>操作レバー揺動角αとなるように設定する。もちろん、蹴出し部材4の突出量は、軸部材7から蹴出し側先端までの部材長によっても変化するが、蹴出し部材4の揺動角βを大きく確保することにより、操作レバー3の少ない操作量で蹴出しすることができ、操作性が向上する。
【0035】
たとえば、図8において、軸部材7と軸部材8との離隔距離L:45mm、軸部材7と軸部材9との離隔距離S:19.05mmとした場合の例について、図9に基づいて説明すると、図9(A)の操作前の状態から図9(B)に示すように、操作レバー3を5.0°揺動させると、蹴出し部材4の揺動角βは7.4°となり、図9(C)に示すように、操作レバー3を13.6°揺動させると、蹴出し部材4の揺動角βは18.7°となり、図9(D)に示すように、操作レバー3を17.9°揺動させると、蹴出し部材4の揺動角βは23.2°となる。
【0036】
次いで、図10に本アシスト機構付引手1をサッシ窓に対して取り付けた例を示す。サッシ窓は、窓枠16内に外障子14と内障子15とがスライド可能に設置され、障子の外側に網戸13を備える。本例では、外障子14の窓枠側縦框と、内障子15の窓枠側縦框とに夫々、本アシスト機構付引手1、1が取り付けられる。外障子14側では、気密材を取り付けるための突片を蹴出し部材4の当接対象部材としているが、内障子15側で示したように、別途、当接対象部材6を設けるようにしても良い。
【0037】
図10(B)に示されるように、本アシスト機構付引手1では、レバーの突出を無くすとともに、見付け幅寸法を小さくできるため、開窓時の引き残しも少なくでき、十分な開口幅が確保できるようになるとともに、網戸13のパッキンが外障子14の召合せ框に接触しなくなるなどの不具合も無くなる。
【0038】
ところで、前記窓枠16には、図10に示されるように、引手1の手前側に見付け方向に内側に延出するフィン16aが形成されているが、開窓状態から障子を閉め切る際、図11に示されるように、指掛け用起立壁34を親指と人差し指等で摘んで障子14を閉めるようにすれば、窓枠16と引手1との間に指が挟まれるような事故を無くすことができる。
【0039】
〔第2形態例〕
図13及び図14に示された第2形態例に係るアシスト機構付引手1Aは、指掛け用起立壁34の内面(窓枠側の面)を波状とし、指掛けし易くするとともに、滑り難くしたものである。
【0040】
〔第3形態例〕
図15及び図16に示された第3形態例に係るアシスト機構付引手1Bは、前記引戸内方側となる位置に偏倚して設けられた指掛け用起立壁34とともに、引戸外方側となる位置に偏倚して設けられた第2の指掛け用起立壁35を形成したものである。この場合、前記引戸内方側となる位置に偏倚して設けられた指掛け用起立壁34は相対的に操作レバー3の先端側に設けるようにし、前記第2の指掛け用起立壁35は相対的に操作レバーの基端側に設けるようにするのが望ましい。
【0041】
前記引戸内方側となる位置に偏倚して設けられた指掛け用起立壁34の場合は、この起立壁34を親指と人差し指等で摘むようにしながら引戸を閉める必要があるが、操作者によっては、人差し指や中指等を押し当てるようにしながら引戸を閉め切るようにすることがあるため、障子の外方側となる位置に偏倚して設けられた第2の指掛け用起立壁35を併存させるようにしたものである。また、障子を全開とした状態では、引手1Bが召合せ框に当接した状態となる。すると、前記引戸内方側となる位置に偏倚して設けられた指掛け用起立壁34と召合せ框との間に隙間が無いか少ないため、引戸を閉める際、この指掛け用起立壁34に直接的に引手に指を掛けることができなくなるため、引戸外方側となる位置に偏倚して設けられた第2の指掛け用起立壁35を設けておくことにより、この第2の指掛け用起立壁35に指を掛けて引戸を閉操作することができるようになる。なお、前記指掛け用起立壁34の形成範囲と、前記第2の指掛け用起立壁35の形成範囲は部材長手方向に重なってはおらず、別々の範囲に形成されている。
【0042】
〔その他の形態例〕
(1)上記形態例では、操作レバー3は下端側を回転中心として揺動操作させるようにしたが、上端側を回転中心として揺動操作するように取り付けてもよい。
(2)上記形態例では、台座部2の中間に凹部20を形成し、該凹部20に蹴出し部材4を配置するようにしたが、図12に示されるように、台座部2に段部20’を形成し、この段部20’に前記蹴出し部材4を配置するようにしてもよい。
(3)上記形態例では、第1〜第3形態例に係る各アシスト機構付引手1,1A、1Bを説明したが、これらは居住者のニーズや嗜好に応じて、操作レバー3を付け替えるだけで変更が可能である。
【符号の説明】
【0043】
1・1A・1B…アシスト機構付引手、2…台座部、3…操作レバー、4…蹴出し部材、5…バネ、6…当接部材、10…ストッパー、11…カバー材、12…当接部材、13…網戸、14…外障子、15…内障子、16…窓枠、34…指掛け用起立壁、35…第2の指掛け用起立壁
【特許請求の範囲】
【請求項1】
台座部と、この台座部の上面に重ねて配置されるとともに、下端側又は上端側で前記台座部に軸支されることにより揺動自在とされ、かつ前記台座部の見付け幅とほぼ同等の見付け幅とされる操作レバーと、前記台座部に形成された凹部又は段部に配置され、中間部が前記台座部に軸支され揺動自在とされるとともに、前記台座部と操作レバーとが軸支されている側の端部が前記操作レバーに軸支され、前記操作レバーの揺動に伴って揺動動作し窓枠を蹴り出して初期始動力を与える蹴出し部材とからなり、前記操作レバーの上面に指掛け用の起立壁が形成されるとともに、該指掛け用起立壁は引戸内方側となる位置に偏倚して設けられていることを特徴とするアシスト機構付引手。
【請求項2】
前記引戸内方側となる位置に偏倚して設けられた指掛け用起立壁とともに、引戸外方側となる位置に偏倚して設けられた第2の指掛け用起立壁を形成してある請求項1記載のアシスト機構付引手。
【請求項3】
前記引戸内方側となる位置に偏倚して設けられた指掛け用起立壁は相対的に操作レバーの先端側に設けられ、前記第2の指掛け用起立壁は相対的に操作レバーの基端側に設けられている請求項2記載のアシスト機構付引手。
【請求項1】
台座部と、この台座部の上面に重ねて配置されるとともに、下端側又は上端側で前記台座部に軸支されることにより揺動自在とされ、かつ前記台座部の見付け幅とほぼ同等の見付け幅とされる操作レバーと、前記台座部に形成された凹部又は段部に配置され、中間部が前記台座部に軸支され揺動自在とされるとともに、前記台座部と操作レバーとが軸支されている側の端部が前記操作レバーに軸支され、前記操作レバーの揺動に伴って揺動動作し窓枠を蹴り出して初期始動力を与える蹴出し部材とからなり、前記操作レバーの上面に指掛け用の起立壁が形成されるとともに、該指掛け用起立壁は引戸内方側となる位置に偏倚して設けられていることを特徴とするアシスト機構付引手。
【請求項2】
前記引戸内方側となる位置に偏倚して設けられた指掛け用起立壁とともに、引戸外方側となる位置に偏倚して設けられた第2の指掛け用起立壁を形成してある請求項1記載のアシスト機構付引手。
【請求項3】
前記引戸内方側となる位置に偏倚して設けられた指掛け用起立壁は相対的に操作レバーの先端側に設けられ、前記第2の指掛け用起立壁は相対的に操作レバーの基端側に設けられている請求項2記載のアシスト機構付引手。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
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【公開番号】特開2010−174539(P2010−174539A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−19434(P2009−19434)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000191065)新日軽株式会社 (545)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000191065)新日軽株式会社 (545)
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