説明

アジュバント組成物およびその使用方法

本発明は、ワクチン効能を改良するワクチンアジュバントを指向する。さらに具体的には、本発明は、抗原特異的免疫応答を促進および増強するためにワクチンアジュバントとしてγδTリンパ球活性化物質の使用、およびγδTリンパ球活性化物質を含むワクチン組成物を指向する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワクチンの効能を改良する新規なワクチンアジュバントを指向する。更に具体的には、本発明は、抗原特異的免疫学的応答を促進しそして増強するためのワクチンアジュバントとしてのγδTリンパ球活性化物質の使用およびγδTリンパ球活性化物質を含むワクチン組成物を指向する。
【0002】
発明の背景
γδT細胞活性化物質を使用する前臨床的証拠
近年、主流のT細胞、B細胞およびNK細胞とは異なる新規なリンパ球様系統(lymphoid lineage)のγδT細胞が同定された。大部分の成人は、TCR可変領域(Vγ9およびVδ2)の特定の組み合わせを有する主要γδT細胞サブセットを共有し、これは、末梢血γδT細胞の60〜95%に相当しそしてこの部位における全T細胞の1/20以下に相当する(Bottino et al., J Exp Med. 1988 Aug1; 168(2): 491-505, Davodeau et al., Science. 1993 Jun 18; 260(5115): 1800-2)。Vγ9Vδ2T細胞およびNK細胞は、いくつかの表現型特徴(例えばいわゆるナチュラルキラー受容体の頻繁な発現)およびエフェクター特性(NK様細胞溶解活性、前炎症性(pro-inflammatory)サイトカインの放出)を共有しており、これは、これらの2つのリンパ球様サブセットが同様な生理学的役割を演じることを示唆している。インビボVγ9Vδ2T細胞は、種々の病態生理学的状況において、特に(i)細胞内バクテリアが関与する感染過程(結核、マラリア、野兎病等)および寄生虫が関与する感染過程期間中(Ito et al., Chest. 1992; 102(1): 195-7, Modlin et al., Nature. 1989; 339(6225): 544-8)、(ii)自己免疫疾患(概論については、Wen and Hayday, Immunol Res. 1997; 16(3): 229-41, ;およびHayday and Geng, Curr Opin Immunol. 1997; 9(6): 884-9.)においておよび(iii)いくつかの癌において増大する(expanded)。さらに、Vγ9Vδ2T細胞クローンは、インビトロで抗腫瘍および抗バクテリア反応性の両方を示す。特にそれらは、種々の腫瘍細胞系を溶解する(Kobayashi et al., Cancer Immunol Immnother. 2001; 50(3): 115-24)。これらの観察は、腫瘍監視においてVγ9Vδ2T細胞の重要な役割を示唆する。Vγ9Vδ2T細胞は、樹状細胞(DC)の成熟に関与していることも報告された。活性化されたγδT細胞は、DCによるIL−12(p40)およびIL−12(p70)の産生、IFNγ産生を伴ふ効果を誘導したが、これはγδT細胞活性化が、DC成熟およびそれにより微生物による感染に対する高められたαβT細胞応答をもたらしうることを示唆している(Ismaili et al., Clin Immunol. 2002; 103(3Pt 1): 296-302)。
【0003】
Vγ9Vδ2 T細胞は、広範囲のバクテリアおよび細胞内寄生虫により産生される小非ペプチドリン酸化抗原(「ホスホ抗原」("phosphoantigens")として呼ばれる)によっても活性化される(Constant 1994)。これらの化合物およびそれらの誘導体(2003年12月2日に出願された同時係属特許出願番号PCT/IB2003/006375およびヨーロツパ特許公開番号EP B 1109817に記載されたホスホハロヒドリン、PHD)は、発達中のVγ9Vδ2 T細胞の特異的モジュレーションを指向する最初の免疫治療分子を表し、そして癌の処置を意図する。より最近では、Hints et al.((2001). FEBS Lett. 509(2): 317-22)に記載された非メバロン酸(MEP)経路のlytB成分を欠いているE.coli細胞からの(E)−4−ヒドロキシ−3−メチルブト−2−エニル ジホスフェート(HDMAPP)の単離以来、インビトロγδT細胞モジュレーション活性を有する他の化合物が入手可能であった。γδT細胞活性をモジュレーションすることができると報告された更なる範囲のホスホネート化合物がPCT公開番号WO 03/050128に記載されている。
【0004】
上記観察は、感染作用物質に対する防御免疫におけるVγ9Vδ2 T細胞の関与を示唆している。しかしながら、今日まで、ワクチンをベースとするアプローチにおいて疾患の処置又は予防にこれらの観察を適用するための有効な手段又は適用する試みはなかった。
【0005】
ワクチンアジュバント
ワクチンは、感染疾患の予防のための成功した高度に許容される方法であることが証明された。それらは費用効果がありそして標的病原体に対して抗生物質耐性を誘導しないか又は宿主中に存在する普通の叢(flora)に影響を与えない。抗ウイルス免疫を誘導するときなどの多くの場合に、実行可能な治療又は改善処置が入手できない疾患を予防することができる。
【0006】
ワクチンは、免疫系をトリガーして、非感染状態又は非病原性状態にある身体中に導入される作用物質または抗原、典型的には感染性生物またはその一部に対する応答を準備する(mount)ことにより機能する。一旦免疫系が「初回抗原刺激されるか(primed)」または生物に対して感作されると、感染性病原体としてのこの生物に免疫系が後に暴露されると、病原体が宿主生物に疾患症状を引き起こすのに十分増殖しそして感染することができる前に、病原体を殺す迅速且つ強固な免疫応答をもたらす。
【0007】
免疫系を初回抗原刺激するために使用される作用物質または抗原は、弱毒化された生物として知られているより少ない感染力の状態にある完全な生物であることができるか、またはある場合には、生物の種々の構成成分を表す炭水化物、タンパク質またはペプチドなどの生物の成分であることができる。
【0008】
多くの場合に、ワクチン中に存在する抗原に対する免疫応答を増強させて、ワクチンを有効にする、即ち、免疫を与えるのに十分な程度に免疫系を刺激することが必要である。単独で投与される多くのタンパク質および大部分のペプチドおよび炭水化物抗原は、免疫を与えるのに十分な抗体応答を誘発しない。このような抗原は、抗原が異物として認識されそして免疫応答を誘発するような方法で、免疫系に提示されることが必要である。このために、抗原を固定化しそして免疫応答を刺激する添加物(アジュバント)が考案された。
【0009】
アジュバントは、構造的に不均質な化合物の群において見出されうる(Gupta et al., 1993, Vaccine, 1 1: 293-306)。古典的に認識されたアジュバントの例は、油乳液(例えば、フロイントアジュバント)、サポニン、アルミニウムもしくはカルシウム塩(例えば、明礬)、非イオンブロックポリマー界面活性剤、リポ多糖(LPS)、マイコバクテリア、破傷風トキソイド、および多くの他のものを含む。理論的には、免疫学的事象のカスケードにおける特定の状況を促進又は増幅して、最終的により顕著な免疫学的応答をもたらすことができる各分子または物質は、アジュバントとして定義することができる。
【0010】
一般に、ワクチン処方におけるアジュバントの使用によって、(1)ワクチンのために適切なまたは望ましい免疫応答を指向しそして最適化することができ、(2)ワクチンの粘膜送達、即ち、頬側上皮又は胃上皮または肺上皮などの粘膜表面および関連したリンパ様組織とワクチンを接触させる投与を可能とし、(3)細胞性免疫応答を促進し、(4)より弱い免疫原、例えば、高度に精製された又は組換え抗原の免疫原性を増強させ、(5)防御免疫を与えるのに必要な抗原の量又は免疫感作の頻度を減少させ、そして(6)減少したもしくは弱化した免疫応答を有する個体、例えば、新生児、老齢者および免疫が弱っているワクチンレシピエントにおけるワクチンの有効性を改善することができる。
【0011】
それらの作用様式は殆ど知られていないけれども、現在、アジュバントはいくつかの手段のいずれかにより免疫応答を増大させると考えられている。あるものは、抗原プロセッシング細胞(APC)への抗原の提示を助ける。水中油乳液、油中水乳液、リポソームおよびマイクロビーズは、各々APCに抗原を提示するのを助ける。小さな抗原またはハプテンは、しばしばより大きな免疫原性タンパク質または多糖に連結されてAPCによる認識を促進する。あるアジュバントは、身体が免疫応答を準備する機会を持つまで、抗原を所定の場所に保持する貯蔵所効果を有する。アジュバントは、抗原の生物学的又は免疫学的半減期を増加させることもでき、自然免疫系からの補助細胞上に局在化される病原体認識受容体(PRRs)による微生物由来の抗原の改良された認識をもたらす微生物構造を模倣することができ、免疫応答を開始するのに役立つストレスを受けたまたは損傷した細胞からの危険誘導シグナルを模倣することができ、免疫調節性サイトカインの産生を誘導しまたは免疫応答を免疫系の特異サブセットに偏らせる(bias)(例えば、Th1−またはTh2−分極した応答を発生する)こともできる。アジュバント作用の機構はPCT公開番号WO 03/009812に概説されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0012】
最近の観察は、内因的に産生されたサイトカインは、従来のアジュバントにより誘発された必須の伝達シグナルとして作用することを強く示唆している。サイトカインネットワークの冗長性(redundancy)は、特定のアジュバントの活性を1種または複数のサイトカインに帰することを困難にする。免疫原性にとって決定的なサイトカインは、前炎症性(proinflammatory)(タイプI)物質:抗原提示に影響を与える、インターフェロン(IFN)、腫瘍壊死因子(TNF)−α、インターロイキン(IL)−1、IL−6、IL−12、IL−15、IL−18を含むことができる。他のサイトカインは、プロトタイプとしてIL−2、IL−4およびIFN−γを含めて、TおよびB細胞のクローン増大および分化期間中により下流で作用することができる(Brewer et al., 1996, Eur. J. Immunol., 26: 2062-2066; Smith et al., 1998, Immunology, 93: 556562)。IFNγの誘導および遅延型過敏症により免疫応答を増強するアジュバントは、補体媒介溶解および抗体依存性細胞媒介細胞傷害性エフェクター機構において最も活性であるIgGサブクラスの産生(例えばマウスにおけるIgG2aおよびヒトにおけるIgG1)も誘発する(Allison, Dev. Biol. Stand., 1998, 92: 311; Unkeless, Annu. Rev. Immunol., 1998, 6: 251-81; Phillips et al., Vaccine, 1992, 10: 151-8)。
【0013】
アジュバントは、1つより多くの機能を行うことができる。異なるアジュバントは種々の作用機序を有することができるので、特定のワクチンと共に使用するためのそれらの選択は、使用されるべき投与経路、所望の免疫応答の型(例えば、抗体媒介、細胞媒介、粘膜等)および一次抗原の特定の機能不全に基づくことができる。
【0014】
アジュバントをワクチン処方剤に配合して免疫原性を増強させることの利益は、これらの作用物質が不利な局所的および/または全身性反応を誘導する危険に対して比較考慮されなければならない。局所的な不利な反応は、注射部位における局所的炎症、および稀には、肉芽腫または無菌性膿瘍形成の誘導を含む。実験動物で観察されたアジュバントに対する全身性反応は、倦怠感、熱、アジュバント関節炎および前ぶどう膜炎を含む(Allison et al., Mol. Immunol., 1991, 28: 279-84; Waters et al., Infect. Immun., 1986, 51: 816-25)。このような反応は、しばしば、アジュバントと抗原自体との相互作用により引き起こされるか、またはアジュバントが産生する特定の抗原に対する応答のタイプまたはアジュバントが誘導するサイトカインプロフィルによることある。従って、多くの効力のある免疫アジュバント、例えば完全フロイントアジュバントまたは不完全フロイントアジュバントは、毒性であり、従ってヒト予防接種ではなくて動物研究の目的でのみ有用である。従って、入手可能な免疫アジュバントの範囲が限定されているので、新規な且つ改良された免疫アジュバントに対する当技術分野における要求がある。
【0015】
発明の要約
本発明者によりなされた観察は、式Iの化合物により誘導されるがγδ T細胞応答は、種々の感染および種々の形態の癌との闘いに関与する免疫応答を増強させるかまたは増大させるのに寄与することができるという仮定に導いた。本発明者および共同研究者は、シノモルグスサル(cynomolgus monkeys)へのHDMAPPの投与は、ワクチンアジュバント適用における使用のために適当な非常に低い用量でγδ T細胞の強い活性化を急速にもたらすことを最近観察した。さらに、γδ T細胞の再刺激を観察することにより、本発明者および共同研究者は、本化合物が、繰り返し投与して一貫した免疫増強効果および免疫増大効果を生じさせることができるということを提供する。後者は、多くのワクチンは1回より多くの投与を必要とする、例えば、初回抗原刺激用量(priming dose)および追加抗原刺激用量(boosting dose)または複数の追加抗原刺激用量を必要とするので重要である(2003年12月2日に出願された同時係属PCT特許出願番号PCT/IB2003/006375参照、その開示は参照により本明細書に組み込まれる)。重要なことに、その免疫応答を刺激することができる能力に加えて、本発明者は、式Iの化合物がげっ歯類およびサルにおいて毒性を誘導しないことを証明した。最後に、多くの他の新規に開発されたアジュバントと違って(下記参照)、HDMAPPおよび関連した式Iの化合物は、実施例に示された合理的な収率および効率で合成により製造することができる。これらのファクターのすべては、CTLまたは体液性免疫応答を刺激することができる能力と組み合わさって、式Iの化合物を望ましいアジュバントにする。
【0016】
従って、本発明は、(i)抗原を含む組成物および(ii)式Iの化合物を含むアジュバントによる哺乳動物の共同免疫感作(conjoint immunization)を含む、哺乳動物、特にヒトにおける抗原に対する免疫応答を増強および/又は増大させるための方法および組成物を開示する。好ましくは、抗原を含む該組成物は、死滅した、不活性化された又は弱毒化された病原体、微生物または寄生虫を含む。他の局面では、抗原を含む該組成物は、好ましくは、濃縮又は精製されたポリペプチド、脂質、多糖、糖タンパク質、糖脂質または核酸抗原を含む。好ましくは、該組成物は、少なくとも1、2、3、4、5、10または15の異なる抗原、例えば、少なくとも1、2、3、4、5、10または15の異なるポリペプチドまたはこのようなペプチドをコードする核酸を含む。
【0017】
アジュバント組成物は、有効量の式I、好ましくは式II又はIIIのγδ T細胞活性化物質を含み、該量は、少なくとも1つの抗原に対するアジュバント組成物の、体液性応答の誘発、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答の誘発、または体液性応答およびCTL応答の両方の誘発を可能とする有効量である。好ましくは、式I、好ましくは式IIまたはIIIのγδ T細胞活性化物質は、抗原がアジュバントの不存在下に投与されるときに生じる免疫学的効果よりは、抗原と一緒に投与されるとき、体液性応答、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答、または体液性応答およびCTL応答の両方を誘発するのにより高い免疫学的効果を生じるのに有効な量で存在する。
【0018】
アジュバント媒介の免疫応答の増強および/または免疫応答の期間の延長は、下記の1つ以上を含むがそれらに限定はされない当技術分野で知られている任意の方法により評価することができる:(i)抗原のみによる免疫感作に応答して生じた抗体に対してアジュバント/抗原の組み合せによる免疫感作に応答して生じた抗体の数の増加;(ii)抗原またはアジュバントを認識するT細胞の数の増加;および(iii)1種以上のI型サイトカインのレベルの増加。
【0019】
組成物の抗原成分は、実質的に医学的または獣医学的関心のある任意の抗原、抗原決定基またはハプテンから選ぶことができ、特に免疫原性の増加が望まれるこれらの抗原について選ぶことができる。
【0020】
従って、本発明は、ワクチンアジュバントとして、式I、好ましくは式II又はIII、更に好ましくはHDMAPPまたはCHDMAPPのγδ T細胞活性化物質の使用に関する。本発明は、さらに、抗原および抗原の組み合わせおよび式I、好ましくは式IIまたはIII、さらに好ましくはHDMAPPまたはCHDMAPPのγδ T細胞活性化物質を含むワクチン組成物に関する。好ましくは、該組成物は、治療的有効量の抗原および免疫応答増強もしくは免疫応答増大量のγδ T細胞活性化物質を含む。好ましくは、該ワクチン組成物は、微生物感染を予防する。該微生物感染は、ウイルス、真菌、寄生虫、酵母、バクテリアおよび原生動物からなる群より選ばれる微生物により引き起こされる。特定の態様では、該ワクチン組成物は、BCGワクチン組成物である。または、該ワクチン組成物は腫瘍を予防するかまたは腫瘍に対する処置である。
【0021】
本発明は、さらに、本発明に従うワクチン組成物を含有する、さらに詳しくは、抗原または抗原の組み合わせおよび式I、好ましくは式IIまたはIII、更に好ましくはHDMAPPまたはCHDMAPPのγδ T細胞活性化物質を含む適当な容器を含むワクチンキットに関する。場合により、該ワクチンは、2つの別々の適当な容器を含むことができ、その1つは抗原または抗原の組み合わせを含有し、他の容器は式I、好ましくは式IIまたはIII、更に好ましくはHDMAPPまたはCHDMAPPのγδ T細胞活性化物質を含有する。場合により、該容器は、注射器であることができる。または、該ワクチンキットは1個または2個の容器および注射器を含む。
【0022】
本発明は、被検体におけるワクチンの効能を改良する方法または疾患、更に詳しくは微生物感染に対して被検体を免疫感作する方法であって、抗原または抗原の組み合わせを含む組成物を該被検体に投与する段階、および式I、好ましくは式IIまたはIII、更に好ましくはHDMAPPまたはCHDMAPPのγδ T細胞活性化物質、更に詳しくは、免疫応答増強量のそれを該被検体に共同投与する段階を含む方法に関する。好ましくは、γδ T細胞活性化物質は、抗原を含む組成物と共同投与されるとき、γδ T細胞活性化物質の不存在下に抗原を含む該組成物で観察される免疫応答以上に免疫応答を増強するのに十分な量で投与される。好ましくは、抗原を含む該組成物は、死滅した、不活性化されたもしくは弱毒化された病原体、微生物または寄生虫を含む。他の局面では、抗原を含む該組成物は、好ましくは、濃縮もしくは精製されたポリペプチド、脂質、多糖、糖タンパク質、糖脂質または核酸抗原を含む。
【0023】
本発明は、被検体における疾患、更に詳しくは微生物感染に対して被検体を免疫感作させる方法であって、該被検体に、(i)抗原を含む組成物および(ii)式I、好ましくは式IIまたはIII、さらに好ましくはHDMAPPまたはCHDMAPPのγδ T細胞活性化物質を投与することを含む方法にも関する。好ましくは、γδ T細胞活性化物質は免疫応答増強量で投与される。好ましくは、γδ T細胞活性化物質および抗原を含む組成物は、治療的有効量で単一ワクチン組成物として投与される。
【0024】
好ましくは、該γδ T細胞活性化物質は、治療的に許容できる担体と一緒である。第1の局面では、該抗原または抗原の組み合わせおよび該γδ T細胞活性化物質の該投与は、同時である。第2の局面では、該抗原または抗原の組み合わせおよび該γδ T細胞活性化物質の該投与は逐次的である。さらに詳しくは、該γδ T細胞活性化物質は、免疫感作の目的で、被検体に抗原又は抗原の組み合わせの投与の前または投与と同時にまたは投与の後に投与することができる。好ましくは、該抗原または抗原の組み合わせは、微生物抗原、好ましくは、ウイルス、バクテリア、真菌、原生動物、酵母または寄生虫抗原である。好ましい態様では、該抗原はMycobacterium bovisの抗原である。場合により、該抗原または抗原の組み合わせは腫瘍抗原である。
【0025】
詳細な説明
免疫系は、2つの一般的系、「先天性」または「自然」免疫系と「獲得」または「適応」免疫系に分類される。先天性免疫系は、最初に感染を制御下に保ち、適応免疫系が適切な応答を発生するための時間を可能とすると考えられる。最近の研究は、先天性免疫系の種々の成分が、抗原特異的BおよびTリンパ球を含む適応免疫系の成分をトリガーしそして増大させることを示唆した(Fearon and Locksley, supra; Kos, 1998, Immmunol. Res., 17: 303; Romagnani, 1992, Immunol. Today, 13: 379; Bancherean and Steinman, 1988, Nature, 392: 245)。
【0026】
用語「先天性免疫又は「自然免疫」は、抗原との以前の接触により影響を受けない先天性の免疫応答を指す。マクロファージおよび樹状細胞(CD)を含む先天性免疫系の細胞は、異物抗原をパターン認識受容体により取り上げ、これらの抗原のペプチド断片をMHCクラスIおよびクラスII分子と一緒にしそして、それぞれナイーブCD8+およびCD4+ T細胞を刺激する(Banchereau and Steinman, supra; Holmskov et al., 1994, Immunol. Today, 15: 67; Ulevitch and Tobias, 1995, Annu. Rev/ Immunol., 13: 437)。専門の抗原提示細胞(APC)は、これらのT細胞と交信してナイーブCD4+ T細胞を、それぞれ細胞性免疫および体液性免疫を媒介するTヘルパー1(Th1)またはTヘルパー2(Th2)リンパ球への分化をもたらす(Trinchieri, 1995, Annu. Rev. Immunol., 13: 251; Howard and O'Garra, 1992, Immunol. Today, 13: 198; Abbas et al., 1996, Nature, 383: 787; Okamura et al., 1998, Adv. Immunol., 70: 281; Mosmann and Sad, 1996, Immunol. Today, 17: 138; O'Garra, 1998, Immunity, 8: 275)。
【0027】
用語「獲得免疫」または「適応免疫」は、本明細書では、動物の生涯の間に確立され、誘導抗原に対して特異的でありそして該抗原に繰り返して遭遇すると増強される応答により特徴付けられる能動的または受動的体液性免疫又は細胞性免疫を意味するのに使用される。適応免疫系のTリンパ球の重要な特徴は、細胞表面にMHC分子により提示される僅かな濃度の病原体由来のペプチドを検出することができるそれらの能力である。
【0028】
予防接種により誘導される防御免疫は、病原体に抵抗するかまたは病原体を排除するための適当な免疫応答を誘発するワクチンの能力に依存する。病原体に依存して、これは、細胞性免疫応答および/または体液性免疫応答を必要としうる。免疫感作されるべき生物においてより強い免疫応答を得るために抗原の免疫原性効能を増強し、特定のタイプの応答に向けて免疫応答を方向付けそして抗原を有する作用物質に対する宿主の抵抗を強化することがしばしば望ましい。抗原と共に投与されて抗原の免疫原性を増強する物質は、アジュバントとして知られている。
【0029】
本発明の意味の範囲内で、用語「共同投与(conjoint administration)」は、免疫アジュバントと抗原を1つの組成物において同時に投与すること、または異なる組成物において同時に投与することまたは逐次に投与することを指す。しかしながら、逐次の投与が「共同」とみなされるためには、抗原とアジュバントは、アジュバントが抗原に対する免疫応答を依然として増大させる時間間隔内で別々に投与されなければならない。例えば、抗原がポリペプチドであるときは、抗原とアジュバントは同じ日に(例えば互いに24時間以内に)、好ましくは互いに1時間以内に、最も好ましくは同時に投与される。しかしながら、核酸が被検体に送達されそしてポリペプチド抗原が被検体細胞内で発現されるときは、アジュバントは核酸投与の24時間以内に、好ましくは6時間以内に投与される。
【0030】
本明細書で使用された用語「免疫原性」は、作用物質が体液性免疫応答または細胞性免疫応答、およびその両方を誘発することができることを意味する。免疫原性物質は抗原性でもある。免疫原性組成物は、免疫系を有する動物に投与されるとき、体液性または細胞性免疫応答を誘発する組成物である。
【0031】
用語「抗原」は、免疫系を有する宿主、動物またはヒトに導入されるとき(直接または例えばDNAワクチンにおける如く発現により)、宿主の免疫系により認識されそして免疫応答を誘発することができる任意の作用物質(例えば、タンパク質、ペプチド、脂質、多糖、糖タンパク質、糖脂質、核酸又は前記のいずれかの任意の組み合わせ)を指す。本明細書で定義された、抗原で誘導される免疫応答は、体液性または細胞性またはその両方であることができる。作用物質は、免疫グロブリン(抗体)またはT細胞抗原受容体(TCR)などの免疫系の抗原認識分子と特異的に相互作用することができるか又は特異的に相互作用することができる成分を含むとき、「抗原性」と呼ばれる。好ましい抗原の例は、「表面抗原」、即ち、病原体の表面、感染した細胞の表面または腫瘍細胞の表面に自然に発現された「表面抗原」である。抗原性の分子は、それ自体免疫原性である、即ち、アジュバントまたは担体なしで免疫応答を誘発することができる必要はない。抗原は、「種特異的」であることができ、これは、特定の種にのみ存在するかまたは特定の種に由来する抗原を指す。
【0032】
用語「エピトープ」または「抗原決定基」は、B細胞、又はT細胞のいずれか又はその両方により認識される抗原の任意の部分を指す。好ましくは、このようなエピトープと免疫グロブリン(抗体)またはT細胞抗原受容体(TCR)の抗原認識部位との相互作用は、抗原特異的免疫応答の誘導をもたらした。T細胞は、タンパク質がより小さいペプチドに開裂されそして他の細胞の表面に位置した「主要組織適合性遺伝子複合体(MHC)」と呼ばれる複合体中に存在するときのみ、タンパク質を認識する。MHC複合体クラスIおよびクラスIIの2つのクラスがありそして各クラスは多くの異なる対立遺伝子から構成される。クラスI MHC複合体は、実質的にすべての細胞上に見出されそして細胞の内側で産生されたタンパク質からのペプチドを提示する。従って、クラスI MHC複合体は、ウイルスにより感染された細胞または癌遺伝子の発現の結果として癌性となった細胞を死滅させるために有用である。その表面にCD8と呼ばれるタンパク質を有するT細胞は、T細胞受容体(TCR)を介してMHCクラスI/ペプチド複合体に特異的に結合する。これは、細胞溶解性エフェクター活性をもたらす。クラスII MHC複合体は、抗原提示細胞(APC)上にのみ見出されそしてAPCによりエンドサイトーシスされた循環している病原体からのペプチドを提示するのに使用される。CD4と呼ばれるタンパク質を有するT細胞は、TCRを介してMHCクラスII/ペプチド複合体に結合する。これは免疫応答を刺激する特異的サイトカインの合成をもたらす。MHCクラスI提示を介して免疫系により効果的に認識されるためには、抗原ポリペプチドは少なくとも約8〜10個のアミノ酸のエピトープを含有しなければならず、一方MHCクラスII提示を介して免疫系により効果的に認識されるためには、抗原ポリペプチドは少なくとも約13〜25個のアミノ酸のエピトープを含有しなければならない。例えば、Fundamental Immunology, 3rd Edition, W.E.Paul ed., 1999, Lippincott Raven Publ参照。
【0033】
「ワクチン」は、レシピエントにおける防御免疫又は防御免疫応答を誘発するのに使用することができる免疫原性または抗原性組成物である。防御免疫は、ウイルス、真菌、寄生虫、酵母、バクテリアおよび原生動物などの病原体に対するものであることができる。更に詳しくは、該組成物は、部分的であれ完全であれ、感染に対する防御を誘発することができる。ワクチンは、個体の処置にも有用であり得、この場合にそれは治療ワクチンと呼ばれる。該ワクチン組成物は、予防的および治療的ワクチン組成物を含むことができる。用語「DNAワクチン」は、当技術分野の非公式用語であり、本明細書では、組換えベクターにより送達されるワクチンを表すために使用される。本明細書で使用される、替わりのそして更に説明的な用語は、「ベクターワクチン」である(いくらかの潜在力のあるベクター、例えばレトロウイルスおよびレンチウイルスはRNAウイルスでありそしてある場合にはDNAの代わりに非ウイルスRNAがベクターにより細胞に送達されるので)。一般に、ベクターはインビボ投与されるが、形質導入された細胞のインビボ投与を伴う、適当な抗原提示細胞、例えば樹状細胞(DC)のエキスビボ(ex vivo)形質導入も意図する。用語「処置する」は、本明細書では、被検体の疾患の少なくとも1つの症状を軽減するかまたは緩和することを意味するために使用される。本発明の意味の範囲内では、用語「処置する」は、発症前(prepatency)、即ち感染と疾患の臨床的徴候との間の期間を長くすることを意味することもある。好ましくは、疾患は、感染性疾患(例えば、ウイルス、バクテリア、寄生虫または真菌)または悪性疾患(例えば、固形性もしくは血液腫瘍、例えば肉腫、癌腫、神経膠腫、芽腫、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、リンパ腫、白血病、黒色腫等)である。
【0034】
用語「防御する」は、本明細書では、被検体における疾患の発生または持続を予防又は処置するかまたは適当にはその両方を行うことを意味するために使用される。本発明の意味の範囲内では、疾患は、感染(例えば、ウイルス、バクテリア、寄生虫または真菌)または悪性疾患(例えば、固形性もしくは血液腫瘍、例えば肉腫、癌腫、神経膠腫、芽腫、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、リンパ腫、白血病、黒色腫等)からなる群より選ばれる。例えば、HDMAPP化合物又は式Iの他の化合物を含むアジュバントと共同した腫瘍特異抗原の治療投与は、抗腫瘍免疫応答を増強して、腫瘍成長および転移の減速または腫瘍退行さえももたらすことができる。
【0035】
用語「防御免疫」は、前記抗原の不活性化および/または前記抗原のロード(load)の減少をもたらす、並びに同じまたは関連した抗原に繰り返して暴露されるときの疾患の発生を予防または遅延させる長く続く免疫(例えば、抗体の産生により獲得される)の発生をもたらす、宿主動物における免疫応答(能動的/獲得された又は受動的/自然の、または両方)を指す。「防御免疫応答」は、例えば、病原体または感染した細胞のロードを排除または減少させる(または感染の任意の他の測定可能な緩和を生じさせる)のに有効な、あるいは免疫感作された(予防接種された)被検体における腫瘍の苦しみを減少させるのに有効な、体液性(抗体)免疫または細胞性免疫またはその両方を含む。本発明の意味の範囲内では、防御免疫は部分的であってもよい。
【0036】
本明細書で使用された、用語「免疫応答を増大させる」は、免疫応答を増強することまたは免疫応答の期間を延長することまたはその両方を意味する。作用物質(例えば、アジュバント)の性質に言及するとき、用語「免疫原性を増大させることができる」は、抗原の免疫原性を増強することができる能力または抗原に対する免疫応答の期間を延長することができる能力又はその両方を指す。
【0037】
本発明の意味の範囲内の句「免疫応答を増強する」は、所与の抗原に対する免疫反応性の規模および/または有効性を増加させる性質または過程を指し、その際該免疫反応性は体液性免疫または細胞性免疫またはその両方である。抗原特異的免疫反応性の任意の測定可能なパラメータ(例えば抗体力価、T細胞産生)が少なくとも2倍、好ましくは10倍、最も好ましくは30倍増加するならば、免疫応答は増強されると考えられる。
【0038】
用量または量に適用される用語「治療的に有効な」は、投与を必要としている哺乳動物に投与すると所望の活性をもたらすのに十分な化合物または医薬組成物またはワクチンのその量を指す。アジュバント含有組成物および抗原含有組成物またはワクチンに関して本明細書で使用される、用語「治療的に有効な量/用量」は、用語「免疫原性的に有効な量/用量」と交換可能に使用され、そして哺乳動物に投与されると有効な免疫応答を生じるのに十分な化合物(例えば、γδ T細胞活性化化合物を含む抗原および/またはアジュバント)または医薬組成物またはワクチンの量/用量を指す。
【0039】
本発明の組成物に関して使用される句「薬学的に許容される」は、ヒトに投与されるとき、生理学的に許容されそして典型的には不適当な反応を生じないような組成物の分子化合物の実体および他の成分を指す。好ましくは、本明細書で使用される、用語「薬学的に許容される」は、連邦または州政府の取り締まり機関により認証された又はU.S薬局方または哺乳動物、更に詳しくはヒトに使用するための他の一般に認められた薬局方に記載された、を意味する。
【0040】
本発明の医薬組成物またはワクチン組成物に適用される用語「担体」は、化合物(例えば抗原および/またはグリコシルセラミドを含むアジュバント)と一緒に投与される希釈剤、賦形剤、またはビヒクルを指す。このような薬学的担体は、無菌の液体、例えば水および、石油、動物、植物または合成起源の油を含む油、例えば落花生油、大豆油、鉱油、ごま油、等であることができる。水また水性溶液、塩溶液および水性デキストロースおよびグリセロール溶液は、好ましくは、担体として、特に注射液のための担体として使用される。適当な薬学的担体は、E.W.Martin, 18th editionにより"Remington's Pharmaceutical Sciences" に記載されている。
【0041】
用語「ネイティブ抗体」(native antibodies)または「免疫グロブリン」は、2つの同じ軽(L)鎖および2つの同じ重(H)鎖からなる約150,000ダルトンの通常ヘテロテトラマー糖タンパク質を指す。各軽鎖は、1つの共有ジスルフィド結合により重鎖に連結されており、ジスルフィド結合の数は、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間で変わる。各重鎖および軽鎖は、規則的に間隔を置いて配置された鎖内ジスルフィド橋も有する。各重鎖は、一端に可変ドメイン(VL)を、続いて多数の不変ドメインを有する。各軽鎖は、一端に可変ドメイン(VH)およびその他端に不変ドメインを有し;軽鎖の不変ドメインは重鎖の第一不変ドメインと整列しており、そして軽鎖可変ドメインは重鎖の可変ドメインと整列している。特定のアミノ酸残基は、軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインとの界面を形成すると考えられる(Clothia et al., J Mo. Biol., 186: 651-663, 1985; Novotny and Haber, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82: 4592-4596, 1985)。
【0042】
用語「抗体」又は「Ab」は、最も広い意味で使用されそして特定的にはネイティブ抗体のみならず単一のモノクローナル抗体(アゴニストおよびアンタゴニスト抗体を含む)、ポリエピトープ特異性を有する抗体組成物、および抗体断片が所望の生物学的活性を示す限り、抗体断片(例えばFab、F(ab’)2、scFvおよびFv)を包含する。
【0043】
「サイトカイン」は、細胞間メディエータとして他の細胞集団に対して作用する1つの細胞集団により放出されるタンパク質の群に対する包括的用語である。このようなサイトカインの例は、リンホカイン、モノカインおよび伝統的ポリペプチドホルモンである。サイトカインに包含されるのは、インターフェロン(IFN、特にIFNγ)、インターロイキン(IL、特にIL−1、IL−2、IL−4、IL−10、IL−12)、コロニー刺激因子(CSF)、トロンボポエチン(TPO)、エリスロポエチン(EPO)、白血病抑制因子(LIF)、kitリガンド、成長ホルモン(GH)、インスリン様成長因子(IGF)、副甲状腺ホルモン、チロキシン、インスリン、レラキシン、濾胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、リューティナイジングホルモン(leutinizing holmone)(LH)、造血成長因子、肝臓成長因子、繊維芽細胞成長因子(FGF)、プロラクチン、胎盤性ラクトゲン、腫瘍壊死因子(TNF)、ミュラー管抑制物質、マウス性腺刺激ホルモン関連ペプチド、インヒビン、アクチビン、血管内皮増殖因子(VEGF)、インテグリン、神経成長因子(NGF)、血小板増殖因子、トランスフォーミング増殖因子(TGF)、骨誘導因子(osteoinductive factors)等である。
【0044】
本明細書で使用された用語「被検体」は、免疫系を有する動物、好ましくは哺乳動物または更に好ましくは霊長類を指す。好ましくは、この用語はヒトを指す。
【0045】
用語「約」は、通常、所与の値又は範囲の20%以内、更に好ましくは10%以内、最も好ましくは5%以内を意味する。または、特に生物学的系では(例えば、免疫応答を測定する場合に)、用語「約」は、約ログ(即ち、大きさのオーダー)の範囲内、好ましくは所与の値の2の係数以内を意味する。
【0046】
用語「ベクター」、「クローニングベクター」および「発現ベクター」は、DNAまたはRNA配列(例えば、異物遺伝子)を宿主細胞に導入して、宿主を形質変換しそして導入された配列の発現(例えば、転写および/または翻訳)を促進するすることができるビヒクルを意味する。ベクターは、プラスミド、ファージ、ウイルス等を含む。
【0047】
本発明に従えば、当技術分野の熟練の範囲内の慣用の分子生物学、微生物学および組換えDNA技術が使用されうる。このような技術は、周知でありそして文献で完全に説明される。例えば、Sambrook, Fritsch and Maniatis, Molecular Cloning: A laboratory Manual, Second Edition(1989)Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New york(本明細書では "Sambrook et al., 1989"); DNA Cloning: A Practical Approach, Volumes I and II(D.N.Glover ed, 1986); Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait ed.1984); Nucleic Acid Hybridization[B.D.Hams & S.J.Higgins eds.(1985)]; Transcription And Translation [B.D.Hames & S.J.Higgins, eds.(1984)]; Animal Cell Culture[R.I.Freshney, ed.(1986)]; Immobilized Cells And Enzymes[IRL Press, (1986)]; B.Perbal, A Practical Guide To Molecular Cloning(1984); F.M.Ausubel et al.(eds), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc.(1994)。
【0048】
「核酸分子」(または「核酸」)は、一本鎖形態又は二本鎖螺旋のいずれかのリボヌクレオシド(アデノシン、グアノシン、ウリジンまたはシチジン:「RNA分子」)またはデオキシリボヌクレオシド(デオキシアデノシン、デオキシグアノシン、デオキシチミジンもしくデオキシシチジン:「DNA分子」)またはその任意のホスホエステルアナログ、例えば、ホスホロチオエートおよびチオエステル、のホスフェートエステルポリマー形態を指す。オリゴヌクレオチド(100より少数のヌクレオチド構成単位を有する)またはポリヌクレオチドは、定義された用語ならびに二本鎖DNA−DNA、DNA−RNAおよびRNA−RNA螺旋内に含まれる。この用語は、例えば、とりわけ線状(例えば制限断片)または環状DNA分子、プラスミドおよび染色体に見いだされる二本鎖DNAを含む。特定の二本鎖DNA分子の構造を論じる際に、配列は、本明細書ではDNAの非転写鎖(即ち、mRNAに相同性の配列を有する鎖)に沿って5’から3’方向の配列のみを与える普通の約束に従って記載されうる。「組換えDNA分子」は、分子生物学的操作を受けたDNA分子である。
【0049】
本明細書で使用される用語「ポリペプチド」は、核酸によりコードされうる又は合成により製造されうるアミノ酸をベースとするポリマーを指す。ポリペプチドは、タンパク質、タンパク質断片、キメラタンパク質等であることができる。一般に、用語「タンパク質」は、細胞中の内在的に発現されるポリペプチドを指す。一般に特定のタンパク質または酵素をコードするDNA配列は、mRNAの対応する配列に「転写」される。mRNA配列は、タンパク質を形成するアミノ酸の配列に「翻訳」される。「アミノ酸配列」は、2つ以上のアミノ酸の任意の鎖である。用語「ペプチド」は、100より少数のアミノ酸成分単位を有するアミノ酸をベースとするポリマーについて通常使用されるが、これに対して用語「ポリペプチド」は、少なくとも100のこのような単位を有するポリマーのために取ってある。しかしながら、本明細書では、「ポリペプチド」は包括的な用語である。
【0050】
本明細書で使用される免疫原性組成物は、組成物を投与される哺乳動物において免疫応答を誘発する組成物である。誘発される免疫応答は、体液性であるかまたは細胞性であることができる。本明細書で使用されるワクチン組成物は、組成物を投与される哺乳動物における免疫応答を誘発し、そして組成物の抗原又は関連した生物によるその後のチャレンジまたは感染から哺乳動物を防御する組成物である。本明細書で使用される「防御」、例えばウイルスに対する防御は、組成物中の抗原または関連した生物、例えばウイルスにより引き起こされる疾患の発現に対して防御性である(部分的または完全に)哺乳動物(霊長類)における免疫応答の発生を指す。ウイルスにより引き起こされる疾患に対して防御されている脊椎動物は、免疫感作なしで起こるよりも少ない程度にウイルスで感染させることができ;ウイルスで感染されうるが、疾患症状を示さず;またはウイルスで感染されうるが、免疫感作なしに起こるよりも少ない疾患症状を示す。または、ウイルスにより引き起こされる疾患に対して防御されている脊椎動物は、ウイルスへの暴露にもかかわらず、ウイルスで全然感染されなくなることができる。
【0051】
アジュバント組成物、ワクチン組成物およびその使用
本発明は、式I、好ましくは式IIまたはIII、さらに好ましくはHDMAPPまたはCHDMAPPの少なくとも1種のγδ T細胞活性化物質および場合により薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤を含むワクチンまたはアジュバント組成物を提供する。
【0052】
本発明に従って使用することができる薬学的に許容される担体の例は、典型的には大きなゆっくりと代謝される高分子、例えばタンパク質、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマーアミノ酸、アミノ酸コポリマーおよび不活性ウイルス粒子を含む。ペプチドの安定剤としても作用する適当な担体の例は、薬学的等級のデキストロース、スクロース、ラクトース、トレハロース、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、デキストラン等を含むが、それに限定されるわけではない。他の適当な担体は、デンプン、セルロース、リン酸ナトリウムもしくはリン酸カルシウム、クエン酸、酒石酸、グリシン、高分子量ポリエチレングリコール(PEGs)およびその組み合わせを含むが、やはりそれらに限定されるわけではない。薬学的に許容される賦形剤、ビヒクルおよび補助物質の完全な論議は、REMINGTONS PHARMACEUTICAL SCIENCES(Mark Pub. Co., N. J. 1991)において入手可能であり、これは参照により本明細書に組み込まれる。好ましい態様では、薬学的担体は、脂質分散体の形態にあり、さらに好ましくは脂質分散体はリポソームからなる。このような担体は、当業者に周知である。薬学的に許容される賦形剤は、液体、例えば水、塩水、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸、グリセロールおよびエタノールを含むか、それらに限定されるわけではない。
【0053】
本発明は、ワクチンアジュバントとして、式I、好ましくは式IIまたはIII、更に好ましくはHDMAPPまたはCHDMAPPの少なくとも1種のγδ T細胞活性化物質を含む組成物の使用を包含する。本発明は、式I、好ましくは式IIまたはIII、さらに好ましくはHDMAPPまたはCHDMAPPの少なくとも1種のγδ T細胞活性化物質を含む組成物を含むそのままのワクチンアジュバントにも関する。
【0054】
更に詳しくは、本発明は、治療的に有効量のワクチンおよび免疫応答を増大させるのに十分なまたは好ましくは免疫応答を増強するのに十分な量の式I、好ましくは式IIまたはIII、さらに好ましくはHDMAPPまたはCHDMAPPの少なくとも1種のγδ T細胞活性化物質を含むワクチン組成物に関する。
【0055】
本発明のアジュバントは、抗原を含む薬学的組成物もしくはワクチン組成物の一部として又は抗原を含有する第二組成物と共同して投与される別々の処方剤として投与することができる。これらの組成物のいずれにおいても、式I、好ましくは式IIまたはIII、さらに好ましくはHDMAPPまたはCHDMAPPのγδ T細胞活性化物質は、他のアジュバントおよび/または賦形剤/担体と組み合わせることができる。これらの他のアジュバントは、油乳剤および乳化剤をベースとするアジュバント、例えば完全フロイントアジュバント、不完全フロイントアジュバント、MF59またはSAF;鉱物ゲル、例えば水酸化アルミニウム(明礬)リン酸アルミニウムもしくはリン酸カルシウム;微生物由来のアジュバント、例えばコレラ毒素(CT)、百日咳毒素、大腸菌熱不安定性毒素(LT)、突然変異体毒素(例えばLTK63またはLTR72)、Bacille Calmette Guerin(BCG)、Corynebacterium parvum、DNA CpGモチーフ、ムラミルジペプチドまたはモノホスホリル脂質A;粒子アジュバント、例えば免疫刺激性複合体(ISCOMs)、リポソーム、生物分解性ミクロスフェアまたはサポニン(例えばQS−21);合成アジュバント、例えば非イオンブロックコポリマー、ムラミルペプチドアナログ(例えば、N−アセチル−ムラミル−L−トレオニル−D−イソグルタミン[thrMDP]、N−アセチル−ノル−ムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン、N−アセチルムラミル−Lアラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−[1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシ−ホスホリルオキシ]−エチルアミン)、ポリホスファゼン、または合成ポリヌクレオチドおよび界面活性物質、例えばリソレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、炭化水素エマルション、またはキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)を含むが、それらに限定されるわけではない。他の好ましいアジュバントはサイトカインを含む。あるサイトカイン、例えばTRANCE、flt3LおよびCD40Lは、APCsの免疫刺激能力を増強する。単独でまたは組み合わせて使用することができるサイトカインの非限定的例は、インターロイキン2(IL−2)、幹細胞因子(SCF)、インターロイキン3(IL−3)、インターロイキン6(IL−6)、インターロイキン12(IL−12)、G−CSF、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、インターロイキン−1α(IL−1α)、インターロイキン11(IL−11)、MIP−1a、白血病抑制因子(LIP)、c−キット、リガンド、トロンボポエチン(TPO)、CD40リガンド(CD40L)、腫瘍壊死因子関連活性化誘導サイトカイン(TRANCE)およびflt3リガンド(flt3L)を含む。サイトカインは、例えばGenzyme、Genetech、AmgenおよびImmunexなどのいくつかの販売者から市販されている。好ましくは、これらの追加のアジュバントも、ヒトで使用するために薬学的に許容される。
【0056】
式Iのアジュバント化合物は、抗原の初回抗原刺激用量と共に投与することができる。次いで式Iアジュバント化合物は追加の抗原刺激用量と共に再び投与することができる。または、式Iのアジュバント化合物は、抗原の追加抗原刺激用量と共に投与することができる。他の局面では、式Iのアジュバント化合物は、抗原の追加抗原刺激用量と共に投与されるが、抗原の初回抗原刺激用量と共には投与されない。「初回抗原刺激用量(prime dose)」は、被検体に投与される抗原の最初の用量である。感染を有す被検体の場合に、初回抗原刺激用量は、感染性微生物への被検体の最初の暴露であることができ、従ってアジュバントは、追加抗原刺激用量と共に被検体に投与される。「追加抗原刺激用量(boost dose)」は、抗原に既に暴露された被検体に投与される抗原の第二又は第3などの用量である。ある場合には、アジュバントと共に投与される初回抗原刺激用量は、感染の危険のある被検体が感染されるのを予防するために追加抗原刺激用量が必要とされない程に有効である。
【0057】
ワクチン組成物は、好ましくは、組み合わせた使用、別々の使用又は逐次の使用のための1種又は複数の抗原(又は抗原分子)を含む医薬組成物である。本発明の開示全体にわたってさらに記載された抗原は、例えば、合成もしくは天然ペプチド、脂質、組換えポリペプチド、核酸、死滅され、不活性化されたまたは弱毒化された病原体、微生物または寄生虫の形態にあることができる。ワクチンは、例えば、濃縮されたもしくは精製された形態のタンパク質もしくはペプチドなどの抗原、または例えば、アデノウイルスベクター、シンドビスウイルスベクターもしくはポックスウイルスベクターなどのベクターにより送達される抗原であることができる。抗原は、MHCクラスIまたはMHCクラスII分子により免疫系に提示される全体のタンパク質または任意のエピトープ含有断片又はその部分、特にペプチドであることができる。例は、任意のウイルス抗原、バクテリア抗原、寄生虫抗原、腫瘍抗原等を含む。
【0058】
少なくとも6種の主要な型のワクチン:不活性化ワクチン、弱毒化ワクチン、トキソイド、抗原性抽出物(精製または部分的に精製された抗原)、合成ワクチンおよび遺伝子工学的に作成されたワクチンがある。従って、哺乳動物宿主は、不活性化もしくは弱毒化されたワクチンの使用によりポリオに対して予防接種(免疫感作)されることができ、これに対して、破傷風に対する予防接種(免疫感作)は破傷風トキソイドの使用による。微生物感染に対する予防接種は、不活性化された作用物質(例えば、百日咳ワクチンの場合には死滅したBordetella pertussis)、弱毒化された作用物質(例えば、結核ワクチンの場合にはBCG)、または精製された抗原(例えば、髄膜炎ワクチンの場合にNeisseria meninaitidisからの精製された多糖)の使用によることができる。腫瘍の成長または確立の予防は、精製もしくは部分的に精製された抗原ワクチンの使用により達成されうるかまたは腫瘍細胞自体の使用(弱毒化されたもしくは死滅した微生物ワクチンの使用に類似したプロトコールにおいて)により達成されうる。
【0059】
本発明により記載されたワクチン組成物は、異なる疾患に対してヒトまたは動物を免疫感作するのに使用することができる(アジュバント)。組成物を投与される生物、宿主または被検体は動物またはヒトであることを意図する。
【0060】
本発明に従うワクチン組成物は、BまたはTリンパ球発生および増殖の予防的または治療的刺激のために、全体的および/または特異的免疫再構成の増強のため、あるいは体液性および/または細胞性免疫応答の増強のために被検体において使用することもできる。例えば、ワクチン組成物は、免疫不全患者における日和見感染を予防または減少させるのに使用することができる。
【0061】
組成物を投与される被検体は、ナイーブであることができるかまたは最近感染もしくは疾患にかかっていてもよくまたは過去の感染または疾患状態から回復していてもよい。組成物は、1回より多く投与することができ、そして特定の態様では、少なくとも2回または3回投与することができる。ワクチン組成物の投与は、初回抗原刺激投与または追加の抗原刺激投与であることができる。
【0062】
組成物は、ヒトおよび動物に、経口的に、直腸に、非経口的に、(静脈内、筋肉内または皮下による)、槽内に(intracisternally)、膣内に、腹腔内に、局所的に(散剤、軟膏剤またはドロップ剤)、あるいは頬側もしくは鼻内噴霧により投与することができる。
【0063】
本発明は、治療的に有効量の式I、好ましくは式IIまたはIII、さらに好ましくはHDMAPPまたはCHDMAPPのγδ T細胞活性化物質を投与することを含む哺乳動物宿主におけるワクチン効能を改良する方法を指向する。好ましくは、該γδ T細胞活性化物質は、該γδ T細胞活性化物質および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物としてである。
【0064】
更に詳しくは、本発明は、被検体におけるワクチンの効能を改良する方法であって、
治療的に有効量のワクチンを該被検体に投与する段階;および
免疫応答増強量の式I、好ましくは式IIまたはIII、更に好ましくはHDMAPPまたはCHDMAPPのγδ T細胞活性化物質を該被検体に投与する段階、
を含む方法を指向する。
【0065】
好ましくは、1種または複数の抗原および式I、好ましくは式IIまたはIII、さらに好ましくはHDMAPPまたはCHDMAPPのγδ T細胞活性化物質を含むワクチン組成物は、同時に投与される。または、ワクチン組成物および式I、好ましくは式IIまたはIII、更に好ましくはHDMAPPまたはCHDMAPPのγδ T細胞活性化物質は逐次に投与される。好ましくは、抗原含有組成物およびγδ T細胞活性化物質は、互いに48時間以内に、好ましくは互いに24時間以内、12時間または6時間以内に投与される。
【0066】
本発明は、ワクチンに、効能改善量の式I、好ましくは式IIまたはIII、さらに好ましくはHDMAPPまたはCHDMAPPのγδ T細胞活性化物質を加えることを含むワクチンの効能を改良する方法にも関する。
【0067】
本発明は、Th1および/またはCTL応答の刺激が必要である疾患の処置および/または予防のための医薬の製造のための、式I、好ましくは式IIまたはIII、さらに好ましくは式IVまたはVのγδ T細胞活性化物質の使用に関する。好ましくは、該疾患は、癌、感染および自己免疫疾患からなる群より選ばれる。実際に、式I、好ましくは式IIまたはIII、さらに好ましくは式IVまたはVのγδ T細胞活性化物質は、インビボで樹状細胞成熟を誘発するためのアジュバントとして使用される。
【0068】
本発明の他の目的は、免疫応答を増強するかまたは増大させるための医薬組成物の製造のための、式I、好ましくは式IIまたはIII、さらに好ましくは式IVまたはVのγδ T細胞活性化物質の使用に関する。
【0069】
本発明の更なる特定の目的は、被検体における抗原特異的免疫応答を引き起こすかまたは増強させるかまたは増大させる方法であって、被検体に該抗原および式I、好ましくは式IIまたはIII、さらに好ましくは式IVまたはVのγδ T細胞活性化物質を含む組成物を投与することを含む方法に関する。組成物は、被検体において抗原特異的免疫応答を得るためおよび/または刺激するために、該抗原と同時に、該抗原の数日前に間は該抗原と逐次に投与することができる。
【0070】
微生物感染
好ましくは、本発明の該組成物は、微生物感染を予防する。該微生物感染は、ウイルス、真菌、酵母、バクテリアおよび原生動物からなる群より選ばれる微生物により引き起こされる。
【0071】
本明細書で使用される「微生物抗原」は、微生物の抗原でありそして感染性ウイルス、感染性バクテリア、感染性寄生虫および感染性真菌を含むが、それらに限定されるわけではない。このような抗原は、無傷の微生物ならびにその天然の単離物およびそれらの断片または誘導体ならびに天然の微生物抗原と同じであるかまたは天然の微生物抗原に類似した合成化合物も含みそしてその微生物に特異的な免疫応答を誘導する。化合物が天然微生物抗原に対する免疫応答(体液性および/または細胞性)を誘導するならば、化合物は天然の微生物抗原に類似している。大部分のこのような抗原は、当技術分野でルーチンに使用されそして当業者に周知である。他の例は、多糖抗原のペプチド模倣物である。
【0072】
ワクチンおよび抗原は、ヒトおよび非ヒト脊椎動物の両方の感染性ウイルスに由来することができ、レトロウイルス、RNAウイルスおよびDNAウイルスを含む。このグループのレトロウイルスは、単純レトロウイルスおよび複合レトロウイルスの両方を含む。単純なレトロウイルスは、B型レトロウイルス、C型レトロウイルスおよびD型レトロウイルスのサブグループを含む。B型レトロウイルスの例は、マウス哺乳動物腫瘍ウイルス(MMTV)である。C型レトロウイルスは、サブグループC型グループA(ラウス肉腫ウイルス(RSV)、ニワトリ白血病ウイルス(ALV)およびニワトリ骨髄芽球症ウイルス(AMV)を含む)、およびC型グループB(マウス白血病ウイルス(MLV)、ネコ白血病ウイルス(FeLV)、マウス肉腫ウイルス(MSV)、テナガザル白血病ウイルス(GALV)、脾臓壊死ウイルス(SNV)、細網内皮症ウイルス(RV)、およびサルサルコーマウイルス(SSV)である。D型レトロウイルスは、メイソン−ファイザーモンキーウイルス(MPMV)およびサルレトロウイルス型1(SRV−1)を含む。複合レトロウイルスは、レンチウイルス、T細胞白血病ウイルスおよびフォーミーウイルスのサブグループを含む。レンチウイルスは、HIV−1を含むが、HIV−2、SIV、ビスナウイルス、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)およびウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)も含む。T細胞白血病ウイルスは、HTLV−1、HTLV−II、サルT細胞白血病ウイルス(STLV)およびウシ白血病ウイルス(BLV)を含む。フォーミーウイルスは、ヒトフォーミーウイルス(HFV)、サルフォーミーウイルス(SFV)およびウシフォーミーウイルス(BFV)を含む。
【0073】
哺乳動物における抗原である他のRNAウルスの例は、下記のもの:レオウイルス科であって、オルソレオウイルス属(哺乳動物およびニワトリレトロウイルスの両方の多重血清型)、オルビウイルス属(ブルータングウイルス、Eugenangee virus、ケメロバウイルス、アフリカ馬疫ウイルス、およびコロラドダニ熱ウイルス)、ロタウイルス属(ヒトロタウイルス、ネブラスカ子ウシ下痢症ウイルス、マウスロタウイルス、サルロタウイルス、ウシもしくはヒツジロタウイルス、ニワトリロタウイルス)を含むレオウイルス科;ピコルナウイルス科であって、エンテロウイルス属(ポリオウイルス、コクサッキーウイルスAおよびB、腸内細胞変性性ヒトオーファン(ECHO)ウイルス、肝炎Aウイルス、サルエンテロウイルス、マウス脳髄膜炎(ME)ウイルス、ポリオウイルスムリス(Poliovirus muris)、ウシエンテロウイルス、ブタエンテロウイルス、カルジオウイルス属(脳心筋炎ウイルス(EMC)、メンゴウイルス)、ライノウイルス属(少なくとも113のサブタイプを含むヒトライノウイルス;他のライノウイルス)、アフトウイルス属(口蹄疫ウイルス(FMDV)を含むピコルナウイルス科;カリシウイルス科であって、ブタ水痘性ウイルス、サンミグエルアシカウイルス、ネコピコルナウイルスおよびノーウォークウイルスを含むカリシウイルス科;トガウイルス科であって、アルファウイルス属(東部ウマ脳炎ウイルス、セムリキ森林ウイルス、シンドビスウイルス、チクングニヤウイルス(Chikungunya virus)、オニョング−ニョングウイルス、ロス川ウイルス、ベネズエラウマ脳炎ウイルス、西部ウマ脳炎ウイルス)、フラビウイルス属(蚊媒介性黄熱ウイルス、デングウイルス、日本脳炎ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、マレー渓谷脳炎ウイルス、西ナイルウイルス、クンジンウイルス、セントラルヨーロピアンダニ媒介ウイルス、極東ダニ媒介ウイルス、キャサヌール森林ウイルス、跳躍病ウイルス、ポワサンウイルス、オムスク出血熱ウイルス)、ルビウイルス属(風疹ウイルス)、ペスチウイルス属(粘膜病ウイルス、ブタコレラウイルス、ボーダー病ウイルス)を含むトガウイルス科;ブンヤウイルス科であって、ブンヤウイルス属(ブンヤウエラおよび関連ウイルス、カリフォルニア脳炎グループウイルス(California encephalitis group viruses))、フレボウイルス属(シシリースナバエ熱ウイルス(Sandfly fever Sicilian virus)、リフト渓谷熱ウイルス)、ナイロウイルス属(クリミア−コンゴ出血熱ウイルス、ナイロビヒツジ病ウイルス)およびウウクウイルス属(ウウクニエミおよび関連ウイルス)を含むブンヤウイルス科;オルソミクソウイルス科であって、インフルエンザウイルス属(A型インフルエンザウイルス、多くのヒトサブタイプ);ブタインフルエンザウイルスおよびニワトリおよびウマインフルエンザウイルス;B型インフルエンザ(多くのヒトサブタイプ)およびC型インフルエンザ(可能な別々の属)を含むオルソミクソウイルス科;パラミクソウイルス科であって、パラミクソウイルス属(パラインフルエンザウイルス型1、センダイウイルス、血球吸着ウイルス、パラインフルエンザウイルス型2〜5、ニューキャッスル病ウイルス、ムンプスウイルス)、モルビリウイルス属(はしかウイルス、亜急性硬化性汎脳炎ウイルス、ジステンパーウイルス、牛疫ウイルス、ニューモウイルス属(呼吸合胞体ウイルス(RSV)、ウシ呼吸合胞体ウイルスおよびマウス肺炎ウイルス)を含むパラミクソウイルス科;森林ウイルス、シンドビスウイルス、チクングニヤウイルス(Chikungunya virus)、オニョング−ニョングウイルス、ロス川ウイルス、ベネズエラウマ脳炎ウイルス、西部ウマ脳炎ウイルス)、フラビウイルス属(蚊媒介性黄熱ウイルス、デングウイルス、日本脳炎ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、マレー渓谷脳炎ウイルス、西ナイルウイルス、クンジンウイルス、セントラルヨーロピアンダニ媒介ウイルス、極東ダニ媒介ウイルス、キャサヌール森林ウイルス、跳躍病ウイルス、ポワサンウイルス、オムスク出血熱ウイルス)、ルビウイルス属(風疹ウイルス)、ペスチウイルス属(粘膜病ウイルス、ブタコレラウイルス、ボーダー病ウイルス);ブンヤウイルス科であって、ブンヤウイルス属(ブンヤウエラおよび関連ウイルス、カリフォルニア脳炎グループウイルス(California encephalitis group viruses))、フレボウイルス属(シシリースナバエ熱ウイルス(Sandfly fever Sicilian virus)、リフト渓谷熱ウイルス)、ナイロウイルス属(クリミア−コンゴ出血熱ウイルス、ナイロビヒツジ病ウイルス)およびウウクウイルス属(ウウクニエミおよび関連ウイルス)を含むブンヤウイルス科;オルソミクソウイルス科であって、インフルエンザウイルス属(インフルエンザA型ウイルス、多くのヒトサブタイプ);ブタインフルエンザウイルスおよびニワトリおよびウマインフルエンザウイルス;インフルエンザB型(多くのヒトサブタイプ)およびインフルエンザC型(可能な別々の属)を含むオルソミクソウイルス科;パラミクソウイルス科であって、パラミクソウイルス属(パラインフルエンザ1型ウイルス、センダイウイルス、血球吸着ウイルス、パラインフルエンザ2〜5型ウイルス、ニューキャッスル病ウイルス、ムンプスウイルス)、モルビリウイルス属(はしかウイルス、亜急性硬化性汎脳炎ウイルス、ジステンパーウイルス、牛疫ウイルス)、ニューモウイルス属(呼吸合胞体ウイルス(RSV)、ウシ呼吸合胞体ウイルスおよびマウス肺炎ウイルス)を含むパラミクソウイルス科;ラブドウイルス科であって、ベシキュロウイルス(VSV)属、シャンディプラウイルス(Chandipura virus)、フランダース−ハートパークウイルス(Flanders-Hart Park virus))、リッサウイルス属(狂犬病ウイルス)、魚ラブドウイルスおよび2つあり得るラブドウイルス(マルブルグウイルスおよびエボラウイルス)を含むラブドウイルス科;アレナウイルス科であって、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCM)、タカリベウイルス複合体およびラッサウイルスを含むアレナウイルス科;コロナウイルス科であって、伝染性気管支炎ウイルス(IBV)、マウス肝炎ウイルス、ヒト腸炎コロナウイルスおよびネコ伝染性腹膜炎(ネココロナウイルス)を含むコロナウイルス科、を含む。
【0074】
哺乳動物における抗原である例示的DNAウイルスは、ポックスウイルス科であって、オルソポックスウイルス属(大痘瘡、小痘瘡、サル痘ワクシニア(Monkey pox Vaccinia)、牛痘、スイギュウポックス、ウサギ痘、エクトロメリア)、ウサギポックスウイルス属(ミクソーマ、繊維腫)、アビポックスウイルス属(禽痘、他のニワトリポックスウイルス)、カプリポックスウイルス属(ヒツジポックス、ヤギ痘)、スイポックスウイルス属(ブタポックス)、パラポックスウイルス属(伝染性膿胞性皮膚炎ウイルス、偽牛痘、ウシ丘疹性口内炎ウイルス(bovine papular stomatitis virus)を含むポックスウイルス科;イリドウイルス科(アフリカブタコレラウイルス、カエルウイルス2およひび3、魚のリンパ腫瘍ウイルス);ヘルペスウイルス科であって、アルファヘルペスウイルス(単純ヘルペス1および2型ウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、ウマ流産ウイルス、ウマヘルペス2および3、仮性狂犬病ウイルス、伝染性ウシ角結膜炎ウイルス、伝染性ウシ鼻気管炎ウイルス、ネコ鼻気管炎ウイルス、伝染性喉頭気管炎ウイルス)、ベータヘルペスウイルス亜科(beta-herpesvirises)(ヒトサイトメガロウイルス、ならびにブタ、サルおよびげっ歯類のサイトメガロウイルス);ガンマヘルペスウイルス(エプスタイン−バールウイルス(EBV)、マレック病ウイルス、リスザルヘルペス、クモザルヘルペスウイルス、ヘルペスウイルスシルビラグス(herpesvirus sylvilagus)、モルモットヘルペスウイルス、リュッケ腫瘍ウイルス);アデノウイルス科であって、マストアデノウイルス(ヒトサブグループ A、B、C、D、Eおよび分類されていないもの;サルアデノウイルス(少なくとも23の血清型)、感染性犬肝炎、並びにウシ、ブタ、ヒツジ、カエルおよび多くの他の種のアデノウイルス、およびアビアデノウイルス属(ニワトリアデノウイルス);および非培養可能なアデノウイルスを含むアデノウイルス科;パポウイルス科であって、パピローマウイルス属(ヒト乳頭腫ウイルス、ウシパピローマウイルス、ショープウサギパピローマウイルス(Shope rabbit papiloma virus)および他の種の種々の病原性パピローマウイルス)、ポリオーマウイルス属(ポリオーマウイルス、サル空胞化因子(SV−40)、ウサギ空胞化因子(RKV)、Kウイルス、BKウイルス、JCウイルスおよび他の霊長類ポリオーマウイルス、例えば向リンパ性パピローマウイルス)を含むパポウイルス科;パルボウイルス科であって、アデノ随伴ウイルス属、パルボウイルス(ネコ汎白血球減少症ウイルス、ウシパルボウイルス、イヌパルボウイルス、アリューシャンミンク病ウイルス等)を含むパルボウイルス科、を含むがそれらに限定されるわけではない。最後に、DNAウイルスは、上記科に一致しないウイルス、例えばクールおよびクロイツフェルト−ヤコブ病ウイルスおよび慢性感染性神経障害因子(CHINA virus)を含むことができる。
【0075】
HIV抗原の特定の例は、Tat、gp120、gp160、gag、pol、プロテアーゼおよびnefからなる群より選ばれる産物に由来する1種または複数の抗原であることができるが、それらに限定されるわけではない。好ましくは、HIV抗原はgp120に由来する抗原である。
【0076】
他の好ましい例示的抗原は、HPVの任意の株からのHPV抗原である。HPVは、6つまたは7つの非構造タンパク質と2つの構造タンパク質を発現する。ウイルスキャプシドタンパク質L1およびL2は後期構造タンパク質である。L1は、主要なキャプシドタンパク質であり、そのアミノ酸配列は異なるHPV型間で高度に保存されている。7つの初期非構造タンパク質がある。タンパク質E1、E2およびE4は、ウイルス複製において重要な役割を果たす。タンパク質E4は、ウイルス成熟においても役割を果たす。E5の役割は、あまりよく知られていない。タンパク質E6およびE7は、ウイルス複製のためにおよび宿主細胞不死化および形質変換のために重要な腫瘍性タンパク質である。本発明の融合タンパク質は、HPVタンパク質の全配列またはその断片、例えば少なくとも8アミノ酸の断片を含有することができる。1つの態様では、HPV抗原性配列は、「ハイリスク」HPV、例えばHPV16またはHPV18E7タンパク質に由来する。HPV抗原性配列は、MHC結合エピトープ、例えばMHCクラスIおよび/またはMHCクラスII結合エピトープを含むことができる。
【0077】
更なる好ましい例示的抗原は、肝炎Aウイルス(HAV)、肝炎Bウイルス(BBV)、肝炎Cウイルス(HCV)、デルタ肝炎ウイルス(HDV)、肝炎Eウイルス(BEV)およぴ肝炎Gウイルス(HGV)を含む肝炎ウイルスのファミリーから得られるまたは肝炎ウイルスのファミリーに由来する抗原である。例えば国際公開番号WO 89/04669;WO 90/11089;およびWO 90/14436参照。HCVゲノムは、E1およびE2を含むいくつかのウイルスタンパク質をコードする。例えば、Houghton et al.(1991)Hepatology 14: 381-388参照。これらのタンパク質およびその抗原性断片をコードする配列を含む核酸分子は、本発明の方法において用途が見いだされる。同様に、HDVからの8つの抗原のコード配列は知られている(U.S.Patent No.5,378,814)。同様に、ヘルペスウイルス科からの広い種類のタンパク質は、本発明における抗原として使用することができ、これらは単純ヘルペスウイルス(HSV)1および2型に由来するタンパク質、例えばHSV−1およびHSV−2糖タンパク質gB、gDおよびgH;水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、エプスタイン−バールウイルス(EBV)およびサイトメガロウイルス(CMV)(CMV gBおよびgHを含む)からの抗原;および他のヒトヘルペスウイルスからの抗原、例えばHHV6およびHAV7を含む(例えば、Chee et al.(1990)Cytomegalovirus(J.K.McDougall, ed., Springer Verlag, pp.125-169; NcGeoch et al.(1988)J.Gen.Viol.69: 1531-1574; U.S.Patent No.5,171,568; Baer et al.(1984)Nature 3310: 207-21 1; およびDavison et al.(1986)J.Gen.Virol. 67: 1759)参照)。
【0078】
抗原またはワクチンは、パラミクソウイルス科のネガティブ鎖ウイルスでありそして特に幼児または乳児における下部肺気道疾患(lower pulmonary tract disease)の主要な原因である、呼吸合胞体ウイルス(RSV)に由来することができる。RSVは、ウイルス感染力にとって重要であり、従ってRSVに対するサブユニットワクチンのデザインのための合理的な標的として役立つ、2つの顕著な外殻糖タンパク質、(融合(F)タンパク質および付着(G)タンパク質)を含有する。RSV Fタンパク質の野生型(ネイティブ)ヌクレオチドおよびアミノ酸配列は当技術分野で知られている(Collins et al., Proc. Natl.Acad.Sci(USA)81: 7683-7687(1984); U.S.Patent No.5,639,853; U.S.Patent No.5,723,130)。本発明で使用するのに適当な好ましいRSVタンパク質は、完全RSV Fタンパク質およびRSV Fタンパク質の機能的部分を含む。例えば、機能的部分は、哺乳動物に投与されるとき抗体応答を誘導することができる能力を保持するタンパク質の部分であることができる。このような免疫原性部分の例は、RSV Fタンパク質のアミノ酸位置283−315、289−315および294−299を含むポリペプチドである。これらの領域は、中和抗体および抗融合抗体の両方を発生させるRSV Fタンパク質のエピトープを含む(U.S.Patent No.5,639,853)。または、そのネイティブな二量体形態(140kD)にあるRSV Fタンパク質を使用することができる(U.S.Patent No.5,223,254)。
【0079】
本発明のアジュバントに従って使用される他の例示的ワクチンは、インフルエンザウイルスワクチンを含む。Trivalent A & B Live, Cold Adapted または FluMist(Medimmune Vaccines)は、代表的な毒性流行性野生型インフルエンザ株からの免疫原性ウイルスコートタンパク質(ヘマグルチニンおよびノイラミニダーゼ)および6つの弱毒化遺伝子突然変異を有するインフルエンザウイルスコアを有する天然の組換えの(再構築(re-assortment);遺伝子スプライシングされていない)低温適応した温度感受性の弱毒化された非病原性の生インフルエンザウイルスの水性鼻噴霧三価処方剤(aqueous nasal spray trivalent formulation)である。ワクチンとして使用することができる好ましい組換え低温適応/温度感受性インフルエンザウイルス株は、弱毒化されたインフルエンザウイルスコアと共に毒性インフルエンザ株からのインフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)免疫原性エピトープを与えるウイルスコートを有する。弱毒化されたマスタードナーウイルス(MDV)のHAおよびNA RNA配列を、流行性の野生型インフルエンザ株からのHAおよびNA RNA配列で置き換えられる。温度感受性は、インフルエンザウイルスのRNA依存性ポリメラーゼ複合体を含む3つのタンパク質の1つである759アミノ酸ポリペプチドをコードするポリメラーゼ塩基性タンパク質2(PB2)遺伝子の修飾によりMDVに与えられる。ウイルスRNA複製はPB2(PB1、PA およびNPと共に)に依存する。3つのポリメラーゼタンパク質、PB1、PB2およびPAは、感染した細胞の核における3分子複合体を形成する。
【0080】
他のワクチンおよび抗原は、バクテリア、寄生虫または酵母に由来することができる。適当な種の例は、N. gonorrheaおよびN.meningitidisを含むNeisseria spp(例えば、夾膜多糖およびそのコンジュゲート、トランスフェリン結合タンパク質、ラクトフェリン結合タンパク質、PilCおよび接着物を抗原として使用することができる);S.pyogenes(例えば、Mタンパク質またはその断片、C5Aプロテアーゼ、リポテイコ酸)、S.agalactiae、S.mutans; H.ducreyi; Branhamella catarrhalisとしても知られているM.catarrhalisを含むMoraxella spp(例えば、高分子および低分子アドヘシン(adhesins)およびインバジン(invasins));B.pertussis(例えば、ペルタクチン、百日咳毒素またはその誘導体、フィラメント状赤血球凝集素、アデニル酸シクラーゼ、腺毛(fimbriae))、B.parapertussisおよびB.bronchisepticaを含むBordetella spp; M.tuberculosis(例えばESAT6、抗原85A、−Bまたは−Q、M.bovis、M.leprae、M.avium、M.paratuberculosis、M.smegmatisを含むMycobacterium spp;腸管毒性(enterotoxic)E.coli(例えば、定着因子(colonization factors)、熱に不安定な毒素またはその誘導体、熱に安定な毒素またはその誘導体)、腸管出血性E.coli、腸管病原性E.coli(例えばVibrio shiga毒素様毒素またはその誘導体)を含むEscherichia spp; V.cholera(例えばコレラ毒素またはその誘導体)を含むVibrio spp; S.sonnei、S.dysenteriae、S.flexneriiを含むShigella spp; Y.enterocolitica(例えばYopタンパク質)、Y.pestis、Y.pseudotuberculosisを含むYersinia spp; C.jejuni(例えば毒素、アドヘシンおよびインバジン)およびC.coliを含むCampylobacter spp; S.typhip、S.paratyphi、S.choleraesuis、S.enteritidisを含むSalmonella spp; L.monocytogenesを含むListeria spp; H.pylori(例えばウレアーゼ、カタラーゼ、空胞化毒素)を含むHelicobacter spp; P.aeruginosaを含むPseudomonas spp; S.aureus、S.epidermidisを含むStaphylococcus spp; E.jaecalis、E.jaeciumを含むEnterococcus spp; C.tetani(例えば破傷風毒素およびその誘導体)、C.botulinum(例えばボツリヌム毒素およびその誘導体)、C.difficile(例えばクロストリジウム毒素AまたはBおよびその誘導体)を含むClostridium spp; B.anthracis(例えばボツリヌム毒素およびその誘導体)を含むBacillus spp; C.diphtheriae(例えばジフテリア毒素およびその誘導体)を含むCorynebacterium spp; B.burgdorferi(例えばOspA、OspC、DbpA、DbpB)、B.garinii(例えばOspA、OspC、DbpA、DbpB、)、B.afzelii(例えばOspA、OspC、DbpA、DbpB)、B.andersonii(例えばOspA、OspC、DbpA、DbpB)、B.hermsiiを含むBorrelia spp; E.equiおよびヒト顆粒球エールリッヒ病(Human Granulocytic Ehrlichiosis)の作用物質を含むEhrlichia spp; R.rickettsiiを含むRickettsia spp; C.trachomatis(例えばMOMP、ヘパリン結合タンパク質)、C.pneumoniae(例えばMONT、ヘパリン結合タンパク質)、C.psittaciを含むChlamydia spp; L.interrogansを含むLeptospira spp; T.pallidum(例えば希少外膜タンパク質(rare outer membrane proteins))、T.denticola、T.hyodysenteriaeを含むTreponema spp;またはP.falciparunmを含むPlasmodium sppなどの寄生虫に由来する種;T.gondii(例えばSAG2、SAG3、Yg34)を含むToxoplasma spp; E.histolyticaを含むEntamoeba spp; B.microtiを含むBabesia spp; T.cruziを含むTrypanosoma spp; G.lambliaを含むGiardia spp; L.majorを含むLeshmania spp; P.cariniiを含むPnemocystis spp; T.vaginalisを含むTrichomonas spp; S.mansoniを含むSchisostoma spp., またはC albicansを含むCandida spp; C.neoformansを含むCryptococcus sppなどの酵母に由来する種を含む。
【0081】
M.tuberculosisに対する好ましい特異的抗原の例は、例えばTh Ra、Th H9、Th Ra35、Th38−1、Erd 14、DPV、MTI、MSL、mTTC2およびhTCC1(WO 99/51748)である。M.tuberculosisに対するタンパク質は、M.tuberculosisの少なくとも2つ、好ましくは3つのポリペプチドが大きなタンパク質に融合している融合タンパク質およびその変異体も含む。
【0082】
Chlamydiaに対する好ましい抗原の例は、例えば高分子量タンパク質(HWMP)(WO 99/17741)、ORF3(EP 366412)および推定膜タンパク質(Pmps)を含む。ワクチン処方の他のChlamydia抗原は、WO 99/28475に記載の群から選ぶことができる。
【0083】
他の好ましいバクテリアワクチンは、S.pneumoniaを含むStreptococcus sppに由来する抗原(例えば夾膜多糖およびそのコンジュゲート、Psa.A、PspA、ストレプトリシン、コリン結合タンパク質)およびタンパク質抗原Pneumolysin (Biochem Biophys Acta, 1989, 67, 1007; Rubins et al., Microbial Pathogenesis, 25, 337-342)、およびその突然変異体脱毒素化誘導体(WO 90/06951)を含む。
【0084】
癌ワクチン
本明細書で使用された「癌抗原」または「腫瘍抗原」は、腫瘍または癌細胞表面と関連したそしてMHC分子に関係して抗原提示細胞の表面に発現されるとき免疫応答を誘発することができる化合物、例えばペプチドである。癌抗原は、例えば、Cohen, et al., 1994, Cancer Research, 54: 1055に記載のとおり、癌細胞の粗抽出物を調製することにより、抗原を部分的に精製することにより、組み換え技術により、または既知の抗原の新規な合成のいずれかにより、癌細胞から調製することができる。癌抗原は、全腫瘍もしくは癌の組み換え的に免疫原性部分であるかまたは全腫瘍もしくは癌である抗原を含む。このような抗原は、組み換え的にまたは当技術分野で知られた任意の他の手段により単離または調製することができる。
【0085】
処方剤は、腫瘍抗原を含有することもできそして癌の免疫治療的処置のために有用でありうる。例えば、アジュバント処方剤は、腫瘍拒絶抗原、例えば前立腺癌、乳癌、結腸直腸癌、肺癌、膵臓癌、腎臓癌または黒色腫癌のための腫瘍拒絶抗原との効用を見出す。例示的抗原は、MAGE1およびMAGE3または他のMAGE抗原(黒色腫の処置のための)、PRAME、BAGEまたはGAGE(Robbins and Kawakami, 1996, Current Opinions in Immunology 8, pps 628-636; Van den Eynde et al., International Journal of Clinical& Laboratory Research(submitted 1997); Correale et al.(1997), Journal of the National Cancer Institute 89, p293を含む。実際に、これらの抗原は、広い範囲の腫瘍型、例えば黒色腫、肺癌、肉腫および膀胱癌において発現される。他の腫瘍特異抗原は、本発明のアジュバントとの使用に適当でありそして腫瘍特異ガングリオシド、前立腺特異抗原(PSA)またはHer−2/neu、KSA(GA733)、PAP、マンマグロビン、MUC−1、癌胎児性抗原(CEA)を含むが、これらに限定されるわけではない。従って、本発明の1つの局面では、本発明に従うアジュバント組成物および腫瘍拒絶抗原を含むワクチンが提供される。
【0086】
ワクチンが腫瘍抗原を含むことは本発明の特に好ましい局面であり;このようなワクチンは、驚くべきことに、前立腺癌、乳癌、結腸直腸癌、肺癌、膵臓癌、腎臓癌、卵巣癌または黒色腫癌などの癌の治療において効能がある。
【0087】
従って、処方剤は、腫瘍関連抗原および腫瘍支持機構(例えば血管形成、腫瘍浸潤)と関連した抗原を含有することができる。さらに、癌の治療においてワクチンに特に適切な抗原は、前立腺特異膜抗原(PSMA)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、チロシナーゼ、サービビン(survivin)、NY−ES01、プロスターゼ、PS108(WO 98/50567)、RAGE、LAGE、HAGE、も含む。更に該抗原は、多くの癌の処置または免疫去勢において有用な、全長性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH、WO 95/20600)、短い10アミノ酸の長さのペプチドなどの自己ペプチドホルモンであることができる。
【0088】
本発明の組成物は、Borrelia spに由来する抗原を含有するワクチンを処方するのに使用されることは予見される。本発明のワクチンは、アレルギーの予防または治療のために使用することができる。このようなワクチンは、アレルゲン特異抗原(例えばDer p 1)およびアレルゲン非特異抗原(例えばstanworthデカペプチド(EP 0 477 231 B1)を含むがそれに限定はされない、ヒトIgEに由来するペプチド)を含むであろう。
【0089】
本発明のワクチンは、アレルギー、癌または感染性疾患以外の慢性障害の予防または治療のために使用することもできる。このような慢性障害は、アテローム性動脈硬化症およびアルツハイマー病などの疾患である。アルツハイマー神経変性疾患に感受性のまたは罹患している患者の予防または治療のために適当な抗原は、特に、アミロイド前駆体タンパク質のN末端39〜43アミノ酸断片(AP)およびより小さい断片(WO 99/27944)である。
【0090】
前記リストの各々は、説明のためであり、限定することを意図しない。抗原および疾患または状態を開示する前記参考文献の各々の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0091】
高い効能のγδT細胞活性化物質
相互交換可能に使用される用語「γδTリンパ球活性化化合物」、「γδT細胞活性化化合物」、「γδTリンパ球活性化物質」および「γδT細胞活性化物質」は、γδTリンパ球を活性化することができる分子を意味する。更に詳しくは、用語「γδTリンパ球活性化化合物」は、エクスビボまたはインビトロで産生された分子を意味する。それは、さらに好ましくはγδTリンパ球のT受容体のリガンドである。活性化物質は、ペプチド、脂質、小分子等などの種々の性質のものであることができる。それは精製されたまたはそうでなければ人工的に産生される(例えば化学合成によりまたは微生物学的方法により)内在性リガンドまたはその断片もしくは誘導体、または実質的に同じ抗原特異性を有する抗体であることができる。活性化物質は、最も好ましくはVγ9Vδ2Tリンパ球を選択的に活性化することができる合成化合物である。Vγ9Vδ2Tリンパ球の選択的活性化は、化合物が特異細胞集団に対する選択的作用を有しそして本質的に他のT細胞サブタイプ、例えばVδ1 T細胞を活性化しないことを示す。本願で開示されたこのような選択性は、好ましい化合物がVγ9Vδ2Tリンパ球の選択的もしくはターゲッティングされた活性化、増殖または他の生物学的活性を引き起こすことができることを示唆する。
【0092】
好ましくは、γδTリンパ球活性化物質は、培養物中のγδT細胞クローンの集団におけるγδT細胞の活性を調節することができる化合物である。γδTリンパ球活性化物質は、ミリモル濃度で、好ましくはγδT細胞活性化物質が100mM未満の濃度で培養物中に存在するとき、γδT細胞クローンのγδT細胞集団の活性を調節することができる。場合により、γδTリンパ球は、ミリモル濃度で、好ましくはγδT細胞活性化物質が10mM未満の濃度で、更に好ましくは1mM未満の濃度で培養物中に存在するとき、γδT細胞クローンの集団におけるγδT細胞の活性を調節することができる。γδT細胞の活性の調節は、任意の適当な手段により、好ましくはサイトカイン分泌、最も好ましくは本明細書に記載のとおりTNF−α分泌を評価することにより評価することができる。純粋なγδT細胞クローンの集団を得るための方法は、Davodeau et al., ((1993)J.Immunology 151(3): 1214-1223)and Moreau et al., ((1986)J.Clin. Invest.78: 874)に記載されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。好ましくは、化合物は培養物中のγδT細胞の数の少なくとも20%、50%または50%より高い増加、またはさらに好ましくは培養物中のγδT細胞の数の少なくとも2倍の増加を引き起こすことができる。
【0093】
好ましい局面では、γδT細胞活性化物質は、γδT細胞の増大を刺激してまたは刺激しないで、γδT細胞の生物学的活性を増加させることができ、好ましくはγδT細胞の活性化を増加させることができ、特にγδT細胞からのサイトカイン分泌を増加させることができる。
【0094】
サイトカイン分泌は、任意の適切なインビトロアッセイまたは本明細書における実施例に与えられたアッセイを使用して評価することができる。例えば、サイトカイン分泌は、TNF−α感受性細胞を使用するバイオアッセイにおけるTNF−α放出の測定を記載しているEspinosa et al.(J. Biol. Chem., 2001, Vol. 276, Issue 21, 18337-18344)に記載の方法に従って決定することができる。簡単に言えば、104γδT細胞/ウエルを、培養培地100μl中で刺激剤+25単位のIL2/ウエルと37℃で24時間インキュベーションする。次いで、上清50μlを、培養培地+アクチノマイシンD(2μg/ml)およびLiCl(40mM)中の3×104細胞/ウエルでプレート培養されたWEHI細胞50μlに加え、そして37℃で20時間インキュベーションする。TNF−α感受性細胞の生存度は、3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミドアッセイにより測定される。ウエル当たり50マイクロリットルの3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(Sigma;リン酸緩衝化生理的食塩水中の2.5mg/ml)を加え、そして37℃で4時間のインキュベーションの後に、可溶化緩衝剤(20%SDS、66%ジメチルホルムアミド、pH4.7)50μlを加え、そして吸光度(570nm)を測定する。次いでTNF−α放出のレベルを、精製されたヒトrTNF−αを使用して得られる標準曲線から計算する(Pepro Tech, Inc., Rocky Hill, NJ)。TNF−α検出は、製造者の指示(kit ref 1121, Immunotech-Beckman Coulter)に従って行うこともできる。活性化されたT細胞により放出されるインターフェロンγは、サンドイッチ酵素結合イムノソーベンドアッセイにより測定される。γδT細胞(5×104γδT細胞/ウエル)を、培養培地100μl中の刺激剤+25単位のIL2/ウエルと37℃で24時間インキュベーションする。次いで上清50μlを、マウスモノクローナル抗体(Biosource International, California)を使用する酵素結合イムノソーベントアッセイのために回収する。
【0095】
本発明は、高いインビトロおよびインビボ効能を有するγδT細胞を、毒性が存在しないことを必要とする本発明の方法に従って使用することができることを開示する。好ましい化合物は、(a)ミリモル濃度で、好ましくはγδT細胞活性化物質が10mMまたは10mM未満の濃度で培養物中に存在するとき、γδT細胞クローンの集団におけるγδT細胞の活性を調節することができる;そして(b)約1mg/kg未満、好ましくは約10μg/kg〜100μg/kgまたはさらに好ましくは約100μg/kg未満または10μg/kg未満のインビトロ投与量で哺乳動物に投与されるかまたは哺乳動物への投与のための剤形にあるγδT細胞活性化物質である。好ましくは、γδT細胞の活性を調節することは、本明細書に記載のサイトカイン産生またはサイトカイン放出を刺激することを指す。
【0096】
本発明に従うγδT細胞活性化物質は、好ましくは、式(I):
【化7】


(式中、R3、R4およびR5は、同一であるかまたは相異なり、水素、(C1〜C3)アルキル基またはそれの任意の他の立体的等価の基(isosteric group)、例えばCF3であり、Wは−CH−または−N−であり、R6は、(C2〜C3)アシル、アルデヒド、(C1〜C3)アルコールまたは(C2〜C3)エステルであり、Cat+は、1つ(または複数の、同一であるかまたは相異なる)有機または無機カチオン(プロトンを含む)を表し、BはOまたはNHであり、mは1〜3の整数であり、Aは、O、NH、CHF、CF2もしくはCH2または任意の他の立体的等価の基であり、そしてYは、O-Cat+、ヌクレオシドまたは基−A−Rであり、ここでRは、少なくとも1個のヘテロ原子により場合により中断されている線状、分岐状もしくは環状、芳香族もしくは非芳香族の、飽和または不飽和のC1〜C50炭化水素基であり、該炭化水素基は、アルキル、アルキニル、またはアルキレニル、好ましくはアルキルまたはアルキレンを含み、該炭化水素基は、アルキル、アルキレニル、アルキニル、エポキシアルキル、アリール、複素環、アルコキシ、アシル、アルコール、カルボキシル基(−COOH)、エステル、アミン、アミノ基(−NH2)、アミド(−CONH2)、イミン、ニトリル、ヒドロキシル(−OH)、アルデヒド基(−CHO)、ハロゲン、ハロゲノアルキル、チオール(−SH)、チオアルキル、スルホン、スルホキシドおよびそれらの組合せからなる群より選ばれる1個または複数の置換基により置換されていてもよい)
の化合物を含む。
【0097】
特定の態様では、上記に定義した置換基は、上記に特定された置換基の少なくとも1つにより置換される。
【0098】
好ましくは、置換基は、(C1〜C6)アルキル、(C2〜C6)アルキレニル、(C2〜C6)アルキニル、(C2〜C6)エポキシアルキル、アリール、複素環、(C1〜C6)アルコキシ、(C2〜C6)アシル、(C1〜C6)アルコール、カルボキシル基(−COOH)、(C2〜C6)エステル、(C1〜C6)アミン、アミノ基(−NH2)、アミド(−CONH2)、(C1〜C6)イミン、ニトリル、ヒドロキシル(−OH)、アルデヒド基(−CHO)、ハロゲン、(C1〜C6)ハロゲノアルキル、チオール(−SH)、(C1〜C6)チオアルキル、(C1〜C6)スルホン、(C1〜C6)スルホキシドおよびそれらの組合せからなる群より選ばれる。
【0099】
さらに好ましくは、置換基は、(C1〜C6)アルキル、(C2〜C6)エポキシアルキル、(C2〜C6)アルキレニル、(C1〜C6)アルコキシ、(C2〜C6)アシル、(C1〜C6)アルコール、(C2〜C6)エステル、(C1〜C6)アミン、(C1〜C6)イミン、ヒドロキシル、アルデヒド基、ハロゲン、(C1〜C6)ハロゲノアルキルおよびそれらの組合せからなる群より選ばれる。
【0100】
なおさらに好ましくは、置換基は、(C3〜C6)エポキシアルキル、(C1〜C3)アルコキシ、(C2〜C3)アシル、(C1〜C3)アルコール、(C2〜C3)エステル、(C1〜C3)アミン、(C1〜C3)イミン、ヒドロキシル、ハロゲン、(C1〜C3)ハロゲノアルキルおよびそれらの組合せからなる群より選ばれる。好ましくは、Rは(C3〜C25)炭化水素基である。更に好ましくは、(C5〜C10)炭化水素基である。
【0101】
本発明に関して、用語「アルキル」は、さらに具体的には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコシル、ヘンエイコシル、ドコシルおよびそれらの他の異性体などの基を意味する。更に具体的には、(C1〜C6)アルキルは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシルおよびそれらの他の異性体を意味する。更に具体的には、(C1〜C3)アルキルは、メチル、エチル、プロピルまたはイソプロピルを意味する。
【0102】
用語「アルケニル」は、少なくとも1つの不飽和エチレン結合を有する上記に定義したアルキル基を指し、そして用語「アルキニル」は、少なくとも1つの不飽和アセチレン結合を有する上記に定義したアルキル基を指す。(C2〜C6)アルキレンは、エテニル、プロペニル(1−プロペニルまたは2−プロペニル)、1−もしくは2−メチルプロペニル、ブテニル(1−ブテニル、2−ブテニルまたは3−ブテニル)、メチルブテニル、2−エチルプロペニル、ペンテニル(1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル)、ヘキセニル(1−ヘキセニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、4−ヘキセニル、5−ヘキセニル)およびそれらの他の異性体を含む。(C2〜C6)アルキニルは、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル、3−ペンチニル、4−ペンチニル、1−ヘキシニル、2−ヘキシニル、3−ヘキシニル、4−ヘキシニルまたは5−ヘキシニルおよびそれらの他の異性体を含む。
【0103】
用語「エポキシアルキル」は、エポキシド基を有する上記に定義したアルキル基を指す。更に詳しくは、(C2〜C6)エポキシアルキルは、エポキシエチル、エポキシプロピル、エポキシブチル、エポキシペンチル、エポキシヘキシルおよびそれらの他の異性体を含む。(C2〜C3)エポキシアルキルは、エポキシエチルおよびエポキシプロピルを含む。
【0104】
「アリール」基は、6〜18個の炭素原子を有する一、二または三環式芳香族炭化水素である。例は、特に、フェニル、α−ナフチル、β−ナフチルまたはアントラセニル基を含む。
【0105】
「複素環」基は、1個以上のヘテロ原子、好ましくは1〜5個の環内ヘテロ原子を含む5〜18個の環原子を含有する基である。それらは、一、二または三環式であることができる。それらは、芳香族または非芳香族であることができる。好ましくは、且つR5について更に具体的には、それらは芳香族複素環である。芳香族複素環の例は、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、フラン、チオフェン、ピロール、オキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ピラゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、チアジアゾールおよびチアジン基を含む。二環の例は、特にキノリン、イソキノリンおよびキナゾリン基(2つの6員環の場合)およびインドール、ベンゾイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾールおよびインダゾール(6員環と5員環の場合)を含む。非芳香族複素環は特にピペラジン、ピペリジン等を含む。
【0106】
「アルコキシ」基は、O−(エーテル)結合により分子に結合した上記に定義したアルキル基に相当する。(C1〜C6)アルコキシは、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、ブチルオキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシおよびそれらの他の異性体を含む。(C1〜C3)アルコキシは、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシおよびイソプロピルオキシを含む。
【0107】
「アシル」基は、−CO−(カルボニル)基により分子に結合した上記に定義したアルキル基に相当する。(C2〜C6)アシルは、アセチル、プロピルアシル、ブチルアシル、ペンチルアシル、ヘキシルアシルおよびそれらの他の異性体を含む。(C2〜C3)アシルは、アセチル、プロピルアシルおよびイソプロピルアシルを含む。
【0108】
「アルコール」基は、少なくとも1つのヒドロキシル基を含有する上記に定義したアルキル基に相当する。アルコールは、第一級、第二級または第三級であることができる。(C1〜C6)アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノールおよびそれらの他の異性体を含む。(C1〜C3)アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノールおよびイソプロパノールを含む。
【0109】
「エステル」基は、−COO−(エステル)結合により分子に結合した上記に定義したアルキル基に相当する。(C2〜C6)エステルは、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、ペンチルエステルおよびそれらの他の異性体を含む。(C2〜C3)エステルは、メチルエステルおよびエチルエステルを含む。
【0110】
「アミン基」は、−N−(アミン)結合により分子に結合した上記に定義したアルキル基に相当する。(C1〜C6)アミンは、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミンおよびそれらの他の異性体を含む。(C1〜C3)アミンは、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミンを含む。
【0111】
「イミン」基は、(−C=N−)結合を有する上記に定義したアルキル基に相当する。(C1〜C6)イミンは、メチルイミン、エチルイミン、プロピルイミン、ブチルイミン、ペンチルイミン、ヘキシルイミンおよびそれらの他の異性体を含む。(C1〜C3)イミンは、メチルイミン、エチルイミンおよびプロピルイミンを含む。
【0112】
ハロゲンは、Cl、Br、IまたはFであることができる。
【0113】
「ハロゲノアルキル」基は、少なくとも1個のハロゲンを有する上記に定義したアルキル基に相当する。この基は、モノハロゲン化またはポリハロゲン化されることができ、同じまたは異なるハロゲン原子を含有することができる。例えば、該基は、トリフルオロアルキル(CF3−R)であることができる。(C1〜C6)ハロゲノアルキルは、ハロゲノメチル、ハロゲノエチル、ハロゲノプロピル、ハロゲノブチル、ハロゲノペンチル、ハロゲノヘキシルおよびそれらの他の異性体を含む。(C1〜C3)ハロゲノアルキルは、ハロゲノメチル、ハロゲノエチルおよびハロゲノプロピルを含む。
【0114】
「チオアルキル」基は、−S−(チオエーテル)結合により分子に結合した上記に定義したアルキル基に相当する。(C1〜C6)チオアルキルは、チオメチル、チオエチル、チオプロピル、チオブチル、チオペンチル、チオヘキシルおよびそれらの他の異性体を含む。(C1〜C3)チオアルキルは、チオメチル、チオエチルおよびチオプロピルを含む。
【0115】
「スルホン」基は、−SOO−(スルホン)結合により分子に結合した上記に定義したアルキル基に相当する。(C1〜C6)スルホンは、メチルスルホン、エチルスルホン、プロピルスルホン、ブチルスルホン、ペンチルスルホン、ヘキシルスルホンおよびそれらの他の異性体を含む。(C1〜C3)スルホンは、メチルスルホン、エチルスルホン、プロピルスルホンを含む。
【0116】
「スルホキシド」基は、−SO−(スルホキシド)基により分子に結合した上記に定義したアルキル基に相当する。(C1〜C6)スルホキシドは、メチルスルホキシド、エチルスルホキシド、プロピルスルホキシド、ブチルスルホキシド、ペンチルスルホキシド、ヘキシルスルホキシドおよびそれらの他の異性体を含む。(C1〜C3)スルホキシドは、メチルスルホキシド、エチルスルホキシド、プロピルスルホキシドおよびイソプロピルスルホキシドを含む。
【0117】
「ヘテロ原子」は、N、SまたはOを表す。
「ヌクレオシド」は、アデノシン、チミン、ウリジン、シチジンおよびグアノシンを含む。
【0118】
「立体的等価の基」は、異なる分子式を有するが同様なまたは同じ物理的性質を示す元素、官能基、置換基、分子またはイオンを指す。例えばCF3は、CH3の立体的等価の基である。典型的には、2つの立体的等価の基は、同様なまたは同一の容積および形状を有する。
【0119】
好ましくは、YはO-Cat+またはヌクレオシドである。さらに好ましくは、YはO-Cat+である。好ましくは、AはOまたはCH2である。さらに好ましくは、AはOである。さらに好ましくは、R3およびR5は、メチルまたはその立体的等価の基、例えばCH2F、CF2H、またはCF3でありそしてR4は水素である。なおさらに好ましくはR3およびR5はメチルでありそしてR4は水素である。さらに好ましくは、R6は、−CH2−OH、−CHO、−CO−CH3または−CO−OCH3である。好ましくはBはOである。好ましくはmは1または2である。さらに好ましくはmは1である。場合により、WとC間の二重結合は、トランス(E)またはシス(Z)のコンホメーションにある。更に好ましくは、WとC間の二重結合はトランス(E)のコンホメーションにある。
【0120】
基Yはプロドラッグのデザインを可能とすることができる。従ってYは、被験体の特定の領域において開裂されうる酵素に不安定な基である。基Yは標的化基であることもできる。好ましい態様では、Yは、O-Cat+、基−A−Rまたは、ヌクレオシド、単糖、エポキシドおよびハロヒドリンからなる群より選ばれる基である。好ましくは、Yは酵素に不安定な基である。好ましくは、Yは、O-Cat+、基−A−Rまたはヌクレオシドである。第1の好ましい態様では、YはO-Cat+である。第2の好ましい態様では、Yはヌクレオシドである。
【0121】
好ましい態様では、Cat+は、H+、Na+、NH4+、K+、Li+、(CH3CH23NH+である。
【0122】
好ましい態様では、γδT細胞活性化物質は、式(II)または(III):
【化8】


(式中、R3、R4およびR5は、同一であるかまたは相異なり、水素または(C1〜C3)アルキル基またはその立体的等価の基であり、Wは−CH−または−N−であり、R6は、(C2〜C3)アシル、アルデヒド、(C1〜C3)アルコールまたは(C2〜C3)エステルであり、Cat+は、1つ(または複数の、同一であるかまたは相異なる)有機または無機カチオン(プロトンを含む)を表し、mは1〜3の整数であり、そしてYは、O−Cat+またはヌクレオシドである)の化合物を含む。好ましくは、Wは−CH−である。好ましくは、R3およびR4は水素である。好ましくは、R5は、メチルまたはその立体的等価の基、例えばCF3である。更に好ましくは、R5はメチルである。好ましくは、R6は−CH2−OHである。
【0123】
好ましい態様では、γδT細胞活性化物質は、式(IV)
【化9】


の化合物である。
【0124】
他の好ましい態様では、γδT細胞活性化物質は、式(V):
【化10】


の化合物である。
【0125】
これらの化合物は、当技術分野でそれ自体既知の種々の技術に従って製造することができ、該技術のいくらかはPCT公開WO 03/009855に開示されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0126】
他の好ましい態様では、γδT細胞活性化物質は、2005年12月2日に出願された同時係属国際特許出願番号PCT/IB2004/004311および2004年6月15日に出願された米国仮特許出願番号60/579,237に記載されたNHDMAPPとも呼ばれる式(VI)の化合物であり、これらの特許出願の開示は参照より本明細書に組み込まれる:
【化11】

【0127】
Y基としてヌクレオシドを含む化合物は、例えば下記の反応により製造することができる。Yにより与えられる官能基のタイプおよび反応性に依存して、当業者は、必用ならば感受性官能基またはカップリング反応と相互作用することができる官能基の保護/非保護の段階を含めて、下記の実施例に適合させることができる。
【0128】
【化12】


式中、−O−Vは、例えばトシル、メシル、トリフリル、ブロシルまたはブロミウムの中から選ばれるVで始まる良好な基であり、PPはピロホスフェート基であり、PPPはトリホスフェート基を表し、…−A−は上記した意味を有し、ここで…は
【化13】


を表し、そしてNuclはヌクレオシドである。好ましくは、Nucl−O−Vは、5’−O−トシルアデノシン、5’−O−トシルウリジン、5’−O−トシルシチジン、5’−O−トシルチミジンまたは5’−O−トシル−2’−デオキシアデノシンからなる群より選ばれる。
【0129】
または、Y基としてヌクレオシドを含む化合物は、下記の反応により製造することができる:
【化14】


式中、PPPはトリホスフェート基を表し、…−A−は上記した意味を有し、DMFはジメチルホルムアミドであり、そしてNuclはヌクレオシドである。この反応は、アルコールおよび式Nucl−O−PPPを有するヌクレオシドから、Knorre et al.(1976)またはBloom et al.、米国特許第5,639,653号(1997に記載の条件と同様な条件で行うことができ、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0130】
HDMAPP
Hintz et al.(2001)に記載の非メバロン酸(MEP)経路のlytB成分を欠いているE.coli細胞からのHDMAPPの単離以来、HDMAPPの化学合成が多くの実験室で達成された。本発明者により解明されたVγ9/Vδ2+T細胞刺激のインビトロインビボ薬力学は、驚くべきことに、HDMAPPがγδT細胞活性を活性化するのに有効であり、そして低用量投与計画において哺乳動物に投与することができることを示した。HDMAPPのインビトロEC50は約0.6nMであるが、HDMAPPのインビボEC50(シノモルグスサルにおける)は約5pMである(2003年12月2日に出願された同時係属PCT特許出願番号PCT/IB2003/006375に記載されたインビボ投与量研究、その開示は参照により本明細書に組み込まれる)。
【0131】
HDMAPPの合成のための好ましい方法は、実施例1ならびにWolf et al., Tetrahedron Letters(2002)43: 2555およびHecht et al., Tetrahedron Letters(2002)43: 8929に記載されており、その開示は、HDMAPP化合物を製造するための方法のそれらの教示について参照により本明細書に組み込まれる。
【0132】
ヒトにおける免疫応答を増大または増強するためのHDMAPPなどの式I〜IIIの化合物の適当な量は、約1μg/kg〜約20mg/kg、好ましくは約10μg/kg〜約2mg/kg、さらに好ましくは約20μg/kg〜約1mg/kg、なおさらに好ましくは約20μg/kg〜100μg/kgにある用量である。好ましい例示的化合物では、式XII〜XVIIの化合物は、約1μg/kg〜約1mg/kgの投与量(1回の投与)において、好ましくは約10μg/kg〜100μg/kgの投与量を有する低用量投与計画において投与される。
【0133】
CHDMAPP
CHDMAPPの合成は、任意の適当な方法により行うことができる。実施例は、リン酸化またはホスホン化の前にE−ヒドロキシジメチルアリル型シントン(synthon)を製造するための、Nakamura et al.(1973)、Zoretic and Zhang(1996)またはUmbreit and Sharpless(1977)の方法を含み、それらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。次いで、リン酸化またはホスホン化は、PCT特許公開番号WO 03/050128、Brondino et al., (1996), またはValentijn et al.(1991)に記載の方法に従って行うことができ、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0134】
ヒトにおける免疫応答を増大または増強するためのCHDMAPPなどの式I〜IIIの化合物の適当な量は、約1μg/kg〜約20mg/kg、好ましくは約10μg/kg〜約2mg/kg、さらに好ましくは約20μg/kg〜約1mg/kg、なおさらに好ましくは約20μg/kg〜100μg/kgにある用量である。従って、好ましい例示的化合物では、式I〜IIIの化合物は、約1μg/kg〜約1mg/kgの投与量(1回の投与)において、好ましくは約10μg/kg〜100μg/kgの投与量を有する低用量投与計画において投与される。
【0135】
医薬製剤
アジュバント組成物の添加を伴うかまたは伴わない本発明の抗原およびポリヌクレオチドを含む製剤の処方または本発明の化合物の処方は、標準の薬学的処方の化学および方法を使用して行うことができ、そのすべては、当業者により容易に入手可能である。適当ならば、本発明の化合物は下記のようにして処方および投与することもできる。
【0136】
例えば、1種以上の抗原または1種以上の核酸分子(例えばプラスミドまたはウイルスベクター中に存在する)を含有する組成物を、1種以上の薬学的に許容される賦形剤またはビヒクルと組み合わせて液体製剤を提供することができる。
【0137】
非経口注射のために適当な組成物は、生理学的に許容される無菌の水性もしくは非水性液剤、分散剤、懸濁剤または乳剤および、無菌の注射剤または分散剤に再構成するための無菌の散剤を含むことができる。適当な水性および非水性担体、希釈剤、溶媒またはビヒクルの例は、水、エタノール、ポリオール(プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロール等)、それらの適当な混合物、植物油(オリーブ油などの)および注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチルを含む。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用により、分散剤の場合には必要な粒径の維持によりそして界面活性剤の使用により維持することができる。
【0138】
これらの組成物は、保存剤、湿潤剤、乳化剤および分散化剤などの追加の作用物質を含有することもできる。微生物の作用の予防は、種々の抗バクテリア剤および抗真菌剤、例えばバラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸等により確実にすることができる。等張剤、例えば糖、塩化ナトリウム等を含むことも望ましいことがある。注射可能な医薬形態の長期の吸収は吸収遅延剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの使用により引き起こすことができる。これらの賦形剤、ビヒクルおよび補助物質は、一般に、単独で投与される場合には組成物を受け取る個体において免疫応答を誘導しない且つ過度の毒性なしに投与することができる薬学的作用物質である。
【0139】
薬学的に許容される塩、例えば鉱酸塩、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩等;並びに有機酸の塩、例えば酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩等を含むこともできる。ペプチド、タンパク質または他の同様な分子がワクチン組成物中に含まれるべきであるならば、製剤が、特にペプチド、タンパク質および他の同様な分子のための安定剤として役立つ薬学的に許容される賦形剤を含有することも、必要ではないけれども、好ましい。ペプチドのための安定剤としても作用する適当な担体の例は、薬学的品質のデキストロース、スクロース、ラクトース、トレハロース、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、デキストラン等を含むが、これらに限定されるわけではない。本発明の化合物は、例えばリンゲルのラクテート(Ringer's lactate)と共に投与することができる。
【0140】
他の適当な担体は、デンプン、セルロース、リン酸ナトリウムもしくはリン酸カルシウム、クエン酸、酒石酸、グリシン、高分子量ポリエチレングリコール(PEGs)およびそれらの組合せを含むが、やはりこれらに限定されるわけではない。薬学的に許容される賦形剤、ベヒクルおよび補助物質の完全な検討は、REMINGTONS PHARMACEUTICAL SCIENCES(Mack Pub.Co., N. J. 1991)に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0141】
ワクチン投与量
各ワクチン用量におけるタンパク質の量は、典型的なワクチンにおける有意な不利な副作用なしに免疫保護応答を誘導する量として選ばれる。このような量は、どの特異免疫原が使用されるかおよびそれがいかに提示されるかに依存して変わるであろう。特定のワクチンのための最適量は、予防接種された被験体における適切な免疫応答の観察を含む標準研究により確かめることができる。最初の予防接種の後、被験体は、適当に間隔を置いて1回または複数回の追加刺激免疫感作を受けることができる。このようなワクチン処方剤は、初回抗原刺激または追加の抗原刺激予防接種計画のいずれかにおいて哺乳動物の粘膜表面に適用することができ、またはその替わりに例えば経皮、皮下または筋肉内経路により全身的に投与することができる。
【0142】
本発明の処方剤は、予防および治療目的の両方に使用することができる。従って、ウイルス、バクテリア、寄生虫感染、アレルギー、癌および他の非慢性障害の予防および処置のためのワクチンの製造における式Iの化合物の組合せの使用も提供される。従って、感染性疾患もしくは癌またはアレルギーまたは自己免疫疾患に感受性のまたは罹患している哺乳動物を処置する方法を提供する。本発明のさらなる局面では、医薬として使用するための本明細書に記載の式Iの化合物を含むワクチンまたはアジュバント組合せが提供される。ワクチン製剤は、Voller et al., により編集されたNew Trend and Developments in vaccines、University Park Press, Baltimore, Maryland, U.S.A. 1978に一般に記載されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0143】
本発明の組成物は、広い種類の供給源に由来する抗原を含有するワクチンを処方するのに使用されることが予見される。例えば、本明細書でさらに詳細に検討された抗原は、典型的にはヒト、バクテリアもしくはウイルス核酸、病原体由来の抗原もしくは抗原性調製物、
腫瘍由来の抗原もしくは抗原性調製物、宿主由来の抗原(これらはIgEに由来するペプチド、例えばIgEのヒスタミン放出性デカペプチド、組み換えにより産生されるタンパク質もしくはペプチドおよびキメラ融合タンパク質を含む)を含む。
【0144】
抗原および式Iの化合物を含む全身性ワクチン組成物が本発明により提供される。従って、疾患に感受性の個体または疾患に罹患している個体を、該個体の全身性経路を通して本明細書に実質的に記載された組成物を投与することにより処置する方法が提供される。個体が、感染性バクテリアおよびウイルス疾患、寄生虫疾患、前立腺癌、乳癌、結腸直腸癌、肺癌、膵臓癌、腎臓癌、卵巣癌または黒色腫癌;非癌慢性障害、アレルギー、アルツハイマー病、アテローム性動脈硬化症を含む群から選ばれる疾患にかかるのを予防するための方法であって、該個体の全身性経路を通して本明細書に実質的に記載された組成物を投与することを含む方法も提供される。
【0145】
本発明のさらなる局面および利点は、下記の実験部門に開示されるが、これらは本願を説明するものとみなすべきであり、本願の範囲を限定するものとみなすべきではない。本明細書では多数の参考文献が引用されており、これらの引用された参考文献の各々は参照により本明細書に組み込まれる。
【0146】
実施例
実施例1−HDMAPPの合成
Wolff et al., Tetrahedron Letters(2002)43: 2555またはHecht et al., Tetrahedron Letters(2002)43: 8929の方法に従って(E)−4−ヒドロキシ−3−メチルブト−2−エニルジホスフェートを製造する。生物学的試験を行う目的で、生成物の水性溶液を0.2μm濾過器を通す濾過により滅菌しそして−20℃で保存する。インビボで行われる試験の場合には、溶液を2カラム容積の脱イオン水により溶離されたDOWEX 50WX8−200カチオン樹脂カラム(ナトリウム形)に前以って通す。
【0147】
実施例2−C−HDMAPPの合成
C−HDMAPP合成は下記のように行われる。そのスキームも図1に示される。実施例2における参照番号は、カッコ内に参照番号を示すことにより図1に示される。
【0148】
(E)−4−クロロ−2−メチルブト−2−エン−1−オール[1]
Hecht等(Hecht et al., Tetrahedron Letters, 43(2002)8929-8933)の方法に従って、市販の2−メチル−2−ビニルオキシランを、−80℃〜−90℃でTiCl4で処理することにより(E)−4−クロロ−2−メチルブト−2−エン−1−オール[1]に変換する。
【0149】
(E)−4−クロロ−2−メチルブト−2−エン−1−(ピラニル−2’−オキシ)[2]の製造:
Miyashita等(Miyashita et al., J.Org.Chem. 42(1977)3772-3774)に従って、アリルアルコール[1]を、p−トルエンスルホン酸ピリジニウム(PPTs)の存在下に[1]をジヒドロピラン(DHP)と反応させることにより保護された形態[2]に変換する。
【0150】
メチルメチルホスホノモルホリデート(Methyl methylphosphonomorpholidate)[3]の製造
ファルネシルピロホスフェートアナログの製造のためのValentijn等の方法(Valentijn et al., Synlett(1991)663-664)に従って、市販のメチルホスホン酸ジクロリドをモルホリンおよびメタノールで処理することによりホスホニル化剤[3]を製造する。
【0151】
中間体[4]の製造
Valentijn等の方法(Valentijn et al., Synlett(1991)663-664)に従って、[2]を、ホスホニル化剤からその場(in situ)で得られたメチルリチオメチルホスホノモルホリデートと反応させることにより中間体[4]を製造する。
【0152】
(E)−5−ヒドロキシ−4−メチルペント−3−エニルピロホスホネート(C−HDMAPP)の製造
C−HDMAPPの粗溶液を3段階の手順で得る:
Phan and Poulter(J. Org.Chem.(2001), 66, 6705-6710)により報告されたメタノール中の水酸化テトラ−n−ブチルアンモニウムによる処理による中間体[4]の脱メチル化、
Valentijn等の方法(Valentijn et al., Synlett(1991)663-664)に従うリン酸とのカップリング、および
pH1〜2で塩酸によるピロホスホネートエステルのその後の処理によりピラニル−2’−オキシ基を脱保護してC−HDMAPPの粗溶液を生成すること。
【0153】
この段階で得られたC−HDMAPPの粗塩をDOWEX 50WX8−200樹脂(アンモニア形態)上でカチオン交換によりアンモニウム形態に変換する。得られる溶液の精製を、溶離剤として27%アンモニウム溶液/2−プロパノール50/50(v/v)を使用するシリカゲルでのクロマトグラフィーにより行う。生物学的試験を行う目的で、生成物の水性溶液を0.2μm濾過器を通す濾過により滅菌しそして−20℃で保存する。インビボで行われる試験の場合には、溶液を2カラム容積の脱イオン水により溶離されたDOWEX 50WX8−200カチオン樹脂カラム(ナトリウム形態)に前以って通す。
【0154】
実施例3−HDMAPP化合物についてインビトロおよびインビボ投与量応答
サイトカイン放出アッセイ
細胞(インビトロで増大させそして12〜15日の増大で凍結保存されたた一次ポリクローナルヒトVγ9Vδ2T細胞)を解凍しそしてそれらを2回すすぎそして遠心する。上清を除去しそして細胞を再懸濁させ、細胞をIL2 100UI/ml(最終濃度)の存在下に37℃で24時間インキュベーションする。細胞を洗浄し、遠心し、次いで上清を除去し、細胞を再懸濁させそして適当な最終濃度に調節する。細胞を96ウエルプレートのウエルに加える。
【0155】
1列のウエルに、標準希釈系列の3−(ブロモメチル)−3−ブタノール−1−イルジホスフェート(BrHPP)を加える。試験されるべき化合物、この場合にはCHDMAPPおよびHDMAPPをいくつかの希釈の後に実験ウエルに加える。
【0156】
BrHPP標準ならびに比較のためのイソペテニルピロホスフェート(IPP)ならびに試験化合物CHDMAPPおよびHDMAPPによるγδ細胞の刺激のために、全プレートを37℃で24時間インキュベーションする。この時間の後に、培養上清100μlをTNF−α投与量のために採取する。放出されたTNFa投与量の測定は、TNFa酵素イムノアッセイキット(ref. 11121, Immunotech-Beckman Coulter)の製造者の指示により記載のとおりに行う。405nmのODを読み取り、ODは培養上清中の放出されたTNF−αの濃度に比例している。データをExelソフトウエアで処理して試験化合物の濃度対TNF−αの濃度を比較し、そして各試験化合物のEC50を計算する。
【0157】
HDMAPPおよびCHDMAPPインビトロおよびインビボ生物活性
TNF−α放出アッセイを使用して、化合物HDMAPPおよびCHDMAPPの生物活性を評価した。インビトロ活性を図2に示す。比較の目的で、化合物イソペンテニルピロホスフェート(IPP)およびブロモヒドリンピロホスフェート(BrHPP)をインビボ比較に含ませる。HDMAPPのインビトロEC50は、約0.758nMであることが決定されたが、CHDMAPPのインビトロEC50は約0.873nMである。対照的に、より低い効能のBrHPPおよびIPPは、それぞれ約18.59nMおよび30.98μMのEC50値を示した。
【0158】
実施例4−体液性免疫応答および細胞性免疫応答におけるアジュバント効果
全身性体液性および細胞性免疫応答を、HDMAPPまたはCHDMAPP化合物と共処方されたHIVタンパク質で予防接種されたシノモルグスサルで検査する。
【0159】
これらの実験の目的は、HDMAPPまたはCHDMAPPと共に処方された組み換えHIVタンパク質、Gp120、Gp160、Gag、Rev、NefまたはTatタンパク質による免疫感作が、HIVタンパク質のみによる免疫感作後に達成される機能的血清抗体力価より大きい機能的血清抗体力価を誘発することができるかどうかを決定することである。実験ではネイティブgp120、gp160、gagまたはTatタンパク質が得られる(BD Biosciences, USAまたはNovitsky V, et al. J.Virol. 75: 9210, 2001に記載のように)。SDS−PAGEおよび抗原捕捉ELISAによりタンパク質純度を評価する。CHDMAPPまたはHDMAPPを、それぞれ実施例1および2に従って製造する。
【0160】
シノモルグスサルに、0,4週に及び場合により再び8週に、5〜20μg/用量の投与量で組み替えHIVタンパク質を筋肉内に予防接種する。
【0161】
ワクチンは、HIV由来のタンパク質が、約1μg/kg〜約20mg/kgまたは好ましくは約20μg/kg〜100μg/kgである用量のHDMAPPまたはCHDMAPPと共処方されるように調製される。対照サルは、PBS中のHIVタンパク質のみを注射される。
【0162】
血液サンプルを、免疫感作の後に2つの週に採取する(例えば6週目および8週目に)。抗HIVタンパク質抗体応答を、標準ELISAをベースとするアッセイを使用して測定して、抗HIVタンパク質抗体レベルを検出する。
【0163】
血液サンプル中のサイトカイン分泌細胞の頻度を測定するためのアッセイを使用して細胞媒介性応答を検出する。これは、Derby et al., Cytokine. 2001 Jan 21; 13(2): 85-90に記載のIFNγ産生性細胞を検出するためのEliSpotアッセイ(Mabtech, Sweden)またはNovitsky V, et al. Identification of human immunodeficiency virus type 1 Subtype C Gag-, Tat-, Rev-, and Nef-specific ELISpot-based cytotoxic T-lymphocyte responses for AIDS vaccine design. J. Virol. 75: 9210, 2001に記載のアッセイなどの任意の適当なアッセイを使用して行うことができ、その両方は参照により本明細書に組み込まれる。
【0164】
実施例5−HIVワクチンに対するホスホ抗原のアジュバント効果および粘膜免疫の誘導
動物を、VSV−gagで初回抗原刺激し(1週間離して3回の注射)そして1ヶ月後にAdeno−gagで追加の抗原刺激する(1週間離して3回の注射)。VSV−gagワクチンは、例えばHaglund et al., J Virol.2002; 76(15): 7506-17に記載されておりそしてAdeno-gagワクチンは、例えばZhong et al., Eur J Immunol. 2000 Nov; 30(11): 3281-90に記載されている。予防接種処方剤は、BrHPP(例示的ホスホ抗原化合物)を含有しそして飽和用量で静脈内注射されるであろう。各慣用の抗原特異細胞集団における表現型の変化および機能的変化を調べる。鼻粘膜を経由するワクチン組成物の投与後に尿生殖器(または他の粘膜)部位の粘膜免疫の活性化を確認するために、局所的に誘導されたサイトカインを選ばれた粘膜部位で測定する。メスの動物を使用して粘膜免疫尿生殖器部位の活性化を評価することができる。
【0165】
研究計画
グループI:ビヒクルのみを有する対照(2匹のメスを含む4匹の動物)
グループII:ホスホ抗原化合物+IL2(対照2、4匹の動物)
グループIII:ホスホ抗原化合物のみ(6匹の動物)
グループIV:ワクチンのみ(6匹の動物)
グループV:ホスホ抗原+ワクチン(6匹の動物)
【0166】
実施例6−ホスホ抗原特異VγVδ2T細胞およびM.tuberculosisに対するワクチンで誘導された保護の程度
実験デザイン:ホスホ抗原は、M.tuberculosisなどのバクテリア病原体に対する免疫を誘導するのに使用することもできる。最近実証されたサル結核モデルを使用して、総計16匹のシノモルグスサル(Macaca mullatta)を2つのグループ、実験グループおよび対照グループに分ける。実験グループを、ホスホ抗原およびM.tuberculosisを含有するワクチン組成物で免疫感作させる。対照グループを、標準予防接種プロトコール、例えば第1初回抗原刺激用量および5週間後の追加の抗原刺激用量、に従って、グルコースおよびM.tuberculosisを含有する組成物で同様に予防接種する。VγVδ2T細胞のT細胞免疫応答を免疫感作の後隔週で評価する。免疫感作の4ヶ月後に、サルを前記した(Shan et al., 2002)とおりエアゾルにより100CFUのM.tuberculosisでチャレンジする。M.tuberculosisチャレンジの後、サルを、臨床的に、病理学的におよび免疫学的に追跡する。血液サンプリングおよび肺胞細気管支洗浄法(bronchioalveolar lavage)を、M.tuberculosisチャレンジの後隔週で行う。M.tuberculosisチャレンジの3ヶ月後に、検死および組織学的研究のためにサルを殺す。
【0167】
VγVδ2T細胞の役割および結核に対する免疫におけるそれらの役割を評価するために、総計16匹のサルを2つのグループ、実験グループおよび対照グループに分ける。動物をホスホ抗原およびM.tuberculosis(実験グループ)またはグルコースおよびM.tuberculosis(対照グループ)を含有する組成物で免疫感作させる。実験グループをVγVδ2T細胞を欠乏させるために抗Vd2抗体で処理しそして、VγVδ2T細胞欠乏の直後に先に記載された(Shen et al., 2002)とおりにエアゾルにより100CFUのM.tuberculosisでチャレンジする。M.tuberculosisチャレンジの後、サルを、臨床的に、病理学的におよび免疫学的に追跡する。血液サンプリングおよび肺胞細気管支洗浄法を、M.tuberculosisチャレンジの後隔週で行う。M.tuberculosisチャレンジの3ヶ月後に、検死および組織学的研究のためにサルを殺す。
【0168】
実施例7−ホスホ抗原と組み合わせた「Hybrid I」抗原を使用する非ヒト霊長類における結核予防接種
「Hybrid I」ワクチンは、BCGからのAg85BおよびEZ6と呼ばれる2つの支配的なエピトープを融合する組み換えタンパク質である(Weinrich Olsen A, van Pinxteren LA, Meng Okkels L, Birk Rasmussen P and Andersen P(2001)Protection of mice with a tuberculosis vaccine based on a fusion protein of Ag 85b and ESAT-6. Infection and Immunity 69(5), pp2773-2778-Olsen AW, Williams A, Okkels LM, Hatch G and Andersen P(2004)Protective effect of a tuberculosis subunit vaccine based on a fusion of antigen 85b and ESAT-6 in the aerosol guinea pig model. Infection and Immunity 72(10), pp6148-6150)。それは、TB Vaccine Cluster(Unite de Genetique Mycobacterienne, Institut Pasteur, France)ネットワークにより注射可能な形態で分配される。Hybrid IはSSIアジュバント(Statens Serum Institut, Copenhagen, Denmarkから入手可能である)中に処方される。
【0169】
16匹のサルを下記のグループ:
グループI:Hybrid I処方のみ(8匹の個体)
グループII:ホスホ抗原と組み合わせたHybrid I処方*(8匹の個体)、
に分けた。
【0170】
ホスホ抗原、この例では本明細書の式IおよびVに従う(E)−5−ヒドロキシ−4−メチルペント−3−エニルピロホスホネート(CHDMAPP)を、約2mg/kgの用量でサルに投与した。ホスホ抗原化合物および抗原を、下記のスケジュール:初回抗原刺激用量、初回抗原刺激用量の4週間後の第1追加抗原刺激用量、および次いで13週目の第2追加抗原刺激用量、に従って3回注射し、その際ホスホ抗原化合物は、抗原(Hybrid I)と共同して、しかし別々の処方で、筋肉内に(i.m)投与された。
【0171】
第1追加抗原刺激用量に続く週、第2追加抗原刺激用量に続く週および第2追加抗原刺激用量後の4週間、ワクチン応答の追跡を行った。追跡は、IFNγ、TNF−α、IL2、IL4、IL5およびIL6を含む種々のサイトカインの血清中の量/レベルを決定することを含んでいた。Hybrid I処方へのホスホ抗原化合物の添加は、Hybrid I処方のみで観察されるサイトカイン産生の増加を超えるサイトカイン産生の大きな且つ統計的に有意な増加を生じさせた。ホスホ抗原のみで観察されるサイトカイン産生の増加を超える、ホスホ抗原のみにより誘導されることが知られているこれらのサイトカイン(IFNγ)についてのサイトカイン産生の大きな増加もあった。これらの結果は、抗原と共同した式Iの化合物の投与が、増殖能力に関与する多数のリンパ球成長因子の産生およびT細胞活性の誘導ならびに樹状細胞およびマクロファージなどの細胞集団の動員および活性化を誘発することができことを示唆しており、これはワクチンと組み合わせて使用されるとき保護応答を与えることができる能力を示す。
【0172】
替わりにまたは追加的に、IFNγ発現細胞の割合は、Elispotにより分析して決定することができる。異なるリンパ球集団の表現型分析、血清中のIL−2レベルおよびi.d(皮膚内)Hybrid Iまたはツベルクリンに対する遅延型過敏症(DTH)および異なる抗原に対するインビトロリンパ球増殖などの他の試験を、動物の免疫応答を分析するために行うこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0173】
【図1】本明細書でCHDMAPPとして示された化合物の合成スキームを示し、その完全な合成は実施例2に記載されている。
【図2】TNFα放出アッセイを使用して評価された、試験化合物HDMAPPおよびCHDMAPPで処理されたγδ T細胞のインビトロ生物学的活性を示す。比較の目的で、化合物イソペンテニルピロホスフェート(IPP)およびブロモヒドリンピロホスフェート(BrHPPまたはホスホスチム)をインビボ比較において含ませた。HDMAPPのインビトロEC50は、約0.758nMであることが決定されたが、CDMAPPのインビトロEC50は約0.873nMであった。対照的に、より低い効能のBrHPPおよびIPPは、それぞれ、約18.59nMおよび30.98μのEC50値を示した。
【図3】ホスホ抗原アジュバントを伴うおよび伴わないBCG予防接種に対する16匹のサルのインビボ応答を示す。サルを、8匹の個体の2つの群に分け(Hybrid Iワクチン単独と比較したホスホ抗原+Hybrid Iワクチン)そしてIFNγ、TNFα、IL2、IL4、IL5および、IL6を含む、リンパ球動員、増殖および/または活性化の重要なメディエータとして作用することが知られている種々のサイトカインの血清中の量/レベルを評価することにより生物学的応答を決定した。Hybrid I処方へのホスホ抗原の添加は、Hybrid I単独で観察されたサイトカイン産生を超えるサイトカイン産生の大きな且つ統計的に有意な増加を生じた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】


(式中、R3、R4およびR5は、同一であるかまたは相異なり、水素または(C1〜C3)アルキル基であり、Wは−CH−または−N−であり、R6は、(C2〜C3)アシル、アルデヒド、(C1〜C3)アルコールまたは(C2〜C3)エステルであり、Cat+は、1つの(または複数の、同一であるかまたは相異なる)有機または無機カチオン(プロトンを含む)を表し、BはOまたはNHであり、mは1〜3の整数であり、Aは、O、NH、CHF、CF2またはCH2であり、そしてYは、O-Cat+、ヌクレオシドまたは基−A−Rであり、ここでRは、少なくとも1個のヘテロ原子により場合により中断されている線状、分岐状もしくは環状、芳香族もしくは非芳香族の、飽和または不飽和のC1〜C50炭化水素基であり、該炭化水素基は、アルキル、アルキレニル、またはアルキニル、好ましくはアルキルまたはアルキレンを含み、該炭化水素基は、(C1〜C6)アルキル、(C2〜C6)アルキレニル、(C2〜C6)アルキニル、(C2〜C6)エポキシアルキル、アリール、複素環、(C1〜C6)アルコキシ、(C2〜C6)アシル、(C1〜C6)アルコール、カルボキシル基(−COOH)、(C2〜C6)エステル、(C1〜C6)アミン、アミノ基(−NH2)、アミド(−CONH2)、(C1〜C6)イミン、ニトリル、ヒドロキシル(−OH)、アルデヒド基(−CHO)、ハロゲン、(C1〜C6)ハロゲノアルキル、チオール(−SH)、(C1〜C6)チオアルキル、(C1〜C6)スルホン、(C1〜C6)スルホキシドおよびそれらの組合せからなる群より選ばれる1つまたは複数の置換基により置換されていてもよい)
のγδT細胞活性化物質を含むワクチンアジュバント組成物。
【請求項2】
該γδT細胞活性化物質が、式(II)または(III):
【化2】


(式中、R3、R4およびR5は、同一であるかまたは相異なり、水素または(C1〜C3)アルキル基であり、Wは−CH−または−N−であり、R6は、(C2〜C3)アシル、アルデヒド、(C1〜C3)アルコールまたは(C2〜C3)エステルであり、Cat+は、1つ(または複数の、同一であるかまたは相異なる)有機または無機カチオン(プロトンを含む)を表し、mは1〜3の整数であり、そしてYは、O-Cat+またはヌクレオシドである)
の化合物である、請求項1に記載のワクチンアジュバント組成物。
【請求項3】
該γδT細胞活性化物質が、(E)−4−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブテニルピロホスフェート(HDMAPP)である、請求項3に記載のワクチンアジュバント組成物。
【請求項4】
該γδT細胞活性化物質が、(E)−5−ヒドロキシ−4−メチルペント−3−エニルピロホスホネート(CHDMAPP)である、請求項3に記載のワクチンアジュバント組成物。
【請求項5】
抗原または抗原の組合せおよび、式I:
【化3】


(式中、R3、R4およびR5は、同一であるかまたは相異なり、水素または(C1〜C3)アルキル基であり、Wは−CH−または−N−であり、R6は、(C2〜C3)アシル、アルデヒド、(C1〜C3)アルコールまたは(C2〜C3)エステルであり、Cat+は、1つの(または複数の、同一であるかまたは相異なる)有機または無機カチオン(プロトンを含む)を表し、BはOまたはNHであり、mは1〜3の整数であり、Aは、O、NH、CHF、CF2またはCH2であり、そしてYは、O-Cat+、ヌクレオシドまたは基−A−Rであり、ここでRは、少なくとも1個のヘテロ原子により場合により中断されている線状、分岐状もしくは環状、芳香族もしくは非芳香族の、飽和または不飽和のC1〜C50炭化水素基であり、該炭化水素基は、アルキル、アルキレニル、またはアルキニル、好ましくはアルキルまたはアルキレンを含み、該炭化水素基は、(C1〜C6)アルキル、(C2〜C6)アルキレニル、(C2〜C6)アルキニル、(C2〜C6)エポキシアルキル、アリール、複素環、(C1〜C6)アルコキシ、(C2〜C6)アシル、(C1〜C6)アルコール、カルボキシル基(−COOH)、(C2〜C6)エステル、(C1〜C6)アミン、アミノ基(−NH2)、アミド(−CONH2)、(C1〜C6)イミン、ニトリル、ヒドロキシル(−OH)、アルデヒド基(−CHO)、ハロゲン、(C1〜C6)ハロゲノアルキル、チオール(−SH)、(C1〜C6)チオアルキル、(C1〜C6)スルホン、(C1〜C6)スルホキシドおよびそれらの組合せからなる群より選ばれる1つまたは複数の置換基により置換されていてもよい)
のγδT細胞活性化物質を含むワクチン組成物。
【請求項6】
該γδT細胞活性化物質が、式(II)または(III):
【化4】


(式中、R3、R4およびR5は、同一であるかまたは相異なり、水素または(C1〜C3)アルキル基であり、Wは−CH−または−N−であり、R6は、(C2〜C3)アシル、アルデヒド、(C1〜C3)アルコールまたは(C2〜C3)エステルであり、Cat+は、1つ(または複数の、同一であるかまたは相異なる)有機または無機カチオン(プロトンを含む)を表し、mは1〜3の整数であり、そしてYは、O-Cat+またはヌクレオシドである)
の化合物である、請求項5に記載のワクチン組成物。
【請求項7】
該γδT細胞活性化物質が、(E)−4−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブテニルピロホスフェート(HDMAPP)である、請求項6に記載のワクチン組成物。
【請求項8】
該γδT細胞活性化物質が、(E)−5−ヒドロキシ−4−メチルペント−3−エニルピロホスホネート(CHDMAPP)である、請求項6に記載のワクチン組成物。
【請求項9】
該ワクチン組成物が、微生物感染を予防もしくは処置し、または腫瘍を予防もしくは処置する、請求項5に記載のワクチン組成物.
【請求項10】
γδT細胞活性化物質は、哺乳動物における抗原に対して体液性応答、CTL応答または体液性応答およびCTL応答の両方を誘発するのに十分な量で存在し、好ましくは、該体液性応答またはCTL応答は、該γδT細胞活性化物質の不存在下に抗原を含むワクチンまたは組成物を投与することにより得られる体液性応答またはCTL応答と比較して増強される、請求項1〜9のいずれか1つに記載のワクチン組成物。
【請求項11】
被験体におけるワクチンの効能を改良するか、または疾患、さらに詳しくは腫瘍疾患または微生物感染疾患を処置するか、または被験体を、疾患、さらに詳しくは腫瘍疾患または微生物感染疾患から防御する方法であって、該被験体に、治療的有効量の、
(a)抗原または抗原の組合せ、および
(b)式I:
【化5】


(式中、R3、R4およびR5は、同一であるかまたは相異なり、水素または(C1〜C3)アルキル基であり、Wは−CH−または−N−であり、R6は、(C2〜C3)アシル、アルデヒド、(C1〜C3)アルコールまたは(C2〜C3)エステルであり、Cat+は、1つの(または複数の、同一であるかまたは相異なる)有機または無機カチオン(プロトンを含む)を表し、BはOまたはNHであり、mは1〜3の整数であり、Aは、O、NH、CHF、CF2またはCH2であり、そしてYは、O-Cat+、ヌクレオシドまたは基−A−Rであり、ここでRは、少なくとも1個のヘテロ原子により場合により中断されている線状、分岐状もしくは環状、芳香族もしくは非芳香族の、飽和または不飽和のC1〜C50炭化水素基であり、該炭化水素基は、アルキル、アルキレニル、またはアルキニル、好ましくはアルキルまたはアルキレンを含み、該炭化水素基は、(C1〜C6)アルキル、(C2〜C6)アルキレニル、(C2〜C6)アルキニル、(C2〜C6)エポキシアルキル、アリール、複素環、(C1〜C6)アルコキシ、(C2〜C6)アシル、(C1〜C6)アルコール、カルボキシル基(−COOH)、(C2〜C6)エステル、(C1〜C6)アミン、アミノ基(−NH2)、アミド(−CONH2)、(C1〜C6)イミン、ニトリル、ヒドロキシル(−OH)、アルデヒド基(−CHO)、ハロゲン、(C1〜C6)ハロゲノアルキル、チオール(−SH)、(C1〜C6)チオアルキル、(C1〜C6)スルホン、(C1〜C6)スルホキシドおよびそれらの組合せからなる群より選ばれる1つまたは複数の置換基により置換されていてもよい)
のγδT細胞活性化物質、
を投与する段階を含む方法。
【請求項12】
該γδT細胞活性化物質が、式(II)または(III):
【化6】


(式中、R3、R4およびR5は、同一であるかまたは相異なり、水素または(C1〜C3)アルキル基であり、Wは−CH−または−N−であり、R6は、(C2〜C3)アシル、アルデヒド、(C1〜C3)アルコールまたは(C2〜C3)エステルであり、Cat+は、1つ(または複数の、同一であるかまたは相異なる)有機または無機カチオン(プロトンを含む)を表し、mは1〜3の整数であり、そしてYは、O−Cat+またはヌクレオシドである)
の化合物である、請求項11に記載方法。
【請求項13】
該γδT細胞活性化物質が、(E)−4−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブテニルピロホスフェート(HDMAPP)である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
該γδT細胞活性化物質が、(E)−5−ヒドロキシ−4−メチルペント−3−エニルピロホスホネート(CHDMAPP)である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
該ワクチンが、微生物感染を予防または処置する、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
該ワクチンが、腫瘍を予防または処置する、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
該γδT細胞活性化物質および該抗原を共同投与する、請求項11〜16のいずれか1つに記載の方法。
【請求項18】
該γδT細胞活性化物質を、該哺乳動物における抗原に対して体液性応答、CTL応答または体液性応答およびCTL応答の両方を誘発するのに十分な量で投与し、好ましくは、該体液性応答またはCTL応答は、該γδT細胞活性化物質の不存在下に抗原で得られる体液性応答またはCTL応答と比較して増強される、請求項11〜17のいずれか1つに記載の方法。
【請求項19】
請求項5〜10のいずれか1つに記載のワクチン組成物を含有する適当な容器を含むワクチンキット。
【請求項20】
請求項1〜4のいずれか1つに記載のワクチンアジュバント組成物を含有する適当な容器および抗原または抗原の組合せを含有する適当な容器を含むワクチンキット。
【請求項21】
該γδT細胞活性化物質約50μg〜約100mgを含む、請求項1〜10のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項22】
該γδT細胞活性化物質約500μg〜約10mgを含む、請求項1〜10のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項23】
該γδT細胞活性化物質約100mg未満を含む、請求項1〜10のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項24】
該γδT細胞活性化物質約10mg未満を含む、請求項1〜10のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項25】
該γδT細胞活性化物質約1mg未満を含む、請求項1〜10のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項26】
該γδT細胞活性化物質を約1μg/kg〜約1mg/kgの用量で投与する、請求項11〜18のいずれか1つに記載の方法。
【請求項27】
該γδT細胞活性化物質を約10μg/kg〜約100μg/kgの用量で投与する、請求項11〜18のいずれか1つに記載の方法。
【請求項28】
該γδT細胞活性化物質を約1mg/kg未満の用量で投与する、請求項11〜18のいずれか1つに記載の方法。
【請求項29】
該γδT細胞活性化物質を約100μg/kg未満の用量で投与する、請求項11〜18のいずれか1つに記載の方法。
【請求項30】
治療的に有効量の(a)抗原または抗原の組合せおよび(b)γδT細胞活性化物質を該被験体に投与する該段階を、該抗原または抗原の組合せおよびγδT細胞活性化物質の先の投与の後少なくとも1週間の間隔の後に繰り返す、請求項11〜18または26〜29のいずれか1つに記載の方法。
【請求項31】
治療的に有効量の(a)抗原または抗原の組合せおよび(b)γδT細胞活性化物質を該被験体に投与する該段階を、該抗原または抗原の組合せおよびγδT細胞活性化物質の先の投与の後少なくとも2週間の間隔の後に繰り返す、請求項11〜18または26〜29のいずれか1つに記載の方法。
【請求項32】
治療的に有効量の(a)抗原または抗原の組合せおよび(b)γδT細胞活性化物質を該被験体に投与する該段階を、該抗原または抗原の組合せおよびγδT細胞活性化物質の先の投与の後少なくとも3週間の間隔の後に繰り返す、請求項11〜18または26〜29のいずれか1つに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−534743(P2007−534743A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−510157(P2007−510157)
【出願日】平成17年4月25日(2005.4.25)
【国際出願番号】PCT/IB2005/001485
【国際公開番号】WO2005/102385
【国際公開日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【出願人】(504022515)イネイト・ファーマ (5)
【氏名又は名称原語表記】INNATE PHARMA
【Fターム(参考)】