説明

アスファルトルーフィングとこれを用いた屋根構造

【課題】高耐久性を有するアスファルトルーフィングと屋根構造の提供。
【解決手段】樹脂膜1、アルミ箔2、樹脂膜3、繊維シート4、アスファルトを主成分とするシート6を順次積層したことを特徴とし、屋根材からの熱をアルミ箔で反射することで、アスファルトの大きな劣化要因である熱をアスファルトに伝導させないことによりアスファルトの劣化が防止でき高耐久性を有する。また、アルミ箔表面に樹脂膜を設けることによりアルミ箔の酸化劣化を防止し、長期間にわたり反射効果を維持することができ、また、アルミ箔裏面の繊維シートで機械的強度を強くし、アスファルトを主成分とするシートと十分な密着が可能となる。また、本願発明品と屋根材裏面の距離を20mm以上とする屋根構造にすることにより反射した熱を効率よく逃がすことが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、住宅の屋根葺き材の補助防水材として利用されているアスファルトルーフィングとこれを用いた屋根構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、合板や野地板などの屋根下地材上に、瓦などの屋根材の補助的な防水としてアスファルトルーフィングが施工されている。しかしながら、瓦などの屋根材の耐久年数は60年と長いが、アスファルトルーフィングの耐久年数は、屋根材より短いため、耐久年数の長いアスファルトルーフィングが求められている。高耐久性が得られる防水材として、特開2007−290136が開示されている。この発明は、主材であるアスファルト層の外表面を、紫外線、熱、水分、酸素、オゾンなどを反射でき、かつアスファルト中の揮発分を封緘できるバリア層で被覆したことを特徴とする防水材で、さらに、バリア層が、金属箔又は該金属箔を蒸着した樹脂フィルム或いはガスバリア性を有するポリエチレンなどの樹脂被膜であることを特徴としている。屋根材施工後において、アスファルトルーフィングの劣化の主な要因として、熱が挙げられる。通常、夏期において、屋根材は直射日光で60℃以上に加熱され、その輻射熱により、屋根材の裏面に位置するアスファルトルーフィングが加熱され、徐々にアスファルトルーフィング中のアスファルトが熱により劣化する。しかしながら、特許文献1の発明では、表面材にガスバリア性を有する樹脂皮膜の場合であることを示唆していることより、アスファルトルーフィング中のアスファルトは加熱された状態となる。さらに、アスファルトと金属箔又は樹脂皮膜は、材料の種類によっては、材料が十分密接せず、剥離することがある。また、金属箔単体をアスファルトルーフィングの表面に貼着した場合、アルミ箔自身の強度がないため、施工作業中や瓦等の材料の接触により、アルミ箔が破損することがある。また、一般的に金属箔が露出していると、特にアルミ箔を使用した場合、酸化によりアルミ箔表面が黒ずみ、屋根材からの熱反射効果が低下する問題もある。
【特許文献1】特開2007−290136
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本願発明は、アスファルトルーフィング中のアスファルトの熱による劣化を防止す
るために、該アスファルトに屋根材からの熱を伝達させないことにより、高耐久性を有し、各構成材料が十分な密着性を有し、施工作業中もしくは瓦等の材料による表面材の破損もなく、また、熱反射効果が金属箔の酸化により低下しないアスファルトルーフィングを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するため、樹脂膜1、アルミ箔2、樹脂膜3、繊維シート4を順次
積層したシート5をアスファルトを主成分とするシート6の表面のアスファルトが加熱され接着性を有している間に貼合し積層したことを特徴とした。
【0005】
さらに、請求項1記載のアスファルトルーフィングで、前記樹脂膜1の表側に、塗膜層7を積層したことを特徴とした。
【0006】
請求項1および請求項2のアスファルトルーフィングを屋根下地材上に仮止めし、
その上に屋根材を施工する屋根構造において、アスファルトルーフィングと屋根材裏面との距離が少なくとも20mm以上確保したことを特徴とした。
【発明の効果】
【0007】
本願発明は、アスファルトを主成分としたシート表面に、順次、樹脂膜1、アルミ
箔2、樹脂膜3、繊維シート4を順次積層したシート5を積層することにより、屋根材からの輻射熱を、アルミ箔2の熱反射効果でアスファルトを主成分としたシート中の該アスファルトに熱を伝達させないことにより、熱による劣化を防止する効果がある。アルミ箔2上に樹脂膜1を設け、アルミ箔2と樹脂膜1が密着することで、アルミ箔2の酸化を防止し、熱反射効果の低下を防ぐ効果がある。
【0008】
さらに、請求項1記載のアスファルトルーフィング表面に、塗膜層7を設けること
により、施工中の直射日光による眩しさを防止する効果がある。
【0009】
また、アルミ箔2と繊維シート4を樹脂膜3で密着させることにより、アスファル
トを主成分とするシート5の表面のアスファルトが加熱され接着性を有している間にアスファルトが繊維シート4に浸入し、樹脂膜1、アルミ箔2、樹脂膜3、繊維シート4を順次密着、積層したシート5とアスファルトを主成分とするシート6を密着させることができる。さらに機械的強度が強くなるため、施工作業中もしくは瓦等の材料による表面材の破損を防止できる。
【0010】
請求項1および請求項2のアスファルトルーフィングを屋根下地材上に仮止めしその上に屋根材を施工する屋根構造において、アスファルトルーフィングと屋根材裏面との距離が少なくとも20mm以上確保することにより、屋根材からの輻射熱をアルミ箔2で熱反射し、その反射熱を効率よく逃がすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本願発明の実施の最良の形態を図面に基づいて説明する。図1は本願発明の
断面図を示す。
【0012】
本願発明は、樹脂膜1、アルミ箔2、樹脂膜3、繊維シート4を順次密着、積層し
たシート5とアスファルトを主成分とするシート6から構成される。
【0013】
シート5を構成するアルミ箔は、厚さ5μm〜30μmの範囲のものが使用できる
。樹脂膜1および樹脂膜3に使用する樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンおよ
びエチレン・酢酸ビニル共重合体等の熱可塑性樹脂であれば特に限定はない。厚さ10μ
m〜30μmの範囲のものが使用できる。繊維シート4は、加熱したアスファルトが繊維
間に浸入できるものであればよく、織布や不織布が使用できる。材質は特に限定はないが
、ポリプロピレン、ポリエステルなどの合成繊維もしくはガラス、ロックウールなどの無
機系繊維からなる不織布が好ましい。
【0014】
前記シート5は、アルミ箔2の上面に熱可塑性樹脂を加熱し押し出し、アルミ箔2
表面に樹脂膜1を積層する。また、その反対側についても熱可塑性樹脂を加熱し押し出し樹脂膜3を形成し、その樹脂が接着性を有している間に繊維シート4を貼合し積層する。
【0015】
アスファルトを主成分とするシート6は、表面にアスファルトがあるものであれば特に限定はない。一例であるが、古紙を主成分としたラグ質原紙や合成繊維不織布からなる不織布などの基材に、アスファルトを浸透、その両面にアスファルトを被覆し被覆アスファルト層を設ける。シート5を積層する反対側の面は、特に限定はしないが、鉱物質粉粒を撒着し鉱物質粉粒層を設ける、または繊維シートやフィルムなどのシートを積層、または粘着層、剥離層を積層することができる。なお、アスファルトは、ストレートアスファルト、ブローンアスファルトもしくはアスファルトにスチレン・ブタジエン・スチレン共重合体などの熱可塑性樹脂またはプロセスオイル等の改質剤を混入した改質アスファルトを使用できる。また、アスファルトに炭酸カルシウムなどの増量材の混入も可能である。
【0016】
前記したアスファルトを主成分とするシート6の表面のアスファルトが100℃以
上であると、アスファルト自体が接着性を有している間に樹脂膜1、アルミ箔2、樹脂膜
3、繊維シート4を積層したシート5を貼合する。そうすることにより、軟化したアスフ
ァルトが繊維シート4に浸入し、樹脂膜1、アルミ箔2、樹脂膜3、繊維シート4を積層
したシート5とアスファルトを主成分とするシート6が密着する。
【0017】
塗膜層7であるが、樹脂膜1の表面に積層する。塗料の種類は特に限定しないが、
アクリル系エマルジョン樹脂にフィラー、顔料を添加したものが好ましい。前記塗料を塗布、乾燥させることにより塗膜層7を設ける。
【0018】
屋根構造であるが、本願発明品上に、横桟を施工し、空気層を少なくとも20mm確保した状態で屋根材を施工する。また、横桟を施工する前に縦桟を施工することもできる。横桟および縦桟の材質は特に限定せず、木やプラスティックを使用することができる。
【実施例】
【0019】
図2に本願発明の実施例1の断面図を示す。実施例1は、目付120g/m2のポリ
エステルからなる不織布を基材層9とし、ストレートアスファルト60〜80にスチレン・ブタジエン・スチレン共重合体を10重量%、炭酸カルシウムを5重量%混入した改質アスファルトを浸透、被覆させ被覆アスファルト層8、10を設け、その被覆アスファルト層8のアスファルトが接着性を有している間に、予め厚み7μmのアルミ箔2の両面に、ポリエチレン樹脂を各15μmの厚みで被覆させ樹脂膜層2、4を設け、樹脂膜層4側に目付60g/m2のポリエステルからなる不織布を貼合したシートを貼合し、裏面側の被覆アスファルト層は、鉱物質粉粒を撒着した。
【0020】
図3に本願発明の実施例2の断面図を示す。実施例2は、実施例1の本願発明品の表面に、塗布量が乾燥状態で20g/m2となるよう白色顔料混入アクリル樹脂系エマルジョンを塗布した。
【0021】
図4に実施例1の裏面に繊維シートやフィルムなどのシートを積層した実施例の断面図、図5に実施例1の裏面に粘着層、剥離層を積層した実施例の断面図を示す。
【0022】
比較例として、JIS A 6005に規定されるアスファルトルーフィング94
0を用いた。比較試験として、自記分光光度計(U4000 日立製作所製)を用いて2
40nmから2600nmの分光反射率を測定し、結果を図6に示す。これより、比較例
であるアスファルトルーフィング940と比較し、実施例1および実施例2の分光反射率
は、紫外線領域、可視光線領域、近赤外線領域全ての領域で大きい反射率を示し、熱反射
効果が認められた。よって、樹脂膜1、アルミ箔2、樹脂膜3、繊維シート4を積層した
シート7を積層することにより、熱が反射され、アスファルトに熱を伝導させない効果が
認められ、熱による劣化を防止することが明らかになった。
【0023】
屋根構造について、図7に1例を示す。構造用合板の屋根下地材上に本願発明品を
ステープルを用いて仮止め固定し、その上に下に垂木の位置する場所に5×20mmの木
の縦桟を施工し、その上に15×30mmの横桟を施工し、屋根材を施工することにより、本願発明品と屋根材裏面の距離を20mmとすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本願発明は、樹脂膜1、アルミ箔2、樹脂膜3、繊維シート4を順次密着、積層し
たシート5をアスファルトを主成分としたシート6を貼合させることにより、屋根材からの熱を反射し、アスファルトに熱を伝達させないことにより、熱による劣化を防止し、高耐久性を有するアスファルトルーフィングを提供することができる。また、アルミ箔2表面に樹脂膜層1を設けることにより、アルミ箔の酸化による劣化を防止し、熱反射効果を長期にわたり継続することが可能となり、また、繊維シート4を設けることにより、アスファルトを主成分とするシート6と樹脂膜1、アルミ箔2、樹脂膜3、繊維シート4を順次密着、積層したシート5が十分な密着が可能となった。また、本願発明品と屋根材裏面の距離を20mm以上確保することにより、アルミ箔2により反射された熱を効率よく逃がすことが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本願発明の断面図である。
【図2】本願発明の実施例1の断面図である。
【図3】本願発明の実施例2の断面図である。
【図4】本願発明の裏面に繊維シートやフィルムなどのシートを積層した実施例の 断面図である。
【図5】本願発明の裏面に粘着層、剥離層を積層した実施例の断面図である。
【図6】本願発明の自記分光光度計による分光反射率の結果である。
【図7】本願発明の屋根構造の1実施例の断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 樹脂膜
2 アルミ箔
3 樹脂膜
4 繊維シート
5 樹脂膜1、アルミ箔2、樹脂膜3、繊維シート4を順次密着、積層したシート
6 アスファルトを主成分とするシート
7 塗膜層
8 被覆アスファルト層
9 基材層
10 被覆アスファルト層
11 鉱物質粉粒層
12 繊維シートやフィルムなどのシート
13 粘着層
14 剥離層
15 屋根材
16 横桟
17 縦桟
18 本願発明品
19 屋根下地材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂膜1、アルミ箔2、樹脂膜3、繊維シート4を順次密着、積層したシート5を
アスファルトを主成分とするシート6の表面のアスファルトが加熱され接着性を有している間に貼合し積層したことを特徴としたアスファルトルーフィング。
【請求項2】
前記樹脂膜1の表側に、塗膜層7を積層したことを特徴とする請求項1記載のアス
ファルトルーフィング。
【請求項3】
請求項1および請求項2のアスファルトルーフィングを屋根下地材上に仮止めしその上に屋根材を施工する屋根構造において、アスファルトルーフィングと屋根材裏面との距離が少なくとも20mm以上確保したことを特徴とする屋根構造。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−261212(P2010−261212A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−112598(P2009−112598)
【出願日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(591260513)七王工業株式会社 (11)