説明

アスファルト混合物の製造方法およびアスファルト混合物

【課題】バインダ貯蔵時における問題を有することなく、アスファルトラバーと同様の耐流動性改善効果が得られるアスファルト混合物の製造方法およびアスファルト混合物を提供する。
【解決手段】アスファルトと、骨材とを含むアスファルト混合物の製造方法である。骨材と加硫ゴム粉とを加熱混合した後、得られた骨材と加硫ゴム粉との混合物中に、加熱したアスファルトを添加混合する。加硫ゴム粉の添加量は、好適には、アスファルトと骨材との総量に対し0.1〜5.0質量%の範囲内とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアスファルト混合物の製造方法(以下、単に「製造方法」とも称する)およびアスファルト混合物に関し、詳しくは、アスファルトと骨材とを含むアスファルト混合物の製造方法およびそれにより得られるアスファルト混合物に関する。
【背景技術】
【0002】
粉砕した微細な加硫ゴム粉をあらかじめストレートアスファルトと混合し、熟成させることにより得られる改質バインダとして、アスファルトラバーが知られている。このアスファルトラバーバインダの特徴は、アスファルトと加硫ゴム粉とを高温で撹拌することで、加硫ゴム粉が膨潤することにより、高粘度のバインダへと改質されている点にある。このアスファルトラバーバインダを用いることで、舗装の耐流動性(耐わだち性)を改善することができる。
【0003】
アスファルトラバーの製造方法としては、加熱溶解したストレートアスファルトに廃タイヤのゴム粉末を添加し、所定温度に保持して所定時間の撹拌、混合をした後、これを所定温度で所定時間熟成させる方法が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−328139号公報(特許請求の範囲等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
わが国では、アスファルトバインダについては多現場少量出荷が多いため、一般のストレートアスファルトおよび改質アスファルトは、いずれも通常、製造後、輸送され、その後、高温状態でアスファルトタンクに一時貯蔵されて、このアスファルトタンクから必要に応じ適量を取り出すことにより、使用されている。
【0006】
しかしながら、従来のアスファルトラバーバインダをこれらと同様にタンク内で貯蔵すると、この貯蔵時の再加熱や過加熱によって、バインダの性状や性能が変化しやすいという問題があった。したがって、このような問題を有することなく、アスファルトラバーと同様の性能が得られる舗装材料としてのアスファルト混合物の実現が望まれていた。
【0007】
そこで本発明の目的は、従来のようなバインダ貯蔵時における問題を有することなく、アスファルトラバーと同様の耐流動性改善効果が得られるアスファルト混合物の製造方法およびアスファルト混合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は鋭意検討した結果、アスファルトラバーのような、ゴム粉とアスファルトとをあらかじめ混合するプレミックスではなく、これらをアスファルト混合物製造時に直接混合物製造用ミキサーに投入して混合するプラントミックスによりアスファルト混合物を調製するものとすることで、上記問題を解消できることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明のアスファルト混合物の製造方法は、アスファルトと、骨材とを含むアスファルト混合物の製造方法において、
前記骨材と加硫ゴム粉とを加熱混合した後、得られた骨材と加硫ゴム粉との混合物中に、加熱した前記アスファルトを添加混合することを特徴とするものである。
【0010】
本発明においては、前記加硫ゴム粉の添加量を、前記アスファルトと骨材との総量に対し0.1〜5.0質量%の範囲内とすることが好ましい。また、前記加硫ゴム粉の粒径は、好適には10〜5000μmの範囲内とする。
【0011】
また、本発明のアスファルト混合物は、上記本発明の製造方法により製造されたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、上記構成としたことにより、バインダ貯蔵時における性状変化や性能変化の問題を有することなく、アスファルトラバーと同様の耐流動性改善効果が得られるアスファルト混合物の製造方法およびアスファルト混合物を実現することが可能となった。また、本発明によれば従来のプレミックスのバインダ製造工程を省略できることから、本発明は、実用性にも優れるものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適実施形態について詳細に説明する。
本発明は、アスファルトと骨材とを含む、舗装材料としてのアスファルト混合物の製造方法の改良に係るものである。
【0014】
本発明の製造方法においては、従来のアスファルトラバーのようなプレミックスに代えて、アスファルトとゴム粉との混合をプラントミックスで行う点に特徴がある。具体的には、まず、骨材と加硫ゴム粉とを加熱混合した後、得られた骨材と加硫ゴム粉との混合物中に、加熱したアスファルトを添加混合することにより、アスファルト混合物を製造する。これにより、本発明では、従来のアスファルトラバーを用いた舗装材料の製造方法において、実質的にバインダ製造を省略してバインダ貯蔵の問題をなくすことができるとともに、従来のアスファルトラバーのような耐流動性の改善を図ることが可能となったものである。本発明においては、加熱したアスファルトと、骨材−加硫ゴム粉混合物との加熱混合により、アスファルトと骨材および加硫ゴム粉とが良好に混合される。
【0015】
本発明の製造方法においては、骨材と加硫ゴム粉とを加熱混合した後、得られた骨材と加硫ゴム粉との混合物中に加熱アスファルトを添加混合する点のみが重要であり、それ以外の具体的製造条件については、特に制限されるものではない。また、本発明のアスファルト混合物は、かかる本発明の製造方法により得られるものであり、少なくともアスファルトと骨材と加硫ゴム粉とを含むものであって、それ以外の詳細な配合等については、特に制限されるものではない。
【0016】
例えば、骨材と加硫ゴム粉との加熱混合は、150〜180℃の範囲で、常法に従い行うことができる。また、その後、これら骨材と加硫ゴム粉との混合物に加熱アスファルトを添加混合する際の温度は、150〜180℃の範囲とすることができる。
【0017】
本発明のアスファルト混合物における加硫ゴム粉の添加量は、好適には、アスファルトと骨材との総量に対し、外添加で0.1〜5.0質量%の範囲内である。加硫ゴム粉の添加量がこの範囲よりも少ないと、耐流動性の向上が見られない場合があり、この範囲よりも多いと、ゴムの弾性により締固めが不十分となりやすく十分な耐久性が得られないおそれがあり、いずれも好ましくない。
【0018】
また、本発明に用いる加硫ゴム粉としては、粒径が10〜5000μmの範囲内である微細ゴム粉を用いることが好ましい。加硫ゴム粉の材質等については特に限定されず、天然ゴムやイソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、ブタジエンゴム等を利用することができる。具体的には例えば、ゴムタイヤ、ウェザーストリップ、ホース類等の使用済み廃材、成形の際に生成する不要の端材、成形不良品等から得られる粉砕ゴム粉を好適に用いることができる。
【0019】
また、本発明に用いるアスファルトとしては、ストレートアスファルト40/60、60/80、80/100、100/120等を挙げることができる。これらはそれぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。また、ストレートアスファルトは、脱色アスファルトであってもよい。
【0020】
骨材の種類には特に制限はなく、砕石、砂、石粉など、通常の舗装用アスファルトに用いられるものを適宜用いることができる。
【0021】
本発明において、アスファルトと骨材との混合比率は、アスファルト4〜20質量%に対し、骨材96〜80質量%とすることができる。また、本発明のアスファルト混合物には、舗装材料中に通常混合して用いられる添加材を、適宜添加することが可能である。
【実施例】
【0022】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。
(実施例1)
下記表2中に示す粒度を有する骨材(密粒度アスファルトコンクリート(13))93.2質量%と、下記表3中に詳細を示す加硫粉砕ゴム(ゴム粉A)1.0質量%とを、下記表5に示す混合温度で加熱混合した。次いで、この骨材と加硫ゴム粉との混合物中に、下記表1中に物理性状を示すストレートアスファルト60/80(昭和シェル(株)製)5.8質量%を加熱して混合して、密粒度アスファルトコンクリート混合物を得た。
【0023】
(実施例2)
下記表2中に示す粒度を有する骨材(密粒度アスファルトコンクリート(13))92.8質量%と、下記表3中に詳細を示す加硫粉砕ゴム(ゴム粉B)1.0質量%とを、下記表5に示す混合温度で加熱混合した。次いで、この骨材と加硫ゴム粉との混合物中に、下記表1中に物理性状を示すストレートアスファルト60/80(昭和シェル(株)製)6.2質量%を加熱して混合して、密粒度アスファルトコンクリート混合物を得た。
【0024】
(比較例1)
下記表1中に示すストレートアスファルト60/80(昭和シェル(株)製)5.4質量%と、下記表2中に示す骨材(密粒度アスファルトコンクリート(13))94.6質量%とを、下記表5に示す混合温度で加熱混合して、加熱アスファルトコンクリート混合物を得た。
【0025】
(比較例2)
下記表1中に示すストレートアスファルト60/80(昭和シェル(株)製)87.5質量%と、下記表3中に示す加硫粉砕ゴム(ゴム粉A)12.5質量%とを、180℃で30分間加熱混合して、その後2時間熟成させることにより、アスファルトラバーバインダを調製した。得られたアスファルトラバーバインダの物理性状を、下記表4中に示す。次いで、このアスファルトラバーバインダ6.0質量%と、下記表2中に示す骨材(密粒度アスファルトコンクリート(13))94.0質量%とを下記表5に示す混合温度で加熱混合して、加熱アスファルトコンクリート混合物を得た。この比較例2で用いているアスファルトラバーバインダは、従来作製されているアスファルトラバーに相当する。
【0026】
【表1】

【0027】
【表2】

【0028】
【表3】

【0029】
【表4】

* ブルックフィールド粘度計による測定値である。
【0030】
【表5】

【0031】
得られた各加熱アスファルトコンクリート混合物を用いて、舗装試験法便覧に準拠して、上記表5に示す締固め温度で供試体を作製し、その密度および動的安定度(耐わだち性の指標)の測定を行った。その結果を、下記表6中に示す。
【0032】
【表6】

【0033】
上記表6の結果より、実施例1、2のアスファルトコンクリート混合物は、一般的に使用されているストレートアスファルトをそのまま使用した比較例1に比べ、耐流動性に優れることが確認された。また、従来のプレミックスタイプのアスファルトラバーをバインダとして用いた比較例2と比べても、性能はほぼ同じといえる。さらに、本発明に係る実施例のアスファルト混合物は、プラントミックスタイプであることから従来の製造プラントで製造可能であり、実用性にも優れる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスファルトと、骨材とを含むアスファルト混合物の製造方法において、
前記骨材と加硫ゴム粉とを加熱混合した後、得られた骨材と加硫ゴム粉との混合物中に、加熱した前記アスファルトを添加混合することを特徴とするアスファルト混合物の製造方法。
【請求項2】
前記加硫ゴム粉の添加量を、前記アスファルトと骨材との総量に対し0.1〜5.0質量%の範囲内とする請求項1記載のアスファルト混合物の製造方法。
【請求項3】
前記加硫ゴム粉の粒径を10〜5000μmの範囲内とする請求項1記載のアスファルト混合物の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のうちいずれか一項記載の製造方法により製造されたことを特徴とするアスファルト混合物。